以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1、実施例2および実施例3に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたパラレルハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。以下、図1に基づいて、駆動系および制御系の構成を説明する。
実施例1のパラレルハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、ファイナルギヤFGと、左駆動輪LTと、右駆動輪RTと、を備えている。この駆動系では、エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMGが駆動源となる。
実施例1のハイブリッド駆動系は、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロール発進モード(以下、「WSCモード」という。)等の走行モードを有する。
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、モータアシスト走行モード・走行発電モード・エンジン走行モードの何れかにより走行するモードである。前記「WSCモード」は、「HEVモード」からのP、N→Dセレクト発進時、または、「EVモード」や「HEVモード」からのDレンジ発進時等において、モータ/ジェネレータMGを回転数制御することで第2クラッチCL2のスリップ締結状態を維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態や運転者操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら発進するモードである。なお、「WSC」とは「Wet Start clutch」の略である。
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の希薄燃焼可能なエンジンであり、エンジンコントローラ17からのエンジン制御指令に基づいて、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGとの間の位置に介装される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて常時締結(ノーマルクローズ)の乾式クラッチが用いられる。第1クラッチCL1は、第1クラッチコントローラ16からの第1クラッチ制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット22により作り出された第1クラッチ制御油圧により、エンジンEng〜モータ/ジェネレータMG間の締結(油圧OFF)/半締結(スリップ締結)/開放(油圧ON)を行なう。この第1クラッチCL1が完全締結状態ならモータトルク+エンジントルクが第2クラッチCL2(自動変速機AT)へと伝達され、開放状態ならモータトルクのみが、第2クラッチCL2(自動変速機AT)へと伝達される。なお、半締結/開放の制御は、油圧アクチュエータに対するストローク制御にて行われる。
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、モータコントローラ18からの制御指令に基づいて、インバータ8により作り出された三相交流を印加することにより駆動トルク制御や回転数制御されるとともに、回生ブレーキ制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリー9からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもでき(以下、この状態を「力行」という)、かつロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリー9を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」という)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータは、ダンパーを介して自動変速機ATの変速機入力軸に連結されている。
前記第2クラッチCL2は、ノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキであり、クラッチ油圧(押付力)に応じて伝達トルク(クラッチトルク容量)が発生する。この第2クラッチCL2は、変速機コントローラ15からの第2クラッチ制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット23により作り出された制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。なお、上述した第1クラッチ油圧ユニット22と第2クラッチ油圧ユニット23とは、自動変速機ATに付設されるAT油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
前記自動変速機ATは、例えば、前進5速/後退1速や前進7速/後退1速等の有段階の変速段を、車速VSPやアクセル開度APO等に応じて自動的に切り換える有段変速機である。そして、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択している。なお、自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右駆動輪LT、RTに連結されている。このため、エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMG(第1クラッチCL1が締結されている場合)から出力されたトルクは、自動変速機AT等を解して左右駆動輪LT、RTへと伝達される。
なお、第2クラッチCL2としては、独立のクラッチをモータ/ジェネレータMGと自動変速機ATの間の位置に設定してもよく、自動変速機ATと左右駆動輪LT、RTの間の位置に設定してもよい。また、自動変速機としては、上記した自動変速機AT以外に、無段変速機CVTであってもよく、実施例1に限定されるものではない。
実施例1のパラレルハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、モータ回転数センサ6(=自動変速機出力側回転数センサ)と、第2クラッチ出力回転数センサ7(=自動変速機入力側回転数センサ)と、インバータ8と、バッテリー9と、アクセルセンサ(アクセルポジションセンサ)10と、エンジン回転数センサ11と、油温センサ(AT油温センサ)12と、ストロークセンサ(ストローク位置センサ)13と、統合コントローラ14と、変速機コントローラ15と、第1クラッチコントローラ16と、エンジンコントローラ17と、モータコントローラ18と、バッテリーコントローラ19と、ブレーキセンサ20と、車速センサ21と、第1クラッチ油圧ユニット22と、第2クラッチ油圧ユニット23と、エアコンコントローラ24と、空調設定スイッチ25と、空調システム26と、を備えている。この各センサ(6、7、10、11、12、13、20、21)は、車両情報取得手段として機能する。なお、統合コントローラ14と、変速機コントローラ15と、第1クラッチコントローラ16と、エンジンコントローラ17と、モータコントローラ18と、バッテリーコントローラ19と、エアコンコントローラ24と、は、情報交換が互いに可能なCAN通信線を介して接続されている。
前記インバータ8は、直流/交流の変換を行い、モータ/ジェネレータMGの駆動電流を生成する高電圧インバータである。バッテリー9は、モータ/ジェネレータMGからの回生エネルギーを、インバータ8を介して蓄積する高電圧バッテリーである。
前記統合コントローラ14は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ6、第2クラッチ出力回転数センサ7、アクセルセンサ10、エンジン回転数センサ11、油温センサ(AT油温センサ)12、ストロークセンサ(ストローク位置センサ)13、ブレーキセンサ20、車速センサ21、空調設定スイッチ25、空調システム26等からの必要情報、およびCAN通信線を介して情報を入力する。そして、統合コントローラ14は、エンジンコントローラ17へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ18へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ16へ目標CL1トルク指令、変速機コントローラ15へ目標CL2トルク指令、図示を略すブレーキコントローラへ回生協調制御指令、エアコンコントローラ24へ空気調節指令等を出力する。また、統合コントローラ14は、記憶部14aを有しており、演算した目標駆動トルク、指令値等や、取得した情報等を、記憶部14aに適宜格納し、記憶部14aから適宜取り出す。
前記変速機コントローラ15は、モータ回転数センサ6と、第2クラッチ出力回転数センサ7と、アクセルセンサ10と、車速センサ21と、他のセンサ類(インヒビタースイッチ等)からの情報を入力する。そして、Dレンジが選択されて走行している場合、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。なお、シフトマップとは、アクセル開度と車速に応じてアップシフト線とダウンシフト線を書き込んだマップをいう。上記自動変速制御に加えて、統合コントローラ14から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令を、AT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット23に出力する第2クラッチ制御を行う。また、変速機コントローラ15は、必要に応じて自動変速機ATの運転状態に関するデータを統合コントローラ14に出力する。このため、変速機コントローラ15は、情報取得手段として機能する。
前記第1クラッチコントローラ16は、第1クラッチCL1の油圧アクチュエータのピストン(図示せず)のストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ13からのセンサ情報と、統合コントローラ14からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報とを入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令(クラッチ油圧(電流)指令値)を、AT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット22に出力することにより、第1クラッチCL1を制御する(クラッチ制御手段)。
前記エンジンコントローラ17は、エンジン回転数センサ11からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ14からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、統合コントローラ14からのエンジントルク指令値を達成するように、エンジン動作点を制御する指令をエンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力し、エンジントルク制御を行なう。
前記モータコントローラ18は、統合コントローラ14からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報(例えば、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置の情報)を入力する。モータコントローラ18は、統合コントローラ14からのモータトルク指令値やモータ回転数指令値を達成するように、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点を制御する指令をインバータ8(高電圧インバータ)へ出力して、モータ/ジェネレータMGの制御を行なう。このため、統合コントローラ14は、変速機コントローラ15、第1クラッチコントローラ16、エンジンコントローラ17、モータコントローラ18およびバッテリーコントローラ19を適宜制御することにより、駆動源制御手段として機能する。
前記バッテリーコントローラ19は、バッテリー9の充電状態(バッテリSOC)を管理し、その情報を統合コントローラ14へと送信する。このため、バッテリーコントローラ19は、情報取得手段として機能する。
前記エアコンコントローラ24は、統合コントローラ14からの空気調節指令、各センサ値、ブロアファン31の制御状態、図示は略すが、モードドア制御状態、ミックスドア制御状態、開閉バルブの制御状態、電動ポンプの制御状態、内外気ドア制御状態、コンプレッサの制御状態、等の各データを入力する。エアコンコントローラ24は、統合コントローラ14からの空気調節指令を達成するように、車室内の温度を調節可能に構成された空調システム26を統合的に制御、すなわちブロアファン31の制御、図示は略すが、モードドア制御、ミックスドア制御、開閉バルブの制御、電動ポンプの制御、内外気ドア制御、コンプレッサの制御等を行なう。
ここで、後述するように、統合コントローラ14は、適宜エンジンクランキングまたはエンジンファイアリングを行う暖房アシスト制御処理を実行させることから、合わせてエアコンコントローラ24を適宜制御することにより、空調システム26の動作を制御する空調制御手段として機能する。
この空調システム26では、エンジンEngと、そのウォータージャケットに冷却水配管を介して連通するヒータコア32と、の間で、図示を略す電動ポンプの作用により、冷却水の循環が行われている。このため、ヒータコア32では、エンジンEngを冷却することにより昇温された冷却水から取得した熱を利用して、空調ダクト33内に吸引された空気を暖めることができる。このヒータコア32により昇温された空気は、ブロアファン31による空気の送入作用により、車室に設けられた空調吹出口34から車室内に吹き出される。空調システム26は、車室の暖房の調節のために、エンジンEngとヒータコア32とを連通する冷却水配管に設けられた冷却水温センサ35と、空調ダクト33内でヒータコア前に設けられたヒータコア前温度センサ36と、車室に設けられた室温センサ37と、を有し、これらのセンサによる検出値が適宜エアコンコントローラ24へと出力される。
空調設定スイッチ25は、乗員が空調システム26の運転モード、温度設定、風量設定等を行うべく操作されるものであり、例えばコンソールパネルやハンドル等に適宜設けられている。この空調設定スイッチ25に為された操作の情報は、統合コントローラ14へと送信される。
図2は、統合コントローラ14にて実行される実施例1の暖房アシスト制御処理におけるモード切換判断処理内容を示すフローチャートである。図3は、統合コントローラ14にて実行される実施例1の暖房アシスト制御処理におけるエンジンクランキングモードでのクランキング目標時間設定処理内容を示すフローチャートである。図4は、統合コントローラ14での暖房アシスト制御処理におけるエンジンクランキングモードでのクランキング目標時間設定処理を示す制御ブロック図である。図5は、実施例1の統合コントローラ14での単位放熱量理論値の演算に用いられる算出マップを示す図であり、ブロアファン空気量別に冷却水量に対する単位放熱量理論値の関係を示すグラフである。図6は、統合コントローラ14にて実行される実施例1の暖房アシスト制御処理におけるエンジンクランキング実行処理内容を示すフローチャートである。この暖房アシスト制御処理(図2、図3および図6のフローチャート)は、暖房以外の要求によりエンジンEngを起動(インジェクタ(図示せず)を介して燃料を噴射させ、その燃料の燃焼によりエンジンEngを起動)させる必要がない場面であって、暖房要求が出されている場面で実行される。
