JP5321477B2 - インジェクタ - Google Patents

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Description

本発明は、燃料噴射を行なうインジェクタに関し、ニードルに駆動力を伝達する「ピストン」の軸方向寸法が長いインジェクタに用いて好適な技術に関する。
(従来の技術)
従来技術の一例として、コモンレール等に蓄圧された高圧燃料をインジェクタからディーゼル機関に噴射する蓄圧式燃料噴射装置が知られている。
この蓄圧式燃料噴射装置に用いられるインジェクタは、コモンレールに蓄圧された高圧燃料が入口側燃料通路(通路途中に入口オリフィスを備える)を介して供給される圧力制御室と、この圧力制御室と低圧側とを連通させる出口側燃料通路(通路途中に出口オリフィスを備える)を開閉する電磁弁(電動弁の一例)とを備える(例えば、特許文献1参照)。
インジェクタは、ニードルとノズルボディからなる噴射ノズルを備え、ニードルとノズルボディの間に形成されるノズル室(噴射時に噴孔に通じる燃料室)には、コモンレールに蓄圧された高圧燃料が供給される。また、インジェクタは、圧力制御室の圧力をニードルに付与するピストンを備えるものであり、圧力制御室の圧力はピストンを介してニードルに与えられる。さらに、インジェクタには、ニードルに対して閉弁方向の力を付与するスプリングが設けられている。
そして、噴射開始時の作動は、ピストンに作用する圧力制御室の圧力、スプリングの付勢力、ニードルに作用するノズル室の圧力の3者によりコントロールされる。
(従来技術の問題点)
近年、ピストンを挿通するシリンダ孔を、高圧燃料通路として利用することが提案されている。
シリンダ孔を介して高圧燃料をノズル室へ供給する場合、ピストンとニードルとが軸方向に結合されていないと、圧力制御室の圧力が低下しても、ニードルの上部には高圧燃料が作用した状態が継続されるため、ピストンのみがリフトし、ニードルはリフトしなくなってしまう。
そこで、圧力制御室の圧力が低下した際に、ピストンのリフトにより、ニードルを引っ張り上げるために、ピストンとニードルとを結合する、あるいはピストンとニードルを一体に設けたピストン/ニードル(以下、一体ニードルと称する)を用いる必要がある。
一方、近年では、環境問題から年々排気ガス規制が厳しくなり、噴射圧向上の技術が要求されている。高圧で燃料噴射を行なうために、電磁弁にも大きな駆動力が必要となり、インジェクタの内部に電磁弁を搭載することが困難になっており、電磁弁は噴射ノズルから最も離れたインジェクタの上端に締結される。これにより、圧力制御室も電磁弁に近い側に設けられることになり、その結果、ピストンは、細くて、軸方向長が大変長いものになっている。
このため、ピストンとニードルとを結合手段によって結合したもの(以下、結合ニードルと称する)、あるいは一体ニードルは、軸方向長が大変長くなり、加工上の撓み(軸方向に対する歪み)や、圧力制御室とノズル室から高圧を受けることによる動的な撓みが発生する。
これらの撓みにより、摺動部では大きな摩擦が生じてしまい、摺動性が劣化する懸念や、摩耗による信頼性の低下が懸念される。
そこで、金属バネ(結合手段の一例)を用いてニードルとピストンを結合し、ピストンとニードルの軸ズレ(2つの軸心の不一致)および軸傾斜ズレ(2つの軸心の傾きズレ)を金属バネで許容させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかるに、金属バネによりニードルとピストンを結合しても、金属バネの復元力が軸ズレや軸傾斜ズレを復元させるように作用する。その結果、金属バネを用いても、摺動部では大きな摩擦が生じてしまい、摺動性が劣化する懸念や、摩耗による信頼性の低下が懸念される。
なお、上記では、圧力制御室の油圧制御によってピストンの駆動を行なう「2ウェイ・インジェクタ」を用いて従来技術の問題点を説明したが、「ピストン」の軸方向寸法が長いインジェクタ(例えば、ダイレクト駆動タイプのインジェクタ等)であれば、上記と同様の問題点が生じてしまう。
特表2003−529718号公報 特開平9−32681号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ピストンとニードルの軸ズレや軸傾斜ズレを吸収して、ピストンおよびニードルの摺動性に優れたインジェクタの提供にある。
〔請求項1の手段〕
請求項1(本発明1)に記載のインジェクタによれば、噴孔を開放するニードル弁を摺動可能に支持するノズルボディと、スリーブによって区画され、燃料圧力が制御される圧力制御室に端面が露出し、かつ、高圧燃料が充満し、噴射する燃料の燃料供給流路を形成する燃料チャンバを貫通する制御ピストンを内蔵する弁ボディと、圧力制御室の燃料圧力を開放する出口オリフィスを開閉する開閉弁機構とを備えたインジェクタであって、制御ピストンの一端側とニードル弁の他端側とは、制御ピストンとニードル弁の端部に形成したくびれ部を有する傘状端部と、C型切欠き部を有する袋穴とを、シムを介して係合する連結機構によって軸心方向に一体的に保持されており、シムは、制御ピストンが連結機構を介してニードル弁を引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるように配置されていることを特徴としている。
さらに、請求項1のインジェクタは、連結機構において、(i)「制御ピストンとニードル弁の径方向の間」に隙間が形成されるとともに、(ii)「制御ピストンとシムの径方向の間」または「ニードル弁とシムの径方向の間」の少なくとも一方に隙間が形成されるものである。
これにより、制御ピストンとニードル弁との軸心を高精度に整合させることなく軸ズレやたわみ変形(軸傾斜ズレ)を吸収して、摩擦や摩耗のない円滑な摺動を確保する。
また、請求項1のインジェクタによれば、シムは、連結機構のクリアランス調整機構を有していることを特徴としている。
これにより、最小限の適正クリアランスの設定が可能となり、この適正クリアランス内で軸ズレおよびたわみ変形を径方向に過大な荷重を伝達することなく容易に吸収できる。
さらに、請求項1のインジェクタによれば、シムは、その一端面がテーパ状の円錐面であり、他端面が平面により構成されていることを特徴としている。
これにより、対となる球面状斜面とにより調芯機能が簡単に確保できる。
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載のインジェクタによれば、シムは、その他端面の平面が制御ピストンもしくはニードル弁の各端面と当接して、径方向の軸ズレを吸収することを特徴としている。
これにより、制御ピストンもしくはニードル弁は、摩擦や摩耗のない円滑な摺動が可能となる。
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載のインジェクタによれば、シムは、その一端面のテーパ状の円錐面が制御ピストンもしくはニードル弁に設けた球面状斜面に線接触して当接することを特徴としている。
これにより、制御ピストンもしくはニードル弁の軸心方向に沿うたわみ変形を調芯機能によって許容することが簡単にでき、摩擦や摩耗のない円滑な摺動が可能となる。
〔請求項4の手段〕
請求項(本発明2)の手段を採用するインジェクタは、ピストンとニードルとを結合手段によって結合するものであり、この結合手段は、ピストンまたはニードルの一方の端部に第1小径部を介して形成された第1鍔部と、ピストンまたはニードルの他方の端部に第2小径部を介して形成された第2鍔部と、第1、第2鍔部を当接させた状態で、第1、第2鍔部を軸方向の両側から挟むカプラと、第1鍔部とカプラの軸方向の間に配置されて、カプラ内における軸方向の隙間を調整するとともに、ピストンがニードルを引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるシムとからなる。
カプラは、第1、第2小径部および第1、第2鍔部に対して径方向の隙間を形成する。 シムは、第1小径部またはカプラの少なくとも一方に対して径方向の隙間を形成する。 カプラとシムは、軸方向に対して垂直な平面同士で軸方向において接触する。
第2鍔部とカプラは、軸方向に対して垂直な平面同士で軸方向において接触する。
第1鍔部とシムは、軸方向外側に向けて膨出する球面と、軸方向内側に向けて窪む円錐面とで軸方向に接触する。
第1鍔部に対して第2鍔部が傾斜可能に設けられる(これは、第2鍔部に対して第1鍔部が傾斜可能に設けられることと同じ意味である)。
