JP5321771B2 - ポリカルボシランの製造方法 - Google Patents
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ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を有する原料ポリマーを、有機溶剤中で塩基性触媒の存在下でアルコールと反応させた後、水と反応させる工程を含む。
上記本発明の第1の態様のポリカルボシランの製造方法において、前記原料ポリマーは、下記一般式(3)で表される構造単位、下記一般式(4)で表される構造単位、および下記一般式(5)で表される構造単位のうち少なくとも1つをさらに有することができる。
上記本発明の第1の態様のポリカルボシランの製造方法において、前記水と反応させる工程は、反応系内に酸性水溶液を添加することにより行われることができる。
〔式中、Rは1価の炭化水素基を示す。〕
上記本発明の第2の態様のポリカルボシランにおいて、重量平均分子量が300〜1,000,000であり、有機溶剤に可溶であることができる。
本発明のポリカルボシランの製造方法は、ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を有する原料ポリマーを、有機溶剤中で塩基性触媒の存在下でアルコールと反応させた後、水と反応させる工程を含む。
ここで、塩基性触媒の存在下でアルコールおよび水と反応させると、縮合反応において粗大粒子が生成し、ゲル化する場合がある。これに対して、本発明のポリカルボシランの製造方法によれば、ゲル化することがないため、粗大粒子が少ないポリカルボシランを製造することができる。
上述したように、本発明のポリカルボシランの製造方法にて使用される原料ポリマーは、上記一般式(1)および(2)で表される構造単位をそれぞれ少なくとも1つ有する。この場合、原料ポリマーにおいて、下記一般式(1)および(2)で表される構造単位のうち同じ構造単位が連続していてもよく、または、異なる構造単位が隣り合って存在していてもよく、あるいは、同じ構造単位が連続している部分と、異なる構造単位が隣り合って存在している部分との両方を含んでいてもよい。
本発明のポリカルボシランの製造において使用可能な塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、尿素、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、などを挙げることができる。これらの中で、アンモニア、有機アミン類、アンモニウムハイドロオキサイド類を好ましい例として挙げることができ、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドが特に好ましい。これらの塩基性触媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
本発明のポリカルボシランの製造において使用可能なアルコールとしては、脂肪族(直鎖、環状)アルコールおよび芳香族アルコールのいずれであってもよく、例えば、炭素数1〜6のアルコールが挙げられ、より具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、sec−ブタノール、n−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
本発明のポリカルボシランの製造においては、下記の有機溶剤を使用することができる。本発明に使用する有機溶剤としては、使用するアルコールおよび水、ならびに原料ポリマーをいずれも溶解させることができるものが好ましい。あるいは、有機溶剤としてアルコールを使用することにより、有機溶剤とアルコールとを兼用してもよい。
本発明のポリカルボシランの製造においては、具体的には、塩基性触媒の存在下、有機溶剤中で原料ポリマーと、アルコール(ROH;Rはアルキル基)とを反応させることにより、Si−H結合の一部をアルコキシシラン部位(Si−OR)に変換させた後、水と反応させることにより、Si−OR部位の一部(場合によってはさらに、Si−H結合の一部)を、シラノール部位(Si−OH)およびSi−O−Si結合のいずれかに変換することができる。すなわち、上述の水との反応により、シラノール部位形成後に、当該シラノール部位同士の脱水縮合反応が起こることにより、Si−O−Si結合が形成されることがある。
本発明のポリカルボシランは、上述の本発明のポリカルボシランの製造方法により得られる。より具体的には、本発明のポリカルボシランは、ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖と、主鎖のケイ素原子に結合する水素原子、酸素原子、および炭素原子を含む側鎖とを含むことができる。
〔式中、Rは1価の炭化水素基を示す。〕
上記一般式(7)において、Rとして示される1価の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、特に、Rがアルキル基である場合、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。また、上記一般式(8)および(9)において、酸素原子は、水素原子、ケイ素原子、および炭素原子のいずれかに結合可能である。
本発明のポリカルボシランの第1〜第3の合成例を下記一般式に示すが、本発明のポリカルボシランはこれらに限定されない。
