JP5322056B2 - 水中油型乳化組成物 - Google Patents

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Description

本発明は還元性を有する水中油型乳化組成物に関し、特に熱処理加工時の熱で還元剤成分が揮散することがなく、かつ、潤滑性能を有し、さらには使用性の向上に関する。
金属の熱処理加工、焼鈍等の熱処理は金属固有の特性を得るために重要な工程である。とりわけ、水での急冷却方法は大気中や水中に溶存する酸素による酸化が著しく、表面は酸化膜が生成する。この酸化膜はスケールとなって資源の活用が充分にできない。一方で、この酸化膜は二次工程での加工やメッキ不良等への影響あるいは外観上の観点から商品価値が落ちる等の理由から、酸化を防止する方法として、物理的側面では酸素の遮断装置が、化学的側面では油中・無機・有機酸・真空・不活性ガス・水等で行われる。特に化学的処理でのスケール除去には、金属を溶解させる無機酸や有機酸が使用され、また、高温下での還元反応を利用したものは、アルコール・グリコール・アルデヒド・ケトン・アミン類等が用いられ、これら化学的処理剤は、一般に、「スケール除去剤」といい、還元反応を伴う蒸気圧の高いアルコール類等の還元剤を含むスケール除去剤が知られている。
連続鋳造圧延銅荒引線の製造では、酸素を遮断する冷却装置の改善と冷却水にスケール除去剤を使用すれば酸化することなく金属光沢のある製品を得る装置の工夫がなされている。すなわち、大気に触れることなく素早く還元剤を含む冷却水に接触させることで表面酸化を防止する冷却装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、連続鋳造圧延銅荒引線の製造において、高温の銅線をアルコール等の還元剤を含む水溶液と接触させて表面のスケールを除去する方法で、大気中に曝す事無く還元剤を含む冷却ゾーンを通過させて、連続してスケールを除去することが出来る冷却システムである。従来の無機酸でのスケール除去法に比較し、格段に効率化が図れるとしている。また、還元剤としては、アルコールやグリコール類が好ましい(例えば、特許文献2参照)。
また、熱処理加工において、高温の銅線をアルコール等の還元剤を含む水溶液と接触させて表面のスケールを除去する方法であるが、この還元反応効率を高める方法として、超音波を使用することにより還元反応が速くなる結果、優れた品質の製品が得られるとしている(例えば、特許文献3参照)。
特開昭52−156133号公報 特開昭57−73189号公報 特開2003−533591号公報
オレオサイエンス(第5巻、第10号、2005)
従来より、水系の熱処理加工において冷却水に添加される還元剤には蒸気圧の高いアルコール類が使用されているが、揮発が著しく環境保全や濃度管理上に問題がある。一方、グリコール等は揮発や環境保全に対する問題はないが還元効果が充分に得られない等の欠点がある。
したがって、上記に示したように従来の還元剤はいずれも効果や安全面において問題があり満足のいくものではなかった。
また、非鉄金属の線の焼鈍方法には、電極間に置かれた導体に通電すると発熱する原理を利用して焼鈍する連続通電焼鈍機があるが、焼鈍温度は連続鋳造圧延銅荒引線の製造と同様に600から650℃付近であり熱的条件は類似する。冷却水中には、水単独でも良いが、導体の変色防止、システムの潤滑等も必要とするため、一般に、防錆剤や油性剤等を含めた水中油型乳化組成物が使用されているが、連続通電焼鈍機は酸化を防ぐために蒸気や不活性ガスにより酸素を遮断しているが、水中油型乳化組成物中に還元剤を添加した例は見当たらない。
これらは、単に表面酸化を防止する方法としてアルコール、グリコール等の還元剤を熱処理加工または焼鈍システムに添加するだけのものであり、とりわけ、潤滑性を有し、且つ蒸気圧が低く安全性を配慮した水溶性の還元剤の検討、さらには、油溶性の還元剤を水中油型乳化組成物の油相中に含有させて潤滑性と還元効果の両方を満たした水中油型乳化組成物についての検討は一切なされていない。
前記従来の銅系熱間圧延で使用される金属酸化物のスケール除去剤としてはイソプロピルアルコールが代表例であるが、還元効果は良好なるも潤滑性能は全くない。さらに、蒸気圧の高い成分は揮発ロスや濃度管理が難しく、また、使用安全性に問題がある。
本発明は、上記従来技術の課題を鑑み行われたもので、優れた潤滑性と成分揮発のない還元性の両方の機能を有する、極めて安全性の高い水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、基油成分及び界面活性剤成分及び水成分を含む水中油型乳化組成物であって、金属の熱処理加工時に高温下で金属表面に接触させる還元剤で、前記水中油型乳化組成物の油相中に高級アルコールの成分及び/又は高級脂肪酸の成分が含まれ、かつ、前記水中油型乳化組成物の水相中にグリコールエーテルの成分が含まれ、かつ、前記グリコールエーテルが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素数は4以下)であることを特徴とする水中油型乳化組成物を提供する。
前記基油成分及び界面活性剤成分及び水成分の3成分で構成される水中油型乳化組成物の水相中に、前記グリコールエーテル成分が含まれることが好ましい。
前記高級アルコール成分が、前記水中油型乳化組成物の油相中に含まれることが好ましい。また、前記高級脂肪酸成分が、前記水中油型乳化組成物の油相中に含まれることが好ましい。
前記グリコールエーテル成分が、前記水中油型乳化組成物の水相中に含まれることが好ましく、かつ、前記高級アルコール成分および/または前記高級脂肪酸成分が水中油型乳化組成物の油相中に含まれることが更に好ましい。
前記グリコールエーテル成分が、1のヒドロキシ基及び、1又は複数のエーテル結合を有することが好ましい。さらに、グリコールの1のヒドロキシ基とエーテル結合する炭化水素基が、脂肪族、アリル基、フェニル基からなる群から選ばれることが好ましく、前記グリコールエーテルの炭素数が6以上であることが望ましい。
また、前記グリコールエーテル成分のグリコールが、1モル以上結合するポリグリコールエーテル構造であることが好ましい。さらに、前記グリコールエーテル成分のグリコールの炭素数が異なるポリグリコールが二種以上結合するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアルキルエーテルであることが好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアルキルエーテルとして、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルが挙げられる。
本発明の水中油型乳化組成物は、従来のスケール除去剤と比較し還元性能が優れ、かつ、潤滑性を有するための被加工材の摩耗を軽減し、かつ、成分が環境負荷とならず生分解性に優れ、熱処理加工時の使用安全性が高い。上記高級アルコール成分、高級脂肪酸成分が油溶性で、水中油型乳化組成物の油相中に含有させて還元効果が発揮されると同時に潤滑性能をも有するものである。以下、従来の還元剤及び本発明の還元剤を総称して還元剤(R)で表す。特に区別するときには、本発明の還元剤は還元剤(RA)と表す。