請求項(本発明2)のインジェクタは、上記の構成を採用することにより、次の効果を奏する。
ピストンの軸心とニードルの軸心とが一致しない「軸ズレ」が生じても、(i)平面同士のスライドと、(ii)径方向の隙間とにより、「軸ズレの全てまたは一部」を吸収してピストンとニードルを結合することができる。
一方、ピストンの軸心とニードルの軸心とが相対的に傾く「軸傾斜ズレ」が生じても、(i)第1鍔部に対して第2鍔部が傾斜可能で、(ii)「球面」と「円錐面」とが線接触することにより、「軸傾斜ズレの全てまたは一部」を吸収してピストンとニードルを結合することができる。
このように、ピストンとニードルに「軸ズレ」および「軸傾斜ズレ」が生じても、それらの「ズレの全てまたは一部」を結合手段によって吸収して、軸方向の力を伝達する。即ち、結合手段によって、ズレの吸収を行なって力の伝達の偏りの発生を無くしたり、抑えたりすることができる。
このようにして、ピストンの軸方向寸法が長いインジェクタであっても、摺動部の摩耗を防ぎ、ピストンとニードルの摺動性を良好に保つことができる。
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段を採用するインジェクタは、高圧燃料が供給される圧力制御室の燃料圧力を制御する電動弁と、内部に高圧燃料が供給されるノズル室を有する噴射ノズルとを具備し、ノズル室の圧力に対して圧力制御室の圧力を変化させることで燃料の噴射と停止の切り替えが行なわれるものである。
そして、ピストンが圧力制御室の圧力を受け、ニードルがノズル室の圧力を受けるものである。
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段を採用するインジェクタのロアボディは、ピストンが挿通されるシリンダ孔の内部に、高圧燃料が供給される。
シリンダ孔の内部には、ピストンを摺動自在に支持する摺動スリーブが配置されて、この摺動スリーブの内側に圧力制御室が形成される。
シリンダ孔の内部に供給された高圧燃料は、摺動スリーブに形成された入口オリフィスを介して圧力制御室へ導かれるとともに、ニードルに形成された燃料導入路を介してノズル室へ導かれる。
このように、ピストンが挿通されるシリンダ孔が、高圧燃料を供給する通路として利用されるため、ロアボディの外径寸法を小径化することが可能になる。
また、ニードルに燃料導入路が形成されるため、ノズルボディに燃料導入路を設ける必要がなく、ノズルボディの外径を小径化することが可能になる。
〔請求項7の手段〕
請求項7の手段を採用するインジェクタの第1鍔部と第2鍔部は、軸方向外側に向けて膨出する球面と、軸方向に対して垂直な平面とで軸方向に接触するものである。
これにより、第1鍔部に対して第2鍔部が傾斜可能であり、「ピストンがニードルを引っ張り上げる際」および「ピストンがニードルを押し下げる際」にピストンとニードルに軸傾斜ズレがあっても、平面に対する球面の回転によって両者の傾きのズレを吸収することができる。
また、「ピストンがニードルを押し下げる際」は、平面に対する球面の接触によって軸方向の力の伝達を行なうため、ニードルに対して力の偏りの発生を防ぐことができる。
〔請求項8の手段〕
請求項8の手段を採用するインジェクタの第1鍔部と第2鍔部は、軸方向に対して垂直な平面と、軸方向に対して垂直な平面とを有し、この両平面の間には所定の隙間が設けられるものである。
これにより、第1鍔部に対して第2鍔部が傾斜可能であり、「ピストンがニードルを引っ張り上げる際」に、ピストンとニードルに軸傾斜ズレがあった場合に、両者の傾きのズレを両平面間の隙間によって吸収することができる。
また、「ピストンがニードルを押し下げる際」は、一方の平面に対する他方の平面の傾斜接触によって、ピストンとニードルの軸傾斜ズレを吸収することができるとともに、平面と平面の傾斜接触によって軸方向の力の伝達を行なうことで、ニードルに対して力の偏りの発生を防ぐことができる。
インジェクタの全体構成断面図である(実施例1)。 インジェクタのA部を示し、(a)は部分軸断面図であり、(b)はB−B断面図である(実施例1)。 インジェクタの連結機構を示し、(a)は部分軸断面図であり、(b)はB−B断面図である(実施例2)。 連結機構を示す断面図である(実施例3)。 連結機構を示す断面図である(実施例4)。 インジェクタの断面図である(実施例5)。 結合手段の拡大図である(実施例5)。 結合手段の分解図である(実施例5)。
本発明1(請求項1にかかる発明)の実施形態1(発明1の機能的構成)は、上記「請求項1の手段」で開示した通りであって、その具体的な実施形態を後述する実施例1〜4において説明する。
本発明2(請求項4にかかる発明)の実施形態2(発明2の具体的一例の機能的構成)を、図6〜図8を参照して説明する。なお、以下(この実施形態2および後述する実施例5)では、図6の図示上側を上、図示下側を下として説明するが、この上下は説明のための一例であって限定されるものではない。
インジェクタは、高圧燃料が供給される圧力制御室1’の燃料圧力を制御する電磁弁2’(電動弁の一例)と、内部に高圧燃料が供給されるノズル室3’を有する噴射ノズル4’とを具備し、ノズル室3’の圧力に対して圧力制御室1’の圧力を変化させることで燃料の噴射と停止の切り替えが行なわれるものである。
このインジェクタは、高圧燃料の供給を受けるロアボディ5’と、このロアボディ5’に締結されるノズルボディ6’と、ロアボディ5’に形成されたシリンダ孔7’の内部で軸方向へ摺動自在に支持されて圧力制御室1’の圧力を受けるピストン8’と、このピストン8’と同軸上に配置され、ノズルボディ6’の内部で軸方向に摺動自在に支持されてノズル室3’の圧力を受けるニードル9’と、ピストン8’とニードル9’とを結合する結合手段10’とを具備する。
(a)結合手段10’は、ピストン8’またはニードル9’の一方の端部に第1小径部11a’を介して形成された第1鍔部11’と、ピストン8’またはニードル9’の他方の端部に第2小径部12a’を介して形成された第2鍔部12’と、第1、第2鍔部11’、12’を当接させた状態で、第1、第2鍔部11’、12’を軸方向の両側から挟むカプラ13’と、第1鍔部11’とカプラ13’の軸方向の間に配置されて、カプラ13’内における軸方向の隙間を調整するとともに、ピストン8’がニードル9’を引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるシム14’とからなる。
(b)カプラ13’は、第1、第2小径部11a’、12a’および第1、第2鍔部11’、12’に対して径方向の隙間S1’を形成する。
(c)シム14’は、第1小径部11a’またはカプラ13’の少なくとも一方に対して径方向の隙間S2’を形成する。
(d)カプラ13’とシム14’は、軸方向に対して垂直な平面同士F1’で軸方向において接触する。
(e)第2鍔部12’とカプラ13’は、軸方向に対して垂直な平面同士F2’で軸方向において接触する。
(f)第1鍔部11’とシム14’は、軸方向外側に向けて膨出する球面M1’と、軸方向内側に向けて窪む円錐面M2’とで軸方向に接触する。
(g)第1鍔部11’に対して第2鍔部12’が傾斜可能に設けられる。
〔実施例1の構成〕
図1および図2は本発明1にかかる実施例1を示したもので、図1はインジェクタの全体構成断面図であり、図2は図1に示すインジェクタのA部を示し、(a)は部分軸断面図であり、(b)はB−B断面図である。
燃料噴射弁(インジェクタ)1は噴射弁本体2と、噴射弁本体2の後端に装着した電磁弁3と、先端側に締結した燃料の噴射ノズル4とからなる。電磁弁3は、図示しないエンジン制御装置(ECU)から送出される制御信号により制御される。なお、以下の説明では、燃料噴射弁の噴射ノズル側を一端側または先端側、電磁弁側を他端側または後端側という。
噴射弁本体2は、軸心に貫通したシリンダ21が設けられるとともに、シリンダ21に高圧燃料を供給する高圧燃料通路22と、シリンダ21に並行して低圧燃料通路23が設けられ、高圧燃料通路22に高圧燃料を供給する筒状のインレット部26と、低圧燃料通路23に連通して低圧燃料を外部に排出するアウトレット部27とを備えた棒状の弁ボディ20と、弁ボディ20のシリンダ21の内部に収容され、後記するニードル43の開閉弁方向に付勢力を伝達する制御ピストン15と、制御ピストン15の背圧の大きさを制御する開閉弁機構5等からなる。
