JP5321477B2 - インジェクタ - Google Patents
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Description
従来技術の一例として、コモンレール等に蓄圧された高圧燃料をインジェクタからディーゼル機関に噴射する蓄圧式燃料噴射装置が知られている。
この蓄圧式燃料噴射装置に用いられるインジェクタは、コモンレールに蓄圧された高圧燃料が入口側燃料通路(通路途中に入口オリフィスを備える)を介して供給される圧力制御室と、この圧力制御室と低圧側とを連通させる出口側燃料通路(通路途中に出口オリフィスを備える)を開閉する電磁弁(電動弁の一例)とを備える(例えば、特許文献1参照)。
そして、噴射開始時の作動は、ピストンに作用する圧力制御室の圧力、スプリングの付勢力、ニードルに作用するノズル室の圧力の3者によりコントロールされる。
近年、ピストンを挿通するシリンダ孔を、高圧燃料通路として利用することが提案されている。
シリンダ孔を介して高圧燃料をノズル室へ供給する場合、ピストンとニードルとが軸方向に結合されていないと、圧力制御室の圧力が低下しても、ニードルの上部には高圧燃料が作用した状態が継続されるため、ピストンのみがリフトし、ニードルはリフトしなくなってしまう。
そこで、圧力制御室の圧力が低下した際に、ピストンのリフトにより、ニードルを引っ張り上げるために、ピストンとニードルとを結合する、あるいはピストンとニードルを一体に設けたピストン/ニードル(以下、一体ニードルと称する)を用いる必要がある。
これらの撓みにより、摺動部では大きな摩擦が生じてしまい、摺動性が劣化する懸念や、摩耗による信頼性の低下が懸念される。
しかるに、金属バネによりニードルとピストンを結合しても、金属バネの復元力が軸ズレや軸傾斜ズレを復元させるように作用する。その結果、金属バネを用いても、摺動部では大きな摩擦が生じてしまい、摺動性が劣化する懸念や、摩耗による信頼性の低下が懸念される。
請求項1(本発明1)に記載のインジェクタによれば、噴孔を開放するニードル弁を摺動可能に支持するノズルボディと、スリーブによって区画され、燃料圧力が制御される圧力制御室に端面が露出し、かつ、高圧燃料が充満し、噴射する燃料の燃料供給流路を形成する燃料チャンバを貫通する制御ピストンを内蔵する弁ボディと、圧力制御室の燃料圧力を開放する出口オリフィスを開閉する開閉弁機構とを備えたインジェクタであって、制御ピストンの一端側とニードル弁の他端側とは、制御ピストンとニードル弁の端部に形成したくびれ部を有する傘状端部と、C型切欠き部を有する袋穴とを、シムを介して係合する連結機構によって軸心方向に一体的に保持されており、シムは、制御ピストンが連結機構を介してニードル弁を引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるように配置されていることを特徴としている。
これにより、制御ピストンとニードル弁との軸心を高精度に整合させることなく軸ズレやたわみ変形(軸傾斜ズレ)を吸収して、摩擦や摩耗のない円滑な摺動を確保する。
これにより、最小限の適正クリアランスの設定が可能となり、この適正クリアランス内で軸ズレおよびたわみ変形を径方向に過大な荷重を伝達することなく容易に吸収できる。
これにより、対となる球面状斜面とにより調芯機能が簡単に確保できる。
請求項2に記載のインジェクタによれば、シムは、その他端面の平面が制御ピストンもしくはニードル弁の各端面と当接して、径方向の軸ズレを吸収することを特徴としている。
これにより、制御ピストンもしくはニードル弁は、摩擦や摩耗のない円滑な摺動が可能となる。
請求項3に記載のインジェクタによれば、シムは、その一端面のテーパ状の円錐面が制御ピストンもしくはニードル弁に設けた球面状斜面に線接触して当接することを特徴としている。
これにより、制御ピストンもしくはニードル弁の軸心方向に沿うたわみ変形を調芯機能によって許容することが簡単にでき、摩擦や摩耗のない円滑な摺動が可能となる。
請求項4(本発明2)の手段を採用するインジェクタは、ピストンとニードルとを結合手段によって結合するものであり、この結合手段は、ピストンまたはニードルの一方の端部に第1小径部を介して形成された第1鍔部と、ピストンまたはニードルの他方の端部に第2小径部を介して形成された第2鍔部と、第1、第2鍔部を当接させた状態で、第1、第2鍔部を軸方向の両側から挟むカプラと、第1鍔部とカプラの軸方向の間に配置されて、カプラ内における軸方向の隙間を調整するとともに、ピストンがニードルを引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるシムとからなる。
