JP5305386B2 - 磁気光学光変調器 - Google Patents

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Description

本発明は、偏光子と希土類鉄ガーネット単結晶からなる磁気光学結晶と検光子を、その順に光が進行するように光路中に配置し、磁気光学結晶のファラデー効果を利用して検光子から出力する透過光量を可変する磁気光学光変調器に関し、更に詳しく述べると、磁気光学結晶と検光子との間に直線位相子を挿入し、偏光子による直線偏光が、磁気光学結晶を透過することによって生じる楕円偏光を、直線位相子によって直線偏光に戻して検光子に入力するように構成した磁気光学光変調器に関するものである。この技術は、例えば表示デバイスに用いる光強度変調器のコントラスト改善に有用である。
光変調器は、透過光の強度を変調する光デバイスであり、駆動方式によって、音響光学方式、電気光学方式、及び磁気光学方式などがある。音響光学方式は、原理的には超音波による屈折率分布によって回折格子を形成させるため、消費電力が大きく、相当大きな電源が必要となる。電気光学方式の場合は、電気光学効果を利用するものであり、オン−オフのコントラスト比を大きくするには、電圧を印加する範囲を長くとる(即ち素子の光路長を長くする)必要があり、大型化が避けられない。それらに対して磁気光学方式は、ファラデー効果を利用するもので、光路長の短縮、低コスト化、低消費電力化の可能性があり、他の方式に比べて遙かに有利と考えられている。
磁気光学方式の公知例としては、特許文献1に示されているような、光通信で使用する磁気光学光変調器がある。磁気光学光変調器は、光路中に、偏光子と磁気光学素子と検光子を、その順に配置し、前記磁気光学素子のファラデー効果を利用して検光子からの出力光量を変調するように構成されている。磁気光学素子は、磁気光学材料と、それに磁界を印加する磁界印加手段などからなる。ここで磁気光学材料としては、典型的には希土類鉄ガーネット結晶が用いられている。
ところで、携帯電話機程度のサイズあるいは眼鏡等に装着できる超小型のレーザプロジェクタが開発されている。いずれも小型のレーザと光線走査装置を使って、投影面上で光を高速に動かすことによる残像効果を利用して映像を投影するものである。これらにおいて、カラー映像を投影するためには、当然のことながらRGBの3色の光源を必要とし、それらのうちR(赤色)とB(青色)については発光強度を直接制御できるデバイス(半導体レーザ)が確立している。しかし、G(緑色)については、現在のところ、そのようなデバイスはなく、半導体励起レーザの第2高調波発生(SHG)のレーザを使用することが有望視されている。しかしながら、電源の制御(厳密な素子の温度制御を含む)を行わないと発振効率が著しく低下してしまうため、G(緑色)については、緑色の安定したレーザ発振の後、光源からの光強度を外部光変調器によって変調する方式が採用される。
このような表示デバイスでは、可視光帯(例えば緑色光:波長532nm)の光を取り扱うことになるが、外部光変調器として上記のような従来の磁気光学光変調器を採用すると、消光比(最大強度と最小強度の比)は20dB程度以下に止まり、期待する値ほど高くならない。因みに、光通信の光アイソレータなどに使われている磁気光学結晶(希土類鉄ガーネット結晶)では40dB以上の消光比が得られている。消光比が悪いということは、表示デバイスにおいては表示のコントラストが低くなることを意味し、表示デバイスを高性能化できないという問題を生じる。
特許第4056726号公報
本発明が解決しようとする課題は、可視光帯で用いる磁気光学光変調器の消光比を改善し、表示デバイスにおける表示のコントラストを大きくすることである。
