JP5305071B2 - 金属板一体型太陽電池の設置構造及び設置工法 - Google Patents

金属板一体型太陽電池の設置構造及び設置工法 Download PDF

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Description

本発明は、露出防水層の上面にフィルム型太陽電池を設置するための太陽電池の設置構造及び設置工法に関する。更に詳しくは、本発明は、露出防水層上に金属板一体型太陽電池が設置されている太陽電池の設置構造であって、露出防水層、Tgが−40〜−80℃の合成樹脂エマルジョンと水硬性セメントからなり、該樹脂成分を3〜20重量%含有する弾性モルタル層、接着剤層、及び金属板一体型太陽電池がこの順序で接合されている金属板一体型太陽電池の設置構造、及び金属板一体型太陽電池の設置工法に関するものである。本発明は、太陽電池を設置するための専用架台を建造物の屋上へ設置する必要がなく、また、瓦等の建材と太陽電池を一体化して施工する必要のない太陽電池の設置構造及びその施工法を提供するものである。
本発明は、従来のパネル型太陽電池を取り付ける架台を防水層上に固定する必要がないため、太陽電池を設置する際に防水層を損傷し、漏水の原因となることが防止できるものである。更に、本発明は、太陽電池を設置する場所を確保してその利用を促進することを可能とするものであり、クリーンな太陽エネルギーを有効利用するための技術分野において有用であり、地球環境の悪化を防止するための一手段として期待されるものである。
近年、地球規模での資源節約や環境悪化の防止に係る問題を解決していくために、化石燃料の代替エネルギーとして、原子力以外に、風力、波力、太陽光等の潜在するエネルギーを有効利用する技術の開発がなされ、ある程度の規模での実用化が達成されている。その中で、クリーンな太陽光エネルギーの活用については太陽電池が主要な技術として注目されており、工場生産された太陽電池を単に設置するだけで、簡便に、小規模からの発電が可能であるため、太陽発電は個人の住宅やビル全体で消費するエネルギーの一部を代替する技術として実用化されてきている。
太陽電池を住宅やビルの屋根又は壁面等に取り付けるに際しては、取付け用の金具や架台を屋根又は壁面に固定し、この架台等にパネル状の太陽電池を設置する方式、スレートや金属瓦のように平坦な表面を有する建築材の基材表面に太陽電池を一体化させた太陽電池一体型の建材を野地板上に直接葺く方式や、屋上スラブ上に太陽電池を貼着する方式等の手段が採られている。
金具や架台等を使用して既存の屋根構造部材に太陽電池パネルを固定する方式には、例えば、屋根又は壁面に折板屋根を取付けるための固定部材を設置し、この固定部材に折板屋根を取付けると共に、太陽電池パネルを折板屋根の上に固定部材で固定する太陽電池パネルの設置方法が提案され、それにより屋根や屋上を痛めることなく、迅速に、しかも安価に太陽発電パネルを設置することができる(特許文献1参照)。この種の架台上にパネル状の太陽電池ユニットを設置する方式には、特殊な屋根構造を有する屋根にのみ適用が可能である、新たに架台を作製しなければならない等の問題がある。また、架台や太陽発電ユニットを、屋根とは独立した構造物として設置すると、耐風圧や積雪荷重等の外力に対する強度が要求され、また、重量が大きくなることが多い。そのため、屋根面に多大な重量が負荷されて、屋根構造や防水層の破壊等の好ましくない影響がしばしば発生する。また、架台の作製その設置作業も煩雑となり高コストでもある。
また、金属建材の平板部に弾性接着剤で接着された太陽電池パネル一体型建材の両端に設けた建材間を係合することができる係合部により複数の一体型建材を係合して野地板上に水密な太陽電池パネル構造を形成する一体型建材(特許文献2参照)や、屋根瓦基材の表面に太陽電池モジュールが配置された太陽電池と屋根瓦が一体化された瓦を水上側の瓦を水下側の瓦の上縁に一部重なるように順次配置して屋根下地材にくぎ打ちして固定した太陽電池付き屋根瓦が提案されている(特許文献3参照)。これらの一体型建材は、例えば、瓦等の比較的小型の部材にならざるを得ず、一体型屋根材を作製するコストが高くなる、また施工には多数の一体型建材を使用せざるを得ない場合が多く施工作業も煩雑でコスト高となる。
また、太陽電池モジュールを屋根上に施工するにあたり、屋根の流れ方向およびその流れ方向と直交する方向にそれぞれ間隔をおいて複数個の太陽電池モジュールが接着剤を介して設置され、屋根の流れ方向の最下流側に設置された各最下段の太陽電池モジュールが屋根に固定された支持材によって支持されていることにより、太陽電池のモジュールの滑落を防止すると共に、太陽電池モジュールの取り外しを容易とした取付け構造が提案されている(特許文献4参照)。
更に、屋根防水と太陽光による発電が同時に行える太陽電池一体型防水シートが提案されている。この太陽電池一体型防水シートは、加硫ゴム係、塩化ビニル・エチレン係、アスファルト系非加硫ゴム等の高分子ルーフィングシートに薄膜状のフレッキシブルなアモルファスシリコン等の太陽電池が一体化されたものであり、コンクリートやプレキャストパネル等により構成された屋根面に防水工事を施工する際に使用される(特許文献5参照)。
従来、太陽電池を設置するには、建造物屋上に専用の設置用架台を取り付けてこれにパネル型太陽電池を固定して設置することがしばしば行われるが、太陽電池設置用架台を取り付けるには屋上のコンクリートスラブや金属屋根が適している。しかし、太陽電池の設置用架台を設置するためにはコストや手間がかかり、そのため太陽電池の設置費用がかさむ。また強風対策等をも考慮しなければならないため、特に建造物竣工後に太陽電池を設置する場合には十分な対処が必要となる。太陽電池の設置用架台を上記以外の場所、例えば露出している防水層上に直接設置しようとすると、架台やパネル型太陽電池の重量によって架台設置部の防水層が減衰して建物全部との境目で防水層が破断しやすくなり、この箇所が漏水の原因となることがあった。