第2鍔部とカプラは、軸方向に対して垂直な平面同士で軸方向において接触する。
第1鍔部とシムは、軸方向外側に向けて膨出する球面と、軸方向内側に向けて窪む円錐面とで軸方向に接触する。
第1鍔部に対して第2鍔部が傾斜可能に設けられる(これは、第2鍔部に対して第1鍔部が傾斜可能に設けられることと同じ意味である)。
ピストンの軸心とニードルの軸心とが一致しない「軸ズレ」が生じても、(i)平面同士のスライドと、(ii)径方向の隙間とにより、「軸ズレの全てまたは一部」を吸収してピストンとニードルを結合することができる。
一方、ピストンの軸心とニードルの軸心とが相対的に傾く「軸傾斜ズレ」が生じても、(i)第1鍔部に対して第2鍔部が傾斜可能で、(ii)「球面」と「円錐面」とが線接触することにより、「軸傾斜ズレの全てまたは一部」を吸収してピストンとニードルを結合することができる。
このようにして、ピストンの軸方向寸法が長いインジェクタであっても、摺動部の摩耗を防ぎ、ピストンとニードルの摺動性を良好に保つことができる。
請求項5の手段を採用するインジェクタは、高圧燃料が供給される圧力制御室の燃料圧力を制御する電動弁と、内部に高圧燃料が供給されるノズル室を有する噴射ノズルとを具備し、ノズル室の圧力に対して圧力制御室の圧力を変化させることで燃料の噴射と停止の切り替えが行なわれるものである。
そして、ピストンが圧力制御室の圧力を受け、ニードルがノズル室の圧力を受けるものである。
請求項6の手段を採用するインジェクタのロアボディは、ピストンが挿通されるシリンダ孔の内部に、高圧燃料が供給される。
シリンダ孔の内部には、ピストンを摺動自在に支持する摺動スリーブが配置されて、この摺動スリーブの内側に圧力制御室が形成される。
シリンダ孔の内部に供給された高圧燃料は、摺動スリーブに形成された入口オリフィスを介して圧力制御室へ導かれるとともに、ニードルに形成された燃料導入路を介してノズル室へ導かれる。
このように、ピストンが挿通されるシリンダ孔が、高圧燃料を供給する通路として利用されるため、ロアボディの外径寸法を小径化することが可能になる。
また、ニードルに燃料導入路が形成されるため、ノズルボディに燃料導入路を設ける必要がなく、ノズルボディの外径を小径化することが可能になる。
請求項7の手段を採用するインジェクタの第1鍔部と第2鍔部は、軸方向外側に向けて膨出する球面と、軸方向に対して垂直な平面とで軸方向に接触するものである。
これにより、第1鍔部に対して第2鍔部が傾斜可能であり、「ピストンがニードルを引っ張り上げる際」および「ピストンがニードルを押し下げる際」にピストンとニードルに軸傾斜ズレがあっても、平面に対する球面の回転によって両者の傾きのズレを吸収することができる。
また、「ピストンがニードルを押し下げる際」は、平面に対する球面の接触によって軸方向の力の伝達を行なうため、ニードルに対して力の偏りの発生を防ぐことができる。
請求項8の手段を採用するインジェクタの第1鍔部と第2鍔部は、軸方向に対して垂直な平面と、軸方向に対して垂直な平面とを有し、この両平面の間には所定の隙間が設けられるものである。
これにより、第1鍔部に対して第2鍔部が傾斜可能であり、「ピストンがニードルを引っ張り上げる際」に、ピストンとニードルに軸傾斜ズレがあった場合に、両者の傾きのズレを両平面間の隙間によって吸収することができる。
また、「ピストンがニードルを押し下げる際」は、一方の平面に対する他方の平面の傾斜接触によって、ピストンとニードルの軸傾斜ズレを吸収することができるとともに、平面と平面の傾斜接触によって軸方向の力の伝達を行なうことで、ニードルに対して力の偏りの発生を防ぐことができる。
(b)カプラ13’は、第1、第2小径部11a’、12a’および第1、第2鍔部11’、12’に対して径方向の隙間S1’を形成する。
(c)シム14’は、第1小径部11a’またはカプラ13’の少なくとも一方に対して径方向の隙間S2’を形成する。
(d)カプラ13’とシム14’は、軸方向に対して垂直な平面同士F1’で軸方向において接触する。
(e)第2鍔部12’とカプラ13’は、軸方向に対して垂直な平面同士F2’で軸方向において接触する。
(f)第1鍔部11’とシム14’は、軸方向外側に向けて膨出する球面M1’と、軸方向内側に向けて窪む円錐面M2’とで軸方向に接触する。