先ず、実施例1の統合コントローラ14による暖房アシスト制御処理の基本的な概念について説明する。空調システム26では、上述したように、エンジンEngを冷却するための冷却水を介して、エンジンEngの熱を利用して暖房を行うものであることから、暖房により車室内を暖めるために設定される温度(目標温度)(以下、要求された暖房効果とも言う)に対して、冷却水の温度すなわちエンジンEngの温度がある程度高くなっている必要がある。
ここで、冷却水の温度が低い場合、図示は略すがインジェクタを介して燃料を噴射させ、その燃料の燃焼によりエンジンEngを起動(以下、エンジンファイアリングともいう)させれば、冷却水の温度を上昇させることができるが、燃料消費量の増加を招くすなわち実用燃費を低下させてしまう。このため、燃料の燃焼を伴わずにエンジンEng(その内燃機関の少なくとも一部)を駆動させる(以下、エンジンクランキングともいう)ことにより、冷却水の温度を上昇させるもしくは温度を維持させる。これは、エンジンEngでは、燃料の燃焼を伴わない駆動であっても、例えば、クランキングシャフトまたはコネクティングロッドが回転駆動されたり、ピストンが往復運動されたりすると、それらの摩擦(フリクション)により内燃機関が発熱することによる。加えて、燃料の燃焼を伴わない駆動によりピストンが往復運動されると、例えば、スロットルバルブ、吸気管、吸気マニホールドおよび吸気バルブ等の吸気系を介して空気が吸入され得るため、圧縮工程に係る動作により、その吸入された空気が圧縮され、その圧縮により生じた熱により内燃機関が発熱することにもよる。このようにエンジンクランキングを行うことにより、エンジンEngが起動されて(エンジンファイアリングにより)十分に暖まっていることを前提として搭載された既存の空調システム26をそのまま利用することができる。
このエンジンクランキングは、ハイブリット車両の駆動源において、燃料の燃焼を伴うエンジンEngの起動を行うことなく、第1クラッチCL1を締結(走行状況に応じて適宜半締結することも含む)しつつモータ/ジェネレータMGをバッテリー9からの電力の供給により回転駆動させてエンジンEngを駆動することにより行う。本発明に係る暖房アシスト制御処理では、エンジンクランキングを実行する時間(継続時間)を設定して、その時間内でエンジンクランキングを行う。これにより、要求された暖房効果を確保しつつ、実用燃費の悪化を抑制することすなわち全体での燃料消費量を効果的に低減することができる。
以下、実施例1の統合コントローラ14による暖房アシスト制御処理について、図2、図3、図6のフローチャートを用いて説明する。先ず、モード切換判断処理内容を示す図2のフローチャートの各ステップについて説明する。
この図2のフローチャートは、暖房アシスト制御処理における最初の処理を行うものであることから、空調設定スイッチ25が所定操作されて暖房運転モードが選択されて目標温度が設定されると実行される。図2のフローチャートでは、統合コントローラ14による暖房アシスト制御処理の最初の段階として、暖房をアシストするための熱源の選択処理を行う。
ステップS1では、ヒータコア前温度Trを取得して、ステップS2へ進む。このステップS1では、ヒータコア前温度センサ36(図1参照)からの出力値に基づいてヒータコア前温度Tr(℃)を取得し、記憶部14aに格納(記憶)する。
ステップS2では、ステップS1でのヒータコア前温度Trの取得に続き、そのヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さいか否かを判定し、Yesの場合はステップS3へ進み、Noの場合はステップS1へ戻る。このステップS2では、記憶部14aに予め格納されたヒータ下限温度Trl(℃)とステップS1で取得したヒータコア前温度Tr(℃)とを比較し、ヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さい場合、エンジンEngを発熱させる必要があると判断してステップS3へ進み、ヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trl以上である場合、エンジンEngを発熱させる必要がないと判断してステップS1へ戻る。このヒータ下限温度Trlは、要求された暖房効果を確保するため(車室内を設定された目標温度とするため)に必要とされるヒータコア前温度を示すものであり、要求された暖房効果に応じて変化する。ヒータ下限温度Trlは、要求された暖房効果を複数の程度に区分けし、その区分け毎に設定された値が記憶部14aに予め格納されているものであってもよく、暖房性能とヒータ下限温度との関係を示す算出マップ(テーブル)を記憶部14aに格納し、当該算出マップを用いて演算するものであってもよい。
ステップS3では、ステップS2でのヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さいとの判断に続き、バッテリー9の充電状態(バッテリSOC[%])(以下、バッテリSOCともいう)を読み込んで、ステップS4へ進む。このステップS3では、バッテリーコントローラ19(図1参照)から送信された情報に基づいてバッテリSOCを取得し、記憶部14aに格納(記憶)する。
ステップS4では、ステップS3でのバッテリSOCの読み込みに続き、そのバッテリSOCがバッテリSOC下限値よりも大きいか否かを判定し、Yesの場合はステップS5へ進み、Noの場合はステップS7へ進む。このステップS4では、記憶部14aに予め格納されたバッテリSOC下限値と、ステップS3で取得したバッテリSOCとを比較する。このバッテリSOC下限値は、エンジンクランキングを実行するのに十分な充電量を確保することができる値に設定される。このバッテリSOC下限値は、走行している道路環境に応じて変化させる(例えば、充電が見込める状況では小さな値とする等)ものであってもよい。このため、ステップS4では、バッテリー9の充電状態(バッテリSOC[%])から見て、エンジンクランキングが実行可能であるか否かを判断している。
ステップS5では、ステップS4でのバッテリSOCがバッテリSOC下限値よりも大きいとの判断に続き、冷却水温Twを読み込んで、ステップS6へ進む。このステップS5では、冷却水温センサ35(図1参照)からの出力値に基づいて冷却水温Tw(℃)を取得し、記憶部14aに格納(記憶)する。
ステップS6では、ステップS5での冷却水温Twの読み込みに続き、その冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きいか否かを判定し、Yesの場合はクランキング目標時間設定処理(図3のフローチャート)へと移行し、Noの場合はステップS7へ進む。このステップS6では、記憶部14aに予め格納された水温下限値Twl(℃)と、ステップS5で取得した冷却水温Tw(℃)とを比較する。この水温下限値Twlは、エンジンクランキングによりエンジンEngを暖めるすなわち冷却水温Twを上昇させても、モータ/ジェネレータMGに過剰な負荷が加わることを防止する観点、そのモータ/ジェネレータMGの回転駆動のために過剰に電力を消費することを防止する観点、および速やかな暖房を可能とする観点等から設定される。この水温下限値Twlは、要求された暖房効果に応じて変化させる(例えば、外気温もしくは現在の室温と、設定された目標温度との差が大きな場合は、大きな値とする等)ものであってもよい。このため、ステップS6では、エンジンEngの冷却水の水温から見て、エンジンクランキングを実行すべきかエンジンファイアリングを実行すべきかを判断している。このステップS6において、冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きいと判断すると、エンジンクランキングを実行すべくクランキング目標時間設定するために、図3のフローチャートへと進む。
ステップS7では、ステップS6での冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きくないとの判断に続き、エンジンファイアリングを実行する、すなわちインジェクタ(図示せず)を介して燃料を噴射させ、その燃料の燃焼によりエンジンEngを起動させて、要求された暖房効果が得られるとエンジンファイアリングを終了して暖房アシスト制御処理を終了する。
次に、エンジンクランキングの実行のためのクランキング目標時間設定処理を示す図3のフローチャートの各ステップについて図4および図5を用いて説明する。
ステップS11では、クランキング目標回転数Neを取得して、ステップS12へ進む。このクランキング目標回転数Ne(rpm)は、エンジンクランキングによるエンジンEngの温度上昇度、モータ/ジェネレータMGの負荷、そのための電力消費量、速やかな暖房の実現等を考慮して予め設定され、記憶部14aに格納されている。
ステップS12では、ステップS11でのクランキング目標回転数Neの取得に続き、エンジン冷却水量Qwを演算して、ステップS13へ進む。このステップS12では、冷却水量演算部41において、ステップS11で取得したクランキング目標回転数Ne(rpm)に、回転数水量比例係数k2((kg/sec)/rpm)を乗算することによりエンジン冷却水量Qw(kg/sec)を演算する[Qw=k2・Ne]。この回転数水量比例係数k2は、冷却水配管に設けられた電動ポンプ(図示せず)におけるエンジンEngの回転数に対する吐出量(水を送り出すことができる量)の関係を表す係数である。この回転数水量比例係数k2は、例えば、車種毎に決まることとなり、予め記憶部14aに格納されている。このことから、エンジン冷却水量Qwとは、単位時間辺りにヒータコア32内へと送り込まれる冷却水の量である。ステップS12では、演算したエンジン冷却水量Qwを記憶部14aに格納する。
ステップS13では、ステップS12でのエンジン冷却水量Qwの演算に続き、ブロアファン空気量Grを取得して、ステップS14へ進む。このステップS13では、統合コントローラ14からの空気調節指令に応じて駆動制御された空調システム26におけるブロアファン31(図1参照)が、単位時間辺りにヒータコア32へと送り出される空気量であるブロアファン空気量Gr(kg/sec)を、エアコンコントローラ24からの駆動指令とブロアファン31の規格値とに基づいて演算することにより取得する。ステップS13では、演算したブロアファン空気量Grを記憶部14aに格納する。
ステップS14では、ステップS13でのブロアファン空気量Grの取得に続き、ヒータコア32の単位放熱量理論値Qdgを演算して、ステップS15へ進む。このステップS14では、単位放熱量理論値演算部42において、ヒータコア32における単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ(テーブル)(図5参照)に基づいて、単位放熱量理論値Qdgの演算を行う。すなわち、ステップS14では、単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ(図5参照)から、ステップS12で演算したエンジン冷却水量QwとステップS13で取得したブロアファン空気量Grとを引数に、単位放熱量理論値Qdgを演算する。この算出マップでは、図5に示すように、エンジン冷却水量Qwに対する単位放熱量理論値Qdgの関係が、ブロアファン空気量Gr(kg/sec)の値に応じて変化することから、予めブロアファン空気量Grとして複数の値(特性線)が設定されかつその設定された各値(特性線)(ブロアファン空気量Gr)におけるエンジン冷却水量Qwに対する単位放熱量理論値Qdgの関係を示す特性線が、設定されている。この単位放熱量理論値Qdgとは、ヒータコア32を理想的熱源として考えた際の理論上の単位時間辺りの放熱量を示すものである。ステップS14では、演算した単位放熱量理論値Qdgを記憶部14aに格納する。
ステップS15では、ステップS14での単位放熱量理論値Qdgの演算に続き、単位放熱量実機値Qdを演算して、ステップS16へ進む。このステップS15では、単位放熱量実機値演算部43において、冷却水温Tw(℃)からヒータコア前温度Tr(℃)を減算した値を、単体温度差条件ΔTg(℃)で除算し、その値にステップS14で演算した単位放熱量理論値Qdgを乗算することにより、単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)を演算する[Qd=Qdg・((Tw-Tr)/ΔTg)]。ここで、単体温度差条件ΔTgとは、実際に搭載された空調システム26において、ブロアファン31により送り出された空気をヒータコア32(その内部に送られた冷却水)が暖める際の、冷却水温Twとヒータコア前温度Trとの温度差に対する熱損失を示すものである。このことから、単位放熱量実機値Qdとは、実際に搭載された空調システム26におけるヒータコア32の単位時間辺りの放熱量を示すものである。ステップS15では、演算した単位放熱量実機値Qdを記憶部14aに格納する。なお、冷却水温Twとヒータコア前温度Trとは、このクランキング目標時間設定処理(図3のフローチャート参照)に先立って実行されたモード切換判断処理を示す図2のフローチャートのステップS1およびステップS5で取得した値を用いてもよいし、このステップS15において新たに取得してもよい。このため、ステップS11からステップS15では、実際に搭載された空調システム26におけるヒータコア32の単位時間辺りの放熱量を演算する処理を行っていることとなる。
ステップS16では、ステップS15での単位放熱量実機値Qdの演算に続き、ヒータコア前目標温度Treを取得して、ステップS17へ進む。このステップS16では、統合コントローラ14からの空気調節指令に応じたヒータコア前目標温度Tre(℃)を取得し、記憶部14aに格納する。
ステップS17では、ステップS16でのヒータコア前目標温度Treの取得に続き、温度上昇代ΔTを演算して、ステップS18へ進む。このステップS17では、温度上昇代演算部44において、ヒータコア前目標温度Tre(℃)からヒータコア前温度Tr(℃)を減算することにより、温度上昇代ΔT(℃)を演算する[ΔT=Tre-Tr]。なお、ヒータコア前温度Trは、ステップS15と同様に、モード切換判断処理を示す図2のフローチャートのステップS1で取得した値を用いてもよいし、このステップS17において新たに取得してもよいし、ステップS15で取得した値を用いてもよい。ステップS17では、演算した温度上昇代ΔTを記憶部14aに格納する。
ステップS18では、ステップS17での温度上昇代ΔTの演算に続き、室内空気量Grmを取得して、ステップS19へ進む。この室内空気量Grm(kg)は、車室として設定された空間の容積に応じて予め車種毎に設定されるものであり、予め記憶部14aに格納されている。
ステップS19では、ステップS18での室内空気量Grmの取得に続き、暖房必要放熱量Qnを演算して、ステップS20へ進む。このステップS19では、暖房必要放熱量演算部45において、ステップS17で演算した温度上昇代ΔT(℃)にステップS18で取得した室内空気量Grm(kg)を乗算し、その値に空気比熱C(kcal/(kg・℃))を乗算することにより、暖房必要放熱量Qn(kcal)を演算する[Qn=C・Grm・ΔT]。この暖房必要放熱量Qnは、当該ハイブリッド車両の車室を、設定された温度まで上昇させる(暖める)ために必要な放熱量の総量である。ステップS19では、演算した暖房必要放熱量Qnを記憶部14aに格納する。このため、ステップS16からステップS19では、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために(車室を暖房するために)必要となる放熱量を演算する処理を行っていることとなる。
