以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図8に本発明の第一の実施形態を示す。本発明にかかる無線通報システム1は、学校の構内や徒歩での通園・通学範囲や商店街といった比較的狭小なエリアである防犯対象地域内にて犯罪等の事件が発生した際に緊急を知らせる信号を送信して事件を通報するもので、防犯システムの一種である。本実施形態の無線通報システム1は、緊急無線信号を発するための送信スイッチを備える携帯型の無線端末2と、防犯対象地域内において無線端末2から送信された緊急無線信号を少なくとも一つの機器で受信可能な間隔で防犯対象地域内に複数設置され、無線端末2によって送信された緊急無線信号を受信して中継機6または受信機4に対して送信する送信機3と、該送信機3によって送信された緊急無線信号を受信機4に対して中継する中継機6と、送信機3または中継機6により送信された緊急無線信号を受信し、緊急無線信号が送信されたという情報を出力する受信機4とを備えている(図1参照)。
本実施形態では、緊急無線信号には、無線端末2から発信された緊急無線信号を送信機3が受信した受信時刻、受信した送信機3の送信機コード、無線端末2のID番号及び緊急無線信号の信号種別が含まれるものとしているが、これに限られるものではない。例えば受信機4が緊急無線信号を受信した時刻を事件発生時刻とするのであれば受信時刻を含める必要はない。また、例えば無線端末2の所有者情報等を加えるようにしても良い。
本実施形態における無線端末2の一例を以下に説明する(図7参照)。無線端末2は例えば通園・通学する児童らが身に付けておくことができる携帯性に優れた端末である。身に付けておくことができ、尚かつ遊んだり運動したりしても落ちないようにするという点からすれば、キーホルダのような鉤状部材、あるいはストラップのような紐状部材などの係止具2bを付属させておくことが好ましい。
また、本実施形態では、無線端末2は3個の送信スイッチを備えるようにしている。3個の送信スイッチは、連絡信号を発信する連絡用スイッチ2aを2つ、事件信号を発信する緊急用スイッチ2cを1つからなるものとしているが、スイッチの数、配置等はこれに限られるものではない。連絡用スイッチ2aは連絡信号を送信するためのスイッチであり、この連絡用スイッチ2aを押すなどの操作を行うことによって地域住民に事件発生を通報することができる(図1参照)。本実施形態では、連絡用スイッチ2aを2つ設け、2つの連絡用スイッチ2aを同時に押した場合に、連絡信号が送信機3に対して送信されるようにしているが、これに限られるものではない。例えばスイッチを2箇所に離れて設けておき両方のスイッチを同時に押さなければ緊急無線信号が送信されない仕組みとしておけば、必要時には緊急無線信号を送信できるようにしておきつつ誤送信によって周囲の住民が出動するという無駄と手間を極力回避することが可能となる。尚、連絡用スイッチ2aは、例えば不審者らしき者の発見や生徒の怪我等の対応に用いられる。また緊急用スイッチ2cは、例えば生徒の拉致発生や不審者の教室への乱入等に用いられる。
尚、簡単な操作を実現するという点ではこれらのスイッチをボタン式などとしてもよい。また、誤送信を防ぐという観点からすればスイッチのロック機構を設けておくことなども有効である。例えば、無線端末2の誤動作防止用の手動ロック機構などを設けた場合、特に所有者が小学生などの子供である場合、遊んでいる最中に緊急無線信号を誤送信してしまうのをあらかじめ防ぐことができる。さらに、無線端末2には連絡用スイッチ2aや緊急用スイッチ2cのみならず誤送信を取り消すための取消スイッチ、あるいは誤送信であることを追って通知する訂正スイッチなどを併設しておいてもよい。誤って緊急無線信号を送信してしまった場合、続けてこの取消スイッチを押せば緊急無線信号の送信を即座に中止し、訂正スイッチを押せば緊急無線信号が誤送信であることを通知するための別信号を送信する。尚、例えば犯人に訂正スイッチを押されてしまう可能性も存在するため、この場合でも緊急無線信号が発信されたことの履歴を残し、追跡を可能とすることが好ましい。
更に、無線端末2はID番号を保有していることが好ましい。この場合、事件発生の事実、発生エリア、発生時刻に加えて被害者を特定することが可能となる。無線端末2のID番号設定機構の一例を以下に説明する(図8参照)。本実施形態では、無線端末2はID番号を設定するためのディップスイッチ2dを備えるものである。本実施形態では6個のディップスイッチ2dから構成されるが、これに限られるものではなく、ID番号の数に応じて12個やそれ以上のディップスイッチ2dから構成されることとしても良い。本実施形態では、設定されたディップスイッチ2dの値を各無線端末2のID番号としている。この場合、例えば無線通報システム1の管理者は各無線端末2のディップスイッチ2dの値が重ならないように設定をしておく必要がある。教員並びに児童をはじめとする地域住民は自己が携帯する無線端末2の緊急用スイッチ2cを押すことによって、当該無線端末2のID番号を含んだ緊急無線信号を送信機3に対して送信することができる。尚、本実施形態ではディップスイッチ2dをID番号設定機構としたが、これに限るものではない。例えば無線端末2にフラッシュメモリを内蔵させてID番号を外部から電子的に設定させる機構を採用するようにしても良い。
また本実施形態では、無線端末2に加えて侵入感知センサ等のセンサを併せて用いることも可能である。この場合は、識別信号によりどのような緊急事態が発生したのかを識別することが可能となる。尚、本実施形態ではセンサとして、侵入感知センサ、ガスセンサ、煙感知センサ、振動センサ等を用いることとしているがこれに限るものではない。無線端末2及び各種センサは、以下の識別信号を付加した上で信号の送信を行う。これにより当該信号を受信する受信機4は緊急無線信号の種別を判別することが可能となる。以下に、本実施形態での識別信号の一例を以下に示す。
(1)識別信号I 侵入者感知信号
(2)識別信号E 非常信号
(3)識別信号F 火災信号
(4)識別信号G ガス漏れ事故
(5)識別信号H 事故信号
(6)識別信号L 連絡信号
(7)識別信号B 盗難信号
例えば、煙感知センサからの信号には識別信号Fが含まれ、受信機4が当該信号を受信した場合に火災信号であることを判断することができるようにしている。以下、特に記載がない限り本明細書においては、緊急無線信号のうち緊急用スイッチ2cを押下した場合に送信される非常信号について説明するが、他の緊急無線信号であっても同様に処理を行うことが可能である。
送信機3は、該無線端末2から送信された緊急無線信号を少なくともいずれかの機器によって受信し、中継機6に送信するための機器で、防犯対象地域内に複数設置されて送信網を構築している(図1参照)。送信機3の設置間隔ないしはその密度は電波強度や設置環境等に応じて様々だが、少なくとも防犯対象地域内ならばいずれの箇所で緊急無線信号が送信されても受信できる送信網を構築している必要がある。また、いずれかの中継機6に対して緊急無線信号を送信可能な設置間隔とする必要がある。また、例えば送信機3と受信機4の設置距離が近い場合であって、送信機3の信号の送受信可能範囲に受信機4が設置されている場合には、中継機6による中継を介さずに直接受信機4に緊急無線信号を送信するようにしても良い。また例えば送信機3と中継機6を近接配置し、常に中継機6により緊急無線信号を中継させて受信機4に送信しても良い。
中継機6は、送信機3から送信された緊急無線信号を少なくともいずれかの機器によって受信し、他の中継機6または受信機4に緊急無線信号を中継するための機器で、防犯対象地域内に複数設置されて中継網を構築している(図1参照)。中継機6の間隔ないしはその密度は電波強度や設置環境等に応じて様々だが、少なくとも防犯対象地域内ならばいずれの箇所で緊急無線信号が送信されても受信が可能であり、かつ他の中継機6または受信機4に緊急無線信号を送信することできる中継網を構築している必要がある。一例を挙げれば、中継機6の信号の送受信可能距離が50m程度であれば、例えば百m程度の間隔で中継機6を設置することにより実現される。
