以下、図面に基づいて本発明の実施例1から実施例4を説明する。
図1は本発明の実施例のステアリング装置を車両に取り付けた状態を示す全体斜視図である。ステアリング装置101は、ステアリングシャフト102を回動自在に軸支している。ステアリングシャフト102には、その上端(車体後方側)にステアリングホイール103が装着され、ステアリングシャフト102の下端(車体前方側)には、ユニバーサルジョイント104を介して中間シャフト105が連結されている。
中間シャフト105にはその下端にユニバーサルジョイント106が連結され、ユニバーサルジョイント106には、ラックアンドピニオン機構等からなるステアリングギヤ107が連結されている。
運転者がステアリングホイール103を回転操作すると、ステアリングシャフト102、ユニバーサルジョイント104、中間シャフト105、ユニバーサルジョイント106を介して、その回転力がステアリングギヤ107に伝達され、ラックアンドピニオン機構を介して、タイロッド108を移動し、車輪の操舵角を変えることができる。
図2は本発明の実施例1のステアリング装置の要部を示す正面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のステアリング装置から車体取付けブラケット、ステアリングシャフト、クランプ装置を省略した状態を示す正面図、図5は図4のステアリング装置の分解斜視図である。
図2から図5に示すように、中空円筒状のアウターコラム1内には、上部ステアリングシャフト41が回動可能に軸支され、上部ステアリングシャフト41の車体後方側(図2の右側)に、ステアリングホイール103が取付けられている。アウターコラム1の車体前方側(図2、図4の左側)には、インナーコラム2が軸方向に摺動可能に嵌合している。アウターコラム1は、アッパー側車体取付けブラケット(車体取付けブラケット)3によって車体5に取付けられている。
インナーコラム2の車体前方側には、ロアー側車体取付けブラケット51が車体5に取付けられ、インナーコラム2の車体前方側に固定されたチルト中心軸21が、ロアー側車体取付けブラケット51にチルト可能に軸支されている。
インナーコラム2には、下部ステアリングシャフト42が回転可能に軸支され、下部ステアリングシャフト42は上部ステアリングシャフト41とスプライン嵌合し、上部ステアリングシャフト41の回転が下部ステアリングシャフト42に伝達される。
下部ステアリングシャフト42の左端は、図1のユニバーサルジョイント104を介して中間シャフト105に連結され、中間シャフト105の下端がステアリングギヤ107に伝達されて、車輪の操舵角を変えることができる。
図3に示すように、アッパー側車体取付けブラケット3の上部には、このアッパー側車体取付けブラケット3を車体5に取付けるための左右一対のフランジ部31A、31Bが形成されている。フランジ部31A、31Bと一体に形成され、上下方向に延在する左右の側板32A、32Bの内側面321A、321Bには、左右一対のクランプ部材6A、6Bの外側面64A、64Bがチルト移動可能に挟持されている。本発明の実施例では、左右の側板32A、32Bはフランジ部31A、31Bと一体に形成されているが、別体に形成してもよい。
クランプ部材6A、6Bは、アウターコラム1の中心軸線を通る垂直平面に対して対称な形状を有し、クランプ部材6A、6Bの内側に形成された円弧状内周面62A、62Bが、アウターコラム1の外周11を包持している。本発明の実施例では、クランプ部材6A、6Bの円弧状内周面62A、62Bとアウターコラム1の外周11の断面形状を一致させて、クランプ時に、円弧状内周面62A、62Bと外周11を全面で当接させている。しかし、円弧状内周面62A、62Bの円周方向の一部に、軸方向に延びる突条や突起を形成し、クランプ時に、円弧状内周面62A、62Bと外周11を局部的に当接させてもよい。クランプ部材6A、6Bは、左右どちらに配置しても使用可能な同一形状にしてもよい。クランプ部材6A、6Bは、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の溶融金属を、金型の中に圧力を加えて圧入する、ダイカスト鋳造法により成形されている。クランプ部材6A、6Bは、左右別部品で成形すれば、一体で成形する場合と比較して、鋳造後の機械加工を省略することが可能となるので好ましい。
