以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の一例を示す外観図である。
表示装置100は、例えばタブレットPCや電子ブック、PDAであり、図1には図示せぬメモリ10に記憶されている画像や文字などのデータを表示画面50に表示する。表示画面50には白、黒の階調表示が可能なメモリー性表示素子である図1には図示せぬ電気化学表示素子1が用いられている。操作部42にはメカニカルスイッチからなる順送りボタン43と逆送りボタン44が設けられている。例えば、ユーザが順送りボタン43を押すと表示画面50に表示されているデータの次のページのデータをメモリ10から読み出して表示する。同様に、ユーザが逆送りボタン44を押すと表示画面50に表示されているデータの前のページのデータをメモリ10から読み出して表示する。
また、図1の例では表示画面50の上層はタッチパネル40になっている。ユーザは、タッチパネル40への入力操作により、手書きモードへの切換を行った後、画面上の位置または領域を指定し、手書き入力を行う。タッチパネル40への入力操作は図1には図示せぬスタイラスペンを用いても良いし、直接指などでタッチパネル40を操作しても良い。
図2は本発明の表示装置の一実施形態であるED方式の電気化学表示素子1の基本的な構成を示す概略断面図である。
図2に示すED方式の電気化学表示素子1は、透明なITO電極32と銀電極30との間に電解質31を保持している。ITO電極32と銀電極30には電源34が接続されている。
図2(a)はITO電極32側に黒を表示している状態である。
図2(a)のように電源34からITO電極32に、銀電極30の電圧より低い電圧を印加すると図中の矢印方向に電流が流れ、ITO電極32側の電解質31中に含まれる銀の析出反応が生じる。
35は析出した銀であり、析出した銀35は光を吸収するので、ITO電極32から見た電気化学表示素子1の濃度が高くなる。36は溶解した銀である。
図2(b)はITO電極32に白を表示している状態である。
図2(b)のように電源34からITO電極32に、銀電極30の電圧より高い電圧を印加すると、図中の矢印方向に電流が流れ、ITO電極32側の電解質31中に含まれる銀の溶解反応が生じる。析出した銀は溶解し、一定時間電圧を図2(a)と逆方向に印加するとITO電極32から見た電気化学表示素子1の濃度は初期状態の白色になる。
電気化学表示素子1に含まれる電解質31は、例えば銀塩水溶液より非水系銀塩溶液に銀を転相させることにより調製できる。このような銀塩水溶液は、公知の銀塩を水に溶解して調製することができる。
図3は本発明の実施形態に係る表示装置の構成を示す図である。図3では説明を簡単にするため3行×3列の画素を有する表示装置の構成を示したが、本発明はこの画素数に限定されるものではなくn行×m列の画素を有する表示装置に適用できる。
図3に示す各画素は、電気化学表示素子1、駆動トランジスタ2、スイッチングトランジスタ4から構成される。図4ではn行×m列の画素の電気化学表示素子1をそれぞれPnmと表記している。例えば1行、1列目の画素の電気化学表示素子1はP11、1行、2列目の画素の電気化学表示素子1はP12、というように順に表記している。
符号5a、5b、5cは走査線で、行方向に並んだ画素それぞれのスイッチングトランジスタ4のゲートを互いに接続し、ゲートドライバ12に接続されている。符号8a、8b、8cは信号線で列方向に並んだ画素それぞれのスイッチングトランジスタ4のソースを互いに接続し、ソースドライバ14に接続されている。ゲートドライバ12が走査線5a、5b、5cに出力電圧G1、G2、G3を出力することにより、スイッチングトランジスタ4のオン/オフの制御を行い、駆動トランジスタ2に制御電圧を印加する行を選択する。駆動トランジスタ2のドレイン側は各画素の電気化学表示素子1の銀電極30に接続され、ソース側はバスライン6に接続され、基準となるバス電圧VBが印加されている。
