以下に、本発明のプラスチックラベル用活性エネルギー線樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物という)について、さらに詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、可視光、紫外線、電子線などの活性エネルギー線によって硬化させることができる活性エネルギー線硬化性の組成物である。熱硬化性の場合と異なり、シュリンクフィルムなどの熱により変形を起こしやすい基材にも好適に用いられる。活性エネルギー線の中でも、特に紫外線硬化性、近紫外線硬化性であることが好ましい。好ましい吸収波長は200〜460nmである。
本発明の樹脂組成物は、オキセタン化合物(以下、成分Aという)、エポキシ化合物(以下、成分Bという)、及び、シリコーン変性樹脂(以下、成分Cという)を必須の構成成分として含有する。上記3成分を含まない場合には、本発明の効果は得られない。また、本発明の樹脂組成物には、滑り性等の向上の観点から、シリコーン化合物(以後、成分Dという)を含有していてもよい。さらに印刷インキとして用いる場合には、顔料を含有することが好ましい。なお、上記成分A、成分Bには、オキセタニル基、エポキシ基を有するシリコーンは含まないものとする。
本発明の樹脂組成物には、上記成分の他にも、活性エネルギー線硬化性を発現させるために重合開始剤(以下、光重合開始剤という)を含有することが好ましい。また、その他の機能付与の目的で、他の樹脂成分、増感剤、分散剤、酸化防止剤、香料、消臭剤、安定剤、滑剤、色別れ防止剤等を、本発明の効果を損なわない程度に、添加してもよい。
本発明の成分Aは、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有する化合物であり、モノマーまたはオリゴマーのいずれでもよい。例えば、特開平8−85775号公報や特開平8−134405号公報に記載されたオキセタン化合物を用いることができ、中でも、1分子中にオキセタニル基を1個または2個有する化合物が好ましい。1分子中にオキセタニル基を1個有する化合物としては、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタンなどが挙げられる。1分子中にオキセタニル基を2個有する化合物としては、1,4−ビス[[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル]ベンゼン、ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテルなどが挙げられる。さらにこれらの中でも、コーティング加工適性の観点や、コーティング層の硬化性の観点から、特に好ましくは、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテルである。
本発明の成分Aは、トリメチロールプロパンとジメチルカーボネートなどから製造されるオキセタンアルコールとハロゲン化物(例えば、キシレンジクロライド)により既知の方法に従って製造することができる。なお、成分Aとしては、既存のオキセタン化合物を用いてもよく、例えば、東亞合成(株)製「アロンオキセタン OXT−101、121、211、221、212」などが市販品として入手可能である。
本発明の成分Bは、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する公知のエポキシ化合物を用いることができ、例えば、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物や芳香族エポキシ化合物を用いることができる。中でも、高反応速度の観点から、グリシジル基を有する化合物やエポキシシクロヘキサン環を有する化合物が好ましく、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましい。例えば、脂肪族エポキシ化合物としては、プロピレングリコールグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートなどが挙げられる。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールAのグリシジルエーテル縮合物、ノボラック樹脂やクレゾール樹脂のエピクロルヒドリン変性物などが挙げられる。
本発明の成分Bは、エピクロルヒドリンおよびビスフェノールAからの合成など、一般的な方法によって合成されるものを用いることができ、例えば、ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド 2021」、「セロキサイド 2080」、「エポリード GT400」などが市販品として入手可能である。
本発明の樹脂組成物中における、成分Aと成分Bの配合比(重量比)は、2:8〜8:2(成分A/成分Bが0.25〜4)が好ましく、グラビア、フレキソ印刷でコーティングする場合は、4:6〜8:2(成分A/成分Bが2/3〜4)が好ましく、より好ましくは5:5〜8:2(成分A/成分Bが1〜4)である。上記範囲よりも成分Aの量が多くなると、樹脂組成物の硬化反応の開始速度が遅くなって、硬化に時間がかかるため生産性が低下したり、通常の硬化工程では未硬化となる場合がある。また、上記範囲よりも成分Bの量が多くなると、樹脂組成物の粘度が大きくなってグラビア印刷やフレキソ印刷などのコーティング法で均一に塗布することが困難となったり、硬化反応の停止反応が起こりやすく、低分子量の硬化物となり、硬化後の樹脂硬化物層がもろくなる場合がある。
本発明の成分Aと成分Bの合計の添加量は、塗工性、硬化性等の観点から、樹脂組成物の全量に対して、30〜99重量%が好ましい。中でも、本発明の樹脂組成物が透明コーティング剤である場合には、60〜99重量%が好ましく、より好ましくは70〜90重量%である。また、本発明の樹脂組成物が顔料を含む印刷インキである場合には、30〜90重量%が好ましく、より好ましくは40〜80重量%である。