クランプ部材6A、6Bの円弧状内周面62A、62Bには、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線上に、矩形状の係合突起63A、63Bが一体的に形成されている。この係合突起63A、63Bは、円弧状内周面62A、62Bからアウターコラム1の中心に向かって形成されている。係合突起63A、63Bは、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線上に配置するのが好ましいが、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線よりも上側や下側に配置してもよい。アウターコラム1の外周11には、係合凹部12A、12Bが内周13に貫通して形成され、クランプ部材6A、6Bの係合突起63A、63Bが係合凹部12A、12Bに嵌入している。係合凹部12A、12Bは、内周13に貫通しない有底の溝でもよい。
係合凹部12A、12Bは、係合突起63A、63Bよりもテレスコ調整距離分だけ軸方向(アウターコラム1の軸方向、図3の紙面に直交する方向)の長さが長く形成され、係合突起63A、63Bに案内されて、アウターコラム1の軸方向に摺動可能に嵌合している。
アウターコラム1の内周13には、摩擦係数の小さい材料で成形された円筒形状のブッシュ22が嵌合し、ブッシュ22の外周に形成された係合凹部23A、23Bに、クランプ部材6A、6Bの係合突起63A、63Bが嵌入している。ブッシュ22の内周には、上記したインナーコラム2が軸方向に摺動可能に嵌合している。
係合突起63A、63Bと係合凹部12A、12B、23A、23Bとの係合によって、アウターコラム1、ブッシュ22はクランプ部材6A、6Bに対して回り止めされる。また、アウターコラム1をインナーコラム2に対してテレスコ位置調整する際に、アウターコラム1、ブッシュ22を、係合突起63A、63Bに案内させて軸方向に摺動させることができる。アウターコラム1の内周13とインナーコラム2の外周25との間に、摩擦係数の小さいブッシュ22が介在しているため、インナーコラム2に対してアウターコラム1を軽い力で移動させることができる。
クランプ部材6A、6Bには、円形の貫通孔61A、61B(図3、図4、図5)が形成され、側板32A、32Bに形成したチルト用長溝33A、33Bと、貫通孔61A、61Bに、締付けロッド34が、図3の右側から挿通されている。チルト用長溝33A、33Bは、チルト中心軸21を中心とする円弧状に形成されている。
図3に示すように、締付けロッド34の右側には、頭部341が形成され、頭部341が側板32Bの外側面に当接している。頭部341の左側外径部には、チルト用長溝33Bの溝幅よりも若干幅の狭い矩形断面の回り止め部342が形成されている。回り止め部342はチルト用長溝33Bに嵌入して、締付けロッド34をアッパー側車体取付けブラケット3に対して回り止めすると共に、チルト位置調整時に、チルト用長溝33Bに沿って、締付けロッド34を摺動させる。
締付けロッド34の左端外周には、固定カム343、可動カム344、スラスト軸受345、調整ナット346がこの順で外嵌され、調整ナット346の内径部に形成された雌ねじ348が、締付けロッド34の左端に形成された雄ねじ347にねじ込まれている。
可動カム344の左端面には操作レバー349が固定され、この操作レバー349によって一体的に操作される可動カム344と固定カム343によって、カムロック機構が構成されている。固定カム343はチルト用長溝33Aに係合して、アッパー側車体取付けブラケット3に対して非回転であり、チルト位置調整時に、チルト用長溝33Aに沿って固定カム343を摺動させる。
チルト・テレスコピック締付け時に、操作レバー349が回動されると、固定カム343の山に可動カム344の山が乗り上げて、固定カム343を図3の右側に押すと同時に、締付けロッド34を左側に引くことによって、側板32A、32Bを締付け、クランプ部材6A、6Bを締付ける。クランプ部材6A、6Bの円弧状内周面62A、62Bが、アウターコラム1の外周11を包持しているため、クランプ部材6A、6Bが締付けられると、アウターコラム1が効率的に縮径する。
チルト・テレスコピック解除時には、操作レバー349を逆方向に回動し、固定カム343の山に可動カム344の谷が入り込み、固定カム343を右側に押す力を解除すると同時に、締付けロッド34を左側に引く力を解除することによって、側板32A、32Bを離間させ、クランプ部材6A、6Bの締付けを解除する。これによって、アウターコラム1及びクランプ部材6A、6Bを、所望のチルト・テレスコピック位置で、アッパー側車体取付けブラケット3にクランプ・アンクランプすることができる。
