以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
本発明においては、ひずみ感応部として半導体基板に不純物拡散層を設けたものであり、半導体単結晶の結晶方位とピエゾ抵抗係数の関係を考慮し、不純物拡散抵抗の電流方向とひずみを計測する方向との関係を、所望の特性を得られるように考慮したものである。以下では、単結晶半導体基板2の結晶面や結晶方位の表記には、ミラー指数を用いる。
ミラー指数表記においては、マイナス方向を指定する場合、数字の上にバーを付するが、本明細書中においては便宜上バーの付いた数字は“−”をつけて〔−110〕のように表記する。また特定の面や方向を表す場合には()と〔〕をそれぞれ用い、単結晶半導体基板内において等価である面や方向を表す場合には、それぞれ{}と<>を用いて表記する。さらに、本明細書においては不純物拡散層の長手方向に電流を流し、電流の流れる方向の抵抗値の変動を計測する。抵抗の長手方向という表記は電流を流し抵抗値変動を計測する方向を意味するものとする。
(参考例1)
参考例1を図1から図4を用いて説明する。本参考例による弁装置の監視システムの主要部を図1に、弁装置まわりの主要電気回路のブロック図を図2に示す。
図1,図2に示す弁装置の監視システムにおいて、半導体基板2がバルブヨーク9の表面に配置され、半導体基板2内のひずみ感知部であるホイートストンブリッジ回路4,5からの出力は制御送信部3へ導かれ、処理装置3内のA/D変換器6でデジタル化され、CPUやMPU等の制御演算装置7で演算処理された後に、通信モジュール17によって電送される。そのデータは通信モジュール18によって受信され、IP変換モジュール19で変換した後にインターネット網に載せられ遠隔監視センタ20で遠隔監視される。このとき半導体基板2からのひずみデータの他、各制御送信部に固有のアドレスデータを送信することが望ましい。また、該単結晶半導体基板2の主面2aの対向面である接着面は弁棒10に接続されているが、接続の手段は接着剤による接着や溶着もしくはボルトによる固定が望ましい。また、バルブヨーク9内に窪みを形成し、そこに半導体基板2を埋め込んでも良い。なお、本参考例では無線通信およびインターネット接続によって遠隔監視を実現する例を示したが、有線で監視センタへ伝送しても良いし、PHSや携帯電話のような通信手段を用いても良い。
図2のブロック回路図に示すように、表面が{001}である単結晶の半導体基板2の主面2aに少なくとも複数の不純物拡散抵抗4a〜4d,5a〜5dが設けられ、これらの不純物拡散層は接続されて2つのホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジ回路)4,5を構成している。
図3には、バルブヨーク近傍の拡大図として、不純物拡散層4a〜4d,5a〜5dとバルブヨーク9との関係を示す。なお、実際には半導体基板2は弁棒10やバルブヨーク9に比べて非常に小さいが、図3では詳細構造を記すために大きく誇張して示してある。図3の紙面上下方向が弁棒10の軸方向であり、バルブヨーク9の上に半導体基板2が貼り付けてあり、貼り付け面と反対側の面2aに不純物拡散層4a〜4d,5a〜5dが形成されている。なお、本参考例では不純物拡散層を形成した面2aと対抗する面を貼り付け面としたが、2aを貼り付け面としても良い。
p型の不純物拡散層4a〜4dでブリッジ4が構成され、それらの不純物拡散層4a〜4dの長手方向を弁棒10の軸方向に対して、ブリッジ回路4の対辺を構成する2本(4a,4c)を平行、別の対辺を構成する残りの2本(4b,4d)を直角になるように配置する。また、それらの不純物拡散層の長手方向、すなわち電流を流す方向は、p型の不純物拡散層4a〜4dが大きなひずみ感度を持つ半導体基板2の結晶方向の<110>の結晶方位と一致するように配置する。このように不純物拡散層4a〜4dを設けてブリッジ回路4を構成することにより、弁棒10に平行もしくは直角の垂直ひずみに対してのみ、ピエゾ抵抗効果によって大きな抵抗値の変化が得られるように出来る。なお、このブリッジ回路4はせん断ひずみに対しては感度がほとんど無い。弁棒10の反力としてバルブヨーク9には軸方向の垂直ひずみが主に作用することから、ブリッジ回路4によってスラスト力が測定可能となる。
なお、ここで例えば<110>方向の結晶方位と一致した不純物拡散層4a〜4d、という表記を用いたが、<110>の方向から外れた場合でも±10度の角度範囲のズレに収まっていれば、ほぼ同様な効果が期待できる。この角度からさらに外れた場合は急速にひずみ感度が低下するので、<110>の方向から±10度の角度範囲を長手とする不純物拡散層を形成するのが望ましい。
また、上記では電流を流す方向が、不純物拡散層のパターンの長手方向とほぼ一致するような説明をしたが、電流を流す向きが上記の方向と一致すれば、パターンの長手方向の如何にかかわらず同様な効果が得られる。ただし、電流を流す向きと不純物拡散層のパターンの長手方向がほぼ一致するようにした場合には、該拡散層の抵抗値を上げることができるので、より低消費電力を達成することができる。よって以下では、電流を流す向きを拡散層のパターンの長手方向となる場合について主に説明する。