本発明の成分Cは、シリコーン変性樹脂である。成分Cは、分子中に、シリコーン鎖部分とシリコーン以外のポリマー部分を有しておればよく、シリコーン以外のポリマー鎖を主鎖とし、複数のシリコーン側鎖を有する分子構造であってもよいし、シリコーン以外のポリマー鎖とシリコーン鎖を1つずつ有するブロックポリマーであってもよい。ただし、シリコーンを主鎖とするいわゆる変性シリコーン化合物(複数のシリコーン以外のポリマー側鎖を有するシリコーン化合物を含む)は本発明の成分Cには含まない。
本発明の成分Cにおけるシリコーン鎖部分(側鎖部分)のケイ素(Si)原子の数は、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは2〜40である。シリコーン鎖部分のケイ素原子の数が100を超える場合には、成分A、成分Bとの相溶性が低下して、少量添加で本発明の効果を得ることができない場合がある。
本発明の成分Cのシリコーン以外のポリマー部分(主鎖部分)の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、より好ましくは2000〜70000である。重量平均分子量が1000未満である場合には、成分A、Bとの相溶性が低下する場合があり、100000を超えるとシリコーン部分の影響が小さくなり、成分C添加による本発明の効果が得られない場合がある。
本発明の成分Cとしては、上記を満たす限り特に限定されないが、側鎖にシリコーンを有する樹脂が好ましく、例えば、シリコーンを側鎖に有するアクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂)、シリコーンを側鎖に有するポリエステル樹脂(シリコーン変性ポリエステル樹脂)、シリコーンを側鎖に有するセルロース樹脂(シリコーン変性セルロース樹脂)、シリコーンを側鎖に有するウレタン樹脂(シリコーン変性ウレタン樹脂)から選ばれた少なくとも1つの樹脂であることが好ましい。中でも特に好ましくは、シリコーン変性アクリル樹脂である。
本発明の成分Cとして用いられるシリコーン変性アクリル樹脂としては、アクリルポリマー主鎖と1以上(好ましくは2以上)のシリコーン側鎖からなる。アクリル鎖部分とシリコーン鎖部分をそれぞれ1つずつ有するシリコーン−アクリルブロック共重合体であってもよい。なお、アクリル部分が重合体でない、いわゆる(メタ)アクリル変性シリコーン((メタ)アクリロイル基を有するシリコーン)は成分Cには含まない。
上記シリコーン変性アクリル樹脂としては、特にカルボキシル基を含有するアクリルポリマーのカルボキシル基部分にシリコーン側鎖が結合した構造が代表的なものとして例示される。上記シリコーン変性アクリル樹脂は、片末端に重合反応性基を有するジメチルシロキサン、すなわちシリコーンマクロモノマーと(メタ)アクリル酸メチルなどのアクリル系モノマーを共重合させて得ることができる。
上記シリコーン変性アクリル樹脂の製造に用いられるアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和共重合体を必須の単量体成分として構成されるものが好ましい。主たる単量体成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが例示され、中でも(メタ)アクリル酸C1-12アルキルエステルが好ましい。また、必須の共重合成分であるカルボキシル基含有重合性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
また、上記の他、必要に応じて、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル[好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-8アルキルエステル];(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類やジエン類などの重合性不飽和化合物を共重合成分として用いることもできる。
上記シリコーン変性アクリル樹脂のシリコーン側鎖部分は、シロキサン結合からなるポリシロキサンであれば特に限定されず、直鎖状シリコーンであっても、デンドリマー構造のシリコーンであってもよい。また、環状構造、ハイパーブランチ構造のシリコーンであってもよい。
上記シリコーン変性アクリル樹脂としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「FA 4001 CM」、「FA 4002 ID」などが挙げられる。
本発明の成分Cの含有量は、樹脂組成物の総重量に対して、0.1〜5重量%であり、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。成分Cの含有量が0.1重量%未満である場合には、成分C添加の効果が小さく、硬化速度、樹脂硬化物層の接着性、重ね塗り適性が低下する。また、5重量%を超える場合には、硬化性が低下し、表面にタック性が生じるためラベルの装着適性が低下したり、重ね塗り適性が低下する。またコストが高くなる。
本発明の成分Dであるシリコーン化合物(シリコーンオイル)は、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであり、メチル基、フェニル基以外の置換基を有しないストレートシリコーン化合物(ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンなど)であってもよいし、側鎖または末端にメチル基、フェニル基以外の置換基を有する変性シリコーン化合物であってもよい。
本発明の成分Dとしては、上記の中でも、硬化性の観点から、変性シリコーン化合物が好ましい。変性シリコーン化合物のベースとなるシリコーンは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであればよく、例えば、全ての側鎖、末端がメチル基からなるジメチルシリコーン、側鎖の一部にフェニル基を含むメチルフェニルシリコーン、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンなどが挙げられる。中でも、好ましくは、ジメチルシリコーンである。変性シリコーン化合物における置換基の結合位置は特に限定されず、主鎖の両末端(両末端型:下記構造式(1))または片末端(片末端型:下記構造式(2))に有していてもよいし、側鎖(側鎖型:下記構造式(3))に有していてもよく、例えば、下記の構造式で表される。さらに、側鎖および末端(両末端、片末端)に置換基を有していてもよい。