アウターコラム1、ブッシュ22の下面には、各々スリット14、24が形成されている。ブッシュ22のスリット24は、ブッシュ22の軸方向全長にわたって形成されている。また、アウターコラム1のスリット14は、アウターコラム1の車体後方側端部及び車体前方側端部に閉鎖端部が形成されており、車体前方側端部の閉鎖端部141(図4、図5参照)は、スリット14に対して直角方向に切り込まれている。閉鎖端部142を形成せずに、アウターコラム1のスリット14は、アウターコラム1の車体前方側端面15に開放して形成してもよい。また、アウターコラム1のスリット14は、アウターコラム1にクランプ部材6A、6Bが接触している軸方向の範囲だけに形成するようにしてもよい。アウターコラム1のスリット14は、アウターコラム1の軸方向で見て、係合凹部12A、12Bの車体後方側端部とほほ同一位置まで形成すればよいが、係合凹部12A、12Bの車体後方側端部よりも車体後方側に長く形成してもよい。
クランプ部材6A、6Bは、このスリット14、24を両側から挟み込む位置に配置されている。従って、クランプ部材6A、6Bが締付けられると、アウターコラム1、ブッシュ22が縮径して、インナーコラム2を強いクランプ力で保持することができる。係合突起63A、63Bの半径方向の長さを長くし、クランプ部材6A、6Bが締付けられた時に、係合突起63A、63Bの内側面をインナーコラム2の外周25に直接当接してもよい。
クランプ部材6A、6B及びアウターコラム1をアッパー側車体取付けブラケット3に対してアンクランプした後、ステアリングホイール5を握ってアウターコラム1をインナーコラム2に対して軸方向に摺動し、所望のテレスコ位置に調整する。この時、クランプ部材6A、6Bは、アッパー側車体取付けブラケット3に対してテレスコ位置は動かず、アウターコラム1、ブッシュ22だけが、クランプ部材6A、6Bの係合突起63A、63Bに案内されて軸方向に摺動する。
また、ステアリングホイール5を握って、アウターコラム1、クランプ部材6A、6Bを、チルト中心軸21を中心として所望のチルト位置に調整する。その後、クランプ部材6A、6Bを、アッパー側車体取付けブラケット3にクランプする。
本発明の実施例1では、テレスコ位置の調整時に、クランプ部材6A、6Bがアッパー側車体取付けブラケット3に対して軸方向に相対的に移動しないため、アッパー側車体取付けブラケット3の側板32A、32Bの内側面321A、321Bからクランプ部材6A、6Bの外側面64A、64Bがはみ出すことがない。従って、テレスコ調整位置によって、アッパー側車体取付けブラケット3がクランプ部材6A、6Bを締め付ける締付け力が低下しない。
また、アウターコラム1とは別体で成形したクランプ部材6A、6Bをアウターコラム1に係合し、このクランプ部材6A、6Bを介してアウターコラム1を縮径するようにしたので、アウターコラム1及びクランプ部材6A、6Bの構造が簡単になり、製造コストを低減することが可能となる。
また、本発明の実施例1では、クランプ部材6A、6Bの係合突起63A、63Bとアウターコラム1の係合凹部12A、12Bを、テレスコ調整時のストッパとして利用することができる。また、本発明の実施例では、クランプ部材6A、6Bが対称な一対の部品で構成されているため、アウターコラム1の左右の縮径量を略同一にすることが可能となる。
また、クランプ部材6A、6Bの係合突起63A、63Bは、アウターコラム1の軸方向の長さが短いため、クランプ部材6A、6Bの軸方向の長さを短くして、軽量化することができる。また、アウターコラム1とインナーコラム2の車体前後方向の配置を逆(アウターコラム1がロアー側、インナーコラム2がアッパー側)にしても、クランプ部材6A、6Bは共通化できるため、部品点数が削減され、製造コストを削減することができる。
上記した実施例1では、摩擦係数の小さいブッシュ22を介在させているが、ブッシュ22を介在させず、アウターコラム1とインナーコラム2との互いに摺接する摺動面の少なくとも一方に、摩擦係数の小さい材料をコーティングしても良い。
次に本発明の実施例2について説明する。図6は本発明の実施例2のステアリング装置の要部を示す正面図、図7は図6のステアリング装置から車体取付けブラケット、ステアリングシャフト、クランプ装置を省略した状態を示す正面図、図8(a)は図7のステアリング装置の分解斜視図、図8(b)は図8(a)のクランプ部材の係合突起の拡大斜視図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例と同一部品には同一番号を付して説明する。
