JP5321771B2 - ポリカルボシランの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なポリカルボシランおよびその製造方法、前記ポリカルボシランを含む塗布用シリカ系組成物、ならびに前記塗布用シリカ系組成物から得られるシリカ系膜に関する。
炭化ケイ素繊維やセラミックス材料の前駆体としてポリカルボシランが着目され、工業的に利用されている。特に、主鎖がケイ素原子と炭素原子との繰り返し構造からなるポリカルボシランは耐熱性に優れており、広く利用されている。また、ポリカルボシランは、光機能材料や導電性材料などへの応用が期待されている。
ケイ素原子と炭素原子との繰り返し構造からなる主鎖を有するポリカルボシランの製造方法としては、例えば、ポリ(ジメチルシラン)の熱転位による方法が挙げられる(非特許文献1)。この方法では、ポリ(ジメチルシラン)中のケイ素原子に結合するメチル基の一部が主鎖のSi−Si結合に挿入されて、Si−C結合を形成するとともに、転位したSi−CH部分がSi−H結合に置き換わる。
また、他のポリカルボシランの製造方法としては、例えば、クロロメチルトリクロロシランからグリニャール反応を経てポリカルボシランを得る方法(非特許文献2)や、ジシラシクロブタン類の開環重合によりポリカルボシランを得る方法(非特許文献3)が挙げられる。非特許文献2および3には、モノマー中のケイ素原子上の置換基を塩素原子にしたうえでこのモノマーの重合を行なった後、水素化リチウムアルミニウム等を用いて還元することにより、Si−H結合を有するポリカルボシランを製造する方法が記載されている。
これまでの技術において、前述のポリカルボシランの硬化を行なうには、(1)酸化雰囲気下での焼成によるSi−O−Si架橋の形成(特許文献1,2)、もしくは(2)Si−H結合同士のカップリングによるSi−Si結合の形成、およびそれに続く転位反応でのSi−C−Si結合の形成(特許文献2)によるものが一般的であった。しかしながら、前記(1)の方法に関しては、半導体集積回路製造工程に利用した場合、既に基板上に組み込まれている金属配線が酸化されて配線抵抗が上昇する懸念があった。また前記(2)の方法に関しては、ポリマー中のSi−H結合の含有量が多いほど硬化は進行しやすいものの、その分貯蔵時にも徐々に脱水素カップリング反応が起こり、ポリマーの劣化につながる問題を有していた。
上記の問題点を解決し、減圧下または不活性ガス雰囲気下で硬化を行なうことができ、かつ化学的に安定なポリカルボシランとしては、(1)ケイ素―水素結合以外の架橋可能な側鎖を有するか、あるいは架橋前にある程度架橋を促進させた構造を導入し、熱などで硬化が進行しやすいようにしたものや、(2)さらに脱水素カップリング反応が可能となるケイ素―水素結合側鎖が適度に存在するものが好ましい。(1)の機構のみで硬化が可能なポリカルボシランの場合、ポリマー中の架橋部分が多くなり、架橋部位が有機基であると、熱安定性や機械的強度が低下することが懸念され、また、架橋部位がシロキサン構造であると、半導体集積回路用途において、エッチング、プラズマなどの処理プロセスに対する耐性が低下することが懸念される。前述の特許文献2には、Si−O結合を有さないポリカルボシランをシリコンウエハ上に膜組成物を塗布したのちに空気中で加熱することにより、酸化によりSi−O−Si結合を形成する方法が開示され、特許文献3、4には、ケイ素―水素結合を有するポリカルボシランを有機溶剤中アルカリ・水存在下で変性させたポリマーが開示されている。しかしながら、これらのポリマーを半導体集積回路の製造工程に適用した場合に配線などの他材料への影響がなく、保存安定性にもすぐれたポリカルボシランは見出されていなかった。
米国特許5,602,060号 米国公開2003/0017635号公報 特開2003-142477号公報 特表平8-510292号公報 ジャーナル オブ マテリアルズ サイエンス,1978年,第13巻,p.2569−2576(Journal of Materials Science, 2569-2576, Vol.13, 1978) オーガノメタリクス,1991年,第10巻,p.1336−1344(Organometallics, 1336-1344, Vol.10, 1991) ジャーナル オブ オーガノメタリック ケミストリー,1996年,第521巻,p.1−10(Journal of Organometallic Chemistry, 1-10, Vol.521, 1996)
本発明の目的は、粗大粒子が少なく、かつ、硬化性が良好なポリカルボシランおよびその製造方法、前記ポリカルボシランを含む塗布用シリカ系組成物、および前記塗布用シリカ系組成物から得られたシリカ系膜を提供することである。
本発明の第1の態様のポリカルボシランの製造方法は、
ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を有する原料ポリマーを、有機溶剤中で塩基性触媒の存在下でアルコールと反応させた後、水と反応させる工程を含む。
Figure 0005321771
・・・・・(1)
Figure 0005321771
・・・・・(2)
上記本発明の第1の態様のポリカルボシランの製造方法において、前記原料ポリマーは、下記一般式(3)で表される構造単位、下記一般式(4)で表される構造単位、および下記一般式(5)で表される構造単位のうち少なくとも1つをさらに有することができる。
