JP5315906B2 - 電子線装置及びその補正方法、並びに補正用基板 - Google Patents
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本実施形態では、電子線装置において、単結晶材料からなる単結晶基板上に、複数の粒子が堆積してなる標準試料を補正用基板として用い、標準試料の単結晶基板の結晶方位を基準として、標準試料の傾斜状態が調節される。そして、標準試料の傾斜状態が調節されて、標準試料に対する電子線が合焦された状態で、電磁レンズ部の収差量を算出し、算出された収差量に基づいて、電子線装置の電磁レンズ部の収差を補正する。
本実施形態では、電子線装置として暗視野STEM装置を例示するが、明視野STEM装置やその他の電子線装置にも適用可能である。
この標準試料は、単結晶材料、例えばSiからなる基板101上に、例えばAuからなるパーティクル102が分散された状態で堆積されて構成される。
基板101の単結晶材料としては、Siの代わりにGe,GaAs,GaN,SrTiO3,BaTiO3,MgOから選ばれた1種を用いても良い。
パーティクル102の材料としては、Auの代わりにSi,Ge,GaAs,GaN,SrTiO3,BaTiO3,MgOから選ばれた1種を用いても良い。
即ち、暗視野STEM装置において、パーティクル102をその周囲のマトリックスから明瞭なコントラストで観察しなければならないことから、単結晶材料の原子番号と、パーティクル材料の原子番号との差が10以上であることを要する。例えば上記のように、単結晶材料をSi、パーティクル材料をAuとする場合、原子番号はSi=14、Au=79であり、両者は標準試料の作製の簡便さの観点においても望ましい組み合わせである。
電子線入射方向は、できるだけ多く測定することで計算精度を向上することは可能であるが、3次の収差係数測定においては最大で18方位(図示の例では17方位)で十分である。図示のように、フォーカスのオーバー側とアンダー側で入射方位に依存せずにパターンが円形に一致するようにレンズ条件を調整することで、各種収差が補正される。
C1(フォーカス)では、表1に示したように、通常の補正の規定値は20nmとされている。STEM観察の場合、標準試料が若干傾斜しただけでも、標準試料の一端から他端までの間に数10nmのフォーカスずれが生じる。例えば、標準試料が10°傾斜することにより、粒子径が2%程度縮んだ像となる。そのため、パーティクル112を円形近似した場合、補正値にフォーカスずれの影響も加わることになり、計算精度が大きく低下する。
図5−1に、本実施形態による標準試料の傾斜調節法を示す。ここで、(a)が傾斜していない(傾斜角度0°)の場合を、(b)が傾斜角度10°の場合をそれぞれ示しており、(a),(b)共に上図が標準試料を、下図が電子線回折像を示している。
また、図5−2に、理解の容易のため、図5−1の電子線回折像のイラスト図を示す。ここで、(a)が図5−1(a)の電子線回折像に、(b)が図5−1(b)の電子線回折像にそれぞれ対応している。
本実施形態では、電磁レンズ部の収差量を算出する際に、標準試料のパーティクル102の形状を算出し、パーティクル102の円形近似との差異を解析する。
そこで、標準試料の粒子形状を把握し、把握した粒子形状からなるパワースペクトラム像を参照として収差補正を行うことが必要となる。本実施形態では、観察した粒子像の粒子形状解析を行うことにより、パワースペクトラム像を推定する方法を提案する。
粒子形状の解析方法としては、粒子とマトリックス部分との境界を検知することにより、粒子の各方向における粒径を測定する。粒子形状解析を行った画像に対して、各電子線入射方位から得られる粒子像及びパワースペクトラム像を推定し、参照像としてレンズ収差パラメータの計算を行う。計算されたレンズ収差パラメータの値を各補正機構にフィードバックして、収差補正を行う。これにより、A2(3回非点)及びB2(コマ収差)はそれぞれ±30nmまで補正値の精度が向上する。C3(球面収差)は±500nmまで減少させることが可能となった。また、A3(4回非点)及びS3(スター収差)は、それぞれ1μm以下まで補正することが可能となった。
以下の表2に、本実施形態による各レンズ収差パラメータ補正値を示す。表1に示す従来の規定値よりも大幅に補正精度が向上していることが判る。