実施例2は、実施例1の変形例であり、車体前方側にアウターコラムを配置し、車体後方側に配置したインナーコラムを、軸方向に摺動可能にアウターコラムに嵌合させた例である。
図6から図8に示すように、車体後方側に配置された中空円筒状のインナーコラム2の内周27には、図示しない上部ステアリングシャフトが回動可能に軸支され、上部ステアリングシャフトの車体後方側(図6の右側)に、ステアリングホイールが取付けられている。インナーコラム2の車体前方側(図6、図7の左側)には、アウターコラム1が軸方向に摺動可能に嵌合している。アウターコラム1は、アッパー側車体取付けブラケット(車体取付けブラケット)3によって車体5に取付けられている。
アウターコラム1の車体前方側には、ロアー側車体取付けブラケット51が車体5に取付けられ、アウターコラム1の車体前方側に固定されたチルト中心軸16が、ロアー側車体取付けブラケット51にチルト可能に軸支されている。
アウターコラム1には、図示しない下部ステアリングシャフトが回転可能に軸支され、下部ステアリングシャフトは上部ステアリングシャフトとスプライン嵌合し、上部ステアリングシャフトの回転が下部ステアリングシャフトに伝達される。
下部ステアリングシャフトの左端は、図1のユニバーサルジョイント104を介して中間シャフト105に連結され、中間シャフト105の下端がステアリングギヤ107に伝達されて、車輪の操舵角を変えることができる。
アッパー側車体取付けブラケット3の左右の側板32A、32Bの内側面には、左右一対のクランプ部材6A、6Bの外側面64A、64Bがチルト移動可能に挟持されている。
クランプ部材6A、6Bは、アウターコラム1の中心軸線を通る垂直平面に対して対称な形状を有し、クランプ部材6A、6Bの内側に形成された円弧状内周面62A、62Bが、アウターコラム1の外周11を包持している。クランプ部材6A、6Bは、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の溶融金属を、金型の中に圧力を加えて圧入する、ダイカスト鋳造法により成形されている。
クランプ部材6A、6Bの円弧状内周面62A、62Bには、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線上に、矩形状の係合突起65A、65Bが一体的に形成されている。この係合突起65A、65Bは、円弧状内周面62A、62Bからアウターコラム1の中心に向かって形成されている。係合突起65A、65Bは、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線上に配置するのが好ましいが、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線よりも上側や下側に配置してもよい。アウターコラム1の外周11には、係合凹部17A、17Bが内周13に貫通して形成され、クランプ部材6A、6Bの係合突起65A、65Bが係合凹部17A、17Bに嵌入している。
図8(b)に示すように、係合突起65A、65Bは、車体上下方向の高さが大きく形成されて、係合凹部17A、17Bに密に嵌合する一段目の係合突起651A、651Bと、一段目の係合突起651A、651Bからアウターコラム1の中心に向かって突出して形成され、車体上下方向の高さが小さい二段目の係合突起652A、652Bを有している。
また、インナーコラム2の外周25には、係合凹部26A、26Bが内周27に貫通して形成され、クランプ部材6A、6Bの二段目の係合突起652A、652Bが係合凹部26A、26Bに嵌入している。係合凹部26A、26Bは、二段目の係合突起652A、652Bよりもテレスコ調整距離分だけ軸方向(インナーコラム2の軸方向)の長さが長く形成され、二段目の係合突起652A、652Bに案内されて、アウターコラム1の軸方向に摺動可能に嵌合している。係合凹部26A、26Bは、インナーコラム2の内周27に貫通しない有底の溝でもよい。
係合突起65A、65Bと係合凹部17A、17B、26A、26Bとの係合によって、アウターコラム1、インナーコラム2はクランプ部材6A、6Bに対して回り止めされる。また、インナーコラム2をアウターコラム1に対してテレスコ位置調整する際に、インナーコラム2を、二段目の係合突起652A、652Bに案内させて軸方向に摺動させることができる。
クランプ部材6A、6Bには、円形の貫通孔61A、61Bが形成され、側板32A、32Bに形成したチルト用長溝33A、33Bと、貫通孔61A、61Bに締付けロッドが挿通されている。チルト用長溝33A、33Bは、チルト中心軸16を中心とする円弧状に形成されている。