本実施形態では、送信機3及び中継機6はタイマーを有しており、緊急無線信号に時刻情報を追加して送信することを可能としている。本実施形態では、無線端末2から最初に緊急無線信号を受信した送信機3が時刻情報を緊急無線信号に追加して送信させる。尚、時刻情報は、無線端末2にタイマー機能を備えさせ、無線端末2からの緊急無線信号に時刻情報を含めるようにしても良い。また、タイマーを備えない送信機3及び中継機6を用いる場合には、受信機4がタイマーを備えていれば足りる。この場合は、多少のタイムラグが生じることが考えられるが、タイマーを1台の受信機4にのみ備えさせればよいので経済的である。
また、受信機4は、緊急無線信号を受信した時に、送信機3に対し応答信号を送信するようにしても良い。この場合、送信機3は受信機4からの応答信号を受信し、緊急無線信号の送達確認を行うことができる。例えば送信機3は受信機4からの応答信号を受信した場合に、ブザーを鳴らすまたはLED表示装置を表示するようにすることで、緊急無線信号が受信機4まで送達されたことの確認を行うことができる。また、例えば送信機3が、ある一定時間内に応答信号を受け取らない場合には、緊急無線信号を中継機に対して再送するようにしても良い。
尚、本実施形態では、送信機能を有する送信機3を送信地点に配置し、中継機能を有する中継機6を中継地点に設置することとしているがこれに限られるものではない。例えば、送信地点と中継地点を一つの地点として送信機3と中継機6を併設するようにしても良い。また、本実施形態では、送信機3と中継機6を別々の装置として構成しているが、送信機能と中継機能を一つの装置として構成するようにしても良い。
受信機4は、中継機6により中継された緊急無線信号を受信する。受信機4は、緊急無線信号に含まれる無線端末2のID番号から当該緊急無線信号がどの無線端末2から発信されたものであるのか、また送信機コードと時刻からどの送信機3によっていつ緊急無線信号が受信されたかという情報を出力する機器である(図1参照)。したがってこの受信機4は、中継された無線信号を受信するための受信装置、事件発生を音で知らせるための音声出力装置、緊急無線信号を送信した無線端末2のID番号や緊急無線信号を受信した送信機3ないしは事件発生日時と送信機コードを表示するための液晶表示画面等の表示装置を備えた機器として構成されている。また上記構成は一例でありこれに限られるものではない。例えば、例えばRS−232C等のインタフェースを備えることによりコンピュータ等の他の機器との接続が可能となる。
サイレン装置5は、無線端末2からの緊急無線信号を送信機3が受信した場合に音を発するための装置で、複数ある送信機3の一部あるいはすべてに併設されるものである。このサイレン装置5自体は無線通報システム1に必須というわけではないが、送信機3に併設した場合には送信機3の周辺に音を鳴り響かせることが可能となる。こうした場合、受信機4の近傍にいる地域住民のみならず、各送信機3の近傍にいる地域住民も当該地域にて事件が発生したことを知ることができる。
続いて、本実施形態における送信機3の構成および仕様の具体例を以下に詳細に説明する(図2等参照)。以下に述べる送信機3の構成は一例でありこれに限られるものではない。本実施形態の送信機3は、リモコン(リモート・コントロール)および人体感知センサ、ドアセンサなどの各種センサの微弱な電波信号(例えばAM311MHz)を受信して小出力(例えばFM426.275MHz)信号を中継機6に送出する単向通信方式の送信、中継装置である。変調方式にはFSK(Frequency-shift keying、周波数偏移変調)方式のデジタル信号変調方式を採用し、空中線電力は10mW、占有周波数帯は4kHz以内である。電源にはDC12Vのアダプタ11を使用している。さらに寸法および重量は、一例であるが高さ20mm、幅113mm、奥行き74mm、重量77gであり、軽量化を図り尚かつ防塵構造をとっている。また、周波数の許容偏差は±5ppmであり、伝送速度1200bpsである。また、図示はしないがタイマーを有している。尚、本実施形態においては、送信機3及び中継機6は同一の構成及び仕様であるものとし、中継機6についての説明は省略する。しかしながら、送信機3及び中継機6の必ずしも同一の構成及び仕様である必要はない。
本実施形態では、以下のような特徴を備えた送信機3(およびこれらによって構築される送信網)を採用しており、その設計概要について説明しておくと以下のようになる。
(a)周波数の安定化
周波数の安定化を図るため、安定化電源を使用した±5ppmの安定度を有する水晶発振子を作用した発振方式とすることによって周波数の安定化を図っている。
(b)占有帯域幅の制限
変調周波数の偏位を±1.5kHz以下に抑圧し、また、占有周波数帯幅が不必要に広がらないよう変調回路にLPF(ローパスフィルタ)19を挿入している(図2参照)。
(c)空中線電力の制限
送信部の電源に定電圧回路を構成して安定化された電源を使用し、最終単増幅部の可変コンデンサにより送信出力を調整している。
(d)スプリアス輻射抑圧
アンテナ回路と送信回路間に例えばSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタを利用し
たBPF(Band Pass Filter)26を挿入し、アンテナ28からの不要輻射を抑圧している。また、制御部15のCPUから出力される変調信号に含まれる高周波成分については変調回路にLPF19を挿入することによってこれを低減している。送信スペクトラムで帯域幅以外のスプリアス(無線送信機から発射される占有周波数帯域幅以外の周波数の電波)成分は−40dB以下であり、スプリアス発射の強度は2.5μW以下である。
(e)受信装置の副次的に発する電波等の限度
受信装置の副次的に発する電波等を4nW以下に制限している。
(f)混信防止機能
識別符号を内部メモリで記憶し、送信時識別符号を一緒に送信する。
(g)電源
DC12Vのアダプタ11から12Vの電源が入力されるとこれを低電圧5Vに変換して使用する。
また、空中線電力は10nW以下であり、空中線電力の偏差は+20%、−50%以内である。アンテナ形式は1/4波長(λ/4)の単一型であり、偏波面は垂直、無指向性である。さらに、アンテナ利得は0dBi、公称インピーダンスは50Ω、使用周波数426MHz、VSWR(電圧定在波比)は1.2以下(426MHz±5MHz)である。ここでアンテナ28の放射特性と偏波面の一例を参考までに示しておくと図3に示すようになる。ここで、36は垂直面パタン(X−Z面)、37は水平面パタンを示す。尚、垂直面パターン(Y−Z面)は省略している。
次に、この送信機3を構成する各装置の動作をブロックダイヤグラムに基づき説明する(図2参照)。
(1)基準周波数発振部
基準周波数発振部21には水晶発振の3逓倍増幅部が用いられており、水晶発振回路により47.36MHzで発振し、その第3高調波に共振した3逓倍増幅回路により142.09MHzの周波数を生成する。また、周波数調整用の可変コンデンサにより周波数の調整が行えるようにしている。
(2)周波数シンセサイザ部
LPF19を通じて入力されたデータを水晶発振により生成された142.09MHz周波数と合成する。
(3)変調部
占有周波数帯幅が不必要に広がらないように変調制限をする。また、変調回路20が、
可変容量ダイオードを使用してデジタル信号を変調する。
(4)送信部
まず、BPF22が、142.09MHz外の不要な周波数の発生を抑圧する。次に、