弁ボディ20の後端側には、円筒状の電磁弁設置室10が設けられ、電磁弁設置室10には電磁弁3が装着されてリテーニングナット24により締結されている。電磁弁3は、電磁弁設置室10の後端側に設置された電磁ソレノイド30、および電磁弁設置室10の先端側に設置された開閉弁機構5を備えている。
電磁ソレノイド30は、複合磁性材を積層した磁気コア内に電磁コイルを配設した構造を有する。電磁ソレノイド30の先端面は、後記する可動子50を吸引する吸引面となっており、可動子50が吸引されてリフトを生じて当接する。
開閉弁機構5は、電磁弁設置室10内の先端側に配置され、可動子50と可動子50を保持する可動子ホルダ51とを有する。そして、電磁弁設置室10の最先端側には略円盤状のオリフィスプレート60が収容されている。
可動子50は、平板部52およびシャフト部53を有し、平板部52は、電磁ソレノイド30の先端面に吸着される吸着面となっている。シャフト部53は円柱状を呈し、可動子ホルダ51の中心穴に摺動自在に嵌め込まれている。可動子ホルダ51は、電磁弁設置室10の内周に螺合され、締結軸力を生じ、オリフィスプレート60を電磁弁設置室10の端面に接合させている。
そして、可動子50は、電磁ソレノイド30の軸心内に配されたばね32で先端方向(閉弁方向)に付勢され、電磁ソレノイド30で生じた磁力により後端方向(開弁方向)に吸引されて先後端方向(図中上下)に移動(リフト)する。
シャフト部53の先端面の中心には、ボール弁56が収容されている。ボール弁56は他端面が球状であるが、一端面はオリフィスプレート60の後端面の出口オリフィス62を塞ぐシール平面状となっている。
オリフィスプレート60は、その外周端面の一部に切欠きを有する略円盤状であり、その先端面には、その中心に円錐状もしくは円柱状の凹部が形成され、後端面の中心に形成された出口オリフィス62と連通している。
インレット部26は高圧燃料供給源である図示しないコモンレールと接続され、高圧燃料が高圧燃料通路22に供給される。一方、アウトレット部27は、電磁弁設置室10の先端側とも連通している。従って、アウトレット部27からは、出口オリフィス62から流出する制御用燃料と、低圧燃料通路23を経由して流れるリーク燃料とをまとめて外部の低圧燃料側に排出する。
制御ピストン15は、3段長柱状に形成され、摺動可能とするクリアランスシール型の中径の摺動部16と、摺動部を有しない径大のプレッシャピン部18と、摺動部16とプレッシャピン部18とを繋ぎ、リターンスプリング11を収容するために径小に形成されたロッド部17とからなる。そして、制御ピストン15は、摺動部16にスリーブ14を介してシリンダ21内に挿入され、摺動可能に配設される。一方、径大のプレッシャピン部18はシリンダ21とは摺動することなく燃料チャンバ42内を貫通して、所定の隙間を有する燃料供給流路41を形成して配設される。
スリーブ14は円筒状の所定の長さを有する筒部材からなり、長手方向の一端側略半分はその内外周に摺動面が形成され、他端側略半分はその内外周が薄肉加工されて、シリンダ21内に挿着される。そして、シリンダ21内周壁面とスリーブ14の円筒状薄肉部の外周面との間に環状の空間と、円筒状薄肉部の内周面と制御ピストン15の摺動部16の外周面との間に環状の空間を形成する。
そして、外側の環状空間は高圧燃料通路22と連通して高圧燃料を供給する高圧燃料供給流路13を形成し、内側の環状空間は閉ざされた空間の圧力制御室61を形成する。この圧力制御室61は下流側に円錐状もしくは円柱状の凹部を経由して出口オリフィス62と連通し、上流側では円筒状薄肉部に形成された入口オリフィス63と連通して圧力制御がなされる。
そして、このスリーブ14の一端側端面位置、つまり、制御ピストン15のロッド部17に相当する位置に、一端がばね受け座部材を介して径大のプレッシャピン部18に係止し、他端が直接にスリーブ14の一端側端面に係止されるリターンスプリング11が配置されている。このリターンスプリング11の付勢力によって、制御ピストン15は先端方向(閉弁方向)に付勢され、プレッシャピン部18の先端は、この付勢力によって、ニードル43の後端に当接する。
ここで、制御ピストン15の後端は円錐台形状等を有して圧力制御室61に臨み、供給される高圧燃料の圧力を受けるものの、プレッシャピン部18およびロッド部17を含む全表面領域が燃料チャンバ42内の高圧燃料の同一圧力を一様に受けるのでバランスして高圧燃料による付勢力は生じない。
そして、制御ピストン15の後端が臨む圧力制御室61の背圧が低圧になると、圧力バランスを保つ制御ピストン15の圧力差による付勢力が後端方向(開弁方向)に生じ、この付勢力とリターンスプリング11の付勢力、およびニードル43の付勢力との釣合いが解消されプレッシャピン部18はニードル43の後端と離れる方向に移動する。
しかし、プレッシャピン部18とニードル43とは、後記するように連結機構7によって連結されるので、制御ピストン15の後端方向への付勢力によってニードル43を引っ張り上げるように付勢し、ニードル43も後端方向(開弁方向)に移動する。
噴射ノズル4は大径部のノズルボディ40および小径部のノズル47を有する二段筒型形状であり、ノズルボディ40の中心に、ニードル43を収容するニードル穴48が形成されている。ニードル穴48は少なくとも2段穴形状であり、径大穴は燃料チャンバ45を形成し、径小穴はクリアランスシール型の摺動部を有する摺動穴である。
また、ニードル43は2段長柱状に形成され、径大部は摺動自在となるクリアランスシール型のニードル摺動部38と、径小部は高圧燃料の通路となるニードル燃料通路部39を構成する。そして、ニードル摺動部38の内部を傾斜して貫通する流量絞り機能を有した高圧燃料流路孔44が設けられている。
また、ニードル燃料通路部39の下流側のニードル穴48の先端には、テーパ構造のノズル先端室が構成され、高圧燃料を噴霧する1個もしくは複数個の適切な数の噴孔49が設けられている。そして、このノズルボディ40が弁ボディ20の先端にリテーニングナット25によって締結して、結合される。
このとき、本実施例では、ノズルボディ40内のニードル43と弁ボディ20内の制御ピストン15との連結は、テーパ形状シムを採用する連結機構7によって軸ズレとたわみ変形の吸収を可能とすることを特徴としている。以下に、この構成を図2に基づいて詳しく説明する。
図2に示すように、本発明になる連結機構7は、C型切欠き部79を有する袋穴75にC型切欠き幅より径小なくびれ部71を有し、C型切欠き幅より径大な傘状端部72を嵌合させて軸方向を連結する構成である。このため、制御ピストン15のプレッシャピン18の先端には、所定の直径と首下長さを有する円柱状の突出部が形成され、この突出部の首下付け根に所定の太さのくびれ部71を設けて、突出部の先端部にくびれ部71より径大、かつ、C型切欠き幅より径大な傘状端部72が形成されている。そして、さらに、傘状端部72の首下付け根寄り(プレッシャピン側)には滑らかな球面状斜面73と、および傘状端部72の反プレッシャピン側には、同様に、滑らかな球面状凸面74が設けられている。
一方、ニードル43のニードル摺動部38の後端には、ニードル摺動部38と同径もしくは径大の円柱状の突出部が形成され、この突出部の略中央に所定の幅および高さを有する袋穴75が形成され、さらに、袋穴75が後端部に形成する余肉部76は適度な厚みを有するとともに所定の幅に切り欠かれたC型切欠き部79を有している。
そして、ニードル43の袋穴75に制御ピストン15の傘状端部72をC型切欠き部9から挿着することで、ニードル43と制御ピストン15との連結は容易に実施される。 本実施例では、さらに、3段長柱状の制御ピストン15に静的もしくは動的なたわみが生じても、そのたわみを吸収するシム77を介して連結することを特徴としている。
シム77は、図2に示すように、軸心を有する円板もしくは円柱状部材であり、一端側はテーパ状の円錐面78を形成し、他端側は平面を形成し、そして、軸心を含めてC型切欠きが放射状に1箇所形成されている。そして、このシム77を傘状端部72の首下側と袋穴75の余肉部76側との間に挟み込んだ状態で連結する。このとき、厚みの異なるシム77の選択嵌合により、傘状端部72と袋穴75との過不足のない隙間(クリアランス)管理が可能となる。
これにより、この連結機構7では、制御ピストン15のリフト開始時は、傘状端部72の首下側の球面状斜面73とシム77のテーパ状の円錐面78との調芯機能の作用によって、軸ズレは水平移動によって吸収するとともに、たわみによる変形は傘状端部72の回転移動によって吸収される。また、制御ピストン15の復帰時、即ち、リターンスプリング11による付勢時は、傘状端部72の反首下側の球面状凸面74と袋穴75の平面との当接により軸ズレおよびたわみによる変形は吸収される。