また、太陽電池モジュールと一体化した瓦や太陽電池一体化建材パネル等は、比較的小型の部材であるため施工には多くの数の一体化建材を必要とし、その製作と施工が高コストとなる問題がある。屋上に太陽電気モジュールを接着剤により施工する技術では、長期間に亘る耐久性に問題がある。更に、太陽電池の設置と屋根防水とを同時に施工する太陽電池一体型シート防水材は、太陽電池の機能及び防水性を十分に発揮するためには未だ解決するべき問題を数多く残している。
特開2004−204512号公報 特開平11−324260号公報 特開平10−317591号公報 特開2003−64835号公報 特開平11−50607号公報
このような状況のなかで、本発明は上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を抜本的に解決することが可能な新しい防水層上に太陽電池を施工する工法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、太陽電池設置のための専用架台を建造物の屋上への設置や、建材との一体化をする必要のない太陽電池の設置工法及び設置構造を新たに見出し、更に研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
本発明の目的は、防水層に損傷等を発生させることがなく、強風に対する対策を必要としないで露出防水層上に太陽電池を設置することが可能な太陽電池の設置構造及び設置工法を提供することにある。また、本発明の目的は、防水層に漏水の原因となる損傷等を発生させることなく露出防水層上に太陽電池を設置することが可能な設置工法を提供することにある。また、本発明の目的は、既存の建物の露出防水層上に簡便な方法により太陽電池を設置する工法を提供することにある。また、本発明の目的は、専用の架台の作製を必要としない太陽電池の設置構造及び設置工法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)露出防水層上に金属板一体型太陽電池が設置されている太陽電池の設置構造であって、該設置構造が、アスファルト露出防水層、Tgが−40〜−80℃のアクリル系樹脂エマルジョン又はエチレン酢酸ビニル系樹脂エマルジョンからなる合成樹脂エマルジョンと水硬性セメントからなり、該樹脂成分を3〜20重量%含有する弾性モルタル層、エポキシ系樹脂接着剤、ウレタン系樹脂接着剤、ポリエステル系樹脂接着剤、又はアクリル系樹脂接着剤からなる接着剤層、及び金属板一体型太陽電池の順で設けられてなり、かつ上記弾性モルタル層中に合成樹脂製のメッシュシートを有してなることを特徴とする金属板一体型太陽電池の設置構造。
(2)上記接着剤が、揮発物を含まない接着剤である上記(1)に記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
(3)金属板一体型太陽電池の金属板が、厚さ0.3〜1.0mmのガルバニウム鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、又はアルミニウム板である上記(1)又は(2)に記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
(4)金属板一体型太陽電池を構成する太陽電池が、フィルム型アモルファス太陽電池である上記(1)から(3)のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
(5)金属板一体型太陽電池が、フィルム型太陽電池により金属板の端部が覆われるように貼り合わせて一体化されている上記(1)から(4)のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
(6)金属板一体型太陽電池の端部と弾性モルタル層上に金属板又は金属テープを重ね合わせ、ホットメルト接着剤により接着させて金属板一体型太陽電池の端部を押さえた上記(1)から(5)のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
(7)露出防水層上に金属板一体型太陽電池を設置する太陽電池の設置工方法であって、
露出防水層表面上にTgが−40〜−80℃の−40〜−80℃のアクリル系樹脂エマルジョン又はエチレン酢酸ビニル系樹脂エマルジョンからなる合成樹脂エマルジョンと水硬性セメントからなり、該合成樹脂成分を3〜20重量%含有する弾性モルタル層を設け、この上に金属板一体型太陽電池を、エポキシ系樹脂接着剤、ウレタン系樹脂接着剤、ポリエステル系樹脂接着剤、又はアクリル系樹脂接着剤からなる接着剤を介して接合させる工程よりなり、
かつ上記露出防水層表面上に弾性モルタル層を設ける工程においては、露出防水層上面に塗布した弾性モルタルに合成樹脂製のメッシュシートを積層し、このメッシュシートの上から弾性モルタルを塗り重ねて行い、
更に上記弾性モルタル層の上に金属板一体型太陽電池を接着剤を介して接合させる工程においては、上記メッシュシートの上から重ねて塗られた弾性モルタルが硬化した後に、そのモルタル層の上に金属板一体型太陽電池を上記接着剤を用いて貼り付けることを特徴とする金属板一体型太陽電池の設置工法
(8)上記接着剤が、揮発物を含まない接着剤である上記(7)に記載の金属板一体型太陽電池の設置工法
(9)金属板一体型太陽電池の金属板が、厚さ0.3〜1.0mmのガルバニウム鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、又はアルミニウム板である上記(7)又は(8)に記載の金属板一体型太陽電池の設置工法。