また図4のように、拡散抵抗の抵抗値を上昇させて消費電力を低減する目的で、拡散抵抗の長さを長くしてもよい。この場合には、センサの面積をそれほど増加させることなく抵抗値を上昇させることができるので、センサの消費電力を減少することができるという利点が生じる。不純物拡散層4a〜4d,不純物拡散層5a〜5dは、それぞれコンタクトホールを用いて接続されて折り返すことで抵抗値が高くなるようにしてある。
また、該半導体基板2内に設けられるブリッジ回路5はn型の不純物拡散層5a〜5dで構成され、その不純物拡散層の長手方向を弁棒10の軸方向に対してブリッジ回路5の対辺を構成する2本(5a,5c)を左に45度となり、別の対辺を構成する残りの2本(5b,5d)は逆方向である右に45度になるように配置する。すなわち、不純物拡散層5a,5cと不純物拡散層5b,5dとはその長手方向が直交する。また、その不純物拡散層5a〜5dの長手方向、すなわち電流を流す方向は、n型の不純物拡散層5a〜5dが大きなひずみ感度を持つ半導体基板2の結晶軸方向の<100>方向と一致させる。このように不純物拡散層5a〜5dを配置したブリッジ回路5を設けることによって、垂直ひずみに対して感度が無く、せん断ひずみに対して大きな抵抗値の変化が得られるように出来、トルクを高精度に計測することが可能となる。
通常、シリコン等の半導体単結晶材料では、異方性が強いため、結晶軸方向によってその電気的特性が大きく異なる。よって特定の結晶軸方向に電流を流すと、特定方向のひずみに対して感度を持つ。この感度を持つひずみ方向はp型半導体とn型半導体で大きく異なる。本参考例は、弁装置の監視システムを構成するのに相応しいように不純物の種類,結晶方向,ひずみ取得方向を考慮したために、初めて成し得たものである。
このようにブリッジ回路4のスラストセンサとブリッジ回路5のトルクセンサでは、特定の方向の感度が最大となるように不純物拡散層の長手方向が単結晶の結晶方位に対して、結晶学的に決められている。その一方で、各不純物拡散層の長手方向の弁棒10に対する設置角度は、その力学的な見地から決められている。よって本来ならば、ブリッジ回路4とブリッジ回路5は別チップとならざるを得ないが、本参考例においては、これを工夫の上、1チップとすることが出来たものである。すなわち、弁棒10の軸方向に対し、不純物拡散層4a〜4dは軸方向に垂直もしくは平行、不純物拡散層5a〜5dは軸方向に45度の配置であるので、不純物拡散層4a〜4dと不純物拡散層5a〜5dは45度の角度を持つ。そして結晶軸方向はそれぞれ大きなひずみ感度を持つ方向として、p型の不純物拡散層4a〜4dが単結晶の<110>、n型の不純物拡散層5a〜5dが単結晶の<100>を向いているので、ちょうど45度の角度をもって配置されるようになる。このように構成した1枚の半導体基板2を用いることで弁装置のスラスト力とトルクの計測が可能となった。
以上を言い換えると、図3の参考例では弁棒10の軸長手方向と半導体基板2の<110>方向が一致するように設置する。
以上示したように、1枚の半導体基板2をバルブヨーク9に設置するだけなので、複数のひずみゲージを特定の角度を持って貼り付けるのに比べて、設置角度誤差が小さくなり、精度の高い計測が可能となる。
また、該ブリッジ回路4,5は半導体製造プロセスを用いて作成されるために、非常に微細に出来るという特徴を有する。その結果、半導体基板2も小さくすることが出来るので、小さな弁装置にも設置することができ、また小さいために保守点検の妨げにならないという利点を有する。特に、従来のように複数のセンサを設置すると配線が多く、弁装置の保守点検の際にはこの配線の処理が煩雑であった。しかしながら本参考例においては半導体基板2の1箇所からまとまって配線が出ているので、その処理が容易であるという利点が大きい。また、半導体基板2は半導体製造プロセスを用いて作成されるので安価であるという利点も有する。
さらに参考例においてはひずみの検知に半導体結晶のピエゾ抵抗効果を用いているために、従来のひずみゲージよりも1桁以上、ひずみに対する感度が高い。よって高精度にひずみを検知できる弁装置の健全性評価システムが実現できるという利点が有る。
また、半導体結晶のピエゾ抵抗効果は大きな温度依存性を有するが、本参考例ではブリッジ回路4,5を組むことによって温度補償機能を持たせている。これによって弁箱12近傍に流れる流体(液体及び気体)の温度が変化した場合でも、高精度な測定が可能となる。従来では、ひずみゲージはバルブヨーク9に設置するが、その温度補償を行うためのダミーゲージはバルブヨーク9本体に貼り付けることなくバルブヨーク9近傍に設置していた。そのため、ダミーゲージとひずみセンサに温度差が発生することが多く、正確な測定が行えないという場合も多かった。これに対し本参考例においては、ダミーゲージに相当するものも同一の半導体基板2上に載っているので温度差が発生することが無く、弁装置の健全性評価中に温度が変化しても非常に正確な測定が可能となる。なお、本参考例では半導体基板2を用いているために熱伝達率が非常に高いので、半導体基板2内の温度差はほとんど無いという利点もある。
