JP5303835B2 - 蒸着膜とこれを用いた光路偏向素子、空間光変調素子、及び投射型画像表示装置 - Google Patents
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Description
例えば、斜方蒸着膜を液晶配向膜及び位相差手段として用いた反射型空間光変調素子に関する提案がなされている(例えば、下記特許文献1参照。)。
また、無機酸化物の斜方蒸着膜を配向膜に用いて、さらには表面処理に特徴を有する技術についての提案もなされている(例えば、下記特許文献2参照。)。
特に、物理・化学的に安定な酸化珪素系の材料であれば、強い光に曝される環境下でも数千から数万時間以上の長期に渡り耐久性を発揮すると推測される。
また、制御パラメータは、上記のほか、材料自体にも依存している。例えば、SiOとSiO2とでは配向性が異なる。
実際には、酸素の欠損を考慮してSiOxとなる。この場合、xは略1〜2の間となり、このxの数値によって液晶配向が異なったものとなる。
そして、かかる蒸着膜の液晶配向の精密な制御を行い、これを空間光変調素子や光路偏向素子として利用するとき、配向欠陥の発生を防止し、界面反射や散乱等を抑制してコントラストの向上を図ることを目的とする。
基板1の上に、柱状構造体2を有し、それぞれの柱状構造体2が、複数の孔3を有している。
なお、基板1、柱状構造体2、孔3三者の大小は、誇張して表現されているものとし、実際のものとは異なる。
基板1の厚さは、数十μm〜数mmであるものとする。
柱状構造体2の高さは、数十nm〜数百nmであるものとし、幅は数nm〜数十nmであるものとする。
孔3は、柱状構造体の幅以下であるものとし、数nm以下、あるいは1nm以下であることが好ましい。
図中、柱状構造体2は、全て同程度の大きさや形状で表現されているが、実際には、大きさや形状にバラツキがあってもよい。
また、孔3についても、形状は、丸、矩形、菱形、楕円等に限られず、種々の形態を採ることがある。
この例においては、柱状構造体が多数集まることによって全体として膜が形成されており、柱状構造体間で孔が形成されているので、膜全体としては多孔性であるといえる。
しかしながら、図1のように柱状構造体そのものが多孔性構造を有しているものとは明らかに区別されるものである。
斜方蒸着を行う真空蒸着装置の一例の模式的概略図を図3に示す。
この真空蒸着装置は、真空槽4の中に、基本的構成として、蒸発源5、シャッタ6、基板7、スリット部8、膜厚モニター10を具備している。
蒸発源5としては、抵抗過熱の場合、高融点の金属のボートであるものとし、電子線加熱の場合、坩堝であり、所定の蒸発材料が配置されているものとする。
シャッタ6は蒸発源5からの蒸気を遮蔽する機能を有しており、加熱により蒸発源5から生じる蒸気が所望の量到達するようになされている。
蒸気には、蒸発源5からの垂直方向成分12と、所定の角度を有している成分14とがある。
基板7は、ガラス等の透光性材料や、シリコン等の半導体材料によりなるものとする。
基板7には、所望の形態に応じて透明電極を付加してもよいし、形状については、矩形、あるいはウェハ状等、種々の選択をすることができる。
また、基板7は、図中破線で示す矢印方向9に移動可能となされている。基板の移動は、例えばリニアモータ等を利用することにより行う。
基板7の近傍にはスリット部8が設けられており、蒸発源からの蒸着蒸気の入射角度を制御する機能を有している。これにより膜質の均質化が図られる。基板7のスライドはこのスリット部8の範囲内で行われるものとする。
また、蒸発源5からの垂線と基板面の法線との成す角度を、基板傾き角θと定義する。
この基板傾き角θを制御することにより、図1に示した柱状構造体2の形成角度を調製することができる。
但し、基板の傾き角θと柱状構造体2の傾き角は、等しくはならない。またθが小さすぎると柱状構造体2は形成されないことが確かめられた。
蒸着源5から基板7の中心までの距離は1mとする。
基板7は、52mm×68mm×0.6mmのガラス製板を適用した。なお、材料は、Corning Eagle2000である。
