JP5316153B2 - 単室型固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスにより発電する単室型固体酸化物形燃料電池(Single chamber −Solid Oxide Fuel Cells (SC-SOFCs))に関する。
従来、単室型固体酸化物形燃料電池(以下単に、燃料電池という)として図7に示す燃料電池が知られていた。同図に示すように、この燃料電池100は、セラミックス製の基板101と、基板101の表面(一方面)に配置された電解質102とを備えている。また、燃料電池100は、電解質102の表面(一方面)に間隔をあけて配置された一対の燃料極103及び空気極104から構成された電極体(単電池セル)105を複数備えている。複数の電極体105は、隣接するもの同士がインターコネクタ106を介して接続されている。すなわち、インターコネクタ106は、ある電極体105の燃料極103と、その電極体105に隣接する他の電極体105の空気極104とを接続している。
特開2005−38848号公報
上述のような燃料電池100では、隣接する電極体105同士が電解質102を介して接続されているので、隣接する電極体105間で、電解質102を介して酸素イオンが移動することがあった。そのため、酸素イオンの余分な移動を防いで燃料電池の出力を上げることが望まれていた。
また、上述のような燃料電池100によれば、電解質102が基板101に支持されているため、電解質102が薄い構成であっても燃料電池100全体としての強度を向上させることができるが、強度の点で更なる改善の余地があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、出力を向上させつつ強度を上げることができる単室型固形酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、上記課題を解決するためになされたものであって、金属基板と、前記金属基板の一方面に間隔をあけて複数配置された燃料電池セルと、前記各燃料電池セル間にそれぞれ配置され、当該各燃料電池セル同士をそれぞれ接続する複数のインターコネクタと、前記金属基板と前記各インターコネクタとの間に配置され、両者を絶縁する絶縁体とを備え、前記燃料電池セルは、前記金属基板の一方面に配置された電解質と、当該電解質の一方面に間隔をあけて配置された燃料極及び空気極とを備える。
このような構成によれば、複数の電解質同士が間隔をあけているので、隣接する電極体間で、電解質を介して酸素イオンが移動するのを防ぐことができる。これにより、酸素イオンの余分な移動がなくなるので、燃料電池の出力を向上させることができる。また、金属基板で電解質を支持することにより、従来のセラミックスの基板に比べて燃料電池全体の強度を向上させることができる。また、金属基板とインターコネクタとの接触を絶縁体により防止できるのでインターコネクタ間の短絡を防ぐことができる。これにより、出力を向上させつつ強度を上げることができる。
また、上記構成において、前記絶縁体と前記電解質との熱膨張係数の差、及び、前記絶縁体と前記金属基板との熱膨張係数の差をそれぞれ20%以内にすることができる。ここで、「熱膨張係数」とは、温度変化に対して物質が膨張する割合であり、温度の上昇によって物体の体積が膨張する割合を、1K(℃)当たりで示したものである。この熱膨張係数は、例えば、JISR1618に定義される方法で測定することができる。このような構成によれば、熱膨張係数の差が小さいので、絶縁体と電解質との剥離、及び、絶縁体と金属基板との剥離を防ぐことができる。
また、前記絶縁体の熱膨張係数を、前記金属基板の熱膨張係数と前記電解質の熱膨張係数との間の値にすることができる。このような構成によれば、金属基板と電解質との間の絶縁体により、熱膨張係数の差を段階的なものにすることができる。これにより、絶縁体と電解質との間、及び、絶縁体と金属基板との間において、電解質を焼結する過程や高温作動時に熱膨張係数の差により剥離が生じるのを防ぐことができる。
