JP2008091125A - 電磁レンズの非点収差測定方法、非点収差測定装置、非点収差補正方法及び電子線装置 - Google Patents

電磁レンズの非点収差測定方法、非点収差測定装置、非点収差補正方法及び電子線装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電磁レンズの非点収差を定量的且つ高精度に測定できる電磁レンズの非点収差測定方法、非点収差測定装置、非点収差補正方法、及び非点収差補正機能を備えた電子線装置を提供する。
【解決手段】SrTiO3等の単結晶試料に電子線を入射し、それにより出現するロンチグラムを撮像部により取得して画像データとする。その後、ロンチグラムの中心位置を決定した後、ロンチグラムを2回フーリエ変換して画像のスケールのキャリブレーションを行う。次いで、ロンチグラムを1回フーリエ変換して1回フーリエ変換像を得る。その後、制御部により1回フーリエ変換像における輝点と結晶軸方向とのずれ量を検出し、非点収差係数を算出する。そして、その結果に基づいて非点収差補正用偏向コイルを制御し、電磁レンズの非点収差を補正する。
【選択図】図15

Description

本発明は、電子顕微鏡や電子線リソグラフ装置等の電子線装置に使用される電磁レンズの非点収差を測定する電磁レンズの非点収差測定方法、非点収差測定装置、電磁レンズの非点収差補正方法、及び電子レンズの非点収差を補正する機能を備えた電子線装置に関する。
走査透過型電子顕微鏡や電子線リソグラフ装置等の装置(電子線装置)では、電磁レンズにより電子線(電子ビーム)を拡大又は収束して、電子線プローブのサイズと電流密度とを調整している。電子顕微鏡における高空間分解能観察や分析では、極微小な形状であって電流密度が高い電子線プローブを形成することが重要である。
また、電子線リソグラフ装置を用いた電子線リソグラフィーは、半導体素子や量子ドットの製造プロセスにおいてナノメータレベルでの微細加工が可能な方法として知られている。電子線リソグラフィーでは、電子線リソグラフ装置の電磁レンズの性能及び使用時の条件が加工精度に大きく影響を与える。
一般的に、電磁レンズには非点収差が存在する。電磁レンズの非点収差は電子線プローブの形状に関係し、電子顕微鏡の空間分解能や電子線リソグラフィーの加工精度に大きく影響する。従って、電子顕微鏡の空間分解能の向上や電子線リソグラフィーの加工精度の向上には、電磁レンズの非点収差の補正が重要となる。
従来、電磁レンズの非点収差の補正は、電子線装置(電子顕微鏡又は電子線リソグラフ装置等)により得られた画像を見ながら作業者が偏向コイルを操作することにより行っている。また、近年、電磁レンズの球面収差及び非点収差を補正する装置が開発され、一部で使用されている。
なお、特許文献1には、アモルファス試料のロンチグラムを用いて電磁レンズの非点収差を補正する方法が開示されている。また、特許文献2には、走査透過型電子顕微鏡観察において焦点ずれ量の最適化や虚像の消去を可能にする方法が記載されている。この特許文献2には、位相伝達関数及びロンチグラムを用いて電磁レンズの球面収差係数Csを導出することが記載されている。
特開2003−331773号公報 特開2003−249186号公報
しかしながら、作業者が画像を見ながら偏向コイルを操作して非点収差を補正する方法は、作業者の勘に頼る部分が大きく、操作に熟練を要する。また、前述した電磁レンズの球面収差及び非点収差を補正する装置では、電子線プローブの非点収差係数をシミュレーションにより算出するか、又はアモルファス試料を用いて測定しており、非点収差係数の精度が十分ではない。そのため、電子線プローブの非点収差量を定量的且つ高精度に測定する方法、及び非点収差を簡単且つ高精度に補正する装置が要望されている。
以上から、本発明の目的は、電磁レンズの非点収差を定量的且つ高精度に測定できる電磁レンズの非点収差測定方法及び測定装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、電磁レンズの非点収差を簡単且つ高精度に補正できる非点収差補正方法及び電磁レンズの非点収差を簡単且つ高精度する機能を備えた電子線装置を提供することである。
本発明の一観点によれば、電磁レンズを透過した電子線を結晶構造及び格子定数が既知の単結晶試料に入射して、前記試料の裏面側に配置した撮像部によりロンチグラムの画像データを取得し、制御部において、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して1回フーリエ変換像を作成し、前記1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量を測定し、その測定結果に基づいて前記電磁レンズの非点収差を算出する電磁レンズの非点収差測定方法が提供される。
本発明においては、例えばSrTiO3のように対称性のよい単結晶を試料とし、電子線を照射してロンチグラム(Ronchigram)を取得する。ロンチグラムは、回折することなく試料を透過した電子波と試料により回折された電子波とが干渉して形成される画像であり、このロンチグラムの画像データをフーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)すると、パワースペクトラムとよばれる星型の画像(1回フーリエ変換像)が得られる。本願発明者等の実験・研究により、このパワースペクトラムの輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量が、電磁レンズの非点収差量に関係することが判明した。従って、パワースペクトラムの輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量を検出することにより、電磁レンズの非点収差を評価することができる。
電磁レンズの非点収差を定量的に評価するためには、画像のスケールのキャリブレーションを行う必要がある。前述した1回フーリエ変換像を更にフーリエ変換すると、電子線回折像と同様のパターンの2回フーリエ変換像が得られる。この2回フーリエ変換像の輝点の位置は、電子線回折像における輝点の位置に完全に一致する。従って、この2回フーリエ変換像を用いて、画像のスケールのキャリブレーションを行うことができる。