(10)金属板一体型太陽電池を構成する太陽電池が、フィルム型アモルファス太陽電池である上記(7)から(9)のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置工法
(11)金属板一体型太陽電池が、フィルム型太陽電池により金属板の端部が覆われるように貼り合わせて一体化されている上記(7)から(10)のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置工法
(12)金属板一体型太陽電池の端部と弾性モルタル層上に金属板又は金属テープを重ね合わせ、ホットメルト接着剤により接着させて金属板一体型太陽電池の端部を押さえる上記(7)から(11)のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置工法。
本発明は、フィルム状の金属板一体型太陽電池を、露出防水層の上面に弾性モルタル層を介して接着剤で貼付けるものであり、架台を取り付ける必要がないため防水層を損傷させることがない太陽電池の設置構造及び設置工法であって、金属板一体型太陽電池が露出防水層表面上に、Tgが−40〜−80℃の合成樹脂エマルジョンからなる合成樹脂成分を3〜20重量%含む水硬性セメントからなる弾性モルタル層を介して接着剤層により接合されている金属板一体型太陽電池の設置構造及びこの設置構造を構築するための設置工法に関するものである。
上記合成樹脂エマルジョンとしては、例えば、樹脂固形分濃度が40重量%以上のものが使用され、アクリル系樹脂エマルジョン又はエチレン酢酸ビニル系樹脂エマルジョンが好適である。上記接着剤としては、エポキシ系樹脂接着剤、ウレタン系樹脂接着剤、ポリエステル系樹脂接着剤、又はアクリル系樹脂接着剤から選択することが好適である。上記接着剤を、揮発物を含まない接着剤とすることで残留歪みの少ない金属板一体型太陽電池の設置構造が構築できる。また、上記弾性モルタルが、15〜30重量%の水硬性セメント、及び70〜85重量%の骨材粉末からなる粉末混合物を原料としてもよいし、更に他の添加剤を含有してもよい。弾性モルタル層中に合成樹脂製のメッシュシートを有することにより弾性モルタル層の損傷を防止することができる。
金属板一体型太陽電池は、例えば、厚さ0.3〜1.0mmのガルバニウム鋼板又は溶融亜鉛めっき鋼板と、フィルム型アモルファス太陽電池を接合一体化して作製されたものであり、フィルム型太陽電池により金属板の端部を覆うように貼り合わせて一体化した金属板一体型太陽電池が好適である。また、金属板一体型太陽電池の端部と弾性ポリマー層を、他の金属板又は金属テープにより上面から覆い接着することにより、太陽電池の端部が自身の剛性により変形することを防止することができる。
本発明の金属板一体型太陽電池の設置構造は、露出防水層、弾性モルタル層、接着剤層、及び金属板一体型太陽電池から構成され、図1に示す断面構造を有している。以下に、本発明の設置構造を構成する各要素について説明する。
本発明で用いられる弾性モルタル層はその組成に特徴を有し、建築物等の露出防水層と金属板一体型太陽電池との中間に位置して、日射による温度変化やアスファルト防水層の乾燥収縮、経時変化等によるアスファルト防水層と太陽電池の接合界面における剥離剪断力に対する変形追従性能に優れている。したがって、長期間に亘り剥離、破壊のおそれがない太陽電池の設置構造を構築することができる。すなわち、この弾性モルタル層を介して露出防水層上に直接金属板一体型太陽電池を貼り付けることができ、金属板一体型太陽電池と露出防水層の熱膨張率の差を弾性モルタルのフレキシブルな特性が吸収することで防水層に漏水の原因となるような亀裂・損傷箇所を発生させない。
一般的な弾性モルタルには、(1)通常のセメントモルタル、石膏系塗り材等に比べて変形能が大きい、(2)水系であり、他の弾性樹脂系材料に比べて取り扱いが容易である。また、(3)火気の危険性が無い、(4)セメントが脱水性能を有することにより、水系であるにもかかわらず乾燥・硬化速度が速い、(5)セメントによる補強効果が大きく、接着力及び皮膜強度が高い、といった性質を有する。
本発明の弾性モルタルは、上記の組成に特徴を有するものであり、一般の弾性モルタルが有する性質に加え、次のような優れた特性を有するように調製されたものである。
(A)セメントの老化防止効果とアクリル系樹脂及びエチレン酢酸ビニル系樹脂との組み合わせにより極めて耐候性が良い。
(B)他のエマルジョンに比べてTg(ガラス転移点)が極めて低いことにより変形能が大きいのに加えて、セメントの補強効果により接着性及び皮膜強度が高い。
(C)高濃度のエマルジョンであるが故に余剰水が少なく、乾燥速度及び硬化速度が速い。
(D)アスファルト防水、シート防水や塗膜防水等の露出防水層との接着性が優れている。
本発明の弾性モルタル層には、Tgが−40〜−80℃、好適には−50〜−70℃の範囲にある樹脂を、固形分として3〜20重量%、好適には5〜15重量%含有する。この樹脂成分は、例えば、耐候性に優れたアクリル系樹脂又はエチレン酢酸ビニル系樹脂を含むセメント混和用エマルジョンに由来する。樹脂エマルジョン原料としては、乾燥固形分が40重量%以上のものが好適である。