上記一般式(A)において、z,wは1以上の整数(ここで、x>z+wを満たす。)であり、Rは上記一般式(7)で定義した通りであり、x,yは上記一般式(11)で定義した通りである。すなわち、上記一般式(11)で表される原料ポリマーにおいて、アルコール(ROH)との反応によりSi−H結合の一部がSi−OR部位に変換された後、水との反応によりSi−OR部位の一部(場合によってはさらに、Si−H結合の一部)がSi−OH部位に変換されることにより、上記一般式(14)で表されるポリカルボシランが得られる。
上記一般式(B)において、e,fは1以上の整数(ここで、a>e+fを満たす。)であり、g,hはc≧g+hを満たす整数であり、Rは上記一般式(7)で定義した通りであり、a,b,c,dは上記一般式(12)で定義した通りであり、酸素原子は、水素原子、ケイ素原子、および炭素原子のいずれかに結合可能である。すなわち、上記一般式(12)で表される原料ポリマーにおいて、アルコール(ROH)との反応によりSi−H結合の一部がSi−OR部位に変換された後、水との反応によりSi−OR部位の一部(場合によってはさらに、Si−H結合の一部)がSi−OH部位またはSi−O−Si結合に変換されることにより、上記一般式(15)で表されるポリカルボシランが得られる。
上記一般式(C)において、e,fは1以上の整数(ここで、a>e+fを満たす。)であり、g,hはc≧g+hを満たす整数であり、Rは上記一般式(7)で定義した通りであり、a,b,c,dは上記一般式(13)で定義した通りであり、酸素原子は、水素原子、ケイ素原子、および炭素原子のいずれかに結合可能である。すなわち、上記一般式(13)で表される原料ポリマーにおいて、アルコール(ROH)との反応によりSi−H結合の一部がSi−OR結合に変換された後、水との反応によりSi−OR結合の一部(場合によってはさらに、Si−H結合の一部)がSi−OH部位またはSi−O−Si結合に変換されることにより、上記一般式(16)で表されるポリカルボシランが得られる。
本発明の塗布用シリカ系組成物は、本発明のポリカルボシランおよび有機溶剤を含有する。この場合、本発明のポリカルボシランは有機溶剤に溶解あるいは分散させることができる。さらに、本発明の塗布用シリカ系組成物には、必要に応じてさらに添加剤を含有させてもよい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実験例および比較例における各評価は以下に示す方法で行なった。
ポリカルボシランの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
試料:テトラヒドロフランを溶媒として使用し、重合体1[g]を、100[cc]のテトラヒドロフランに溶解して調製した。
標準ポリスチレン:米国プレッシャーケミカル社製の標準ポリスチレンを使用した。
装置:米国ウオーターズ社製の高温高速ゲル浸透クロマトグラム(モデル150−CALC/GPC)
カラム:昭和電工(株)製のSHODEX A−80M(長さ50cm)
測定温度:40℃流速:1cc/分
下記の装置を用いて、1H NMRスペクトル(500MHz)および29Si NMRスペクトル(100MHz)の測定を行なった。
装置:BRUKER AVANCE 500型(ブルカー(Bruker)社製)
原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)20[g]をテトラヒドロフランに溶解させて400[g]とし、ここに、濃度が1.0[mol/L]のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)のメタノール溶液5.0[ml]を加えた後、この反応液を50℃で3時間加熱した。次に、この反応液を室温まで冷却した後、2.0[mol/L]のシュウ酸水溶液10[ml]を加えて反応を停止させた。次いで、この反応液にシクロヘキサノン100[g]および0.02[mol/L]のシュウ酸水溶液400[g]を加えて振り混ぜた後、静置して有機相と水相とに分離した。この有機相を取り出して濃縮することにより、実験例1のポリカルボシラン19.9[g]を得た。
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad),10〜30ppm(broad);後者2つのピークは重なっている。3つのピークの積分比はおよそ2:6:2であった。
分子量(GPC):Mw=3,200, Mn=600
また、得られたポリカルボシランを4[%]の酢酸ブチル溶液とし、これをシリコンウエハ上に2500[rpm]にてスピンコートして得た膜を、窒素雰囲気下150[℃]で1分間、続いて400[℃]で1分間ホットプレート上にて焼成した。この膜厚(表1における「成膜後の膜厚」に相当)を測定したのち、このウエハ上にシクロヘキサノン(溶剤)を同じく2500[rpm]にてスピンコートした後、同様に150[℃]、続いて400[℃]で加熱して硬化させ、この後の膜厚(表1における「溶剤塗布・硬化後の膜厚」に相当)を測定して、シクロヘキサノン塗布前後の比較を行った。その結果を表1に示す。なお、表1において、「減膜率(%)」=「{(成膜後の膜厚)−(溶剤塗布・硬化後の膜厚)}/(成膜後の膜厚)×100」を表す。