これらのうち、SiOを蒸発材料として使用することにより、容易に多孔性の成膜物質が得られることが確かめられた。
なお、実証実験においては、粒状のSiOを使用した(高純度化学99.99%,Grains 850〜2000μm)。
例えば、材料がSiO2であれば、SiOx(x<2)となる。このような現象を防止するためには、蒸着中に酸素ガスを流すことが必要である。
また、目標膜厚は100nm程度とし、モニターにより観察、確認することができるようになされている。
後述するが、酸素ガスの流量を調節して成膜することができる。
なお、上記蒸着レートは安定しており、要した蒸着時間は酸素流量によらずほぼ一定となったことが確かめられた。従って、蒸発、及び基板に蒸着したSiOはほぼ一定量である。
真空度は3sccmにしたとき、設定値で5×10-4Pa、80sccmにしたとき、2×10-2Paであった。この両者の間には、ほぼ直線関係が成立する。
酸素ガスの流量は相対的なものである。これは蒸着装置の真空槽の大きさが異なれば、酸素の濃度が異なるものとなるからである。従って成膜条件は、真空槽の真空度と併せて設定することが必要である。
但し、本発明においては、成膜条件において基板の傾き角を60°に限定するものではない。
例えば60°から±10°前後させると膜の配向性は変化するが、±1°程度の前後では、さほどの差は確認されない。
また液晶材料によって基板傾き角θは変わるものであり、その液晶に適した値を設定すればよい。
図4に酸素流量と屈折率との関係を示し、図5に酸素流量と膜厚との関係を示す。
なお、図4中に示す屈折率nは、波長λ=550nm付近のものである。図中、SiOxのプロットにおいて、酸素流量の増加とともに屈折率が低下していくことが示されている。また、図中、SiO2の一点のプロットは、SiO2を蒸発材料として成膜を行った結果によるものである。なお、このときの酸素流量は、約20sccmとした。
この屈折率は一般的なSiO2の屈折率であり、酸素欠損はない。従って、θ=60°と設定した場合でも、この酸素流量であれば酸素欠陥は無いものと推測できる。また、θ=60°での屈折率がθ=0°とした場合に比較して低いのは、主として柱状構造体の隙間により(図2参照)、これが密度を下げているためである.
次に、図5において、酸素流量が0から30sccmまでは膜厚がほぼ一定であることがわかる。しかし酸素流量が30sccmを超えると、急激に膜厚が厚くなることがわかった。
上述したように、材料の蒸発量はほぼ同じである。材料の蒸着量が同じで、膜厚が厚くなるのは、膜の密度が低下したためであると考えられる。これは、一つには柱状構造体が細長くなり、膜の密度が低下するためであり、もう一つには柱状構造体自体の密度が空孔等により低下したり、あるいはこれらの双方が原因になっているためと推測される。
また、柱状構造体の上部が密集した様子が観察できる上面観察においては、酸素流量が多いほど柱状構造体の密集の度合いが粗になることは確かめられなかった。これらのことから、柱状構造体自体の密度が低下しているものと考えられる。
このセル中に、液晶を毛管法を適用して注入し、形成された液晶組織とその配向性を観察した。これは直交ニコルにした偏光顕微鏡により行った。
液晶は(1)E8(Merck社)、(2)MLC−6884(Merck社)、(3)FELIX−016/100(Clariant社)の三種を用いた。室温付近で(1)、(2)は、スメクチック相であり、(3)はスメクチックC相である。毛管法による注入の際には、基板を加熱して等方相にしてからセルに注入した。
一方、液晶(2)は、垂直あるいはそれに近い配向(プレチルト)を示した。
また酸素流量が少ないときには、転傾及び粒状の配向欠陥が観察されたが、酸素流量が多くなるにつれてこれらの欠陥が低減した。また垂直配向であるため、コノスコープ像は、十字のアイソジャイアを示す。これが酸素流量の少ないときには、視野の中心からずれており、即ちプレチルトがあることを示し、また少しぼやけているようであった。しかし、酸素流量が多くなると、アイソジャイアは視野の中心にあり、また明瞭であった。したがって液晶配向性が向上していることが分かった。