本発明の還元剤(RA)は、水溶性還元剤と油溶性還元剤とに分類される。本発明の水溶性還元剤は水溶性還元剤(RW)と表し、本発明の油溶性還元剤は油溶性還元剤(RO)と表す。水溶性還元剤(RW)は単に基油成分及び界面活性剤成分及び水成分の3成分で構成される基本的な水中油型乳化組成物(RB)の水相側に添加される。一方、油溶性還元剤(RO)は水中油型乳化組成物(RB)の油相側に添加される。この場合の水中油型乳化組成物は、油溶性還元剤(RO)を含む水中油型乳化組成物(RBO)と区別して表す。また、本油溶性還元剤(RO)は分子中にヒドロキシ基あるいはカルボキシル基等を有する化合物が代表例で、その他、分子中に結合する官能基が還元性を示すものであれば、何らこれに限定されない。水溶性還元剤(RW)の添加方法は、水中油型乳化組成物の水成分中に含める場合の外、熱処理加工の冷却水中に単独で直接添加し得る。さらに、前記水中油型乳化組成物(RB)の所望の成分有効濃度(AI)とするための稀釈水と一緒に含めても構わない。ここで、成分有効濃度(AI)とは、水中油型乳化組成物(RB)の基油成分(BP)、界面活性剤成分(E)、油溶性還元成分(RO)の質量和を、全成分である基油成分(BP)、界面活性剤成分(E)、油溶性還元成分(RO)、水成分(W)の質量和で除した比(質量%=AI)をいう。
本発明は、3つの態様に大別される。第1の態様は、基油成分及び界面活性剤成分及び水成分を混合することで得られる水中油型乳化組成物(RB)の水相中に、グリコールエーテル成分(RG)を含むことを特徴とする水中油型乳化組成物である。
本発明の第2の態様は、油溶性還元剤成分(RO)を、水中油型乳化組成物(RB)の油相内に含むことを特徴とする水中油型乳化組成物(RBO)である。
本発明の第3の態様は、水中油型乳化組成物(RB)の油相内に油溶性還元剤(RO)を含む水中油型乳化組成物(RBO)と、水溶性還元剤(RW)のグリコールエーテル成分(RG)との混合状態(RBO+RW)であることを特徴とする水中油型乳化組成物である。
例えば、前記高級アルコール類(ROA)としては、n−ヘプチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、ベンジルアルコール等の炭素数が12以下のものが代表例で、末端又はアルキル鎖中のヒドロキシ基が一つであれば、これに限定されない。
また、前記高級脂肪酸(ROF)としては、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、ラウリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、p−エチル安息香酸等の炭素数が12以下のものが代表例で、末端又はアルキル鎖中にカルボキシル基が結合するものであれば、これに限定されない。
さらに、末端又はアルキル鎖中のヒドロキシ基が一つ有する高級アルコール類(ROA)のアルキル鎖中にカルボキシル基を一つ以上有するもの、また、カルボキシル基を一つ以上有する高級脂肪酸(ROF)のアルキル鎖中にヒドロキシ基が一つ有するものであっても良い。
前記水中油型乳化組成物(RB)の界面活性剤成分(E)について詳述するが、成分中に記載するポリオキシエチレンとは、エチレンオキシドの付加モル数(n)が3以上のもので、特に断りのない限り、以下ポリオキシエチレンを(EO)nで表す。また、アルキルとは、アルキル鎖R=8から24のもので、特に断りのない限り、以下これらを(Cn)で表す。例えば、陰イオン型グループとしては、高級脂肪酸/ポリオキシエチレン(n=3以上のもの)・アルキル(Cn)・エーテルカルボン酸/ヒドロキシ脂肪酸の2量体以上/α−オレフィン(Cn)・硫酸エステル/α−スルホ高級脂肪酸(Cn)・メチルエステル/石油(分子量が400から1000)スルホネート、サルフェート/高級脂肪酸(Cn)・メチルタウリン酸/高級脂肪酸(Cn)・アミドエーテル硫酸エステル/高級脂肪酸(Cn)・硫酸エステル及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重金属塩、モノ、ジ、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。また、例えば、陽イオン型グループとしては、アルキル(Cn)・第四級アンモニウム塩等が挙げられる。また、例えば、両性型グループとしては、ヒドロキシアルキル−α又は、β位−アラニン型およびそのアルカリ金属塩、重金属塩、及びモノ、ジ、トリエタノールアミン塩、及びそれらのアルキル鎖にエチレンオキシド(EO)nの1mol以上が結合したもの/n−ヒドロキシアルキル−n−ポリオキシエチレン(EO)nアミノエチルアルキル(Cn)カルボン酸/アルキルカルボキシベタイン型・四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム塩/レシチン等が挙げられる。
また、例えば、非イオン型グループとしては、
ポリオキシエチレン(EO)n高級脂肪酸(Cn)エステル/高級脂肪酸(Cn)・モノ、ジ、トリエタノールアミド/ポリオキシエチレン(EO)n高級アルコール(Cn)エーテル/ポリオキシエチレン(EO)n高級アミン(Cn)/ポリオキシエチレン(EO)n高級脂肪酸(Cn)アミド/ポリオキシエチレン(EO)n・ポリオキシプロピレンブロック共重合物(プルロニック系)/アルキル鎖(Cn)脂肪酸・プルロニックエーテル及びエステル/ポリオキシエチレン(EO)n高級脂肪酸(Cn)・ショ糖エステル等が挙げられる。上述したものが代表的なもので、本明細書においては、特に断りのない場合は、これらを全て包含するものとする。
更にその成分は環境に配慮した「PoHS(ノルウェー有害化学物質規制法)・GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)・PRTR(化学物質排出把握管理推進法)」に該当しない組成物からなるものが好ましい。
前記界面活性剤成分(E)が、陰イオン型、陽イオン型、両性型、非イオン型のうち1又は複数の種類の界面活性剤成分(E)からなることが好ましい。
前記基油成分(BP)は水に不溶のものを用いることが好ましい。前記基油成分(BP)は、例えば、炭化水素系としては、n−パラフィン/iso−パラフィン/シクロパラフィン/スクワレン等の炭化水素油が挙げられ、動植物油脂としては、モノ、ジ、トリグリセリド/ワックス/レシチン/コレステリン/ステロイド系/トール油/ラノリン等の一つ以上のものが挙げられ、合成油としては、低級(アルキル鎖R=1から8未満)及び高級脂肪酸(Cn)とアルコール(アルキル鎖R=1から24以下)のエステル/ひまし油脂肪酸の誘導体/ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンの共重合物/ポリブテン(粘度:10から1000cStのもの)/α−オレフィン/α−オレフインオリゴマー(粘度:10から1000cStのもの)/高級脂肪酸(Cn)/高級アルコール(Cn)/シリコン油/ポリフェニルエーテル/フッ素油/リシノール酸、ソルビタン、ポリオールエステル等のヒドロキシ基(アルキル鎖R=1から24以下)とアルキル脂肪酸(アルキル鎖R=1から24以下)のエステル及びエーテル/石油(分子量400から1000)スルホネート/アルキルアミン(Cn)と高級脂肪酸(Cn)の塩等が代表例で、さらに、これら炭化水素系、動植物油脂、合成油の化合物の酸化物、重合物(重合油)、縮合物、アミド、ワックス、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、リン酸塩、金属塩、有機金属錯体等となるものも含み、これらから少なくとも一種以上選択するものが好ましいが、これに限定されない。本明細書においては、特に断りのない場合は、これらを全て包含するものとする。また、水中油型乳化組成物(RB)の成分は、PoHS(ノルウェー有害化学物質規制法)・GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)・PRTR(化学物質排出把握管理推進法)に該当しない組成から成ることが好ましい。