可視光帯で用いる磁気光学光変調器の消光比が低い原因は、磁気光学結晶での光吸収による磁気円2色性にある。即ち、磁気光学結晶である希土類鉄ガーネット単結晶は、例えば緑色光(波長532nm)では光吸収により1〜2dB/μm程度もの大きな吸収損失が生じる。そのため、偏光子からの直線偏光は、磁気光学結晶を透過する際に、偏光面が回転するだけでなく、光の鈍り(リタデーション)が生じて楕円偏光になる。その楕円偏光が検光子に入力すると、楕円偏光の長軸方向に対して検光子透過軸が直交していても、楕円偏光の短軸成分が検光子から出力し、最小透過光量が大きくなってしまう。これが、可視光帯で用いる磁気光学光変調器の消光比が低い原因である。そこで本発明では、磁気光学結晶を透過した楕円偏光を直線位相子によって直線偏光に戻し、それによって最小透過光量を極力低く抑えるように工夫されている。
即ち本発明は、偏光子と磁気光学結晶と検光子を、その順に光が進行するように光路中に配置し、前記磁気光学結晶は希土類鉄ガーネット単結晶からなり、該磁気光学結晶に磁界を印加する可変磁界印加手段で磁気光学結晶の磁化方向を制御することにより、検光子から出力する透過光量を可変する磁気光学光変調器において、磁気光学結晶と検光子との間に直線位相子を挿入し、検光子からの透過光量が最小となる状態のときに、前記直線位相子は、それを光入射面内で回転させたときに直線位相子透過後の偏光の楕円率が最小となる角度に設定され、前記検光子は、直線位相子を透過した楕円偏光の長軸に対して検光子透過軸が直交するように設置されていることを特徴とする磁気光学光変調器である。なお、光路は必ずしも一方向の直線である必要はなく,途中にミラー等の反射による折り返しがあってもよい。
また本発明は、偏光子と磁気光学結晶と検光子を、その順に光が進行するように光路中に配置し、前記磁気光学結晶は希土類鉄ガーネット単結晶からなり、該磁気光学結晶に高周波磁界を印加するコイルによって光進行方向に対する磁気光学結晶の磁化方向を制御することにより、検光子から出力する透過光量を変調する磁気光学光変調器において、磁気光学結晶と検光子との間に直線位相子を挿入し、磁気光学結晶に印加される高周波磁界の光進行方向と同方向もしくは逆方向の成分が最大となる状態のときに、前記直線位相子は、それを光入射面内方向で回転させたときに直線位相子透過後の偏光の楕円率が最小となる角度に設定され、前記検光子は、直線位相子を透過した楕円偏光の長軸に対して検光子透過軸が直交するように設置されていることを特徴とする磁気光学光変調器である。
前記磁気光学結晶は、非磁性基板上に液相エピタキシャル成長させた希土類鉄ガーネット単結晶をアニール処理(熱処理)したものであり、該磁気光学結晶を中心に同心状にコイルが巻回され、該コイルに高周波電流を通電することにより、磁気光学結晶の光入射面に対して垂直方向の高周波磁界が印加されるようにするのが好ましい。
前記直線位相子は、その位相差δが、
δmin +nπ≦δ≦(n+1)π−δmin
δmin =1.5×d×α
但し、
n=0,1,2,・・・
d:磁気光学結晶内の光路の入射面垂直成分長(μm)
α:透過光の吸収係数(dB/μm)
を満たすものとする。ここで、磁気光学結晶内の光路の入射面垂直成分長(以下、垂直光路長と表記する)とは、例えば偏光子と、磁気光学結晶と、直線位相子と、検光子とが直線的に配列されている場合(後述する図2のような構成)は、光は磁気光学結晶内を1回透過するだけであるから,磁気光学結晶の厚さとなる。これに対し,磁気光学結晶の背面にミラー等を設置し,光が反射して再び入射面から出射する場合は、光は磁気光学結晶内を2回通過するため、磁気光学結晶の厚さの2倍となる。
希土類鉄ガーネット単結晶の組成は、
(RBi)3 (FeM)5 12
但し、R:1種以上の希土類元素、M:Ga,Al,Inから選ばれる1種以上の元素
であることが好ましい。
