JP5324628B2 - 高周波数帯域用の電気絶縁材料及びそれを用いた通信ケーブル - Google Patents
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Description
一方、前記通信ケーブルは、車載用途などの高温環境下で使用される例も増加している。このように、通信ケーブルが高温環境下で使用されたりする場合には、前記通信ケーブルに用いられる電気絶縁材料には、耐熱寿命特性を維持させるために各種の酸化防止剤の添加は避けられない。また、前記電気絶縁材料に化学架橋や電子線架橋を施すにあたり、分子切断を抑制するため、多量の酸化防止剤が添加される。しかしながら、この酸化防止剤は高周波数帯域における誘電特性に悪影響を及ぼすことが考えられ、5〜18GHzが使用周波数帯域に含まれる電気絶縁材料を得るためには、前記電気絶縁材料に添加される酸化防止剤の選択が重要な問題となる。しかし、従来の空洞共振器摂動法では、5GHz程度までの低周波数帯域での誘電特性の測定しか行えず、その低周波数帯域での評価結果に基づき、前記酸化防止剤を選定せざるを得なかった。
なお、本発明の高周波数帯域での通信ケーブルとしては、データケーブル、高速伝送ケーブル、インフィニバンドケーブル、マイクロUSBケーブル、車載ETCなどに用いられる高周波同軸ケーブル等が知られている。
<1> 5〜18GHzが使用周波数帯域に含まれる電気絶縁材料であって、オレフィン系樹脂100重量部に対して、酸化防止剤としてヒンダードフェノール構造を有しないフェノール系の酸化防止剤のみを0.2〜2重量部配合してなる電気絶縁材料である。
<2> フェノール系の酸化防止剤が、下記一般式(1)で表されるセミヒンダードフェノール系の酸化防止剤、及び下記一般式(2)で表されるレスヒンダードフェノール系の酸化防止剤の少なくともいずれかであることを特徴とする前記<1>に記載の電気絶縁材料である。
<4> レスヒンダードフェノール系の酸化防止剤が、4,4´−チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチル)フェノール、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ブタン、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリーブチル)フェノールから選ばれる1種である前記<2>に記載の電気絶縁材料である。
<6> 化学架橋または電子線架橋を施した前記<1>から<5>のいずれかに記載の電気絶縁材料である。
<8> 同軸ケーブルである前記<7>に記載の通信ケーブルである。
また、前記レスヒンダードフェノール系の酸化防止剤としては、4,4´−チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチル)フェノール(例えば、大内新興化学工業社のノクラック300)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ブタン(例えば、アデカ社のアデカスタブAO−30)、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリーブチル)フェノール(例えば、アデカ社のアデカスタブAO−40)が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、その分子構造から、周波数による影響を比較的受け難く、高周波帯域における誘電特性が良好になるものと考えられる。
前記空洞共振厳密測定法(JISR 1641)に基づき、3GHz、6GHz、12GHz及び18GHz測定用の空洞共振器(川島製作所製)を用い、各周波数における誘電正接(tanδ)をそれぞれ測定した結果、オレフィン系樹脂に酸化防止剤を配合してなる電気絶縁材料において、前記酸化防止剤として、ヒンダードフェノール構造を有しないフェノール系の酸化防止剤を配合してなる電気絶縁材料、具体的には、前記酸化防止剤として、セミヒンダードフェノール系の酸化防止剤及び/またはレスヒンダードフェノール系の酸化防止剤を配合してなる電気絶縁材料は、周波数による影響を受けず、3〜18GHzの各周波数における誘電正接(tanδ)が安定していることが確認された。
前記ポリエチレンとしては、宇部丸善ポリエチレン社の低密度ポリエチレンB028(密度が、0.928であり、190℃、2.16kgfにおけるメルトフローレート(以下、MFRという)が、0.4である)が挙げられる。
前記ポリプロピレンとしては、プライムポリプロ社のE−100GPL(密度が、0.90であり、230℃、2.16kgfにおけるMFRが、0.9である)が挙げられる。
前記エチレン−プロピレン重合体としては、日本ポリプロ社のFB3312(密度が、0.9であり、230℃、2.16kgfにおけるMFRが、3である)が挙げられる。
実施例1〜8、参考例1〜20及び比較例1〜21の電気絶縁材料は、宇部丸善ポリエチレン社の低密度ポリエチレン(B028)に、酸化防止剤を配合してなる電気絶縁材料である。
表1に、前記電気絶縁材料の組成及び高周波数帯域における誘電特性の評価を示す。
一方、比較例1〜21は、前記低密度ポリエチレン100重量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社のイルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス3114、イルガノックス1330)を配合してなる電気絶縁材料である。
なお、各実施例及び各比較例の電気絶縁材料に配合される各酸化防止剤の化学構造式について、図1示す。
JIS R1641に従い、直径φ180mm、厚さ1mmのシート状の電気絶縁材料について、測定周波数3.0GHzにて測定した誘電正接(tanδ)の値を、周波数3GHzにおける誘電特性の評価結果とした。
同様にして、JIS R1641に従い、直径φ85mm、厚さ1mmのシート状の電気絶縁材料について、測定周波数5.8GHzにて測定した誘電正接(tanδ)の値を、周波数6GHzにおける誘電特性の評価結果とした。また、同様にして、JIS R1641に従い、直径φ50mm、厚さ1mmのシート状の電気絶縁材料について、測定周波数11.3GHz若しくは16.8GHzにてそれぞれ測定した誘電正接(tanδ)の値を、周波数12GHz若しくは18GHzにおけるそれぞれの誘電特性の評価結果とした。