また、上述の剥離を防止するために、前記金属基板を、フェライト系ステンレス鋼とし、前記絶縁体を、ジルコニア又はセリアとし、前記電解質を、酸素イオン導電性を有する安定化ジルコニア又はセリア系固溶体とすることができる。更に、前記絶縁体の熱膨張係数を、前記電解質の熱膨張係数より高くし、かつ、前記金属基板の熱膨張係数より低くすることができる。より具体例には、金属基板を、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430とし、絶縁体を、ジルコニア(ZrO2)とし、電解質を、8molスカンジウム安定化ジルコニア(8 mole % Sc2O3 doped ZrO2:8ScSZ)とすることができる。このとき、金属基板の熱膨張係数は、10.4×10−6(1/K))であり、絶縁体の熱膨張係数は、10.5×10−6(1/K)であり、電解質の熱膨張係数は、10.7×10−6(1/K)である。
また、前記絶縁体は、前記金属基板の一方面に配置された第1の絶縁層と、当該第1の絶縁層の一方面に積層された第2の絶縁層とを備え、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との熱膨張係数の差が20%以内である構成にすることができる。これにより、絶縁体が剥離するのをより効果的に防ぐことができる。
また、前記電解質の厚みを前記金属基板の厚みより薄くすることができる。
本発明の単室型固体酸化物形燃料電池によれば、出力を向上させつつ強度を上げることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る単室型固体酸化物形燃料電池の一部拡大断面図である。 単室型固体酸化物形燃料電池の平面図である。 他の実施形態に係る単室型固体酸化物形燃料電池の一部拡大断面図である。 更に他の実施形態に係る単室型固体酸化物形燃料電池の一部拡大断面図である。 更に他の実施形態に係る単室型固体酸化物形燃料電池の一部拡大断面図である。 更に他の実施形態に係る単室型固体酸化物形燃料電池の平面図である。 従来の単室型固体酸化物形燃料電池の一部拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池の一部拡大断面図であり、図2は、燃料電池の平面図である。燃料電池の各構成要素を明確にするために、図2の平面図においてもハッチングを付している。
図1及び図2に示すように、この燃料電池1は、板状の金属基板2と、金属基板2の上面(一方面)に積層されたシート状の絶縁体3とを備えている。また、燃料電池1は、絶縁体3の上面(一方面)に間隔をあけて複数設置された燃料電池セル10を備えている。
絶縁体3は、金属基板2の上面全体にわたって薄い膜状に配置されている。
複数の燃料電池セル10は、絶縁体3の上面に等間隔でパターン状に配置されている。また、各燃料電池セル10は、絶縁体3の上面に配置されたシート状の電解質4と、電解質4の上面(一方面)に間隔をあけて配置された一対のシート状の燃料極5及び空気極6とを備えている。
電解質4は、平面視で四角形状に形成されている。また、燃料極5及び空気極6は、それぞれ、帯状に形成され、対向するように配置されている。一対の燃料極5及び空気極6により1つの電極体を構成している。
隣接する燃料電池セル10の間には、インターコネクタ7が配置されており、このインターコネクタ7により燃料電池セル10同士が電気的に接続されている。より詳細には、インターコネクタ7が、隣接する燃料電池セル10において、一方の燃料電池セル10の燃料極5と、他方の燃料電池セル10の空気極6とを接続している。複数の燃料電池セル10はそれぞれ直列に接続されている。
インターコネクタ7は、隣接する燃料電池セル10同士の隙間に充填されており、下端が絶縁体3に接触している。これにより、インターコネクタ7と金属基板2とが絶縁されている。