本発明で使用する合成樹脂エマルジョンとしては、Tg(ガラス転移点)が−40〜−80℃で、乾燥固形分が40〜65重量%で樹脂の成分が純アクリル樹脂(アクリル酸エステル樹脂)又はEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)のセメント混和用のエマルジョンを使用することができる。樹脂のTg値が低いと、それを使用した弾性モルタルの伸びを向上させ、挙動に対する追従性を高める効果があるため、Tgは−40℃以下の値から選定される。なお、Tg値が−80℃より低いセメント混和用エマルジョンは入手し難い。乾燥固形分が高い樹脂エマルジョンは水分割合が低く、それを使用した弾性モルタルの乾燥速度が高まることになる。乾燥固形分が40重量%以下の樹脂エマルジョンを使用すると乾燥速度が低下するため、脱水材として多量のセメントの添加が必要となり、弾性モルタルとしての柔軟性が低下する。乾燥固形分が65重量%以上のセメント混和用の樹脂エマルジョンは入手し難い。Tg値が−40℃以下のセメント混和用の樹脂エマルジョンとしては、例えば、アクリル系樹脂エマルジョン又はEVA系樹脂エマルジョンが挙げられるが、セメントと混和した際の耐久性を考慮すると、アクリル系樹脂エマルジョンが好適である。
アクリル系樹脂エマルジョンの中では、純アクリル樹脂(例えば、アクリル酸エステル樹脂)のエマルジョンが最適である。純アクリル樹脂エマルジョンとはアクリル成分の比率が極めて高い樹脂であり、他の成分との共重合体等からなるものではない。純アクリル樹脂エマルジョンは、アクリル−スチレン系樹脂エマルジョン等の共重合体からなるアクリル系エマルジョンと比較して、アクリル樹脂自体の長所(低いTg値、優れた耐候性等)を顕著に示し、例えば、Tg値が−60℃の純アクリル樹脂エマルジョンは、常温時(10〜30℃)だけでなく、低温時に(−10〜10℃)における伸びに優れた弾性層を形成することができるセメント混和用エマルジョンである。一般に、弾性モルタルには乾燥速度を速めるためにアルミナセメントを使用することが知られているが、例えば、セメント混和用の純アクリル樹脂エマルジョンを使用することにより普通ポルトランドセメントを使用しても十分な乾燥速度を得ることができる。
本発明の弾性モルタル原料の紛体成分は、ポルトランドセメント等の水硬性セメントと珪砂、炭酸カルシウム、フライアッシュバルーン、タルク類(非石綿)の骨材や、他の添加剤を含有する混合物からなる。本発明の水硬性セメント混合物としては、例えば、水硬性セメント15〜30重量%、微紛骨材等70〜85重量%の配合が例示される。水硬性セメントが30重量%を超えると弾性モルタル層の外的挙動に対する追従性が不足し、15重量%未満であると下地(アスファルト等)に対する接着力が低下する。骨材の中で、珪砂、炭酸カルシウムは、塗厚の確保と増量材としての機能が有り、フライアッシュバルーンとタルクは作業性の向上、例えば、ポリマーリッチな弾性モルタルのベタツキを軽減する機能を有する。
水硬性セメントとしては、ポルトランドセメント、アルミナセメント等が使用されるが、長期的な耐久性を考慮するとポルトランドセメントが好適である。露出防水層上に形成された弾性モルタル層の物理的性能は、例えば、皮膜の引張り強度が1.0N/mm以上、且つ伸び率が10%以上の値を有し、コンクリートに対する接着強度が0.7N/mm以上を満たすものである。
アスファルト防水層等の露出防水層上面には、上記の弾性モルタルを厚さ2mm程度施工するのが好適である。本発明の弾性モルタルは一般的な弾性モルタルよりも変形量が大きく、アスファルト防水層等の露出防水層の硬化収縮や金属板一体型太陽電池の動き、熱収縮膨張による伸縮等に十分に追従できるため、厚さ2mm程度の厚さでその目的を達成することができる。また、露出防水層上に本発明の弾性モルタルを塗り、その上に合成樹脂系メッシュシートを積層し、更にこの上から弾性モルタルを塗り重ねることにより弾性モルタルと合成樹脂メッシュシートを一体化させることができる。合成樹脂メッシュシートが補強布の役割を果たすことで弾性モルタルや接着剤や防水層の損傷を防ぐことが可能となる。
例えば、ポリエステル系メッシュシート(商品名:ダイニーマHPEメッシュ1000 東洋紡績株式会社製)を積層することができる。2mm程度の厚さで弾性モルタルを露出防水層上面に塗布し、これが硬化する前にメッシュシートを積層し、このメッシュシートが弾性モルタルに沈み込み一体化する程度に弾性モルタルを重ね塗りする。そして、弾性モルタルの硬化後に接着剤を塗布して金属板一体型太陽電池をその上に貼り付ける。アスファルト防水層等の露出防水層上面に上記の弾性モルタルを施工するには、はけ塗り、ローラー塗布等いずれの方法によっても可能であるが、その厚さは1〜5mm、好適には2mm程度である。本発明の弾性モルタルは一般的な弾性モルタルよりも変形量が大きく、アスファルト防水層等の露出防水層や金属板一体型太陽電池の動き、熱収縮膨張による伸縮等に追従できるため、厚く施工する必要はない。
弾性モルタル層と金属板一体型太陽電池の金属板を接着する接着剤としては、金属板とアスファルト等からなる露出防水層との双方に十分な接着力を発揮する接着剤であれば特に限定されないが、例えば、エポキシ系樹脂接着剤、ポリウレタン系樹脂接着剤や、ポリエステル系樹脂接着剤が好適である。接着剤としては揮発物を含まないことが更に好適である。接着剤の具体例としては、例えば、商品名:レジコンPSN特殊接着剤(エポキシ系樹脂接着剤)、ペトロケミカルス株式会社製が挙げられる。
本発明における接着剤のなかで、エポキシ系接着剤を一例として以下に詳細に説明する。エポキシ系樹脂接着剤には、(1)100%反応性であり硬化中に揮発物が生成しないので、本質的に重合中に収縮が起きず、接着過程での内部応力の緩和による破壊等がその他の樹脂系接着剤より小さく被着体との接着力低下が起こりにくい、(2)異種材料の接着が可能である、(3)耐熱、耐水、耐薬品性に優れているため、硬化後の環境に対する耐久性が他の樹脂系より優れている、(4)エポキシ系樹脂接着剤が硬化して金属に良く接着するのは、エポキシ系樹脂が固まって生成するOH基と金属表面に吸着した水のOH基との水素結合が起きている事に起因して金属との接着に優れている、といった性質が知られている。