以下、上記した本実施形態の基本骨子を踏まえ、本実施形態の具体的な態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図8は、本実施形態によるSTEM装置の概略構成を示す模式図である。
このSTEM装置は、電子銃11と、収束レンズ12a,12bと、収束レンズ絞り13と、偏向コイル14と、走査コイル15と、収差補正部16と、対物レンズ17と、投影レンズ27と、蛍光板18と、CCD(またはTV)カメラ19と、STEM検出器20と、試料傾斜制御部21と、収差補正制御部22と、粒子解析計算部23と、レンズ収差パラメータ計算部24とを備えて構成されている。
収束レンズ12a,12b、対物レンズ17及び投影レンズ27は、それぞれ電磁レンズとして構成されている。
収束レンズ12a,12bは、電子銃11の下方で複数段(図示の例では2段)に配置されている。収束レンズ12a,12bは、電子銃11から放出された電子線により所望の大きさ且つ所望の電流の電子線プローブを形成する。
偏向コイル14、走査コイル15及び対物レンズ17は、収束レンズ絞り13の下方に配置されている。走査コイル15は電子線を2次元方向に走査する。対物レンズ17は、試料10の表面又はその近傍で合焦するように電子線を屈折する。
対物レンズ17の下方に、試料10が配置される。試料10としては、観察対象である試料と、当該STEM装置の収差補正を行うための補正用基板である図1のような標準試料とが用いられる。
STEM検出器20は、CCDカメラ19の下方に配置される。このSTEM検出器20は、試料10を透過した電子線を検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力する。本実施形態のSTEM装置は、暗視野STEM像を取得するものであり、STEM検出器20として例えば円環状の検出器が使用される。一方、明視野STEM像を取得する場合には、STEM検出器20として例えば円盤状の検出器が使用される。
β回動部25bは、試料10が載置固定される試料載置部31と、試料載置部31をβ方向に回動させる回動アーム32とを有している。β回動部25bによる試料10の回動時には、図9(b),(c)の中央図の状態から、回動アーム32を駆動することにより図9(b),(c)の左図または右図のように試料10を−β方向または+β方向に適宜回動させる。
β回動部26bは、試料10が載置固定される試料載置部33と、試料載置部33をβ方向に回動させる回動アーム34とを有している。β回動部26bによる試料10の回動時には、図10(b),(c)の中央図の状態から、回動アーム34を駆動することにより図10(b),(c)の左図または右図のように試料10を−β方向または+β方向に適宜回動させる。
試料傾斜調節機構25または26により、α方向及びβ方向に各々独立に試料10を所定角度回動させることにより、試料10の傾斜状態を調節することができる。
レンズ収差パラメータ計算部24は、粒子解析計算部23による粒子形状解析の結果を踏まえて、STEM検出器20により得られた暗視野STEM像をフーリエ変換することによってパワースペクトラム像に変換し、このパワースペクトラム像に基づいて各種のレンズ収差パラメータを算出する。
収差補正部16は、磁界型多重多極子、回転対称レンズ及び偏向コイルを有して構成されており、対物レンズ17の上方に配置される。収差補正部16は、収差補正制御部22による制御に従って、適宜に収差補正を行う。
図11は、本実施形態によるSTEM装置の収差補正方法を示すフロー図である。
図8のSTEM装置において、先ず、電子線の光軸調整(電子線の入射条件の固定)を行う(ステップS1)。このときの実験条件がSTEM装置の解析データメモリ領域Mに入力される。解析データメモリ領域Mは、図8では図示を省略しているが、試料傾斜制御部21、収差補正制御部22、粒子解析計算部23及びレンズ収差パラメータ計算部24とそれぞれ接続されている。
続いて、試料傾斜制御部21は、CCDカメラ19及びSTEM検出器20によって得られた電子線回折像及び菊池パターンに基づいて、試料傾斜調節機構25(または26)を制御して、試料10として設置された標準試料である試料10の傾斜状態を調節する(ステップS4,S5)。具体的には、例えばCCDカメラ等により菊地パターンを取得し、所定の画像解析部において画像解析して試料傾斜角度を計算し、計算された角度を所定の試料傾斜制御部にフィードバックすることによって、標準試料である試料10の傾斜を調節する。