本発明に係る磁気光学光変調器は、光路中の磁気光学結晶と検光子との間に直線位相子が挿入され、該直線位相子は、最小透過光量状態で、直線位相子を光入射面内で回転させたときに該直線位相子透過後の偏光の楕円率が最小となる角度に設定されているので、楕円偏光が直線偏光もしくはそれに極めて近い状態(楕円率が非常に小さい状態)に戻り、他方、検光子は、直線位相子を透過した楕円偏光の長軸に対して検光子透過軸が直交するように設置されているので、最小透過光量を非常に低く抑えることができる。その結果、消光比が大幅に改善され、表示ディスプレイに適用した場合にはコントラストが大幅に向上する。因みに、直線位相子が無い場合にはコントラストが20dB未満であるが、直線位相子を配置することにより40dB以上にすることが可能である。
図1は、本発明に係る磁気光学光変調器の構成と動作を示す説明図である。磁気光学光変調器は、偏光子10と、希土類鉄ガーネット単結晶からなる磁気光学結晶12と、直線位相子14と、検光子16とが、その順に光が進行するように配置されている。ここで、直線位相子14は、最小透過光量状態において、直線位相子を光入射面内で回転させたときに該直線位相子透過後の偏光の楕円率が最小となる向きに設定されており、検光子16は、直線位相子14を透過した楕円偏光の長軸に対して検光子透過軸が直交するように設置されている。
磁気光学光変調器へ入射する可視光(例えば波長532nmの緑色光)は、偏光子10を通過することによって直線偏光になる。図1の例では、偏光子透過軸10aが水平方向であるため、偏光子10を透過した光は水平方向の直線偏光になっている。この直線偏光が、外部からの印加磁界により光の進行方向と同方向あるいは逆方向に磁化されている磁気光学結晶(希土類鉄ガーネット単結晶)12を通過すると、偏光面が回転(ファラデー回転)する。それと同時に、磁気光学結晶12での光吸収(1〜2dB/μm程度の吸収損失)のために光が鈍る。これらによって、磁気光学結晶12を通過すると、入射した直線偏光は、主軸(長軸)が回転した楕円偏光となる。
図1において、Aは最小透過光量が得られる状態(光遮断)の動作を、Bは最大透過光量が得られる状態(光透過)の動作を、それぞれ表している。Aでは、外部からの印加磁界方向(白抜き矢印で示す)は光の進行方向と同方向であり、そのとき主軸は時計回りに回転するものとする。ここでは時計回りを正と定義する。それに対して、Bでは、外部からの印加磁界方向(白抜き矢印で示す)は光の進行方向と逆方向であり、主軸の回転方向は反時計回りとなる。但し、光の進行方向に外部磁界を印加した場合に必ず主軸の回転方向が時計回りになるということではなく、印加磁界方向が反転すれば、回転方向も反転するということである。主軸の回転角は、単位長さ当たりの回転角θF と垂直光路長dの積となる。
図1のA(光遮断)では、磁気光学結晶12からの楕円偏光が、直線位相子14を通過することにより、適当な位相差が与えられてほぼ直線偏光(直線偏光と見なせるほどに楕円率は非常に小さくなる)に戻る。この直線偏光の偏光軸(楕円偏光の主軸)に対して、検光子透過軸16aが直交するように配置されているので、検光子16から出力する透過光量は極めて小さくなる。それに対して、図1のB(光透過)の場合には、磁気光学結晶12からの楕円偏光が直線位相子14を通過することにより、逆に楕円率は若干大きくなる。そして、その楕円偏光の検光子透過軸成分が、検光子16を透過することになる。
因みに、図1のA(光遮断)において直線位相子が無い場合を想定すると、磁気光学結晶通過後の楕円偏光の長軸に対して検光子透過軸を直交させる場合に最も検光子透過光量を小さくすることができるが、その場合でも楕円偏光の短軸成分は検光子を通過してしまうため最小透過光量を小さくできない。光変調器としては、光の変調幅、つまり最大透過光量Pmax と最小透過光量Pmin の比であるコントラストPmin /Pmax が大きいことが重要である。しかし、上記のように、直線位相子が無い場合には最小透過光量を小さくできないので、コントラストの向上は望めないことになる。