ステップS20では、ステップS19での暖房必要放熱量Qnの演算に続き、クランキング目標時間TMeを演算して、このフローチャートを終了する。このステップS20では、クランキング目標時間演算部46において、ステップS19で演算した暖房必要放熱量Qn(kcal)を、ステップS15で演算した単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)で、除算することにより、クランキング目標時間TMe(sec)を演算する[TMe=Qn/Qd]。ステップS20では、演算したクランキング目標時間TMeを記憶部14aに格納して、このフローチャートを終了する。このため、ステップS20では、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために必要となるエンジンクランキングの継続時間を演算する処理を行っていることとなる。
次に、エンジンクランキング実行処理を示す図6のフローチャートの各ステップについて説明する。
ステップS31では、エンジンクランキングを開始して、ステップS32へ進む。このステップS31では、燃料の燃焼を伴うエンジンEngの起動を行うことなく、第1クラッチCL1を締結(走行状況に応じて適宜半締結することも含む)しつつモータ/ジェネレータMGをバッテリー9からの電力の供給により回転駆動させてエンジンEngを駆動させて、エンジンクランキングを行う。このとき、エンジンEngにおける回転数が、予め設定されて記憶部14aに格納されたクランキング目標回転数Neとなるように、モータ/ジェネレータMG(走行中である場合は、その走行制御のために第2クラッチCL2(自動変速機AT)も)を制御する。
ステップS32では、ステップS31でのエンジンクランキングの開始に続き、クランキング実行時間カウンタTMをカウントアップ(加算演算)して、ステップS33へ進む。このステップS32では、エンジンクランキングの実行(継続)時間を計測すべく、クランキング実行時間カウンタTMをカウントアップ(加算演算)(例えば、インクリメント(TM=TM+1))する。
ステップS33では、ステップS32でのクランキング実行時間カウンタTMのカウントアップに続き、クランキング実行時間カウンタTMがクランキング目標時間TMe以上であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS34へ進み、Noの場合はステップS32へ戻る。このステップS33では、エンジンクランキングの実行(継続)時間が、図3のフローチャートのステップS20で演算したクランキング目標時間TMeとなるまで、エンジンクランキングを実行するために、クランキング実行時間カウンタTM(ステップS32で計測している実行(継続)時間)と、記憶部14aに格納されたクランキング目標時間TMeとを比較する。
ステップS34では、ステップS33でのクランキング実行時間カウンタTMがクランキング目標時間TMe以上であるとの判断に続き、エンジンクランキングを終了しクランキング実行時間カウンタTMを初期状態(TM=0(クリア))として、このフローチャートを終了する。このステップS34では、エンジンクランキングの実行(継続)時間がクランキング目標時間TMeに到達したことから、第1クラッチCL1を開放(走行状況に応じて適宜半締結することも含む)しつつモータ/ジェネレータMGを停止させて、エンジンクランキングを終了して暖房アシスト制御処理を終了する。このとき、走行中である場合は、その走行制御を継続しつつエンジンクランキングの終了に伴うショックが発生しないように、第2クラッチCL2(自動変速機AT)を制御しつつモータ/ジェネレータMGを制御する。
次に、作用を説明する。
図7は、実施例1の暖房アシスト制御処理による作用を説明するために、ヒータコア前温度、クランキング時間カウンタ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。この図7は、暖房以外の要求によりエンジンEngを起動(インジェクタ(図示せず)を介して燃料を噴射させ、その燃料の燃焼によりエンジンEngを起動)させる必要がない場面の例である。以下、図7を用いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を説明する。
本発明の暖房アシスト制御処理制御では、上述したように、要求された暖房効果を確保するために、エンジンクランキングを行うことができるか、エンジンファイアリングを行う必要があるかを判断し、エンジンクランキングにより冷却水の温度すなわちエンジンEngの温度を上昇させる際、エンジンクランキングを実行する時間を設定して、その時間内でエンジンクランキングを行う。
すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進むことにより、ヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さい場合であって、ステップS3→ステップS4へと進むことにより、バッテリー9の充電量が十分であって、ステップS5→ステップS6へと進むことにより、冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きい場合には、エンジンクランキングを実行し、それ以外の場合には、エンジンファイアリングを実行する。
ここで、エンジンクランキングを実行する場合、クランキング目標時間TMeを設定すべく、図3のフローチャートにおいて、ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS15へと進むことにより、実際に搭載された空調システム26におけるヒータコア32の単位時間辺りの放熱量(単位放熱量実機値Qd)を演算し、ステップS16→ステップS17→ステップS18→ステップS19へと進むことにより、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成する(車室を設定された目標温度とする)ために必要となる放熱量(暖房必要放熱量Qn)を演算し、ステップS20へと進むことにより、単位放熱量実機値Qdと暖房必要放熱量Qnとからクランキング目標時間TMeを演算する。このクランキング目標時間TMeでのエンジンクランキングを実行すべく、図6のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33へと進み、適宜ステップS32へと戻る動作を繰り返し、ステップS33において、エンジンクランキングの実行(継続)時間がクランキング目標時間TMeとなったと判断すると、ステップS34へと進んでエンジンクランキングを終了する。
このため、実施例1に係る暖房アシスト制御処理制御では、図7のタイムチャートにおいて、時刻T0で暖房の要求(例えば、車室を暖房するための温度設定がされる)が為され、空調システム26では、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行う。これにより、時刻T0〜時刻T1の間では、車室の暖房に伴ってヒータコア前温度Trが低下している。このとき、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進んで、ステップS2においてヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さくなっていないことから、ステップS1へと戻る流れが繰り返される。
その後、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2にてヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さいと判断されると(時刻T1)、当該ヒータコア前温度Trでは要求された暖房効果を確保することができなくなるので、ヒータコア前温度Trを上昇させるすなわち冷却水の温度を上昇させるべくステップS3へと進み、エンジンファイアリングを行うかエンジンクランキングを行うかの判断を行う。ここで、図7のタイムチャートの状況では、バッテリー9の充電量が十分であってかつ冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きいことから、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6へと進み、エンジンクランキングを実行することとなり、図3のフローチャートによりクランキング目標時間TMeが設定されて、図6のフローチャートのステップS31にて、クランキング目標回転数Ne(ステップS11参照)でのエンジンクランキングが開始(実行)される。
その後、時刻T1〜時刻T2の間では、ステップS32→ステップS33へと進んでステップS32へと戻る流れが繰り返されて、時間の経過と共にクランキング実行時間カウンタTMがカウントアップ(加算演算)される。その後、図6のフローチャートのステップS33において、クランキング実行時間カウンタTMがクランキング目標時間TMeとなったと判断されると(時刻T2)、ステップS34へと進んでエンジンクランキングが終了される(エンジン回転数が0となる)。
このとき、空調システム26では、エンジンクランキングが開始された時刻T1以降であっても、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行っており、時刻T1〜時刻T2の間では、エンジンクランキングによる冷却水温の上昇に伴ってヒータコア前温度Trが上昇する。その後、時刻T2においてエンジンクランキングが終了すると、エンジンEngでの発熱作用は終了するが、クランキング目標時間TMeに到達するまでエンジンクランキングが継続されたことから、そのエンジンクランキングの継続により生成された熱量で冷却水(ヒータコア前温度)を暖めることができるので、時刻T2以降であっても、ヒータコア前温度Trは、少し緩やかにはなるが上昇を続けて、ヒータコア前目標温度Treに到達し(時刻T3)、その後、下降し始める。
上記したように、要求された暖房効果を確保するために必要な総放熱量(暖房必要放熱量Qn)と、搭載された空調システム26において要求された暖房効果に応じた運転状況でのヒータコア32の単位時間辺りの放熱量(単位放熱量実機値Qd)と、を演算し、暖房必要放熱量Qnを単位放熱量実機値Qdで除算することにより演算されたクランキング目標時間TMeの間、エンジンクランキングを継続するものであることから、ヒータ下限温度Trlからヒータコア前目標温度Tre(温度上昇代ΔT)へとヒータコア前温度Trを引き上げるために必要な放熱量をエンジンEngにおいて生成するのに過不足なくエンジンクランキングを実行させることができるので、要求された暖房効果を確保しつつエンジンクランキングを実行することにより消費する電力量を必要最低限のものとすることができ、結果として暖房の要求に基因する燃料消費量を低減することができる。
また、要求された暖房効果を確保するために、ヒータコア前温度Trを上昇させるすなわち冷却水の温度を上昇させる必要が生じると、バッテリー9の充電量が十分(エンジンクランキングを行う観点から)であってかつ冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きい場合には、クランキング目標時間TMeを設定してエンジンクランキングを行うこととなることから、可能な限りエンジンクランキングを実行することとなるので、暖房の要求(要求された暖房効果の確保)に基因する燃料消費量を低減することができ、結果として暖房の要求に基因する燃料消費量を低減することができる。
さらに、要求された暖房効果を確保する、換言するとヒータコア前温度Trをヒータコア前目標温度Treまで引き上げるために必要最低限の時間(クランキング目標時間TMe)だけエンジンクランキングを継続するものであることから、従来技術に比較して排気浄化性能の低下を抑制することができる。これは、次のことによる。エンジンクランキングでは、燃料の燃焼を伴うことなくエンジンEngを駆動することから、図示は略すがエンジンEngからはエンジンEngが起動(エンジンファイアリング(燃料の燃焼を伴う起動))されている状態に比較して低い温度の排気ガス(この場合は燃焼を伴わないことから、エンジンクランキングによる発熱により暖められた空気)が排気管へと送り込まれることとなる。すると、排気管に設けられた触媒コンバータ(図示せず)は、当初想定されたエンジンファイアリングの状態に比較して、冷やされることとなるとともにその内部が酸素過剰となってしまい、結果として排気性能の低下を招く虞がある。ここで、従来技術では、バッテリーの充電状態とエンジン冷却水の温度とに基づいてエンジンクランキングの実行の終始の判断を行っていることから、要求された暖房効果を超えて、すなわち設定された温度を超えて車室を暖めてしまうまでエンジンクランキングを継続してしまう。しかしながら、実施例1(本願発明)の暖房アシスト制御処理では、必要最低限の時間(クランキング目標時間TMe)だけエンジンクランキングを継続するものであることから、エンジンクランキングに基因する排気性能の低下を最低限のものとすることができるので、従来技術に比較して排気浄化性能の低下を抑制することができる。
よって、本発明に係る暖房アシスト制御処理では、要求された暖房効果を確保しつつ、実用燃費の悪化を抑制することすなわち全体での燃料消費量を効果的に低減することができる。
次に、実施例2のハイブリッド車両の制御装置について説明する。実施例2のハイブリッド車両の制御装置は、実施例1のハイブリッド車両の制御装置とは、統合コントローラ14にて実行される暖房アシスト制御処理におけるエンジンクランキングの実行のための処理内容のみが異なる例である。この実施例2のハイブリッド車両の制御装置は、その基本的な構成は実施例1のハイブリッド車両の制御装置と同様であるので、同一機能部分および同一処理内容には実施例1と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここで、図8は、実施例2の統合コントローラ14にて実行されるエンジンクランキングの実行のためのクランキング目標時間設定処理およびクランキング目標回転数設定処理内容を示すフローチャートである。図9は、実施例2の統合コントローラ14での暖房アシスト制御処理におけるエンジンクランキングモードでのクランキング目標時間設定処理およびクランキング目標回転数設定処理を示す制御ブロック図である。図10は、実施例2の統合コントローラ14での単位放熱量理論値の演算に用いられる算出マップを示す図であり、ブロアファン空気量別に冷却水量に対する単位放熱量理論値の関係を示すグラフである。
先ず、モード切換判断処理(図2のフローチャート参照)によりエンジンクランキングを実行することとなった後に行われる、エンジンクランキングの実行のためのクランキング目標時間設定処理およびクランキング目標回転数設定処理内容を示す図8のフローチャートの各ステップについて図9および図10を用いて説明する。
ステップS41では、ブロアファン空気量Grを取得して、ステップS42へ進む。このステップS41では、図3のフローチャートのステップS13と同様に、エアコンコントローラ24からの駆動指令とブロアファン31の規格値とに基づいて演算することにより、ブロアファン空気量Gr(kg/sec)を取得する。ステップS41では、演算したブロアファン空気量Grを記憶部14aに格納する。