本発明は、エポキシ系樹脂の接着剤が次のような特性をも有することを見出したことに基づくものである。
(A)ガルバリウムのような鋼板の接着剤は溶剤系が使用されているが、下地が耐溶剤の悪い弾性モルタル層であるため無溶剤タイプの接着剤が鋼板に対する接着性に優れる。
(B)接着剤組成中に溶剤を含まない事により、接着剤が硬化時に発生する溶剤の蒸発等の離散による硬化収縮率が大きく成るのを抑制できる。
(C)被着体である、金属と、アスファルト等からなる露出防水層との濡れ性が良い。接着剤は被着体の面を濡らして拡がった後、固まって接着が完了する。このとき、濡れ性が悪いと気泡噛み等が起き、金属表面に樹脂が良く流れない。接着の原理から言えば接着剤と被着体は分子間力に及ぶ範囲に接近し分子間力が働き接着が可能になるが、濡れ性が悪いとそれが期待できなくなる。
更に(D)上記のような性能を持つエポキシ系樹脂接着剤のうち、無溶剤系では硬化収縮がないか又は非常に小さな値であると共に、水素結合による金属等の被着体との接着性が期待され、更に被着体との良好な濡れ性により十分な分子間力による接着性が期待されるので、例えば、アンカー効果の期待できるHS基(チオール基)を配合したエポキシ系樹脂接着剤を使用することにより金属板一体型太陽電池と弾性モルタルへの接着性が同時に確保される。
上記記載のHS基を配合したエポキシ系樹脂接着剤とは、エポキシ樹脂と末端にHS基を持つアミンを混合したエポキシ系接着剤(例えば、商品名:レジコンPSN特殊接着剤、ペトロケミカルス株式会社製)であり、これらが反応した際にできる−S−R−S−結合のS(イオウ)が金属表面を粗すことにより得られるアンカー効果によって金属との接着を良好なものとするものである。
上記のエポキシ系樹脂接着剤は、弾性モルタル上面に厚さ2mm程度施工する。このエポキシ系樹脂接着剤は一般的なエポキシ系樹脂接着剤よりも硬化収縮量が非常に小さく、アスファルト防水層や金属板一体型太陽電池に収縮による歪み等の影響を与えない。また、金属板一体型太陽電池の長手方向とアスファルト防水層の長手方向を合わせて両者を接合することが好適である。これは、金属板一体型太陽電池、アスファルト防水層ともに長手方向に伸縮する傾向にあるため、このように貼ることにより互いの伸縮の影響を軽減できるからである。
本発明で使用される金属板一体型太陽電池は、金属板とプラスチックフィルム上に形成したフレッキシブルな太陽電池とを一体化したものであり、太陽電池部と、太陽電池部を封止保護する材料と、絶縁被覆された接続用導体から構成される。該太陽電池としては厚みが薄いもの、特に、厚みが1mm又はそれ以下のものが好適である。このフィルム型太陽電池は可とう性を有しており、例えば、太陽電池部を曲率半径100mm以下まで曲げても発電特性に実質的に変化がないもの、特に曲率半径50mm以下まで曲げても、発電特性に実質的に変化がないものが好適である。可とう性のある太陽電池は一体化した金属板を変形させることにより、露出防水層の表面形状に適応させることができる。
本発明の太陽電池としては、結晶系シリコン、多結晶系シリコン、非晶質シリコン系の太陽電池のいずれを用いても良いが、可とう性の点から、アモルファスシリコン系の太陽電池が好適である。また、太陽電池をフィルム型アモルファス太陽電池とすることで、太陽電池裏面に放熱用スペースを設ける必要がなく、露出防水層上面に直接貼り付けることが可能となる。
金属板一体型太陽電池は、フィルム型太陽電池と金属板、例えば、ガルバニウム鋼板を貼り合わせて作製されるが、貼り合わせる金属板はガルバニウム鋼板に限らず、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板や、アルミ板でもよい。また、金属板一体型太陽電池は、例えば、厚さが0.3〜1.0mmの金属板にフィルム型の太陽電池を接着剤により貼り付けることにより作製され、弾性モルタル層を介してエポキシ系接着剤等によって露出防水層上面に貼り付けられたものである。
本発明の金属板一体型太陽電池は、例えば、図2に示すような柔軟性を持つフィルム型太陽電池(商品名:FWAVE 富士電機システムズ株式会社製)をEVA系接着剤によってガルバニウム鋼板(商品名:JFEガルバニウム鋼板 JFE鋼板株式会社製)に貼り付けたものである。その外観を図3に示す。また、フィルム型太陽電池の樹脂等からなる側部を鋼板の端部に巻き込むようにして覆うことにより金属板と一体となし、これを露出防水層上面に直接貼り付けることで、フィルム型太陽電池と金属板の界面から雨水が浸入することが無く、またこの界面からの剥離が防止される。
本発明では、露出防水層の上面に弾性モルタル層を介して接着剤で金属板一体型太陽電池が貼り付けられるが、露出防水層が特に限定されることはなく、例えば、アスファルトの被膜を利用してアスファルトルーフィングシートを張り重ね一体化した積層防水層からなるアスファルト防水層、シート防水層や、塗膜防水層が用いられる。これらの防水層が設けられる下地としては、建築物の露出防水層下地として使用されるものであれば特に限定されることはないが、コンクリート下地や、金属屋根が最も適している。
アスファルト防水層としては、例えば、溶融アスファルトを流し、アスファルトルーフィングを張り重ねる熱工法、溶融アスファルトのかわりに粘着層を設けた改質アスファルトルーフィングを張る自着工法、アスファルトルーフィングの表面をバーナーであぶり用着させて張るトーチ工法や、塗装防水材料等の異種防水剤と改質アスファルトルーフィングシートを組み合わせた接着工法等により形成された防水層が挙げられる。