コントラストに影響する要因としては、回転角の可変幅と偏光の楕円率がある。楕円偏光と検光子透過軸16aの関係を、図1のCに示す。検光子を通過する光量Pは、楕円偏光の長軸をImax 、短軸をImin とすると、
P=(Imax cosα+Imin sinα)2 ・・・(1)
となる。ここでαは、楕円偏光の長軸と検光子透過軸とのなす角度である。上記(1)式より、透過光量を最小にするには、α=π/2で、且つImin を小さくすることである。αは検光子透過軸の設定角度であるので、楕円偏光の長軸と直交方向に設置することが適当である。Imin は、偏光の楕円率と関係しており、楕円率が小さいこと(直線偏光であること)が望ましいことになる。
そのため本発明では、直線位相子によって楕円率の小さい偏光に戻し、検光子透過軸を楕円偏光長軸と直交させている。その場合の最小透過光量Pmin は次式で表される。
min =[Imax cos(π/2)+Imin sin(π/2)]2
=(Imin 2 ・・・(2)
以上のことから、最小透過光量は偏光の楕円率と直結しており、楕円率を小さくすることが重要であることが分かる。
他方、透過光量を最大にするには、α=0で、且つImax を大きくする必要がある。本発明ではα=π/2に設定しているので、透過光量は、上記(2)式より、
max =[Imax cos(π/2+x)+Imin sin(π/2+x)]2 ・・・(3)
となる。ここでxは偏光面の変化量であり、本発明の場合は、正方向に磁界を印加したときの磁気光学結晶透過による回転角θF dと直線位相子通過による回転La の和と、逆方向に磁界を印加したときの磁気光学結晶通過による回転角−θF dと直線位相子通過による回転Lb の和との差になる。よって、(3)式は、次式のように変換される。
max ={Imax sin[2θF d+(La −Lb )]+Imin cos[2θF d+(La −Lb )]}2
これより、最大透過光量Pmax の条件としては、[2θF d+(La −Lb )]=π/2で、且つImax が大きいこととなる。
しかし、Imax は磁気光学結晶の吸収に依存しているため、垂直光路長dを大きくすることは、回転角をπ/2に近づけることにより角度ずれロスを小さくすることと、吸収でImax が小さくなることによるロス増加の両面を持つため、その兼ね合いによる適当な膜厚dが存在し、最大透過光量Pmax のとき、[2θF d+(La −Lb )]=π/2とはならない場合もある。
本発明で重要なことは、光の鈍りを補正するために挿入した直線位相子がImax 及び回転角差へ与える影響である。Imax に対しては、Imax >>ΔIであり、影響は小さい。ここでΔIは、直線位相子透過直前のI’max と直線位相子透過後のImax の差である。このΔIは、Pmin と同程度の大きさであり、そのためPmin を小さくすることには大きく寄与する。回転角差に対しても、2θF d>>(La −Lb )であり、影響は小さい。これより、直線位相子を挿入することは、Pmin を小さくすることの効果のみがあり、その他に悪影響は与えない点で優れている。
測定に用いた本発明の具体的構成例を図2に示す。この磁気光学光変調器も、偏光子10と、希土類鉄ガーネット単結晶からなる磁気光学結晶12と、直線位相子14と、検光子16とが、その順に光が進行するように光路中に配置されている。磁気光学結晶12の外側に、円筒状の鉄心とコイルから形成される電磁石20を配置し、−40〜40kA/mの磁界が印加できるように構成する。直線位相子14は、波長532nmの緑色光における位相差が6.8度であり、電磁石20の磁界を+40kA/mにしたときに、磁気光学結晶(希土類鉄ガーネット単結晶)12を透過した光の主軸(長軸)と該直線位相子14の進相軸を合わせるように設置する。合わせる方法は、直線位相子が無い状態で、磁界を+40kA/mにして、検光子16を光入射面内で回転させ、透過光量が最小になる角度で固定し、その状態で直線位相子14を磁気光学結晶12と検光子16の間に挿入し、直線位相子14を光入射面内で回転させて、検光子16を透過する光量が最小になるようにする方法である。なお、磁気光学結晶12は、(CaGd)3 (MgZrGa)5 12で表される非磁性基板22上に、液相エピタキシャル法により育成したものである。その組成は(GdYBi)3 (FeGa)5 12、膜厚は3μmである。なお、磁気光学結晶(希土類鉄ガーネット単結晶)は、育成後にトップ温度1000℃で10時間アニール処理(熱処理)してある。