なお、式中のX1、X2は置換基(メチル基、フェニル基以外)である。また、式中のR1、R2、R3は水素原子または炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。さらに、式中のm、nは、1以上の整数である。
上記変性シリコーンにおける置換基としては、例えば、エポキシ基、フロロアルキル基、アミノ基、カルボキシル基、脂肪族ヒドロキシル基(アルコール性水酸基)、芳香族ヒドロキシル基(フェノール性水酸基)、(メタ)アクリロイル基含有の置換基、ポリエーテル鎖を含有する置換基などが挙げられる。これらの置換基を有する変性シリコーンとしては、例えば、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、(メタ)アクリル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、ジオール変性シリコーンなどが例示される。中でも、特に好ましくは、ポリエーテル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーンである。
また、成分Dには、上記に挙げた置換基の他にも、アルキル基および/またはアラルキル基等の有機基が含まれていてもよい。
本発明の成分Dがエポキシ変性シリコーンである場合には、置換基であるエポキシ基としては、酸素原子が環状脂肪族骨格を含まないもの(左図:脂肪族エポキシ基と称する)であってもよいし、エポキシ基の酸素原子が環状脂肪族骨格を含んで形成されたもの(右図:脂環式エポキシ基と称する)であってもよい。
なお、式中のR
4、R
5は水素原子または炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記エポキシ変性シリコーンにおけるエポキシ基の官能基当量は、硬化性の観点から、300〜5000が好ましく、より好ましくは、400〜4000である。
本発明の成分Dがフッ素変性シリコーンである場合には、置換基としては、特に限定されないが、例えば[−R6CF3]等のフッ素化アルキル基が好ましく、具体的には−CH2CH2CF3、−C3H6CF3などが例示される。なお、R6は炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記フッ素変性シリコーンの粘度(23±2℃)は100000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは50000mPa・s以下である。粘度が100000mPa・sを超える場合には、樹脂組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。
本発明の成分Dがアミノ変性シリコーンである場合には、置換基はアミノ基を含む置換基であり、特に限定されないが、[−R7NH2]、[−R8NH−R9NH2]、[−R10NHC6H11]などで表されるアミノアルキル基などが好ましく、具体的には、−C3H6NH2、−C3H6NHC6H11などが例示される。なお、R7、R8、R9、R10は炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記アミノ変性シリコーンの粘度(23±2℃)は100000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは50000mPa・s以下である。粘度が100000mPa・sを超える場合には、樹脂組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。また、アミノ変性シリコーンの官能基当量(単位:g/mol)は、500以上(例えば、500〜60000)であり、より好ましくは700〜60000である。官能基当量が500未満の場合には硬化阻害が生じて硬化反応が十分に進まない場合があり、60000を超えて過剰である場合には添加の効果(密着性や硬化速度向上)が得られない場合がある。
本発明の成分Dが(メタ)アクリル変性シリコーンである場合には、置換基としては(メタ)アクリロイル基を含む置換基であり、特に限定されないが、[−R11OCOCH=CH2]、[−R12OCOC(CH3)=CH2]などが好ましく、具体的には−C3H6OCOC(CH3)=CH2、−C3H6OCOCH=CH2などが例示される。なお、R11、R12は炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記(メタ)アクリル変性シリコーンの官能基当量(単位:g/mol)は、20000以下(例えば、50〜20000)であり、より好ましくは100〜15000である。官能基当量が20000を超える場合には添加の効果が得られない場合がある。
本発明の成分Dがポリエーテル変性シリコーンである場合には、置換基としてはエーテル結合を含む2以上の繰り返し単位を含む置換基であり、特に限定されないが、[−R13(C2H4O)aR14]、[−R15(C3H6O)bR16]、[−R17(C2H4O)c(C3H6O)dR18]で表されるエチレンオキシド、プロピレンオキシド単位を主成分とする有機基が好ましく例示される。なお、R13、R14、R15、R16、R17、R18は炭化水素基であり、a、bは6〜30、c、dは1〜20程度の整数である。上記ポリエーテル変性シリコーンの粘度(23±2℃)は100000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは50000mPa・s以下である。粘度が100000mPa・sを超える場合には、樹脂組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。また、ポリエーテル変性シリコーンのHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)は、特に限定されないが、相溶性の観点から、0〜12が好ましく、より好ましくは0〜10である。HLB値が12を超えて親水性が高い場合には、相溶性が低下する場合がある。