(g)第1鍔部11’に対して第2鍔部12’が傾斜可能に設けられる。
図1および図2は本発明1にかかる実施例1を示したもので、図1はインジェクタの全体構成断面図であり、図2は図1に示すインジェクタのA部を示し、(a)は部分軸断面図であり、(b)はB−B断面図である。
連結機構7では、シム77の軸方向長の選択設定により、制御ピストン15とニードル43が、例えば「軸方向に軽く圧接した状態」あるいは「微少クリアランスを介した状態」で組付けられる。
これにより、(i)制御ピストン15とニードル43の軸傾斜ズレを、袋穴75の底面(平面)と、球面状凸面74との当接面のスライドによって吸収できるとともに、
(ii)電磁弁3がONして制御ピストン15がニードル43を「引っ張り上げる際」や、逆に、電磁弁3がOFFして制御ピストン15がニードル43を「押し下げる際」に、ガタ付きなく(即ち遅滞なく)、制御ピストン15によってニードル43を駆動することができる。
この径方向の隙間S1、S2を説明する。
連結機構7では、制御ピストン15とニードル43の径方向の間に、隙間S1が形成されている。
具体的に、この隙間S1は、くびれ部71の外径と余肉部76の内径との間(径方向間)に形成されるとともに、傘状端部72の外径と袋穴75の内径との間(径方向間)に設けられる。この隙間S1は、制御ピストン15とニードル43の最大軸ズレ量より大きく設定されることが望ましいが、限定されるものではない。
具体的に、この隙間S2は、くびれ部71の外径とシム77の内径の間(径方向間)、およびシム77の外径と袋穴75の内径の間(径方向間)に設けられる。そして、くびれ部71の外径とシム77の内径の隙間S2と、シム77の外径と袋穴75の内径の隙間S2との和は、制御ピストン15とニードル43の最大軸ズレ量より大きく設定されることが望ましいが、限定されるものではない。
本実施例の燃料噴射弁1は、噴射指令前にあっては、ボール弁56が出口オリフィス62を塞ぐ閉弁状態にあり、圧力制御室61からの燃料の流出入はなく、圧力制御室61はレート圧力と同じ高圧状態にある。そのため、制御ピストン15に掛かる油圧の作用力は釣り合い、リターンスプリング11のみの閉弁方向の付勢力が作用する。また、ニードル43に掛かる油圧の作用力もシートより上側に油圧が掛かるため下側の力が作用する。従って、ニードル43にはこの油圧による作用力とリターンスプリング11の付勢力との合力が作用して、ニードル43はシートに押圧されて燃料をシールする。
このとき、制御ピストン15およびニードル43の力の関係は、制御ピストン15がニードル43を動かすために上記の連結機構7を介して引っ張り上げる力を伝達する。
本実施例では、噴孔49を開放するニードル43を摺動可能に支持するノズルボディ40と、スリーブ14によって区画され、燃料圧力が制御される圧力制御室61に端面が露出し、かつ、高圧燃料が充満し、噴射する燃料の燃料供給流路41を形成する燃料チャンバ42を貫通する制御ピストン15を内蔵する弁ボディ20と、圧力制御室61の燃料圧力を開放する出口オリフィス62を開閉する開閉弁機構5とを備えた燃料噴射弁1であって、制御ピストン15の一端側とニードル43の他端側とは、制御ピストン15とニードル43の端部に形成したくびれ部71を有する傘状端部72と、C型切欠き部79を有する袋穴75とを、シム77を介して係合する連結機構7によって軸心方向に一体的に保持した。
また、シム77は、連結機構7のクリアランス調整のための選択嵌合を採用したので、最小限の適正クリアランスの設定が可能となり、この適正クリアランス内で軸ズレおよびたわみ変形を径方向に過大な荷重を伝達することなく容易に吸収できる。
上記実施例1、2では、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なう部位を、傘状端部72とシム77の当接面に設ける例を示した。
具体的に上記実施例1、2では、傘状端部72とシム77の当接面のうち、一方の当接面を球面(球面状斜面73)に設け、他方の当接面をテーパ面(円錐面78)に設けている。そして、球面とテーパ面の当接部位により、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なう例を示した。
具体的に、この実施例3は、上述した実施例1と同様、図4に示すように、くびれ部71および傘状端部72を制御ピストン15の図示下端に設けるとともに、袋穴75(傘状端部72を隙間S1を隔てて収容する部分)および余肉部76(傘状端部72より小径で、くびれ部71の周囲を隙間S1を隔てて覆う部分)をニードル43の図示上端に設ける。