Figure 0005321771
・・・・・(3)
Figure 0005321771
・・・・・(4)
Figure 0005321771
・・・・・(5)
上記本発明の第1の態様のポリカルボシランの製造方法において、前記水と反応させる工程は、反応系内に酸性水溶液を添加することにより行われることができる。
本発明の第2の態様のポリカルボシランは、上記本発明の第1の態様のポリカルボシランの製造方法によって得られたものである。
上記本発明の第2の態様のポリカルボシランにおいて、下記一般式(1)〜(9)で表される構造単位のうち少なくとも1つを含むことができる。
Figure 0005321771
・・・・・(1)
Figure 0005321771
・・・・・(2)
Figure 0005321771
・・・・・(3)
Figure 0005321771
・・・・・(4)
Figure 0005321771
・・・・・(5)
Figure 0005321771
・・・・・(6)
Figure 0005321771
・・・・・(7)
〔式中、Rは1価の炭化水素基を示す。〕
Figure 0005321771
・・・・・(8)
Figure 0005321771
・・・・・(9)
上記本発明の第2の態様のポリカルボシランにおいて、重量平均分子量が300〜1,000,000であり、有機溶剤に可溶であることができる。
本発明の第3の態様の塗布用シリカ系組成物は、上記本発明の第2の態様のポリカルボシランおよび有機溶剤を含有する。
本発明の第4の態様のシリカ系膜は、上記本発明の第3の態様の塗布用シリカ系組成物を用いて形成された塗膜を硬化させることにより得られる。
本発明の第1の態様のポリカルボシランの製造方法によれば、ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を有する原料ポリマーを、有機溶剤中で塩基性触媒の存在下でアルコールと反応させた後、水と反応させる工程を含むことにより、製造時にゲル化することがない。このため、粗大粒子が少なく、かつ、硬化性が良好なポリカルボシランを製造することができる。
本発明の第2の態様のポリカルボシランによれば、上述の本発明の第1の態様のポリカルボシランの製造方法により得られるため、粗大粒子が少なく、かつ、硬化性が良好である。また、本発明の第2の態様のポリカルボシランによれば、Si−H結合およびSi−O結合の両方を含むことにより、不活性ガス雰囲気や減圧下など酸化雰囲気でない環境下での焼成でも、ポリマーの架橋・硬化が可能になる。また、Si−Me部位が含まれているため、耐エッチング性、アッシング性が良好である。
本発明の第2の態様のポリカルボシランは、例えば、セラミックス、耐熱性プラスチック、電子材料などへの利用が可能である。特に、粗大粒子が少なく、かつ、硬化性が良好であることから、例えば、電子材料用途(半導体素子用層間絶縁膜やエッチングストッパー膜、半導体素子の表面コート膜などの保護膜、多層レジストを用いた半導体作製工程の中間層、多層配線基板の層間絶縁膜、液晶表示素子用の保護膜や絶縁膜、光機能材料、導電性材料など)における膜形成用組成物として有用である。
本発明の第3の態様の塗布用シリカ系組成物は、上記本発明の第2の態様のポリカルボシランおよび有機溶剤を含有することにより、塗布による成膜が容易である。
本発明の第4の態様のシリカ系膜は、上記本発明の第3の態様の塗布用シリカ系組成物を用いて形成された塗膜を硬化させることにより得られるため、均質である。
以下、本発明のポリカルボシランおよびその製造方法、前記ポリカルボシランを含む塗布用シリカ系組成物、および前記塗布用シリカ系組成物を用いて形成されたシリカ系膜について説明する。
1.ポリカルボシランの製造方法
本発明のポリカルボシランの製造方法は、ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を有する原料ポリマーを、有機溶剤中で塩基性触媒の存在下でアルコールと反応させた後、水と反応させる工程を含む。
Figure 0005321771
・・・・・(1)
Figure 0005321771
・・・・・(2)
ここで、塩基性触媒の存在下でアルコールおよび水と反応させると、縮合反応において粗大粒子が生成し、ゲル化する場合がある。これに対して、本発明のポリカルボシランの製造方法によれば、ゲル化することがないため、粗大粒子が少ないポリカルボシランを製造することができる。
本発明において、「ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖」とは、例えば下記一般式(10)で表される構造を有する。なお、下記一般式(10)においては、主鎖に結合する側鎖の記載は省略する。また、主鎖に含まれるケイ素原子および炭素原子の数はこれに限定されるわけではない。前記主鎖において、側鎖の種類は特に限定されないが、側鎖としては例えば、−H、−OH、−O−Si、−OR(ここで、Rは1価の炭化水素基を示し、例えば一般式(7)においてRとして下記に例示される基であってもよく、より具体的には、本発明のポリカルボシランを製造する際に用いるアルコール由来であってもよい。)であってもよい。
