JP5304985B2 - バイオエタノールからのアセトン製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、バイオマスを原料とするエタノールからアセトンを製造する方法に関するものである。本明細書では、バイオマスを原料とするエタノールをバイオエタノールと称する。
地球環境の悪化を食い止めるとともに原油資源の枯渇を防止するために、植物その他のバイオマスからエタノールを製造する技術が開発され、実用化されている。例えば特許文献1には、バイオマスから得られた糖液を酵母により発酵させて粗エタノールを生成し、バイオマスを燃焼させて得られた蒸気で蒸留して無水エタノールとするバイオエタノールの製造方法が開示されている。
バイオマスはその生成過程において既に空中のCOを吸収しているため、バイオエタノールの燃焼時に空中にCOを排出しても全体としてはカーボンニュートラルであり、地球温暖化防止に寄与するものと期待されている。バイオエタノールはわが国においても自動車用ガソリンに混合して使用されているが、排ガス中にNOが多量に発生するという問題やエンジンを腐食させるという問題等があるため、法律によって添加率の上限が3%と定められている。このため未だ有効に利用されているとはいいがたい。
そこで本発明者等は、バイオエタノールを他の有用炭化水素に転換すればバイオマスエネルギーの利用が進み、地球環境問題を解決する一つの方法となると考え、バイオエタノールからケトン類であるアセトンへの転換に着眼した。アセトンはゼオライト触媒によりガソリンに転換できることが分っているので、上記の問題も解決される。
工業的なアセトンの製法としては、ワッカー法とキュメン法とが一般的である。ワッカー法は、塩化パラジウム‐塩化銅系触媒によりプロピレンを空気にて直接酸化する方法である。またキュメン法は、塩化アルミニウムまたはリン酸を触媒としてプロピレンとベンゼンを反応させてキュメンを精製し、キュメンを酸化後分解してアセトンとフェノールを合成する方法である。しかし何れの方法も石油を原料としており、地球環境問題の解決にはつながらない。
なお特許文献1にも示されるように、バイオマスの発酵には水分が必要であり、またバイオマス自体も含水状態にあるのが普通である。このためバイオエタノールにも大量の水分が含まれている。しかしバイオエタノールを燃料として利用するには高純度に精製することが必要である。また、エタノール/水系では図5に示すようにエタノール濃度が高い領域では気液両相のエタノール分率にほとんど差がなくなるため、エタノール濃度向上に多くのエネルギーを必要とする。特許文献1の方法では、バイオマスを燃焼させて発生させた水蒸気を利用して含水エタノールの蒸留を行い、エタノール濃度を高めているが、バイオマスエネルギーの有効利用という観点からは、無駄がある。さらに,本発明により生成する水−アセトン系では水−エタノール系とは異なり共沸点が存在しないため水―エタノールに比較して,アセトン濃縮が容易である。
特開2004‐208667号公報
従って本発明の目的は、バイオマスを原料とする含水エタノールから、多くのエネルギーを必要とせずに、収率よくアセトンを製造できる技術を提供することである。
上記の課題を解決するためになされた本発明のバイオエタノールからのアセトン製造方法は、バイオマスを原料とする濃度が2〜50%の含水エタノールを酸化鉄に2〜10質量%のZrを含有させたZr‐Fe触媒の存在下で400〜600℃の反応温度に加熱し、アセトンを生成することを特徴とするものである。なお、反応温度は450〜550℃とすることが好ましい。またバイオマスは、木質系バイオマスまたは廃棄物系バイオマスとすることができる。
本発明のバイオエタノールからのアセトン製造方法によれば、含水エタノールを精製することなく、濃度が2〜50%の含水エタノールから直接70%以上の高収率で直接アセトンを製造することができる。このためエタノールの精製に多くのエネルギーをかける必要がない。また本発明では廃棄物系を含む各種のバイオマスを原料として利用でき、石油に頼らずにアセトンを製造することができる。
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の工程を示すブロック図であり、出発物質はバイオマスである。このバイオマスとしては、間伐材、廃材、おが屑、ペーパースラッジのような木質系バイオマスのほか、下水汚泥、生ゴミ、屎尿、畜産廃液のような廃棄物系バイオマスを用いることもできる。これらのバイオマスは液状化し、必要に応じて加水分解したうえでアルコール発酵させる。
木質系バイオマスの場合には、加水分解によって5炭糖と6炭糖とに分解される。これは木質系バイオマスの主要成分であるヘミセルロース(5炭糖と6炭糖とのポリマー)が加水分解されるためである。例えば稲わら中には、ヘミセルロースが約30%含有されている。なお下水汚泥、生ゴミ、屎尿等の場合にはこのような加水分解を必ずしも必要としないが、熱分解により液状化しておけば発酵させ易い。
次に従来と同様に酵母によるアルコール発酵が行われてエタノールが生成されるが、このエタノールは水分と共存する含水エタノールであり、副生物として炭酸ガスが発生する。木質系バイオマスの場合、理論上は51重量%のエタノールが生成されることとなる。従来法ではこのようにして得られた含水エタノール(粗エタノール)を多くのエネルギーを用いて精製する必要があったが、本発明では含水エタノールのままでアセトン生成工程に送られる。