なお、この図4では、球面(球面状斜面73)をシム77の図示上面に設け、テーパ面(円錐面78)を余肉部76の図示下面に設ける例を示しているが、図4とは異なり、球面(球面状斜面73)を余肉部76の図示下面に設け、テーパ面(円錐面78)をシム77の図示上面に設けるものであっても良い。
この実施例4は、上記実施例3と同様、制御ピストン15とニードル43との軸傾斜ズレの吸収を行なう部位を、上述した余肉部76とシム77の当接面に設けるものである。 この実施例4は、図5に示すように、くびれ部71および傘状端部72をニードル43の図示上端に設けるとともに、袋穴75(傘状端部72を隙間S1を隔てて収容する部分)および余肉部76(傘状端部72より小径で、くびれ部71の周囲を隙間S1を隔てて覆う部分)を制御ピストン15の図示下端に設ける。
なお、この図5では、球面(球面状斜面73)をシム77の図示下面に設け、テーパ面(円錐面78)を余肉部76の図示上面に設ける例を示しているが、図5とは異なり、球面(球面状斜面73)を余肉部76の図示上面に設け、テーパ面(円錐面78)をシム77の図示下面に設けるものであっても良い。
インジェクタは、例えばディーゼルエンジン用のコモンレール式燃料噴射装置に用いられ、図示しないコモンレールから供給される高圧燃料(例えば、160Mpa以上の超高圧燃料)をエンジンの気筒内に噴射するものであり、高圧燃料が供給される圧力制御室1’の燃料圧力を制御する電磁弁2’、および高圧燃料が供給されるノズル室3’を備え、このノズル室3’に対する圧力制御室1’の燃料圧力を電磁弁2’によって制御することで、燃料の噴射と停止を行なうものである。
ロアボディ5’の内部には、上下方向に延びるシリンダ孔7’、コモンレールから供給された高圧燃料をシリンダ孔7’の上下方向の略中間部に導く高圧燃料通路21’、および低圧側に連通する低圧燃料通路22’等が形成されている。
ピストン8’は、ニードル9’と結合手段10’(ジョイント)によって結合されるものである。そして、結合された結合ニードル(ピストン8’+ニードル9’)は、ピストン8’の上部に設けられた1箇所の摺動支持構造と、ニードル9’に設けられた1箇所の摺動支持構造とにより、上下方向に摺動自在に支持される。なお、結合手段10’の詳細は後述する。
ピストン8’の上部は、シリンダ孔7’の上部に配置される摺動スリーブ23’の内周面によって摺動自在に支持される。
この摺動スリーブ23’は、ピストン8’の中間外周部に装着されたスプリング24’の付勢力により、シリンダ孔7’の上部に装着された弁座プレート25’の下面に常に当接した状態で配置される。
なお、ピストン8’においてピストンガイド孔23a’に摺接する部分には、ピストンガイド孔23a’により摺動支持されるピストン摺動部8a’が設けられている。そして、ピストンガイド孔23a’とピストン摺動部8a’の摺動クリアランスは、シール機能を果たすように小さく設けられている。
摺動スリーブ23’には、高圧燃料通路21’からシリンダ孔7’の上側に供給された高圧燃料の一部を、圧力制御室1’に導く手段(入口側燃料通路)が設けられている。
具体的に、摺動スリーブ23’の外周面は、シリンダ孔7’の内周面より少し小径に設けられており、シリンダ孔7’と摺動スリーブ23’の間には、高圧燃料通路21’からシリンダ孔7’の内部に供給された高圧燃料が導入されるように設けられている。
なお、摺動スリーブ23’の上側内周面は、上述したピストンガイド孔23a’より少し大径に設けられ、摺動スリーブ23’の上側に配置されるピストン8’の上端部の外周面と、摺動スリーブ23’との間に、圧力制御室1’に通じる環状通路を形成している。
電磁弁2’は、弁座プレート25’に形成された出口側燃料通路を開閉するものであり、通電(ON)されると弁座プレート25’に形成された出口側燃料通路を開き、通電が停止(OFF)されると出口側燃料通路を閉じるものである。
ここで、出口側燃料通路は、上述した圧力制御室1’と低圧燃料通路22’とを連通させる通路であり、その内部には出口側燃料通路を絞る出口オリフィス32’が形成されている。ここで、出口オリフィス32’の流路径(内径)は、入口オリフィス30’の流路径(内径)よりも大きく設定されている。なお、「出口オリフィス32’の流路径(内径)」≦「入口オリフィス30’の流路径(内径)」であっても良い。