続いて、STEM装置は、収差補正用の標準試料である試料10の観察像を取得する(ステップS7)。この観察像の画像データが解析データメモリ領域Mに入力される。
続いて、レンズ収差パラメータ計算部24は、試料10の観察像の画像データを解析データメモリ領域Mから読み出す。この画像データを用い、粒子解析計算部23による粒子形状解析の結果を踏まえて、STEM検出器20により得られた暗視野STEM像をパワースペクトラム像に変換する。そして、このパワースペクトラム像に基づいて各種のレンズ収差パラメータを算出する(ステップS9)。求められたパワースペクトラム像は解析データメモリ領域Mに入力される。
続いて、STEM装置は、補正目標となる参照画像を作成する(ステップS10)。この参照画像は解析データメモリ領域Mに入力される。
続いて、レンズ収差パラメータ計算部24は、撮影された暗視野STEM像の画像データを解析データメモリ領域Mから読み出し、この画像データをパワースペクトラム像に変換する(ステップS12)。求められたパワースペクトラム像は解析データメモリ領域Mに入力される。
続いて、レンズ収差パラメータ計算部24は、パワースペクトラム像に基づいて、各種のレンズ収差パラメータを計算する(ステップS13)。各種のレンズ収差パラメータは解析データメモリ領域Mに入力される。
続いて、収差補正制御部22は、各種のレンズ収差パラメータを解析データメモリ領域Mから読み出し、上記の比較に基づいて収差量を計算して各種の収差補正値を算出し(ステップS15)、収差補正部16に収差補正値を出力して(ステップS16)、収差補正部16による収差補正を制御する。算出された収差補正値は解析データメモリ領域Mに入力される。
続いて、収差補正制御部22は、C1(フォーカス)及びB2(コマ収差)をそれぞれ算出する(ステップS18)。ステップS18において、C1及びB2が本実施形態における規定値、例えば上記の表2の値を満たす場合には、ステップS19へ進む。一方、C1及びB2の少なくとも1つが本実施形態における規定値を満たさない場合には、再びステップS11〜S18を実行する。
ステップS20では、収差補正制御部22は、各収差補正値を解析データメモリ領域Mに保存する。
上述した本実施形態によるSTEM装置の各構成要素(図8の試料傾斜制御部21、収差補正制御部22、粒子解析計算部23、レンズ収差パラメータ計算部24等)の機能は、コンピュータのRAMやROM等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。同様に、STEM装置の収差補正方法の各ステップ(図11のステップS4,S5,S6〜S10,S12〜S19等)は、コンピュータのRAMやROM等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本実施形態に含まれる。
なお、パーソナルユーザ端末装置を用いる代わりに、STEM装置に特化された所定の計算機等を用いても良い。
前記電子源から放出された電子線を試料に対して調節する電磁レンズ部と、
前記試料を透過した電子線を検出する電子線検出部と、
前記電子線検出部による電子線の検出結果に基づいて、前記電磁レンズ部の収差量を算出する収差量算出部と、
前記収差量算出部により算出された前記収差量に基づいて、前記電磁レンズ部の収差を補正する収差補正部と、
前記試料として単結晶基板上に複数の粒子を堆積してなる標準試料を用い、前記標準試料の電子線回折像を基準として、前記標準試料の傾斜状態を調節自在とする傾斜調節部と
を含むことを特徴とする電子線装置。
前記収差量算出部は、前記粒子解析部による前記粒子の解析結果を用いて、前記電磁レンズ部の収差量を算出することを特徴とする付記1又は2に記載の電子線装置。
前記電子源から放出された電子線を試料に対して調節する電磁レンズ部と
を含む電子線装置の補正方法であって、
前記試料として、単結晶基板上に複数の粒子を堆積してなる標準試料を用い、前記標準試料を透過した電子線回折像を検出するステップと、
前記電子線回折像に基づいて、前記標準試料の傾斜状態を調節するステップと、
調節された前記標準試料の電子線回折像により、前記電磁レンズ部の収差量を算出するステップと、
算出された前記収差量に基づいて、前記電磁レンズ部の収差を補正するステップと