ソースドライバ14は、信号線8a、8b、8c毎にドライバ回路を有し、電圧印加制御部74の制御に基づいて出力側に接続された信号線8a、8b、8cに出力電圧S1、S2、S3を出力する。ソースドライバ14のドライバ回路はオン、オフの2値ドライバであり、電圧印加制御部74の制御に基づいてソースドライバ14に入力された制御電圧VSまたはオフ電圧である0Vを出力する。
制御電圧電源15は、電源制御部72の制御に基づいて制御電圧VSを出力しソースドライバ14に供給する。
バスライン7は各画素の電気化学表示素子1のITO電極32と接続され、またその一端はコモン電源13に接続されている。コモン電源13は、電圧印加制御部74の指令により、コモン電圧VCを複数の電圧に切り替えて出力する。電圧印加制御部74は本発明の電圧印加制御手段である。
本実施形態では、コモン電源13は書き込み電圧としてコモン電圧VCをバス電圧VBより低い正の電圧VcaまたはVcbに切り替えて電気化学表示素子1に供給する。駆動トランジスタ2がオンになると、電気化学表示素子1の銀電極30にはVBが印加され、ITO電極32にはVcaまたはVcbが印加される。したがって、電気化学表示素子1には電極間の差電圧VB−VcaまたはVB−Vcbが書き込み電圧として印加される。VB−Vcaは本発明の第1の電圧、VB−Vcbは本発明の第2の電圧であり、|VB−Vca|>|VB−Vcb|である。また、コモン電源13は電圧印加制御部74の指令により、消去電圧としてコモン電圧VCをバス電圧VBより高い電圧に切り替えて電気化学表示素子1に供給できる。なお、消去電圧はVSより低い電圧である。
制御電圧VSの出力電圧S1、S2、S3がオン電圧であるVSのとき、スイッチングトランジスタ4がオンになると、駆動トランジスタ2のゲートにVSが印加され、駆動トランジスタ2はオンになり電気化学表示素子1にはコモン電圧VCが印加される。その後、スイッチングトランジスタ4がオフになってもゲートの図示せぬ浮遊容量により、駆動トランジスタ2はオン状態を保持する。
ソースドライバ14の出力電圧がオフ電圧である0Vのとき、スイッチングトランジスタ4がオンになると、駆動トランジスタ2のゲートに0Vが印加され、駆動トランジスタ2はオフになる。コモン電源13と駆動トランジスタ2とは、本発明の電圧印加手段である。
記憶部10は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記録媒体から構成されている。
第1フレームメモリ60、第2フレームメモリ61は、それぞれ表示画面50の画素数に対応する記憶領域を有する1画面分のフレームメモリである。第1フレームメモリ60は、電気化学表示素子1が次に表示画面50に表示する表示濃度の値Xを記憶する。第2フレームメモリ61は、電気化学表示素子1が表示画面50に表示中の表示濃度の値Yを記憶する。図面上では第1フレームメモリ60、第2フレームメモリ61をそれぞれFM1、FM2と表記する。
第3フレームメモリ62は、複数ページ分の画像データ(表示濃度の値X)を記憶する容量を有し、操作部42の操作により指定されたページの表示濃度の値Xを第1フレームメモリ60に書き込めるように構成されている。
タッチパネル40は表示画面50の上層に設けられている。タッチパネルコントローラ41は、CPU71の指令によりタッチパネル40を駆動し、読みとった入力位置情報を制御部に送信する。
タッチパネルコントローラ41は、タッチパネル40の入力域を順次走査し、タッチパネル40に入力があると割り込み信号INT1をCPU71に送信し、入力があった場所の位置情報をCPU71に送信する。
操作部42は、メカニカルスイッチから構成される順送りボタン43、逆送りボタン44がONになると割り込み信号INT2をCPU71に送信し、操作されたボタンの情報をCPU71に送信する。
B1はアドレスバス、データバスを含むバスラインである。B1には表示コントローラ11、CPU71、記憶部10、第1フレームメモリ60、第2フレームメモリ61、第3フレームメモリ62、タッチパネルコントローラ41などが接続され、接続された各要素はB1を介してデータの交換を行う。