本発明の他の観点によれば、電子線を発生する電子線発生部と、前記電子線発生部で発生した電子線を収束する収束レンズと、試料を搭載する試料搭載部と、前記収束レンズと前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズと、前記試料搭載部に搭載された試料に前記電磁レンズを透過した電子線を入射して得られるロンチグラムを撮像する撮像部と、前記電子線発生部、前記収束レンズ及び前記電磁レンズを制御するとともに、前記撮像部から前記ロンチグラムの画像データを取得する制御部とを有し、前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して得られる1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量から前記電磁レンズの非点収差量を算出する電磁レンズの非点収差測定装置が提供される。
本発明の非点収差測定装置は、電磁レンズを透過した電子線をSrTiO3等の単結晶試料に入射して、これにより出現するロンチグラムを撮像部で撮像して画像データとする。その後、制御部は、ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して1回フーリエ変換像を作成し、その1回フーリエ変換像における輝点と結晶軸方向とのずれ量を検出する。上述したように、1回フーリエ変換像の輝点と結晶軸方向とのずれ量は電磁レンズの非点収差に関係している。従って、1回フーリエ変換像の輝点と結晶軸方向とのずれ量を定量的に測定することにより、電磁レンズの非点収差を定量的に評価することができる。
本発明の更に他の発明によれば、電磁レンズを透過した電子線を試料に入射し、撮像部によりロンチグラムを撮像する工程と、前記撮像部で撮像した前記ロンチグラムの画像データを制御部においてフーリエ変換し1回フーリエ変換像を取得する工程と、前記制御部において、前記1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量を検出し、その検出結果から前記電磁レンズの非点収差量を算出する工程と、前記非点収差量の算出結果に基づいて非点収差補正部を制御し、前記電磁レンズの非点収差を補正する工程とを有する電磁レンズの非点収差補正方法が提供される。
本発明の非点収差補正方法は、電磁レンズを透過した電子線をSrTiO3等の単結晶試料に入射して、これにより出現するロンチグラムを撮像部で撮像して画像データとする。その後、制御部は、ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して1回フーリエ変換像を作成し、その1回フーリエ変換像における輝点と結晶軸方向とのずれ量を検出する。そして、制御部は、そのずれ量の検出結果から電磁レンズの非点収差量を算出し、その算出された非点収差量に応じて例えば偏向コイルにより構成される非点収差補正部を制御して、電磁レンズの非点収差を補正する。これにより、電磁レンズの非点収差を簡単且つ高精度に補正することができる。
本発明の更に他の観点によれば、電子線を発生する電子線発生部と、前記電子線発生部で発生した電子線を収束する収束レンズと、試料を搭載する試料搭載部と、前記収束レンズと前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズと、非点収差補正部と、前記試料搭載部に搭載された試料に前記電磁レンズを透過した電子線を入射して得られるロンチグラムを撮像する撮像部と、前記電子線発生部、前記収束レンズ、前記電磁レンズ及び前記非点収差補正部を制御するとともに、前記撮像部から前記ロンチグラムの画像データを取得する制御部とを有し、前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して得られる1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量から前記電磁レンズの非点収差量を算出し、その結果に基づいて前記非点収差補正部を制御し、前記電磁レンズの非点収差を補正する電子線装置が提供される。
本発明の電子線装置は、電磁レンズを透過した電子線をSrTiO3等の単結晶試料に入射し、それにより出現するロンチグラムを撮像部で撮像して画像データとする。次に、制御部は、ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して1回フーリエ変換像を作成し、その1回フーリエ変換像における輝点と結晶軸方向とのずれ量を検出する。その後、制御部は、輝点と結晶軸方向とのずれ量の検出結果に基づいて偏向コイルを制御し、電磁レンズの非点収差を補正する。本発明の電子線装置は、このようにして電磁レンズの非点収差を補正するので、電子顕微鏡に適用した場合は従来に比べてより一層の高分解能観察や高感度分析が可能となり、電子線リソグラフ装置に適用した場合は従来に比べてより一層高精度な可能が可能になる。
本発明によれば、作業者の熟練度に依存することなく、電磁レンズの非点収差を容易に且つ高精度に補正することができる。また、本発明においては、電子レンズの非点収差量を簡単且つ高精度に補正することができるので、個々の電子線装置又は個々の電磁レンズに容易に対応することができる。更に、従来は電磁レンズの非点収差の補正を作業者が行っていたが、本発明によれば電磁レンズの非点収差の補正の自動化が可能である。
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電磁レンズの非点収差補正機能を備えた電子線装置を示す模式図である。なお、本実施形態は、本発明を走査透過型電子顕微鏡(STEM)に適用した例について説明している。
本実施形態の電子線装置は、制御部10と、電子銃(FEG)11と、収束レンズ12a,12bと、収束レンズ絞り13と、偏向コイル14と、走査コイル15と、球面収差・非点収差補正部16と、電子検出器17と、対物レンズ18と、試料搭載部21と、結像レンズ22と、偏向コイル23と、撮像部24と、STEM検出器25とにより構成されている。
電子銃11は、制御部10からの信号に応じた加速電圧で電子を加速し、電子線として出力する。電子銃11の下方には、2又は3段(図1では2段)の収束レンズ12a,12bが配置されている。これらの収束レンズ12a,12bは、制御部10からの信号に応じて、電子銃11から放出された電子線から所望の大きさ且つ所望の電流の電子線プローブを形成する。
収束レンズ12a,12bの下方には収束レンズ絞り13が配置されている。収束レンズ12a,12bにより形成された電子線プローブは不要な広がり部分をもつため、この収束レンズ絞り13により不要な広がり部分をカットする。