3逓倍増幅部23が、前端部の142.09MHzを3逓倍して搬送波周波数である426.275MHzを得る。続いてBPF24が、搬送波周波数である426.275MHz外の不要な周波数の発生を抑圧する。さらに、送信出力の調整が可能な最終段の装置である送信出力制御増幅部25が送信出力の最終調整を行う。そうすると、BPF26が、搬送波周波数である426.275MHz外の不要な周波数の電波発射を抑圧する。ANT27は、アンテナ28へ信号伝送時に送信出力の損失を減らす。
(5)受信部14
AM311.06MHzの変調された微弱電波のアナログ信号を受信してシリアル・デジタル信号に変換し、制御部15に伝送する。発信回路13が4.096MHzのクロックを発生させている。
(6)制御部15
(1)送信・受信制御
送信時間の制御は、送信時間制御装置で行う。例えば送信時間は固定されて2.5秒であり、送信後の待機時間は30秒以上としている。また、混信防止機能は、識別符号を内部メモリで記憶しておき、送信時識別符号を一緒に送信する。
(2)状態表示
状態表示および制御機能として、無線端末により発信される緊急無線信号、各種センサの信号を受信して送信データを送信部へ伝送する。このときの作動状態はLED表示装置17によって表示される。さらに、作動状態はブザー16によってブザー音で知らせることが可能となっている。電源制御部18は、不必要な電波送信を制御するためにデータ送信時だけ電圧を印加する。
(7)電源部
電源として12VのACアダプタ11を使用している。ACアダプタ11の出力は定電圧回路12で5Vに安定化され、送信部と制御部15に供給される。送信部への電圧印加は電源制御部18の作用により送信時にだけ行われる。
続いて、送信機3の外観を示しつつ外部構造についても説明する(図4〜図6参照)。
送信機3の筐体30の上部端寄りにアンテナ28が取り付けられている。また筐体30の正面の両側には複数の透孔31が設けられ、これら透孔31の近傍にはLED表示装置17aが併設されている(図4参照)。また、筐体30の底面にはACアダプタ11用のジャック端子32、別のLED表示装置17b、電源用スイッチ33、外部接続端子34がそれぞれ設けられている(図6参照)。外部接続端子34は、例えば有線接続しておいたサイレン装置5を通報と同時に鳴らすような場合に利用するものである。さらに、筐体30の両側には装置本体を例えば壁面に取り付ける際に利用するビス取付孔35が設けられている(図4等参照)。したがって本実施形態の送信機3は壁面設置が可能である。ただし、ここまで説明してきたように比較的コンパクトな設計となっているため例えば机上などに設置しても余りスペースを割かないで済む。
なお、本実施形態にかかる送信機3の性能の一環として環境試験条件を以下に示す。この送信機3は、
・温度;−10℃〜+50℃
・湿度:85%、40℃に4時間放置
・衝撃:高さ5cmからコンクリートの床上に3回落下
・電源電圧:5Vから±10%
という環境試験条件をクリアできるものである。
続いて、本実施形態における無線通報システム1を利用して事件を通報するようにした態様の一例とその際の動作について説明する。防犯対象地域とは、例えば教室、通園路や通学路などである(図1参照)。この場合、無線端末2を携帯するのは主に教員や児童であるが、通学路をパトロールする地域住民などが携帯していることも好ましい(図1参照)。こうした場合、事件に遭遇しあるいは目撃した地域住民などによって事件が迅速に通報されることが期待できる。また、このように教室、通園路・通学路を防犯対象とした無線通報システム1であれば、受信機4の設置場所としては学校あるいは園内の職員室や警備室、いわゆる子ども110番の家などが考えられる。または、受信機4自体を警察署や交番などに設置しておくということも考えられる(図1参照)。なお、いずれの場合においても受信機4の設置箇所数は1箇所に限られる必要はなく、例えば2箇所に設置しておけば事件の通報を当該2箇所で同時に受けることが可能となる。
このような無線通報システム1の場合、防犯対象地域内にて事件が起こったとすれば当該事件に遭遇しあるいは目撃した教員並びに児童をはじめとする地域住民は、地域住民自身が携帯する無線端末2の送信スイッチを操作することによって緊急無線信号を送信することができる(図1参照)。送信された緊急無線信号は通報地点近傍の送信機3によって受信され、該受信の日時および送信機コードを加えた後に送信される。また、送信機3にサイレン装置5が併設されている場合には当該サイレン装置5によって周辺に音が鳴り響く。緊急無線信号が中継機6を中継し最終的に受信地点における受信機4まで伝送されると、受信機4は事件が発生したことを周囲の人に知らせる(図1参照)。これにより不審者等は犯行を断念し、その場から立ち去らせることができる。さらに、事件発生に関する時刻および場所の情報やどの無線端末2から緊急無線信号が送信されたという情報のみならず、送信地点、中継地点およびその態様に基づき通報地点ないしは通報地点に関する情報も出力されるようにしても良い。
以上説明したような本実施形態の無線通報システム1によると、当該防犯対象地域内にて事件が発生したことを近隣の教員並びに児童をはじめとする地域住民らがいち早く知ることができる。しかも、無線端末2からの通報を受けると同時に事件発生日時と事件発生地域の把握や被害者の特定を行うことが可能であるから、地域内で発生した事件に対する地域住民等による迅速な対処が可能となる。
しかも、この無線通報システム1は既存の回線やアンテナ等の設備を不要とせず、送信機3及び中継機6の僅かな設置スペースと当該送信機3及び中継機6への給電設備さえあれば自由に設置ならびに設置変更が可能な簡易かつ柔軟なものであることから、特に狭小なエリアに防犯システムを新規導入するにはコストと手間が少ないという点で有利である。したがって、例えば学校の構内や通園・通学範囲や商店街といったような狭小なエリアにおける住民の日常生活上の安全を支援するシステムとして好適である。
加えて、事件発生地点ないしは地域を把握するにあたっては、緊急無線信号の受信および中継の態様を検出してその結果から判断すればよいので、無線通報システム1を新たに構築するにあたり例えばGPSのような高価なシステムを導入する必要はなく、新規導入するにあたってコストを低く抑えることができる。したがって、事件発生地域の把握手法、導入コストの両面からしてこの無線通報システム1は小規模のシステム構築に向いているものであり、特に学校の構内、徒歩での通園・通学範囲(例えば通学路)や商店街といったレベルの比較的狭小なエリアに導入するにあたり好適である。
幼稚園あるいは小学校への不審者の侵入や犯罪行為を未然に防ぐことを目的とする場合であれば、校舎(園舎)の各フロアや校庭(園庭)に送信機3及び中継機6を設置し、職員室ないしは警備員室に受信機4を設置しておき、少なくとも校内(園内)に滞在中の各児童には無線端末2を携帯させるようにするといったシステムを構築することも可能である。こうした無線通報システム1を構築することにより、例えば校内(園内)にて不審者を見かけた児童が通報することによって職員や警備員らが迅速に対応することが可能となり、場合によっては凶悪な犯罪を未然に防止することにつながる。なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では、無線通報システム1の適用範囲の一例として学校の構内、徒歩での通園・通学範囲や商店街といったものを例示したが、防犯対象地域は設置地域や保護対象者などの態様に応じて種々のエリアを想定できることはいうまでもない。例えば集合住宅(団地やマンションなど)を対象エリアとして無線通報システム1を構築することもできるし、新興住宅地などの一定エリアを対象として無線通報システム1を構築することもできる。
なお、ここ数年では大人はもちろん子供も高い割合で携帯電話やPHSを持っているという状況からすれば、これら携帯電話やPHSを無線通報システム1における無線端末2として兼用するということも考えられる。具体的には、携帯電話やPHSに上述したような無線端末2の緊急無線信号送信機能を併設しておき、電話やメール機能とは別のボタンを押すなどの操作で緊急無線信号を送信できるようにしたものなどの利用が考えられる。