Figure 0005321771
・・・・・(10)
1.1 原料ポリマー
上述したように、本発明のポリカルボシランの製造方法にて使用される原料ポリマーは、上記一般式(1)および(2)で表される構造単位をそれぞれ少なくとも1つ有する。この場合、原料ポリマーにおいて、下記一般式(1)および(2)で表される構造単位のうち同じ構造単位が連続していてもよく、または、異なる構造単位が隣り合って存在していてもよく、あるいは、同じ構造単位が連続している部分と、異なる構造単位が隣り合って存在している部分との両方を含んでいてもよい。
また、前記原料ポリマーは、下記一般式(3)で表される構造単位、下記一般式(4)で表される構造単位、および下記一般式(5)で表される構造単位のうち少なくとも1つをさらに有することができる。この場合においても、同じ構造単位が連続していてもよく、または、異なる構造単位が隣り合って存在していてもよく、あるいは、同じ構造単位が連続している部分と、異なる構造単位が隣り合って存在している部分との両方を含んでいてもよい。
Figure 0005321771
・・・・・(3)
Figure 0005321771
・・・・・(4)
Figure 0005321771
・・・・・(5)
上記一般式(4)および(5)において、メチレン(−CH−)の炭素原子は、酸素原子、ケイ素原子、および炭素原子のいずれかに結合可能である。
本発明のポリカルボシランの製造において、前記原料ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(11)〜(13)に示すものがある。なお、下記一般式(11)〜(13)において、同じ構造単位が連続していてもよく、または、異なる構造単位が隣り合って存在していてもよく、あるいは、同じ構造単位が連続している部分と、異なる構造単位が隣り合って存在している部分との両方を含んでいてもよい。このことは、後述する一般式(14)〜(16)にも同様に適用される。
Figure 0005321771
・・・・・(11)
〔上記一般式(11)において、x,yはそれぞれ1以上の整数を示す。〕
Figure 0005321771
・・・・・(12)
〔上記一般式(12)において、a,bはそれぞれ1以上の整数を示し、c,dはいずれも整数を示し、少なくとも一方が1以上である。〕
Figure 0005321771
・・・・・(13)
〔上記一般式(13)において、a,bはそれぞれ1以上の整数を示し、c,dはいずれも整数を示し、少なくとも一方が1以上である。〕
1.2 塩基性触媒
本発明のポリカルボシランの製造において使用可能な塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、尿素、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、などを挙げることができる。これらの中で、アンモニア、有機アミン類、アンモニウムハイドロオキサイド類を好ましい例として挙げることができ、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドが特に好ましい。これらの塩基性触媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
塩基性触媒の使用量は、原料ポリカルボシランに含まれるケイ素―水素結合の数によって決定される。
1.3 アルコール
本発明のポリカルボシランの製造において使用可能なアルコールとしては、脂肪族(直鎖、環状)アルコールおよび芳香族アルコールのいずれであってもよく、例えば、炭素数1〜6のアルコールが挙げられ、より具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、sec−ブタノール、n−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
1.4 有機溶剤
本発明のポリカルボシランの製造においては、下記の有機溶剤を使用することができる。本発明に使用する有機溶剤としては、使用するアルコールおよび水、ならびに原料ポリマーをいずれも溶解させることができるものが好ましい。あるいは、有機溶剤としてアルコールを使用することにより、有機溶剤とアルコールとを兼用してもよい。
ここで、有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒(炭化水素系溶媒を用いる場合であって、水を使用する場合、炭化水素系溶媒と他の溶媒とを組み合わせて使用可能である);アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョンなどのケトン系溶媒;エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトンなどの含硫黄系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、sec−ブタノール、n−プロパノールなどのアルコール系溶媒(この場合、アルコール系溶媒は反応剤としての作用も有する。)などを挙げることができる。これらは、1種あるいは2種以上を混合して使用することができる。また上記溶剤との混合で用いる場合は、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒などを使用することもできる。
1.5 水との反応
本発明のポリカルボシランの製造においては、具体的には、塩基性触媒の存在下、有機溶剤中で原料ポリマーと、アルコール(ROH;Rはアルキル基)とを反応させることにより、Si−H結合の一部をアルコキシシラン部位(Si−OR)に変換させた後、水と反応させることにより、Si−OR部位の一部(場合によってはさらに、Si−H結合の一部)を、シラノール部位(Si−OH)およびSi−O−Si結合のいずれかに変換することができる。すなわち、上述の水との反応により、シラノール部位形成後に、当該シラノール部位同士の脱水縮合反応が起こることにより、Si−O−Si結合が形成されることがある。
ここで、上述の水との反応としては、例えば、反応系内に酸性水溶液を加える方法が挙げられる。この方法によれば、生成が予想されるシラノール部位の更なる脱水縮合を抑制することができる。酸性水溶液としては特に限定されないが、例えば、有機酸または無機酸が例示できる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物などを挙げることができる。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などを挙げることができる。なかでも、ポリマーの析出やゲル化のおそれが少ない点で有機酸が好ましく、このうち、カルボキシル基を有する化合物がより好ましく、なかでも、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、無水マレイン酸の加水分解物が特に好ましい。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
1.6 ポリカルボシラン
本発明のポリカルボシランは、上述の本発明のポリカルボシランの製造方法により得られる。より具体的には、本発明のポリカルボシランは、ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖と、主鎖のケイ素原子に結合する水素原子、酸素原子、および炭素原子を含む側鎖とを含むことができる。
また、本発明のポリカルボシランは、下記一般式(1)〜(9)で表される構造単位のうち少なくとも1つを含むことができる。なお、本発明のポリカルボシランにおいて、下記一般式(1)〜(9)で表される構造単位のうち同じ構造単位が連続していてもよく、または、異なる構造単位が隣り合って存在していてもよく、あるいは、同じ構造単位が連続している部分と、異なる構造単位が隣り合って存在している部分との両方を含んでいてもよい。
Figure 0005321771
・・・・・(1)
Figure 0005321771
・・・・・(2)
Figure 0005321771
・・・・・(3)
Figure 0005321771
・・・・・(4)
Figure 0005321771
・・・・・(5)
Figure 0005321771
・・・・・(6)
Figure 0005321771
・・・・・(7)
〔式中、Rは1価の炭化水素基を示す。〕
Figure 0005321771
・・・・・(8)
Figure 0005321771
・・・・・(9)
上記一般式(7)において、Rとして示される1価の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、特に、Rがアルキル基である場合、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。また、上記一般式(8)および(9)において、酸素原子は、水素原子、ケイ素原子、および炭素原子のいずれかに結合可能である。
また、限定されないが、本発明のポリカルボシランは、上記一般式(1)で表される構造単位、上記一般式(2)で表される構造単位、上記一般式(6)で表される構造単位、および上記一般式(7)で表される構造単位を含むことができる。すなわち、この場合において、本発明のポリカルボシランは、上記一般式(1),(2),(6),および(7)に表されるように、−H、−CH、−OH、および−ORを側鎖に含み、これらの側鎖はいずれも主鎖のSiと結合している。また、この場合、本発明のポリカルボシランにおいて、上記一般式(1),(2),(6),および(7)で表される構造単位の数はそれぞれ、(1)5〜70%、(2)30〜80%、()5〜50%、()5〜30%であることが好ましい。
本発明のポリカルボシランは有機溶剤に可溶であり、かつ、その重量平均分子量は300〜1,000,000であることが好ましく、500〜100,000であることがより好ましい。重量平均分子量が300未満であると、焼成時にポリマーが揮発することがあり、一方、重量平均分子量が1,000,000を超えると、ポリマーが溶液に不溶になり、塗布組成物を得ることができない。
1.7 合成例
本発明のポリカルボシランの第1〜第3の合成例を下記一般式に示すが、本発明のポリカルボシランはこれらに限定されない。
本発明のポリカルボシランの第1の合成例を下記一般式(A)に示す。第1の合成例においては、原料ポリマーが上記一般式(11)で表される場合を例にとり説明する。
Figure 0005321771
・・・・・(A)