また、本参考例においては、半導体製造プロセスを用いて微細なブリッジ回路を形成していることから、そのブリッジ回路の内を磁束が通り抜け難いので、ノイズが載り難いという特徴が有る。よって近くにモータやリレー等の大きなノイズ源があった場合でも、ノイズを気にすることなく、高精度な測定が可能となる。
また、本参考例においては、半導体基板2を用いているので、疲労寿命がなく、長期信頼性に優れるという特徴がある。すなわち、従来のひずみゲージでは、有機フィルム上に金属薄膜細線を設けた構造なので、腐食や疲労など、長期信頼性に課題が残った。これに対して、本参考例においてはバルクである半導体基板2を用いているので、疲労現象がなく、長期信頼性に優れるという特徴を有する。特に弁装置の監視システムでは十年以上使用するケースも多く、その際にも長期信頼性が補償できるという利点がある。
なお、本参考例においては、同一の半導体基板2に2つのブリッジを形成して、スラスト力とトルクを同時に計測できるようにしたが、どちらか一方でも、上記のような高精度な計測が可能となるという利点を有する。
(参考例2)
本参考例2を図2,図5から図12を用いて説明する。図2,図5に示すように本参考例2では、半導体基板2を弁棒10に取り付け、これを同じく弁棒10に取り付けた制御送信部3でデータをデジタル化してから送信する。該半導体基板2内のひずみ感知部であるホイートストンブリッジ回路4,5からの出力は制御送信部3へ導かれ、処理装置3内のA/D変換器6でデジタル化され、CPUやMPU等の制御演算装置7で演算処理された後に、通信モジュール17によって電送される。そのデータは通信モジュール18によって受信され、IP変換モジュール19で変換した後にインターネット網に載せられ遠隔監視センタ20で遠隔監視される。
図8は弁棒10と各不純物拡散層4a〜4d,5a〜5dの長手方向の関係を示したものである。参考例1と同様に、p型の不純物拡散層4a〜4dによってブリッジ回路4が構成され、その不純物拡散層の長手方向を弁棒10の軸方向に平行もしくは直角になるように配置する。また、その不純物拡散層の長手方向、すなわち電流を流す方向は、半導体基板2の結晶方向の<110>の結晶方位と一致するように配置する。このように不純物拡散層を配置することにより、弁棒10に平行もしくは直角の垂直ひずみに対してのみ大きな感度を有するため、ブリッジ回路4によってスラスト力が測定可能となる。
またブリッジ回路5に関しても、参考例1と同様に、n型の不純物拡散層5a〜5dで構成し、その不純物拡散層の長手方向を弁棒10の軸方向に対して左右に45度になるように配置する。これによって、高精度に弁棒10のトルクが計測可能となる。
すなわち、図8の参考例では弁棒10の軸長手方向と半導体基板2の<110>方向が一致するように設置する。
なお、弁棒10の一部の径を大きくし、その中心に空洞を持つものとし、この表面近傍に半導体基板2を取り付けてもよく、その場合には感度が上がるという利点を生じる。
また、弁棒10に半導体基板2を取り付ける際には、弁棒10に設けられてモータ(駆動装置)11からの駆動力を伝えるギアと、液体の漏れをシールして防止するシール部材との間の領域に取り付けるのが望ましい。シール部材の下部、すなわち、弁体側に取り付けると処理装置3への接続が難しくなるという問題が発生し、ギアの上部に取り付けても所望のトルクは測定できないという問題が発生する。シール部材よりもモータ11側に半導体基板2を取り付けると、このような問題は発生しない。
また、図6に示したように、弁棒10に半導体基板2を取り付ける際には、弁棒10を面取りして設置する。弁棒10の表面は曲面のため、半導体基板2を取り付けると取付面に隙間が空くことになるが、この隙間は半導体基板2のひずみ感度を落とし、また感度ばらつきの原因になる。半導体基板2は薄いため、曲げて設置することもできるが、その場合には、半導体基板2を曲げたことによってブリッジバランスが崩れ、大きな出力オフセットが発生するという問題が発生する。よって図6に示すように、弁棒10に面取りした平面34を形成し、これに取り付けることによって、感度ばらつきが小さくなり、また出力オフセットも小さく出来る等、精度良く、運用上好ましい測定が可能となる。また、曲げて設置しないことから半導体基板2内に残留ひずみが残らず長期信頼性にも優れる。