収束レンズ絞り13と試料搭載部21との間には、偏向コイル14、走査コイル15、球面収差・非点収差補正部16、電子検出器17及び対物レンズ18が配置されている。偏向コイル14は、制御部10からの信号に応じて、収束レンズ12a,12bにより収束された電子線を偏向する。走査コイル15は、制御部10からの信号に応じて、試料搭載部21に搭載された試料20の表面上を電子線が走査するように電子線を屈折する。球面収差・非点収差補正部は、制御部10からの信号に応じて、電磁レンズの球面収差及び非点収差を補正する。
対物レンズ(電磁レンズ)18は、制御部10からの信号に応じて、試料20の表面(又は、その近傍)で焦点が合うように電子線を屈折する。本実施形態では、対物レンズ18の非点収差量を測定し、その測定結果に応じて球面収差・非点収差補正部16を制御し、対物レンズ18の非点収差を補正する。なお、非点収差は電磁レンズだけでなく収束レンズ絞り13の形状や挿入位置にも影響されるため、収束レンズ絞り13の形状や挿入位置を変更したときにも、非点収差を補正することが好ましい。
試料20は、試料搭載部21の上に載置される。この試料搭載部21には、試料20に入射する電子線に対し試料20の結晶方位を調整するための試料傾斜機構(図示せず)が設けられている。電子検出器17は試料20の斜め上方に配置されており、試料20で反射された反射電子や試料20から放出された二次電子を検出して、その結果を制御部10に出力する。
結像系レンズ22、偏向コイル23、STEM検出器24及び撮像部25は、試料搭載部21の下方に配置されている。結像系レンズ22は複数のレンズを組み合わせて構成されている。この結像系レンズ22は制御部10により制御され、試料20を透過した電子線を屈折してSTEM検出器24又は撮像部25に像を投影する。偏向コイル23は、制御部10からの信号に応じて電子線を偏向する。
撮像部25は例えばCCDカメラ、TVカメラ又は蛍光板等により構成される。この撮像部25により、電子回折像やロンチグラム(Ronchigram)が記録される。また、STEM検出器24により、STEM像が記録される。なお、撮像部25を使用するときには、STEM検出器24を撮像部25の上から退避させる。
図2は電磁レンズ通過時の電子の軌道を示す模式図である。電子が電磁レンズ30を通る位置によって電子の軌道の屈折位置が変化する。電磁レンズ30に非点収差があると、例えば図2に示すように、軌道Aを通る電子は焦点A0の位置に収束し、軌道Bを通る電子は焦点A0とは異なる焦点B0の位置に収束する。そして、軌道Bを通る電子は焦点A0の位置で横に伸びた像を形成し、軌道Aを通る電子は焦点B0の位置で縦に伸びた像を形成する。つまり、電磁レンズ30に非点収差があると、電子線プローブの形状が真円にならずに縦や横に伸縮した形状となる。
図3(a),(b)に非点収差の補正に用いる偏向コイルの原理を示す。この種の偏向コイルは、例えば図3(a),(b)に示すように、相互に交差する2方向(X方向、Y方向)に電子線プローブの形状を変化させる2組の4重極子31a,31bにより構成されている。各4重極子31a,31bは、電子線プローブを磁場によりX方向又はY方向に伸張又は収縮させることができる。電磁レンズに非点収差があると、例えば図3(a)に示すように電子線プローブの形状は楕円となる。この場合、図3(b)のようにX方向に収縮、Y方向に伸張するように各4重極子31a,31bの磁場を調整することによって、電磁レンズの非点収差が補正され、電子線プローブの形状が真円となる。この図3(a),(b)に示すように、偏向コイルとして2組の4重極子を用いた場合は、2回対称の非点収差の補正が可能である。
本発明においては、ロンチグラムを用いて電磁レンズの非点収差量を測定する。図4にロンチグラムの原理を示す。例えば厚さが100nm以下の単結晶試料20に収束半角度αが150mrad以上の電子線を任意の結晶方位の晶帯軸に入射させると、試料20を回折せずに透過した電子波と試料20で回折した電子波とが干渉して、ロンチグラムが観測される。なお、本願発明者等の実験により、電子線の収束半角度αが150mrad未満の場合は、良好なロンチグラムを取得することが困難になることが判明している。また、良好なロンチグラムを取得するためには、単結晶試料20の厚さを100nm以下とし、焦点ずれ量を−300nm以上とすることが好ましいことも判明している。
図5(a)は試料20としてSrTiO3(100)単結晶を用いたときのロンチグラムを示し、図5(b)は試料20としてアモルファスを用いたときのロンチグラムを示している。SrTiO3(100)単結晶では000透過ディスクと低次反射の0−22、022、02−2、0−2−2の回折ディスクとが重なり、図5(a)に示すように干渉模様(ロンチグラム)が観察される。一方、アモルファス試料のロンチグラムでは、図5(b)に示すように、中心に円形のフリンジが観測される。
図6(a)はX方向の非点収差を有する電磁レンズを用いた場合のアモルファス試料のロンチグラムを示し、図6(b)は非点収差がない電磁レンズを用いた場合のアモルファス試料のロンチグラムを示し、図6(c)はY方向の非点収差を有する電磁レンズを用いた場合のアモルファス試料のロンチグラムを示している。前述の特許文献1に記載された方法では、このようなロンチグラムを使用して電磁レンズの非点収差を補正する。すなわち、アモルファス試料を用いてロンチグラムを取得し、電磁レンズの非点収差の有無を判定する。そして、非点収差があると判定したときは、図6(b)のような画像が得られるように作業者が非点収差補正用の偏向コイルを操作する。
簡易的には上記の方法で電磁レンズの非点収差を補正することが可能である。しかし、原子オーダーでの分解能を得るためには、上記の方法では不十分である。また、アモルファス試料のロンチグラムでは、非点収差を定量的に測定することはできない。
これに対し、本発明では、対称性が高い単結晶試料、例えばSi単結晶又はSrTiO3単結晶などの正方晶又は立方晶の単結晶を用いてロンチグラムを取得する。ロンチグラムは逆格子空間(エネルギー空間)の像であるので、非点収差量を測定する場合、計算に使用するパラメータを逆格子空間のベクトル成分で表すためには画像のスケールのキャリブレーションを行う必要がある。