前記グリコールエーテル成分(RG)が、分子鎖中に、1のヒドロキシ基及び、1又は複数のエーテル結合を有することが好ましい。また、前記グリコールエーテル成分(RG)のグリコールが、1つ以上のポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレン、さらにはポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとが結合するポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテルであることがより好ましい。
前記グリコールエーテル成分(RG)が、グリコールのヒドロキシ基とエーテル結合する炭化水素基が、脂肪族、アリル基、フェニル基からなる群から選ばれることがより好ましい。
前記グリコールエーテル成分(RG)のグルコールのヒドロキシ基とエーテル結合するアルキル基は、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、へキシル、2−エチルへキシル等が挙げられる。
前記グリコールエーテル成分(RG)として、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル(以下、還元剤(A)とする。)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等が挙げられるがこれに限定されない。
上述した第1〜3の態様の水中油型乳化組成物中には、二次特性向上剤として、消泡剤、金属イオン封鎖剤、防錆剤、酸化防止剤、殺菌剤等をも含めることが好ましく、この他に性能維持や多機能性を必要とするものであればこれに限定されない。例えば、消泡剤としては、低級脂肪酸、高級アルコール、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンのエマルション、アルキレンオキサイド系等、金属イオン封鎖剤としては、エデト酸のアルカリ金属塩及びモノ、ジ、トリエタノールアミン塩、リン酸塩等、防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその塩、高級脂肪酸アミド及びそのアルキロール化硫酸エステル金属塩等、酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、殺菌剤としては、トリアジン系、チアゾール系等が代表例で、さらには、光沢剤、浸透剤、濡れ性向上剤、撥水剤、固体微粒子、油性向上剤、極圧剤等をも含めることも好ましく、本水中油型乳化組成物の安定性を阻害しないものであればこれに限定されない。更にその成分は環境に配慮した「PoHS(ノルウェー有害化学物質規制法)、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)・PRTR(化学物質排出把握管理推進法)」に該当しない組成物からなるものが好ましい。
また、本還元剤(RA)がPRTR・GHS・PoHS等の環境規制物質に非該当の成分構成からなることは当然のことであり、生分解性については、経済協力開発機構(OECD)が定める生分解度(生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demand):(BOD)を化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand):(COD)で除して得られる比(BOD/COD)の値)が60%以上の易生分解性であることが望ましい。
本発明の水中油型乳化組成物によれば、優れた潤滑性と成分揮発のない還元性の両方の機能を有する、極めて安全性の高い水中油型乳化組成物を実現する。
銅系金属を焼鈍する時の冷却液に、安全性の高い本発明の水溶性還元剤(RW)や油溶性還元剤(RO)を使用することで環境保全に必要な装置が不要となる。また、冷却槽標準温度における還元性添加剤の蒸気圧は従来のスケール除去剤と比較し格段に低く、揮発による損失量を軽減出来ることから、還元性能を長期間に亘り安定して維持することができ経済的である。更に、安全性の高い水溶性潤滑剤と本発明の還元剤を組み合わせれば、潤滑性を有する還元剤となり、従来の概念には全く無かった還元・潤滑組成物を提供でき、産業効果は大きい。
EPMAによる各元素のピークと部位の反射電子組成像を表す図である。 FT−IRのピーク面積とEPMAによる酸素濃度との関係を示す図である。 還元試験片表面の顕微鏡写真(×100)とFT−IRのピーク面積を示す図である。
本発明の水中油型乳化組成物は、(1)基油成分及び界面活性剤成分及び水成分を混合することで得られる水中油型乳化組成物(RB)の水相中に水溶性還元剤(RW)を添加した水中油型乳化組成物、(2)油に溶解する油溶性還元剤(RO)を水中油型乳化組成物(RB)の油相中に含ませた水中油型乳化組成物(RBO)、(3)水溶性還元剤(RW)を水相中に含ませ、かつ、水中油型乳化組成物(RB)の油相中に油溶性還元剤(RO)を含ませた水中油型乳化組成物(RBO+RW)の3つのタイプがある。以下、(1)から(3)について詳述する。
本発明の還元剤(RA)の実施例は、水溶性還元剤と油溶性還元剤とに分類し、水溶性還元剤(RW)は熱処理加工の冷却水中に直接添加されるか、水中油型乳化組成物(RB)の水相側に添加される。油溶性還元剤(RO)は水中油型乳化組成物(RB)の油相側に含まれる。
本発明の水溶性還元剤(RW)のグリコールエーテル成分(RG)は下記の1から4の条件を満たすことが好ましい。
すなわち、
1. 分子の末端に1のヒドロキシ基と分子中に1つ以上のエーテル基を有すること。
2. エチレングリコール又はプロピレングリコールと結合するアルキル基が、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、へキシル、2−エチルへキシルの脂肪酸、二重結合を有するアリル及びフェニル等の各基と結合する、エチレングリコールエーテル又はプロピレングリコールエーテル構造からなること。
3. エチレングリコールおよび/又はプロピレングリコールが複数結合して複数のエーテル結合を有すること。
4. 上記1から3で構成される成分の全炭素数が6以上であること。