上記一般式(A)において、z,wは1以上の整数(ここで、x>z+wを満たす。)であり、Rは上記一般式(7)で定義した通りであり、x,yは上記一般式(11)で定義した通りである。すなわち、上記一般式(11)で表される原料ポリマーにおいて、アルコール(ROH)との反応によりSi−H結合の一部がSi−OR部位に変換された後、水との反応によりSi−OR部位の一部(場合によってはさらに、Si−H結合の一部)がSi−OH部位に変換されることにより、上記一般式(14)で表されるポリカルボシランが得られる。
本発明のポリカルボシランの第2の合成例を下記一般式(B)に示す。第2の合成例においては、原料ポリマーが上記一般式(12)で表される場合を例にとり説明する。
Figure 0005321771
・・・・・(B)
上記一般式(B)において、e,fは1以上の整数(ここで、a>e+fを満たす。)であり、g,hはc≧g+hを満たす整数であり、Rは上記一般式(7)で定義した通りであり、a,b,c,dは上記一般式(12)で定義した通りであり、酸素原子は、水素原子、ケイ素原子、および炭素原子のいずれかに結合可能である。すなわち、上記一般式(12)で表される原料ポリマーにおいて、アルコール(ROH)との反応によりSi−H結合の一部がSi−OR部位に変換された後、水との反応によりSi−OR部位の一部(場合によってはさらに、Si−H結合の一部)がSi−OH部位またはSi−O−Si結合に変換されることにより、上記一般式(15)で表されるポリカルボシランが得られる。
本発明のポリカルボシランの第3の合成例を下記一般式(C)に示す。第3の合成例においては、原料ポリマーが上記一般式(13)で表される場合を例にとり説明する。
Figure 0005321771
・・・・・(C)
上記一般式(C)において、e,fは1以上の整数(ここで、a>e+fを満たす。)であり、g,hはc≧g+hを満たす整数であり、Rは上記一般式(7)で定義した通りであり、a,b,c,dは上記一般式(13)で定義した通りであり、酸素原子は、水素原子、ケイ素原子、および炭素原子のいずれかに結合可能である。すなわち、上記一般式(13)で表される原料ポリマーにおいて、アルコール(ROH)との反応によりSi−H結合の一部がSi−OR結合に変換された後、水との反応によりSi−OR結合の一部(場合によってはさらに、Si−H結合の一部)がSi−OH部位またはSi−O−Si結合に変換されることにより、上記一般式(16)で表されるポリカルボシランが得られる。
2.塗布用シリカ系組成物およびシリカ系膜
本発明の塗布用シリカ系組成物は、本発明のポリカルボシランおよび有機溶剤を含有する。この場合、本発明のポリカルボシランは有機溶剤に溶解あるいは分散させることができる。さらに、本発明の塗布用シリカ系組成物には、必要に応じてさらに添加剤を含有させてもよい。
ここで、本発明の塗布用シリカ系組成物で使用可能な有機溶剤としては、本発明のポリカルボシランの製造において使用可能な有機溶剤として例示したものを使用することができる。
本発明のシリカ系膜は、本発明の塗布用シリカ系組成物を用いて形成された塗膜を硬化させることにより得られる。より具体的には、上記本発明の塗布用シリカ系組成物を基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を硬化させることにより、本発明のシリカ系膜を得ることができる。ここで、本発明の塗布用シリカ系組成物を、基材(例えば、シリコンウエハ、SiOウエハ、SiNウエハなど)に塗布する際には、スピンコート法、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗装手段を用いることができる。なお、ここで、「基材」とは、本発明のシリカ系膜が形成される部材をいい、その用途および材質は特に限定されない。
ここで、前記塗膜を硬化させる方法としては、例えば、加熱、高エネルギー線照射などの方法が挙げられる。加熱を行なう場合、加熱手段としては例えば、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することができ、加熱雰囲気としては例えば、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行なうことができる。また、前記塗膜の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的に加熱したり、あるいは窒素、空気、酸素、減圧などの雰囲気を選択したりすることができる。
また、前記塗膜を硬化させる方法として、加熱および高エネルギー線照射の両方を用いてもよい。例えば、本発明の塗布用シリカ系組成物を基材に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を高エネルギー線照射下で30〜450℃に加熱することにより、前記塗膜を硬化させることができる。
本発明のシリカ系膜は均質であることから、例えば、セラミックス、耐熱性プラスチック、電子材料用途(LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAMなどの半導体素子用層間絶縁膜やエッチングストッパー膜、半導体素子の表面コート膜などの保護膜、多層レジストを用いた半導体作製工程の中間層、多層配線基板の層間絶縁膜、液晶表示素子用の保護膜や絶縁膜、光機能材料、導電性材料など)に有用である。なお、本発明のシリカ系膜の用途はこれらに限定されない。