ステップS42では、ステップS41でのブロアファン空気量Grの取得に続き、暖房優先実車条件マップ71(図10参照)を生成して、ステップS43へ進む。このステップS42では、暖房優先実車条件演算部47において、冷却水温Tw(℃)からヒータコア前温度Tr(℃)を減算した値を、単体温度差条件ΔTg(℃)で除算し、その値にヒータコア32での単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ72(図5参照)における単位放熱量理論値Qdgを乗算することにより、単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す暖房優先実車条件マップ71(図10参照)を生成する[Qd=Qdg・((Tw-Tr)/ΔTg)]。この暖房優先実車条件マップ71は、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ72(図5参照)が、冷却水温Twとヒータコア前温度Trと単体温度差条件ΔTgとにより、単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップに換算されたものである。すなわち、暖房優先実車条件マップ71は、エンジン冷却水量Qw(kg/sec)に対して、要求された暖房効果を確保するために実際に搭載された空調システム26におけるヒータコア32の単位時間辺りの放熱量を示す単位放熱量実機値Qdの関係を示す算出マップである。ここで、エンジン冷却水量Qwは、エンジンEngの回転数に回転数水量比例係数k2(図3のフローチャートのステップS12参照)を乗算した値で表すことができるので、暖房優先実車条件マップ71は、単位放熱量実機値QdとエンジンEngでのクランキング回転数との関係を示す算出マップということもできる。このステップS42では、冷却水温Twとヒータコア前温度Trと単体温度差条件ΔTgとを、図3のフローチャートのステップS15と同様に取得する。ステップS42では、生成した暖房優先実車条件マップ71を記憶部14aに格納する。
ステップS43では、ステップS42での暖房優先実車条件マップ71の生成に続き、燃費優先実車条件マップ73(図10参照)を生成して、ステップS44へ進む。このステップS43では、燃費優先実車条件演算部48において、暖房優先実車条件マップ71(図10参照)における特性線(単位放熱量実機値Qd)から、エネルギー損失マップ74(図10参照)における特性線(単位エネルギー損失量Qf)の各値を減算することにより、損失考慮放熱量実機値Qdf(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す燃費優先実車条件マップ73(図10参照)を生成する[Qdf=Qd-Qf]。このため、燃費優先実車条件マップ73は、単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)と単位エネルギー損失量Qf(kcal/sec)との差分(損失考慮放熱量実機値Qdf(kcal/sec))と、エンジン冷却水量Qw(kg/sec)すなわちエンジンEngでのクランキング回転数との関係を示している。このエネルギー損失マップ74(図10参照)は、単位エネルギー損失量Qf(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップである。ここでいう単位エネルギー損失量Qfとは、エンジンクランキングを行う際、モータ/ジェネレータMG(バッテリー9)での消費電力において、実際に搭載された空調システム26におけるヒータコア32での放熱量(単位放熱量実機値Qd)として変換されるのではなく、それ以外のエネルギーに変換された量を示すものである。この単位エネルギー損失量Qfは、エンジン冷却水量QwすなわちエンジンEngでのクランキング回転数の変化に応じて変化する。この要因としては、エンジン冷却水量Qwが増加すると、エンジンEngの温度を低下させる方向へと作用することから、エンジンEngにおける抵抗が増加すること、エンジン冷却水量Qwの変化はエンジンEngでのクランキング回転数の変化によるものであってエンジンEngでのクランキング回転数が変化すると摩擦抵抗も変化すること、等が考えられる。このため、単位エネルギー損失量Qfは、エンジンクランキングによりヒータコア32での放熱量(単位放熱量実機値Qd)を得ることに対するフリクションである、と言うことができる。ステップS43では、生成した燃費優先実車条件マップ73を記憶部14aに格納する。このため、ステップS41からステップS43では、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ(図5参照)を、燃費優先実車条件マップ73および暖房優先実車条件マップ71(図10参照)に変換する処理を行っていることとなる。
ステップS44では、ステップS43での燃費優先実車条件マップ73の生成に続き、暖房優先信号Rhを取得して、ステップS45へ進む。このステップS44では、暖房モード切換に関する信号である暖房優先信号Rhを取得する。この暖房モード切換とは、実施例2では、要求された暖房効果を実現する際、すなわち車室を設定温度まで暖める際、暖房に要する時間を短くする観点で暖房を行う(要する時間の短縮を優先する)暖房優先モードと、実用燃費の悪化を抑制する観点で暖房を行う(効率を優先する)燃費優先モードと、を切り換えることをいう。暖房モード切換に関する信号は、空調設定スイッチ25に所定操作が為されると生成するものであってもよく、空調システム26の自動制御において適宜発せられるものであってもよい。ステップS44では、取得した暖房優先信号Rhを記憶部14aに格納する。
ステップS45では、ステップS44での暖房優先信号Rhの取得に続き、暖房優先信号Rhが0であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS46へ進み、Noの場合はステップS53へ進む。このステップS45では、暖房モード切換部49において、暖房優先信号Rhが0であるか否かを判定することにより、燃費優先モードと暖房優先モードとのいずれが選択されたのかを判定し、その判定に応じて回路の切り換え(燃費優先モードまたは暖房優先モード)を行う。これは、実施例2では、燃費優先モードが選択された場合、暖房優先信号Rhが0とされ、暖房優先モードが選択された場合、暖房優先信号Rhが1とされることによる。このため、ステップS44およびステップS45では、燃費優先モードと暖房優先モードとを選択に応じて切り換える処理を行っていることとなる。
ステップS46では、ステップS45での暖房優先信号Rhが0であるとの判断に続き、燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとを設定して、ステップS47へ進む。このステップS46では、ステップS45で燃費優先モードとされたことから、燃費優先放熱量演算部50において、ステップS43で生成した燃費優先実車条件マップ73(図10参照)の各特性線の中から、ステップS41で取得したブロアファン空気量Gr(kg/sec)に適合する特性線を選択し、当該特性線における極大値(単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)と単位エネルギー損失量Qf(kcal/sec)との差分(損失考慮放熱量実機値Qdf(kcal/sec))が最も大きな値)を燃費優先放熱量Qdm(kcal/sec)として設定し、その燃費優先放熱量Qdmのときのエンジン冷却水量Qw(kg/sec)を燃費優先冷却水量Qwm(kg/sec)として設定する。すなわち、ステップS46では、損失考慮放熱量実機値Qdf(kcal/sec)と、エンジン冷却水量Qw(kg/sec)すなわちエンジンEngでのクランキング回転数との関係を示す燃費優先実車条件マップ73から、ステップS41で取得したブロアファン空気量Gr(kg/sec)を引数に、燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとを読み取る。ステップS46では、設定した燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとを記憶部14aに格納する。このように、実施例2では、燃費優先放熱量Qdmとして、単位放熱量実機値Qdと単位エネルギー損失量Qfとの差分が最も大きくなる値を設定していることから、燃費優先モードでは、モータ/ジェネレータMG(バッテリー9)での消費電力量をヒータコア32での放熱量に変換する効率を高めることと、ヒータコア32での放熱量を大きくすることと、の双方を最も高い次元で満たすという意味で最大効率となる単位放熱量実機値を用いて、各値(クランキング回転数およびクランキング目標時間)を演算することとなる。
ステップS47では、ステップS46での燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとの設定に続き、燃費優先クランキング回転数Nemを演算して、ステップS48へ進む。このステップS47では、クランキング回転数演算部51において、ステップS46で設定した燃費優先冷却水量Qwm(kg/sec)を、回転数水量比例係数k2((kg/sec)/rpm)(図3のフローチャートのステップS12参照)で除算することにより、燃費優先クランキング回転数Nem(rpm)を演算する[Nem=Qwm/k2]。ステップS47では、演算した燃費優先クランキング回転数Nemを記憶部14aに格納する。このため、ステップS46およびステップS47では、燃費優先モードでのエンジンクランキングの回転数を設定する処理を行っていることとなる。
ステップS48では、ステップS47での燃費優先クランキング回転数Nemの演算に続き、ヒータコア前目標温度Treを取得して、ステップS49へ進む。このステップS48では、図3のフローチャートのステップS16と同様に、統合コントローラ14からの空気調節指令に応じたヒータコア前目標温度Tre(℃)を取得し、記憶部14aに格納する。
ステップS49では、ステップS48でのヒータコア前目標温度Treの取得に続き、温度上昇代ΔTを演算して、ステップS50へ進む。このステップS49では、図3のフローチャートのステップS17と同様に、温度上昇代演算部44において、ヒータコア前目標温度Tre(℃)からヒータコア前温度Tr(℃)を減算することにより、温度上昇代ΔT(℃)を演算する[ΔT=Tre-Tr]。ステップS49では、演算した温度上昇代ΔTを記憶部14aに格納する。
ステップS50では、ステップS49での温度上昇代ΔTの演算に続き、室内空気量Grmを取得して、ステップS51へ進む。この室内空気量Grm(kg)は、車室として設定された空間の容積に応じて予め車種毎に設定されるものであり、記憶部14aに格納されている。
ステップS51では、ステップS50での室内空気量Grmの取得に続き、暖房必要放熱量Qnを演算して、ステップS52へ進む。このステップS51では、図3のフローチャートのステップS19と同様に、暖房必要放熱量演算部45において、ステップS49で演算した温度上昇代ΔT(℃)にステップS50で取得した室内空気量Grm(kg)を乗算し、その値に空気比熱C(kcal/(kg・℃))を乗算することにより、暖房必要放熱量Qn(kcal)を演算する[Qn=C・Grm・ΔT]。ステップS51では、演算した暖房必要放熱量Qnを記憶部14aに格納する。このため、ステップS48からステップS51では、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために必要となる放熱量を演算する処理を行っていることとなる。
ステップS52では、ステップS51での暖房必要放熱量Qnの演算に続き、燃費優先クランキング目標時間TMemを演算して、このフローチャートを終了する。このステップS52では、クランキング目標時間演算部46において、ステップS51で演算した暖房必要放熱量Qn(kcal)を、ステップS46で演算した燃費優先放熱量Qdm(kcal/sec)で、除算することにより、燃費優先クランキング目標時間TMem(sec)を演算する[TMem=Qn/Qdm]。ステップS52では、演算した燃費優先クランキング目標時間TMemを記憶部14aに格納して、このフローチャートを終了する。このため、ステップS52では、当該ハイブリッド車両において燃費優先モードで要求された暖房効果を達成するために必要となるエンジンクランキングの継続時間を演算する処理を行っていることとなる。
ステップS53では、ステップS45での暖房優先信号Rhが0ではないとの判断に続き、暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとを設定して、ステップS54へ進む。このステップS53では、ステップS45で暖房優先モードとされたことから、暖房優先放熱量演算部52において、ステップS42で生成した暖房優先実車条件マップ71の各特性線の中から、ステップS41で取得したブロアファン空気量Gr(kg/sec)に適合する特性線を選択し、当該特性線における極大値(単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)が最も大きな値)を暖房優先放熱量Qdh(kcal/sec)として設定し、その暖房優先放熱量Qdhのときのエンジン冷却水量Qw(kg/sec)を暖房優先冷却水量Qwh(kg/sec)として設定する。すなわち、ステップS53では、エンジン冷却水量Qw(kg/sec)に対して、要求された暖房効果を確保するために実際に搭載された空調システム26におけるヒータコア32の単位時間辺りの放熱量を示す単位放熱量実機値Qdの関係を示す算出マップである暖房優先実車条件マップ71から、ステップS41で取得したブロアファン空気量Gr(kg/sec)を引数に、暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとを読み取る。ステップS53では、設定した暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとを記憶部14aに格納する。このように、実施例2では、暖房優先放熱量Qdhとして、単位放熱量実機値Qdが最も大きくなる値を設定していることから、暖房優先モードでは、ヒータコア32での放熱量が最も大きくなる単位放熱量実機値を用いて、各値(クランキング回転数およびクランキング目標時間)を演算することとなる。
ステップS54では、ステップS53での暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとの設定に続き、暖房優先クランキング回転数Nehを演算して、ステップS55へ進む。このステップS54では、ステップS47と同様に、クランキング回転数演算部51において、ステップS53で設定した暖房優先冷却水量Qwh(kg/sec)を、回転数水量比例係数k2((kg/sec)/rpm)で除算することにより、暖房優先クランキング回転数Neh(rpm)を演算する[Neh=Qwh/k2]。ステップS54では、演算した暖房優先クランキング回転数Nehを記憶部14aに格納する。このため、ステップS53およびステップS54では、暖房優先モードでのエンジンクランキングの回転数を設定する処理を行っていることとなる。
ステップS55では、ステップS54での暖房優先クランキング回転数Nehの演算に続き、ヒータコア前目標温度Treを取得して、ステップS56へ進む。このステップS55では、ステップS48と同様に、統合コントローラ14からの空気調節指令に応じたヒータコア前目標温度Tre(℃)を取得し、記憶部14aに格納する。
ステップS56では、ステップS55でのヒータコア前目標温度Treの取得に続き、温度上昇代ΔTを演算して、ステップS57へ進む。このステップS56では、ステップS49と同様に、温度上昇代演算部44において、ヒータコア前目標温度Tre(℃)からヒータコア前温度Tr(℃)を減算することにより、温度上昇代ΔT(℃)を演算する[ΔT=Tre-Tr]。ステップS56では、演算した温度上昇代ΔTを記憶部14aに格納する。
ステップS57では、ステップS56での温度上昇代ΔTの演算に続き、室内空気量Grmを取得して、ステップS58へ進む。この室内空気量Grm(kg)は、ステップS50と同様に、車室として設定された空間の容積に応じて予め車種毎に設定されるものであり、記憶部14aに格納されている。