を含むことを特徴とする電子線装置の補正方法。
前記電磁レンズ部の収差量を算出するステップでは、前記粒子解析部による前記粒子の解析結果を用いて、前記収差量を算出することを特徴とする付記7又は8に記載の電子線装置の補正方法。
単結晶材料からなる基板と、
前記基板上に堆積されてなる複数の粒子と
を含むことを特徴とする補正用基板。
12a,12b 収束レンズ
13 収束レンズ絞り
14 偏向コイル
15 走査コイル
16 収差補正部
17 対物レンズ
18 蛍光板
19CCD(またはTV)カメラ
20 STEM検出器
21 試料傾斜制御部
22 収差補正制御部
23 粒子解析計算部
24 レンズ収差パラメータ計算部
25,26 試料傾斜調節機構
25a,26a α回動部
25b,26b β回動部
27 投影レンズ
31,33 試料載置部
32,34 回動アーム
101,111 基板
102,112 パーティクル
Claims (9)
- 電子線を発生させる電子源と、
前記電子源から放出された電子線を試料に対して調節する電磁レンズ部と、
前記試料を透過した電子線を検出する電子線検出部と、
前記電子線検出部による電子線の検出結果に基づいて、前記電磁レンズ部の収差量を算出する収差量算出部と、
前記収差量算出部により算出された前記収差量に基づいて、前記電磁レンズ部の収差を補正する収差補正部と、
前記試料として単結晶基板上に複数の粒子を堆積してなる標準試料を用い、前記標準試料の電子線回折像を基準として、前記標準試料の傾斜状態を調節自在とする傾斜調節部と
を含むことを特徴とする電子線装置。 - 前記電子線検出部による電子線の検出結果に基づいて、前記傾斜調節部を制御して前記標準試料の傾斜状態を調節する傾斜制御部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電子線装置。
- 前記電子線検出部による電子線の検出結果に基づいて、前記標準試料の前記粒子の形状を算出し、前記粒子の円形近似との差異を解析する粒子解析部を更に含み、
前記収差量算出部は、前記粒子解析部による前記粒子の解析結果を用いて、前記電磁レンズ部の収差量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子線装置。 - 電子線を発生させる電子源と、
前記電子源から放出された電子線を試料に対して調節する電磁レンズ部と
を含む電子線装置の補正方法であって、
前記試料として、単結晶基板上に複数の粒子を堆積してなる標準試料を用い、前記標準試料を透過した電子線回折像を検出するステップと、
前記電子線回折像に基づいて、前記標準試料の傾斜状態を調節するステップと、
調節された前記標準試料の電子線回折像により、前記電磁レンズ部の収差量を算出するステップと、
算出された前記収差量に基づいて、前記電磁レンズ部の収差を補正するステップと
を含むことを特徴とする電子線装置の補正方法。 - 前記電磁レンズ部の収差量を算出するステップの前に、電子線の前記検出結果に基づいて、前記標準試料の傾斜状態を調節するステップを更に含むことを特徴とする請求項4に記載の電子線装置の補正方法。
- 前記電磁レンズ部の収差量を算出するステップの前に、電子線の前記検出結果に基づいて、前記標準試料の前記粒子の形状を算出し、前記粒子の円形近似との差異を解析するステップを更に含み、
前記電磁レンズ部の収差量を算出するステップでは、前記粒子の解析結果を用いて、前記収差量を算出することを特徴とする請求項4又は5に記載の電子線装置の補正方法。 - 試料に電子線を照射する電子線装置において、前記試料として前記電子線装置の収差補正に用いられる補正用基板であって、
Ge,GaAs,GaN,SrTiO 3 ,BaTiO 3 ,MgOから選ばれた1種の単結晶材料からなる基板と、
前記基板上に堆積されてなる複数の粒子と
を含むことを特徴とする補正用基板。 - 前記基板は、その厚みが30nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項7に記載の補正用基板。
- 前記粒子は、その粒径が2nm以上5nm以下、且つ、隣接する粒子間隔が10nm以上30nm以下とされていることを特徴とする請求項7又は8に記載の補正用基板。
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