図7(a)〜(c),図8(a)〜(c)を参照して、ロンチグラムのスケールのキャリブレーションについて説明する。なお、図7(a)は非点収差がない電磁レンズを用いて取得したSrTiO3(100)単結晶のロンチグラムを示し、図7(b)は図7(a)のロンチグラムの画像データ(以下、単に「ロンチグラム」ともいう)をフーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)して得た画像(1回フーリエ変換像)を示し、図7(c)は図7(b)の画像(画像データ)を更にフーリエ変換して得た画像(2回フーリエ変換像)を示している。また、図8(a)は非点収差がある電磁レンズを用いて取得したSrTiO3(100)単結晶のロンチグラムを示し、図8(b)は図8(a)のロンチグラムをフーリエ変換して得た画像(1回フーリエ変換像)を示し、図8(c)は図8(b)の画像を更にフーリエ変換して得た画像(2回フーリエ変換像)を示している。
試料としてSrTiO3(100)単結晶等を用いた場合、取得されたロンチグラム(図7(a),図8(a)参照)を1回フーリエ変換すると、星型のパワースペクトラム(図7(b),図8(b)参照)が現れる。このパワースペクトラムを更にフーリエ変換すると、電子線回折像に相当する画像(図7(c),図8(c)参照)が得られる。
図7(c),図8(c)から、2回フーリエ変換像では、電磁レンズが非点収差を有しているか否かにかかわらず、輝点の位置が同じであることがわかる。この2回フーリエ変換像における輝点のパターンは、平面波入射の場合の電子線回折パターンと完全に一致する。これらの結果から、ロンチグラムを2回フーリエ変換して得られる画像の輝点の位置は、電磁レンズの非点収差に影響されず、結晶情報のみに依存していることがわかる。SrTiO3(100)単結晶の格子定数は既知であるので、この2回フーリエ変換像を用いて画像(ロンチグラム及び1回フーリエ変換像)のスケールのキャリブレーションを行うことができる。
一方、1回フーリエ変換像では、非点収差がないときと非点収差があるときとで、輝点の現れる位置が異なっている(図7(b),図8(b)参照)。この1回フーリエ変換像を用いてロンチグラムの非対称性を定量的に把握することにより、電磁レンズの非点収差量を求めることができる。
次に、非点収差量の定量を行うための計算手順について説明する。2回対称の非点収差に関するレンズ収差関数W(Kx,Ky)は、下記(1)式で示される。
Figure 2008091125
ここで、λは電磁波の波長、Δfは焦点ずれ量(デフォーカス)、Csは球面収差係数、C1,2a及びC1,2bは2回対称の非点収差係数である。
球面収差係数Csについては、例えば本願出願人により先に出願された特願2005−298799号に記載されている方法で測定できる。但し、それ以外の方法で球面収差係数Csを測定してもよい。ここでは、球面収差係数Csは既知であるとする。
焦点ずれ量Δf及び球面収差係数Csはレンズ収差関数W(Kx,Ky)を等方的に歪ませるのに対し、非点収差係数C1,2a及びC1,2bはレンズ収差関数W(Kx,Ky)を非等方的に変化させる。これらの係数C1,2a及びC1,2bに対する変化の方向は45度異なる。この方向はKx及びKyの座標方向に依存しているが、Kx及びKyを直交系で選択すれば、Kx,Kyをどのような方向にとっても、非点収差係数C1,2a及びC1,2bの値を適切に変更することによって、2回対称の非点収差係数を決定することができる。ここでは、Kxの方向を[1−10]方向とし、Kyの方向を[110]方向とする。
このように座標軸を設定することによって、C1,2aはレンズ収差関数W(Kx,Ky)を[100]方向に対して楕円になるように歪ませる変数、C1,2bは[110]方向に対して楕円となるように歪ませる変数と考えることができる。
各非点収差係数C1,2a及びC1,2bの影響を独立に測定するために、 各非点収差係数C1,2a及びC1,2bが影響を及ぼす系統的反射のみを用いてロンチグラムのシミュレーション計算を行い、非点収差シミュレーション像を得た。
図9(a)はC1,2a=0nm、C1,2b=0nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[100]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図9(b)はC1,2a=20nm、C1,2b=0nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[100]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図9(c)はC1,2a=20nm、C1,2b=20nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[100]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)である。また、図9(d)は図9(a)のロンチグラムの1回フーリエ変換像、図9(e)は図9(b)のロンチグラムの1回フーリエ変換像、図9(f)は図9(c)のロンチグラムの1回フーリエ変換像を示している。但し、ここでは100軸を垂直方向とし、010軸を水平方向としている。
図9(d)〜(f)に示す1回フーリエ変換像から、[100]反射の方向に幾つかの輝点が現れていることがわかる。本シミュレーション計算では、100軸を垂直方向とし、010軸を水平方向としているので、100軸方向に実線を引いて基準線とし、この基準線からの輝点のずれを調べた。その結果、非点収差がある場合は、図9(b),(c)のように、いずれも輝点が[100]反射の方向(基準線)から同じ方向にずれていることが判明した。図9(b)では図9(a)に対しC1,2aの値のみを変化させているため, この輝点のずれは非点収差の影響によるものであることが明らかである。
次に、図9(e)及び図9(f)に示す1回フーリエ変換像の輝点の系統的反射方向からのずれ量を計算した。その結果、両者のずれ量はほぼ等しいことが判明した。また、非点収差係数C1,2aは真円を[100]方向へ楕円状に変形させる効果があり、非点収差係数C1,2bの値に依存しないことも判明した。そこで、非点収差係数C1,2bを0,20,40nmとし、非点収差係数C1,2aを変化させたときの基準線(系統的反射の方向)からのずれをプロットした。その結果を図10に示す。
この図10から、基準線からの輝点のずれ量は非点収差係数C1、2bに対して線形依存しており、非点収差係数C1,2aを0,20,40nmと変化させても線形関係は殆ど変化しないことがわかる。