このような測定系を用いて、直線位相子が無い場合(従来方式)と直線位相子が有る場合(本発明)について、波長532nmで1mWの光を入射したときの、ファラデー回転角と消光比の磁界依存性測定した。測定は、検光子を回転させる回転検光子法を用いた。測定結果を図3〜4に示す。いずれもAは直線位相子が無い場合(従来方式)、Bは直線位相子が有る場合(本発明)である。
従来方式(直線位相子が無い場合)では、ファラデー回転角は、図3のAに示すように±14.6度で飽和し、その可変幅は29.2度であった。消光比は、図4のAに示すように、ファラデー回転角の絶対値が大きくなるに従い小さくなった。絶対値が14.6度のときは24.5dBであった。続いて、磁界を+40kA/mにして、検光子を光入射面内で回転させ、透過光量が最小になる角度で固定した。この状態で磁界を−40kA/m〜+40kA/mまで可変させ、透過光量を測定した。その結果、図5のAに示すように、最大透過光量は−10.7dBm、コントラストは18.2dBであった。
本発明(直線位相子が有る場合)では、図3のAとBとの比較から、ファラデー回転角は殆ど変わっていない。これに対して、消光比についてみると、図4のAとBとの比較から、本発明では、プラス磁界側の飽和値が大きくなり、マイナス磁界側の飽和値は小さくなったことが分かる。続いて、磁界を+40kA/mにして、検光子を光入射面内で回転させ、透過光量が最小になる角度で固定した状態で、磁界を−40kA/m〜+40kA/mまで可変させ、透過光量を測定すると、図5のBに示すように、最大透過光量は−10.5dBm、コントラストは44.0dBであった。
これらの測定結果から、本発明は従来方式(直線位相子が無い場合)と比較して、コントラストを大幅に改善できることが確認できた。なお、コントラストを大幅に改善できたのは、直線位相子を挿入したことにより、プラス磁界側の消光比の飽和値が大きくなり、その状態で光を遮断する角度に検光子を設置しているためである。また、最大透過光量が従来方式と同程度の値であったことは、直線位相子挿入により、マイナス磁界側での消光比飽和値の劣化の影響が殆どないことを示している。
ここで、直線位相子の位相差を6.8度に設定したのは、そのときに最もコントラストを大きくできるからである。この最適な位相差は、希土類鉄ガーネット単結晶の吸収係数と垂直光路長に関係する考えられる。そこで、吸収係数や垂直光路長の異なるものについて、図2の測定系を用いて、コントラストが最大になるときの位相差を調べた。ここで、直線位相子と検光子の設置方法は上記と同じである。また、膜厚が垂直光路長となっている。結果を図6〜7に示す。図6は、位相差と吸収係数の関係を示したものであり、同じ膜厚(垂直光路長)で見ると直線関係になっている。図7は、図6の各膜厚での直線の傾きと膜厚の関係を表したものであり、直線関係が得られている。
この結果から、最適位相差δopt は次式で導かれた。
δopt =1.5×d×α
d:磁気光学結晶内の光路の入射面垂直成分長(μm)
α:透過光の吸収係数(dB/μm)
これより、希土類鉄ガーネット単結晶の厚みと吸収係数がわかれば、位相差は算出可能となる。ここで、このδopt は、その直線位相子の進相軸とそこに入射する偏光の主軸(長軸)を合わせたときの位相差である。よって、これ以上の位相差を持つ直線位相子の場合は、進相軸を主軸から傾ければ、コントラストを同様に大きくできる。その意味でδopt は、必要な最小位相差δmin と言える。但し、それ以上であっても、波の周期性から周期的にコントラストを大きくできない位相差が存在する。それらを除いた位相差δは、次式で表される。