3.実施例
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実験例および比較例における各評価は以下に示す方法で行なった。
3.1 分子量
ポリカルボシランの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
試料:テトラヒドロフランを溶媒として使用し、重合体1[g]を、100[cc]のテトラヒドロフランに溶解して調製した。
標準ポリスチレン:米国プレッシャーケミカル社製の標準ポリスチレンを使用した。
装置:米国ウオーターズ社製の高温高速ゲル浸透クロマトグラム(モデル150−CALC/GPC)
カラム:昭和電工(株)製のSHODEX A−80M(長さ50cm)
測定温度:40℃流速:1cc/分
3.2 NMRスペクトル
下記の装置を用いて、H NMRスペクトル(500MHz)および29Si NMRスペクトル(100MHz)の測定を行なった。
装置:BRUKER AVANCE 500型(ブルカー(Bruker)社製)
3.3 実験例1
原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)20[g]をテトラヒドロフランに溶解させて400[g]とし、ここに、濃度が1.0[mol/L]のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)のメタノール溶液5.0[ml]を加えた後、この反応液を50℃で3時間加熱した。次に、この反応液を室温まで冷却した後、2.0[mol/L]のシュウ酸水溶液10[ml]を加えて反応を停止させた。次いで、この反応液にシクロヘキサノン100[g]および0.02[mol/L]のシュウ酸水溶液400[g]を加えて振り混ぜた後、静置して有機相と水相とに分離した。この有機相を取り出して濃縮することにより、実験例1のポリカルボシラン19.9[g]を得た。
実験例1のポリカルボシランの理化学的データを以下に示す。
H NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-2.0〜1.0ppm(broad),3.5-4.5ppm(broad)
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad),10〜30ppm(broad);後者2つのピークは重なっている。3つのピークの積分比はおよそ2:6:2であった。
IRスペクトルデータ(液膜法): 3670cm−1(Si-OHに対応), 2950cm−1, 2900cm−1, 2830cm−1(Si-OMeに対応), 2096cm−1, 1360cm−1, 1250cm−1, 1030cm−1, 820cm−1
分子量(GPC):Mw=3,200, Mn=600
また、得られたポリカルボシランを4[%]の酢酸ブチル溶液とし、これをシリコンウエハ上に2500[rpm]にてスピンコートして得た膜を、窒素雰囲気下150[℃]で1分間、続いて400[℃]で1分間ホットプレート上にて焼成した。この膜厚(表1における「成膜後の膜厚」に相当)を測定したのち、このウエハ上にシクロヘキサノン(溶剤)を同じく2500[rpm]にてスピンコートした後、同様に150[℃]、続いて400[℃]で加熱して硬化させ、この後の膜厚(表1における「溶剤塗布・硬化後の膜厚」に相当)を測定して、シクロヘキサノン塗布前後の比較を行った。その結果を表1に示す。なお、表1において、「減膜率(%)」=「{(成膜後の膜厚)−(溶剤塗布・硬化後の膜厚)}/(成膜後の膜厚)×100」を表す。
なお、実験例1,2および比較例1〜3で使用される原料ポリマーは、ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、上記一般式(1)で表される構造単位および上記一般式(2)で表される構造単位を有する。
3.4 実験例2
原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)20[g]をテトラヒドロフランに溶解させて400[g]とし、ここに、濃度が1.0[mol/L]のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)のメタノール溶液5.0[ml]を加えた後、この反応液を50℃で3時間加熱した。次に、この反応液を室温まで冷却した後、2.0[mol/L]のシュウ酸水溶液10[ml]を加えて反応を停止させた。次いで、この反応液を50℃で2時間攪拌した後、シクロヘキサノン100[g]および0.02[mol/L]のシュウ酸水溶液400[g]を加えて振り混ぜた後、静置して有機相と水相とに分離した。この有機相を取り出して濃縮することにより、実験例2のポリカルボシラン19.5[g]を得た。
実験例2のポリカルボシランの理化学的データを以下に示す。
H NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-2.0〜1.0ppm(broad),3.5-4.5ppm(broad)