ステップS58では、ステップS57での室内空気量Grmの取得に続き、暖房必要放熱量Qnを演算して、ステップS59へ進む。このステップS58では、ステップS51と同様に、暖房必要放熱量演算部45において、ステップS56で演算した温度上昇代ΔT(℃)にステップS57で取得した室内空気量Grm(kg)を乗算し、その値に空気比熱C(kcal/(kg・℃))を乗算することにより、暖房必要放熱量Qn(kcal)を演算する[Qn=C・Grm・ΔT]。ステップS58では、演算した暖房必要放熱量Qnを記憶部14aに格納する。このため、ステップS55からステップS58では、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために必要となる放熱量を演算する処理を行っていることとなる。
ステップS59では、ステップS58での暖房必要放熱量Qnの演算に続き、暖房優先クランキング目標時間TMehを演算して、このフローチャートを終了する。このステップS59では、ステップS52と同様に、クランキング目標時間演算部46において、ステップS58で演算した暖房必要放熱量Qn(kcal)を、ステップS53で演算した暖房優先放熱量Qdh(kcal/sec)で、除算することにより、暖房優先クランキング目標時間TMeh(sec)を演算する[TMeh=Qn/Qdh]。ステップS59では、演算した暖房優先クランキング目標時間TMehを記憶部14aに格納して、このフローチャートを終了する。このため、ステップS59では、当該ハイブリッド車両において暖房優先モードで要求された暖房効果を達成するために必要となるエンジンクランキングの継続時間を演算する処理を行っていることとなる。
このように、図8のフローチャートでの燃費優先モードまたは暖房優先モードでのクランキング目標時間設定処理およびクランキング目標回転数設定処理が終了すると、そのクランキング目標時間設定およびクランキング目標回転数設定でエンジンクランキングを実行すべく図6のフローチャートが実行される。このとき、実施例2では、燃費優先モードの場合、エンジンクランキングにおいて燃費優先クランキング回転数Nemと燃費優先クランキング目標時間TMemとを用い、暖房優先モードの場合、エンジンクランキングにおいて暖房優先クランキング回転数Nehと暖房優先クランキング目標時間TMehとを用いる。
次に、作用を説明する。
図11は、実施例2の暖房アシスト制御処理による作用を説明するために、暖房優先信号Rh、ヒータコア前温度、クランキング時間カウンタ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。この図11は、暖房以外の要求によりエンジンEngを起動(インジェクタ(図示せず)を介して燃料を噴射させ、その燃料の燃焼によりエンジンEngを起動)させる必要がない場面の例である。以下、図11を用いて、実施例2のハイブリッド車両の制御装置における作用を説明する。
実施例2の暖房アシスト制御処理制御では、上述したように、要求された暖房効果を確保するために、エンジンクランキングを行うことができるか、エンジンファイアリングを行う必要があるかを判断し、エンジンクランキングにより冷却水の温度すなわちエンジンEngの温度を上昇させる際、燃費優先モードか暖房優先モードかを場合分けし、それぞれにおいてエンジンクランキングを実行する時間とエンジンクランキングにおける回転数とを設定して、その回転数でのエンジンクランキングをその時間内で行う。
すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進むことにより、ヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さい場合であって、ステップS3→ステップS4へと進むことにより、バッテリー9の充電量が十分であって、ステップS5→ステップS6へと進むことにより、冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きい場合には、エンジンクランキングを実行し、それ以外の場合には、エンジンファイアリングを実行する。
ここで、エンジンクランキングを実行する場合、図8のフローチャートにおいて、ステップS41→ステップS42→ステップS43へと進むことにより、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ(図5参照)を、燃費優先モードのための演算に用いる燃費優先実車条件マップ73(図10参照)と、暖房優先モードのための演算に用いる暖房優先実車条件マップ71(図10参照)と、に変換する。その後、図8のフローチャートにおいて、ステップS44→ステップS45へと進むことにより、暖房優先信号Rhに基づいて燃費優先モードの場面と暖房優先モードの場面とに場合分けして、エンジンクランキングを実行する時間とエンジンクランキングにおける回転数とを設定することとなる。
燃費優先モードの場合、図8のフローチャートにおいて、ステップS46へと進むことにより、燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとを設定し、ステップS47へと進むことにより、燃費優先冷却水量Qwmに基づいて燃費優先クランキング回転数Nemを設定し、ステップS48→ステップS49→ステップS50→ステップS51へと進むことにより、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために必要となる放熱量(暖房必要放熱量Qn)を演算し、ステップS52へと進むことにより、それら燃費優先放熱量Qdmおよび暖房必要放熱量Qnから燃費優先クランキング目標時間TMemを演算する。この燃費優先クランキング回転数Nemでのエンジンクランキングを燃費優先クランキング目標時間TMemの間だけ実行すべく、図6のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33へと進み、適宜ステップS32へと戻る動作を繰り返し、ステップS33において、エンジンクランキングの実行(継続)時間が燃費優先クランキング目標時間TMemとなったと判断すると、ステップS34へと進んでエンジンクランキングを終了する。
このため、実施例2に係る暖房アシスト制御処理制御では、図11のタイムチャートにおいて、時刻T10で燃費優先モードでの暖房の要求が為されると(実線で示す各特性参照)、空調システム26では、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行う。これにより、時刻T10〜時刻T11の間では、車室の暖房に伴ってヒータコア前温度Trが低下している。このとき、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進んで、ステップS2においてヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さくなっていないことから、ステップS1へと戻る流れが繰り返される。
その後、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2にてヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さいと判断されると(時刻T11)、当該ヒータコア前温度Trでは、要求された暖房効果を確保することができなくなるので、ヒータコア前温度Trを上昇させるすなわち冷却水の温度を上昇させるべく、エンジンファイアリングを行うかエンジンクランキングを行うかの判断を行うために、ステップS3へと進む。ここで、図11のタイムチャートの状況では、バッテリー9の充電量が十分であってかつ冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きいことから、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6へと進み、エンジンクランキングを実行することとなり、図8のフローチャートにより燃費優先クランキング回転数Nemと燃費優先クランキング目標時間TMemとが設定されて、図6のフローチャートのステップS31にて、燃費優先クランキング回転数Nemでのエンジンクランキングが開始(実行)される。
その後、時刻T11〜時刻T14の間では、ステップS32→ステップS33へと進んでステップS32へと戻る流れが繰り返されて、時間の経過と共にクランキング実行時間カウンタTMがカウントアップ(加算演算)される。その後、図6のフローチャートにおいて、ステップS33にてクランキング実行時間カウンタTMが燃費優先クランキング目標時間TMemとなったと判断されると(時刻T14)、ステップS34へと進んでエンジンクランキングが終了される(エンジン回転数が0となる)。
このとき、空調システム26では、エンジンクランキングが開始された時刻T11以降であっても、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行っており、時刻T11〜時刻T14の間では、エンジンクランキングによる冷却水温の上昇に伴ってヒータコア前温度Trが上昇する。その後、時刻T14においてエンジンクランキングが終了すると、エンジンEngでの発熱動作は終了するが、燃費優先クランキング目標時間TMemに到達するまでエンジンクランキングが継続されたことから、そのエンジンクランキングの継続により生成された熱量で冷却水を暖めることができるので、時刻T14以降であっても、ヒータコア前温度Trは、少し緩やかにはなるが上昇を続けて、ヒータコア前目標温度Treに到達し(時刻T15)、その後、下降し始める。
また、暖房優先モードの場合、図8のフローチャートにおいて、ステップS53へと進むことにより、暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとを設定し、ステップS54へと進むことにより、暖房優先冷却水量Qwhに基づいて暖房優先クランキング回転数Nehを設定し、ステップS55→ステップS56→ステップS57→ステップS58へと進むことにより、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために必要となる放熱量(暖房必要放熱量Qn)を演算し、ステップS59へと進むことにより、暖房優先放熱量Qdhと暖房必要放熱量Qnとから暖房優先クランキング目標時間TMehを演算する。この暖房優先クランキング回転数Nehでのエンジンクランキングを暖房優先クランキング目標時間TMehの間だけ実行すべく、図6のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33へと進み、適宜ステップS32へと戻る動作を繰り返し、ステップS33において、エンジンクランキングの実行(継続)時間が暖房優先クランキング目標時間TMehとなったと判断すると、ステップS34へと進んでエンジンクランキングを終了する。
このため、実施例2に係る暖房アシスト制御処理制御では、図11のタイムチャートにおいて、時刻T10で暖房優先モードでの暖房の要求が為されると(破線で示す各特性参照)、空調システム26では、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行う。これにより、時刻T10〜時刻T11の間では、車室の暖房に伴ってヒータコア前温度Trが低下している。このとき、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進んで、ステップS2においてヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さくなっていないことから、ステップS1へと戻る流れが繰り返される。
その後、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2にてヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さいと判断されると(時刻T11)、当該ヒータコア前温度Trでは、要求された暖房効果を確保することができなくなるので、ヒータコア前温度Trを上昇させるすなわち冷却水の温度を上昇させるべく、エンジンファイアリングを行うかエンジンクランキングを行うかの判断を行うために、ステップS3へと進む。ここで、図11のタイムチャートの状況では、バッテリー9の充電量が十分であってかつ冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きいことから、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6へと進み、エンジンクランキングを実行することとなり、図8のフローチャートにより暖房優先クランキング回転数Nehと暖房優先クランキング目標時間TMehとが設定されて、図6のフローチャートのステップS31にて、暖房優先クランキング回転数Nehでのエンジンクランキングが開始(実行)される。
その後、時刻T11〜時刻T12の間では、ステップS32→ステップS33へと進んでステップS32へと戻る流れが繰り返されて、時間の経過と共にクランキング実行時間カウンタTMがカウントアップ(加算演算)される。その後、図6のフローチャートにおいて、ステップS33にてクランキング実行時間カウンタTMが暖房優先クランキング目標時間TMehとなったと判断されると(時刻T12)、ステップS34へと進んでエンジンクランキングが終了される(エンジン回転数が0となる)。
このとき、空調システム26では、エンジンクランキングが開始された時刻T11以降であっても、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行っており、時刻T11〜時刻T12の間では、エンジンクランキングによる冷却水温の上昇に伴ってヒータコア前温度Trが上昇する。その後、時刻T12においてエンジンクランキングが終了すると、エンジンEngでの発熱動作は終了するが、暖房優先クランキング目標時間TMehに到達するまでエンジンクランキングが継続されたことから、そのエンジンクランキングの継続により生成された熱量で冷却水を暖めることができるので、時刻T12以降であっても、ヒータコア前温度Trは、少し緩やかにはなるが上昇を続けて、ヒータコア前目標温度Treに到達し(時刻T13)、その後、下降し始める。
上記したように、要求された暖房効果を確保するために必要な総放熱量(暖房必要放熱量Qn)と、搭載された空調システム26において、選択されたモード(燃費優先モードまたは暖房優先モード)での要求された暖房効果に応じた運転状況でのヒータコア32の単位時間辺りの放熱量(燃費優先放熱量Qdmまたは暖房優先放熱量Qdh)と、を演算し、暖房必要放熱量Qnを当該放熱量で除算することにより演算されたクランキング目標時間(燃費優先クランキング目標時間TMemまたは暖房優先クランキング目標時間TMeh)の間、エンジンクランキングを継続するものであることから、ヒータ下限温度Trlからヒータコア前目標温度Tre(温度上昇代ΔT)へとヒータコア前温度Trを引き上げるために必要な放熱量を生成するのに過不足なくエンジンクランキングを実行させることができるので、要求された暖房効果を確保しつつエンジンクランキングを実行することにより消費する電力量を必要最低限のものとすることができ、結果として暖房の要求に基因する燃料消費量を低減することができる。
また、要求された暖房効果を確保するために、ヒータコア前温度Trを上昇させるすなわち冷却水の温度を上昇させる必要が生じると、バッテリー9の充電量が十分(エンジンクランキングを行う観点から)であってかつ冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きい場合には、適宜クランキング目標時間(燃費優先クランキング目標時間TMemまたは暖房優先クランキング目標時間TMeh)を設定してエンジンクランキングを行うこととなることから、可能な限りエンジンクランキングを実行することとなるので、暖房の要求に基因する燃料消費量を低減することができ、結果として暖房の要求に基因する燃料消費量を低減することができる。