前記グリコールエーテル成分(RG)として、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル(以下、成分(A)とする。)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等が代表例として挙げられるが、上記1から4の条件を満たすものであればこれに限定されない。
一方、油溶性還元剤(RO)は後述する水中油型乳化組成物(RB)の油相中に含める。油溶性還元剤(RO)の種類としては、高級アルコール(ROA)及び高級脂肪酸(ROF)が挙げられ、高級アルコール類(ROA)としては、n−ヘプチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、ベンジルアルコール等の炭素数が12以下のものが代表例で、末端又はアルキル鎖中のヒドロキシ基が一つであれば、これに限定されない。
また、高級脂肪酸(ROF)としては、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、ラウリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、p−エチル安息香酸等の炭素数が12以下のものが代表例で、末端又はアルキル鎖中にカルボキシル基が結合するものであれば、これに限定されない。
さらに、末端又はアルキル鎖中のヒドロキシ基が一つの高級アルコール類(ROA)のアルキル鎖中にカルボキシル基を一つ以上有するもの、また、カルボキシル基を一つ以上有する高級脂肪酸(ROF)のアルキル鎖中にヒドロキシ基が一つ有するものであっても良い。
また、本還元剤(RA)の多機能性を目的とする二次特性向上剤は、例えば、防錆剤、殺菌剤、光沢剤、浸透剤、濡れ性向上剤、撥水剤、酸化防止剤、固体微粒子、油性向上剤、極圧剤、消泡剤等を含めることで、液の安定性、使用性、長寿命化が図れるものであればこれに限定されない。
さらに、後述する水中油型乳化組成物(RB)中に本還元剤(RA)を含めれば、還元効果を目的とするシステムでの装置等の摩擦・摩耗を防止することが出来、従来に無い還元・潤滑剤として期待される。また、それらの構成成分がPRTR・GHS・PoHS等の環境規制物質に非該当の成分構成からなることが好ましい。
[評価方法]
実施例及び比較例の評価は、以下の方法で測定した。
(酸素濃度測定)
酸素濃度の測定については鋭意検討の結果、下記の分析方法で行った。
(1)EPMA:ZAF補正計算から求められる元素の質量濃度(Mass%)測定。
(2)FT-IR(赤外分光光度計):反射吸収(Reflection absorption:RA)法によるピーク面積。
(模擬的還元試験)
還元剤(R)を実際の連続鋳造圧延銅荒引線の製造工程の冷却水に添加して検証するのは大掛かりで難しいことから、実機の熔融炉を模擬的に再現すべく、電気炉に窒素ガスを流しながら温度を700℃に保持した。銅試験片のサイズは、厚さ:2mm×幅:10mm×長さ:20mmの平板とし、それをルツボの中に入れて温度700℃に保たれた電気炉に入れ銅試験片が既定温度の700℃になるまで加熱した。還元試験は、電気炉からルツボを取り出し、所望濃度の各種還元剤(液温:40℃・液量:200ml)中に銅試験片を直ちに入れた。銅試験片は還元剤中に入れると核沸騰が起こるが次第に穏やかな膜沸騰となった時点で銅試験片を取り出し、常温になった銅試験片を乾燥させて後述する酸化濃度の測定用にした。以下、この方法を「還元試験」と言い、この試験での還元剤の性能を「還元効果」という。
模擬的還元試験に供する「標準試験片」の作製
先ず、電気炉に入れる前の「標準試験片」として金属光沢のある金属銅を次の工程順で作製した。
1 前述の銅試験片(厚さ:2mm×幅:10mm×長さ:20mm)をクレンザーで均一によく磨く
2 水道水で充分に洗浄エタノールと水を1:1に混合した液で洗浄
3 エタノールとエーテルを1:1に混合した液で洗浄
4 エーテル単独の洗浄
の順(各工程は5分間超音波洗浄)とし、これを「基準試料片」として各還元剤で還元試験を行った後、EPMA及びFT−IR測定用の「基準試料片」に供することにする。試料名には処理した還元剤の種類を付して区別する。
(EPMAによる各元素の濃度測定)
還元効果を評価するにあたり、酸素量の定量が必要である。そこで、基本となる水(W)と、従来より使用されているプロピレングリコール(PG):1%液及び、イソプロピルアルコール(IPA):1%液の3点について還元試験を行い、EPMAで各試験片の酸素(O)と銅(Cu)の濃度(Mass%)の結果と、外観の色を併せて表1に示す。図1は、EPMAによる各元素のピークと部位の反射電子組成像を表す図である。
表1に示すように、還元効果が全く無い水(W)の酸素濃度:17.17Mass%、プロピレングリコール(PG):13.30Mass%、最も還元効果を有するイソプロピルアルコール(IPA):0.71Mass%の順に酸素濃度が減少した。一方、銅の濃度は水:82.04Mass%、プロピレングリコール:85.60Mass%、イソプロピルアルコール:98.32Mass%の順に増大した。これらの結果から、外観が示す色(黒色→金属光沢)は酸素(O)濃度の順に従っており、また、酸素(O)濃度と銅(Cu)濃度においては逆相関関係にあり、外観色と酸化濃度において一致が見られた。
(FT−IRによる金属種の波数の特定)
次に、外観色がFT−IRの反射吸収と関連して酸素濃度を定量化することが出来るかを検討した。先ず、酸化銅(1価及び2価を含める)の吸収帯の波数を特定するために酸化物の粉末(一級試薬)について調べた結果、各元素の酸化物の波数が原子量と良く相関(R2=−0.9982)した検量線が得られ、酸化銅(1価及び2価を含める)の吸収に基づく波数が600cm−1付近であることを同定した。原子量と波数(cm−1)との関係を表2に示す。
(FT−IRのピーク面積による酸素濃度の測定)
上記の結果から、波数600cm−1付近が酸化銅に基づく波数域であることが特定できた。もし、還元試験での試験片の外観色に従って、この波数域での吸光度(Abs)に反映して検量線が得られれば、FT−IRでの酸素濃度測定が可能である。そこで、精度よく定量化するために詳細に解析を行った結果、波数が550から680cm−1の範囲で得られるピーク面積が酸素濃度値の特定に適切であることが判った。(FT−IRのピーク面積とは、特定波数の吸光度(Abs)と、特定波数(cm−1)のベースラインとの間で計算される値(Abs・cm−1)の波数範囲での積分値である。)
また、FT−IRの反射吸収法でのピーク面積値は測定部位により誤差が懸念されたため、試験片6箇所測定したピーク面積の平均値から求めた各試料の標準偏差は、いずれも1以下で正規分布曲線も散らばりなくシャープであったことから、FT−IRのピーク面積値の信頼度が高いことを確認した。以後、還元効果は試験片6箇所測定したFT−IRのピーク面積の平均値で表す。
さらに、前記EPMAでの酸素濃度とFT−IRでのピーク面積とが相関すれば、簡易な酸素濃度測定法として活用できる。そこで、試料はEPMAと同様の比較例1:水(W)、比較例2:プロピレングリコール(PG):1%液、比較例3:イソプロピルアルコール(IPA):1%液の3点について還元試験を行い、前述したFT−IRの波数550から680cm−1の範囲で得られた各試料のピーク面積を求めた。