CPU71は記憶部10に記憶されているプログラムに基づいて表示装置100全体を制御する。
電源制御部72は、制御電圧電源15を制御する。
画素判定部73は、次に表示画面50に表示する表示濃度の値Xが所定値以上の電気化学表示素子1を判定する。73は、本発明の画素判定手段である。
電圧印加制御部74は、コモン電源13を制御し、コモン電圧VCを複数の電圧に切り替え、それぞれの電気化学表示素子1に消去電圧または書き込み電圧を印加するよう駆動トランジスタ2を制御する。
比較部75は、第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61とから、対応する画素の表示濃度の値Xと表示濃度の値Yとをそれぞれ読み出して比較する。
次に、図4、図5を用いて本発明による書き込み電圧の印加と電気化学表示素子1の表示濃度Dとの関係を説明する。
図4は、本発明の表示装置によって第2の書き込みモードの書き込みを行うときの書き込み電圧と書き込み電圧を印加する時間と電気化学表示素子1の表示濃度Dとの関係の一例を説明する図である。図5は、本発明の表示装置によって第1の書き込みモードの書き込みを行うときの書き込み電圧と書き込み電圧を印加する時間と電気化学表示素子1の表示濃度Dとの関係の一例を説明する図である。
図4、図5の横軸は書き込み電圧を印加する時間である。図4(a)、(b)、図5(a)、(b)の縦軸はITO電極32に印加するコモン電圧VCを表す。なお、銀電極30にはバス電圧VBが印加されているものとする。図4(c)、(d)、図5(c)、(d)の横軸の数値は、表示装置100の電気化学表示素子1を順次走査するフレーム期間の回数を表し、縦軸のd0〜d8は表示濃度の値Dである。縦軸のd0は電気化学表示素子1の最小表示濃度、d8は目標とする最大表示濃度であり本実施形態では0から8までの9段階の階調を表示するものとする。
図4(a)のように、コモン電圧VCをVcbにして電気化学表示素子1に印加すると、図4(c)のように、時間とともに表示濃度の値Dは増していく。図4(c)の例では第12フレーム目に表示濃度の値はd8になる。
一方、図4(b)のように、コモン電圧VCをVcaにして電気化学表示素子1に印加すると、|VB−Vca|>|VB−Vcb|なので図4(d)に実線で示すように、時間とともに急激に表示濃度Dが増していく。図4(d)の例では第5フレーム目に表示濃度はd8になる。しかしながら、表示濃度Dが急激に変化するので濃度制御が難しい。図4(d)には比較のためコモン電圧VCをVcbにした場合を点線で示している。
次に、図5を用いて本発明による書き込み電圧の印加と電気化学表示素子1の表示濃度Dとの関係を説明する。
本発明では、表示画面50に表示する表示濃度の値Xが閾値濃度Dthを越える電気化学表示素子1には、図5(a)のように、例えば0〜t1までの間、コモン電圧VCをVcaにして電気化学表示素子1に印加し、t1〜t2までの間、コモン電圧VCをVcbにして電気化学表示素子1に印加する。0〜t1は第1の書き込み期間、t1〜t2は第2の書き込み期間である。
すると、図5(c)に実線で示すように、0〜t1までの間、時間とともに急激に表示濃度Dが増し、t1〜t2までの間は比較的緩やかに表示濃度Dが増している。図5(c)の例では、閾値濃度Dthはd5であり、表示濃度の値Xがd6、d7、d8の電気化学表示素子1に第1の書き込み期間にVcaを印加する。すると、図5(c)のように第3フレーム目に表示濃度はd6、第4フレーム目に表示濃度はd7、第8フレーム目に表示濃度はd8になるので、電気化学表示素子1に短時間で閾値濃度Dthを越える表示濃度を表示させることができる。図5(c)には比較のためコモン電圧VCをVcb一定にした場合を点線で示している。
一方、表示濃度の値Xが閾値濃度Dth以下の電気化学表示素子1には、図5(b)のように、0〜t1までの間、電気化学表示素子1に電圧を印加せず、t1〜t2までの間にコモン電圧VCをVcbにして電気化学表示素子1に印加する。