さらに、要求された暖房効果を確保する、換言するとヒータコア前温度Trをヒータコア前目標温度Treまで引き上げるために必要最低限の時間(燃費優先クランキング目標時間TMemまたは暖房優先クランキング目標時間TMeh)だけエンジンクランキングを継続するものであることから、従来技術に比較して排気性能の低下を抑制することができる。
暖房優先モードが選択された場合には、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdgとエンジン冷却水量Qwとの関係を示す算出マップ(図5参照)を換算することにより生成した暖房優先実車条件マップ71の特性線における極大値を暖房優先放熱量Qdhとして設定していることから、ヒータコア32での放熱量が最も大きくなる単位放熱量実機値を用いて暖房優先クランキング回転数Nehと暖房優先クランキング目標時間TMehとを演算していることとなるので、等しい条件下でエンジンクランキングを実行する場面において、要求された暖房効果を達成するまでに要する時間、すなわち車室を設定温度とするまでに要する時間を、最短とすることができる。これは、暖房優先クランキング回転数Nehは、実際に搭載された空調システム26のヒータコア32において、エンジンクランキングを実行することにより得ることのできる最大の放熱量である暖房優先放熱量Qdhを生成させることとなり、その最大の放熱量である暖房優先放熱量Qdhに基づいて暖房優先クランキング目標時間TMehが設定されていることによる。
燃費優先モードが選択された場合には、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdgとエンジン冷却水量Qwとの関係を示す算出マップ(図5参照)を換算することにより生成した燃費優先実車条件マップ73の特性線における極大値を燃費優先放熱量Qdmとして設定していることから、モータ/ジェネレータMG(バッテリー9)での消費電力量をヒータコア32での放熱量に変換する効率を高めることと、ヒータコア32での放熱量を大きくすることと、の双方を最も高い次元で満たすという意味で最大効率となる単位放熱量実機値を用いて燃費優先クランキング回転数Nemと燃費優先クランキング目標時間TMemとを演算していることとなるので、等しい条件下でエンジンクランキングを実行する場面において、最も効率よく要求された暖房効果を達成する、すなわち車室を設定された目標温度とすることができる。これは、燃費優先クランキング回転数Nemは、実際に搭載された空調システム26のヒータコア32において、エンジンクランキングを実行することにより最大効率で得ることのできる放熱量である燃費優先放熱量Qdmを生成させることとなり、その最大効率の放熱量である燃費優先放熱量Qdmに基づいて燃費優先クランキング目標時間TMemが設定されていることによる。すなわち、燃費優先放熱量Qdmでは、エンジンクランキングのためにモータ/ジェネレータMG(バッテリー9)で消費された電力量のうち、実際に搭載された空調システム26のヒータコア32で放熱量として利用されることのない損失分(単位エネルギー損失量Qf)が考慮されていることから、エンジンクランキングにより効率よく要求された暖房効果を達成することができる。
エンジンクランキングを実行する場面において、燃費優先モードが選択された場合と暖房優先モードが選択された場合との場合分けが為されていることから、利用者の要求に応じて車室を暖房することができるので、より使い勝手を向上させることができる。
よって、本発明に係る暖房アシスト制御処理では、要求された暖房効果を確保しつつ、実用燃費の悪化を抑制することすなわち全体での燃料消費量を効果的に低減することができる。
次に、実施例3のハイブリッド車両の制御装置について説明する。実施例3のハイブリッド車両の制御装置は、実施例2のハイブリッド車両の制御装置とは、統合コントローラ14にて実行される暖房アシスト制御処理のエンジンクランキングの実行のための処理内容における単位エネルギー損失量Qfの演算方法が異なる例である。この実施例3のハイブリッド車両の制御装置は、その基本的な構成は実施例2のハイブリッド車両の制御装置と同様であるので、同一機能部分および同一処理内容には実施例2と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここで、図12は、実施例3の統合コントローラ14にて実行されるエンジンクランキングの実行のためのクランキング目標時間設定処理およびクランキング目標回転数設定処理内容を示すフローチャートである。図13は、実施例3の統合コントローラ14での暖房アシスト制御処理におけるエンジンクランキングモードでのクランキング目標時間設定処理およびクランキング目標回転数設定処理を示す制御ブロック図である。図14は、実施例3の統合コントローラ14での単位放熱量理論値の演算に用いられる算出マップを示す図であり、ブロアファン空気量別に冷却水量に対する単位放熱量理論値の関係を示すグラフである。
先ず、モード切換判断処理(図2のフローチャート参照)によりエンジンクランキングを実行することとなった後に行われる、エンジンクランキングの実行のためのクランキング目標時間設定処理およびクランキング目標回転数設定処理内容を示す図12のフローチャートの各ステップについて図13および図14を用いて説明する。なお、この図12のフローチャートは、図8のフローチャートにおけるステップS42(図12のフローチャートではステップS72)とステップS43(図12のフローチャートではステップS74)との間に、ステップS73が設けられていることを除くと、図8のフローチャートと同様の処理を行うことから、その詳細な説明は省略する。
ステップS71では、ブロアファン空気量Grを取得して、ステップS72へ進む。ステップS71では、演算したブロアファン空気量Gr(kg/sec)を記憶部14aに格納する。
ステップS72では、ステップS71でのブロアファン空気量Grの取得に続き、暖房優先実車条件マップ71(図14参照)を生成して、ステップS73へ進む。このステップS72では、暖房優先実車条件演算部47において、冷却水温Tw(℃)からヒータコア前温度Tr(℃)を減算した値を、単体温度差条件ΔTg(℃)で除算し、その値にヒータコア32での単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ(図5参照)における単位放熱量理論値Qdgを乗算することにより、単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す暖房優先実車条件マップ71(図14参照)を生成する[Qd=Qdg・((Tw-Tr)/ΔTg)]。ステップS72では、生成した暖房優先実車条件マップ71を記憶部14aに格納する。
ステップS73では、ステップS72での暖房優先実車条件マップ71の生成に続き、エネルギー損失マップ74´(図14参照)を補正して、ステップS74へ進む。このステップS73では、エネルギー損失マップ演算部53において、冷却水温Tw(℃)を用いて、単位エネルギー損失量Qf(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップであるエネルギー損失マップ74´(図14参照)を補正する。詳細には、エネルギー損失マップ演算部53では、予め設定され記憶部14aに格納された冷却水温Tw(℃)の基準値を基準として、冷却水温Tw(℃)が高くなると、エンジン冷却水量Qwに対する単位エネルギー損失量Qfの値が小さくなるように補正し(図14では下方側の特性線に移行)、冷却水温Tw(℃)が低くなると、エンジン冷却水量Qwに対する単位エネルギー損失量Qfの値が大きくなるように補正する(図14では上方側の特性線に移行)。これは、エンジンEngの温度が低下するとエンジンEngにおける抵抗が増加し、かつエンジンEngの温度が上昇するとエンジンEngにおける抵抗が減少することから、単位エネルギー損失量Qfが、エンジンEngの温度の変化にしたがって変化することによる。この補正は、予め設定した基準値からの冷却水温Twの変化量(温度差)に応じて補正量を変化させて特性線を補正する(例えば、温度補正係数を設定して温度差分との積を、単位エネルギー損失量Qfの値に乗算する等)ものであってもよく、基準値からの冷却水温Twの変化量(温度差)に応じた複数の特性線を予め設定し、それらから温度差に対応する特性線を選択するものであってもよい。ステップS73では、補正したエネルギー損失マップ74´を記憶部14aに格納する。なお、冷却水温Twは、このクランキング目標時間設定処理(図12のフローチャート参照)に先立って実行されたモード切換判断処理を示す図2のフローチャートのステップS5で取得した値を用いてもよいし、このステップS73において新たに取得してもよい。
ステップS74では、ステップS73でのエネルギー損失マップ74´の補正に続き、燃費優先実車条件マップ73(図14参照)を生成して、ステップS75へ進む。このステップS74では、暖房優先実車条件マップ71(図14参照)における特性線(単位放熱量実機値Qd)から、補正したエネルギー損失マップ74´(図14参照)における特性線(単位エネルギー損失量Qf)の各値を減算することにより、損失考慮放熱量実機値Qdf(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す燃費優先実車条件マップ73(図14参照)を生成する[Qdf=Qd-Qf]。このため、燃費優先実車条件マップ73は、単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)と冷却水温Twに応じた単位エネルギー損失量Qf(kcal/sec)との(損失考慮放熱量実機値Qdf(kcal/sec))と、エンジン冷却水量Qw(kg/sec)すなわちエンジンEngでのクランキング回転数との関係を示している。ステップS74では、生成した燃費優先実車条件マップ73を記憶部14aに格納する。このため、ステップS71からステップS74では、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ(図5参照)を、燃費優先実車条件マップ73および暖房優先実車条件マップ71(図14参照)に変換する処理を行っていることとなる。
ステップS75では、ステップS74での燃費優先実車条件マップ73の生成に続き、暖房優先信号Rhを取得して、ステップS76へ進む。このステップS75では、暖房モード切換部49において、暖房モード切換に関する信号である暖房優先信号Rhを取得する。ステップS75では、取得した暖房優先信号Rhを記憶部14aに格納する。
ステップS76では、ステップS75での暖房優先信号Rhの取得に続き、暖房優先信号Rhが0であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS77へ進み、Noの場合はステップS84へ進む。このステップS76では、暖房優先信号Rhが0であるか否かを判定することにより、燃費優先モードと暖房優先モードとのいずれが選択されたのかを、判定する。このため、ステップS75およびステップS76では、燃費優先モードと暖房優先モードとを選択に応じて切り換える処理を行っていることとなる。
ステップS77では、ステップS76での暖房優先信号Rhが0であるとの判断に続き、燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとを設定して、ステップS78へ進む。このステップS77では、ステップS76で燃費優先モードとされたことから、燃費優先放熱量演算部50において、ステップS74で生成した燃費優先実車条件マップ73の各特性線の中から、ステップS71で取得したブロアファン空気量Gr(kg/sec)に適合する特性線を選択し、当該特性線における極大値(単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)と単位エネルギー損失量Qf(kcal/sec)との差分(kcal/sec)が最も大きな値)を燃費優先放熱量Qdm(kcal/sec)として設定し、その燃費優先放熱量Qdmのときのエンジン冷却水量Qw(kg/sec)を燃費優先冷却水量Qwm(kg/sec)として設定する。すなわち、ステップS77では、損失考慮放熱量実機値Qdf(kcal/sec)と、エンジン冷却水量Qw(kg/sec)すなわちエンジンEngでのクランキング回転数との関係を示す燃費優先実車条件マップ73から、ステップS71で取得したブロアファン空気量Gr(kg/sec)を引数に、燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとを読み取る。ステップS77では、設定した燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとを記憶部14aに格納する。
ステップS78では、ステップS77での燃費優先放熱量Qdmと燃費優先冷却水量Qwmとの設定に続き、燃費優先クランキング回転数Nemを演算して、ステップS79へ進む。このステップS78では、クランキング回転数演算部51において、ステップS77で設定した燃費優先冷却水量Qwm(kg/sec)を、回転数水量比例係数k2((kg/sec)/rpm)で除算することにより、燃費優先クランキング回転数Nem(rpm)を演算する[Nem=Qwm/k2]。ステップS78では、演算した燃費優先クランキング回転数Nemを記憶部14aに格納する。このため、ステップS77およびステップS78では、燃費優先モードでのエンジンクランキングの回転数を設定する処理を行っていることとなる。
ステップS79では、ステップS78での燃費優先クランキング回転数Nemの演算に続き、ヒータコア前目標温度Treを取得して、ステップS80へ進む。このステップS79では、図3のフローチャートのステップS16と同様に、統合コントローラ14からの空気調節指令に応じたヒータコア前目標温度Tre(℃)を取得し、記憶部14aに格納する。
ステップS80では、ステップS79でのヒータコア前目標温度Treの取得に続き、温度上昇代ΔTを演算して、ステップS81へ進む。このステップS80では、図3のフローチャートのステップS17と同様に、温度上昇代演算部44において、ヒータコア前目標温度Tre(℃)からヒータコア前温度Tr(℃)を減算することにより、温度上昇代ΔT(℃)を演算する[ΔT=Tre-Tr]。ステップS80では、演算した温度上昇代ΔTを記憶部14aに格納する。
ステップS81では、ステップS80での温度上昇代ΔTの演算に続き、室内空気量Grmを取得して、ステップS82へ進む。この室内空気量Grm(kg)は、車室として設定された空間の容積に応じて予め車種毎に設定されるものであり、記憶部14aに格納されている。
ステップS82では、ステップS81での室内空気量Grmの取得に続き、暖房必要放熱量Qnを演算して、ステップS83へ進む。このステップS82では、図3のフローチャートのステップS19と同様に、暖房必要放熱量演算部45において、ステップS80で演算した温度上昇代ΔT(℃)にステップS81で取得した室内空気量Grm(kg)を乗算し、その値に空気比熱C(kcal/(kg・℃))を乗算することにより、暖房必要放熱量Qn(kcal)を演算する[Qn=C・Grm・ΔT]。ステップS82では、演算した暖房必要放熱量Qnを記憶部14aに格納する。このため、ステップS79からステップS82では、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために必要となる放熱量を演算する処理を行っていることとなる。