シート防水層としては、例えば、エチレンプロピレンゴムとブチルゴムを含有するポリマーを加硫して弾性化した加硫ゴム系のシート、や軟質塩ビシートを利用した防水層が挙げられる。また、塗膜防水層としては、例えば、ウレタンを主成分とする塗膜層、合成ゴム(クロロプレンゴム)とクロロスルホン化ポリエチレンゴムによる積層塗膜層、アクリルエマルジョンの塗膜防水層、や合成ゴムラテックスを添加したゴムアスファルトエマルジョンと硬化剤を同時に吹き付ける工法によるによる防水層等が挙げられる。
露出防水層としては、例えば、コンクリート屋根の屋上スラブの上には、コーキング材、アスファルト防水層、押さえモルタルと塗り又は重ねられた防水層が例示される。なお、押さえモルタル間には歪防止のため伸縮目地が狭入され、屋上の縁の内壁は、ラス張りモルタル仕上げとされ、ブレキャストコンクリート笠石などが屋上の縁には接着配置された屋根構造が例示される。露出防水層中には、フォームポリスチレン、硬質ウレタンフォーム等からなる断熱材を敷設貼着してもよい。断熱層上には、フェルトにアスファルトを浸透させ防水層を作るためのシートを用いたアスファルトルーフィングにより形成された防水工事用アスファルトを貼着配置してもよい。
一旦接着した金属板一体型太陽電池の端部が浮き上がることを防ぐために、露出防水層上面に貼り付けた金属板一体型太陽電池の端部とそれに隣接する弾性モルタル層の表面上にポリアミド系ホットメルト樹脂等の接着剤を塗布し、その上に幅50mm、厚さ0.11mmのガルバニウム鋼板(JFEガルバニウム鋼板 JFE鋼板株式会社製)等の金属板又は金属箔を載せその上から加熱してポリアミド系ホットメルト樹脂を軟化させて金属板一体型太陽電池と弾性モルタル層との界面をシールすると共に、更に上から押さえて金属板を接着させる。このようにすると、金属板一体型太陽電池の端部が浮き上がることもなく、各層間から水が浸入することがないため、耐久性を向上させることができる。
以上のように、本発明により、露出防水層上に金属板一体型太陽電池を貼り付けることで、従来のパネル型太陽電池を設置していた取り付け架台が不要となり、設置の手間が省けコストダウンできる。また、弾性モルタルを介して露出防水層上に直接金属板一体型太陽電池を貼り付けることができ、金属板一体型太陽電池と防水層の熱膨張率の差を弾性モルタル層のフレキシブルな特性が吸収することで防水層に漏水の原因となるような亀裂・損傷箇所を発生させない工法である。上記のような工法を採用することにより、アスファルト防水、シート防水、塗膜防水等の露出防水層上に太陽電池を簡便に設置することが可能となった。
本発明により次のような効果が奏される。
(1)本発明で用いられる弾性モルタル層はその組成に由来し、建築物等の露出防水層と金属板一体型太陽電池との中間に位置して、日射による温度変化やアスファルト防水層の乾燥収縮、経時変化等によるアスファルト防水層と太陽電池の接合界面における剥離剪断力に対する変形追従性能に優れている。したがって、長期間に亘り剥離、破壊のおそれがない太陽電池の設置構造を構築することができる。すなわち、この弾性モルタル層を介して露出防水層上に直接金属板一体型太陽電池を貼り付けることができ、金属板一体型太陽電池と露出防水層の熱膨張率の差を弾性モルタルのフレキシブルな特性が吸収することで防水層に漏水の原因となるような亀裂・損傷箇所を発生させない。
さらに、本発明の弾性モルタルは、一般の弾性モルタルが有する性質に加え、次のような優れた特性を有するように調製されたものである。
(A)セメントの老化防止効果とアクリル系樹脂及びエチレン酢酸ビニル系樹脂との組み合わせにより極めて耐候性が良い。
(B)他のエマルジョンに比べてTg(ガラス転移点)が極めて低いことにより変形能が大きいのに加えて、セメントの補強効果により接着性及び皮膜強度が高い。
(C)高濃度のエマルジョンであるが故に余剰水が少なく、乾燥速度及び硬化速度が速い。
加えて、(2)太陽電池を露出防水層に直接貼り付けることができるため、今までパネル型太陽電池を設置するために必要だった専用架台が不要となる。
(3)架台の作製しそれを設置するための手間が無くなり、低コストで太陽電池を設置できる。
(4)太陽電池が露出防水面に沿って直接設置でき風当たりが少ないため、強風対策を必要としない。
(5)防水層上に架台を取り付ける際の防水層の加工、破損等がないため、漏水の危険が減少される。
(6)既存の建築物に、簡便に取り付けることができる。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
以下に、本発明の実施形態について図を参照しながら詳細に説明する。図1は、打設コンクリート下地上のアスファルト防水層へ、弾性モルタル層を介して金属板一体型太陽電池を貼り付けた太陽電池の設置構造の断面図であり、1はコンクリート下地層、2は露出防水層、3は弾性モルタル層、4はエポキシ系樹脂接着剤層、5は金属板一体型太陽電池を示す。このように本実施例の金属板一体型太陽電池の設置構造は、アスファルトからなる露出防水層、弾性モルタル層、その上にエポキシ系接着剤により貼り付けた金属板一体型太陽電池から構成した。
金属板一体型太陽電池は、図2の外観図に示すような柔軟性を持つフィルム型太陽電池(商品名:FWAVE 富士電機システムズ株式会社製)をEVA系接着剤によってガルバニウム鋼板(商品名:JFEガルバニウム鋼板、JFE鋼板株式会社製)に貼り付けて作製した。金属板一体型太陽電池の外観を図3に示す。図3において、7は金属板上に貼り付けられ一体化された太陽電池、8は接続用のコネクタを示す。