具体的に、バルブ35’は、弁座プレート25’に形成された出口側燃料通路を開閉するボール弁35a’を備える。そして、ソレノイド34’がOFFの状態では、リターンスプリング36’の付勢力によってバルブ35’が下方に押し付けられ、ボール弁35a’が弁座プレート25’の出口側燃料通路を塞ぐ。逆に、ソレノイド34’がONの状態では、リターンスプリング36’の付勢力に抗してバルブ35’が上方に移動し、ボール弁35a’がリフトして弁座プレート25’の出口側燃料通路を開く。
燃料通路孔43’は、ノズルボディ6’の下端部まで穿設されたものである。また、燃料通路孔43’の下端部には、円錐状の弁座が形成されており、その弁座の下流側に1つまたは複数の噴孔40’が穿設されている。
噴孔40’は、頂部の内外を貫通して設けられている。具体的に、噴孔40’は、頂部の内壁面(サック室内)から外壁面(エンジンの気筒内に露出する面)まで斜めに貫通して形成されている。
シャフト45’は、ニードル摺動軸部44’より外径が小さく設けられて、下側の燃料通路孔43’内に挿通され、燃料通路孔43’との間に燃料通路を形成する。
ここで、上述したノズル室3’は、ニードル摺動軸部44’の下側において、ノズルボディ6’とニードル9’とで囲まれる空間により形成される。
この燃料導入路46’は、ニードル摺動軸部44’に設けられて、ニードル摺動軸部44’の上側に供給された高圧燃料をノズル室3’に導くものであり、軸方向に対して傾斜した長孔によって設けられている。
燃料導入路46’の下側には、燃料導入路46’の流路面積を絞るノズル絞りが設けられている。このノズル絞りは、燃料の噴射中におけるノズル室3’の圧力を抑えることで、噴射停止時におけるニードル9’の下降を早めて「噴射停止の応答性」を高めるものである。なお、燃料導入路46’の途中にノズル絞りを形成しないものであっても良い。
弁部が弁座に着座する際は、弁部のシート線が弁座に当接してノズル室3’と噴孔40’との連通を遮断し、弁部が弁座から離座する際は、弁部のシート線が弁座から離れて、ノズル室3’と噴孔40’とが連通され、高圧燃料が噴孔40’から噴射される。
次に、インジェクタの作動を説明する。
(1)インジェクタの停止中は、電磁弁2’の通電が停止されて、バルブ35’が弁座プレート25’に形成された出口側燃料通路を閉じる。これにより、ノズル室3’とともに圧力制御室1’の圧力が高圧に保たれる。その結果、スプリング24’の付勢力によりニードル9’が弁座に押し付けられ、ノズル室3’と噴孔40’が遮断された状態となり、噴孔40’から燃料の噴射は行なわれない。具体的に、ニードル9’には、スプリング24’の付勢力に加えて、ニードル9’の先端の弁部におけるシート線の内側の受圧面積差による閉弁力がニードル9’に生じるものである。
圧力制御室1’の圧力が低下することで、ノズル室3’の圧力が圧力制御室1’の圧力に対して相対的に上昇し、その圧力差により生じる開弁力(ニードル9’のリフト力)が、「スプリング24’の付勢力」と「シート線の内側の受圧面積差による閉弁力」との「合力」に打ち勝つことで、ニードル9’が上昇を開始する。
そして、ニードル9’が弁座から離座することにより、ノズル室3’と噴孔40’とが連通し、ノズル室3’に供給された高圧燃料が噴孔40’から噴射する。
圧力制御室1’の圧力が上昇することで、ピストン8’に下向きの力が加わる。そして、「圧力制御室1’の圧力とスプリング24’による閉弁力」が「ノズル室3’の圧力による開弁力」に打ち勝つことで、ニードル9’が下降を開始する。
そして、ニードル9’が弁座に着座すると、ノズル室3’と噴孔40’の連通が遮断されて、噴孔40’からの燃料噴射が停止して、上記(1)の状態に戻る。
この実施例5のインジェクタは、ピストン8’を挿通するシリンダ孔7’を、圧力制御室1’およびノズル室3’へ高圧燃料を供給するための高圧燃料通路として利用している。
このように、シリンダ孔7’を介して高圧燃料をノズル室3’へ供給する場合、ピストン8’とニードル9’とを結合手段10’によって軸方向に結合しないと、ニードル9’の上部には高圧燃料が常時作用するため、圧力制御室1’の圧力が低下した際に、ピストン8’のみがリフトし、ニードル9’がリフトしなくなってしまう。
そこで、この実施例5では、圧力制御室1’の圧力が低下した際に、ピストン8’のリフトにより、ニードル9’を「引っ張り上げる」ために、ピストン8’とニードル9’とを結合手段10’によって結合している。