すると、図5(d)に実線で示すように、t1〜t2までの間は比較的緩やかに表示濃度Dが増し、容易に階調制御を行うことができる。
図5(d)の例では、閾値濃度Dthはd5であり、表示濃度の値Xがd1〜d5の電気化学表示素子1に第2の書き込み期間にVcbを印加する。すると、図5(d)のように第4フレーム目に表示濃度はd1、第5フレーム目に表示濃度はd2、第6フレーム目に表示濃度はd3、第7フレーム目に表示濃度はd4、第8フレーム目に表示濃度はd5になる。
このように、本発明では書き込み時間を制御することにより短時間で所望の階調が得られる。
次に、図6と図7を用いて本発明の表示装置100に画像を表示させるときの制御を説明する。
図6は電気化学表示素子1に画像を表示させるときの各部の電圧の変化を示すタイムチャート、図7は本発明の実施形態における操作ボタン割り込み処理ルーチンの手順を説明するためのフローチャートである。
図6では、電気化学表示素子1に消去電圧が印加して、全ての電気化学表示素子1の画像を消去した後、書き込みを行う第1の書き込みモードについて説明する。
最初に、図6のタイムチャートを用いて1行目のP11、P12、P13に印加される電圧Vp11、Vp12、Vp13について説明する。図6のタイムチャートの横軸は時間軸であり、Fw1〜Fw6は第1フレーム〜第6フレームを表している。FwNと表記するときのNはフレーム番号であり、書き込みを開始してからのフレーム期間の回数を表す。
なお、図6のタイムチャートでは図面を簡略化するためFw6までしか表示していない。Fw1〜Fw3の間は第1の書き込み期間、Fw4以降は第2の書き込み期間である。
最初に、各フレームFwにおけるゲートドライバ12の出力電圧G1、G2、G3について説明する。
ゲートドライバ12の1行目の出力電圧G1がΔTの間‘H’になると、1行目のスイッチングトランジスタ4がオンになる。すると、1行目のP11、P12、P13に接続されている駆動トランジスタ2のゲート電圧は、それぞれソースドライバ14の出力S1、S2、S3に設定され図示せぬ浮遊容量に保持される。そのため、ソースドライバ14の出力がVS1のときスイッチングトランジスタ4がオンになると、駆動トランジスタ2はオンになり、次にソースドライバ14の出力が0Vのときスイッチングトランジスタ4がオンになるまで駆動トランジスタ2はオン状態を保持する。
次に、ゲートドライバ12の2行目の出力電圧G2がΔTの間‘H’になり、2行目のP21、P22、P23に接続されている駆動トランジスタ2のゲート電圧はそれぞれソースドライバ14の出力S1、S2、S3に設定され図示せぬ浮遊容量に保持される。同様に、3行目のP31、P32、P33に接続されている駆動トランジスタ2のゲート電圧もそれぞれソースドライバ14の出力S1、S2、S3に設定され図示せぬ浮遊容量に保持される。
ソースドライバ14の出力S1、S2、S3は、電気化学表示素子1の表示する画像の濃度である表示濃度の値Xに応じて設定される。本例では、電気化学表示素子1は図5に示す表示特性を有しているものとし、P11、P12の表示濃度の値Xはd8、P13の表示濃度の値Xはd3とする。
図5の例では閾値濃度Dthはd5であるから、P11、P12は閾値濃度Dthを越え、P13は閾値濃度Dth以下である。そのため、第1の書き込み期間であるフレームFw1〜Fw3ではソースドライバ14の出力S1、S2はVS1であり、S3は0である。第2の書き込み期間であるフレームFw4〜Fw6ではソースドライバ14の出力S1、S2、S3はVS1である。
また、コモン電圧VCは、Fw1〜Fw3の間はVca、Fw4以降はVcbである。
フレームFw1〜Fw3では、P11、P12に接続されている駆動トランジスタ2がオンになり、P11、P12にVcaが印加される。P13に接続されている駆動トランジスタ2はオフになり、P13には電圧が印加されない。フレームFw4〜Fw6では、P11、P12、P13に接続されている駆動トランジスタ2がオンになり、P11、P12、P13にVcbが印加される。