同様な解析を、[110]方向の非点収差に対して行った。図11(a)はC1,2a=0nm、C1,2b=0nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[110]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図11(b)はC1,2a=20nm、C1,2b=0nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[110]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図11(c)はC1,2a=20nm、C1,2b=20nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[110]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)である。また,図11(d)は図11(a)のロンチグラムの1回フーリエ変換像、図11(e)は図11(b)のロンチグラムの1回フーリエ変換像、図11(f)は図11(c)のロンチグラムの1回フーリエ変換像を示している。
図11(d)〜(f)に示す1回フーリエ変換像では、[110]反射の方向に幾つかの輝点が現れている。ここでは、[110]方向に基準線を引いて、この基準線からの輝点のずれを調べた。その結果、図11(b),(c)のように、非点収差がある場合はいずれも、輝点が基準線から同じ方向にずれていることが判明した。
次に、図11(e)及び図11(f)に示す1回フーリエ変換像の輝点の基準線からのずれ量を計算した。その結果、両者のずれ量は等しいことが判明した。また、非点収差係数C1,2bは真円を[110]方向へ楕円状に変形させる効果があり、C1,2aの値に依存しないことも判明した。そこで、C1,2bを0,20,40nmとし、非点収差係数C1,2aを変化させたときの基準線(系統的反射の方向)からのずれをプロットした。その結果を図12に示す。
この図12から、基準線からの輝点のずれは非点収差係数C1,2aに対して線形依存しており、非点収差係数C1,2bを0,20,40nmと変化させても線形関係は殆ど変化しないことがわかる。
実際に電磁レンズの非点収差を定量化するためには、対応する結晶軸方向からのずれと非点収差係数との線形関係を計算像から求め、その後単結晶試料を用いて実際に取得したロンチグラムの1回フーリエ変換像の輝点の位置から非点収差係数を計算する。
次に、シミュレーション計算による結果を基に、実験により取得したロンチグラムに含まれる非点収差係数の測定を行った結果について説明する。ここでは、図7のロンチグラム(非点収差なし)と図8のロンチグラム(非点収差あり)とを用いて、非点収差係数C1,2a及びC1,2bを計算した。また、ここでは、それぞれの系統的反射方向の1番目の輝点を用いて、結晶軸方向からのずれ量を測定した。その結果、下記表1に示すように、非点収差係数C1,2a及びC1,2bを算出することができた。このように、非点収差のパラメータとして非点収差係数C1,2a及びC1,2bを定義することにより、低指数入射ロンチグラムを用いて非点収差量を定量化することができる。
Figure 2008091125
ところで、非点収差を補正するためには、ロンチグラムの中心位置を正確に決定することが必要である。ロンチグラムの中心位置の決定方法を以下に説明する。
図13,図14は、ロンチグラムの中心位置決定方法を示す図である。図13に示すように、ロンチグラムの外周部には結晶構造に起因する特徴的なフリンジが現れる。このフリンジが鏡面対称となる位置に直線を外挿することによって、大まかな中心位置を把握することができる。
中心位置の精密な補正は、ロンチグラムが中心位置からずれることによってパターンに歪みが出ることを利用する。図14(a)〜(e)は、図13中にa〜eで示す部分の1回フーリエ変換像を示している。図14(a)はロンチグラムの中心部分の1回フーリエ変換像であり、この1回フーリエ変換像では縦中心線及び横中心線に対しパターンが対称となっている。一方、図14(b)〜(e)の1回フーリエ変換像では、縦中心線又は横中心線に対しパターン(特に、輝点の周囲の輝度分布)が対称となっていない。この歪みを補正するように中心位置を決定する。この中心位置合わせは作業者が手動で行ってもよく、1回フーリエ変換像を図1の制御部10で画像認識処理して、その結果を結像系レンズ22の偏向コイルにフィードバックすることにより自動的に行ってもよい。収束レンズ絞り13を挿入するときには、収束レンズ絞り13の中心とロンチグラムの中心とが整合するように配置する。
以下、本実施形態に係る非点収差の補正方法について、図15のフローチャート及び図1のブロック図を参照して説明する。
まず、ステップS11において、電子線の入射電子条件を設定する。電子線の入射電子条件は、電子銃11による加速電圧、収束レンズ12a,12bのレンズ条件及び収束レンズ絞り13によって行う。ここでは、例えば加速電圧を200kVとし、収束半角度αが150mrad以上となるように、収束レンズ12a,12bのレンズ条件及び収束レンズ絞り13の絞り径を調整する。
次に、ステップS12に移行し、結晶構造及び格子定数が既知の単結晶試料20を電子線の軌道内に挿入する。単結晶試料20としては、前述したように、正方晶又は立方晶の単結晶(例えば、SrTiO3単結晶又はSi単結晶など)を使用することが好ましい。また、単結晶試料20の厚さは、100nm以下とする。
次に、ステップS13に移行し、電子線の入射方位の調整を行う。すなわち、収束させた電子線を単結晶試料20に対して任意の結晶晶帯軸で入射するように、試料20の傾斜角度を調整する。
その後、ステップS14において、対物レンズ18のフォーカスを調整する。ここでは、焦点ずれ量を−300nmに設定するものとする。対物レンズ18のフォーカスは、励磁値の調整により行ってもよく、試料20の位置の調整により行ってもよい。
このようにして電子線装置の各部を調整した後、試料20に電子線を照射すると、試料20を回折せずに透過した電子波と試料20により回折した電子波との干渉によりロンチグラムが出現する。その後、ステップS15において、このロンチグラムを撮像部25により撮像し、画像データとして取り込む。
次に、ステップS16において、制御部10によりロンチグラムを画像処理し、ロンチグラムの中心位置を決定する。その後、ステップS17に移行し、制御部10によりロンチグラムを2回フーリエ変換して、2回フーリエ変換像(パワースペクトラム)を取得する。次いで、ステップS18に移行し、2回フーリエ変換像を用いて画像のスケールのキャリブレーションを行う。