ここで、結合ニードルには、加工上の撓みや、圧力制御室1’とノズル室3’から高圧を受けることによる動的な撓みが発生する。これらの撓みにより、ピストン8’やニードル9’に軸ズレが生じると、ピストン8’やニードル9’の摺動部において大きな摩擦が生じてしまう。
上記の不具合を解決するために、この実施例5の結合手段10’は、以下の特徴技術を採用している。
(a)結合手段10’は、ピストン8’の下端部に第1小径部(くびれ部)11a’を介して形成された第1鍔部11’と、ニードル9’の上端部に第2小径部(くびれ部)12a’を介して形成された第2鍔部12’と、第1、第2鍔部11’、12’を当接させた状態で、第1、第2鍔部11’、12’を軸方向に挟み付けるためのカプラ13’と、第1鍔部11’とカプラ13’の軸方向の間において軸方向に軽く加圧(軽圧入)された状態で配置されて、カプラ13’内における軸方向の隙間を調整するシム14’とからなる。
なお、第1、第2小径部11a’、12a’および第1、第2鍔部11’、12’の軸心は、それぞれピストン8’およびニードル9’の軸心に一致するものである。
また、シム14’は、第1小径部11a’またはカプラ13’の少なくとも一方に対して径方向の隙間S2’を形成するように設けられている。具体的に、この実施例のシム14’は、第1小径部11a’およびカプラ13’の両方に対して径方向の隙間S2’を形成するように設けられている。そして、シム14’と第1小径部11a’の隙間S2’と、シム14’とカプラ13’の隙間S2’との和が、ピストン8’とニードル9’の最大軸ズレ量より大きく設定されることが望ましいが、限定されるものではない。
具体的に、第1鍔部11’の上面は、上側に向けて膨出する球面M1’に設けられている。なお、この球面M1’を構成する仮想球体の中心は、ピストン8’の軸心上(ピストン8’の軸心を下方に延長した軸心上)に存在するものである。一方、シム14’の下面は、下側に向けて窪む円錐面M2’に設けられている。なお、この円錐面M2’を構成する仮想円錐の円錐頂部は、シム14’の軸心上(シム14’の軸心を延長した軸心上)に存在するものである。
なお、この実施例5では、第1鍔部11’の上面を球面M1’に設け、シム14’の下面を円錐面M2’に設ける例を示すが、逆であっても良い。
この実施例では、第1鍔部11’と第2鍔部12’は、軸方向外側に向けて膨出する球面M3’と、軸方向に対して垂直な平面M4’とで軸方向において接触する。
具体的に、第1鍔部11’の下面は、軸方向に対して垂直な平面M4’に設けられている。一方、第2鍔部12’の上面は、上側に向けて膨出する球面M3’に設けられている。
この球面M3’を構成する仮想球体の中心は、ニードル9’の軸心上に存在するものである。この構成により、第1鍔部11’と第2鍔部12’は、上側に膨出する球面M3’と、軸方向に対して垂直な平面M4’とで軸方向に接触する。
なお、この実施例5では、第1鍔部11’の下面を平面M4’に設け、第2鍔部12’の上面を球面M3’に設ける例を示すが、逆であっても良い。
実施例5のインジェクタは、ピストン8’とニードル9’に軸ズレが生じても、上記(b)〜(e)の構成、即ち、
(i)平面同士F1’、F2’のスライドと、
(ii)隙間S1’、S2’によるスライドの許容とにより、
「軸ズレの全てまたは一部」を吸収することができる。
(i)第1鍔部11’に対して第2鍔部12’が傾斜可能で、
(ii)球面M1’と円錐面M2’とが線接触し、
(iii)隙間S1’による小径部11a’、12a’および第1、第2鍔部11’、12’の傾斜の許容によって、
「軸傾斜ズレの全てまたは一部」を吸収することができる。
具体的には、
(i)「ピストン8’がニードル9’を引っ張り上げる際」は、カプラ13’を介して軸方向の力の伝達を行い、
(ii)「ピストン8’がニードル9’を押し下げる際」は、球面M1’と円錐面M2’の当接(第1鍔部11’と第2鍔部12’の当接)によって軸方向の力の伝達を行う。
このように、結合手段10’により、軸ズレおよび軸傾斜ズレの全てまたは一部を吸収して軸方向の力を伝達するため、ピストン8’の軸方向寸法が長いインジェクタであっても、摺動部の摩耗を防ぎ、ピストン8’とニードル9’の摺動性を良好に保つことができる。
なお、球面M3’を「円錐面M3’」に置き替える場合は、強度および耐久性(耐摩耗性)を考慮して頂部が超鈍角の円錐形状であることが望ましい。