δmin +nπ≦δ≦(n+1)π−δmin
但し、n=0,1,2,・・・
<実施例1>
(CaGd)3 (MgZrGa)5 12で表される、厚さが700μmで1インチ形状の非磁性基板に、液相エピタキシャル法により、組成が(GdYBi)3 (FeGa)5 12の磁性ガーネット単結晶を3μm育成した。それを1mm角に切断し、1000℃で10時間熱処理して磁気光学結晶とした。この磁気光学結晶について、波長532nmにおける吸収係数を測定したところ、1.5dB/μmであった。磁気光学結晶を、銅線を巻きつけた鉄心の中に配置し、その前後に偏光子と検光子を設置した。光は、偏光子、磁気光学結晶、検光子の順に通過する。鉄心に巻きつけたコイルに正逆電流を流すことにより、磁気光学結晶には、光の進行方向と同方向をプラスとした場合に−40〜+40kA/mの磁界が印加できる。ここで、マイナスは光の進行方向と逆方向の磁界強度を表している。この状態で、波長532nm、1mWの光を入射し、磁界を+40kA/mにして、検光子を光入射面内で回転させ、透過光量が最小になる角度で固定した。次に、磁気光学結晶と検光子の間に波長532nmにおける位相差が6.8度の直線位相子を挿入し、光入射面内で回転させて、検光子を透過する光量が最小になるようにした。この状態で、磁界を−40kA/m〜+40kA/mまで可変させ、透過光量を測定した。その結果、最大透過光量ては−10.5dBm、コントラストは44.0dBであった。
<実施例2>
(CaGd)3 (MgZrGa)5 12で表される、厚さが700μmで1インチ形状の非磁性基板に、液相エピタキシャル法により、組成が(GdYBi)3 (FeGa)5 12の磁性ガーネット単結晶を3μm育成した。それを1mm角に切断し、1000℃で10時間熱処理して磁気光学結晶とした。この磁気光学結晶について、波長532nmにおける吸収係数を測定したところ、1.5dB/μmであった。磁気光学結晶を、銅線を巻きつけた鉄心の中に配置し、その前に偏光子を、直後に532nmにおける位相差が45度の直線位相子を、その後ろに検光子を設置した。光は、偏光子、磁気光学結晶、直線位相子、検光子の順に通過する。鉄心に巻きつけたコイルに正逆電流を流すことにより、磁気光学結晶には、光の進行方向と同方向をプラスとした場合に−40〜+40kA/mの磁界が印加できる。ここでも、マイナスは光の進行方向と逆方向の磁界強度を表している。この状態で、波長532nm、1mWの光を入射し、磁界を+40kA/mにして、検光子を光入射面内で半周回転させ、透過光量の最小値を測定した。次に、直線位相子を光入射面内で5度程度回転させて固定し、検光子を半周回転させて透過光量の最小値を測定した。この作業を繰り返し、透過光量が最も小さくなる直線位相子角度領域を見つけ、その付近で直線位相子角度を微調整して、透過光量が最小になる角度で固定し、検光子も透過光量が最小になる角度で固定した。この状態で磁界を−40kA/m〜+40kA/mまで可変させ、透過光量を測定した。その結果、最大透過光量は−10.2dBm、コントラストは44.3dBとなった。
<比較例>
(CaGd)3 (MgZrGa)5 12で表される、厚さが700μmで1インチ形状の非磁性基板に、液相エピタキシャル法により、組成が(GdYBi)3 (FeGa)5 12の磁性ガーネット単結晶を3μm育成した。それを1mm角に切断し、1000℃で10時間熱処理して磁気光学結晶とした。その磁気光学結晶について、波長532nmにおける吸収係数を測定したところ、1.5dB/μmであった。磁気光学結晶を、銅線を巻きつけた鉄心の中に配置し、その前後に偏光子と検光子を設置した。光は、偏光子、磁気光学結晶、検光子の順に通過する。鉄心に巻きつけたコイルに正逆電流を流すことにより、磁気光学結晶には、光の進行方向と同方向をプラスとした場合に−40〜+40kA/mの磁界が印加できる。ここでも、マイナスは光の進行方向と逆方向の磁界強度を表している。この状態で、波長532nm、1mWの光を入射し、磁界を+40kA/mにして、検光子を光入射面内で回転させ、透過光量が最小になる角度で固定した。次に、磁界を−40kA/m〜+40kA/mまで可変させ、透過光量を測定した。その結果、最大透過光量は−10.7dBm、コントラストは18.2dBであった。