チルト・テレスコピック締付け時に、操作レバー349が回動されると、側板32A、32Bを締付け、クランプ部材6A、6Bを締付ける。クランプ部材6A、6Bの円弧状内周面62A、62Bが、アウターコラム1の外周11を包持しているため、クランプ部材6A、6Bが締付けられると、アウターコラム1が効率的に縮径する。
チルト・テレスコピック解除時には、操作レバー349を逆方向に回動し、側板32A、32Bを離間させ、クランプ部材6A、6Bの締付けを解除する。これによって、アウターコラム1、インナーコラム2及びクランプ部材6A、6Bを、所望のチルト・テレスコピック位置で、アッパー側車体取付けブラケット3にクランプ・アンクランプすることができる。
アウターコラム1の下面には、図示しないスリットが形成されている。また、アウターコラム1のスリットは、アウターコラム1の車体後方側端部及び車体前方側端部に閉鎖端部が形成されており、車体後方側端部の閉鎖端部142は、スリットに対して直角方向に切り込まれている。閉鎖端部142を形成せずに、アウターコラム1のスリットは、アウターコラム1の車体後方側端面に開放して形成してもよい。また、アウターコラム1のスリットは、アウターコラム1の軸方向で見て、係合凹部17A、17Bの車体前方側端部とほほ同一位置まで形成すればよいが、係合凹部17A、17Bの車体前方側端部よりも車体前方側に長く形成してもよい。
クランプ部材6A、6Bは、このスリットを両側から挟み込む位置に配置されている。従って、クランプ部材6A、6Bが締付けられると、アウターコラム1が縮径して、インナーコラム2を強いクランプ力で保持することができる。
クランプ部材6A、6B及びアウターコラム1をアッパー側車体取付けブラケット3に対してアンクランプした後、ステアリングホイール5を握ってインナーコラム2をアウターコラム1に対して軸方向に摺動し、所望のテレスコ位置に調整する。この時、クランプ部材6A、6Bは、アッパー側車体取付けブラケット3に対してテレスコ位置は動かず、インナーコラム2だけが、クランプ部材6A、6Bの係合突起65A、65Bに案内されて軸方向に摺動する。
また、ステアリングホイールを握って、インナーコラム2、クランプ部材6A、6Bを、チルト中心軸16を中心として所望のチルト位置に調整する。その後、クランプ部材6A、6Bを、アッパー側車体取付けブラケット3にクランプする。
本発明の実施例2では、テレスコ位置の調整時に、クランプ部材6A、6Bがアッパー側車体取付けブラケット3に対して軸方向に相対的に移動しないため、アッパー側車体取付けブラケット3の側板32A、32Bの内側面からクランプ部材6A、6Bの外側面64A、64Bがはみ出すことがない。従って、テレスコ調整位置によって、アッパー側車体取付けブラケット3がクランプ部材6A、6Bを締め付ける締付け力が低下しない。
また、本発明の実施例2では、クランプ部材6A、6Bの係合突起65A、65Bの二段目の係合突起652A、652Bとインナーコラム2の係合凹部26A、26Bを、テレスコ調整時のストッパとして利用することができる。
次に本発明の実施例3について説明する。図9(a)は本発明の実施例3のステアリング装置の分解斜視図、図9(b)は図9(a)のクランプ部材の係合突起の拡大斜視図である。図10は図9の断面図であり、実施例1の図3相当図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例と同一部品には同一番号を付して説明する。
実施例3は、実施例2の変形例であり、締付けロッドをアウターコラム1の車体上方側に配置した例である。図9から図10に示すように、車体後方側に配置された中空円筒状のインナーコラム2の内周27には、図示しない上部ステアリングシャフトが回動可能に軸支され、上部ステアリングシャフトの車体後方側(図9の右側)に、ステアリングホイールが取付けられている。インナーコラム2の車体前方側(図9の左側)には、アウターコラム1が軸方向に摺動可能に嵌合している。アウターコラム1は、アッパー側車体取付けブラケット(車体取付けブラケット)3によって車体5に取付けられている。
アッパー側車体取付けブラケット3の左右の側板32A、32Bの内側面321A、321Bには、左右一対のクランプ部材6A、6Bの外側面64A、64Bがチルト移動可能に挟持されている。