比較例1:水(W)・(黒色):35.2
比較例2:プロピレングリコール(PG)・(赤褐色):23.9
比較例3:イソプロピルアルコール(IPA)・(金属光沢):3.4
の順であった。
ここで興味深いことは、プロピレングリコール(PG)とイソプロピルアルコール(IPA)の分子量はほぼ同じであるにも拘らず、還元効果は約8倍の違いがあった。この原因としてヒドロキシ基(ヒドロキシ基)がイソプロピルアルコール(IPA)は1つでプロピレングリコール(PG)は2つであり、ヒドロキシ基の数に関係するものと考えられる。
[比較実験結果]
(従来成分の還元効果確認)
従来使用されている還元剤の還元効果を調べるための濃度調整は下記の通りである。
比較例1:水(W)単独。
比較例2:水(W)成分:99%中にプロピレングリコール(PG):1%添加した。
比較例3:水(W)成分:99%中にイソプロピルアルコール(IPA):1%添加した。
(比較例1〜3:各種成分の測定法の違いによる酸素濃度測定)
試料別の、外観、EPMAの酸素濃度(Mass%)及び、FT−IRのピーク面積の結果を表3に示した。表3は、EPMAとFT−IRとの測定対比表である。また、図2は、FT−IRのピーク面積とEPMAによる酸素濃度との関係を示す図である。
(各種成分の測定法の違いによる酸素濃度測定)
各成分でのFT−IRの波数550から680cm−1の範囲で得られる酸化銅のピーク面積と、前述のEPMAの酸素濃度(Mass%)との関係を調べたところ、相関係数:R=0.988と極めて高い相関が得られ、FT−IRのピーク面積はEPMAの酸素濃度に対応し定量可能であることが確認されたことから、以後、還元効果の評価は、FT−IRのピーク面積で行うことにする。
(曾田式振子摩擦試験機による潤滑性能測定)
水中油型乳化組成物の潤滑性能を調べるため、曾田式振子摩擦試験機で摩擦係数を測定した。
[測定条件]
測定温度:20℃
荷重:2.94N(ヘルツ圧:1090N/mm
(連続通電焼鈍機での還元効果及び潤滑性能の評価)
還元剤(R)が連続通電焼鈍機(連続通電焼鈍機とは、電極間に置かれた導体に通電すると発熱する原理を利用した焼鈍方法で、電線引抜加工の直後に熱処理加工を連続して行う装置のことである)の冷却液に添加した場合の還元効果を調べた。この通電焼鈍機は、連続鋳造圧延銅荒引線と同様に焼鈍温度は600から650℃付近で行われるため、小規模ながら類似した還元効果確認として充分活用でると判断し、以後、実施例については、全て連続通電焼鈍機で還元効果及び潤滑性能を評価した。
還元効果をFT−IRで測定する場所は、導体の通過距離が1000mに達した時点で停止させた所とし、還元効果は、導体表面のFT−IRのピーク面積から評価した。また、潤滑性については、連続通電焼鈍機からボビンに巻き取られる線に滑りがないと巻き取られた線は稠密充填とならずに膨らみ線重量(線積率)は減少し規定重量にならない。この現象は摩擦係数と対応する知見がある。そこで、始動から20分後に停止させてボビンに巻き取られた時の線重量(約90Kg前後)から潤滑性能を評価することにした。潤滑性能を比較するに当たり、還元剤を含まない単純系の水中油型乳化組成物(RB)の線重量を標準とし、その値を各試料(実施例1〜4)の線重量で除して得られる比を線積率(%)として潤滑性能の指標とした。
さらに、この巻き取りの調整には張力調整用の装置であるダンサー(バネ式)で行うが、潤滑性の優劣に連動してダンサーが上下に振動する。そこで、張力調整用ダンサーの動きを観察した。(表7参照)
連続通電焼鈍機での試験条件は下記の通りである。
材質:電気銅(JIS:H2121)
線径:2.6〜0.9mmφ
速度:800m/min
雰囲気:窒素置換
液温度:40℃
通電電流:DC200A
(生分解性について)
また、後述する実施例6の潤滑剤組成物の生分解性の評価については、簡便法として国連にて取り組んでいる「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」に関連して、経済協力開発機構(OECD)が定める測定方法を用いて評価した。本試験法は、化学構造が判っているものや他に分解性に関するデータが得られない場合にのみ、生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demand):(BOD)を化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand):(COD)で除して得られる比率(BOD/COD)の値を「生分解度」として生分解性の難易度を評価できるもので、「生分解度」(BOD/COD)の値が60%以上あれば易生分解性が認められるためこれに準じて測定した(非特許文献1参照)。
[試験例−1]水溶性還元剤(RW)と従来還元剤との比較試験
まず、水溶性還元剤(RW)の還元効果を調べるために、ヒドロキシ基が1の還元剤(A):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル:1%、水(W)成分:99%の有効成分濃度(AI)が1%の水溶液(還元剤(A)1.0%液)を作製し従来の還元剤(比較例1〜3)と比較した。各種比較成分濃度も同様に1%である。各成分による試料の外観とFT−IRのピーク面積を調べたところ、イソプロピルアルコール(IPA)<還元剤(A)<プロピレングリコール(PG)<エチレングリコール(EG)<水の順でイソプロピルアルコール(IPA)が最も小さく光沢のある金属銅が得られた。還元試験の結果、試料(A)(還元剤:AI=1%液)のFT−IRのピーク面積は4.3と良好な結果を示した。プロピレングリコール(PG)に類似するエチレングルコール(EG)も入れたこれ等の結果においても分子量に関係なく、ヒドロキシ基が1つであることが好ましい。
比較試験の結果と各物質の沸点を表4に示す。また、図3は、還元試験片表面の顕微鏡写真(×100)とFT−IRのピーク面積を示す図である。
表4において、
沸点値は、1atm(1013hPa)の条件下である。
A:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル
Aの一般式:R−O−(CHCHO)m−(CHCH(CH)O)n−H
である。
一方、水溶性還元剤(RW)にはヒドロキシ基を多数有するショ糖・ソルビット・ポリビニルアルコールの多価アルコール類についても同様の還元試験を行い表面が金属銅の光沢が得られるかを調べたが、水と同様に全く還元効果が得られなかったことから、還元効果のある還元剤(R)としては、分子中および/または末端に結合するヒドロキシ基が一つであることが好ましい。
[試験例−2]本水溶性還元剤(RW)の還元効果発揮濃度について
[試験例−1]の還元剤(A)の濃度が還元効果に与える影響について検討するために、還元剤(A):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルの濃度(0.1%、1.0%、10.0%)を変えて調べた。
1)還元剤(A)0.1%液の調製:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル(A)0.1%に、水(W)成分:99.9%を加えて、有効成分濃度が0.1%の水溶液を作製した。