次に、ステップS19に移行し、制御部10によりロンチグラムを1回フーリエ変換して、1回フーリエ変換像を取得する。その後、ステップS20に移行し、制御部10において1回フーリエ変換像の画像認識処理を実行し、基準線(結晶軸方向)と輝点とのずれ量を算出する。そして、ステップS21において、基準線と輝点とのずれ量から非点収差係数を算出する。
次に、ステップS22に移行し、ステップS21で算出した非点収差係数に基づき、球面収差・非点収差補正部16の非点収差補正用偏向コイルの磁場を調整する。その後、ステップS23に移行して、電子線プローブの形状を確認し、非点収差の有無を判定する。ステップS23で非点収差が残っていると判定した場合は、ステップS21に戻り、非点収差係数を補正する。このようにして、ステップS23において非点収差がないと判定されるまで、ステップS21〜S23を繰り返す。ステップS23において非点収差がないと判定されると、電磁レンズの非点収差の補正が完了する。なお、ステップS22の偏向コイルの調整及びステップS23の電子線プローブの形状の確認は作業者が行ってもよく、制御部10により自動的に行うようにしてもよい。
図16(a)はSrTiO3単結晶の[022]方向のロンチグラム、図16(b)は図16(a)のロンチグラムをフーリエ変換(FFT)して得た1回フーリエ変換像、図16(c)は非点収差補正後の1回フーリエ変換像を示している。また、図17(a)はSrTiO3単結晶の[002]方向のロンチグラム、図17(b)は図17(a)のロンチグラムをフーリエ変換(FFT)して得た1回フーリエ変換像、図17(c)は非点収差補正後の1回フーリエ変換像を示している。なお、図16(b)、図17(b)において、白の破線は輝点が並ぶ方向を示している。また、図16(b),(c)及び図17(b),(c)において、黒の実線は結晶軸の方向を示している。
これらの図16,図17に示すように、1回フーリエ変換像における輝点の並ぶ方向と結晶軸の方向とのずれ量を検出して非点収差係数を算出し、その結果に応じて非点収差補正用の偏向コイルを制御することにより、電磁レンズの非点収差が補正される。
図18(a)は非点収差補正前のSrTiO3単結晶の高分解能暗視野STEM像を示し、図18(b)は非点収差補正後のSrTiO3単結晶の高分解能暗視野STEM像を示している。これらの図18(a),(b)に示すように、電磁レンズ(対物レンズ)の非点収差を補正する前は原子が横に伸びた像として観察されるが、非点収差補正後は原子が点となって観察される。このことから、電磁レンズの非点収差を高精度に補正することにより、電子顕微鏡の場合はより一層の高空間分解能観察や高感度分析が可能になり、電子線リソグラフ装置の場合はより一層高精度な加工が可能になることがわかる。
以下、本発明の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
(付記1)電磁レンズを透過した電子線を結晶構造及び格子定数が既知の単結晶試料に入射して、
前記試料の裏面側に配置した撮像部によりロンチグラムの画像データを取得し、
制御部において、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して1回フーリエ変換像を作成し、前記1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量を測定し、その測定結果に基づいて前記電磁レンズの非点収差を算出すること
を特徴とする電磁レンズの非点収差測定方法。
(付記2)前記試料への前記電子線の入射半角度を150mrad以上とすることを特徴とする付記1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
(付記3)前記試料に対する前記電磁レンズの焦点ずれ量を−300nm以上に設定することを特徴とする付記1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
(付記4)前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データを2回フーリエ変換して得た2回フーリエ変換像を用いて画像のスケールのキャリブレーションを行うことを特徴とする付記1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
(付記5)前記試料として、Si単結晶又はSrTiO3単結晶を使用することを特徴とする付記1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
(付記6)前記試料の厚さを100nm以下とすることを特徴とする付記1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
(付記7)電子線を発生する電子線発生部と、
前記電子線発生部で発生した電子線を収束する収束レンズと、
試料を搭載する試料搭載部と、
前記収束レンズと前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズと、
前記試料搭載部に搭載された試料に前記電磁レンズを透過した電子線を入射して得られるロンチグラムを撮像する撮像部と、
前記電子線発生部、前記収束レンズ及び前記電磁レンズを制御するとともに、前記撮像部から前記ロンチグラムの画像データを取得する制御部とを有し、
前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して得られる1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量から前記電磁レンズの非点収差量を算出することを特徴とする電磁レンズの非点収差測定装置。
(付記8)前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データを2回フーリエ変換して得た2回フーリエ変換像を用いて画像のスケールのキャリブレーションを行うことを特徴とする付記7に記載の電磁レンズの非点収差測定装置。
(付記9)前記試料搭載部と前記撮像部との間に偏向コイルを有し、
前記制御部は前記ロンチグラムを画像処理して中心位置を検出し、その検出結果に応じて前記偏向コイルを制御することを特徴とする付記7に記載の電磁レンズの非点収差測定装置。
(付記10)前記ロンチグラムの中心位置は、ロンチグラムの1回フーリエ変換像の対称性により判断することを特徴とする付記9に記載の電磁レンズの非点収差測定装置。