なお、1行目の電気化学表示素子1について説明したが、他の行の電気化学表示素子1にも同様に電圧が印加される。
このようにして、電気化学表示素子1は順次走査され、表示画像Xに応じた電圧が所定のフレーム期間の間印加される。
図6の例では、フレームFw5とFw6の期間に待機時間ΔW(5)、ΔW(6)を設け、Fw1〜Fw4と比べて期間が長くなっている。これは、図5からもわかるように書き込み時間に対して電気化学表示素子1の表示濃度Dの増加分が一定しないため、Fw5とFw6の期間を長くして所定の表示濃度Dの増加が得られるようにするためである。待機時間ΔW(N)はフレーム番号Nに応じて予め設定されている。このように待機時間ΔW(N)を設けると表示濃度Dを精度良く所定量増加させることができるので、階調の制御が容易になる。
次に、図7のフローチャートについて説明する。
操作者が操作部42の順送りボタン43または逆送りボタン44を押すと、操作部42からCPU71に割り込み信号INT2が送信され、CPU71では図8に示す操作ボタン割り込み処理ルーチンが起動される。
操作ボタン割り込み処理ルーチンでは最初にステップS10が実行される。
S10:タッチパネル40の機能を停止するステップである。
CPU71は、タッチパネルコントローラ41を制御し、タッチパネル40の駆動を停止させる。このようにすると、タッチパネル40を駆動する電力が不要になり、表示装置100の消費電力を低減することができる。タッチパネル40の機能を停止させることは必ずしも必須ではないが、タッチパネル40の機能を停止させない場合は本ステップで、CPU71は、タッチパネルコントローラ41からの割り込みINT1をマスクする。
S11:表示コントローラ11を第1の書き込みモードに設定するステップである。
CPU71は、表示コントローラ11を第1の書き込みモードに設定し、実行させる。
S12:全画面を消去し、初期化するステップである。
電圧印加制御部74は、電気化学表示素子1に消去電圧を印加するように各部を制御し、画像を消去する。
S13:フレーム番号NをN=1にするステップである。
CPU71は、フレーム番号NをN=1にする。
S14:第3フレームメモリ62から画像データを読み出すページを指定し、当該ページの表示濃度の値Xを第1フレームメモリ60に書き込むステップである。
CPU71は、第3フレームメモリ62から画像データを読み出すページを指定し、当該ページの表示濃度の値Xを第1フレームメモリ60に書き込む。
例えば、操作者が操作部42の順送りボタン43を押すと、CPU71は第3フレームメモリ62から読み出すページ指定を第1ページから第2ページに更新し、第2ページに記憶されている画像データ(表示濃度の値X)を第1フレームメモリ60に書き込む。
S15:VC=Vcaにするステップである。
電圧印加制御部74は、コモン電圧VCをVcaにするようコモン電源13に指令する。
S16:n行目の第1フレームメモリ60の表示濃度の値を所定値と比較するステップである。
画素判定部73は、第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xをn行目の行方向に順次読み出して閾値濃度Dthの値と比較し、Xnm>Dthのとき‘H’、Xnm≦Dthのとき‘L’と判定する。比較部75は、判定した結果を記憶部10に一時記憶する。
例えば、P11の場合、X11がd8、閾値濃度Dthの値がd5であったとすると、判定結果は‘H’であり、以降の処理でP11に第1の書き込み期間から書き込み電圧が加えられる。
S17:表示コントローラ11にステップS16で比較した結果を出力するステップである。
CPU71は、記憶部10に一時記憶されているステップS16で比較した結果を表示コントローラ11に出力する。表示コントローラ11は、‘H’と判定された列のソースドライバ14の出力電圧をVS1にし、‘L’と判定された列のソースドライバ14の出力電圧を0Vにする。