また、本実施形態で説明した受信機4やサイレン装置5は音声や光などで事件発生を伝えることが可能だが、これらは伝達手段の一例に過ぎず他の種々の伝達手段も採用し得る。一例を挙げておくと、例えばLEDを並べた掲示板を地域内の歩道や公園、集会所などに設置しておき、事件発生を通報すると同時に発生地域をLEDで知らせるようにするといった形で伝達することも可能である。
次に、図9から図14に本発明の無線通報システムの第二の実施形態を示す。図9に本実施形態での無線通報システム1の構成の一例を示す。尚、無線端末2、送信機3、中継機6の図示は省略する(図1参照)。本実施形態の無線通報システム1は、携帯型の無線端末2と、中継機6または受信機4に緊急無線信号を送信する送信機3と、受信機4に対し緊急無線信号を中継する中継機6と、送信機3または中継機6によって送信された緊急無線信号を受信し、届いた緊急無線信号の種別やID番号を解析した後に、どの無線端末2から緊急無線信号が送信されたという情報および複数の送信機3のうちいずれの機器によって緊急無線信号がいつ受信されたかという情報を出力する受信機4と、受信機4に接続されるコンピュータ7を備えるものである。さらに、コンピュータ7に接続されるテレビ電話機能付き携帯電話8(以下、単に発信元携帯電話8aという)と、携帯電話設置台10(以下、単に設置台という)に設置された発信先携帯電話8b及び監視カメラ9を備える。尚、テレビ電話機能とは、発信先携帯電話8bに備えられたカメラで撮影される動画像を発信元携帯電話8aで受信し、当該画像を見ながら音声通話が可能な機能をいう。
以下に、無線通報システム1を学校及びその通学路に適用した場合を例にとって詳細に説明する。尚、本実施形態における無線通報システム1は、校内のみ、または通学路のみに適用することも可能である。また、適用場所は校内及びその通学路に限られるものではなく、一般の限られた地域、例えば商店街、工場の敷地内及びその周辺等に適用することも可能である。
本実施形態におけるコンピュータ7は、出力装置、入力装置、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、ビデオキャプチャボード等を備える市販のパーソナルコンピュータを用いることとすれば良い。コンピュータ7の、形態、性能等は特に限られるものではなく、受信機4および携帯電話8と接続可能な入出力インタフェース及び警告音を発するためのスピーカー等を備えていればよい。また、当該コンピュータ7は通常は職員室等に設置され、常に誰かの監視下におかれる場所に設置されることが好ましい。また当該コンピュータは1台には限られず、同様の機能を果たす受信機4とコンピュータ7を複数設置することとしても良い。この場合には、一台を職員室、他のコンピュータ7を事務室、校長室、用務員室等に配置することが好ましい。尚、コンピュータ7は、本発明の無線通報システム専用であることが好ましいがこれに限られるものではなく、通常時は、他の用途に用いることもできる。
本実施形態では、コンピュータ7と受信機4はインターフェース接続される。本実施形態では例えばRS−232Cインタフェースにより接続することとしているが、接続するインタフェースは特に限られるものではない。これによりコンピュータ7は、受信機4が受信した緊急無線信号を解析することが可能となる。また、接続形態は有線であっても無線であっても良い。更に、コンピュータ7と発信元携帯電話8aはインタフェース接続される。本実施形態では、例えばUSBインタフェースを用い、動画像の転送のためにビデオケーブルを用いることとしているがこれに限られるものではなく、例えばIEEE1394ケーブル等を用いることとしても良い。また、接続形態は有線であっても無線であっても良い。これにより、発信元携帯電話8aがテレビ電話機能を用いて通信を行っている画像をコンピュータ7にリアルタイムに取り込みディスプレイ等に表示することが可能となる。
また、コンピュータ7は以下の情報をデータベースとして予め当該コンピュータのハードディスク等に有しておくものとしている。データベース構成(データベース名称、テーブル名)の一例を以下に示す。
(1)無線端末データベース :学年、クラス、出席番号、名前、顔写真の画像データ、身体的特徴、所有する無線端末のID番号、自宅住所、連絡先等
(2)関係者データベース :送信機コード、関係者ID、名前、住所、携帯電話番号、メールアドレス等
(3)送信機データベース :送信機コード、設置場所、付近の関係者、付近の送信機コード、付近に設置された携帯電話の番号等
(4)携帯電話及び監視カメラデータベース :送信機コード、携帯電話/監視カメラID、設置場所、電話番号、設置場所、付近の携帯電話、監視カメラ等
尚、上記データベースの構成、テーブル名等は一例であってこれに限られるものではない。また、本実施形態では上記データベースはコンピュータ7の補助記憶装置に予め記録しているが、これに限られるものではなく、コンピュータ7に接続された別のコンピュータ、またはデータベースサーバ等に記録しておくこととしても良い。
本実施形態においては、発信先携帯電話8bを教室、廊下、体育館等の校内に複数設置することとしている。設置数としては、各教室に少なくとも1つ設置することが好ましいが、これに限られるものではない。尚、本実施形態では、携帯電話8としてNTTドコモFOMA(登録商標)シリーズを用いることとしているが、これに限られるものではない。また、本実施形態では携帯電話8はテレビ電話機能を備えていれば良く、その他有する機能は特に限られるものではない。
本実施形態では、発信先携帯電話8bを、コンピュータ7から発信元携帯電話8aを介して遠隔操作によりカメラの向きを制御することが可能な設置台10に設置することとしている。本実施形態では、設置台10として、例えばエス・エー・エス株式会社製TV POCKETを使用することとしているが、携帯電話8のテレビ電話機能を用いて制御可能な監視カメラ9であればよく、これに限られるものではない。当該設置台10は、設置された発信先携帯電話8bに対しテレビ電話機能を用いて通話することにより、コンピュータ7と発信元携帯電話8aを用いて当該電話台の上下、左右の方向を任意に変更することが可能となるものである。これにより通話先に設置された発信先携帯電話8bのテレビ電話機能によりカメラが撮影している映像の撮影方向を操作することが可能となる。
当該設置台10の操作方法の一例を示す。例えばコンピュータ7の操作画面に図10のように配置された携帯電話8のダイヤルイメージを表示して制御することが可能である。画面上のダイヤルをクリックすると、その制御要求が携帯電話8に転送され、携帯電話8でダイヤルを押すことと同等の機能が実行される。画面上のダイヤル4をクリックすることにより設置台10が右側に動き、ダイヤル2をクリックすることにより設置台が上側に動き、ダイヤル5クリックすることにより移動が停止し、ダイヤル0をクリックすることにより初期位置に戻るものである。これにより設置台10に設置された送信先携帯電話8bのカメラ機能により撮影される動画像は、設置台の動きに伴い撮影範囲が変化する。例えばTV POCKETは横方向に各70度、上下に30度の範囲で可動することが可能である。尚、コンピュータ7の操作画面には、必ずしも携帯電話8のダイヤルイメージを表示する必要はない。左右上下の各ボタンを表示して、それをクリックすることにより遠隔操作することもできる。また、送信元携帯電話8aのダイヤル操作により遠隔操作することとしても良い。また、必ずしも可動式の設置台10を用いる必要はない。例えば一つの動画像により教室全体を見渡せる位置に送信先携帯電話8bを設置することが可能であれば良く、このような場合には、設置台10は不要である。