ここで、連結機構7における軸方向および径方向の組付け状態について説明する。
連結機構7では、シム77の軸方向長の選択設定により、制御ピストン15とニードル43が、例えば「軸方向に軽く圧接した状態」あるいは「微少クリアランスを介した状態」で組付けられる。
これにより、(i)制御ピストン15とニードル43の軸傾斜ズレを、袋穴75の底面(平面)と、球面状凸面74との当接面のスライドによって吸収できるとともに、
(ii)電磁弁3がONして制御ピストン15がニードル43を「引っ張り上げる際」や、逆に、電磁弁3がOFFして制御ピストン15がニードル43を「押し下げる際」に、ガタ付きなく(即ち遅滞なく)、制御ピストン15によってニードル43を駆動することができる。
一方、連結機構7では、制御ピストン15とニードル43の軸ズレを吸収するべく、余肉部76とシム77との軸方向の当接面が、互いに軸方向に対して垂直な平面に設けられるとともに、径方向に隙間S1、S2が形成されている。
この径方向の隙間S1、S2を説明する。
連結機構7では、制御ピストン15とニードル43の径方向の間に、隙間S1が形成されている。
具体的に、この隙間S1は、くびれ部71の外径と余肉部76の内径との間(径方向間)に形成されるとともに、傘状端部72の外径と袋穴75の内径との間(径方向間)に設けられる。この隙間S1は、制御ピストン15とニードル43の最大軸ズレ量より大きく設定されることが望ましいが、限定されるものではない。
また、連結機構7は、「制御ピストン15とシム77の径方向の間」または「ニードル43とシム77の径方向の間」の少なくとも一方に、隙間S2が形成されている。
具体的に、この隙間S2は、くびれ部71の外径とシム77の内径の間(径方向間)、およびシム77の外径と袋穴75の内径の間(径方向間)に設けられる。そして、くびれ部71の外径とシム77の内径の隙間S2と、シム77の外径と袋穴75の内径の隙間S2との和は、制御ピストン15とニードル43の最大軸ズレ量より大きく設定されることが望ましいが、限定されるものではない。
〔実施例1の作用〕
本実施例の燃料噴射弁1は、噴射指令前にあっては、ボール弁56が出口オリフィス62を塞ぐ閉弁状態にあり、圧力制御室61からの燃料の流出入はなく、圧力制御室61はレート圧力と同じ高圧状態にある。そのため、制御ピストン15に掛かる油圧の作用力は釣り合い、リターンスプリング11のみの閉弁方向の付勢力が作用する。また、ニードル43に掛かる油圧の作用力もシートより上側に油圧が掛かるため下側の力が作用する。従って、ニードル43にはこの油圧による作用力とリターンスプリング11の付勢力との合力が作用して、ニードル43はシートに押圧されて燃料をシールする。
噴射指令後にあっては、電磁ソレノイド30が通電されオンすると、可動子50は電磁力により吸引されて後端方向に移動し、そして、可動子50に連動してボール弁56が上位に変位し、出口オリフィス62が開放されて圧力制御室61内の背圧は低圧となる。すると、制御ピストン15には上側の付勢力が発生する。そしてこの制御ピストン15の付勢力とリターンスプリング11の付勢力とニードル43に掛かる付勢力とがバランスしたとき、ニードル43がシート部から離れ、燃料が流出し噴孔49から噴射が始まる。
このとき、制御ピストン15およびニードル43の力の関係は、制御ピストン15がニードル43を動かすために上記の連結機構7を介して引っ張り上げる力を伝達する。
そして、噴射指令が終了し、電磁ソレノイド30の通電がオフされると、可動子50がばね32の付勢力で先端方向に移動し、ボール弁56が出口オリフィス62を塞ぎ、入口オリフィス63から高圧燃料圧が圧力制御室61に作用し、圧力回復がなされて制御ピストン15に掛かる油圧の作用力は再び、釣り合いを保つ。そして、リターンスプリング11の閉弁方向の付勢力が作用して、ニードル43は噴孔49を塞いで、燃料の噴射は終了する。このとき、制御ピストン15およびニードル43の力の関係は、制御ピストン15がニードル43を上記の連結機構7を介して押し付ける力を伝達する。
〔実施例1の効果〕
本実施例では、噴孔49を開放するニードル43を摺動可能に支持するノズルボディ40と、スリーブ14によって区画され、燃料圧力が制御される圧力制御室61に端面が露出し、かつ、高圧燃料が充満し、噴射する燃料の燃料供給流路41を形成する燃料チャンバ42を貫通する制御ピストン15を内蔵する弁ボディ20と、圧力制御室61の燃料圧力を開放する出口オリフィス62を開閉する開閉弁機構5とを備えた燃料噴射弁1であって、制御ピストン15の一端側とニードル43の他端側とは、制御ピストン15とニードル43の端部に形成したくびれ部71を有する傘状端部72と、C型切欠き部79を有する袋穴75とを、シム77を介して係合する連結機構7によって軸心方向に一体的に保持した。
これにより、制御ピストン15とニードル43との軸心を高精度に整合させることなく軸ズレやたわみ変形を吸収して、摩擦や摩耗のない円滑な摺動を確保する。
また、シム77は、連結機構7のクリアランス調整のための選択嵌合を採用したので、最小限の適正クリアランスの設定が可能となり、この適正クリアランス内で軸ズレおよびたわみ変形を径方向に過大な荷重を伝達することなく容易に吸収できる。
さらに、シム77は、その一端面がテーパ状の円錐面78であり、他端面が平面により構成されており、これと対をなす球面状斜面73とにより調芯機能が簡単に確保でき、径方向の軸ズレを吸収するとともに制御ピストン15もしくはニードル43の軸心方向に沿うたわみ変形を調芯機能によって許容することが簡単にでき、摩擦や摩耗のない円滑な摺動が可能となる。
図3は、実施例2を示したもので、図3は燃料噴射弁の連結機構を示し、(a)は部分軸断面図であり、(b)はB−B断面図である。実施例1と実質的に同一構成部分には同符号を付け、詳細な説明は省略する。
実施例1では、制御ピストン15にくびれ部71をもつ傘状端部72が設けられ、ニードル43にC型切欠き部79をもつ袋穴75が設けられて、その間にシム77を介して軸心方向を一体的に保持する連結機構7が適用されている。本変形例は、これに限ることなく、図3に示すように、制御ピストン15にC型切欠き部79をもつ袋穴75が設けられ、ニードル43にくびれ部71をもつ傘状端部72が設けられて、その間にシム77を介して軸心方向を一体的に保持する連結機構7を採用している。
この構成は、実施例1の連結機構7と軸心方向が上下逆配置であり、従って、シム77も逆転して、テーパ状の円錐面78が上面に、平面側が下面に位置するように配設される。よって、シム77の選択嵌合により最小限の適正クリアランスが確保でき、また、シム77のテーパ状の円錐面78と球面状斜面73とが調芯機能の線接触が可能となるため、軸ズレおよびたわみ変形を吸収し、摩擦や摩耗のない円滑な摺動が可能となる実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
図4を参照して実施例3を説明する。なお、以下の実施例3、4において、上記実施例と同一符号は同一機能物を示すものである。
上記実施例1、2では、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なう部位を、傘状端部72とシム77の当接面に設ける例を示した。
具体的に上記実施例1、2では、傘状端部72とシム77の当接面のうち、一方の当接面を球面(球面状斜面73)に設け、他方の当接面をテーパ面(円錐面78)に設けている。そして、球面とテーパ面の当接部位により、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なう例を示した。
これに対し、この実施例3と、下記実施例4は、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なう部位を、上述した余肉部76とシム77の当接面に設けるものである。
具体的に、この実施例3は、上述した実施例1と同様、図4に示すように、くびれ部71および傘状端部72を制御ピストン15の図示下端に設けるとともに、袋穴75(傘状端部72を隙間S1を隔てて収容する部分)および余肉部76(傘状端部72より小径で、くびれ部71の周囲を隙間S1を隔てて覆う部分)をニードル43の図示上端に設ける。