さらに、図7に示したように、弁棒10の長手方向に穴を形成し、この穴の内部に半導体基板2を設置し、充填物33で埋め込んでも良い。また処理装置3へ接続するための半導体基板2からの配線は、弁棒10に穿った穴に沿って延び、弁棒10外に設けた処理装置3に接続される。またブリッジ回路4は参考例1と同様に半導体基板2内のp型の不純物拡散層4a〜4dによって構成され、その不純物拡散層の長手方向を弁棒10の軸方向に平行もしくは直角になるように配置する。また、その不純物拡散層の長手方向、すなわち電流を流す方向は、半導体基板2の結晶方向の<110>の結晶方位と一致するように配置する。もしくは、n型の不純物拡散層を用い、その長手方向を弁棒10の軸方向に平行もしくは直角になるように配置し、さらに該不純物拡散層の長手方向を半導体基板2の<100>の結晶方位と一致させても良い。図7に示した参考例の場合には、トルクは計測できないが、弁棒10のスラスト力を精度よく計測することが可能となる。また、半導体基板2が弁棒10の内部に埋め込まれているため、耐環境性に優れ、より長期の使用に耐えうることが出来るという利点がある。また、処理装置3は弁棒10先端に取り付けられ、外部への通信を行い易くなっているが、弁棒10とともに回転するようになっているため、半導体基板2から処理装置3への配線が弁棒10の回転により絡まることはない。本参考例では、内部電源と無線通信を採用したため、外部とは有線接続が無くなり、回転する弁棒に設置が可能になったためである。
本参考例2では、参考例1に比べて弁棒10に直接、ひずみ計測部である半導体基板2を設けることが出来るため、より精度の高いトルク計測やスラスト力計測が可能となる。特にトルク計測では、参考例1のようにバルブヨーク9に取り付けると、バルブヨーク9は剛性が高く、鋳物であるために部品形状が複雑である場合も多く、その計測精度が低下する場合も多い。しかし本参考例2では、弁棒10に直接に取り付けるために、形状精度が良く、高精度の計測が可能となるという利点が生じる。その他、本参考例でも参考例1に示したものと同様な利点を有する。
ただし、単に弁棒10にひずみゲージを取り付けただけでは、弁棒10に取り付けて実際に運用するのは難しい。すなわち弁棒10は回転するため、それ自体に取り付けるためには無線通信の機能が必要である。すなわち、無線でデータを伝送することにより、弁棒が動作しても配線が巻きつくことがないため動作信頼性が高く、保守点検が容易なシステムとなる。しかしながら回転するという特徴から、外部から有線で電源を供給することが難しい。すなわち、制御送信部3の内部に電源を持ち、ワイヤレスで通信できる小型の制御送信部3が望まれる。これを通常のひずみゲージで行おうとすると、ひずみゲージの消費電力が大きく、制御送信部3の内部に電源を設けても、電力をすぐに消費してしまうことから、実際の運用が難しいという問題が生じる。また制御送信部3の内部の電源を大きくして、蓄電量を増加させることも考えられるが、制御送信部3自体が大きくなって弁棒に取り付けるのに問題が出やすい等、実用的ではなかった。
しかしながら本参考例においては、不純物拡散抵抗4a〜4d,5a〜5dの抵抗を高くして消費電力量を低減させた場合でも、耐ノイズ性は劣化せず、高精度の計測が維持できる。よって性能を落とさずに該不純物拡散抵抗の消費電力を1/100以下にすることが可能であり、小型の内部電源でも長期間の監視が可能となる。すなわち、弁棒10へ取り付けたスラスト力センサ,トルクセンサによる弁装置の異常監視は、本参考例における半導体基板2の存在によってのみ実用となったものである。また、弁棒10での検知は感度が高くなるという利点があったが、流体に接しているためにバルブヨーク9よりも温度が変動しやすく誤差が出やすいという問題があった。しかしながら本参考例においては半導体基板2内にブリッジを形成したために温度変化に対して正確に補正が出来るという特徴があり、これによりこの温度変動の問題が解決できたために高精度な計測と診断が可能となったものである。
なお、図9に示すように、n型の不純物拡散層5a〜5dによってブリッジ回路5を構成し、その不純物拡散層の長手方向を弁棒10の軸長手方向に平行もしくは直角になるように配置し、さらにp型の不純物拡散層4a〜4dでブリッジ回路4を構成し、その不純物拡散層の長手方向を弁棒10の軸長手方向に対して左右に45度になるように配置した場合でも同様な効果を有する。この場合には特にスラスト力センサの感度が、トルクセンサに比べて良好であるという利点がある。この配置は上記参考例1や下記の参考例にも適用可能である。この場合には弁棒10の軸長手方向と半導体基板2の<100>方向が一致するように設置する。
また、図30には別な不純物拡散層の配置を示した。本参考例では、スラスト力を計測する不純物拡散層5a〜5dの配置が図9の場合と異なっている。この場合には、不純物拡散層5aと5cはp型の不純物拡散層で構成され、その不純物拡散層の長手方向、すなわち電流を流す方向は、半導体基板2の結晶方向の<100>の結晶方位と一致するように配置する。また不純物拡散層5bと5dはn型の不純物拡散層で構成され、その不純物拡散層の長手方向、すなわち電流を流す方向は、半導体基板2の結晶方向の<100>の結晶方位と一致するように配置する。この場合にも弁棒10の軸長手方向と半導体基板2の<100>方向が一致するように設置する。