また本実施形態では、夜間等の暗闇の中での撮影においてもクリアな監視画像を得るために、設置台10にコンピュータ7から発信元携帯電話8aを介して制御可能な補助照明を備えることとしている。また補助照明が点灯することにより、犯罪者に対する警告の役割を果たすので、犯罪の未然防止に役立つ。
また、本実施形態では通学路に監視カメラ9を設置することとしている。本実施形態では、FOMAのテレビ電話機能を利用して遠隔監視を可能とする監視カメラ9として松下電器社製Navica−Fを用いるものとしているが、携帯電話8のテレビ電話機能を用いて制御可能な監視カメラ9であればよく、これに限られるものではない。当該監視カメラは携帯電話端末のボタンを操作することによりカメラの向きやズーム等の制御を行うことができるものである。具体的には、当該監視カメラ9が有するカードスロットに、データ通信カード(カード型FOMA)を差し込むことで遠隔操作が可能となるものである。
さらに、本実施形態では、コンピュータ7とパケット通信可能な監視カメラを接続し、携帯電話インターフェースを有する監視カメラ9と併せて用いても良い。これにより、パケット通信により監視カメラを制御することが可能となる。本実施形態では、LANケーブルにより接続することとしているが、これに限られるものではなく、無線LAN等を用いて接続することとしても良い。また、携帯電話インターフェースを有する監視カメラ9に代えてパケット通信可能な監視カメラを用いることとしても良い。
本実施形態では、校内には発信先携帯電話8bを設置台10と共に配置し、通学路には監視カメラ9を配置することとしている。これは教室内に監視カメラ9を設置することは、現実面においてプライバシーの問題等、種々の問題を有しているという理由による。しかしながら、設置が可能である場合には、教室内に監視カメラ9を配置しても良いのは勿論であり、また設置可能なスペースが設けられるのであれば、通学路に発信先携帯電話8b及び設置台10を設置しても良いのは勿論である。また送信機3、中継機6、受信機4はそれぞれ通信が可能な位置に設置しておく必要があることは上述のとおりである。尚、本実施形態では各教室に送信機3、職員室に受信機4を設置することとしている。
続いて、本実施形態における無線通報システム1を利用して事件を通報するようにした態様の一例とその際の動作について説明する。本実施形態では、通学路上において誰かが無線端末2の緊急用スイッチ2cを押した場合について説明する。尚、緊急用スイッチ2cが押されてから受信機4が緊急無線信号を受信するまでの動作は上述の通りであるので省略する。
受信機4が緊急無線信号を受信すると、コンピュータ7はRS−232Cインタフェースを通じて当該緊急無線信号を受信し、図11に示すような事件発生情報をコンピュータ7の出力装置に表示する。尚、上述の通り緊急無線信号には、例えば無線端末のID番号、事件信号であることを示す緊急無線信号の信号種別、事件発生時刻、送信機コード等の情報が含まれている。コンピュータ7は、緊急無線信号を受信すると、無線端末データベースにより当該緊急無線信号の無線端末2のID番号に関連づけられた名前等の生徒情報を出力装置に表示する。即ち、緊急用スイッチ2cを押したと思しき生徒の情報である。さらに、時刻情報及び送信機コードに関連づけられた送信機設置場所を同時に表示することとしている。また、この場合において注意を引くために画面を点滅表示させ、同時にサイレン装置5、スピーカー等から警告音を発生させるようにすることが好ましい。尚、表示項目は一例であってこれに限られるものではなく、当該生徒の顔写真等も併せて表示させるようにしても良い。また、例えば教室内での事件の発生時等には、必ずしも生徒情報を表示させる必要はない。送信機設置場所がわかれば教員等は対応が可能であり、コンピュータ7は処理の高速化が図れるものである。
次に緊急無線信号を受信したコンピュータ7は、関係者に事件発生を知らせる電子メールをブロードキャスト送信することとしている。尚、本実施形態では、コンピュータ7はADSL接続、光ファイバ接続等によりインターネットにアクセス可能であることとしている。例えば、校舎内のみに本発明の無線通報システム1を適用する場合であれば、校内LAN等の限られたネットワークのみに接続可能であれば良い。ここで関係者とは生徒の保護者、PTA関係者等の地域の協力者等をいい、生徒に問題が発生した場合にいち早く現場に向かい生徒の安全を確保する者をいう。また、本実施形態では、緊急無線信号を受信した送信機3の設置位置に関連づけて、その近隣の関係者を予め登録することとしているが、これに限られるものではない。尚、関係者に加えて警察に当該電子メールを送信することとしても良い。例えば近隣の交番、または交番に勤務する警察官に電子メールを送信することが可能であれば、事件への迅速な対応が可能となり、犯罪の未然防止に繋がる。尚、本実施形態の無線通報システム1では、対応の迅速性が要求されるため電子メールの送信先は原則として関係者の所有する携帯電話のメールアドレスとしているが、これに限られるものではく、通常のパーソナルコンピュータから閲覧可能なメールアドレスを送信先に含めることとしても良い。
また、本実施形態では、電子メールの送信には、コンピュータ7にインストールされて使用される一般のメールソフトを用いることとしている。尚、特にメールソフトの種類、バージョン等は限られるものではない。また本実施形態では、一般のメールソフトが通常有する機能である開封確認機能を用いて、送信した電子メールの開封がなされたかどうかを確認することとしている。これにより、事件等の発生を伝える電子メールが受信先で開封されたかどうかの確認をすることができる。
次に、コンピュータ7が送信する電子メールの電文の一例を図12に示す。図12(a)は電子メールのテンプレートの一例を、(b)は実際に送信される電子メールの電文の一例を示している。本実施形態では、予め複数の電子メールテンプレートを記憶させておき、緊急無線信号に含まれる信号種別によって複数の電子メールテンプレートの中から対応する電子メールテンプレートを選択することとしている。信号種別と選択すべきテンプレートの種類の対応は予め補助記憶装置に記憶させておくこととすれば良い。
また、図12(a)における%W、%X、%Yおよび%Zには、生徒の名前及び緊急無線信号に含まれた送信機コードに送信機データベースにより関連づけられた送信機4の設置場所、信号種別、時刻を挿入することとしている。さらに本実施形態では、当該生徒の顔写真の画像ファイルをファイルに添付して送信することとしている。これにより電子メールを受信した関係者は、事件発生場所、生徒名、生徒の顔写真等を知ることができるため、事件への対応を迅速に行うことができる。尚、電子メールテンプレート、電文は一例であって、これに限られるものではない。上記項目に加え、例えば身体的特徴(髪型、身長等)を電文に追加することとしても良い。尚、当該電子メールテンプレートは、予め補助記憶装置等に記憶しておくものとする。
また、当該電子メールを送信する関係者は、事件発生現場に近ければ近いほど良く、また送信数は、多ければ多いほど事件の未然防止、早期解決を図ることが可能となる。少数の関係者にのみ当該電子メールを送信し、電子メールを受信した関係者が事件発生現場付近にいない場合等は、迅速な対応を取ることができないことが起こりうる。そこで、本実施形態では当該電子メールを多数の関係者に送信することとしている。本実施形態では、事件が発生したことを通報した送信機3が設置されている場所の番地情報を起点として、他の送信機3との設置距離が短い順に、他の複数の送信機3に関連づけられた関係者に対して、電子メールをブロードキャスト送信することとしている。この理由は、一刻も早く事件が発生したことを事件発生場所周辺の多くの関係者に通知して、事件発生場所や最寄りの監視地点に急行してもらうためである。