このように設けることにより、「ピストン8’がニードル9’を引っ張り上げる際」に、ピストン8’とニードル9’に軸傾斜ズレが生じても、両者の傾きのズレを平面M3’と平面M4’の軸方向の隙間によって吸収することができる。
また、「ピストン8’がニードル9’を押し下げる際」に、ピストン8’とニードル9’に軸傾斜ズレが生じても、対向する平面M3’と平面M4’が一致して接触するのではなく、平面M3’と平面M4’の傾斜接触によって軸方向の力の伝達を行なうため、ニードル9’に対して力の偏りの発生が防がれる。
上記の実施例5では、ディーゼルエンジン用のインジェクタに本発明2を適用する例を示したが、ガソリンエンジン用のインジェクタなど、他のエンジン形式に用いられるインジェクタに本発明2を適用しても良い。
即ち、ピストン8’の軸方向寸法が長いインジェクタであれば本発明2が適用可能であり、実施例5で開示した大きな効果を得ることができる。
3 電磁弁
5 開閉弁機構
7 連結機構
14 スリーブ
15 制御ピストン
20 弁ボディ
40 ノズルボディ
41 燃料供給流路
42 燃料チャンバ
43 ニードル(ニードル弁)
49 噴孔
61 圧力制御室
62 出口オリフィス
71 くびれ部
72 傘状端部
73 球面状斜面
75 袋穴
77 シム
78 テーパ状の円錐面
79 C型切欠き部
S1 隙間(制御ピストンとニードルの径方向隙間)
S2 隙間(制御ピストンとシムの径方向隙間、ニードルとシムの径方向隙間)
1’ 圧力制御室
2’ 電磁弁(電動弁)
3’ ノズル室
4’ 噴射ノズル
5’ ロアボディ
6’ ノズルボディ
7’ シリンダ孔
8’ ピストン
9’ ニードル
10’ 結合手段
11’ 第1鍔部
11a’ 第1小径部
12’ 第2鍔部
12a’ 第2小径部
13’ カプラ
14’ シム
23’ 摺動スリーブ
30’ 入口オリフィス
46’ 燃料導入路
F1’ 平面同士(カプラとシムの接触箇所)
F2’ 平面同士(第2鍔部とカプラの接触箇所)
M1’ 球面(第1鍔部とカプラの接触箇所の一方)
M2’ 円錐面(第1鍔部とカプラの接触箇所の他方)
M3’ 球面(第1鍔部と第2鍔部の接触箇所の一方、変形例における平面)
M4’ 平面(第1鍔部と第2鍔部の接触箇所の他方)
S1’ 隙間(カプラと第1、第2小径部の径方向隙間、カプラと第1、第2鍔部の径方向隙間)
S2’ 隙間(シムと第1小径部の径方向隙間、シムとカプラの径方向隙間)
Claims (8)
- 噴孔(49)を開放するニードル弁(43)を摺動可能に支持するノズルボディ(40)と、
スリーブ(14)によって区画され、燃料圧力が制御される圧力制御室(61)に端面が露出し、かつ、高圧燃料が充満し、噴射する燃料の燃料供給流路(41)を形成する燃料チャンバ(42)を貫通する制御ピストン(15)を内蔵する弁ボディ(20)と、
前記圧力制御室(61)の燃料圧力を開放する出口オリフィス(62)を開閉する開閉弁機構(5)とを備えたインジェクタであって、
前記制御ピストン(15)の一端側と前記ニードル弁(43)の他端側とは、
前記制御ピストン(15)と前記ニードル弁(43)の端部に形成したくびれ部(71)を有する傘状端部(72)と、
C型切欠き部(79)を有する袋穴(75)とを、シム(77)を介して係合する連結機構(7)によって軸心方向に一体的に保持され、
前記連結機構(7)は、前記制御ピストン(15)と前記ニードル弁(43)の径方向の間に隙間(S1)が形成されるとともに、
前記制御ピストン(15)と前記シム(77)の径方向の間、または前記ニードル弁(43)と前記シム(77)の径方向の間の少なくとも一方に隙間(S2)が形成されており、
前記シム(77)は、前記連結機構(7)のクリアランス調整機構を有するもので、その一端面がテーパ状の円錐面(78)であり、他端面が平面により構成されていて、前記制御ピストン(15)が前記連結機構(7)を介して前記ニードル弁(43)を引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるように配置されていることを特徴とするインジェクタ。 - 請求項1に記載のインジェクタにおいて、
前記シム(77)は、その他端面の前記平面が前記制御ピストン(15)もしくは前記ニードル弁(43)の各端面と当接して、径方向の軸ズレを吸収することを特徴とするインジェクタ。 - 請求項1に記載のインジェクタにおいて、
前記シム(77)は、その一端面の前記テーパ状の円錐面(78)が前記制御ピストン(15)もしくは前記ニードル弁(43)に設けた球面状斜面(73)に線接触して当接することを特徴とするインジェクタ。 - 燃料の供給を受けるロアボディ(5’)と、