次に、上記の燃料電池1の各構成要素の材質について説明する。金属基板2は、電解質4等の焼成を行う観点から耐熱性に優れることが好ましく、また、焼成や発電中における絶縁体3と金属基板2との剥離を防止する観点から、その熱膨張係数が絶縁体3の熱膨張係数と近接していることが好ましい。本明細書中において「熱膨張係数」とは、温度変化に対して物質が膨張する割合であり、温度の上昇によって物体の体積が膨張する割合を、1K(℃)当たりで示したものである。例えば熱機械分析装置(TMA)により測定できる。金属基板2の材質として、具体的には、フェライト系ステンレス鋼 SUS(Steel Use Stainless)430 (18Cr)、または、日立金属株式会社製 固体酸化物形燃料電池用セパレータ材 ZMG232Lを好ましく用いることができる。その他、マルテンサイト系、オーステナイト系等を用いることができる。また、金属基板2の熱膨張係数は、9×10−6〜11×10−6(1/K)が好ましい。本実施形態では、金属基板2の材質として、SUS430を用いており、その熱膨張係数は、10.4×10−6(1/K)である。また、金属基板2の厚みは、200μm〜5mmが好ましい。
絶縁体3は、焼成中における金属基板2及び電解質4との剥離を防止する観点から、その熱膨張係数が金属基板2及び電解質4の熱膨張係数と近接していることが好ましい。このような絶縁体3の材質としては、セラミックス系材料を好ましく用いることができ、具体的には、アルミナ(Al2O3)系材料、シリカ(SiO2)系材料、チタニア(TiO2)系材料や、電解質材料と同系材質で、酸素イオン伝導性を付与している材料を除いたベース材料、例えばジルコニアやセリアなどを主体に好ましく用いることができる。また、絶縁体3の熱膨張係数は、9×10−6〜11×10−6(1/K)が好ましい。また、絶縁体3の熱膨張係数は、金属基板2の熱膨張係数の80%〜120%であることがより好ましい。すなわち、絶縁体3と金属基板2との熱膨張係数の差が20%以内であることが好ましい。本実施形態では、絶縁体3の材質として、ジルコニアを用いており、その熱膨張係数は、10.5×10−6(1/K)である。
電解質4の材質としては、固体酸化物形燃料電池の電解質の材料として公知のものを使用することができ、例えば、サマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、ストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物などの酸素イオン伝導性セラミックス材料を用いることができる。また、電解質4の熱膨張係数は、9×10−6〜11×10−6(1/K)が好ましい。また、電解質4の熱膨張係数は、絶縁体3の熱膨張係数の80%〜120%であることがより好ましい。すなわち、電解質4と絶縁体3との熱膨張係数の差が20%以内であることが好ましい。本実施形態では、電解質4の材質として、8molイットリウム安定化ジルコニアを用いており、その熱膨張係数は、10.5×10−6(1/K)である。
燃料極5の材質は、例えば、金属触媒と酸化物イオン導電体からなるセラミックス粉末材料との混合物を用いることができる。このとき用いられる金属触媒としては、ニッケル、鉄、コバルトや、貴金属(白金、ルテニウム、パラジウム等)等の還元性雰囲気において安定で、水素酸化活性を有する材料を用いることができる。また、酸化物イオン導電体としては、蛍石型構造又はペロブスカイト型構造を有するものを好ましく用いることができる。蛍石型構造を有するものとしては、例えばサマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物などを挙げることができる。また、ペロブスカイト型構造を有するものとしてはストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物を挙げることができる。上記材料の中では、酸化物イオン導電体とニッケルとの混合物で、燃料極5を形成することが好ましい。なお、酸化物イオン導電体からなるセラミックス材料とニッケルとの混合形態は、物理的な混合形態であってもよいし、ニッケルへの粉末修飾などの形態であってもよい。また、上述したセラミックス材料は、1種類を単独で、或いは2種類以上を混合して使用することができる。また、燃料極5は、金属触媒を単体で用いて構成することもできる。