具体的な手法の一例を以下に述べる。表1に、防犯対象地域内に5台の送信機3を設置した場合の、送信機コードと送信機設置場所の対応を示す。例えば、千代田区麹町1丁目2−6の送信機3には、3人の関係者のメールアドレスA1、A2及びA3が関連づけられているとする。また千代田区麹町2丁目5−8の送信機3には、2人のメールアドレスB1とB2が関連づけられている。同様に、全ての送信機3に対して関係者のメールアドレスを設定した対応を表2に示す。ここで例えば、千代田区麹町2丁目5−8で事件が発生した場合には、同じ番地に定義されているメールアドレスに対して上から順に電子メールを送信する。次に、近傍に存在する送信機のメールアドレスに対して次々に電子メールを送信して、全てに送信し終わるまで同じ処理を繰り返す。具体的には、B1→B2→A1→A2→A3→C1→C2→D1→E1→E2→E3の順になる。尚、当該処理は送信機データベースに近傍の送信機コードを予め登録しておくことにより可能となる。また、例えば事件発生場所と各関係者の登録番地間の距離を地図上で比較しながら短い順に対応する関係者に通知するようにしても良く、地図上の距離を記録しておくことにより上記処理を実現させるようにしても良い。
次に、無線情報システム1が行う処理を図13に示すフローチャートを用いて説明する。受信機4からの緊急無線信号を受信(S1)したコンピュータ7は、電子メールのブロードキャスト送信と同時に、コンピュータに接続されている送信元携帯電話8aに自動的にテレビ電話接続要求を出力する(S2)。これはコンピュータ7と送信元携帯電話8a間で予め決められた通信手順により実現されている。これを受けて、送信元携帯電話8aは、当該緊急無線信号を最初に受信した送信機3に近接設置された送信先携帯電話8bまたは監視カメラ9の通信カードに対してテレビ電話接続する(S3)。さらに、送信先携帯電話8bまたは監視カメラ9の通信カードは設置台10または監視カメラ9に対してテレビ電話接続通知を出力する(S4)。これは送信先携帯電話8bと設置台10または監視カメラ9の通信カードと監視カメラ9間で予め決められた通信手順により実現されている。尚、自動的にテレビ電話接続要求を出力するとは、当該送信機3に関連づけられてデータベースに記憶されている送信先携帯電話8bの電話番号または監視カメラ9の通信カードの電話番号に対し、コンピュータ7が送信元携帯電話8aに電話をかけさせて通信を開始するものである。ここで、送信先携帯電話8b及び監視カメラ9の通信カードの電話番号は、当該緊急無線信号を最初に受信した送信機3の設置場所と関連づけられて予めデータベースに記憶されている。
本実施形態では、接続はテレビ電話接続であるため、接続がされると送信先携帯電話8bまたは監視カメラ9で撮影されている動画像が、送信元携帯電話8aに転送される。さらに送信元携帯電話8aにビデオケーブルで接続されたコンピュータ7に転送される(S5〜S6)。利用者は、当該動画像をコンピュータの出力装置上で観ることができる。尚、送信元携帯電話8aにも当該動画像は再生されているので、利用者は併せて確認することも可能である。尚、この場合、送信元携帯電話8aにより音声通話も併せて行えるので、送信先携帯電話8b及び監視カメラ9周辺の音声も同時に転送される。
さらに上述したように、設置台10及び監視カメラ9はコンピュータ7の操作画面を操作することにより、送信元携帯電話を介してカメラの向き等の制御を遠隔操作することができる(S7〜S9)ため、監視者は、カメラの向きを変えながら被害者や犯人の存在、事件の様子を確認することができる。
また、本実施形態では緊急無線信号を連続して受信した場合にも連続した画像監視が可能である。コンピュータ7は次の新たな緊急無線信号を受信すると(S10)、これまで接続していた送信先携帯電話8bまたは監視カメラ9との通信を切断し(S11〜S13)、新たな緊急無線信号を受信した送信機3の近接に設置された送信先携帯電話8bまたは監視カメラ9に対して同様に接続を行うものである。この理由は、最新の緊急無線信号を受信した送信機の近くの方が犯人を見つけるのに適しているという理由による。この場合、強制的に当該処理が行われるようにしても良いし、監視者に接続を中断してもよいかどうかの確認表示を画面出力しても良い。尚、次の緊急無線信号に対しても上記述べたのと同様の処理(S1〜S10)が繰り返されることとなる。
また本実施形態では、送信先携帯電話8bまたは監視カメラ9で撮影されている動画像をコンピュータ7の補助記憶装置等に記憶することとしている。動画像の記録は必須ではないが、動画像の記録により、事件発生時の周囲状況、犯行状況等を証拠として記録しておくことができる。
尚、例えば通学路において送信機3の近傍に監視カメラ9が設置されていない場合は、最も近い監視カメラ9に接続することとしても、また接続自体を行わないことにしても良い。この場合、どちらの処理を選択するかを予め設定しておけば良い。また、本実施形態では、監視カメラ9は接続時に撮影を開始するものとしているがこれに限られるものではなく、常時監視を行うこととしても良い。
さらに本実施形態では、図14に示すようにコンピュータ7の出力装置上に、緊急無線信号を最初に受信した送信機3に近接する複数の送信先携帯電話8b及び監視カメラ9の設置位置を表示することとしても良い。図14は、体育館で事件が発生した場合に、即ち体育館に設置された送信機3が緊急無線信号を受信した場合に、送信先携帯電話8bが設置されている体育館、それに隣接する1年1組の教室、さらに1年2組の教室を選択可能な様子を示すものである。この場合、監視者が、画面に表示されている設置位置を示すボタン38をマウス等でクリックすることにより、当該設置位置に設置された送信先携帯電話8bまたは監視カメラに接続することができるものである。尚、本実施形態では近接する3カ所の設置位置を表示することとしたが、表示数はこれに限られるものではない。また近接する送信先携帯電話8b及び監視カメラ9は、データベースに予め記憶しておくこととしても、設置場所を地図上に記録した地図情報をコンピュータに記憶させておき近接する設置場所を検索するようにしても良い。このようにすることで、監視者は動画像を次々と切り替えながら犯人の追跡及び事件の状況を捉えることが可能となる。
次に、図15から図18に本発明の無線通報システムの第三の実施形態を示す。図15に第三の実施形態での無線通報システム1の構成図の一例を示す。本実施形態での無線通報システム1は、緊急無線信号を発するための送信スイッチを備える携帯型の無線端末と、無線端末から送信された緊急無線信号を少なくとも一つの機器で受信可能な間隔で複数設置され、無線端末によって送信された緊急無線信号を受信して受信機に対して送信する送信機と、送信機により送信された緊急無線信号を受信し、緊急無線信号が送信されたという情報を出力する受信機と、更に、地震発生時に少なくとも当該地域での予測震度を含む地震情報を取得する地震情報取得手段と、受信機及び地震情報取得手段に接続され、緊急無線信号及び地震情報を受信するコンピュータとを備え、コンピュータは、予測震度が予め設定された危険震度以上の地震情報を受信した場合であって、更に、緊急無線信号を受信した場合に、該緊急無線信号の信号種別及び送信機の設置場所に関する情報を抽出し、送信機の設置場所毎に信号種別に基づいた安否確認情報をコンピュータの出力装置に表示するものである。尚、図15においては、上述の実施形態と同様の部分である無線端末2、送信機3、中継機6についての図示は省略する。また、上述の実施形態と同様の部分についての説明は省略する。
本実施形態では、コンピュータ7は、地震速報配信サーバ39から提供される地震情報をインターネット網40を介して受信する。尚、地震情報の取得は、インターネット回線に限らず、専用回線、無線電波等を通じて地震情報を取得するようにしても良い。更に、コンピュータ7は、地震速報受信機41と共に地震速報受信手段42として機能する。