露出防水層として、打設コンクリート下地上にアスファルトシートを接着して形成した。弾性モルタルとしては、普通ポルトランドセメントと珪砂(粒径:300〜1000μm)の配合比が1:3からなるセメント粉体に、Tgが−60℃のセメント混和用純アクリル樹脂エマルジョン(乾燥固形分60重量%)を粉体に対して30重量%(樹脂乾燥固形分/セメント粉体=18/100)となるように配合して調製した。一般的なセメント系防水材にはアルミナセメントが使用されるが、本実施例では長期的な耐久性を向上させるために普通ポルトランドセメントを使用した。また、ポリマーを配合した通常のセメントモルタルは、ポリマー/セメント粉体=5%の比率で配合されるが、本実施例で使用した弾性モルタルは、ポリマー/セメント粉体=18%の比率で配合したポリマーリッチな配合であった。
エポキシ系樹脂接着剤の主剤と硬化剤の組成を表1に示す。主剤としてはビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を使用し、これに反応性エポキシ樹脂、キシレン樹脂をエポキシ樹脂主剤の粘度調整あるいは硬化剤との反応を促進させるために加えた。また、顔料及び添加剤を加えた。また、硬化剤としては、3級アミンを主剤とし、エポキシ樹脂に屈曲性を付与するためにポリサルファイドポリマーを添加した。
Figure 0005305071
ポリマーリッチな弾性モルタルと金属板の双方への接着性を改善するために、上記に示すエポキシ系樹脂接着剤を用いた。このエポキシ系樹脂接着剤はポリマーリッチな弾性モルタルと金属板の双方に対して濡れ性が良く、更に金属表面と反応して金属表面を粗らすことによりアンカー効果を生じさせて接着力を高めているものと考えられる。
本発明の金属板一体型太陽電池設置構造を構築するために、まず、アスファルト防水層上面に上記組成の弾性モルタルを厚さ2mm程度施工した。この弾性モルタルは一般的な弾性モルタルよりも変形量が大きく、アスファルト防水層や金属板一体型太陽電池の動きによる伸縮に十分追従できた。次に、弾性モルタルが硬化した後、上記エポキシ系樹脂接着剤を弾性モルタル上面に厚さ2mm以下程度の厚さに塗布した。このエポキシ系樹脂接着剤は一般的なエポキシ系樹脂接着剤よりも硬化収縮量が非常に小さく、弾性モルタル層、アスファルト防水層や金属板一体型太陽電池に対して硬化時の収縮等による歪みによる影響を与えることはなかった。
金属板一体型太陽電池をエポキシ系樹脂接着剤により接合するに当たり、太陽電池の長手方向とアスファルト防水層の長手方向を合わせて接着した。これは、金属板一体型太陽電池とアスファルト防水層がともに長手方向に大きく伸縮する傾向にあるため、このように長手方向を合わせて貼ればお互いの伸縮の影響を軽減できるからである。以上のようにして露出防水層に弾性モルタル層を介して金属板一体型太陽電池を貼り付けることで、従来のパネル型太陽電池を設置していた取り付ける架台が不要となり、設置の手間が省けコストダウンできた。また、設置した後にも長期間、太陽電池の剥離や、防水層の破壊による水漏れが発生することがなかった。
露出防水層上面に塗布した弾性モルタル層中にポリエステル系メッシュシート(商品名:ダイニーマHPEメッシュ1000 東洋紡績株式会社製)を有する金属板一体型太陽電池の設置構造を構築した。その断面構造を図4に示す。図4において、1はコンクリート下地層、2は露出防水層、3は弾性モルタル層、4はエポキシ系樹脂接着剤層、5は金属板一体型太陽電池、8はポリエステル系メッシュシートである。本実施例では、およそ2mm程度の厚さで弾性モルタルを露出防水層上面に塗布し、これが硬化する前にポリエステル系メッシュシートを積層し、このメッシュシートが弾性モルタルに沈み込み一体化する程度に弾性モルタルを重ね塗りして弾性モルタル層を形成した。弾性モルタルの硬化後に、エポキシ系樹脂接着剤を塗布して金属板一体型太陽電池を貼り付けた。このポリエステル系メッシュシートは、補強布の役割を果たし弾性モルタルや接着剤や防水層の損傷を防ぐことができた。
本実施例では、金属板一体型太陽電池の端部の浮き上がりを防ぐためにガルバニウム鋼板片で押さえた金属板一体太陽電池の設置構造を構築した。その断面を図5に示す。図5において、10はガルバニウム鋼板片、11はホットメルト樹脂である。本実施例では、露出防水層上面に貼り付けた金属板一体型太陽電池の端部とそれに隣接する弾性モルタル層の表面にポリアミド系ホットメルト樹脂を置き、幅50mm、厚さ0.11mmのガルバニウム鋼板片を載せ、ガルバニウム鋼板の上から加熱してポリアミド系ホットメルト樹脂を軟化させて金属板一体型太陽電池と弾性モルタル層の界面をシールすると共に、上から押さえたガルバニウム鋼板片を両者と接着させた。このようにして、金属板一体型太陽電池の端部が浮き上がることもなく、各層間から水が浸入することがない端部構造を構築して、太陽電池設置構造の耐久性を向上させた。
本実施例では、実施例1と同様の配合により作製した弾性モルタルが硬化した後の引張り強度及び引張り伸びを測定した。Tg値が−60℃の純アクリル樹脂エマルジョンと、Tg値が−20℃のスチレン−アクリル樹脂エマルジョンを使用した硬化弾性モルタルの測定値を表2に示す。これらの測定値から、Tg値が低い純アクリル樹脂を含有する弾性モルタルが、本発明の金属板一体型太陽電池の設置構造の構築に適していることが分かった。
Figure 0005305071
本発明は、露出防水層上に金属板一体型太陽電池が設置されている太陽電池の設置構造であって、露出防水層、Tgが−40〜−80℃の合成樹脂エマルジョンと水硬性セメントからなり、該樹脂成分を10重量%以上含有する弾性モルタル層、接着剤層、及び金属板一体型太陽電池がこの順序で接合されている金属板一体型太陽電池の設置構造、及びその設置工法に係るものであり、太陽電池設置のための専用架台を建造物の屋上へ設置したり、瓦等の建材と太陽電池を一体化して施工する必要のない太陽電池の設置構造及びその施工法を見出したものである。