そして、余肉部76とシム77の当接面のうち、一方の当接面を球面(球面状斜面73)に設け、他方の当接面をテーパ面(円錐面78)に設ける。そして、余肉部76とシム77の当接箇所である球面(球面状斜面73)とテーパ面(円錐面78)により、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なうものである。
なお、この図4では、球面(球面状斜面73)をシム77の図示上面に設け、テーパ面(円錐面78)を余肉部76の図示下面に設ける例を示しているが、図4とは異なり、球面(球面状斜面73)を余肉部76の図示下面に設け、テーパ面(円錐面78)をシム77の図示上面に設けるものであっても良い。
一方、この実施例3では、軸傾斜ズレの吸収を行なう球面(球面状斜面73)とテーパ面(円錐面78)を、余肉部76とシム77の当接面に設けている。このため、実施例3では、軸ズレの吸収を行なう部位を、傘状端部72とシム77との軸方向の当接面に設けており、傘状端部72とシム77の軸方向の当接面は、互いに軸方向に対して垂直な平面に設けられている。
図5を参照して実施例4を説明する。
この実施例4は、上記実施例3と同様、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なう部位を、上述した余肉部76とシム77の当接面に設けるものである。 この実施例4は、図5に示すように、くびれ部71および傘状端部72をニードル43の図示上端に設けるとともに、袋穴75(傘状端部72を隙間S1を隔てて収容する部分)および余肉部76(傘状端部72より小径で、くびれ部71の周囲を隙間S1を隔てて覆う部分)を制御ピストン15の図示下端に設ける。
そして、余肉部76とシム77の当接面のうち、一方の当接面を球面(球面状斜面73)に設け、他方の当接面をテーパ面(円錐面78)に設ける。そして、余肉部76とシム77の当接箇所である球面(球面状斜面73)とテーパ面(円錐面78)により、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なうものである。
なお、この図5では、球面(球面状斜面73)をシム77の図示下面に設け、テーパ面(円錐面78)を余肉部76の図示上面に設ける例を示しているが、図5とは異なり、球面(球面状斜面73)を余肉部76の図示上面に設け、テーパ面(円錐面78)をシム77の図示下面に設けるものであっても良い。
一方、この実施例4は、上記実施例3と同様、軸ズレの吸収を行なう球面(球面状斜面73)とテーパ面(円錐面78)を、余肉部76とシム77との軸方向の当接面に設けている。このため、実施例4では、軸ズレの吸収を行なう部位を、実施例3と同様、傘状端部72とシム77の軸方向の当接面に設けており、傘状端部72とシム77の軸方向の当接面は、互いに軸方向に対して垂直な平面に設けられている。
次に、本発明2をコモンレール(蓄圧)式燃料噴射装置のインジェクタに適用した実施例5を、図6〜図8を参照して説明する。なお、この実施例5において、上述した[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
(インジェクタの構成)
インジェクタは、例えばディーゼルエンジン用のコモンレール式燃料噴射装置に用いられ、図示しないコモンレールから供給される高圧燃料(例えば、160Mpa以上の超高圧燃料)をエンジンの気筒内に噴射するものであり、高圧燃料が供給される圧力制御室1’の燃料圧力を制御する電磁弁2’、および高圧燃料が供給されるノズル室3’を備え、このノズル室3’に対する圧力制御室1’の燃料圧力を電磁弁2’によって制御することで、燃料の噴射と停止を行なうものである。
具体的に、インジェクタは、ロアボディ5’(ノズルホルダ)の上側に電磁弁2’を締結するとともに、ロアボディ5’の下側に噴射ノズル4’を締結する構造を採用する。
ロアボディ5’の内部には、上下方向に延びるシリンダ孔7’、コモンレールから供給された高圧燃料をシリンダ孔7’の上下方向の略中間部に導く高圧燃料通路21’、および低圧側に連通する低圧燃料通路22’等が形成されている。
シリンダ孔7’は、上下方向に延びるピストン8’を内側に挿入配置するものであり、シリンダ孔7’とピストン8’の間は、高圧燃料通路21’から供給された高圧燃料をシリンダ孔7’の上端および下端へ導く燃料通路として用いられる。
ピストン8’は、ニードル9’と結合手段10’(ジョイント)によって結合されるものである。そして、結合された結合ニードル(ピストン8’+ニードル9’)は、ピストン8’の上部に設けられた1箇所の摺動支持構造と、ニードル9’に設けられた1箇所の摺動支持構造とにより、上下方向に摺動自在に支持される。なお、結合手段10’の詳細は後述する。
ピストン8’の上部の摺動支持構造について説明する。
ピストン8’の上部は、シリンダ孔7’の上部に配置される摺動スリーブ23’の内周面によって摺動自在に支持される。
この摺動スリーブ23’は、ピストン8’の中間外周部に装着されたスプリング24’の付勢力により、シリンダ孔7’の上部に装着された弁座プレート25’の下面に常に当接した状態で配置される。
摺動スリーブ23’は、シリンダ孔7’の内部に装着された円筒体であり、摺動スリーブ23’の下側内周面には、ピストン8’を摺動自在に支持するピストンガイド孔23a’が形成されている。
なお、ピストン8’においてピストンガイド孔23a’に摺接する部分には、ピストンガイド孔23a’により摺動支持されるピストン摺動部8a’が設けられている。そして、ピストンガイド孔23a’とピストン摺動部8a’の摺動クリアランスは、シール機能を果たすように小さく設けられている。
ここで、上述した圧力制御室1’は、ピストン8’の上端、弁座プレート25’、摺動スリーブ23’で囲まれる空間により形成されるものであり、ピストン8’の上下移動に応じて容積が変化する。
摺動スリーブ23’には、高圧燃料通路21’からシリンダ孔7’の上側に供給された高圧燃料の一部を、圧力制御室1’に導く手段(入口側燃料通路)が設けられている。
具体的に、摺動スリーブ23’の外周面は、シリンダ孔7’の内周面より少し小径に設けられており、シリンダ孔7’と摺動スリーブ23’の間には、高圧燃料通路21’からシリンダ孔7’の内部に供給された高圧燃料が導入されるように設けられている。
摺動スリーブ23’の上側には、内外を貫通した入口オリフィス30’が形成されている。この入口オリフィス30’は、摺動スリーブ23’の外周に供給された高圧燃料を絞って圧力制御室1’に供給するものである。
なお、摺動スリーブ23’の上側内周面は、上述したピストンガイド孔23a’より少し大径に設けられ、摺動スリーブ23’の上側に配置されるピストン8’の上端部の外周面と、摺動スリーブ23’との間に、圧力制御室1’に通じる環状通路を形成している。
スプリング24’は、ピストン8’と摺動スリーブ23’との間に介在されて、ピストン8’を介してニードル9’に閉弁力(下方に向かう付勢力)を与えるバネ手段である。 具体的に、スプリング24’は、ピストン8’の中間外周部に装着された圧縮コイルバネである。ピストン8’には、下側が大径となる段差部が形成されており、その段差部にバネ座31’を装着している。そして、スプリング24’は、このバネ座31’と上述した摺動スリーブ23’との間に挟まれて圧縮された状態で配置される。これにより、スプリング24’の復元力によって、ピストン8’を介してニードル9’に下方に向かう閉弁力が付与される。
次に、電磁弁2’を説明する。
電磁弁2’は、弁座プレート25’に形成された出口側燃料通路を開閉するものであり、通電(ON)されると弁座プレート25’に形成された出口側燃料通路を開き、通電が停止(OFF)されると出口側燃料通路を閉じるものである。
ここで、出口側燃料通路は、上述した圧力制御室1’と低圧燃料通路22’とを連通させる通路であり、その内部には出口側燃料通路を絞る出口オリフィス32’が形成されている。ここで、出口オリフィス32’の流路径(内径)は、入口オリフィス30’の流路径(内径)よりも大きく設定されている。なお、「出口オリフィス32’の流路径(内径)」≦「入口オリフィス30’の流路径(内径)」であっても良い。
電磁弁2’は、リテーニングナット33’によってロアボディ5’の上部に結合固着されるものであり、通電(ON)されると電磁力を発生するソレノイド34’と、このソレノイド34’の発生する電磁力によって上方(開弁方向)へ磁気吸引されるバルブ35’と、このバルブ35’を下方(閉弁方向)へ付勢するリターンスプリング36’とを備える。