原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)20[g]をテトラヒドロフランに溶解させて400[g]とし、ここに、濃度が1.0[mol/L]のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)のメタノール溶液5.0[ml]を加えた後、この反応液を50℃で3時間加熱した。次に、この反応液を室温まで冷却した後、2.0[mol/L]のシュウ酸水溶液10[ml]を加えて反応を停止させた。次いで、この反応液を50℃で2時間攪拌した後、シクロヘキサノン100[g]および0.02[mol/L]のシュウ酸水溶液400[g]を加えて振り混ぜた後、静置して有機相と水相とに分離した。この有機相を取り出して濃縮することにより、実験例2のポリカルボシラン19.5[g]を得た。
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad),10〜30ppm(broad);後者2つのピークは重なっている。3つのピークの積分比はおよそ3:6:1であった。
分子量(GPC):Mw=3,100, Mn=600
また、実験例1と同様の方法により、実験例2のポリカルボシランを用いて膜を形成し、溶剤に対する耐溶解性を実験例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
原料ポリマーであるポリカルボシラン((株)日本カーボン社製,商品名「ニプシType−S」)の理化学的データ
1H NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-2.0〜1.0ppm(broad, Si-CH3, Si-CH2に対応),3.5-4.5ppm(broad, SiHに対応)
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad);2つのピークの積分比はおよそ4:6であった。
分子量(GPC):Mw=3,000, Mn=500
比較例1においては、実験例1と同様の方法により、実験例1,2の原料ポリマーを用いて膜を形成し、溶剤に対する耐溶解性を実験例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)20[g]をテトラヒドロフランに溶解させて400[g]とし、ここに、濃度が1.0[mol/L]のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)の水溶液5.0[ml]を加えた後、この反応液を50℃で3時間加熱した。次に、この反応液を室温まで冷却した後、2.0[mol/L]のシュウ酸水溶液10[ml]を加えて反応を停止させた。次いで、この反応液にシクロヘキサノン100[g]および0.02[mol/L]のシュウ酸水溶液400[g]を加えて振り混ぜた後、静置して有機相と水相とに分離した。この有機相を取り出して濃縮することにより、比較例2のポリカルボシラン19.8[g]を得た。
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad),10〜30ppm(broad);後者2つのピークは重なっている。3つのピークの積分比はおよそ3:6:1であった。
分子量(GPC):Mw=7,100, Mn=720
また、実験例1と同様の方法により、比較例2のポリカルボシランを用いて膜を形成し、溶剤に対する耐溶解性を実験例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)20[g]をテトラヒドロフランに溶解させて400[g]とし、ここに、濃度が1.0[mol/L]のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)のメタノール溶液5.0[ml]を加えた後、この反応液を50℃で3時間加熱した。次に、この反応液を室温まで冷却した後、この反応液にシクロヘキサノン100[g]および純水400[g]を加えて振り混ぜた後、静置して有機相と水相とに分離した。この有機相を取り出して濃縮することにより、比較例3のポリカルボシラン19.9[g]を得た。
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad),10〜30ppm(broad);後者2つのピークは重なっている。3つのピークの積分比はおよそ2:6:2であった。
分子量(GPC):Mw=3,200, Mn=580
また、実験例1と同様の方法により、比較例3のポリカルボシランを用いた溶液から膜を形成し、溶剤に対する耐溶解性を実験例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
Claims (2)
- ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を有する原料ポリマーを、有機溶剤中で塩基性触媒の存在下でアルコールと反応させることにより、Si−H結合の一部をアルコキシシラン部位に変換させる工程と、
酸性水溶液を添加することにより、前記アルコキシシラン部位を水と反応させて、該アルコキシシラン部位の一部をシラノール部位に変換した後、該シラノール部位同士の脱水縮合反応により、Si−O−Si結合を形成する工程と、
を含み、
重量平均分子量が300〜1,000,000であり、有機溶剤に可溶である、ポリカルボシランの製造方法。
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