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad),10〜30ppm(broad);後者2つのピークは重なっている。3つのピークの積分比はおよそ3:6:1であった。
IRスペクトルデータ(液膜法): 3670cm−1(Si-OHに対応), 2950cm−1, 2900cm−1, 2830cm−1(Si-OMeに対応), 2096cm−1, 1360cm−1, 1250cm−1, 1030cm−1, 820cm−1
分子量(GPC):Mw=3,100, Mn=600
また、実験例1と同様の方法により、実験例2のポリカルボシランを用いて膜を形成し、溶剤に対する耐溶解性を実験例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
3.5 比較例1
原料ポリマーであるポリカルボシラン((株)日本カーボン社製,商品名「ニプシType−S」)の理化学的データ
H NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-2.0〜1.0ppm(broad, Si-CH3, Si-CH2に対応),3.5-4.5ppm(broad, SiHに対応)
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad);2つのピークの積分比はおよそ4:6であった。
IRスペクトルデータ(液膜法): 2950cm−1, 2900cm−1, 2096cm−1, 1360cm−1, 1250cm−1, 1030cm−1, 820cm−1
分子量(GPC):Mw=3,000, Mn=500
比較例1においては、実験例1と同様の方法により、実験例1,2の原料ポリマーを用いて膜を形成し、溶剤に対する耐溶解性を実験例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
3.6 比較例2
原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)20[g]をテトラヒドロフランに溶解させて400[g]とし、ここに、濃度が1.0[mol/L]のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)の水溶液5.0[ml]を加えた後、この反応液を50℃で3時間加熱した。次に、この反応液を室温まで冷却した後、2.0[mol/L]のシュウ酸水溶液10[ml]を加えて反応を停止させた。次いで、この反応液にシクロヘキサノン100[g]および0.02[mol/L]のシュウ酸水溶液400[g]を加えて振り混ぜた後、静置して有機相と水相とに分離した。この有機相を取り出して濃縮することにより、比較例2のポリカルボシラン19.8[g]を得た。
比較例2のポリカルボシランの理化学的データを以下に示す。
H NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-2.0〜1.0ppm(broad),3.5-4.5ppm(broad)
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad),10〜30ppm(broad);後者2つのピークは重なっている。3つのピークの積分比はおよそ3:6:1であった。
IRスペクトルデータ(液膜法): 3670cm−1( Si-OHに対応), 2950cm−1, 2900cm−1, 2096cm−1, 1360cm−1, 1250cm−1, 1030cm−1, 820cm−1
分子量(GPC):Mw=7,100, Mn=720
また、実験例1と同様の方法により、比較例2のポリカルボシランを用いて膜を形成し、溶剤に対する耐溶解性を実験例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
3.7. 比較例3
原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)20[g]をテトラヒドロフランに溶解させて400[g]とし、ここに、濃度が1.0[mol/L]のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)のメタノール溶液5.0[ml]を加えた後、この反応液を50℃で3時間加熱した。次に、この反応液を室温まで冷却した後、この反応液にシクロヘキサノン100[g]および純水400[g]を加えて振り混ぜた後、静置して有機相と水相とに分離した。この有機相を取り出して濃縮することにより、比較例3のポリカルボシラン19.9[g]を得た。
比較例3のポリカルボシランの理化学的データを以下に示す。
H NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-2.0〜1.0ppm(broad),3.5-4.5ppm(broad)
29Si NMR(重ベンゼン中)スペクトルデータ:-40〜-30ppm(broad),-20〜10ppm(broad),10〜30ppm(broad);後者2つのピークは重なっている。3つのピークの積分比はおよそ2:6:2であった。
IRスペクトルデータ(液膜法):2950cm−1, 2900cm−1, 2830cm−1(Si-OMeに対応), 2096cm−1, 1360cm−1, 1250cm−1, 1030cm−1, 820cm−1