本発明の成分Dがカルビノール変性シリコーンである場合、置換基は[−R19OH]で表され、具体的には、例えば、−C3H6OC2H4OH、−C3H6OH等が例示される。ジオール変性シリコーンの場合には、置換基は、
で表されるアルコール性ジオールなどが好ましく、具体的には、
等が例示される。また、フェノール変性シリコーンの場合には、置換基は、例えば、[−R25−C6H4−OH]で表され、具体的には、−C2H4−C6H4−OH、−C3H6−C6H4−OH等が例示される。なお、上記のR19、R20、R21、R22、R23、R25は脂肪族炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。R24は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基である。これら脂肪族又は芳香族ヒドロキシル変性シリコーンの水酸基価(単位:mgKOH/g)は、5〜150が好ましく、より好ましくは10〜140である。官能基当量が5未満の場合には添加の効果(密着性など)が十分でない場合があり、150を超える場合には硬化阻害が生じて硬化反応が十分に進まない場合がある。なお、上記水酸基価はJIS K 5601−2−1に準拠して測定することができるが、官能基当量[官能基当量(g/mol)=56000/水酸基価(mgKOH/g)]から算出してもよい(特に、フェノール変性シリコーンの場合など)。
本発明の成分Dがカルボキシル変性シリコーンである場合は、置換基は、特に限定されないが、[−R26COOH]で表されるものが好ましく、具体的には、例えば、−C2H4COOH、−C3H6COOH等が例示される。なお、上記のR26は脂肪族炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記カルボキシル変性シリコーンの官能基当量(単位:g/mol)は、6000以下(例えば、100〜6000)であり、より好ましくは100〜5000である。官能基当量が6000を超える場合には成分D添加の効果が得られない場合がある。なお、上記官能基当量とは、カルボキシル基(COOH部分)の当量である。
本発明の成分Dとしては、市販品を用いることも可能であり、例えば、エポキシ変性シリコーンとしては、信越シリコーン(株)製「KF−101、KF−102、KF−105、KF−1001、X−22−163A、X−22−163B、X−22−163C、X−22−169AS、X−22−169B、X−22−173DX、X−22−2000」等が挙げられる。フッ素変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「FL−5、FL−100−100cs、FL−100−450cs、FL−100−1000cs、FL−100−10000cs、X−22−821、X−22−822」や東レ・ダウコーニング(株)製「FS1265」等が挙げられる。アミノ変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「KF−8005、KF−859、KF−8008、X−22−3820W、KF−857、KF−8001、KF−861」等、(メタ)アクリル変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−2426、X−22−164A、X−22−164C、X−22−2404、X−24−8201」(以上、メタクリル変性)、信越化学工業(株)製「X−22−2445、X−22−1602」、デグサ(株)製「TEGO Rad 2400、2500、2600、2700」(以上、アクリル変性)等が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、KF−6004、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017、X−22−6191、X−22−4515、X−22−2516」や東レ・ダウコーニング(株)製「FZ−2110、FZ−2122、FZ−7006、FZ−2166、FZ−2164、FZ−2154、FZ−2191、FZ−7001、FZ−2120、FZ−2130、FZ−720、FZ−7002、FZ−2123、FZ−2104、FZ−77、FZ−2105、FZ−2118、FZ−7604、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208、SH−8400、SH−8700、SH−3746、SH−3771、SF−8491」等が挙げられる。カルビノール変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−160AS、KF6001、KF6002、KF6003、X−22−4015、X−22−4039、X−22−170DX」等が挙げられる。ジオール変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−176DX、X−22−176D、X−22−176F」等が挙げられる。フェノール変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−1821、X−22−165B」、東レ・ダウコーニング(株)製「BY16−752、BY16−150S」等が挙げられる。カルボキシル変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−162C、X−22−3701E、X−22−3710」、東レ・ダウコーニング(株)製「BY16−750、BY16−880」等が挙げられる。
本発明の成分Dの添加量は、成分Aと成分Bの合計量(100重量部とする)に対して、0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜15重量部である。成分Dの添加量が0.1重量部未満である場合には、成分D添加の効果が小さくなる場合がある。また、30重量部を超える場合には、成分Aや成分Bの含有量が低下して、硬化性が低下したり、樹脂組成物が高粘度となって塗工性が低下し、印刷の際かすれ等が発生する場合がある。