このロアボディ(5’)に締結されるノズルボディ(6’)と、
前記ロアボディ(5’)の内部で軸方向へ摺動自在に支持されるピストン(8’)と、
このピストン(8’)と同軸上に配置され、前記ノズルボディ(6’)の内部で軸方向に摺動自在に支持されるニードル(9’)と、
前記ピストン(8’)と前記ニードル(9’)とを結合する結合手段(10’)と、
を具備するインジェクタにおいて、
(a)前記結合手段(10’)は、
前記ピストン(8’)または前記ニードル(9’)の一方の端部に第1小径部(11a’)を介して形成された第1鍔部(11’)と、
前記ピストン(8’)または前記ニードル(9’)の他方の端部に第2小径部(12a’)を介して形成された第2鍔部(12’)と、
前記第1、第2鍔部(11’、12’)を当接させた状態で、前記第1、第2鍔部(11’、12’)を軸方向の両側から挟むカプラ(13’)と、
前記第1鍔部(11’)と前記カプラ(13’)の軸方向の間に配置されて、前記カプラ(13’)内における軸方向の隙間を調整するとともに、前記ピストン(8’)が前記ニードル(9’)を引っ張り上げるときに圧縮する方向に力を受けるシム(14’)とからなり、
(b)前記カプラ(13’)は、前記第1、第2小径部(11a’、12a’)および前記第1、第2鍔部(11’、12’)に対して径方向の隙間(S1’)を形成するように設けられ、
(c)前記シム(14’)は、前記第1小径部(11a’)または前記カプラ(13’)の少なくとも一方に対して径方向の隙間(S2’)を形成するように設けられ、
(d)前記カプラ(13’)と前記シム(14’)は、軸方向に対して垂直な平面同士(F1’)で軸方向において接触し、
(e)前記第2鍔部(12’)と前記カプラ(13’)は、軸方向に対して垂直な平面同士(F2’)で軸方向において接触し、
(f)前記第1鍔部(11’)と前記シム(14’)は、軸方向外側に向けて膨出する球面(M1’)と、軸方向内側に向けて窪む円錐面(M2’)とで軸方向に接触し、
(g)前記第1鍔部(11’)に対して前記第2鍔部(12’)が傾斜可能に設けられたことを特徴とするインジェクタ。 - 請求項4に記載のインジェクタにおいて、
このインジェクタは、
高圧燃料が供給される圧力制御室(1’)の燃料圧力を制御する電動弁(2’)と、
内部に高圧燃料が供給されるノズル室(3’)を有する噴射ノズル(4’)とを具備し、
前記ノズル室(3’)の圧力に対して前記圧力制御室(1’)の圧力を変化させることで燃料の噴射と停止の切り替えが行なわれるものであり、
前記ピストン(8’)が前記圧力制御室(1’)の圧力を受け、
前記ニードル(9’)が前記ノズル室(3’)の圧力を受けることを特徴とするインジェクタ。 - 請求項4または請求項5に記載のインジェクタにおいて、
前記ロアボディ(5’)において前記ピストン(8’)が挿通されるシリンダ孔(7’)の内部には、高圧燃料が供給され、
前記シリンダ孔(7’)の内部には、前記ピストン(8’)を摺動自在に支持する摺動スリーブ(23’)が配置されて、この摺動スリーブ(23’)の内側に前記圧力制御室(1’)が形成され、
前記シリンダ孔(7’)の内部に供給された高圧燃料は、前記摺動スリーブ(23’)に形成された入口オリフィス(30’)を介して前記圧力制御室(1’)へ導かれるとともに、前記ニードル(9’)に形成された燃料導入路(46’)を介して前記ノズル室(3’)へ導かれることを特徴とするインジェクタ。 - 請求項4〜請求項6のいずれかに記載のインジェクタにおいて、
前記第1鍔部(11’)に対して前記第2鍔部(12’)を傾斜可能にする手段は、
前記第1鍔部(11’)と前記第2鍔部(12’)の対向面のうちの一方の対向面に設けられた外方向に膨出する球面(M3’)と、
前記第1鍔部(11’)と前記第2鍔部(12’)の対向面のうちの他方の対向面に設けられた軸方向に対して垂直な平面(M4’)とを備えることを特徴とするインジェクタ。 - 請求項4〜請求項6のいずれかに記載のインジェクタにおいて、
前記第1鍔部(11’)に対して前記第2鍔部(12’)を傾斜可能にする手段は、
前記第1鍔部(11’)と前記第2鍔部(12’)の対向面のそれぞれに設けられた軸方向に対して垂直な平面(M3’、M4’)と、
当該両平面間の隙間とで構成されることを特徴とするインジェクタ。
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