このような配置にすることで、スラスト力を計測する際に、弁棒の軸長手方向の力のみを選択的に計測することが出来、弁棒に曲げ応力が作用した際にも、その影響を受けにくくなるという利点が生じる。なお、この配置は上記参考例1や下記の参考例にも適用可能である。
図10に示すように2つのセンサを2つの半導体基板2に別々に設けて、それぞれを貼り付けてもよく、その場合には、貼り付け誤差が出やすいという問題はあるが、それ以外の利点は上記と同様である。
また、図11に示すように、ステムナット36に取り付けても良い。この場合には、図12のように、半導体基板2をナット部37とウオームギア29に挟まれる領域に取り付けるのが望ましく、さらには、半導体基板2を取り付ける周辺の領域がナット部37より薄くなっているのが望ましい。また、図12ではステムナット36の表面に半導体基板2を設置しているが、ステムナット36の裏面、すなわちナット内部に設置されても良い。ただし、その場合には制御送信部3を表面に出るように設置するのが望ましい。各不純物拡散層の方向は弁棒10に半導体基板2を設置するのと同様とする。このようにステムナット36の周辺に取り付けることによって、本システムを設置するときに、弁本体を全部、分解する必要が無いという利点がある。
本実施例はトルクスイッチ用の弾性体28に半導体基板2を取り付けた例である。図13,図14に示すように、モータ11に接続される動力軸30に接続された弁棒10を駆動するためのウオームギア29の軸27の先端には、該ウオームギア29にスラスト方向に加わる力を弾性的に受け止める弾性体28が設けられ、ウオームギア29の負荷抵抗に応じたスラスト力を弾性的に受止めている。負荷抵抗力を反映したスラスト力に応じて軸27は左右に移動することを利用して、この移動変位量が一定以上になった場合に検知するトルクスイッチ16という機構が設けられる。
このトルクスイッチ16は、異常時に出力トルクが過大となって弁自体が損傷することを防止する目的で、既定トルクに達した時点で電動機の電源を緊急遮断するためのスイッチとして用いる。この電動弁のトルク特性は、トルクスイッチ等の回転部の磨耗や劣化等によって、初期状態ではトルクスイッチが作動しないような状況でも、経時変化によって作動してしまうことがあり、これにより弁を使用しているプラントの停止が余儀なくされる場合がある。
本実施例では、弾性体28に半導体基板2を設けて、その弾性体28の弾性ひずみを測定することで軸28のトルクを間接的に測定する。なお、この弾性体28としては、一般にトルクスプリングと呼ばれているものでも良い。本実施例は単純な構造であり、長期の使用においても磨耗や劣化を起こす部分が無いため、従来のトルクスイッチを用いたシステムに比べて、格段に信頼性の高い異常検知システムが可能となる。さらに間欠的に、ひずみデータを取り続けて履歴として残すことで、不良現象の発生時にいち早くその原因を究明することが出来るという利点が生じる。また、弾性体28のひずみを測定してトルクに換算することで、より精度の高い測定が可能となる。図16には半導体基板2の設置方法の詳細を示す。本実施例では板バネを例として説明を行うが、コイルバネ等でも同様に有効である。図16では、弾性体28は円形状の板バネであり、軸27に作用する左右の力によって大きく変形する部分である板バネの中央部近傍の表面に取り付けてある。図15には、図16の左側から見た図を示す。p型の不純物拡散抵抗4a〜4dは弾性体28の径方向に直角,平行になるように配する。また、半導体基板2の結晶<110>方向が、弾性体28の径方向に直角,平行になるようにする。軸27のスラスト力は弾性体28の円板板バネの径方向にひずみを発生させ、周方向にはひずみを発生させない。図16に示すようにp型の不純物拡散抵抗4a〜4dを配置することにより、この径方向のひずみを高精度に検知することが可能となる。また、図17のように、n型の不純物拡散抵抗5a〜5dを弾性体28の径方向に直角,平行になるように配し、半導体基板2の結晶軸方向<100>を弾性体28の径方向に直角,平行になるようにしても同様な効果が得られる。
本実施例によれば、従来のトルクスイッチを用いた弁装置に改造無く取り付けることが可能であり、従来のトルクスイッチと併用でき、より信頼性の高いシステムとすることが出来る。
また、弾性体28は金属体のケースに覆われていることが多いので、その場合には処理装置3はケースの表面に配置するのが望ましい。これによって電波がケース外に到達するようにでき、良好な通信環境が確保できる。
(参考例3)
図18には参考例3を示す。本参考例では、半導体基板2をギア26とウオームギア29の間の軸27に配置する。また、図19に示すようにp型の不純物拡散層4a〜4dによってブリッジ回路4を構成し、その不純物拡散層の長手方向を軸27の軸長手方向に平行もしくは直角になるように配置する。またn型の不純物拡散層5a〜5dでブリッジ回路5を構成し、その不純物拡散層の長手方向を軸27の軸長手方向に対して左右に45度になるように配置する。