本発明は、防水層に損傷等を発生させることがなく、強風に対する対策を必要としないで露出防水層上に太陽電池を設置することが可能となり、また、既存の建物の露出防水層上に簡便な方法により太陽電池を設置することを可能とするものである。本発明は、太陽電池を設置する場所を選ばず、低コスト・省力化のメリットを受けることによって太陽電池ユーザーの拡大に寄与するものとして環境対策上ならびに産業上での利用可能性は大きい新しい技術である。
本発明の金属板一体型太陽電池の設置構造を示す。 フィルム型太陽電池の外観を示す。 金属板一体型太陽電池の外観を示す。 合成樹脂製のメッシュシートが配された弾性モルタル層を有する本発明の金属板一体型太陽電池の設置構造を示す。 金属板一体型太陽電池の端部を金属板により弾性モルタル層表面に接合強化した本発明の設置例を示す。
符号の説明
1:コンクリート下地層
2:露出防水層
3:弾性モルタル層
4:エポキシ系樹脂接着剤層
5、7:金属板一体型太陽電池
6:フィルム型太陽電池
8:接続用コネクタ
9:ポリエステル系メッシュシート
10:ガルバニウム鋼板片
11:ホットメルト樹脂

Claims (12)

  1. 露出防水層上に金属板一体型太陽電池が設置されている太陽電池の設置構造であって、該設置構造が、アスファルト露出防水層、Tgが−40〜−80℃のアクリル系樹脂エマルジョン又はエチレン酢酸ビニル系樹脂エマルジョンからなる合成樹脂エマルジョンと水硬性セメントからなり、該樹脂成分を3〜20重量%含有する弾性モルタル層、エポキシ系樹脂接着剤、ウレタン系樹脂接着剤、ポリエステル系樹脂接着剤、又はアクリル系樹脂接着剤からなる接着剤層、及び金属板一体型太陽電池の順で設けられてなり、かつ上記弾性モルタル層中に合成樹脂製のメッシュシートを有してなることを特徴とする金属板一体型太陽電池の設置構造。
  2. 上記接着剤が、揮発物を含まない接着剤である請求項に記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
  3. 金属板一体型太陽電池の金属板が、厚さ0.3〜1.0mmのガルバニウム鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、又はアルミニウム板である請求項1又は2に記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
  4. 金属板一体型太陽電池を構成する太陽電池が、フィルム型アモルファス太陽電池である請求項1からのいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
  5. 金属板一体型太陽電池が、フィルム型太陽電池により金属板の端部が覆われるように貼り合わせて一体化されている請求項1からのいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
  6. 金属板一体型太陽電池の端部と弾性モルタル層上に金属板又は金属テープを重ね合わせ、ホットメルト接着剤により接着させて金属板一体型太陽電池の端部を押さえた請求項1からのいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置構造。
  7. 露出防水層上に金属板一体型太陽電池を設置する太陽電池の設置工方法であって、
    露出防水層表面上にTgが−40〜−80℃の−40〜−80℃のアクリル系樹脂エマルジョン又はエチレン酢酸ビニル系樹脂エマルジョンからなる合成樹脂エマルジョンと水硬性セメントからなり、該合成樹脂成分を3〜20重量%含有する弾性モルタル層を設け、この上に金属板一体型太陽電池を、エポキシ系樹脂接着剤、ウレタン系樹脂接着剤、ポリエステル系樹脂接着剤、又はアクリル系樹脂接着剤からなる接着剤を介して接合させる工程よりなり、
    かつ上記露出防水層表面上に弾性モルタル層を設ける工程においては、露出防水層上面に塗布した弾性モルタルに合成樹脂製のメッシュシートを積層し、このメッシュシートの上から弾性モルタルを塗り重ねて行い、
    更に上記弾性モルタル層の上に金属板一体型太陽電池を接着剤を介して接合させる工程においては、上記メッシュシートの上から重ねて塗られた弾性モルタルが硬化した後に、そのモルタル層の上に金属板一体型太陽電池を上記接着剤を用いて貼り付けることを特徴とする金属板一体型太陽電池の設置工法。
  8. 上記接着剤が、揮発物を含まない接着剤である請求項に記載の金属板一体型太陽電池の設置工法。
  9. 金属板一体型太陽電池の金属板が、厚さ0.3〜1.0mmのガルバニウム鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、又はアルミニウム板である請求項7又は8に記載の金属板一体型太陽電池の設置工法。
  10. 金属板一体型太陽電池を構成する太陽電池が、フィルム型アモルファス太陽電池である請求項7から9のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置工法。
  11. 金属板一体型太陽電池が、フィルム型太陽電池により金属板の端部が覆われるように貼り合わせて一体化されている請求項7から10のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置工法。
  12. 金属板一体型太陽電池の端部と弾性モルタル層上に金属板又は金属テープを重ね合わせ、ホットメルト接着剤により接着させて金属板一体型太陽電池の端部を押さえる請求項7から11のいずれかに記載の金属板一体型太陽電池の設置工法。
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