クランプ部材6A、6Bは、アウターコラム1の中心軸線を通る垂直平面に対して対称な形状を有し、クランプ部材6A、6Bの内側に形成された円弧状内周面62A、62Bが、アウターコラム1の外周11の車体上方側の上半分を包持している。クランプ部材6A、6Bは、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の溶融金属を、金型の中に圧力を加えて圧入する、ダイカスト鋳造法により成形されている。
クランプ部材6A、6Bの円弧状内周面62A、62Bの車体下方側には、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線上に、矩形状の係合突起65A、65Bが一体的に形成されている。この係合突起65A、65Bは、円弧状内周面62A、62Bからアウターコラム1の中心に向かって形成されている。係合突起65A、65Bは、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線上に配置するのが好ましいが、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線よりも上側や下側に配置してもよい。アウターコラム1の外周11には、係合凹部17A、17Bが内周13に貫通して形成され、クランプ部材6A、6Bの係合突起65A、65Bが係合凹部17A、17Bに嵌入している。
実施例2と同様に、係合突起65A、65Bは、車体上下方向の高さが大きく形成されて、係合凹部17A、17Bに密に嵌合する一段目の係合突起651A、651Bと、一段目の係合突起651A、651Bからアウターコラム1の中心に向かって突出して形成され、車体上下方向の高さが小さい二段目の係合突起652A、652Bを有している。
また、インナーコラム2の外周25には、係合凹部26A、26Bが内周27に貫通して形成され、クランプ部材6A、6Bの二段目の係合突起652A、652Bが係合凹部26A、26Bに嵌入している。係合凹部26A、26Bは、二段目の係合突起652A、652Bよりもテレスコ調整距離分だけ軸方向(インナーコラム2の軸方向)の長さが長く形成され、二段目の係合突起652A、652Bに案内されて、アウターコラム1の軸方向に摺動可能に嵌合している。係合凹部26A、26Bは、インナーコラム2の内周27に貫通しない有底の溝でもよい。
係合突起65A、65Bと係合凹部17A、17B、26A、26Bとの係合によって、アウターコラム1、インナーコラム2はクランプ部材6A、6Bに対して回り止めされる。また、インナーコラム2をアウターコラム1に対してテレスコ位置調整する際に、インナーコラム2を、二段目の係合突起652A、652Bに案内させて軸方向に摺動させることができる。
クランプ部材6A、6Bには、円弧状内周面62A、62Bの車体上方側に、円形の貫通孔61A、61Bが形成され、側板32A、32Bに形成したチルト用長溝33A、33Bと、貫通孔61A、61Bに締付けロッド34が挿通されている。
図10に示すように、締付けロッド34の右側には、頭部341が形成され、頭部341が側板32Bの外側面に当接している。締付けロッド34の左端外周には、固定カム343、可動カム344、スラスト軸受345、調整ナット346がこの順で外嵌され、調整ナット346の内径部に形成された雌ねじ348が、締付けロッド34の左端に形成された雄ねじ347にねじ込まれている。
可動カム344の左端面には操作レバー349が固定され、この操作レバー349によって一体的に操作される可動カム344と固定カム343によって、カムロック機構が構成されている。固定カム343はチルト用長溝33Aに係合して、アッパー側車体取付けブラケット3に対して非回転であり、チルト位置調整時に、チルト用長溝33Aに沿って固定カム343を摺動させる。
チルト・テレスコピック締付け時に、操作レバー349が回動されると、側板32A、32Bを締付け、クランプ部材6A、6Bを締付ける。クランプ部材6A、6Bの円弧状内周面62A、62Bが、アウターコラム1の車体上方側の外周11を包持しているため、クランプ部材6A、6Bが締付けられると、アウターコラム1が効率的に縮径する。
チルト・テレスコピック解除時には、操作レバー349を逆方向に回動し、側板32A、32Bを離間させ、クランプ部材6A、6Bの締付けを解除する。これによって、アウターコラム1及びクランプ部材6A、6Bを、所望のチルト・テレスコピック位置で、アッパー側車体取付けブラケット3にクランプ・アンクランプすることができる。