これによってモータ11とウオームギア29の間のトルクとスラスト力が計測でき、これを弁棒10の部位のトルクとスラスト力と比較することにより、寿命箇所の同定や、不良発生時の迅速な原因究明に役立てることが可能となる。
また、処理装置3を駆動のための軸27近傍に配置し、ワイヤレスのシステムとすることにより、駆動軸が回転しても、これに伴って処理装置3も動くことができるため、スリップリング等の大掛かりな装置が不要で、簡便なシステムとすることが出来る。また、弁装置のメインテナンス性も良くなるという点がある。
(参考例4)
参考例4に関して図20を用いて説明する。本参考例は、手動弁31に本参考例を適用した例である。
プラントにおける手動弁の運用は、プラント定期点検時の開閉動作のあと、全ての手動弁の開閉状態を手作業で確認し、その結果を記録して残す等が行われており、大変な労力が費やされている。そこでこの手動弁の開閉状態の遠隔監視が実現できると、コスト削減とプラントの可動信頼性の向上につながるという大きなメリットが生まれる。
従来は、この手動弁の開閉状態の遠隔監視を行うシステムとして、特開平8−326950号公報に見られるように、弁の開度を回転角センサで検知して表示するシステムが知られている。しかしながら、これらのシステムでは、長期間の使用において発生するゆるみ等によって開閉時の回転角がわずかに変化することが多いため、十分な締め付け力を有しない場合にも閉状態の信号を表示しやすいという問題を有する。十分な締め付け力を持たない場合には、最悪の場合には液体の漏洩につながる恐れがある。
図20に示すように、本参考例では半導体基板2をバルブヨーク9に取り付け、そのひずみ状態を監視する。これによれば弁体32が弁箱12に押し付けられる圧縮力を直接監視することができるので、直接的にバルブの閉まりを監視することが可能となる。よって長期間の使用によってゆるみガタツキが発生した場合においても、締め付け力の確実な監視が可能であるという利点がある。すなわち、液体の漏洩が起こるような状態であるかどうかを確実に判別することが可能である。
半導体基板2内の不純物拡散抵抗の配置は図3の場合と同様であるが、特に本参考例の場合には弁体32の押し付け力を監視する必要があるため、ブリッジ回路4のみ使用しても良い。これによって、参考例1と同等な効果が期待できるほか、上記のように液体の漏洩を確実に防止するような遠隔監視が可能となるという大きな利点が生じる。また、ブリッジ回路5も合わせて用い、トルクの監視を行う場合には、弁の開閉中における弁棒10のネジ面への異物の噛み込み等が検知できるという利点が付加される。
また、半導体基板2の取り付け位置は、図20に示すようにバルブヨーク9の裏側、すなわち弁棒10に近い側が望ましく、処理装置3の取り付け位置はバルブヨーク9の表面が望ましい。バルブをある一定の力で締め付けた際のバルブヨーク9の裏面の引張ひずみは表面のひずみよりも圧倒的に大きいため、バルブヨーク9の裏面に取り付けることによって感度の良い締め付け力検知が可能となる。また、処理装置3は、その内部に電波の発信源とアンテナ23を持つが、発振される電波は金属体に囲まれるほど電波の到達距離が短くなる。よって処理装置3はバルブヨーク9の裏側(半導体基板を取り付ける面)とは異なる面(例えば表面)に取り付けるほうが電波の到達距離の観点から望ましい。
しかしながらバルブヨーク9へ取り付ける際に、上記以外の取り付けを行った場合では性能面では劣るが、同様な効果は有する。
図21に示すように、弁棒10に設置しても良い。半導体基板2の設置位置および方向は図8,図9,図10,図30のいずれでも可能である。
この場合には、図20に示す参考例と同様な効果を有するとともに、参考例2に示すような利点も生じる。特に手動弁は小型のものが多く、これに従来のひずみ検知システムを取り付けるのは難しかった。本参考例は半導体基板2,処理装置3ともに非常に小型であるために、数cm大の小型弁にまで取り付けが可能であるという利点がある。また、図22に示すように、処理装置3をハンドル近傍に設けても良い。このようにすることにより、電波の到達距離が伸びるという利点があるほか、バッテリの交換が簡易である、という利点も生じる。
(参考例5)
参考例5に関して図23を用いて説明する。本参考例は、半導体基板2内に温度センサ15を内蔵した例である。半導体基板2はシリコン等の半導体材料で構成され、ひずみの被測定物は鉄鋼材料等の金属であることが多い。このため、温度変化によって半導体基板2と被測定物の間で、両者の熱膨張係数差に由来する熱ひずみが発生する。この熱ひずみは、ピエゾ抵抗効果の温度依存に比べては格段に小さいが、それでも精密な測定が必要な場合には考慮が必要となる。図23に示すように、半導体基板2内に温度センサ15を内蔵することによって、その温度データを用いて、処理装置3内、もしくは遠隔監視センタ20において熱ひずみを補正することが出来、温度が変化した場合でも、より正確な計測が可能となる。半導体基板2は熱伝導率が高いので、温度センサ15と各ブリッジ回路とはほぼ等しい温度とすることができるため、正確な熱ひずみの補正が可能となる。また、本参考例によれば、弁装置のひずみ状態とともに温度状態も検知でき、温度変化から、プラントの何らかの異常の予兆も検知することが出来る。また、該温度センサ15は、そのプロセスをブリッジ回路と共用できるので、不純物拡散層を用いたものであることが望ましく、さらにはp型とn型のジャンクションを形成したものであることが望ましい。