空気極6の材質としては、例えば、ペロブスカイト型構造等を有するCo,Fe,Ni,Cr又はMn等からなる金属酸化物を用いることができる。具体的には(Sm,Sr)CoO,(La,Sr)MnO,(La,Sr)CoO,(La,Sr)(Fe,Co)O,(La,Sr)(Fe,Co,Ni)Oなどの酸化物が挙げられ、好ましくは、(La,Sr)MnOである。上述した材料は、1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用することができる。
電解質4、燃料極5及び空気極6は、セラミックス粉末材料により形成することができる。このとき用いられる粉末の平均粒径は、好ましくは10nm〜100μmであり、さらに好ましくは50nm〜50μmであり、特に好ましくは100nm〜10μmである。なお、平均粒径は、例えば、JISZ8901にしたがって計測することができる。
上記燃料極5、及び空気極6は、上述した材料を主成分として、さらにバインダー樹脂、有機溶媒などが適量加えられることにより形成される。より詳細には、上記主成分とバインダー樹脂との混合において、上記主成分が50〜95重量%となるように、バインダー樹脂等を加えることが好ましい。また、電解質4も上述した材料を主成分としてバインダー樹脂、有機溶媒などが適量加えられることにより形成されるが、上記主成分とバインダー樹脂との混合において、上記主成分が80重量%以上となるように混合されることが好ましい。そして、これら空気極3、燃料極5の膜厚は焼結後に1μm〜500μmとなるように形成するが、10μm〜100μmとすることが好ましく、電解質4の膜厚としては、10〜5000μmであることが好ましく、50〜2000μmであることがさらに好ましい。
また、インターコネクタ7は、Pt,Au,Ag,Ni,Cu,SUS等の導電性金属、或いは金属系材料,又はLa(Cr,Mg)O,(La,Ca)CrO,(La,Sr)CrOなどのランタン・クロマイト系等の導電性セラミックス材料によって形成することができ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。インターコネクタ7は、上述した材料にバインダー樹脂、有機溶媒などが適量加えられることにより形成される。
次に、上述した燃料電池の製造方法の一例を説明する。まず、上述した電解質4、燃料極5、及び空気極6用の粉末材料を主成分として、これらそれぞれにバインダー樹脂、有機溶媒などを適量加えて混練し、電解質ペースト、燃料極ペースト、空気極ペーストをそれぞれ作製する。各ペーストの粘度は、次に説明するスクリーン印刷に適合するように10〜10mPa・s程度であることが好ましい。同様に、インターコネクタ7用のペーストも、上述した粉末材料にバインダー樹脂等の添加物を加えて作成しておく。このペーストの粘度は上述したものと同じである。
次に、金属基板2上にスパッタ法により絶縁体3の材料を塗布し、膜状の絶縁体3を形成する。その後、絶縁体3上にスクリーン印刷法によって電解質ペーストをパターン状に塗布した後、所定の時間及び温度で乾燥・焼結を行うことにより、複数の電解質4を形成する。続いて、燃料極ペーストをスクリーン印刷法により電解質4上に帯状に塗布した後、所定の時間及び温度で乾燥・焼結し、燃料極5を形成する。これに続いて、各燃料極5と対向する位置に、空気極ペーストをスクリーン印刷法によって塗布し、所定時間及び温度で乾燥・焼結することにより、空気極6を形成する。これにより、燃料電池セル10が形成される。最後に、各燃料電池セル10を直列に接続するように、各燃料電池セル10間にインターコネクタ用ペーストをスクリーン印刷法によって線状に塗布し、インターコネクタ7を形成する。
また、上述した製造方法においては、各ペーストの塗布にスクリーン印刷法を用いているが、これに限定されるものではなく、ドクターブレード法、スプレーコート法、スピンコ−ト法、泳動電着法、ロ−ルコ−ト法、グラビアロ−ルコ−ト法、ディスペンサーコート法、CVD,EVD,スパッタリング法、転写法等の印刷方法等、その他一般的な印刷法を用いることができる。また、印刷後の後工程として、CIP(静水圧プレス)、HIP(熱間静水圧プレス)、ホットプレス、その他一般的なプレス工程を用いることもできる。