本発明では、含水エタノールをZr‐Fe触媒の存在下で400℃以上に加熱することによりアセトンを生成する。ここで用いるZr‐Fe触媒は、鉄酸化物系触媒上にZrを担持させたもので、好ましくは2〜10質量%のZrを担持させる。鉄酸化物はヘマタイトである。このようなZr‐Fe触媒は、鉄酸化物系触媒をZr含有水溶液に含浸させ、これをろ過して得られた固形分を水蒸気雰囲気下で熱処理する方法、またはFe塩とZr塩を水溶液とした後、アルカリを加えて共沈させ、その固形分を熱処理する方法によって製造することができる。なお、鉄酸化物系触媒に少量のAlを含有させておくこともできる。
このZr‐Fe触媒は粒状またはハニカム状として反応容器内に収納して固定床を形成し、含水エタノールを流す。このときの反応温度が400℃以上となるように、反応容器及び反応容器への含水エタノールの供給管路をヒーターで加熱する。後記する実施例のデータに示すように、反応温度が300℃では全くアセトンは生成されず、400℃以上でアセトンが生成される。好ましい反応温度は450〜550℃である。
含水エタノール中のエタノール濃度は高くする必要はなく、400℃の実験ではエタノール濃度の低い方がアセトンの収率が高くなることが確認されている。従って含水エタノールのままでアセトン生成を行わせることができる。含水エタノール中のエタノール濃度を50%、反応温度を500℃とした場合には、アセトンの収率が70%以上になることが確認された。なお生成物のガスはほとんどが炭酸ガスであり、微量のCHCHOが副生される。反応容器から出たアセトン含有ガスはコンデンサにより冷却されてアセトンを回収される。
このように、本発明によれば含水エタノールを精製することなく、70%以上の高収率で直接アセトンを製造することができる。なお前記したように、エタノール/水系では図5のグラフのとおりエタノール濃度が高い領域では気液両相のエタノール分率にほとんど差がなくなるために蒸留による精製が困難となる。これに対してアセトン/水系では図4のグラフのとおりアセトン濃度が高い領域でも気相中のアセトン分率が高く、蒸留による精製が容易である。このため、回収されたアセトンの精製に要するエネルギーも少なくて済む。
以下に本発明の実施例を示す。
図2に示す実験装置を用いて、含水エタノールからアセトンを生成する実験を行った。1は反応容器であり、その内部にZr‐Fe触媒の粒状体を充填し、気液が流通できる固定床2を形成した。Zr‐Fe触媒としては7.7重量%のZrを担持させた鉄酸化物系触媒を使用した。反応容器1は電気炉3に収納して300℃、400℃、500℃に加熱した。
含水エタノール中のエタノール濃度を変更するために、水と純エタノール(99.5%)とをそれぞれマイクロフィーダー4、5を介して反応容器1に供給した。また窒素ガスも反応容器1に供給した。これらを反応容器1に供給する管路にはテープヒータを巻き、160℃に予熱した。なお供給量は触媒量/水溶液供給速度=1hとなるように設定した。反応容器1から出たガスは氷水により冷却されたコンデンサ6、7に導き、アセトンを含む生成液を回収タンク9に回収した。窒素ガスはバルブ8から排出する。
生成液成分の分析は島津GC17Aを用いて行い、生成ガスの分析は島津GC12Aを用いて行った。図3に温度とエタノール濃度を変更した場合の、生成物収率を示す。反応温度が300℃の場合には、生成物はエタノールのままであってほとんど反応していないことが分る。反応温度が400℃の場合には、エタノール濃度が50%ではほとんど反応しなかったが、2%にするとアセトンの収率が約30%になった。反応温度が450℃であるとエタノール濃度が50%でもアセトンの収率が60%、500℃となると70%を越え、高収率でアセトンを製造できることを確認した。なお,温度がおよそ600℃を越えるとZr‐Fe触媒の熱安定性が低下するため,反応温度は450から550℃が好ましい。
本発明の工程を示すブロック図である。 実施例に用いた装置構成図である。 実施例における生成物収率を示すグラフである。 アセトン/水系の気液各相の気液平衡曲線を示すグラフである。 エタノール/水系の気液各相の気液平衡曲線を示すグラフである。
符号の説明
1 反応容器
2 固定床
3 電気炉
4 マイクロフィーダー
5 マイクロフィーダー
6 コンデンサ
7 コンデンサ
8 バルブ
9 回収タンク

Claims (3)

  1. バイオマスを原料とする濃度が2〜50%の含水エタノールを酸化鉄に2〜10質量%のZrを含有させたZr‐Fe触媒の存在下で400〜600℃の反応温度に加熱し、アセトンを生成することを特徴とするバイオエタノールからのアセトン製造方法。
  2. 反応温度を450〜550℃とすることを特徴とする請求項1記載のバイオエタノールからのアセトン製造方法。
  3. バイオマスが、木質系バイオマスまたは廃棄物系バイオマスであることを特徴とする請求項1記載のバイオエタノールからのアセトン製造方法。
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