(付記11)電磁レンズを透過した電子線を試料に入射し、撮像部によりロンチグラムを撮像する工程と、
前記撮像部で撮像した前記ロンチグラムの画像データを制御部においてフーリエ変換し1回フーリエ変換像を取得する工程と、
前記制御部において、前記1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量を検出し、その検出結果から前記電磁レンズの非点収差量を算出する工程と、
前記非点収差量の算出結果に基づいて非点収差補正部を制御し、前記電磁レンズの非点収差を補正する工程と
を有することを特徴とする電磁レンズの非点収差補正方法。
(付記12)前記非点収差補正部の制御は、前記制御部によって自動的に行うことを特徴する付記11に記載の電磁レンズの非点収差補正方法。
(付記13)前記非点収差補正部の制御は、作業者によって行うことを特徴とする付記11に記載の電磁レンズの非点収差補正方法。
(付記14)前記1回フーリエ変換像を取得する工程の前に、前記ロンチグラムの画像データを用いて画像のスケールのキャリブレーションを行う工程を有することを特徴とする付記11に記載の電磁レンズの非点収差補正方法。
(付記15)前記画像のスケールのキャリブレーションは、前記ロンチグラムの画像データを2回フーリエ変換して得た2回フーリエ変換像を用いて行うことを特徴とする付記14に記載の電磁レンズの非点収差補正方法。
(付記16)前記試料として、Si単結晶又はSrTiO3単結晶を使用することを特徴とする付記11に記載の電磁レンズの非点収差補正方法。
(付記17)電子線を発生する電子線発生部と、
前記電子線発生部で発生した電子線を収束する収束レンズと、
試料を搭載する試料搭載部と、
前記収束レンズと前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズと、
非点収差補正部と、
前記試料搭載部に搭載された試料に前記電磁レンズを透過した電子線を入射して得られるロンチグラムを撮像する撮像部と、
前記電子線発生部、前記収束レンズ、前記電磁レンズ及び前記非点収差補正部を制御するとともに、前記撮像部から前記ロンチグラムの画像データを取得する制御部とを有し、
前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して得られる1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量から前記電磁レンズの非点収差量を算出し、その結果に基づいて前記非点収差補正部を制御し、前記電磁レンズの非点収差を補正することを特徴とする電子線装置。
(付記18)物質の高空間分解能観察又は高感度分析に使用することを特徴とする付記17に記載の電子線装置。
(付記19)電子線リソグラフィーに使用することを特徴とする付記17に記載の電子線装置。
図1は、本発明の実施形態に係る電磁レンズの非点収差補正機能を備えた電子線装置を示す模式図である。 図2は、電磁レンズ通過時の電子の軌道を示す模式図である。 図3(a),(b)は、非点収差の補正に用いる偏向コイルの原理を示す図である。 図4は、ロンチグラムの原理を示す模式図である。 図5(a)は試料としてSrTiO3(100)単結晶を用いたときのロンチグラム、図5(b)は試料としてアモルファスを用いたときのロンチグラムである。 図6(a)はX方向の非点収差を有する電磁レンズを用いた場合のアモルファス試料のロンチグラム、図6(b)は非点収差がない電磁レンズを用いた場合のアモルファス試料のロンチグラム、図6(c)はY方向の非点収差を有する電磁レンズを用いた場合のアモルファス試料のロンチグラムである。 図7(a)は非点収差がない電磁レンズを用いて取得したSrTiO3(100)単結晶のロンチグラム、図7(b)は図7(a)のロンチグラムをフーリエ変換して得た画像(1回フーリエ変換像)、図7(c)は図7(b)の画像を更にフーリエ変換して得た画像(2回フーリエ変換像)である。 図8(a)は非点収差がある電磁レンズを用いて取得したSrTiO3(100)単結晶のロンチグラム、図8(b)は図8(a)のロンチグラムをフーリエ変換して得た画像(1回フーリエ変換像)、図8(c)は図8(b)の画像を更にフーリエ変換して得た画像(2回フーリエ変換像)である。 図9(a)はC1,2a=0nm、C1,2b=0nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[100]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図9(b)はC1,2a=20nm、C1,2b=0nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[100]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図9(c)はC1,2a=20nm、C1,2b=20nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[100]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図9(d)は図9(a)のロンチグラムの1回フーリエ変換像、図9(e)は図9(b)のロンチグラムの1回フーリエ変換像、図9(f)は図9(c)のロンチグラムの1回フーリエ変換像である。 図10は、非点収差係数C1,2bを0,20,40nmとし、非点収差係数C1,2aを変化させたときの基準線からのずれをプロットした結果を示す図である。 図11(a)はC1,2a=0nm、C1,2b=0nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[110]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図11(b)はC1,2a=20nm、C1,2b=0nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[110]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像)、図11(c)はC1,2a=20nm、C1,2b=20nmの電磁レンズを用いたときのSrTiO3単結晶の[110]方向ロンチグラム(非点収差シミュレーション像),図11(d)は図11(a)のロンチグラムの1回フーリエ変換像、図11(e)は図11(b)のロンチグラムの1回フーリエ変換像、図11(f)は図11(c)のロンチグラムの1回フーリエ変換像である。 