本発明の樹脂組成物を、印刷インキとして用いる場合には、顔料を添加することができる。顔料としては、有機、無機の着色顔料が使用でき、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍(青色)顔料、縮合アゾ系顔料などの赤色顔料、アゾレーキ系顔料などの黄色顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)等が用途に合わせて選択、使用できる。また、顔料として、その他にも、光沢調製などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料も使用できる。
上記顔料の含有量は、顔料の種類や目的の色の濃度等により任意に設計できるが、樹脂組成物の総重量に対して、0.1〜70重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜50重量%である。
中でも、本発明の樹脂組成物を、白色印刷インキとして用いる場合には、顔料としては、酸化チタンが好ましく用いられる。酸化チタンとしては、ルチル型(正方晶高温型)、アナターゼ型(正方晶低温型)、ブルッカイト型(斜方晶)のいずれを用いてもよいが、例えば、石原産業(株)製酸化チタン粒子「タイペーク」、テイカ(株)製酸化チタン「JRシリーズ」等が入手可能である。また、酸化チタン粒子の平均粒径(凝集体を形成している場合には、凝集体の粒径、いわゆる2次粒径)は、例えば0.01〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.2〜0.5μmである。平均粒径が0.01μm未満では白濃度が低下し隠蔽性が不足する。1μmを超えるとグラビア印刷の際にいわゆる「版かぶり」(版の画線部以外の部分のインキ掻き取り不良による印刷不良)を生じるため好ましくない。また、酸化チタンの含有量は、隠蔽性と粗大突起形成抑制の観点から、樹脂組成物の総重量に対して、20〜60重量%が好ましく、より好ましくは30〜55重量%である。
本発明において、成分Aは、硬化反応の停止反応が進みにくいため、高分子量の強靱な樹脂硬化物層を形成する特徴を有する反面、開始反応も進みにくいため硬化工程に時間がかかり生産性が低下したり、短い硬化時間では硬化が進まず樹脂硬化物層の強靱性が不足する欠点がある。これに対して、成分Bは、開始反応が速く、生産速度は速くなるものの、反応停止も起こりやすいため、硬化物は低分子量となり樹脂硬化物層の強靱性が不足する。これらの両者を混合することによっても、ある程度の硬化速度(生産性)と強靱性を得ることは出来るものの、工程速度を速くした場合には、樹脂硬化物層の十分な強靱性を得ることは不可能であった。本発明においては、さらに、所定量の成分Cを添加することにより、成分A、成分Bのみの場合と比較して、硬化速度が飛躍的に向上する。このため、短時間の活性エネルギー線照射で樹脂硬化物層の硬化が進むため、工程速度の高速化が可能となり生産性が向上する。さらに、停止反応は抑制されるため、高分子量化が可能で高強靱性を達成できる。すなわち、生産性と強靱性を高いレベルで両立させることが可能である。なお、成分Aまたは成分Bのみに成分Cを加えた2成分系の場合には、上記のような効果を得ることはできず、3成分の混合系であることが必要である。
成分A、Bに対して、シリコーン化合物(成分D)を添加する場合にも、本発明と同様の効果を得ることが可能である。しかし、本発明のように側鎖でなく、主鎖にシリコーン鎖を有するシリコーン化合物は、成分A、Bに対する相溶性が低いため、樹脂組成物中でシリコーン分子がコイル状となって、シリコーン部分が有効に働きにくく、本発明の成分Cと比較して、多量に添加する必要が生じ、コスト面で不利となる。また、シリコーン化合物は樹脂組成物を塗布した後に、樹脂組成物層表面に析出しやすく、重ね塗り適性が低下する場合がある。一方、本発明の成分Cは、アクリル樹脂などのポリマー主鎖を有するため、成分A、Bとの相溶性が良好であり、少量添加で十分な効果(硬化性向上など)を発揮し、また表面への析出もなく重ね塗り適性が良化する。
また、成分Cを添加することによって、樹脂組成物のプラスチックフィルム基材への接着性(密着性)、他のインクへの密着性(重ね塗り適性)が飛躍的に向上する。これらの効果の発現機構の詳細は不明であるが、成分A、B、Cの3成分の相互作用によるものと考えられる。
本発明においては、成分A、B、Cの混合により、硬化速度が著しく速くなるため、生産性が向上する。また、接着性、強靱性が向上するため、シュリンク加工を行う際のシュリンクフィルムの変形に対する樹脂硬化物層の追従性が良好となり、加工後は樹脂硬化物層の耐スクラッチ性、耐もみ性が向上する。さらに、滑り性、撥水性、撥油性、低臭性などの効果も得られる。
本発明の樹脂組成物には、活性エネルギー線硬化性発現のために、光重合開始剤を添加することが好ましい。本発明の光重合開始剤としては、特に限定されないが、光カチオン重合開始剤が好ましい。光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、シラノール/アルミニウム錯体、スルホン酸エステル、イミドスルホネートなどが挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジアリールヨードニウム塩やトリアリールスルホニウム塩が特に好ましい。光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の総重量に対して、0.5〜7重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