(参考例6)
以上、参考例に示したように、本参考例におけるシステムでは高精度計測と低消費電力を両立させることが可能となる。このため消費電力が小さいという利点から、細かい間隔で、間欠的に、ひずみデータを取り続けることが可能とすることが出来た。このような緻密な取得データを履歴として残すことで、不良現象の発生時にいち早くその原因を究明することが出来るという利点が生じる。またワイヤレスであるということから弁棒等の回転体に、バッテリ等の内部電源を持った無線機とセンサを取り付けることは容易であり、配線を極端に減らせることから弁装置のメインテナンス性の大幅な向上をもたらすという利点がある。
しかしながら、バッテリ等の内部電源によって定期的に無線伝送を行う場合には、バッテリの消耗によって十年以上にわたる運用が難しくなるという問題点がある。そこで、本参考例はその課題を解決したものである。
図24には処理装置3のデータ処理の流れを示した。本参考例では、処理装置3は間欠的に弁装置のスラスト力とトルクの計測を行うが、最新の計測値を1回前の計測値と比較して状態が変化した場合には、その計測結果を遠隔監視センタ20へ送信する。すなわち、1回前の計測値がバルブ閉の既定値を満たしており、最新の計測値がバルブ閉の既定値を満たす場合には送信しないが、最新の計測値がバルブ閉の既定値を満たさなくなった場合に送信を行う。同様に、1回前の計測値がバルブ開の既定値を満たしている場合に、最新の計測値がバルブ閉の既定値を満たさなくなった場合に送信を行う。また、バルブ開,バルブ閉以外の状態を示す規定値をもうけてもよい。バルブ閉の規定値とバルブ開の規定値の間にバルブ開でも閉でもない規定値を設定し、最新の計測値がバルブ閉の既定値でもなく、バルブ開の既定値でもない場合には送信を行う。このような処理方法を取ることによって、状態が変化した場合にのみ送信するため、送信に要するエネルギを節約することが出来、内部電源のエネルギの節約が可能になる。また、バルブ開,バルブ閉以外の状態を検知することにより、弁装置の締め付けが不十分である場合も確実に検出することが出来る。また、実際のプラントでは非常に多数の弁装置が存在し、処理装置3も多数設置されるため、通信の干渉が発生する。本参考例のように弁装置の開閉状態に変化が起こった場合にのみ通信することで、この通信干渉の起こる確率を低減することが出来る。これによってデータの渋滞を起こすことが無く、高速で確実な弁装置の状態監視が可能となる。
計測値は処理装置3によって、処理装置3に固有の数値であるアドレスとともに遠隔監視センタ20に送られる。このときに、計測値を加工したデータを送信してもよい。電波の受信側であるIP変換モジュール19は、処理装置3からのデータを受信すると、受信した確認のために、処理装置3へ無線で信号を送る。処理装置3はその受信完了信号を受けるまで、繰り返し無線でデータを送り続ける。この通信は、連続通信でも、間欠通信でもよい。このように受信の確認を行うことで、確実な弁装置の状態監視が可能となる。また、本参考例では状態が変化した場合のみ送信する動作を行うために、システム全体の通信量少なくなり、干渉する機会も減る。よって受信の確認動作を行っても、通信回数が数回以内には確実なデータの受け渡しが可能となるために、送信に要するエネルギも少なくてすむという利点がある。すなわち、本参考例によれば、低消費電力で確実な状態監視が実現できる。
また、本参考例においては、正常動作した場合の弁装置の開状態と閉状態のひずみ値を予め処理装置3内部に保有し、これと計測値を比較し、状態が変化した場合のみ無線通信することを行ったが、この正常動作の場合の既定のひずみ値を内部に持たず、計測値の変化量が大きくなった場合のみ無線通信してもよい。すなわち、ひずみ量が大幅に変わった場合には、弁装置に何らかの状態変化があったものと判断し、この計測値を無線で送信しても良い。この場合には、センサのオフセット量が経年劣化で大きくなった場合でも確実に変化を捕らえることが出来るという利点がある。