具体的に、バルブ35’は、弁座プレート25’に形成された出口側燃料通路を開閉するボール弁35a’を備える。そして、ソレノイド34’がOFFの状態では、リターンスプリング36’の付勢力によってバルブ35’が下方に押し付けられ、ボール弁35a’が弁座プレート25’の出口側燃料通路を塞ぐ。逆に、ソレノイド34’がONの状態では、リターンスプリング36’の付勢力に抗してバルブ35’が上方に移動し、ボール弁35a’がリフトして弁座プレート25’の出口側燃料通路を開く。
噴射ノズル4’は、先端に噴孔40’を有するノズルボディ6’と、このノズルボディ6’の内部に摺動自在に挿入されるニードル9’とから構成され、リテーニングナット41’によりロアボディ5’の下部に締結されている。
ノズルボディ6’の内部には、上方に開口したノズル孔が穿設されている。このノズル孔は、上側に設けられた径の大きいノズル摺動孔42’と、その下側に設けられたノズル摺動孔42’よりやや小径の燃料通路孔43’とからなり、ノズルボディ6’の上端の開口周縁部には面取りが施されている。
燃料通路孔43’は、ノズルボディ6’の下端部まで穿設されたものである。また、燃料通路孔43’の下端部には、円錐状の弁座が形成されており、その弁座の下流側に1つまたは複数の噴孔40’が穿設されている。
ノズルボディ6’の下端には、下方に突出した頂部(円頂部、円錐頂部等)が形成されており、その頂部の内側には、サック室(サックボリューム)が形成されている。
噴孔40’は、頂部の内外を貫通して設けられている。具体的に、噴孔40’は、頂部の内壁面(サック室内)から外壁面(エンジンの気筒内に露出する面)まで斜めに貫通して形成されている。
ニードル9’は、上下方向に延びる略円柱の棒形状を呈するものであり、ノズル摺動孔42’の内周面に摺動自在に支持されるニードル摺動軸部44’と、このニードル摺動軸部44’の下部に設けられた小径軸状のシャフト45’とを備える。そして、ニードル摺動軸部44’とシャフト45’の段差によって受圧面が形成される。また、シャフト45’の下端には、燃料通路孔43’の下端部に形成された弁座に着座および離脱して噴孔40’を開閉する円錐形状の弁部が設けられている。
受圧面は、ニードル摺動軸部44’の下端からテーパ状に縮径して設けられ、ノズル室3’に面して配置される。
シャフト45’は、ニードル摺動軸部44’より外径が小さく設けられて、下側の燃料通路孔43’内に挿通され、燃料通路孔43’との間に燃料通路を形成する。
ニードル摺動軸部44’は、ノズル摺動孔42’に微小クリアランスを介して摺動自在に支持されるものであり、ニードル摺動軸部44’とノズル摺動孔42’の摺動クリアランスは、シール機能を果たすように小さく設けられている。
ここで、上述したノズル室3’は、ニードル摺動軸部44’の下側において、ノズルボディ6’とニードル9’とで囲まれる空間により形成される。
噴射ノズル4’は、高圧燃料通路21’を介してシリンダ孔7’の下端(ノズル摺動孔42’の上端)に供給された高圧燃料をノズル室3’に供給する燃料導入路46’を備える。
この燃料導入路46’は、ニードル摺動軸部44’に設けられて、ニードル摺動軸部44’の上側に供給された高圧燃料をノズル室3’に導くものであり、軸方向に対して傾斜した長孔によって設けられている。
燃料導入路46’の下側には、燃料導入路46’の流路面積を絞るノズル絞りが設けられている。このノズル絞りは、燃料の噴射中におけるノズル室3’の圧力を抑えることで、噴射停止時におけるニードル9’の下降を早めて「噴射停止の応答性」を高めるものである。なお、燃料導入路46’の途中にノズル絞りを形成しないものであっても良い。
ニードル9’の先端の弁部は、テーパ角の異なる複数の円錐を組み合わせて構成された複数段の円錐であり、その境界部にシート線が形成されている。シート線より上側の広がり角度は、弁座の広がり角度より小さいものであり、シート線より下側の広がり角度は、弁座の広がり角度より大きいものである。
弁部が弁座に着座する際は、弁部のシート線が弁座に当接してノズル室3’と噴孔40’との連通を遮断し、弁部が弁座から離座する際は、弁部のシート線が弁座から離れて、ノズル室3’と噴孔40’とが連通され、高圧燃料が噴孔40’から噴射される。
(インジェクタの作動説明)
次に、インジェクタの作動を説明する。
(1)インジェクタの停止中は、電磁弁2’の通電が停止されて、バルブ35’が弁座プレート25’に形成された出口側燃料通路を閉じる。これにより、ノズル室3’とともに圧力制御室1’の圧力が高圧に保たれる。その結果、スプリング24’の付勢力によりニードル9’が弁座に押し付けられ、ノズル室3’と噴孔40’が遮断された状態となり、噴孔40’から燃料の噴射は行なわれない。具体的に、ニードル9’には、スプリング24’の付勢力に加えて、ニードル9’の先端の弁部におけるシート線の内側の受圧面積差による閉弁力がニードル9’に生じるものである。
(2)ECU(エンジンコントロールユニット)の噴射開始の指示(噴射指令ON)により、EDU(ドライブユニット)から電磁弁2’に駆動電流(パルスON)が与えられると、ソレノイド34’がバルブ35’を磁気吸引する。バルブ35’がリフトアップを開始すると、出口側燃料通路(出口オリフィス32’)が開き、入口オリフィス30’で燃料の流入が抑制されて圧力制御室1’の圧力が低下を開始する。
圧力制御室1’の圧力が低下することで、ノズル室3’の圧力が圧力制御室1’の圧力に対して相対的に上昇し、その圧力差により生じる開弁力(ニードル9’のリフト力)が、「スプリング24’の付勢力」と「シート線の内側の受圧面積差による閉弁力」との「合力」に打ち勝つことで、ニードル9’が上昇を開始する。
具体的には、圧力制御室1’の圧力低下によってピストン8’に作用するリフト力が、結合手段10’を介してニードル9’を「引っ張り上げる」ことで、ニードル9’がリフトを開始する。
そして、ニードル9’が弁座から離座することにより、ノズル室3’と噴孔40’とが連通し、ノズル室3’に供給された高圧燃料が噴孔40’から噴射する。
(3)ECUの噴射停止の指示(噴射指令OFF)により、EDUから電磁弁2’に与えられていた駆動電流が停止(パルスOFF)されると、ソレノイド34’がバルブ35’の磁気吸引を停止して、バルブ35’が下降を開始する。そして、電磁弁2’のバルブ35’が出口側燃料通路(出口オリフィス32’)を閉じると、入口オリフィス30’を介して圧力制御室1’内に供給される高圧燃料によって圧力制御室1’の圧力が上昇を開始する。
圧力制御室1’の圧力が上昇することで、ピストン8’に下向きの力が加わる。そして、「圧力制御室1’の圧力とスプリング24’による閉弁力」が「ノズル室3’の圧力による開弁力」に打ち勝つことで、ニードル9’が下降を開始する。
具体的には、圧力制御室1’の圧力上昇とスプリング24’の付勢力との合力が、結合手段10’を介してニードル9’を「押し下げる」ことで、ニードル9’が下降を開始する。
そして、ニードル9’が弁座に着座すると、ノズル室3’と噴孔40’の連通が遮断されて、噴孔40’からの燃料噴射が停止して、上記(1)の状態に戻る。
〔実施例5の背景技術〕
この実施例5のインジェクタは、ピストン8’を挿通するシリンダ孔7’を、圧力制御室1’およびノズル室3’へ高圧燃料を供給するための高圧燃料通路として利用している。
このように、シリンダ孔7’を介して高圧燃料をノズル室3’へ供給する場合、ピストン8’とニードル9’とを結合手段10’によって軸方向に結合しないと、ニードル9’の上部には高圧燃料が常時作用するため、圧力制御室1’の圧力が低下した際に、ピストン8’のみがリフトし、ニードル9’がリフトしなくなってしまう。
そこで、この実施例5では、圧力制御室1’の圧力が低下した際に、ピストン8’のリフトにより、ニードル9’を「引っ張り上げる」ために、ピストン8’とニードル9’とを結合手段10’によって結合している。
この実施例5のインジェクタは、超高圧に加圧された燃料の供給を受ける。このため、電磁弁2’は大きな駆動力が必要となるために大型化し、インジェクタの内部に電磁弁2’を搭載することが困難となり、電磁弁2’は噴射ノズル4’から最も離れたインジェクタの上端に締結される。圧力制御室1’は電磁弁2’に近く設けられるため、ピストン8’は、細くて、軸方向長が大変長いものになっている。
このため、ピストン8’とニードル9’とを結合手段10’によって結合した結合ニードルは、軸方向長が大変長くなる。