また、本発明の樹脂組成物には、生産効率を高める観点から、必要に応じて、増感剤を添加することが好ましい。上記酸化チタン顔料などを用いる場合には、特に有効である。その場合の増感剤は、用いる活性エネルギー線の種類などを勘案して、既存の増感剤から選択することができる。例えば、(1)脂肪族、芳香族アミン、ピペリジンなど窒素を環に含むアミンなどのアミン系増感剤、(2)アリル系、o−トリルチオ尿素などの尿素系増感剤、(3)ナトリウムジエチルジチオホスフェートなどのイオウ化合物系増感剤、(4)アントラセン系増感剤、(5)N,N−ジ置換−p−アミノベンゾニトリル系化合物などのニトリル系増感剤、(6)トリ−n−ブチルホスフィンなどのリン化合物系増感剤、(7)N−ニトロソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物などの窒素化合物系増感剤、(8)四塩化炭素などの塩素化合物系増感剤などの増感剤が挙げられる。上記でも、特に、アントラセン系増感剤は増感作用が強く好ましい。中でも、チオキサントンや9,10−ジブトキシアントラセンなどが好ましく使用される。また、増感剤の含有量としては、特に限定されないが、樹脂組成物の総重量に対して、0.1〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.3〜3重量%である。
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、滑剤を含有してもよい。ここでいう滑剤とは、例えば、ポリエチレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、カルナウバワックス等の各種ワックス類が例示される。
本発明の樹脂組成物中の、反応に関与せず主に分散剤として使用される溶剤の含有量は、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下であり、さらに、実質的に溶剤を含有しないことが最も好ましい。なお、ここでいう溶剤とは、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコールなどの有機溶媒や水のことをいい、グラビア、フレキソ印刷インキ等では、塗布加工性やコーティング剤中の各成分の相溶性や分散性を改良する目的で通常用いられているものであって、硬化後の樹脂組成物に取り込まれる反応性希釈剤はこれに含まれない。本発明の樹脂組成物は、無溶剤でも、優れた塗布性、成分同士の分散性を発揮できるため、溶剤の量を極めて少なくできるため、溶媒の除去が不要となり、高速化、コストダウンがはかれるほか、環境負荷を少なくすることが可能である。
本発明の樹脂組成物の粘度(23±2℃)は、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷により塗工される場合には、10〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは20〜150mPa・sである。粘度が200mPa・sを超える場合には、グラビア印刷性が低下し、「かすれ」などが生じて、加飾性が低下する場合がある。また、粘度が10mPa・s未満の場合には、顔料や添加剤が沈降しやすくなる等、貯蔵安定性が低下する場合がある。樹脂組成物の粘度は、成分A、B、Cの配合比、増粘剤、減粘剤等によって制御することが可能である。なお、本明細書中、「粘度」とは、特に限定しない限り、E型粘度計(円錐平板形回転粘度計)を用い、23±2℃、円筒の回転数50回転の条件下、JIS Z 8803に準じて測定した値を意味している。
本発明の樹脂組成物は、コストや生産性、印刷の装飾性などの観点から、グラビア印刷、フレキソ印刷またはインクジェット印刷方式で塗工されることが好ましい。中でも、グラビア印刷方式が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、印刷適性、重ね塗り適性、強靱性などに優れるため、印刷インキとして好ましく用いることができる。また、ラベル表面の滑り性を向上させるための透明コーティング剤(滑りメジウム)や、ラベルのつや消しのためのつや消しコーティング剤(マットニス)などとしても使用することができる。本発明の樹脂組成物による樹脂硬化物層は、優れた耐スクラッチ性を有するため、表印刷、表メジウムなど、樹脂硬化物層がラベルの最外層(容器等の被着物側と反対側の最表層)に設けられる用途にも好適であるし、また、複数のインキ層を積層する場合の下層として用いてもよい。
本発明の樹脂組成物は、プラスチックラベル用途に用いられ、具体的には、ストレッチラベル、シュリンクラベル、ストレッチシュリンクラベル、インモールドラベル、タックラベル、ロールラベル(巻き付け方式の糊付ラベル)、感熱接着ラベル等に用いることができる。中でも、本発明の樹脂組成物の密着性、シュリンク加工時の追従性の観点から、シュリンクラベル用途として、特に好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物をプラスチックフィルムの少なくとも一方の面に塗工、活性エネルギー線で硬化することにより、本発明の樹脂硬化物層を有するプラスチックラベルが得られる。本発明の樹脂硬化物層は、ラベルの最表層(例えば、最外層や最内層)に設けられてもよいし、他のインキ層の下層として設けられてもよい。本発明の樹脂硬化物層が最表層として用いられる場合にはラベルに耐傷付き性等を付与する効果が得られ、また下層としては重ね塗りしたインキの剥離を防止する効果が得られる。特に、シュリンクラベル用途に用いられる場合には、接着性、シュリンク加工に対する追従性の良さを反映して、収縮白化、収縮剥離、収縮クラック(インキ割れ)を防止する効果が得られるため好ましい。
本発明のプラスチックラベルに用いられるプラスチックフィルムの種類は、要求物性、用途、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アクリル等の樹脂を用いることができる。中でも好ましくは、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルムであり、さらに好ましくは、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルムである。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)等を用いることができ、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィン等を用いることが可能である。