分子量(GPC):Mw=3,200, Mn=580
また、実験例1と同様の方法により、比較例3のポリカルボシランを用いた溶液から膜を形成し、溶剤に対する耐溶解性を実験例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0005321771
実験例1,2のポリカルボシランでは、IRスペクトルデータにおいて、3670cm−1にSi−OH部位に相当するピークを有し、かつ、2830cm−1にSi−OMe部位に相当するピークを有していた。これにより、実験例1,2のポリカルボシランは、Si−OH部位およびSi−OMe部位を有することが確認された。よって、実験例1,2においては、塩基性触媒(TMAH)の存在下でアルコール(MeOH)を原料ポリマーと反応させることにより、Si−H結合の一部がSi−OMe部位に変換された後、水との反応によりSi−OMe部位の一部がSi−OH部位に変換されたことが理解できる。すなわち、実験例1,2のポリカルボシランはSi−H結合およびSi−OMe部位を含む。
これに対して、比較例1のポリカルボシラン(原料ポリマー)のIRスペクトルデータでは、Si−OHに相当するピークおよびSi−OMeに相当するピークが検出されなかった。これにより、比較例1のポリカルボシランは、Si−OH部位およびSi−OMe部位のいずれも有していないことが確認された。
また、比較例2のポリカルボシランのIRスペクトルデータでは、Si−OH部位に相当するピークは検出されたが、Si−OMe部位に相当するピークは検出されなかった。これにより、比較例2のポリカルボシランは、Si−OH部位を有しているが、Si−OMe部位を実質的に有していないことが確認された。よって、比較例2においては、塩基性触媒(TMAH)の存在下で水を原料ポリマーと反応させることにより、Si−H結合の一部がSi−OH部位に変換されたことが理解できる。
さらに、比較例3のポリカルボシランのIRスペクトルデータでは、Si−OMe部位に相当するピークは検出されたが、Si−OH部位に相当するピークは検出されなかった。これにより、比較例2のポリカルボシランは、Si−OMe部位を有しているが、Si−OH部位を有していないことが確認された。よって、比較例3においては、塩基性触媒(TMAH)の存在下でアルコール(MeOH)を原料ポリマーと反応させることにより、Si−H結合の一部がSi−OMe部位に変換されたことが理解できる。
表1に示す結果によれば、比較例1,3のポリカルボシランは減膜率が大きかったことから、硬化性が悪いことが理解できる。また、比較例2においてはゲル化が生じる結果、粗大粒子が発生し、0.2μmフィルタでろ過した際に目詰まりが発生した。これに対して、実験例1,2のポリカルボシランは、0.2μmフィルタでのろ過に問題がなく、かつ減膜率が極めて小さかった。この結果から、実験例1,2のポリカルボシランは、Si−OH部位およびSi−OMe部位を両方含むことにより、粗大粒子が少なく、かつ硬化性が良好であることが理解できる。
したがって、実験例1,2のポリカルボシランの製造方法によれば、ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、上記一般式(1)で表される構造単位および上記一般式(2)で表される構造単位を有する原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下でメタノールと反応させた後、水と反応させる工程を含むことにより、ゲル化が起きることがないため、粗大粒子が少なく、かつ硬化性が良好なポリカルボシランを製造することができる。

Claims (2)

  1. ケイ素原子と炭素原子とが交互に連続してなる主鎖を有し、下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を有する原料ポリマーを、有機溶剤中で塩基性触媒の存在下でアルコールと反応させることにより、Si−H結合の一部をアルコキシシラン部位に変換させる工程と、
    酸性水溶液を添加することにより、前記アルコキシシラン部位を水と反応させて、該アルコキシシラン部位の一部をシラノール部位に変換した後、該シラノール部位同士の脱水縮合反応により、Si−O−Si結合を形成する工程と、
    を含み、
    重量平均分子量が300〜1,000,000であり、有機溶剤に可溶である、ポリカルボシランの製造方法。
    Figure 0005321771
    ・・・・・(1)
    Figure 0005321771
    ・・・・・(2)
  2. 請求項1において、
    前記原料ポリマーは、下記一般式(3)で表される構造単位、下記一般式(4)で表される構造単位、および下記一般式(5)で表される構造単位のうち少なくとも1つをさらに有する、ポリカルボシランの製造方法。
    Figure 0005321771
    ・・・・・(3)
    Figure 0005321771
    ・・・・・(4)
    Figure 0005321771
    ・・・・・(5)
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