上記のように構成された燃料電池1では、次のように発電が行われる。まず、燃料極5及び空気極6が形成されている側に、メタンやエタンなどの炭化水素からなる燃料ガスと空気等の酸化剤ガスとの混合ガスを高温の状態(例えば、400〜1000℃)で供給する。これにより、燃料極5と空気極6との間の電解質4の主に表層付近で、イオン伝導が起こって発電が行われる。
上記の構成を備える燃料電池1によれば、金属基板2と、金属基板2の一方面に間隔をあけて複数配置された燃料電池セル10とを備えているので、電解質4が金属基板2によって支持され、セラミックス等の基板と比べて強度を向上させることができる。また、各燃料電池セル10が間隔をあけて配置されており、電解質4が燃料電池セル10毎に分割されているので、隣接する電解質4間ではイオンが移動しない。そのため、余分なイオン伝動がないので、発電出力を向上させることができる。また、金属基板2とインターコネクタ7とが、両者の間に配置された絶縁体3により絶縁されているので、両者の間での短絡を防ぐことができる。したがって、出力を向上させつつ強度を上げることができる。
また、絶縁体3の熱膨張係数と電解質4の熱膨張係数との差、及び、絶縁体3の熱膨張係数と金属基板2の熱膨張係数との差がそれぞれ20%以内であると、金属基板2、絶縁体3及び電解質4における熱膨張係数の差による剥離を防ぐことができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、絶縁体3は、1層の構成であったが、この構成に限定されず、図3に示すように、複数の層を有する構成であってもよい。図3において、図1と同様の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。図3に示す実施形態では、絶縁体3は、金属基板2の上面(一方面)に配置された第1の絶縁層3aと、第1の絶縁層3aの上面(一方面)に配置された第2の絶縁層3bとを備えている。第2の絶縁層3bの上面には電解質4が配置されている。第1の絶縁層3aの熱膨張係数と、第2の絶縁層3bの熱膨張係数とは、近接していることが好ましく、具体的には、その差が20%以内であることが好ましい。すなわち、第1の絶縁層3aの熱膨張係数が第2の絶縁層3bの熱膨張係数の80%〜120%であることが好ましい。また、第1の絶縁層3aの熱膨張係数は、9×10−6〜11×10−6(1/K)が好ましく、第2の絶縁層3bの熱膨張係数は、9×10−6〜11×10−6(1/K)が好ましい。本実施形態では、第1の絶縁層3aの材質として、ジルコニアを用いており、その熱膨張係数は、10.5×10−6(1/K)である。また、第2の絶縁層3bの材質として、セリアを用いており、その熱膨張係数は、9.5×10−6(1/K)である。したがって、本実施形態では、第1の絶縁層3aの熱膨張係数が、第2の絶縁層3bの熱膨張係数より高い。なお、第1の絶縁層3a及び第2の絶縁層3bの材質が同じであるときは、上記の絶縁体3の純度や、絶縁体3が、複数の材料成分から形成される場合、各材料成分の配合量を変えることにより、両者の熱膨張係数に差を設けることができる。
また、図3に示す実施形態については、上記とは逆に、第1の絶縁層3aの熱膨張係数が、第2の絶縁層3bの熱膨張係数より低い構成であってもよい。この構成は、上記各絶縁層3a、3bの材質を互いに入れ替えることにより形成することができる。
また、上記実施形態に係る燃料電池1は、金属基板2の表面側(一方面側)に絶縁体3や燃料電池セル10を備える構成であったが、この構成に限定されず、図4に示すように、金属基板2の裏面側(他方面側)に絶縁体3や燃料電池セル10を備える構成であってもよい。図4に示す燃料電池1は、金属基板2を中心軸として上下対称の構成を備えている。金属基板2の裏面側の構成については、金属基板2の表面側の構成と同様の構成なので、ここでは説明を省略する。
また、上記実施形態では、絶縁体3は金属基板2の上面全体にわたって形成されていたが、金属基板2とインターコネクタ7との間に配置され、両者を絶縁可能であればこの構成に限定されず、図5に示すように、インターコネクタ7の下方にのみ絶縁体3が配置されている構成であってもよい。絶縁体3は、金属基板2の上面に間隔をあけて複数配置されており、インターコネクタ7の下端に接触し、金属基板2とインターコネクタ7とを絶縁している。隣接する絶縁体3の間には電解質4が配置されている。