ここで、結合ニードルには、加工上の撓みや、圧力制御室1’とノズル室3’から高圧を受けることによる動的な撓みが発生する。これらの撓みにより、ピストン8’やニードル9’に軸ズレが生じると、ピストン8’やニードル9’の摺動部において大きな摩擦が生じてしまう。
〔実施例5の特徴技術〕
上記の不具合を解決するために、この実施例5の結合手段10’は、以下の特徴技術を採用している。
(a)結合手段10’は、ピストン8’の下端部に第1小径部(くびれ部)11a’を介して形成された第1鍔部11’と、ニードル9’の上端部に第2小径部(くびれ部)12a’を介して形成された第2鍔部12’と、第1、第2鍔部11’、12’を当接させた状態で、第1、第2鍔部11’、12’を軸方向に挟み付けるためのカプラ13’と、第1鍔部11’とカプラ13’の軸方向の間において軸方向に軽く加圧(軽圧入)された状態で配置されて、カプラ13’内における軸方向の隙間を調整するシム14’とからなる。
なお、第1、第2小径部11a’、12a’および第1、第2鍔部11’、12’の軸心は、それぞれピストン8’およびニードル9’の軸心に一致するものである。
(b)カプラ13’は、外径寸法がシリンダ孔7’の内径寸法より小さく、シリンダ孔7’との間に隙間を形成するように設けられている。また、カプラ13’は、第1、第2小径部11a’、12a’および第1、第2鍔部11’、12’に対して径方向の隙間S1’を形成するように設けられている。各隙間S1’は、ピストン8’とニードル9’の最大軸ズレ量より大きく設定されることが望ましいが、限定されるものではない。
(c)シム14’は、その軸方向の長さ寸法によって、第1、第2鍔部11’、12’を「軸方向に軽く圧接した状態」に組付けるものである。なお、シム14’の軸方向の長さ寸法によって、第1、第2鍔部11’、12’の軸方向間に「摺動クリアランス」程度の隙間を設けるものであっても良い。
また、シム14’は、第1小径部11a’またはカプラ13’の少なくとも一方に対して径方向の隙間S2’を形成するように設けられている。具体的に、この実施例のシム14’は、第1小径部11a’およびカプラ13’の両方に対して径方向の隙間S2’を形成するように設けられている。そして、シム14’と第1小径部11a’の隙間S2’と、シム14’とカプラ13’の隙間S2’との和が、ピストン8’とニードル9’の最大軸ズレ量より大きく設定されることが望ましいが、限定されるものではない。
(d)カプラ13’とシム14’は、軸方向に対して垂直な平面同士F1’で軸方向において接触し、カプラ13’とシム14’との間で径方向の移動を許容している。
(e)第2鍔部12’とカプラ13’は、軸方向に対して垂直な平面同士F2’で軸方向において接触し、第2鍔部12’とカプラ13’との間で径方向の移動を許容している。
(f)第1鍔部11’とシム14’は、軸方向外側に向けて膨出する球面M1’と、軸方向内側に向けて窪む円錐面M2’とで軸方向において接触する。
具体的に、第1鍔部11’の上面は、上側に向けて膨出する球面M1’に設けられている。なお、この球面M1’を構成する仮想球体の中心は、ピストン8’の軸心上(ピストン8’の軸心を下方に延長した軸心上)に存在するものである。一方、シム14’の下面は、下側に向けて窪む円錐面M2’に設けられている。なお、この円錐面M2’を構成する仮想円錐の円錐頂部は、シム14’の軸心上(シム14’の軸心を延長した軸心上)に存在するものである。
なお、この実施例5では、第1鍔部11’の上面を球面M1’に設け、シム14’の下面を円錐面M2’に設ける例を示すが、逆であっても良い。
(g)第1鍔部11’に対して第2鍔部12’が傾斜可能に設けられる。
この実施例では、第1鍔部11’と第2鍔部12’は、軸方向外側に向けて膨出する球面M3’と、軸方向に対して垂直な平面M4’とで軸方向において接触する。
具体的に、第1鍔部11’の下面は、軸方向に対して垂直な平面M4’に設けられている。一方、第2鍔部12’の上面は、上側に向けて膨出する球面M3’に設けられている。
この球面M3’を構成する仮想球体の中心は、ニードル9’の軸心上に存在するものである。この構成により、第1鍔部11’と第2鍔部12’は、上側に膨出する球面M3’と、軸方向に対して垂直な平面M4’とで軸方向に接触する。
なお、この実施例5では、第1鍔部11’の下面を平面M4’に設け、第2鍔部12’の上面を球面M3’に設ける例を示すが、逆であっても良い。
(実施例5の効果)
実施例5のインジェクタは、ピストン8’とニードル9’に軸ズレが生じても、上記(b)〜(e)の構成、即ち、
(i)平面同士F1’、F2’のスライドと、
(ii)隙間S1’、S2’によるスライドの許容とにより、
「軸ズレの全てまたは一部」を吸収することができる。
一方、ピストン8’とニードル9’に軸傾斜ズレが生じても、上記(b)、(f)、(g)の構成、即ち、
(i)第1鍔部11’に対して第2鍔部12’が傾斜可能で、
(ii)球面M1’と円錐面M2’とが線接触し、
(iii)隙間S1’による小径部11a’、12a’および第1、第2鍔部11’、12’の傾斜の許容によって、
「軸傾斜ズレの全てまたは一部」を吸収することができる。
このように、ピストン8’とニードル9’に軸ズレおよび軸傾斜ズレが生じても、それらの「ズレの全てまたは一部」を結合手段によって吸収し、軸方向の力を伝達することができる。
具体的には、
(i)「ピストン8’がニードル9’を引っ張り上げる際」は、カプラ13’を介して軸方向の力の伝達を行い、
(ii)「ピストン8’がニードル9’を押し下げる際」は、球面M1’と円錐面M2’の当接(第1鍔部11’と第2鍔部12’の当接)によって軸方向の力の伝達を行う。
このように、結合手段10’により、軸ズレおよび軸傾斜ズレの全てまたは一部を吸収して軸方向の力を伝達するため、ピストン8’の軸方向寸法が長いインジェクタであっても、摺動部の摩耗を防ぎ、ピストン8’とニードル9’の摺動性を良好に保つことができる。
上記の実施例5では、第1鍔部11’に対して第2鍔部12’を傾斜可能にする手段の一例として、球面M3’と平面M4’によりピストン8’とニードル9’の軸の傾斜の吸収を行なうように設けているが、球面M3’を「円錐面M3’」や「中心部に凸部を備えた凸有面M3’」に置き換えて、軸の傾斜を行うようにしても良い。
なお、球面M3’を「円錐面M3’」に置き替える場合は、強度および耐久性(耐摩耗性)を考慮して頂部が超鈍角の円錐形状であることが望ましい。
上記の実施例5では、第1鍔部11’に対して第2鍔部12’を傾斜可能にする手段の一例として、球面M3’と平面M4’によりピストン8’とニードル9’の軸の傾斜の吸収を行なうように設けているが、球面M3’を「平面M3’」に置き換え、両方の平面(M3’、M4’)の間に隙間を持たせ、この隙間によってピストン8’とニードル9’の軸の傾斜の吸収を行なうようにしても良い。
このように設けることにより、「ピストン8’がニードル9’を引っ張り上げる際」に、ピストン8’とニードル9’に軸傾斜ズレが生じても、両者の傾きのズレを平面M3’と平面M4’の軸方向の隙間によって吸収することができる。
また、「ピストン8’がニードル9’を押し下げる際」に、ピストン8’とニードル9’に軸傾斜ズレが生じても、対向する平面M3’と平面M4’が一致して接触するのではなく、平面M3’と平面M4’の傾斜接触によって軸方向の力の伝達を行なうため、ニードル9’に対して力の偏りの発生が防がれる。
上記の実施例5では、ソレノイド34’による作動によって出口側燃料通路の開閉を行なう電磁弁2’を例に示したが、ピエゾアクチュエータなど他の電動アクチュエータにより出口側燃料通路の開閉を行なう他の電動弁を用いても良い。
上記の実施例5では、ディーゼルエンジン用のインジェクタに本発明2を適用する例を示したが、ガソリンエンジン用のインジェクタなど、他のエンジン形式に用いられるインジェクタに本発明2を適用しても良い。
上記の実施例5では、圧力制御室1’の油圧制御によってピストン8’の駆動を行なうインジェクタ(2ウェイ・インジェクタ)に本発明2を適用する例を示したが、電磁アクチュエータ(リニアソレノイド)やピエゾアクチュエータなどの電動アクチュエータによりピストン8’を直接駆動する「ダイレクト駆動タイプのインジェクタ」に本発明2を適用しても良い。
即ち、ピストン8’の軸方向寸法が長いインジェクタであれば本発明2が適用可能であり、実施例5で開示した大きな効果を得ることができる。
1 燃料噴射弁(インジェクタ)
3 電磁弁
5 開閉弁機構
7 連結機構
14 スリーブ
15 制御ピストン
20 弁ボディ
40 ノズルボディ