本発明に係る磁気光学光変調器の構成と動作の説明図。 本発明に係る磁気光学光変調器の具体的構成例を示す説明図。 ファラデー回転角の磁界依存性を示すグラフ。 消光比の磁界依存性を示すグラフ。 光出力の磁界依存性を示すグラフ。 膜厚をパラメータとしたときの吸収係数と位相差の関係を示すグラフ。 膜厚と位相差係数との関係を示すグラフ。
符号の説明
10 偏光子
12 磁気光学結晶
14 直線位相子
16 検光子

Claims (5)

  1. 偏光子と磁気光学結晶と検光子を、その順に光が進行するように光路中に配置し、前記磁気光学結晶は希土類鉄ガーネット単結晶からなり、該磁気光学結晶に磁界を印加する可変磁界印加手段で磁気光学結晶の磁化方向を制御することにより、検光子から出力する透過光量を可変する磁気光学光変調器において、
    磁気光学結晶と検光子との間に直線位相子を挿入し、検光子からの透過光量が最小となる状態のときに、前記直線位相子は、それを光入射面内で回転させたときに直線位相子透過後の偏光の楕円率が最小となる角度に設定され、前記検光子は、直線位相子を透過した楕円偏光の長軸に対して検光子透過軸が直交するように設置されていることを特徴とする磁気光学光変調器。
  2. 偏光子と磁気光学結晶と検光子を、その順に光が進行するように光路中に配置し、前記磁気光学結晶は希土類鉄ガーネット単結晶からなり、該磁気光学結晶に高周波磁界を印加するコイルによって光進行方向に対する磁気光学結晶の磁化方向を制御することにより、検光子から出力する透過光量を変調する磁気光学光変調器において、
    磁気光学結晶と検光子との間に直線位相子を挿入し、磁気光学結晶に印加される高周波磁界の光進行方向と同方向もしくは逆方向の成分が最大となる状態のときに、前記直線位相子は、それを光入射面内方向で回転させたときに直線位相子透過後の偏光の楕円率が最小となる角度に設定され、前記検光子は、直線位相子を透過した楕円偏光の長軸に対して検光子透過軸が直交するように設置されていることを特徴とする磁気光学光変調器。
  3. 前記磁気光学結晶は、非磁性基板上に液相エピタキシャル成長させた希土類鉄ガーネット単結晶をアニール処理したものであり、該磁気光学結晶を中心に同心状にコイルが巻回され、該コイルに高周波電流を通電することにより、磁気光学結晶の光入射面に対して垂直方向の高周波磁界が印加されるようにした請求項2記載の磁気光学光変調器。
  4. 前記直線位相子は、その位相差δが、
    δmin +nπ≦δ≦(n+1)π−δmin
    δmin =1.5×d×α
    但し、
    n=0,1,2,・・・
    d:磁気光学結晶内の光路の入射面垂直成分長(μm)
    α:透過光の吸収係数(dB/μm)
    を満たすものである請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気光学光変調器。
  5. 希土類鉄ガーネット単結晶の組成が、
    (RBi)3 (FeM)5 12
    但し、
    R:1種以上の希土類元素
    M:Ga,Al,Inから選ばれる1種以上の元素
    である請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気光学光変調器。
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