S18:nとnmaxとを比較するステップである。
CPU71は、nと表示装置の最大行nmaxとを比較する。図3の例ではnmaxは3である。
n≠nmaxの場合、(ステップS18;No)、ステップS19に進む。
S19:n=n+1とするステップである。
CPU71は、最大行nmaxまで比較を終えていないのでn=n+1とし、ステップS20に進む。
S20:ΔT待機するステップである。
CPU71は、所定の時間ΔT待機してからステップS16に戻る。
n=nmaxの場合、(ステップS18;Yes)、ステップS21に進む。
S21:NとN1とを比較するステップである。
CPU71は、現在のフレーム番号Nと第2の書き込み期間を開始するフレーム番号N1を比較する。図6の例では第1の書き込み期間はN=0〜3であり、第2フレーム期間の始まるN1は4である。
N≠N1の場合、(ステップS21;No)、ステップS22に進む。
S22:N=N+1とするステップである。
CPU71は、現在のフレーム番号N=N+1とし、ステップS16に戻る。
N=N1の場合、(ステップS21;Yes)、ステップS23に進む。
S23:VC=Vcbにするステップである。
電圧印加制御部74は、コモン電圧VCをVcbにするようコモン電源13に指令する。
S24:n行目の第1フレームメモリ60の表示濃度の値とNに基づいて判定するステップである。
比較部75は、第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xをn行目の行方向に順次読み出して、現在のフレーム番号Nに基づいて記憶部10に予め記憶されているテーブルを参照し、‘H’または‘L’と判定する。比較部75は、判定した結果を記憶部10に一時記憶する。
下表はテーブルの一例である。
例えば、フレーム番号Nが4のときX11がd6であったとすると、判定結果は‘L’であり、X13がd1であったとすると、判定結果は‘H’である。
S25:表示コントローラ11にステップS24の判定結果を出力するステップである。
CPU71は、記憶部10に一時記憶されているステップS24の判定結果を表示コントローラ11に出力する。表示コントローラ11は、‘H’と判定された列のソースドライバ14の出力電圧をVS1にし、‘L’と判定された列のソースドライバ14の出力電圧を0Vにする。
S26:nとnmaxとを比較するステップである。
CPU71は、nと表示装置の最大行nmaxとを比較する。図3の例ではnmaxは3である。
n≠nmaxの場合、(ステップS26;No)、ステップS27に進む。
S27:n=n+1とするステップである。
CPU71は、最大行nmaxまで比較を終えていないのでn=n+1とし、ステップS28に進む。
S28:ΔT待機するステップである。
CPU71は、所定の時間ΔT待機してからステップS24に戻る。
n=nmaxの場合、(ステップS26;Yes)、ステップS29に進む。
S29:NとNmaxとを比較するステップである。
CPU71は、現在のフレーム番号Nと最大フレーム番号Nmaxとを比較する。例えばNmaxは8である。
N≠Nmaxの場合、(ステップS29;No)、ステップS30に進む。
S30:N=N+1とするステップである。
CPU71は、現在のフレーム番号N=N+1とし、ステップS31に進む。
S31:ΔW(N)の間待機するステップである。
CPU71は、記憶部10に記憶されている現在のフレーム番号Nに対応する所定の待機時間ΔW(N)を読み出し、ΔW(N)の間待機した後、ステップS24に戻る。なお、本実施形態では第2の書き込み期間にしか待機時間ΔW(N)を設けていないが、第1の書き込み期間に待機時間ΔW(N)を設けても良い。
N=Nmaxの場合、(ステップS29;Yes)、ステップS32に進む。
S32:タッチパネル40の機能をオンにするステップである。