特に、前記酸化防止剤を0.2重量部以上配合してなる電気絶縁材料(比較例4〜6、比較例9〜11、比較例14〜16及び比較例19〜21)では、周波数が高くなると、誘電正接(tanδ)が大きく上昇することが判る。また、該電気絶縁材料の18GHzにおける誘電正接(tanδ)が、4.0×10−4を超えるなど、5〜18GHzを使用周波数帯域に含む電気絶縁材料として、使用することができない。
表2に、前記同軸ケーブルの絶縁体層に用いられる電気絶縁材料の組成及び高周波数帯域における信号衰退量及び熱老化特性の評価を示す。
なお、前記オレフィン系樹脂として、宇部丸善ポリエチレン社の低密度ポリエチレン(B028)を用いた。また、前記同軸ケーブルの絶縁体層には架橋を施した。
また、前記同軸ケーブルの熱老化特性(酸化劣化防止性能)の評価は、示差走査熱量分析計(Seiko Instruments社製 DSC220)を用い、ASTM D3895に準拠し、測定温度200℃及び220℃における酸化誘導期間(min)をそれぞれ測定することによって行った。具体的には、アルミ製容器(φ5mm)に、3mgの試料(同軸ケーブルの絶縁体層)を入れて、SUSメッシュの蓋をかぶせ、前記示差走査熱量分析計にセットした後、窒素雰囲気下で昇温(+20℃/min)し、測定温度(200℃,220℃)で5分間保持する。その後、前記雰囲気(窒素雰囲気)を空気雰囲気に切り替えることにより、空気雰囲気下で前記試料に発熱反応が生じるまでの時間(酸化劣化開始時間)を測定し、酸化誘導期間(min)とした。なお、ASTM D3895による測定方法では、通常、酸素雰囲気下で発熱反応が生じるまでの時間を測定するが、この実施例では、空気雰囲気下で発熱反応が生じる時間を、酸化誘導期間として測定した。
また、セミヒンダードフェノール系の酸化防止剤やレスヒンダードフェノール系の酸化防止剤の添加量が、3重量部以上である電気絶縁材料(参考例13〜20の電気絶縁材料に相当)を絶縁体層として用いた参考例33〜40の同軸ケーブルでは、18GHzにおける信号減衰量が4.0dB/mを超え、電気特性が低下する。
例えば、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を0.003重量部配合してなる電気絶縁材料を絶縁体層として用いた比較例23、28、33及び38の同軸ケーブルは、200℃及び220℃における酸化誘導期間が短く、熱老化特性が劣る。
また例えば、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を2重量部配合してなる電気絶縁材料を絶縁体層として用いた比較例26、31、36及び41の同軸ケーブルは、18GHzにおける信号減衰量が5.0dB/mを超え、5〜18GHzが使用周波数帯域に含まれる高周波用の通信ケーブルとして、実用上問題となる。
また、表3に示した電気絶縁材料の評価、即ち、各周波数(3GHz、6GHz、12GHz、18GHz)における誘電正接(tanδ)の測定結果は、表1で行った評価方法と全く同様に測定された結果である。
そして、特に前記酸化防止剤が0.005〜2重量部の範囲で配合された電気絶縁材料(実施例17〜20及び参考例41〜42)は、3〜18GHzの高周波数帯域において、前記誘電正接(tanδ)が2.4×10−4以下と優れたものであった。
なお、酸化防止剤(アデカスタブAO−70並びにアデカスタブAO−40)の添加量が、0.003重量部以下である電気絶縁材料を絶縁体層として用いた高周波同軸ケーブル(参考例53〜56)では、減衰量は4.0dB/m以下であるが、200℃及び220℃における酸化誘導期間が若干短くなることが判った。また、酸化防止剤(アデカスタブAO−70並びにアデカスタブAO−40)の添加量が、3重量部以上である電気絶縁材料を絶縁体層として用いた高周波同軸ケーブル(参考例57〜60)では、酸化誘導期間は2minを十分クリアするが、18GHzにおける信号減衰量が4.0dB/mを若干超えることが判った。
Claims (8)
- 5〜18GHzが使用周波数帯域に含まれる電気絶縁材料であって、オレフィン系樹脂100重量部に対して、酸化防止剤としてヒンダードフェノール構造を有しないフェノール系の酸化防止剤のみを0.2〜2重量部配合してなることを特徴とする電気絶縁材料。
- セミヒンダードフェノール系の酸化防止剤が、3,9−ビス[2−{3−(3−ターシ
ャリーブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2、4−8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、及びエチレンビス(オキシエチエレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、「トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート」から選ばれる1種であることを特徴とする請求項2に記載の電気絶縁材料。 - レスヒンダードフェノール系の酸化防止剤が、4,4´−チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチル)フェノール、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ブタン、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリーブチル)フェノールから選ばれる1種であることを特徴とする請求項2に記載の電気絶縁材料。
- オレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン−プロピレン共重合体の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気絶縁材料。
- 化学架橋または電子線架橋を施したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電気絶縁材料。
- 請求項1から6のいずれかに記載の電気絶縁材料を、絶縁体層として用いたことを特徴とする通信ケーブル。
- 同軸ケーブルであることを特徴とする請求項7に記載の通信ケーブル。
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