上記プラスチックフィルムは、単層フィルムであってもよいし、要求物性、用途などに応じて、複数のフィルム層を積層した積層フィルムであってもよい。また、積層フィルムの場合、異なる樹脂からなるフィルム層を積層していてもよい。例えば、中心層と表層部(内層、外層)からなる3層積層フィルムで、中心層がポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂からなり、表層がポリエステル系樹脂からなるフィルム等であってもよい。また、要求物性、用途などに応じて、未延伸フィルム、1軸配向フィルム、2軸配向フィルムのいずれを用いてもよい。特に、プラスチックラベルがシュリンクラベルである場合には、1軸または2軸配向フィルムが用いられることが多く、中でも、フィルム幅方向(ラベル周方向となる方向)に強く配向しているフィルム(実質的に幅方向に1軸延伸されたフィルム)が一般的に用いられる。
上記プラスチックフィルムは、溶融製膜または溶液製膜などの慣用の方法によって作製することができる。また、市販のプラスチックフィルムを用いることも可能である。プラスチックフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理やプライマー処理等の慣用の表面処理が施されていてもよい。
上記プラスチックフィルムの熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、例えばシュリンクラベル用途の場合であれば、シュリンク加工性等の観点から、長手方向、幅方向のうち一方向が−3〜15%、他方向が20〜80%が好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚みは、用途によって異なり、特に限定されないが、10〜200μmが好ましく、例えば、シュリンクラベル用途の場合には、20〜80μmが好ましく、さらに好ましくは30〜60μmである。
本発明の樹脂組成物を塗工する場合の樹脂層厚みは、用途によっても異なり、特に限定されないが、0.1〜15μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜10μmである。樹脂層の厚みが0.1μm未満である場合には、樹脂層を均一に設けることが困難である場合があり、印刷層として用いる場合などには、部分的な「かすれ」が起こったりして、装飾性が損なわれたり、デザイン通りの印刷が困難となる場合がある。また、樹脂層厚みが15μmを超える場合には、樹脂組成物を多量に消費するため、コストが高くなったり、均一に塗布することが困難となったり、また、樹脂硬化物層がもろくなって、剥離しやすくなったりする。中でも、本発明の樹脂硬化物層が白色インキ層である場合には、厚みは、隠蔽性の観点から、3〜10μmが好ましく、透明コーティング層である場合には、透明性の観点から、0.2〜3μmが好ましい。なお、本発明の樹脂硬化物層は、硬化前後で厚みは殆ど変化しない。
本発明の樹脂硬化物層は、印刷インキ層の他、トップコート層、アンカーコート層など、様々な層として用いることができ、特に、耐傷つき性を要する表層印刷インキ層、トップコート層や他のインキ層に対するアンカーコート層などとして優れた効果を発揮しうる。
本発明のプラスチックラベルには、他にも、本発明の樹脂硬化物層とは異なる印刷層が設けられていてもよい。その場合の、他の印刷層は、グラビア印刷やフレキソ印刷等の慣用の印刷方法により形成することができる。該印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば顔料、バインダー樹脂、溶剤からなり、前記バインダー樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系、セルロース系、ニトロセルロース系などの一般的な樹脂が使用できる。印刷層の厚みとしては、特に制限されず、例えば0.1〜10μm程度である。
本発明のプラスチックラベルには、他にも、本発明の樹脂硬化物層とは異なるアンカーコート層、プライマーコート層、不織布、紙等の層を必要に応じて設けてもよい。
本発明のプラスチックラベルは、一般的に、容器に装着し、ラベル付き容器として用いられる。このような容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳容器、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。また容器の材質としても、PETなどのプラスチック製、ガラス製、金属製などが含まれる。なお、本発明のプラスチックラベルは、容器以外の被着体に用いられてもよい。
以下に、本発明の樹脂組成物及びプラスチックラベルの製造方法、及び、プラスチックラベルを容器に装着する加工の一例を説明する。なお、ここでは、プラスチックフィルムとして幅方向に収縮するシュリンクフィルムを用いた筒状シュリンクラベルの例を示すが、製造方法、加工方法はこれに限定されるものではない。
なお、下記説明において、樹脂硬化物層を設ける前のフィルム原反を「プラスチックフィルム」、これに本発明の樹脂硬化物層を設けたものを「(長尺状)プラスチックラベル」という。さらに容器への装着加工工程では、前記長尺状プラスチックラベルを長尺のまま筒状に加工したものを「長尺筒状プラスチックラベル」と記載する。
[樹脂組成物の作製]
上述の成分A、成分B、成分Cおよび、必要に応じて、成分D、顔料、光重合開始剤等を混合して樹脂組成物を製造する。さらに、増感剤等その他の添加剤を用いる場合には、同時に混合する。混合は、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、ディゾルバー、タンクミキサー、ホモミキサー、ホモディスパーなどのミキサーや、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ラインミルなどのミル、ニーダーなどが用いられる。混合の際の混合時間(滞留時間)は10〜120分が好ましい。得られた樹脂組成物は、必要に応じて、濾過してから用いてもよい。
[プラスチックラベルの作製]