41 燃料供給流路
42 燃料チャンバ
43 ニードル(ニードル弁)
49 噴孔
61 圧力制御室
62 出口オリフィス
71 くびれ部
72 傘状端部
73 球面状斜面
75 袋穴
77 シム
78 テーパ状の円錐面
79 C型切欠き部
S1 隙間(制御ピストンとニードルの径方向隙間)
S2 隙間(制御ピストンとシムの径方向隙間、ニードルとシムの径方向隙間)
1’ 圧力制御室
2’ 電磁弁(電動弁)
3’ ノズル室
4’ 噴射ノズル
5’ ロアボディ
6’ ノズルボディ
7’ シリンダ孔
8’ ピストン
9’ ニードル
10’ 結合手段
11’ 第1鍔部
11a’ 第1小径部
12’ 第2鍔部
12a’ 第2小径部
13’ カプラ
14’ シム
23’ 摺動スリーブ
30’ 入口オリフィス
46’ 燃料導入路
F1’ 平面同士(カプラとシムの接触箇所)
F2’ 平面同士(第2鍔部とカプラの接触箇所)
M1’ 球面(第1鍔部とカプラの接触箇所の一方)
M2’ 円錐面(第1鍔部とカプラの接触箇所の他方)
M3’ 球面(第1鍔部と第2鍔部の接触箇所の一方、変形例における平面)
M4’ 平面(第1鍔部と第2鍔部の接触箇所の他方)
S1’ 隙間(カプラと第1、第2小径部の径方向隙間、カプラと第1、第2鍔部の径方向隙間)
S2’ 隙間(シムと第1小径部の径方向隙間、シムとカプラの径方向隙間)

Claims (8)

  1. 噴孔(49)を開放するニードル弁(43)を摺動可能に支持するノズルボディ(40)と、
    スリーブ(14)によって区画され、燃料圧力が制御される圧力制御室(61)に端面が露出し、かつ、高圧燃料が充満し、噴射する燃料の燃料供給流路(41)を形成する燃料チャンバ(42)を貫通する制御ピストン(15)を内蔵する弁ボディ(20)と、
    前記圧力制御室(61)の燃料圧力を開放する出口オリフィス(62)を開閉する開閉弁機構(5)とを備えたインジェクタであって、
    前記制御ピストン(15)の一端側と前記ニードル弁(43)の他端側とは、
    前記制御ピストン(15)と前記ニードル弁(43)の端部に形成したくびれ部(71)を有する傘状端部(72)と、
    C型切欠き部(79)を有する袋穴(75)とを、シム(77)を介して係合する連結機構(7)によって軸心方向に一体的に保持され、
    前記連結機構(7)は、前記制御ピストン(15)と前記ニードル弁(43)の径方向の間に隙間(S1)が形成されるとともに、
    前記制御ピストン(15)と前記シム(77)の径方向の間、または前記ニードル弁(43)と前記シム(77)の径方向の間の少なくとも一方に隙間(S2)が形成されており、
    前記シム(77)は、前記連結機構(7)のクリアランス調整機構を有するもので、その一端面がテーパ状の円錐面(78)であり、他端面が平面により構成されていて、前記制御ピストン(15)が前記連結機構(7)を介して前記ニードル弁(43)を引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるように配置されていることを特徴とするインジェクタ。
  2. 請求項1に記載のインジェクタにおいて、
    前記シム(77)は、その他端面の前記平面が前記制御ピストン(15)もしくは前記ニードル弁(43)の各端面と当接して、径方向の軸ズレを吸収することを特徴とするインジェクタ。
  3. 請求項1に記載のインジェクタにおいて、
    前記シム(77)は、その一端面の前記テーパ状の円錐面(78)が前記制御ピストン(15)もしくは前記ニードル弁(43)に設けた球面状斜面(73)に線接触して当接することを特徴とするインジェクタ。
  4. 燃料の供給を受けるロアボディ(5’)と、
    このロアボディ(5’)に締結されるノズルボディ(6’)と、
    前記ロアボディ(5’)の内部で軸方向へ摺動自在に支持されるピストン(8’)と、
    このピストン(8’)と同軸上に配置され、前記ノズルボディ(6’)の内部で軸方向に摺動自在に支持されるニードル(9’)と、
    前記ピストン(8’)と前記ニードル(9’)とを結合する結合手段(10’)と、
    を具備するインジェクタにおいて、
    (a)前記結合手段(10’)は、
    前記ピストン(8’)または前記ニードル(9’)の一方の端部に第1小径部(11a’)を介して形成された第1鍔部(11’)と、
    前記ピストン(8’)または前記ニードル(9’)の他方の端部に第2小径部(12a’)を介して形成された第2鍔部(12’)と、
    前記第1、第2鍔部(11’、12’)を当接させた状態で、前記第1、第2鍔部(11’、12’)を軸方向の両側から挟むカプラ(13’)と、
    前記第1鍔部(11’)と前記カプラ(13’)の軸方向の間に配置されて、前記カプラ(13’)内における軸方向の隙間を調整するとともに、前記ピストン(8’)が前記ニードル(9’)を引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるシム(14’)とからなり、
    (b)前記カプラ(13’)は、前記第1、第2小径部(11a’、12a’)および前記第1、第2鍔部(11’、12’)に対して径方向の隙間(S1’)を形成するように設けられ、
    (c)前記シム(14’)は、前記第1小径部(11a’)または前記カプラ(13’)の少なくとも一方に対して径方向の隙間(S2’)を形成するように設けられ、
    (d)前記カプラ(13’)と前記シム(14’)は、軸方向に対して垂直な平面同士(F1’)で軸方向において接触し、
    (e)前記第2鍔部(12’)と前記カプラ(13’)は、軸方向に対して垂直な平面同士(F2’)で軸方向において接触し、
    (f)前記第1鍔部(11’)と前記シム(14’)は、軸方向外側に向けて膨出する球面(M1’)と、軸方向内側に向けて窪む円錐面(M2’)とで軸方向に接触し、
    (g)前記第1鍔部(11’)に対して前記第2鍔部(12’)が傾斜可能に設けられたことを特徴とするインジェクタ。
  5. 請求項4に記載のインジェクタにおいて、
    このインジェクタは、
    高圧燃料が供給される圧力制御室(1’)の燃料圧力を制御する電動弁(2’)と、
    内部に高圧燃料が供給されるノズル室(3’)を有する噴射ノズル(4’)とを具備し、
    前記ノズル室(3’)の圧力に対して前記圧力制御室(1’)の圧力を変化させることで燃料の噴射と停止の切り替えが行なわれるものであり、
    前記ピストン(8’)が前記圧力制御室(1’)の圧力を受け、
    前記ニードル(9’)が前記ノズル室(3’)の圧力を受けることを特徴とするインジェクタ。
  6. 請求項4または請求項5に記載のインジェクタにおいて、
    前記ロアボディ(5’)において前記ピストン(8’)が挿通されるシリンダ孔(7’)の内部には、高圧燃料が供給され、
    前記シリンダ孔(7’)の内部には、前記ピストン(8’)を摺動自在に支持する摺動スリーブ(23’)が配置されて、この摺動スリーブ(23’)の内側に前記圧力制御室(1’)が形成され、
    前記シリンダ孔(7’)の内部に供給された高圧燃料は、前記摺動スリーブ(23’)に形成された入口オリフィス(30’)を介して前記圧力制御室(1’)へ導かれるとともに、前記ニードル(9’)に形成された燃料導入路(46’)を介して前記ノズル室(3’)へ導かれることを特徴とするインジェクタ。
  7. 請求項4〜請求項6のいずれかに記載のインジェクタにおいて、
    前記第1鍔部(11’)に対して前記第2鍔部(12’)を傾斜可能にする手段は、
    前記第1鍔部(11’)と前記第2鍔部(12’)の対向面のうちの一方の対向面に設けられた外方向に膨出する球面(M3’)と、
    前記第1鍔部(11’)と前記第2鍔部(12’)の対向面のうちの他方の対向面に設けられた軸方向に対して垂直な平面(M4’)とを備えることを特徴とするインジェクタ。
  8. 請求項4〜請求項6のいずれかに記載のインジェクタにおいて、
    前記第1鍔部(11’)に対して前記第2鍔部(12’)を傾斜可能にする手段は、
    前記第1鍔部(11’)と前記第2鍔部(12’)の対向面のそれぞれに設けられた軸方向に対して垂直な平面(M3’、M4’)と、
    当該両平面間の隙間とで構成されることを特徴とするインジェクタ。
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