ステップS83では、ステップS82での暖房必要放熱量Qnの演算に続き、燃費優先クランキング目標時間TMemを演算して、このフローチャートを終了する。このステップS83では、クランキング目標時間演算部46において、ステップS82で演算した暖房必要放熱量Qn(kcal)を、ステップS77で演算した燃費優先放熱量Qdm(kcal/sec)で、除算することにより、燃費優先クランキング目標時間TMem(sec)を演算する[TMem=Qn/Qdm]。ステップS83では、演算した燃費優先クランキング目標時間TMemを記憶部14aに格納して、このフローチャートを終了する。このため、ステップS83では、当該ハイブリッド車両において燃費優先モードで要求された暖房効果を達成するために必要となるエンジンクランキングの継続時間を演算する処理を行っていることとなる。
ステップS84では、ステップS76での暖房優先信号Rhが0ではないとの判断に続き、暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとを設定して、ステップS85へ進む。このステップS84では、ステップS76で暖房優先モードとされたことから、暖房優先放熱量演算部52において、ステップS72で生成した暖房優先実車条件マップ71の各特性線の中から、ステップS71で取得したブロアファン空気量Gr(kg/sec)に適合する特性線を選択し、当該特性線における極大値(単位放熱量実機値Qd(kcal/sec)の最も大きな値)を暖房優先放熱量Qdh(kcal/sec)として設定し、その暖房優先放熱量Qdhのときのエンジン冷却水量Qw(kg/sec)を暖房優先冷却水量Qwh(kg/sec)として設定する。すなわち、ステップS84では、エンジン冷却水量Qw(kg/sec)に対して、要求された暖房効果を確保するために実際に搭載された空調システム26におけるヒータコア32の単位時間辺りの放熱量を示す単位放熱量実機値Qdの関係を示す算出マップである暖房優先実車条件マップ71から、ステップS71で取得したブロアファン空気量Gr(kg/sec)を引数に、暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとを読み取る。ステップS84では、設定した暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとを記憶部14aに格納する。
ステップS85では、ステップS84での暖房優先放熱量Qdhと暖房優先冷却水量Qwhとの設定に続き、暖房優先クランキング回転数Nehを演算して、ステップS86へ進む。このステップS85では、ステップS78と同様に、クランキング回転数演算部51において、ステップS84で設定した暖房優先冷却水量Qwh(kg/sec)を、回転数水量比例係数k2((kg/sec)/rpm)で除算することにより、暖房優先クランキング回転数Neh(rpm)を演算する[Neh=Qwh/k2]。ステップS85では、演算した暖房優先クランキング回転数Nehを記憶部14aに格納する。このため、ステップS84およびステップS85では、暖房優先モードでのエンジンクランキングの回転数を設定する処理を行っていることとなる。
ステップS86では、ステップS85での暖房優先クランキング回転数Nehの演算に続き、ヒータコア前目標温度Treを取得して、ステップS87へ進む。このステップS86では、ステップS79と同様に、統合コントローラ14からの空気調節指令に応じたヒータコア前目標温度Tre(℃)を取得し、記憶部14aに格納する。
ステップS87では、ステップS86でのヒータコア前目標温度Treの取得に続き、温度上昇代ΔTを演算して、ステップS88へ進む。このステップS87では、ステップS80と同様に、温度上昇代演算部44において、ヒータコア前目標温度Tre(℃)からヒータコア前温度Tr(℃)を減算することにより、温度上昇代ΔT(℃)を演算する[ΔT=Tre-Tr]。ステップS87では、演算した温度上昇代ΔTを記憶部14aに格納する。
ステップS88では、ステップS87での温度上昇代ΔTの演算に続き、室内空気量Grmを取得して、ステップS89へ進む。この室内空気量Grm(kg)は、ステップS81と同様に、車室として設定された空間の容積に応じて予め車種毎に設定されるものであり、記憶部14aに格納されている。
ステップS89では、ステップS88での室内空気量Grmの取得に続き、暖房必要放熱量Qnを演算して、ステップS90へ進む。このステップS89では、ステップS82と同様に、暖房必要放熱量演算部45において、ステップS87で演算した温度上昇代ΔT(℃)にステップS88で取得した室内空気量Grm(kg)を乗算し、その値に空気比熱C(kcal/(kg・℃))を乗算することにより、暖房必要放熱量Qn(kcal)を演算する[Qn=C・Grm・ΔT]。ステップS89では、演算した暖房必要放熱量Qnを記憶部14aに格納する。このため、ステップS86からステップS89では、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために必要となる放熱量を演算する処理を行っていることとなる。
ステップS90では、ステップS89での暖房必要放熱量Qnの演算に続き、暖房優先クランキング目標時間TMehを演算して、このフローチャートを終了する。このステップS90では、ステップS83と同様に、クランキング目標時間演算部46において、ステップS89で演算した暖房必要放熱量Qn(kcal)を、ステップS84で演算した暖房優先放熱量Qdh(kcal/sec)で、除算することにより、暖房優先クランキング目標時間TMeh(sec)を演算する[TMeh=Qn/Qdh]。ステップS90では、演算した暖房優先クランキング目標時間TMehを記憶部14aに格納して、このフローチャートを終了する。このため、ステップS90では、当該ハイブリッド車両において暖房優先モードで要求された暖房効果を達成するために必要となるエンジンクランキングの継続時間を演算する処理を行っていることとなる。
このように、図12のフローチャートでの燃費優先モードまたは暖房優先モードでのクランキング目標時間設定処理およびクランキング目標回転数設定処理が終了すると、そのクランキング目標時間設定およびクランキング目標回転数設定でエンジンクランキングを実行すべく図6のフローチャートが実行される。このとき、実施例3では、燃費優先モードの場合、エンジンクランキングにおいて燃費優先クランキング回転数Nemと燃費優先クランキング目標時間TMemとを用い、暖房優先モードの場合、エンジンクランキングにおいて暖房優先クランキング回転数Nehと暖房優先クランキング目標時間TMehとを用いる。
次に、作用を説明する。
図15は、実施例3の暖房アシスト制御処理による作用を説明するために、暖房優先信号Rh、ヒータコア前温度、クランキング時間カウンタ、エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。この図15は、暖房以外の要求によりエンジンEngを起動(インジェクタ(図示せず)を介して燃料を噴射させ、その燃料の燃焼によりエンジンEngを起動)させる必要がない場面であって、暖房優先信号Rhが0である(燃費優先モードが選択された)場面の例である。以下、図15を用いて、実施例3のハイブリッド車両の制御装置における作用を説明する。
実施例3の暖房アシスト制御処理制御では、上述したように、要求された暖房効果を確保するために、エンジンクランキングを行うことができるか、エンジンファイアリングを行う必要があるかを判断し、エンジンクランキングにより冷却水の温度すなわちエンジンEngの温度を上昇させる際、燃費優先モードか暖房優先モードかを場合分けし、それぞれにおいてエンジンクランキングを実行する時間とエンジンクランキングにおける回転数とを設定して、その回転数でのエンジンクランキングをその時間内で行う。
すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進むことにより、ヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さい場合であって、ステップS3→ステップS4へと進むことにより、バッテリー9の充電量が十分であって、ステップS5→ステップS6へと進むことにより、冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きい場合には、エンジンクランキングを実行し、それ以外の場合には、エンジンファイアリングを実行する。
ここで、エンジンクランキングを実行する場合、図12のフローチャートにおいて、ステップS71→ステップS72→ステップS73→ステップS74へと進むことにより、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdg(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップ(図5参照)を、冷却水温Twを考慮しつつ、燃費優先モードのための演算に用いる燃費優先実車条件マップ73(図14参照)と、暖房優先モードのための演算に用いる暖房優先実車条件マップ71(図14参照)と、に変換する。その後、図12のフローチャートにおいて、ステップS75→ステップS76へと進むことにより、暖房優先信号Rhに基づいて燃費優先モードの場面と暖房優先モードの場面とに場合分けして、エンジンクランキングを実行する時間とエンジンクランキングにおける回転数とを設定する。なお、図15のタイムチャートの例では、上述したように、燃費優先モードの場面のみが示されている。この図15では、互いに等しい要求された暖房効果が為された(暖房必要放熱量Qnが等しい)ことを前提として、互いに異なる2つの冷却水温Twの場面が示されている。以下では、2つの場面のうち、もう一方に比べて高い冷却水温Twを高水温Tw1といい、他方に比べて低い冷却水温Twを低水温Tw2という。
ここで、冷却水温Twが高水温Tw1(℃)である場合、ステップS73へと進むと、高水温Tw1に応じてエネルギー損失マップ74´(図14参照)を補正する。図14では、この補正により得られたエネルギー損失マップ74´における特性線を実線で示している。その後、ステップS74へと進み、ステップS74にて、暖房優先実車条件マップ71(図14参照)における特性線(単位放熱量実機値Qd)から、補正したエネルギー損失マップ74´における特性線(単位エネルギー損失量Qf)の各値を減算することにより、燃費優先実車条件マップ73(図14参照)を生成する。図14では、この高水温Tw1に応じたエネルギー損失マップ74´の特性線を用いて生成した燃費優先実車条件マップ73における特性線を実線で示している。
また、冷却水温Twが低水温Tw2(℃)である場合、ステップS73へと進むと、低水温Tw2に応じてエネルギー損失マップ74´(図14参照)を補正する。図14では、この補正により得られたエネルギー損失マップ74´における特性線を一点鎖線で示している。その後、ステップS74へと進み、ステップS74にて、暖房優先実車条件マップ71(図14参照)における特性線(単位放熱量実機値Qd)から、補正したエネルギー損失マップ74´における特性線(単位エネルギー損失量Qf)の各値を減算することにより、燃費優先実車条件マップ73(図14参照)を生成する。図14では、この低水温Tw2に応じたエネルギー損失マップ74´の特性線を用いて生成した燃費優先実車条件マップ73における特性線を一点鎖線で示している。
燃費優先モードであって高い冷却水温Tw(高水温Tw1)の場合、図12のフローチャートにおいて、ステップS77へと進むことにより、燃費優先放熱量Qdm(Qdm1とする)と燃費優先冷却水量Qwm(Qwm1とする)とを設定し、ステップS78へと進むことにより、燃費優先冷却水量Qwm1に基づいて燃費優先クランキング回転数Nem(Nem1とする)を設定する。
燃費優先モードであって低い冷却水温Tw(低水温Tw2)の場合、図12のフローチャートにおいて、ステップS77へと進むことにより、燃費優先放熱量Qdm(Qdm2とする)と燃費優先冷却水量Qwm(Qwm2とする)とを設定し、ステップS78へと進むことにより、燃費優先冷却水量Qwm2に基づいて燃費優先クランキング回転数Nem(Nem2とする)を設定する。
このとき、実施例3では、冷却水温Twが上昇するに連れて、エネルギー損失マップ74´におけるエンジン冷却水量Qwに対する単位エネルギー損失量Qfの値が減少するように補正されていることから、高水温Tw1に対する燃費優先放熱量Qdm1の方が、低水温Tw2に対する燃費優先放熱量Qdm2よりも大きな値となる。また、それに伴って、高水温Tw1に対する燃費優先冷却水量Qwm1の方が、低水温Tw2に対する燃費優先冷却水量Qwm2よりも大きな値となり、高水温Tw1に対する燃費優先クランキング回転数Nem1の方が、低水温Tw2に対する燃費優先クランキング回転数Nem2よりも大きな値となっている。
その後、いずれの冷却水温(Tw1またはTw2)の場面であっても、ステップS79→ステップS80→ステップS81→ステップS82へと進むことにより、当該ハイブリッド車両において要求された暖房効果を達成するために必要となる放熱量(暖房必要放熱量Qn)を演算し、ステップS83へと進むことにより、それぞれの冷却水温(Tw1またはTw2)に応じた燃費優先放熱量Qdm(Qdm1またはQdm2)と暖房必要放熱量Qnとからそれぞれの冷却水温の場面に応じた燃費優先クランキング目標時間TMem(TMem1またはTMem2)を演算する。このとき、高水温Tw1の場面と低水温Tw2の場面とで、互いに等しい要求された暖房効果が為されていることを前提としていることから、互いの場面における暖房必要放熱量Qnが等しくなるので、その暖房必要放熱量Qnを燃費優先冷却水量(Qwm1またはQwm2)で除算して演算される燃費優先クランキング目標時間は、高水温Tw1に対する燃費優先クランキング目標時間TMem1の方が、低水温Tw2に対する燃費優先クランキング目標時間TMem2よりも小さな値となっている。
その後、それぞれの冷却水温の場面に応じた燃費優先クランキング回転数Nem(Nem1またはNem2)でのエンジンクランキングを燃費優先クランキング目標時間TMem(TMem1またはTMem2)の間だけ実行すべく、図6のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33へと進み、適宜ステップS32へと戻る動作を繰り返し、ステップS33において、エンジンクランキングの実行(継続)時間が燃費優先クランキング目標時間TMem(TMem1またはTMem2)となったと判断すると、ステップS34へと進んでエンジンクランキングを終了する。
このため、実施例3に係る暖房アシスト制御処理制御では、図15のタイムチャートにおいて、時刻T20で燃費優先モードでの暖房の要求が為されると、空調システム26では、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行う。これにより、いずれの冷却水温の場面(実線および破線)でも、時刻T20〜時刻T21の間では、車室の暖房に伴ってヒータコア前温度Trが低下している。このとき、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進んで、ステップS2においてヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さくなっていないことから、ステップS1へと戻る流れが繰り返される。