本実施形態では、地震情報として「緊急地震速報」を取得することとしている。緊急地震速報とは、現在、気象庁が発信する地震情報の一つで、地震発生時に震源付近の観測データを使って、震源、規模(マグニチュード)、各地の震度などを即座に推定し、伝達する情報をいう。しかしながら、地震情報として用いるのは、気象庁による緊急地震速報に限られるものではなく、他の既存の配信サービス(独立行政法人防災科学技術研究所によるAQUAシステム等)、または、今後開始される配信サービス等であっても良いのは勿論である。
また、本実施形態では、地震情報取得手段43として、JEITA((社)電子情報技術産業協会)により提供されている「IT自動防災システム」を用いる。本実施形態では、地震情報取得手段43は、地震速報配信サーバ39とインターネット網40と地震速報受信機41からなる。IT自動防災システムは、伝達速度の速い初期微動(P波)を震源地付近で感知し、伝達速度は遅いが揺れの大きい主要動(S波)が到達する前に、各地で予測される震度などを通知する。気象庁から発信された緊急地震速報を地震速報は配信サーバ(地震速報配信サーバ39)で受信し、地域ごとに予測される震度や到達時間を独自に計算した上で各家庭等の配信先(地震速報受信機41)に配信するものである。
本実施形態では、生命を脅かすレベルの震度(以下、危険震度という)の地震が発生し、地震速報受信機41から地震発生信号を受信した場合に、コンピュータ7は、地震発生時の安否確認のための無線通報システム(以下、安否確認モードという)として機能する。具体的には、予めコンピュータ7の記憶装置に記憶されている安否確認プログラムを読み出し、実行することにより、コンピュータ7が安否確認モードとなる。
ここで、コンピュータ7は、地震発生時以外の通常時は、第二の実施形態で述べた防犯地域内での安全の確保のための無線通報システム(以下、防犯モードという)として用いることも可能である。
以下、本実施形態では、平常時は第二の実施形態で述べた防犯モードとして、地震発生時に、地震発生時には、本実施形態で述べるように安否確認モードとしてコンピュータ7を用いる場合について述べる。しかしながら、無線通報システム1を安否確認モード専用で用いることも可能であるし、また、コンピュータ7を平常時は、文書作成、メールの送受信、インターネット閲覧等の他の用途で用い、地震発生時に安否確認モードに切り替えて使用することも可能である。
本発明の無線通報システム1は、防犯モードでは、コンピュータ7は受信機4から受信する緊急無線信号の送信コード、時刻および識別信号等に基づいて緊急事態の発生についての情報を表示し、安否確認モードでは、緊急無線信号の送信コード、時刻および識別信号等に基づいて安否確認情報を表示するものである。尚、無線端末2の連絡用スイッチ2aまたは緊急用スイッチ2cが押されてから受信機4が緊急無線信号を受信するまでの動作は前述のとおりであり、ここでは省略する。
即ち、本発明の無線通報システム1によれば、防犯モードと安否確認モードを同一のハードウェアで実現することが可能である。また、コンピュータ7を複数台設けて、その役割を分担させても良いし、いずれかの無線通報システム1を単独で使用するようにしてもよい。
また、例えば、コンピュータ7を設置する職員室が地震により被害にあった場合を想定し、IT自動防災システムに接続するコンピュータ7を複数、異なる場所に設置するようにしても良い。尚、コンピュータ7の形態は上述の通りであり、性能等は特に限られるものではないが、緊急地震速報の受信時に、警告音を発するためのスピーカーを備えていることが好ましい。
本実施形態では、危険震度とは、例えば震度4とし、震度4以上の場合、コンピュータが安否確認モードとなることとしている。尚、危険震度については、任意に設定することが可能であり、その設定対象も、震度に限られず、他の地震の規模を示す値(マグニチュード等)であっても良いのは、勿論である。
本実施形態では、地震速報受信手段42をコンピュータ7と地震速報受信機41により構成しているが、コンピュータ7に地震速報受信機能を備えることで、コンピュータ7のみにより構成することも可能である(図16参照)。尚、図15は、コンピュータ7とは、別途地震速報受信機41を設けた場合のシステム構成図を、図16は、コンピュータ7が地震速報受信機能を備えることとした場合のシステム構成図をそれぞれ示す。尚、上記いずれの構成であっても、以下の安否確認処理に相違は無い。また、上記2つの構成は、通常はどちらか一方が導入されるが、バックアップを考慮して多重または併用することもできる。
コンピュータ7と気象庁の緊急地震速報を活用したIT自動防災システムにおける地震速報受信機41とは、通常はメタルケーブルを介して接続する。尚、接続するインタフェースは特に限られるものではない。他の有線または無線の通信手段と組み合わせて、距離を伸ばすことも可能である。
地震速報受信機41は、緊急地震速報を受信すると、当該緊急地震速報の予測震度が危険震度以上であるか否かを判断し、危険震度以上である場合には、コンピュータ7に対して外部接続端子を経由して外部制御信号を渡す。当該外部制御信号を受信すると、コンピュータは、防犯モードを安否確認モードに切り替える。尚、コンピュータ7に地震速報受信機41に相当する地震速報受信機能を装備し、当該緊急地震速報の予測震度が、危険震度以上か否かをコンピュータ7が判断し、危険震度以上の場合に安否確認モードとして安否確認の処理を開始するようにしても良い。
地震速報受信機41としては、例えば、株式会社3Soft社製緊急地震速報受信装置「Digital-Catfish」が用いられる。当該地震速報受信機41は、処理装置部、電源ランプ部、スピーカー部、アンテナ部、ディスプレイ部、操作スイッチ部、拡張スロット部、リセットスイッチ部、壁掛けステー取り付け部、バッテリーカバー部、AF OUTコネクタ、外部接続端子、電源コネクタ、Ethernet(登録商標)コネクタ、設定用スイッチ、診断用端子、RS−232Cコネクタを備えている。尚、地震速報受信機41は、少なくとも処理装置部、電源ランプ部、スピーカー部、ディスプレイ部、操作スイッチ部、リセットスイッチ部、AF OUTコネクタ、外部接続端子、電源コネクタ、Ethernet(登録商標)コネクタを備えていればよく、上述の例には、限られない。
また、地震速報受信手段42をコンピュータ7のみで構成する場合は、コンピュータ7に、Ethernet(登録商標)コネクタを介してインターネットから緊急地震速報を受信する手段、当該緊急地震速報の内容を地震警報としてスピーカーに出力する手段、緊急地震速報の予測震度が危険震度以上であるか否かを判断し、危険震度以上である場合には、防犯モードを安否確認モードに切り替える手段を設ける。地震警報を外部スピーカーに出力する場合にはAF OUTコレクタが必要となる。
また、本実施形態の無線通報システム1は、安否確認データベースを備える。安否確認データベースのデータベース構成(データベース名称:テーブル名)の一例を以下に示す。
・安否確認データベース:送信機コード、危険物数、危険物の名称、危険物の位置
安否確認データベースは、送信機毎の周辺の危険物情報を予め登録しておくものである。ここでいう危険物とは、火災の原因となりうるもの(ストーブ、コンロ等)、倒れた場合に人が下敷きとなりうるもの(本棚等)等をいうものとする。尚、上記データベースの構成、テーブル名等は一例であってこれに限られるものではない。また、本実施形態では安否確認データベースはコンピュータ7の補助記憶装置に予め記録しているが、これに限られるものではなく、コンピュータ7に接続された他のコンピュータ、またはデータベースサーバ等に記録しておくこととしても良い。
以下に、本実施形態の無線通報システム1を学校に適用し、地震の発生時に安否確認を行う場合の処理を図17に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