同様に、2)還元剤(A)10%液の調製:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル:10%に、水(W)成分:90.0%を加えて、有効成分濃度が10%の水溶液を作製した。
上記1)、2)で作製した還元剤(A)0.1%液、10%液及び[試験例−1]で作製した還元剤(A)1.0%液についての還元試験を行った。
還元試験の結果、FT−IRのピーク面積は還元剤(A)0.1%液の場合5.8、還元剤(A)1.0%液の場合4.3、還元剤(A)10%液の場合3.8となり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルが0.1%以上あれば、FT−IRのピーク面積が4〜5付近で良好なことから、水溶性還元剤(RW)の添加濃度は0.1%以上であれば還元効果を発揮し、1.0%もあれば充分であることを確認した。また、FT−IRのピーク面積が6付近から標準偏差が1を超えて正規分布曲線は裾広がりを見せ始め、還元効果が安定しないことを意味することから、FT−IRのピーク面積が6以下であることが好ましいことも判った。
従って、以下の実施例での水溶性還元剤(RW)の添加濃度は1.0%で行うことにした。
[試験例−3]油溶性還元剤単独での還元効果確認
一般に、金属加工では加工歪みを取るために熱処理(加熱若しくは冷却)を行う。本還元剤(A)は、水冷却方法において起こる酸化物(スケール)を除去する還元剤(R)を主とするものである。
この冷却方法には徐冷と急冷があるが、前者には油が、後者には水を使用するのが通例であるが、油単独での還元効果を検討した例はない。そこで、前者の油について菜種油(BP)と高級アルコール(RA)の1−オクタノールについて前述同様の還元試験を行ったが、菜種油(BP)のFT−IRのピーク面積は24.2で、高級アルコール(RA)の1−オクタノール(A8)のFT−IRのピーク面積は22.5と、油単独での還元効果は得られなかった。しかし、油溶性の高級脂肪酸を水中油型乳化組成物(RB)とすることでカルボキシル基は水相側に配向して油溶性の高級脂肪酸であっても弱酸性を示すという発明者の知見に基づき、油中では還元効果が得られなかった油溶性還元剤(RO)を水中油型乳化組成物の油相中に含ませた場合、ヒドロキシ基は水相側に配向して還元効果を有する可能性が示唆された。そこで、油溶性還元剤(RO)に界面活性剤を加えて水中油型乳化組成物(RBO)とし、水に分散させた場合に還元効果が得られるかを検討した。
[試験例−4]油溶性還元剤(ROA、ROF)を界面活性剤(E)で可溶化した基油成分を含まない水中油型乳化組成物の還元効果確認
[試験例−3]からも判るように、菜種油や油溶性成分単独では全く還元効果が無いことが理解される。そこで、官能基を持つ油溶性成分を界面活性剤成分(E)で分散して水中油型乳化組成物にした場合、何らかの作用で還元効果が得られるものと考えられた。そこで、ヒドロキシ基を有する高級アルコールの還元効果について検討した。同時に、鎖長の還元効果に与える影響についても行い、高級アルコール(ROA)には1−オクタノールの水中油型乳化組成物(A8)、n−ドデシルアルコールの水中油型乳化組成物(A12)、オレイルアルコールの水中油型乳化組成物(A18)をそれぞれ作製し還元効果を調べた。
また、[試験例−2]で試験した水溶性還元剤(RW)の還元効果発揮濃度が1.0%であったことから、油溶性還元剤(RO)の還元試験も同様に添加量を1.0%で行うことにした。
試験例4−1)(A8)の作製方法と還元試験
高級アルコール(ROA)の1−オクタノール:1%と界面活性剤成分(E)のポリオキシエチレン(12mol)・オレイルアルコールエーテル非イオン界面活性剤:1%を良く混合した後、水成分(W):98%を徐々に加えて、成分有効濃度(AI):2%の1−オクタノール水中油型乳化組成物(A8)を得た。還元剤(RA)としての濃度は前記還元試験と同様に1%である。前記還元試験を行った結果、FT−IRのピーク面積は5.2と、[試験例−2]の目標値6以下を達成した。
試験例4−2)(A12)の作製方法と還元試験
n−ドデシルアルコール:1%とポリオキシエチレン(12mol)・オレイルアルコールエーテル型非イオン界面活性剤(E):1%を良く混合した後、水成分(W):98%を徐々に加えて成分有効濃度(AI)は2%のn−ドデシルアルコール水中油型乳化組成物(A12)を得た。還元剤(RA)としての濃度は前記還元試験と同様に1%である。前記還元試験を行った結果、還元試験でのFT−IRのピーク面積は、(A12)では6.3と[試験例−2]の目標値6を若干上回るが良好な結果が得られた。
試験例4−3)(A18)の作製方法と還元試験
オレイルアルコール:1%とポリオキシエチレン(12mol)・オレイルアルコールエーテル型非イオン界面活性剤(E):1%を良く混合した後、水成分(W):98%を徐々に加えて成分有効濃度(AI)は2%のオレイルアルコール水中油型乳化組成物(A18)を得た。還元剤(RA)としての濃度は前記還元試験と同様に1%である。前記還元試験を行った結果、還元試験でのFT−IRのピーク面積は、は20.1と還元効果は認められなかった。
従って、高級アルコールの水中油型乳化組成物(ROA)は、鎖長が12以下が好ましいことが分かった。
[試験例−5]高級脂肪酸(ROF)を含む油溶性還元剤(RO)を含有する水中油型乳化組成物
また、官能基がカルボキシル基を持つ油溶性成分の高級脂肪酸についても、同様に界面活性剤成分(E)で分散して水中油型乳化組成物にした場合の還元効果の有無について検討した。同時に、鎖長が還元効果に与える影響についても行い、高級脂肪酸(ROF)にはオクタン酸の水中油型乳化組成物(F8)、ドデカン酸の水中油型乳化組成物(F12)をそれぞれ作製し還元効果を調べた。
試験例5−1)(F8)の作製方法と還元試験
水中油型乳化組成物(F8):オクタン酸1%、ポリオキシエチレン(12mol)・オレイルアルコールエーテル型非イオン界面活性剤(E)1%、水成分(W):98%:成分有効濃度(AI):2%の水中油型乳化組成物(F8)を得た。この時の還元剤の濃度は1%である。前記同様に還元試験を行った結果、還元試験でのFT−IRのピーク面積は12.8で目標値6の約倍で中程度の還元効果が得られたことから、潤滑性に重点を置いた適用には活用できる。
試験例5−2)(F12)の作製方法と還元試験
高級脂肪酸(ROF)のドデカン酸を含む油溶性還元剤(RO)を含有する水中油型乳化組成物(F12)の作製
ドデカン酸:1%とポリオキシエチレン(12mol)・オレイルアルコールエーテル型非イオン界面活性剤(E):1%を良く混合した後、水成分(W):98%を徐々に加えて成分有効濃度(AI)は2%の水中油型乳化組成物(F12)を得た。還元剤としての濃度は前記還元試験と同様に1%である。
前記還元試験を行った結果、還元試験でのFT−IRのピーク面積は22.8と、プロピレングリコール(PG)と同程度で還元効果が殆どないことが判った。
従って、高級脂肪酸については中程度の還元効果が認められたことから、アルキル鎖(Cn)の炭素数が8以下のものが好ましく、アルキル鎖が直鎖あるいは分岐するもので、アルキル鎖に結合するカルボキシル基が一つ以上からなるものが好ましい。