図12は、非点収差係数C1,2bを0,20,40nmとし、非点収差係数C1,2aを変化させたときの基準線からのずれをプロットした結果を示す図である。 図13は、ロンチグラムの中心位置決定方法を示す図(その1)である。 図14は、ロンチグラムの中心位置決定方法を示す図(その2)である。 図15は、本発明の実施形態に係る非点収差の補正方法を示すフローチャートである。 図16(a)はSrTiO3単結晶の[022]方向のロンチグラム、図16(b)は図16(a)のロンチグラムをフーリエ変換(FFT)して得た1回フーリエ変換像、図16(c)は非点収差補正後の1回フーリエ変換像である。 図17(a)はSrTiO3単結晶の[002]方向のロンチグラム、図17(b)は図17(a)のロンチグラムをフーリエ変換(FFT)して得た1回フーリエ変換像、図17(c)は非点収差補正後の1回フーリエ変換像である。 図18(a)は非点収差補正前のSrTiO3単結晶の高分解能暗視野STEM像、図18(b)は非点収差補正後のSrTiO3単結晶の高分解能暗視野STEM像である。
符号の説明
10…制御部、
11…電子銃、
12a,12b…収束レンズ、
13…収束レンズ絞り、
14,23…偏向コイル、
15…走査コイル、
16…球面収差・非点収差補正部、
17…電子検出器、
18…対物レンズ、
20…試料、
21…試料搭載部、
22…結像系レンズ、
24…STEM検出部、
25…撮像部、
30…電磁レンズ、
31a,31b…4重極子。

Claims (10)

  1. 電磁レンズを透過した電子線を結晶構造及び格子定数が既知の単結晶試料に入射して、
    前記試料の裏面側に配置した撮像部によりロンチグラムの画像データを取得し、
    制御部において、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して1回フーリエ変換像を作成し、前記1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量を測定し、その測定結果に基づいて前記電磁レンズの非点収差を算出すること
    を特徴とする電磁レンズの非点収差測定方法。
  2. 前記試料への前記電子線の入射半角度を150mrad以上とすることを特徴とする請求項1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
  3. 前記試料に対する前記電磁レンズの焦点ずれ量を−300nm以上に設定することを特徴とする請求項1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
  4. 前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データを2回フーリエ変換して得た2回フーリエ変換像を用いて画像のスケールのキャリブレーションを行うことを特徴とする請求項1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
  5. 前記試料として、Si単結晶又はSrTiO3単結晶を使用することを特徴とする請求項1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
  6. 前記試料の厚さを100nm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の電磁レンズの非点収差測定方法。
  7. 電子線を発生する電子線発生部と、
    前記電子線発生部で発生した電子線を収束する収束レンズと、
    試料を搭載する試料搭載部と、
    前記収束レンズと前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズと、
    前記試料搭載部に搭載された試料に前記電磁レンズを透過した電子線を入射して得られるロンチグラムを撮像する撮像部と、
    前記電子線発生部、前記収束レンズ及び前記電磁レンズを制御するとともに、前記撮像部から前記ロンチグラムの画像データを取得する制御部とを有し、
    前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して得られる1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量から前記電磁レンズの非点収差量を算出することを特徴とする電磁レンズの非点収差測定装置。
  8. 電磁レンズを透過した電子線を試料に入射し、撮像部によりロンチグラムを撮像する工程と、
    前記撮像部で撮像した前記ロンチグラムの画像データを制御部においてフーリエ変換し1回フーリエ変換像を取得する工程と、
    前記制御部において、前記1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量を検出し、その検出結果から前記電磁レンズの非点収差量を算出する工程と、
    前記非点収差量の算出結果に基づいて非点収差補正部を制御し、前記電磁レンズの非点収差を補正する工程と
    を有することを特徴とする電磁レンズの非点収差補正方法。
  9. 前記非点収差補正部の制御は、前記制御部によって自動的に行うことを特徴する請求項8に記載の電磁レンズの非点収差補正方法。
  10. 電子線を発生する電子線発生部と、
    前記電子線発生部で発生した電子線を収束する収束レンズと、
    試料を搭載する試料搭載部と、
    前記収束レンズと前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズと、
    非点収差補正部と、
    前記試料搭載部に搭載された試料に前記電磁レンズを透過した電子線を入射して得られるロンチグラムを撮像する撮像部と、
    前記電子線発生部、前記収束レンズ、前記電磁レンズ及び前記非点収差補正部を制御するとともに、前記撮像部から前記ロンチグラムの画像データを取得する制御部とを有し、
    前記制御部は、前記ロンチグラムの画像データをフーリエ変換して得られる1回フーリエ変換像の輝点の位置と結晶軸方向とのずれ量から前記電磁レンズの非点収差量を算出し、その結果に基づいて前記非点収差補正部を制御し、前記電磁レンズの非点収差を補正することを特徴とする電子線装置。
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