また、図25に示すように、弁装置の状態の変化を検知した場合に、その状況を送信するとともに、一定時間の間、連続的に計測してその結果を遠隔監視センタ20に送りつづけても良い。これによって、弁が開閉動作している最中のひずみ状態を連続して計測することができる。これによって動作中の摺動摩擦によるトルクの連続的な計測が可能となり、劣化診断や不良予測を行うことが可能となる。すなわち、弁棒の10の一部に噛み込み等の不良が発生した場合には、その部分をネジ部が通過する場合にトルクが増加する現象が観察され、障害発生の予兆であることを検知できる。また、弁装置の状態を間欠的に送信している場合には、弁装置の状態変化を検知した場合や計測値の変化量が所定の値よりも大きい場合に、変化を検知していないとき計測値の変化量が所定の値よりも小さいときに比べて間欠送信の間隔を短くするようにしてもよい。
また、図26に示すように処理装置3に記憶装置(図示せず)を備えて計測値を処理装置3に記憶しても良い。記憶装置はフラッシュメモリ等の不揮発なものが望ましい。また、計測値を加工したデータを記憶してもよい。ただし、処理装置3の記憶容量には限界があるため、一定時間後もしくは記憶容量が満杯になった場合に、古いデータから上書きされるようになっていても良い。これにより、弁装置に不良事象が発生した際に、これに遡って計測データを参照できることによって、不良発生の原因究明が容易になるという効果がある。
さらに、用途によっては全ての計測データを処理装置3から遠隔監視センタ20へ送る必要がある。この場合には、図27に示すように、1回前の計測値と最新の計測値との差を送信するのが望ましい。この場合には送信に必要な数字列が少なくなるため、送信時間を短く出来、この分、エネルギの消耗することが可能となる。
また、図28に示すように、計測動作とともに内部電源の電圧監視を行うのが良い。例えば、内部電源の電圧を処理装置3で計測し、これと予め設定された電源電圧の下限値と比較して、下回っている場合には、処理装置3のアドレスとともに電源電圧値(電源残量)もしくは電源切れの警告信号を無線で遠隔監視センタ20に送信する。本参考例によれば、内部電源としてバッテリ等を用いた場合でも、消耗する前に取り替えることが出来るため、信頼性ある計測が可能である。特に図24に示すような状態が変化した場合にのみ通信を行うシステムでは、図28の監視機構がない場合には、外部からはバッテリが消耗した場合と状態が変化しない場合の区別がつかず、システムの信頼性が低下する。図28に示す動作を行うシステムでは、バッテリの消耗と状態変化なしとの区別が明確であり、低消費電力で確実な状態監視が実現できる。
(参考例7)
図29には参考例7を示す。本参考例では、処理装置3内に発光装置35を設けたものである。発光装置35はLED等の低消費電力のものが良い。弁装置の開閉状態に応じて発光装置35の点灯および消灯が決定される。すなわち、制御演算装置7によって最新の計測値と既設定の開閉状態のひずみ値とが比較され、その結果として発光装置35の消灯や点灯が決定される。本参考例では、開状態も閉状態も満足しない状態にある場合に発光装置35が点灯するようにする。すなわち点灯している時は弁装置の閉め方に問題があるときである。これによって、遠隔監視センタ20からの指示が無くても、保安員が点検時に目視で異常を発見でき、弁装置の異常に対して素早い対応が可能となる。また、非常に多数の弁装置が設けられた大規模プラントにおいては、遠隔監視センタ20において異常を検知し、保安員が修理する場合でも、多数の弁装置の中から問題のあるものを見つけ出すことは容易ではない。本参考例によれば、異常のある弁装置のみ発光装置35が点灯しているので見つけやすく、間違った弁装置を修理する等の誤りが防止できるという優れた利点がある。また、異常がある弁装置に付けたものだけLEDを点灯させることにより、正常動作している場合には内部電源の消耗を防止することができ、長時間の運用が可能になるという利点がある。
また、開状態もしくは閉状態の場合にのみ点灯させるのでもよく、その場合には保安員が目視で弁の状態を把握することが出来るので、素早く弁の開閉状態の点検が行えるという利点がある。すなわち、従来では保安員が弁のハンドルを回し、その締まり具合を手で確認していたので時間を要したが、本参考例によれば目視で確認できるため、素早い点検が可能となる。
なお、本参考例では保安員に報知する装置として発光装置を用いたが、画面や音によって知らせる報知装置としてもよいし、発光装置を内蔵しても外部に接続してもよい。
(参考例8)
本参考例は、図29と同様に、処理装置3内に発光装置35を設けたものであり、その発光装置を遠隔監視センタ20から遠隔で点灯できる仕組みを持つ。すなわち、遠隔監視センタ20からIP変換モジュールを通して処理装置3へ無線通信を行い、処理装置3内の発光装置35を点灯・消灯させる。無線通信データは、特定の処理装置3のアドレスと、発光装置35を点灯・消灯させるコマンドを含む。保安員が特定の弁装置の修理や点検を行う際には、この点灯している処理装置3を見つけることにより、多数の弁装置が設けられている場合でも目的の弁装置を間違えることなく見つけ出すことが出来る。すなわち本参考例によれば、確実な点検を可能とした弁装置の提供が可能である。なお本参考例は、図29のようにひずみ計測機能を持たないものに対しても、保守点検の効率的な実施とヒューマンエラーの撲滅という観点から非常に有効である。