CPU71は、タッチパネルコントローラ41を制御し、タッチパネル40の駆動を開始させる。または、タッチパネルコントローラ41からの割り込みINT1のマスクを解除する。
割り込み処理が終了すると元のルーチンに戻る。
操作ボタン割り込み処理ルーチンの説明は以上である。
ここまで、いったん画像を消去してから第3フレームメモリ62に記憶されている画像データを表示画面50に書き込んで表示する第1の書き込みモードの手順を説明した。次に、表示中の画像にタッチパネル40からの入力を上書きして追記する第2の書き込みモードについて説明する。以下、図8、図9、図10を用いて第2の書き込みモードの手順を説明する。
図8のタイムチャートを用いて1行目のP11、P12、P13に印加される電圧Vp11、Vp12、Vp13について説明する。なお、これまでに説明した構成要素には同番号を付し説明を省略する。
図8のタイムチャートの横軸は時間軸であり、Fb1〜Fb5は第1フレーム〜第5フレームを表している。FbNと表記するときのNはフレーム番号であり、書き込みを開始してからのフレーム期間の回数を表す。
なお、図8のタイムチャートでは図面を簡略化するためFb5までしか表示していない。第2の書き込みモードでは各フレームの期間の時間間隔は同一であり、第1の書き込み期間、第2の書き込み期間の区別は無い。
各フレームFbにおけるゲートドライバ12の出力電圧G1、G2、G3については、第1の書き込みモードと同じ動作であり説明を省略する。
ソースドライバ14の出力S1、S2、S3は、電気化学表示素子1の表示する画像の濃度である表示濃度の値Xと現在表示中の画像の濃度である表示濃度の値Yとを比較した結果に応じて設定される。例えば、現在表示中の画像の濃度である表示濃度の値Yがd5であり、表示する画像の濃度である表示濃度の値Xがd8のときは、濃度差に相当する3フレームの間、追記書き込みを行う。
Fb1を開始する直前にタッチパネル40から1行目のP11、P12、P13に相当する位置に入力が行われ、Fb3を開始する直前にタッチパネル40から2行目のP21、P22、P23に相当する位置に入力が行われた例を説明する。なお、3行目には書き込みを行わない。
このような場合、例えば、後に説明する表示コントローラ割り込み処理ルーチンによりFb1からFb4までは1行目のP11、P12、P13の表示濃度の値X>表示濃度の値Yと判定され、追記書き込みを行う。また、Fb3からは2行目のP21、P22、P23も表示濃度の値X>表示濃度の値Yと判定され、追記書き込みを行う。
そのため、図8に示すようにFb1からFb4までG1が‘H’の間は、ソースドライバ14の出力S1、S2、S3はVS1であり、Fb3からG2が‘H’の間は、ソースドライバ14の出力S1、S2、S3はVS1になっている。
第2の書き込みモードでは、コモン電圧VCは追記電圧であり、図8の例では一定の電圧Vcbである。なお、第2の書き込みモードのコモン電圧VCは一定の電圧であればVcb以外の任意の電圧でも良い。
図8に示すように、1行目のVp11、Vp12、Vp13は、Fb1からFb4までVcbになる。また、図示せぬ2行目のVp21、Vp22、Vp23は、Fb3からVcbになる。
第2の書き込みモードでは、コモン電圧VCが一定の電圧であり第1の書き込み期間と第2の書き込み期間の区別が無いので、このように1行目のP11、P12、P13に書き込みを行っている途中でも、新たに2行目のP21、P22、P23に書き込みを開始することができる。
次に、図9を用いて、手書き入力割り込み処理ルーチンを説明する。
タッチパネル40にスタイラスペン55などを用いて入力すると、タッチパネルコントローラ41からCPU71に割り込み信号INT1が送信され、CPU71では図9に示す手書き入力割り込み処理ルーチンが起動される。
手書き入力割り込み処理ルーチンでは最初にステップS20が実行される。
S20:表示コントローラ11を第2の書き込みモードに設定するステップである。
CPU71は、表示コントローラ11を第2の書き込みモードに設定し、実行させる。
S21:VCをVcbに設定するステップである。