また、上記実施形態では、複数の燃料電池セル10をインターコネクタ7によって直列に接続しているが、並列に接続することもできる。例えば、図6に示すように、2個の燃料電池セル10の燃料極5同士、及び空気極6同士をインターコネクタ7によって接続することができる。燃料電池の各構成要素を明確にするために、図6の平面図においてもハッチングを付している。
また、上記実施形態では、金属基板2、絶縁体3及び電解質4の熱膨張係数がそれぞれ単に近接しているだけの構成であったが、これらの熱膨張係数が段階的な差を有している構成であってもよい。例えば、絶縁体3の熱膨張係数が、電解質4の熱膨張係数より高く、かつ、金属基板2の熱膨張係数より低い構成であってもよい。すなわち、絶縁体3の熱膨張係数が、電解質4の熱膨張係数と金属基板2の熱膨張係数との間の値であってもよい。この場合、例えば、絶縁体3の材質として、セリアを用いることができ、その熱膨張係数は、9.5×10−6(1/K)である。また、電解質4の材質として、ガドリアド−プセリア(Ce0.8Gd0.2O1.9:GDC)を用いることができ、その熱膨張係数は、9.3×10−6(1/K)である。また、金属基板2の材質として、SUS430を用いることができ、その熱膨張係数は、10.4×10−6(1/K)である。また、この構成とは逆に、絶縁体3の熱膨張係数が、電解質4の熱膨張係数より低く、かつ、金属基板2の熱膨張係数より高い構成であってもよい。この場合、例えば、絶縁体3の材質として、ジルコニアを用いることができ、その熱膨張係数は、10.5×10−6(1/K)である。また、電解質4の材質として、8molスカンジウム安定化ジルコニア(8ScSZ)を用いることができ、その熱膨張係数は、10.7×10−6(1/K)である。また、金属基板2の材質として、SUS430を用いることができ、その熱膨張係数は、10.4×10−6(1/K)である。この構成によれば、熱膨張係数に段階的な差をつけるので、金属基板2、絶縁体3及び電解質4の剥離をより効果的に防ぐことができる。
1 単室型固体酸化物形燃料電池
2 金属基板
3 絶縁体
4 電解質
5 燃料極
6 空気極
7 インターコネクタ
10 燃料電池セル

Claims (6)

  1. 金属基板と、
    前記金属基板の一方面に間隔をあけて複数配置された燃料電池セルと、
    前記各燃料電池セル間にそれぞれ配置され、当該各燃料電池セル同士をそれぞれ接続する複数のインターコネクタと、
    前記金属基板と前記各インターコネクタとの間に配置され、両者を絶縁する絶縁体とを備え、
    前記燃料電池セルは、前記金属基板の一方面に配置された電解質と、当該電解質の一方面に間隔をあけて配置された燃料極及び空気極とを備える単室型固体酸化物形燃料電池。
  2. 前記絶縁体と前記電解質との熱膨張係数の差、及び、前記絶縁体と前記金属基板との熱膨張係数の差がそれぞれ20%以内である請求項1に記載の単室型固体酸化物形燃料電池。
  3. 前記絶縁体の熱膨張係数は、前記金属基板の熱膨張係数と前記電解質の熱膨張係数との間の値である請求項1又は2に記載の単室型固体酸化物形燃料電池。
  4. 前記金属基板は、フェライト系ステンレス鋼からなり、
    前記絶縁体は、ジルコニア又はセリアからなり、
    前記電解質は、酸素イオン導電性を有する安定化ジルコニア又はセリア系固溶体からなり、
    前記絶縁体の熱膨張係数は、前記電解質の熱膨張係数より高く、かつ、前記金属基板の熱膨張係数より低い請求項3に記載の単室型固体酸化物形燃料電池。
  5. 前記絶縁体は、前記金属基板の一方面に配置された第1の絶縁層と、当該第1の絶縁層の一方面に積層された第2の絶縁層とを備え、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との熱膨張係数の差が20%以内である請求項1から4のいずれかに記載の単室型固体酸化物形燃料電池。
  6. 前記電解質の厚みが前記金属基板の厚みより薄い請求項1から5のいずれかに記載の単室型固体酸化物形燃料電池。
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