表5には、油溶性還元剤(RO)の高級アルコールを水中油型乳化組成物にした試験例−4−1から3と、高級脂肪酸を水中油型乳化組成物にした試験例−5−1から2の各組成物の一連のFT−IRのピーク面積を示した。
基油成分を含まない油溶性還元剤を水中油型乳化組成物にした場合の考察
以上の結果から、前述の[試験例−1]に示す外観色が赤褐色を呈したプロピレングリコール(PG)のFT−IRのピーク面積が23.9では全く還元効果が得られないことが判っており、試験例4−3)の(A18)及び試験例5−2)の(F12)のFT−IRのピーク面積は22.8で還元効果はない。一方、[試験例−1]に示すFT−IRのピーク面積が3.4で金属光沢を有するイソプロピルアルコール(IPA)を目標とすると、還元効果を有する成分のFT−IRのピーク面積は少なくとも6以下であることが望ましい。
[試験例−6]
摩擦試験機による潤滑性能
水溶性還元剤(RW)及び油溶性還元剤(RO)を水中油型乳化組成物(試験例1〜5)にした各組成物の摩擦係数とFT−IRのピーク面積との測定結果を表6に併記した。
表6において、
EG:エチレングリコール
PG:プロピレングリコール
A:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル
IPA:イソプロピルアルコール
A8:1−オクタノールの水中油型乳化組成物
A12:n−ドデシルアルコールの水中油型乳化組成物
A18:オレイルアルコールの水中油型乳化組成物
F8:オクタン酸の水中油型乳化組成物
F12:ドデカン酸の水中油型乳化組成物
である。
摩擦試験の考察
表6の曾田式振子摩擦試験の結果から、高級アルコールを水中油型乳化組成物(ROA)とした場合は鎖長が長いほど摩擦係数は低下する反面、還元効果は無くなる。また、高級脂肪酸を水中油型乳化組成物(ROF)とした場合も同様に、鎖長と還元効果において相反した。
そこで、潤滑性能の向上と、且つ還元効果がFT−IRのピーク面積で6以下で金属光沢を有する両方を満たすことを目的とし、以下、実施例1〜4において、基油成分を含む水中油型乳化組成物中に水溶制還元剤(RW)を水相中に含める態様、基油成分を含む水中油型乳化組成物中に油溶性還元剤(RO)を油相中に含める態様、さらに、基油成分を含む水中油型乳化組成物(RB)に油溶性還元剤(RO)を油相中に含めた水中油型乳化組成物(RBO)と水溶性還元剤(RW)とを混合した態様について検討を進めた。
以下、本発明の水中油型乳化組成物について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
還元効果を確認するために、先ずリファレンスとして、単に基油成分及び界面活性剤成分及び水成分を混合することで得られる還元剤(R)を含まない水中油型乳化組成物(RB)を作成する必要がある。
還元剤(R)を含まない水中油型乳化組成物(RB)の作製
連続通電焼鈍機に使用される冷却水は水単独でも良いが、システムの潤滑性等も必要とするため、基油成分(BP)、界面活性剤成分(E)等を含めた構成の水中油型乳化組成物(RB)が好ましい。そこで、より実際的配合構成の配合で作製し、上記連続通電焼鈍機での還元試験の検討を進めた。
試料の配合は下記の通りである。
・基油成分(BP):n−パラフィン(20cSt)=50%
・界面活性剤成分(E):ポリオキシエチレン(12mol)・オレイン酸エステル=25%
・水成分(W)=25%
の3成分を混合・攪拌して、有効成分濃度(AI)=75%の乳白色液体の油溶性還元剤を含まない水中油型乳化組成物(RB)を得た。実施試験には水でさらに稀釈して有効成分濃度(AI)5%液で行った。
上記、還元剤を含まない水中油型乳化組成物(RB)の連続通電焼鈍機から出た線のFT−IRのピーク面積は31.6で、還元効果は充分に得られなかった。また、潤滑性については線積率は100%で、さらに張力調整用ダンサーの動きは殆どなくスムーズに巻き取られた。
本発明の実施例1は、上述した第2の態様の水中油型乳化組成物(RBO)のその1(油溶性還元剤・高級アルコールの添加(RBA))である。
水中油型乳化組成物(RB)の油相側に油溶性還元剤(RO)として高級アルコール(ROA)を添加した水中油型乳化組成物(RBA)(実施例1)を作製し、連続通電焼鈍機による還元効果と潤滑性を評価した。
油溶性還元剤として還元効果が中程度の高級アルコール:1−オクタノールを、水中油型乳化組成物(RB)の油(O相)中に添加する。
配合は下記の通りである。
・基油成分(BP):n−パラフィン(20cSt)=30%
・油溶性還元剤(ROA):1−オクタノール=15%
・界面活性剤成分(E):ポリオキシエチレン(12mol)・オレイン酸エステル=30%
・水成分(W)=25%
の4成分を混合・攪拌して、有効成分濃度(AI)=75%の淡黄色液体の水中油型乳化組成物(RBA)を得た。
実施試験に供する液の濃度は、油溶性還元剤(ROA)の1−オクタノールの濃度が、1%となるよう水で希釈して5%液で行った。
油溶性還元剤(ROA)を含む水中油型乳化組成物(RBA)の連続通電焼鈍機から出た線のFT−IRのピーク面積は5.2で、還元効果は良好な結果が得られた。また、潤滑性については線積率は99.8%で、さらに張力調整用ダンサーの動きはなくスムーズに巻き取られた。
本発明の実施例2は、上述した第2の態様の水中油型乳化組成物(RBO)のその2(油溶性還元剤添加・高級脂肪酸の添加(RBF))である。
次に、水中油型乳化組成物(RB)の油相側に油溶性還元剤(RO)として高級脂肪酸(ROF)を添加した組成物(RBF)を作製し、実施例1と同様の連続通電焼鈍機による還元効果と潤滑性を評価した。
油溶性還元剤(RO)として還元効果が中程度の高級脂肪酸(ROF):オクタン酸を、水中油型乳化組成物(RB)の油中に添加する。
配合は下記の通りである。
・基油成分(BP):n−パラフィン(20cSt)=30%
・油溶性還元剤(ROF):オクタン酸=15%
・界面活性剤成分(E):ポリオキシエチレン(12mol)・オレイン酸エステル=30%
・水成分(W)=25%
の4成分を混合・攪拌して、有効成分濃度(AI)=75%の淡黄色液体の水中油型乳化組成物(RBF)を得た。
実施試験に供する液の濃度は、油溶性還元剤(ROA)のオクタン酸の濃度が、実施例1と同様に1%となるよう、さらに水で稀釈し5%液で行った。
上記、還元剤(ROF)を含む水中油型乳化組成物(RBF)の連続通電焼鈍機から出た線のFT−IRのピーク面積は13.4で、還元効果は目標値より高かったことから、油溶性還元剤(ROA)は試験例5−1)と同様に還元剤としては期待できないことを再度確認した。しかし、潤滑性については、良好で、線積率は100%で、さらに張力調整用ダンサーの動きは全くなくスムーズに巻き取られた。
本発明の実施例3は、上述した第1の態様(水溶性還元剤(RW)+水中油型乳化組成物(RB))である。
第1の態様(水溶性還元剤(RW)+水中油型乳化組成物(RB))(実施例3)の作製
第1の態様の組成物である実施例3は、油溶性還元剤(RO)を水相中に含まない水中油型乳化組成物(RB)を作製した後、水溶性還元剤(RW)を後添加して得られる。この水溶性還元剤(RW)の潤滑性は前記した通り摩擦係数が0.2前後と期待出来ないことから、有効成分濃度から外して水中油型乳化組成物(RB)の濃度は実施例1、2と同様に5%とし、水溶性還元剤(RW)の添加量は1%として、油溶性還元剤(RO)を含まない水中油型乳化組成物(RB)と水溶性還元剤(A)の混合組成物(RB+A)が得られる。従って、全成分濃度は6%となっている。