尚、本実施形態ではコンピュータ7と地震速報受信機41を職員室に、また、送信機3、中継機6、受信機4をそれぞれ通信が可能な位置に設置する。また、本実施形態では少なくとも各教室に一台の送信機3を設置することとしている。更に、特別教室、体育館等の校内の各所に送信機3を設置しておいた方がよいのは、勿論である。尚、送信機3と受信機4が通信可能な範囲にない場合は、中継機6により中継させる。
先ず、地震が発生すると、気象庁からの緊急地震速報をIT自動防災システムが受信する(S101)。具体的には、各地に設置された地震速報配信サーバ39からインターネット網40を介し、地震速報受信機41が、緊急地震速報を受信する。
当該地震の規模が、危険震度以上の緊急地震速報を受信した場合(S102;Yes)には、地震速報受信機41は、当該情報を放送設備等に出力するだけでなく、コンピュータ7に送信する(S103)。尚、コンピュータ7が、地震速報受信機41を介して緊急地震速報を受信し、その緊急地震速報から震度が危険震度であるかどうかを判断するようにしても良い。
次いで、コンピュータ7は、緊急地震速報を受信すると、安否確認モードとなる(S104)。安否確認モードとなると、まず、コンピュータ7は、校内にあるすべての送信機3の配置位置に対応した教室番号及び当該教室内の危険物の名称、危険物の位置を出力装置に一覧表示(以下、安否確認情報画面という)する(S105)。具体的には、コンピュータ7は、送信機コードと、送信機データベースにより対応付けられた設置場所及び、安否確認データベースにより対応付けられた危険物の名称、危険物の位置等を表示するものである。
次に、地震発生後、大きな揺れを感じた場合は、無線端末2を所持する生徒及び教員は、学校中の教室から無線端末2の連絡用スイッチ2aまたは緊急用スイッチ2cを押す。本実施形態では、連絡用スイッチ2aが押された場合と、緊急用スイッチ2cが押された場合には、緊急無線信号に異なる識別信号が付加され送信される。本実施形態では、コンピュータ7が受信する無線端末2から送信される信号は、応援要請信号及び応援不要信号の2種類存在し、緊急無線信号の識別信号により、コンピュータ7は、いずれの信号であるかを判断するものである。尚、無線端末2でいずれかのスイッチが押され、送信機3、中継機6、受信機4を介してコンピュータ7が緊急無線信号を受信するまでの処理は、上述の通りであるので、説明、図示は省略する。
本実施形態では、無線端末2の緊急用スイッチ2cを押すことにより、応援要請信号が送信され、2つの連絡用スイッチ2aを同時に押すことにより、応援不要信号が送信される(S106−1)。
応援要請信号は、現場への応援を要請するための信号である。即ち、救助を受けなければ、その場から脱出、避難ができない場合が想定される。
応援不要信号は、地震が発生したものの、被害がなく避難の必要がない場合、または自力での避難が可能であり応援を必要としない場合の信号である。
また、コンピュータ7は、応援要請信号及び応援不要信号のいずれも受信しない場合は、応答なしと判断する。応答無しの場合としては、当該送信機3の付近に誰も存在しない場合も考え得るが、例えば、身動きが取れず、何らのボタン操作もできない場合も想定される。従って、応答なしの場合は、応援要請があったものとみなしても良い。
受信機4が緊急無線信号を受信すると、コンピュータ7はインタフェースを通じて当該緊急無線信号を受信し、安否確認情報画面を更新する(S107−1)。
緊急無線信号には、無線端末のID番号、緊急無線信号の信号種別、発生時刻、送信機コード等の情報が含まれている。コンピュータ7は、安否確認モードで緊急無線信号を受信すると、緊急無線信号の送信機コード及び信号種別を判断し、送信機3の設置場所毎に応援要請、応援不要、応答なしのいずれかを表示し、安否確認情報を作成する。これをコンピュータ7の出力装置上に表示させる。
図18に安否確認情報画面の一例を示す。安否確認情報は、教室毎の安否状況を一覧表示したものである。本実施形態では、例えば、表示画面を色分けして表示することにより、コンピュータの操作者の迅速な判断の一助としている。例えば、安否確認モードへの切り替え時の初期画面(S105)の状態では、設置場所の一覧を背景色のまま表示する。応援要請信号、応援不要信号を受信すると教室毎に、応援不要に該当する教室は緑に、応援要請に該当する教室は赤に、反応なしに該当する教室は白に表示することで、コンピュータの操作者が即座に被害状況を判断することができる。
また、図示はしないが安否確認情報画面に、同時に教室内の危険物の名称及び位置を表示させることが好ましい。また、例えば、教室番号をクリックする毎に危険物の名称及び位置をポップアップウィンドウとして表示しても良い。
これにより、コンピュータの操作者は、安否確認情報画面を見て、校内の被害発生状況を即座に認識することが可能となる。即ち、応援要請及び反応なしと表示された教室の状況を確認することができる。
更に、第2の実施形態で述べたように、教室に携帯電話8及び監視カメラ9を設置しておくことにより、操作者は、コンピュータ7から携帯電話設置台10及び監視カメラ9を遠隔操作し、各教室内の動画像を確認することが可能である。応援要請のあった教室内の状況及び応答なしの教室に誰か取り残されていないか等を確認することができる。
更に、コンピュータ7は、送信コードが同一の緊急無線信号を再度受信した時(S106−2)に、安否確認情報を逐次更新し(S107−2)、コンピュータ7の出力装置に表示する。
即ち、同じ教室でも多数の者がボタンを押す可能性があり、また気が動転しているために誤って押される可能性もある。このように送信機3の設置場所周辺で多数の者が無線端末の送信スイッチを押した場合でも、本実施形態では、常に最新の緊急無線信号に基づいて逐次安否確認情報画面を更新するようにしている。これにより、コンピュータの操作者は最新の安否確認情報を常に知ることができる。また、誤って押された場合でも、更新の推移を見極めることにより、現在の状況を判断することが可能である。
また、図示はしないが安否確認情報画面に、受信した全ての緊急無線信号のID番号を同一の番号が二重表示されること無く、コンピュータに出力すれば、コンピュータの操作者は、多数の者がボタンを押したとしても誰が押したかを知ることができる。さらに、緊急無線信号の応援要請の要否をID番号の色付けで示せば、押した者が応援要請をしているかを判断することができる。
最後に、操作者は地震の被害が無かった場合や全員の安否確認が終了した時点で、安否確認モードをリセットする(S108)。尚、操作者が安否確認モードをリセットしない限り、コンピュータ7は安否確認モードのまま処理を続ける。コンピュータの操作者がいつ安否確認モードをリセットするかは、地震の規模、被害状況さらには復旧状況等により、判断するものとする。尚、安否確認モードのリセットは、安否確認プログラムを終了させることによりなされる。
本実施形態では、安否確認モードのリセットにより、コンピュータ7は、防犯モードに戻る。即ち、コンピュータ7は、第2の実施形態で述べたように、再び受信機4から受信する緊急無線信号の送信コード、時刻および識別信号を緊急事態発生の信号として再度処理する。以上で、無線通報システム1を地震発生時の安否確認として用いる場合の説明を終了する。
更に、本実施形態で用いるIT自動防災システムは、上述の通り、予測震度に加えて、予測到達時間を独自に計算するものである。したがって、揺れが始まる直前に、緊急地震速報を受信することができる。このため、緊急地震速報の受信と同時に校内放送で警報等を発し、即座に火元の確認を行い、机の下に隠れるなどの応急措置をとることも可能となる。
尚、上述の3つの実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態での無線通報システムを学校に限らず、特定の商業施設、工場等に適用するようにしてもよいのは勿論である。