プラスチックフィルムに、本発明の樹脂組成物を塗工(例えば、グラビア、フレキソ印刷など)して、樹脂層(硬化前)を形成する。塗工は、プラスチックフィルムの製造工程中(例えば、未延伸または縦1軸延伸後)に塗布を行うインラインコートによって設けてもよいし、フィルム製膜後に塗布を行うオフラインコートによって設けてもよく、特に限定されないが、生産性、また、硬化処理を含めた加工性の観点から、オフラインコートが好ましい。
次に、樹脂層の硬化を行う。硬化は、生産性の観点からは、塗工工程と一連の工程で行うことが好ましい。硬化は、紫外線(UV)ランプ、紫外線LEDや紫外線レーザーなどを用いる活性エネルギー線硬化で行い、照射する活性エネルギー線は、樹脂組成物の組成によっても異なり、特に限定されないが、硬化性の観点から、波長が200〜460nmの紫外線(近紫外線)が好ましく、また、照射強度は150mJ/cm2〜1000mJ/cm2、照射時間は0.1〜3秒が好ましい。
上記のように得られた長尺状のプラスチックラベルは、所定の幅にスリットして、ロール状に巻回し、複数個のロール状物とする。
[長尺状プラスチックラベルの加工]
次に、上記ロール状物のひとつを繰り出しながら、長尺状プラスチックフィルムの幅方向が円周方向となるように円筒状に成形する。具体的には、長尺状プラスチックラベルを筒状に形成し、ラベルの一方の側縁部に、長手方向に帯状に約2〜4mm幅で、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下溶剤等)を内面に塗布し、筒状に丸めて、該溶剤等塗布部を、他方の側縁部から5〜10mmの位置に重ね合わせて外面に接着(センターシール)し、長尺筒状のプラスチックラベル連続体とし、長尺筒状プラスチックラベルを得る。なお、上記の溶剤などを塗工する部分及び接着する部分には、樹脂硬化物層が設けられていないことが好ましい。
なお、ラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を長手方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程段階は、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後など、適宜選択ことができる。
[ラベル付き容器]
最後に、上記で得られた長尺筒状プラスチックラベルを切断後、所定の容器に装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによってラベル付き容器を作製する。上記長尺筒状プラスチックラベルを、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、必要な長さに切断した後、内容物を充填した容器に外嵌し、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルを通過させたり、赤外線等の輻射熱で加熱して熱収縮させ、容器に密着させて、ラベル付き容器を得る。上記加熱処理としては、例えば、80〜100℃のスチームで処理する(スチームおよび湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)ことなどが例示される。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)硬化性(初期タック性)
実施例、比較例で、紫外線硬化処理(工程速度:120m/分)直後に樹脂硬化物層表面を指で触り、指にインキがつくかどうかを目視にて観察し、指にインキが付かない場合は硬化性良好(○)、インキが付く場合は硬化性不良(×)と判断した。
(2)接着性(テープ剥離試験)
碁盤目のクロスカットを入れない以外は、JIS K 5600に準じて、試験を行った。実施例、比較例で得られたプラスチックラベルの樹脂層側の表面に、ニチバンテープ(幅18mm)を貼り付け、90度方向に剥離し、5mm×5mmの領域において、樹脂層の残存した面積を観察し、下記の基準で接着性(密着性)を判断した。
90%以上 : 接着性良好(○)
80%以上、90%未満 : 接着性はやや不良であるが使用可能なレベル(△)
80%未満 : 接着性不良(×)
(3)耐もみ性
実施例、比較例で得られたプラスチックラベルから、長さ100mm×幅100mmのサンプル片を採取した。サンプル片の両端を両手でつかみ、10回手でもむ。樹脂硬化物層側表面の樹脂硬化物層の残存面積を目視で観察し、残存面積が90%以上であれば、耐もみ性良好(○)、90%未満であれば、耐もみ性不良(×)と判断した。
(4)耐スクラッチ性
実施例、比較例で得られたプラスチックラベルから、長さ100mm×幅100mmのサンプル片を採取した。サンプルを平滑なテーブルの上に置き、樹脂硬化物層を設けた側の表面を、手の爪の甲の部分で、10往復(長手方向20mmの区間)こすった後に表面を観察し、下記の基準で判断した。
樹脂硬化物層は全く剥離していない。 : 耐スクラッチ性良好(○)
樹脂硬化物層に一部剥離がみられる。 : 耐スクラッチ性はやや不良であるが使用可能なレベル(△)
樹脂硬化物層が著しく剥離している。 : 耐スクラッチ性不良(×)
(5)重ね塗り適性
実施例、比較例で得られたプラスチックラベルに、用いた樹脂組成物と同一の樹脂組成物を再度同条件で重ね印刷を施し、硬化して、2層の樹脂硬化物層を有するプラスチックラベルサンプルを作製した。
上記(2)〜(4)と同様にして、得られたサンプルの接着性、耐もみ性、耐スクラッチ性を評価し、各評価で不良(×)がない場合には重ね塗り適性良好(○)と判断し、1つでも不良がある場合には重ね塗り適性不良(×)と判断した。
(6)フィルム層厚み、樹脂硬化物層厚み
フィルム厚みは、触針式厚みゲージを用いて測定した。樹脂硬化物層厚みは、樹脂硬化物層を設けた部分(塗工面)と樹脂硬化物層を設けていない部分(非塗工面)の段差を、3次元顕微鏡(キーエンス(株)製VK8510)を用いて測定した。
(7)プラスチックフィルム熱収縮率(90℃)
プラスチックフィルムから、測定方向(長手方向または幅方向)に長さ200mm(標線間隔150mm)、幅10mmの長方形のサンプル片を作成する。
サンプル片を90℃の温水中で、10秒熱処理(無荷重下)し、熱処理前後の標線間隔の差を読み取り、以下の計算式で熱収縮率を算出する。
熱収縮率(%) = (L0−L1)/L0×100
L0 : 熱処理前の標線間隔
L1 : 熱処理後の標線間隔