成分は、基油成分(BP)、界面面活性剤成分(E)、水溶性還元剤(RW)、水成分(W)の4成分構成からなる。還元効果については、連続通電焼鈍機から出た線のFT−IRのピーク面積は[試験例−1]に類似した4.8で、良好な還元効果を得ることができた。また、潤滑性については、油溶性還元剤(RO)を含まない水中油型乳化組成物(RB)と遜色なく線積率は99.6%で、さらに張力調整用ダンサーの動きは殆どなくスムーズに巻き取られた。
本発明の実施例4は、第3の態様(水溶性還元剤(RW)+水中油型乳化組成物(RBO))である。
次に、水溶性還元剤(RW)を油溶性還元剤(RO)を含む水中油型乳化組成物(RBA)と混合した場合の還元効果を調べた。
第3の態様の組成物(実施例4)は、実施例1と同様に油溶性還元剤(RO)を含む水中油型乳化組成物(RBA)を作製した後、水溶性還元剤(RW)を後添加して得られる。この時の油溶性還元剤(RO)は1−オクタノールで、水溶性還元剤(RW)にはA:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルを使用した。実施例3と同様に、油溶性還元剤を含む水中油型乳化組成物(RBA)の濃度は5%とし、水溶性還元剤(RO)の添加量は1%として、油溶性還元剤(RB)を含む水中油型乳化組成物(RBA)と水溶性還元剤(A)の混合組成物(RBA+A)が、水中油型乳化組成物(RBO+RW)の1つとして得られる。実施例3と同様に全成分濃度は6%となっている。
成分は、基油成分(BP)、油溶性還元剤(RO)、界面面活性剤成分(E)、水溶性還元剤(RW)、水成分(W)の5成分構成からなる。還元効果については、連続通電焼鈍機から出た線のFT−IRのピーク面積は4.5と、[試験例−1]の水溶性還元剤(A)と実施例3の両面の効果が得られ、本実施例は実施例1〜4の水中油型乳化組成物中で最も良好な還元効果を得ることができた。また、潤滑性については、水中油型乳化組成物(RB)と遜色なく線積率も99.4%で、さらに張力調整用ダンサーの動きは同様に殆どなくスムーズに巻き取られた。
上記実施例1〜4の結果から、水中油型乳化組成物の油相中に油溶性還元剤(RO)を添加、または、水中油型乳化組成物の水相中に水溶性還元剤(RW)を添加、また、油溶性還元剤(RO)と水溶性還元剤(RW)の両方を添加した混合組成物は、潤滑性能を低下させることなく機能する、還元性と潤滑性の両方の機能を有する水中油型乳化組成物であることが実証された。
還元剤を含まない水中油型乳化組成物(RB)、実施例1(RBA)、実施例2(RBF)、実施例3(RB+A)、実施例4(RBA+A)のFT−IRのピーク面積、摩擦係数(μ)及び線積率(%)を併記して表7に示す。
表7において、
×:効果が認められない ○:効果が認められる ◎:効果が良好である
RB:還元剤を含まない水中油型乳化組成物
RBA:水中油型乳化組成物(RB)の油相側に油溶性還元剤(ROA)を添加した組成物
RBF:実施例1の水中油型乳化組成物(RB)の油相側に油溶性還元剤(ROF)を添加した組成物
RB+A:油溶性還元剤(RO)を含まない水中油型乳化組成物(RB)と水溶性還元剤(A)の混合組成物
RBA+A:油溶性還元剤(RO)を含む水中油型乳化組成物(RBA)と水溶性還元剤(A)の混合組成物
である。
[実施例の考察]
上記、実施例1〜4の結果から、油溶性還元剤(RO)を含む水中油型乳化組成物(RBO)中に水溶性還元剤(RW)を混合した実施例4は、従来にない成分揮発の低減、且つ安全性を配慮した還元効果と潤滑性能を有する水中油型乳化組成物を提供できる。
また、上記、実施例にない混合組成物には、(RBF+A)、(RBA+RBF+A)等があるが、前述の実施例から還元効果及び潤滑性能を充分有することが示唆されることは明らかである。
[参考実験:比較例3]
実際の連続鋳造圧延銅荒引線製造(実機)で使用されている還元剤:イソプロピルアルコール(IPA)単独での還元効果が、模擬還元試験とどの程度の違いがあるかを、A社、B社の連続鋳造圧延銅荒引線製造で得られる最終線(線径:8mmφ)の導体表面をFT−IRのピーク面積で比較した。その結果、A社、B社のFT−IRのピーク面積の平均値は6.2で、模擬還元試験でのFT−IRのピーク面積は3.4と、還元効果に約45%の違いが見られたことから、[試験例1−1]の還元剤(A)1.0%液の実機でのFT−IRのピーク面積は4.9と予想され、実機でも充分還元効果が発揮されることが示唆される。イソプロピルアルコール(IPA)で還元されたA社、B社、模擬還元試験の各FT−IRのピーク面積と、実機での還元剤(A)1.0%液を使用した場合の還元効果の予想値を表8に示す。
表8において、
A社、B社のイソプロピルアルコール(IPA)濃度:3%
本模擬還元試験でのイソプロピルアルコール(IPA)濃度:1%
である。
[生分解性試験]
ヒドロキシ基が1の還元剤(A):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル:1%、水成分(W):99%の有効成分濃度が1%の水溶液(上述した還元剤(A)1.0%液)について、生分解性の評価試験を行った。
還元剤(A)1.0%液の生分解度として、生物化学的酸素要求量(BOD)/化学的酸素要求量(COD)=17500/22000=79.5%の値が得られた。また、基油成分、界面活性剤成分、還元剤を使用した水中油型乳化組成物(RBA)と水溶性還元剤(A)の混合物(RBA+A)は72.7%の値が得られたことから、経済協力開発機構(OECD)が定める生分解度が60%以上であり易生分解性と判断でき、実際の好気的な水環境下では速やかに分解されることが確認された。
本発明の水中油型乳化組成物は、銅系金属の棒・板・パイプ・条等の加工工程で必要とする焼鈍工程のスケール除去に利用できる。その他、溶鉱炉やゴミ処理用ガスバーナーのノズルの冷却や、銅系金属が大気に曝される熱環境下での酸化膜剥れの防止等、酸化雰囲気での全ての部位へ適用でき、本還元剤を使用すれば、資源の損失防止による経済効果に加え安全性が高いため、産業効果は極めて大きい。
本発明の水中油型乳化組成物は、安全性が極めて高く、また、成分の揮発を軽減出来ることから管理が容易で経済的なスケール除去を提供する。

Claims (1)

  1. 基油成分及び界面活性剤成分及び水成分を含む水中油型乳化組成物であって、金属の熱処理加工時に高温下で金属表面に接触させる還元剤で、
    前記水中油型乳化組成物の油相中に高級アルコールの成分及び/又は高級脂肪酸の成分が含まれ、かつ、前記水中油型乳化組成物の水相中にグリコールエーテルの成分が含まれ、
    かつ、前記グリコールエーテルが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素数は4以下)であることを特徴とする水中油型乳化組成物。
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