アウターコラム1の上面には、スリット14(図9)が形成されている。スリット14は、アウターコラム1の車体後方側端部及び車体前方側端部に閉鎖端部が形成されており、車体後方側端部の閉鎖端部142は、スリットに対して直角方向に切り込まれている。閉鎖端部142を形成せずに、アウターコラム1のスリット14は、アウターコラム1の車体後方側端面に開放して形成してもよい。また、アウターコラム1のスリット14は、アウターコラム1の軸方向で見て、係合凹部17A、17Bの車体前方側端部とほほ同一位置まで形成すればよいが、係合凹部17A、17Bの車体前方側端部よりも車体前方側に長く形成してもよい。
クランプ部材6A、6Bは、このスリット14を両側から挟み込む位置に配置されている。従って、クランプ部材6A、6Bが締付けられると、アウターコラム1が縮径して、インナーコラム2を強いクランプ力で保持することができる。
次に本発明の実施例4について説明する。図11(a)は本発明の実施例4のステアリング装置の分解斜視図、図11(b)は図11(a)の係合突起に外嵌される樹脂スペーサの拡大斜視図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例と同一部品には同一番号を付して説明する。
実施例4は、実施例1の変形例であり、クランプ部材6A、6Bの係合突起63A、63Bに樹脂スペーサを外嵌し、テレスコ位置調整時の摩擦を軽減した例である。図11に示すように、クランプ部材6A、6Bは、実施例1と同一形状を有し、アウターコラム1の中心軸線を通る垂直平面に対して対称な形状を有し、クランプ部材6A、6Bの内側に形成された円弧状内周面62A、62Bが、アウターコラム1の外周11を包持している。クランプ部材6A、6Bは、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の溶融金属を、金型の中に圧力を加えて圧入する、ダイカスト鋳造法により成形されている。
クランプ部材6A、6Bの円弧状内周面62A、62Bには、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線上に、矩形状の係合突起63A、63Bが一体的に形成されている。この係合突起63A、63Bは、円弧状内周面62A、62Bからアウターコラム1の中心に向かって形成されている。係合突起63A、63Bの周囲には、図11(b)に示す中空小判型の樹脂スペーサ66が外嵌されている。アウターコラム1の外周11には、係合凹部12A、12Bが内周13に貫通して形成され、係合突起63A、63Bに外嵌された樹脂スペーサ66、66が係合凹部12A、12Bに嵌入している。
係合凹部12A、12Bは、樹脂スペーサ66、66よりもテレスコ調整距離分だけ軸方向(アウターコラム1の軸方向)の長さが長く形成され、樹脂スペーサ66、66に案内されて、アウターコラム1の軸方向に摺動可能に嵌合している。
係合突起63A、63Bに外嵌された樹脂スペーサ66、66と係合凹部12A、12Bとの係合によって、アウターコラム1はクランプ部材6A、6Bに対して回り止めされる。また、アウターコラム1を図示しないインナーコラムに対してテレスコ位置調整する際に、アウターコラム1を樹脂スペーサ66、66に案内させて軸方向に摺動させることができる。摩擦係数の小さい樹脂スペーサ66、66が介在しているため、インナーコラムに対してアウターコラム1を軽い力で移動させることができる。また、テレスコ位置調整時の振動や音を軽減することができ、テレスコ位置調整端での衝撃や音を軽減することができる。
上記した実施例では、アウターコラム1の中心軸線を通る水平線上に係合突起を形成しているが、任意の位相位置に係合突起を形成することができる。さらに、係合突起は、クランプ部材6A、6Bに各々一個形成されているが、複数形成してもよい。また、係合突起は、軸方向に若干長い矩形状であるが、円柱状の突起、垂直方向に長い突起等、任意の形状にすることができる。また、係合突起の形状に合わせて、係合凹部の形状を成形すればよい。
上記実施例では、チルト位置調整とテレスコピック位置調整の両方が可能なチルト・テレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用した場合について説明したが、テレスコピック位置調整だけが可能なテレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用してもよい。また、本発明の実施例では、アウターコラム1はアルミニウム合金、マグネシウム合金、炭素鋼で成形してもよい。また、クランプ部材6A、6Bの材料は、アルミニウム(合金)、マグネシウム(合金)、金属材料のダイキャスト成形品、合成樹脂、焼結部材で成形してもよい。