その後、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2にてヒータコア前温度Trがヒータ下限温度Trlよりも小さいと判断されると(時刻T21)、当該ヒータコア前温度Trでは、要求された暖房効果を確保することができなくなるので、ヒータコア前温度Trを上昇させるすなわち冷却水の温度を上昇させるべく、エンジンファイアリングを行うかエンジンクランキングを行うかの判断を行うために、ステップS3へと進む。ここで、図15のタイムチャートの状況では、バッテリー9の充電量が十分であってかつ冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きいことから、ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6へと進み、エンジンクランキングを実行することとなり、図12のフローチャートにより各冷却水温の場面に応じて燃費優先クランキング回転数Nem(Nem1またはNem2)と燃費優先クランキング目標時間TMem(TMem1またはTMem2)とが設定されて、図6のフローチャートのステップS31にて、燃費優先クランキング回転数Nem(Nem1またはNem2)でのエンジンクランキングが開始(実行)される。
その後、高水温Tw1の場面(実線で示す各特性線参照)では、時刻T21〜時刻T22の間は、ステップS32→ステップS33へと進んでステップS32へと戻る流れが繰り返されて、時間の経過と共にクランキング実行時間カウンタTMがカウントアップ(加算演算)される。その後、図6のフローチャートにおいて、ステップS33にてクランキング実行時間カウンタTMが燃費優先クランキング目標時間TMem1となったと判断されると(時刻T22)、ステップS34へと進んでエンジンクランキングが終了される(エンジン回転数が0となる)。
このとき、空調システム26では、エンジンクランキングが開始された時刻T21以降であっても、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行っており、時刻T21〜時刻T22の間では、エンジンクランキングによる冷却水温の上昇に伴ってヒータコア前温度Trが上昇する。その後、時刻T22においてエンジンクランキングが終了すると、エンジンEngでの発熱動作は終了するが、燃費優先クランキング目標時間TMemに到達するまでエンジンクランキングが継続されたことから、そのエンジンクランキングの継続により生成された熱量で冷却水を暖めることができるので、時刻T24以降であっても、ヒータコア前温度Trは、少し緩やかにはなるが上昇を続けて、ヒータコア前目標温度Treに到達し(時刻T23)、その後、下降し始める。
また、低水温Tw2の場面(破線で示す各特性線参照)では、時刻T21〜時刻T24の間は、ステップS32→ステップS33へと進んでステップS32へと戻る流れが繰り返されて、時間の経過と共にクランキング実行時間カウンタTMがカウントアップ(加算演算)される。その後、図6のフローチャートにおいて、ステップS33にてクランキング実行時間カウンタTMが燃費優先クランキング目標時間TMem2となったと判断されると(時刻T24)、ステップS34へと進んでエンジンクランキングが終了される(エンジン回転数が0となる)。
このとき、空調システム26では、エンジンクランキングが開始された時刻T21以降であっても、ブロアファン31が適宜駆動され、ヒータコア32を通過した空気を利用して暖房を行っており、時刻T21〜時刻T24の間では、エンジンクランキングによる冷却水温の上昇に伴ってヒータコア前温度Trが上昇する。その後、時刻T24においてエンジンクランキングが終了すると、エンジンEngでの発熱動作は終了するが、燃費優先クランキング目標時間TMemに到達するまでエンジンクランキングが継続されたことから、そのエンジンクランキングの継続により生成された熱量で冷却水を暖めることができるので、時刻T24以降であっても、ヒータコア前温度Trは、少し緩やかにはなるが上昇を続けて、ヒータコア前目標温度Treに到達し(時刻T25)、その後、下降し始める。なお、この冷却水温Twが異なることによる作用の違いは、暖房優先モードの場合であっても同様である。
上記したように、要求された暖房効果を確保するために必要な総放熱量(暖房必要放熱量Qn)と、搭載された空調システム26において、実際の冷却水温Twに応じたヒータコア32の単位時間辺りの放熱量(燃費優先放熱量Qdm1または燃費優先放熱量Qdm2)と、を演算し、暖房必要放熱量Qnを当該放熱量で除算することにより演算されたクランキング目標時間(燃費優先クランキング目標時間TMem1または燃費優先クランキング目標時間TMem2)の間、エンジンクランキングを継続するものであることから、ヒータ下限温度Trlからヒータコア前目標温度Tre(温度上昇代ΔT)へとヒータコア前温度Trを引き上げるために必要な放熱量を生成するのに過不足なくエンジンクランキングを実行させることができるので、要求された暖房効果を確保しつつ実際の冷却水温Twに応じたエンジンクランキングを実行することにより消費する電力量を必要最低限のものとすることができ、結果として暖房の要求に基因する燃料消費量を低減することができる。すなわち、燃費優先モードにおいてエンジンクランキングを実行する際、実際の搭載された空調システム26の状況(冷却水温)に応じて、単位エネルギー損失量Qf(kcal/sec)とエンジン冷却水量Qw(kg/sec)との関係を示す算出マップであるエネルギー損失マップ74´を補正し、その補正したエネルギー損失マップ74´を用いてエンジンクランキングにおける燃費優先クランキング回転数Nemを設定することから、当該燃費優先クランキング回転数Nemを冷却水温の変化に伴う最大効率回転数の変化に追従させることができるので、エンジンクランキングを実行することにより消費する電力量を必要最低限のものとすることができる。
また、要求された暖房効果を確保するために必要な総放熱量(暖房必要放熱量Qn)と、搭載された空調システム26において、選択されたモード(燃費優先モードまたは暖房優先モード)での要求された暖房効果に応じた運転状況でのヒータコア32の単位時間辺りの放熱量(燃費優先放熱量Qdmまたは暖房優先放熱量Qdh)と、を演算し、暖房必要放熱量Qnを当該放熱量で除算することにより演算されたクランキング目標時間(燃費優先クランキング目標時間TMemまたは暖房優先クランキング目標時間TMeh)の間、エンジンクランキングを継続するものであることから、ヒータ下限温度Trlからヒータコア前目標温度Tre(温度上昇代ΔT)へとヒータコア前温度Trを引き上げるために必要な放熱量を生成するのに過不足なくエンジンクランキングを実行させることができるので、要求された暖房効果を確保しつつエンジンクランキングを実行することにより消費する電力量を必要最低限のものとすることができ、結果として暖房の要求に基因する燃料消費量を低減することができる。
さらに、要求された暖房効果を確保するために、ヒータコア前温度Trを上昇させるすなわち冷却水の温度を上昇させる必要が生じると、バッテリー9の充電量が十分(エンジンクランキングを行う観点から)であってかつ冷却水温Twが水温下限値Twlよりも大きい場合には、適宜クランキング目標時間(燃費優先クランキング目標時間TMemまたは暖房優先クランキング目標時間TMeh)を設定してエンジンクランキングを行うこととなることから、可能な限りエンジンクランキングを実行することとなるので、暖房の要求に基因する燃料消費量を低減することができる。
要求された暖房効果を確保する、換言するとヒータコア前温度Trをヒータコア前目標温度Treまで引き上げるために必要最低限の時間(燃費優先クランキング目標時間TMemまたは暖房優先クランキング目標時間TMeh)だけエンジンクランキングを継続するものであることから、従来技術に比較して排気性能の低下を抑制することができる。
暖房優先モードが選択された場合には、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdgとエンジン冷却水量Qwとの関係を示す算出マップ(図5参照)を換算することにより生成した暖房優先実車条件マップ71の特性線における極大値を暖房優先放熱量Qdhとして設定していることから、ヒータコア32での放熱量が最も大きくなる単位放熱量実機値を用いて暖房優先クランキング回転数Nehと暖房優先クランキング目標時間TMehとを演算していることとなるので、等しい条件下でエンジンクランキングを実行する場面において、要求された暖房効果を達成するまでに要する時間、すなわち車室を設定温度とするまでに要する時間を、最短とすることができる。
燃費優先モードが選択された場合には、ヒータコア32での単位放熱量理論値Qdgとエンジン冷却水量Qwとの関係を示す算出マップ(図5参照)を換算することにより生成した燃費優先実車条件マップ73の特性線における極大値を燃費優先放熱量Qdmとして設定していることから、モータ/ジェネレータMG(バッテリー9)での消費電力量をヒータコア32での放熱量に変換する効率を高めることと、ヒータコア32での放熱量を大きくすることと、の双方を最も高い次元で満たすという意味で最大効率となる単位放熱量実機値を用いて燃費優先クランキング回転数Nemと燃費優先クランキング目標時間TMemとを演算していることとなるので、等しい条件下でエンジンクランキングを実行する場面において、最も効率よく要求された暖房効果を達成する、すなわち車室を設定温度とすることができる。すなわち、燃費優先放熱量Qdmでは、エンジンクランキングのためにモータ/ジェネレータMG(バッテリー9)で消費された電力量のうち、実際に搭載された空調システム26のヒータコア32で放熱量として利用されることのない損失分(単位エネルギー損失量Qf)が考慮されていることから、エンジンクランキングにより効率よく要求された暖房効果を達成することができる。
エンジンクランキングを実行する場面において、燃費優先モードが選択された場合と暖房優先モードが選択された場合との場合分けが為されていることから、利用者の要求に応じて車室を暖房することができるので、より使い勝手を向上させることができる。
よって、本発明に係る暖房アシスト制御処理では、要求された暖房効果を確保しつつ、実用燃費の悪化を抑制することすなわち全体での燃料消費量を効果的に低減することができる。
次に、効果を説明する。
本発明の車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)駆動系に、駆動源としてのエンジンEngおよびモータ(モータ/ジェネレータMG)を有し、燃料の燃焼を伴うことなく前記モータのトルクにより前記エンジンを駆動させるエンジンクランキングを実行する駆動源制御手段(図6のフローチャートのステップS31)と、車室を暖房するために前記エンジンでの発熱を利用するヒータコア(32)を有する空調システム(26)と、該空調システムの動作を制御する空調制御手段(14)と、を備えるハイブリッド車両の制御装置において、前記空調制御手段は、前記駆動源制御手段に前記エンジンクランキングを実行させる際、前記空調システムにおける前記ヒータコアの単位時間辺りの放熱量(Qd)と、前記車室を暖房するための必要放熱量(Qn)と、からエンジンクランキングの継続時間(TMe)を設定し(図3のフローチャートのステップS20)、該継続時間で前記エンジンクランキングを実行させる(図6のフローチャート)。このため、暖房性能を確保しつつ実用燃費の悪化を抑制することができる。
(2)前記空調システムにおける前記ヒータコアの単位時間辺りの放熱量は、前記ヒータコア内へと送り込まれる前記エンジンの冷却のための冷却水量(Qw)と、前記空調システムにおいて前記ヒータコアへと送り出される空気量(Gr)と、から演算する前記ヒータコアを理想的熱源として考えた際の理論上の単位時間辺りの放熱量(Qdg)に、前記冷却水における冷却水温(Tw)と前記空調システムにおける前記ヒータコア前の温度(Tr)との差分を、乗算することにより演算する(図3のフローチャートのステップS15)。このため、実際の空調システムに適合するエンジンクランキングの継続時間を設定することができ、暖房性能を確保しつつ実用燃費の悪化を抑制することができる。
(3)前記必要放熱量は、前記空調システムにおける前記ヒータコア前での目標温度(Tre)と、前記空調システムにおける前記ヒータコア前の温度(Tr)と、の差分(ΔT)に基づいて演算する(図3のフローチャートのステップS19)。このため、実際の空調システムに適合するエンジンクランキングの継続時間を設定することができ、暖房性能を確保しつつ実用燃費の悪化を抑制することができる。
(4)前記空調制御手段は、前記車室を暖房する際に要する時間を優先する暖房優先モードと、前記車室を暖房する際に効率を優先する燃費優先モードとの切り換えが可能であり(図8のフローチャートのステップS44→ステップS45)、前記暖房優先モードでは、前記ヒータコア内へと送り込まれる前記エンジンの冷却のための冷却水量と、前記空調システムにおける前記ヒータコアの単位時間辺りの放熱量と、の関係を示す算出マップ(71)を用いて、前記エンジンクランキングにおける前記エンジンでのクランキング回転数(Neh)を設定する(図8のフローチャートのステップS54)とともに、該クランキング回転数に応じたエンジンクランキングの継続時間(TMeh)を設定し(図8のフローチャートのステップS59)、前記燃費優先モードでは、前記ヒータコア内へと送り込まれる前記エンジンの冷却のための冷却水量と、前記空調システムにおける前記ヒータコアの単位時間辺りの放熱量から前記エンジンクランキングにおけるエネルギー損失量(Qf)を減算した値と、の関係を示す算出マップ(73)を用いて、前記エンジンクランキングにおける前記エンジンでのクランキング回転数(Nem)を設定する(図8のフローチャートのステップS47)とともに、該クランキング回転数に応じたエンジンクランキングの継続時間(TMem)を設定する(図8のフローチャートのステップS52)。このため、暖房優先モードでは、当該モードに適合させて過不足なくエンジンクランキングを実行させることができるとともに車室の暖房に要する時間を短いものとすることができ、燃費優先モードでは、当該モードに適合させて過不足なくエンジンクランキングを実行させることができるとともにエンジンクランキングによる電力消費量を車室の暖房へと効率良く利用することができる。これにより、利用者の要求に応じて車室を暖房することができるので、より使い勝手を向上させることができるとともに、暖房性能を確保しつつ実用燃費の悪化を抑制することができる。
(5)前記燃費優先モードでは、前記エンジンクランキングにおけるエネルギー損失量Qfを、前記エンジンの冷却のための冷却水における冷却水温Twに応じて補正し(図12のフローチャートのステップS73)、前記ヒータコア内へと送り込まれる前記エンジンの冷却のための冷却水量と、前記空調システムにおける前記ヒータコアの単位時間辺りの放熱量から補正した前記エネルギー損失量を減算した値と、の関係を示す算出マップ(74´)を用いて、前記エンジンクランキングにおける前記エンジンでのクランキング回転数(Nem)を設定する(図12のフローチャートのステップS78)とともに、該クランキング回転数に応じたエンジンクランキングの継続時間(TMem)を設定する(図12のフローチャートのステップS83)。このため、クランキング回転数(Nem)を冷却水温の変化に伴う最大効率回転数の変化に追従させて設定することができるので、エンジンクランキングを実行することにより消費する電力量を必要最低限のものとすることができる。
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1、実施例2および実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1、実施例2および実施例3では、FRハイブリッド車両に適用した例を示したが、例えば、FFハイブリッド車両等に対しても本発明の制御装置を適用することができる。要するに、燃料の燃焼を伴うことなくモータ(モータ/ジェネレータMG)のトルクによりエンジンEngを駆動させることのできるハイブリッド車両の制御装置であれば適用することができる。