電圧印加制御部74は、コモン電圧VCをVcbに設定する。
S22:CPU71が、手書き入力に対応する第1フレームメモリ60の表示濃度の値Xを書き換えるステップである。
CPU71は、タッチパネルコントローラ41が検出した位置情報に基づいて第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xを書き換える。本実施形態では、CPU71は、タッチパネルコントローラ41が検出した位置情報に対応するアドレスの第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xを最大濃度であるd8に書き換える。
割り込み処理が終了すると元のルーチンに戻る。
手書き入力割り込み処理ルーチンの説明は以上である。
次に、図10の表示コントローラ割り込み処理ルーチンのフローチャートについて説明する。
第2の書き込みモードでは表示コントローラ11からCPU71に、各フレームでGnの立ち上がり時に割り込み信号INT3が送信される。CPU71が割り込み信号INT3を受信すると、図10に示す表示コントローラ割り込み処理ルーチンが起動される。なお、電源投入時など初期状態ではn=1に初期化されている。
S101:n行目の第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61の表示濃度の値を比較するステップである。
比較部75は、第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xと第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度の値Yとをそれぞれn行目の行方向に順次読み出して比較し、Xnm>Ynmのとき‘H’、Xnm≦Ynmのとき‘L’と判定する。比較部75は、判定した結果を記憶部10に一時記憶する。
例えば、1行目の1列目の場合、X11がd8、Y11がd0だったとすると、判定結果は‘H’であり、以降の処理で1行目の1列目の電気化学表示素子1に書き込み電圧が加えられる。
S102:表示コントローラ11にステップS101で比較した結果を出力するステップである。
CPU71は、記憶部10に一時記憶されているステップS102で比較した結果を表示コントローラ11に出力する。表示コントローラ11は、‘H’と判定された列のソースドライバ14の出力電圧をVS1にし、‘L’と判定された列のソースドライバ14の出力電圧を0Vにする。
S103:第2フレームメモリ61のn行目の表示濃度の値Yを更新するステップである。
表示コントローラ11は、第2フレームメモリ61のn行目の画素に対応する表示濃度の値Yをフレーム回数に相当する分だけ増加させる。例えば、表示濃度の値Y11が0だったとすると1に書き換える。
S104:nとnmaxを比較するステップである。
CPU71は、nと表示装置の最大行nmaxを比較する。図3の例ではnmaxは3である。
n≠nmaxの場合、(ステップS104;No)、ステップS105に進む。
S105:n=n+1とするステップである。
最大行nmaxまで比較を終えていないのでn=n+1とし、元のルーチンに戻る。
例えば、nが1のときはn=2とし、次に表示コントローラ11から割り込み信号INT3が送信されたときは、本ルーチンで2行目の表示濃度を比較することになる。
n=nmaxの場合、(ステップS104;Yes)、ステップS106に進む。
S106:n=1とするステップである。
最大行nmaxまで比較したのでn=1とし、元のルーチンに戻る。
次に表示コントローラ11から割り込み信号INT3が送信されたときは、次のフレームの処理であり、本ルーチンで1行目の表示濃度から比較することになる。
表示コントローラ割り込み処理ルーチンの説明は以上である。
以上このように、本発明によれば、電気化学表示素子の応答速度を向上させるとともに、表示する画像の階調制御を容易に行うことができる表示装置を提供することができる。