液晶(3)については、カイラルスメクチック相に特有な複数のドメインのある複雑な液晶組織を示す。その一つのドメイン内は水平配向であるが、ドメインとドメインとが平行でなく、傾いているため、全体的にみると均一な水平配向ではない。酸素流量が多くなると、この複数のドメインが互いに平行になるようであり、配向性が向上した。
また、液晶(2)では、垂直配向は確認できたものの配向欠陥が多かった。
また液晶(3)については、小さなドメインが無秩序に集合した複雑な液晶組織が出現し、配向性は確認されなかった。
上記液晶(2)と(3)について、配向欠陥の低減化、及び配向性の向上が確認された。
酸素流量の好適な範囲について、下限値は、柱状構造体に空孔が生じ始める40sccm程度であり、上限は60〜70sccm程度であることが確かめられた。
但し、液晶の種類によって上記とは異なる数値範囲が好適なものとなることも考えられるので、液晶の種類に応じて、その都度、好適な酸素流量と基板の傾き角度θを選定することが必要となる。
膜の配向欠陥を低減し、配向性の向上を図ったことにより、液晶層における漏れ光及び散乱が効果的に低減でき、コントラスト比の向上が図られる。
図6(a)中の符号は、それぞれ、透光性(ガラス)基板61、透明電極62、無機の斜方蒸着膜から成る配向膜63、スペーサ64、液晶層65である。
図中、透明電極2は、ガラス基板1の内部にあるように表しているが、透明電極2をパターニングしたガラス基板に、光学用の接着剤を介してもう一枚のガラス(透明電極なし)基板を貼り合わせたものである。
このときガラス基板と接着剤の屈折率は整合させておくものとする。また透明電極はITO(Indium Tin Oxide)である。スペーサは球形のビーズであってもよい。またビーズを含有する接着剤であっても良い。
液晶65は、スペーサ64と、これと直交する方向では接着剤、あるいはシール剤(図示せず)により封入されているものとする。
また透明電極62は、図6(b)に示すように、ライン状(線状)の各透明電極が複数櫛状になった構成を有しているものとする。
図6(b)においては、上下のガラス基板を重ねた状態となっており、それぞれの透明電極を黒と白とで、分けて豹変している。
上下の櫛状の透明電極は、重ならないよう半ピッチ(一枚の基板上にあるライン電極とライン電極との間隔)ずらした構成となっている。これは、x方向に平行に、電界を効率よく発生させるためである。
また、電圧印加手段67により、交流電界が、透明電極62を介して液晶層65にかけられる。
電圧印加手段67は、櫛状電極と導電ライン68により電気的に接続状態となっている。
ライン電極の幅は10μm程度であり、ピッチは100μmであるものとする。ライン電極の数は一枚の基板で400本程度であるものとする。
また基板の大きさは数十mm×数十mm程度の大きさである。
二枚のガラス基板間の距離、即ち液晶層65の厚さ(セルギャップ)は、50μm程度であることが好ましい。
ガラス基板の厚さは、片側(ガラス基板、光学接着剤、ライン電極、ガラス基板)で約1mmである。
また複数のライン電極は、抵抗膜66により電気的に接続されている。抵抗膜は、x方向に電界の勾配を持たせるためのものである。電界は約100V/mmである。
また、ガラス基板61は、空気と接している。
このガラス基板61と空気との界面には、所定の反射防止膜が設けられているものとする(図示せず)。
また、図6(a)、(b)のそれぞれの下側には座標を示してあるが、光軸はz軸と平行とする。
これは、後述する図7、図8においても同様とする。
また図には2軸のみ描いてあるが、残り1軸は紙面に垂直であるとする。
ある電界をかけたときの状態図を図7(a)に示し、その電界の極性を反転させたときの状態図を図7(b)に示す。
図7(a)、(b)において、電界の極性を矢印72、72’で表した(方向のみで大きさは問題にしない)。これはx方向に平行であるものとする。この電界の極性に対応して液晶の分子は図7(a)、(b)中に示すように配向する(65a、65b)。この二つの状態の切り替えは、交流電界によって容易に行うことができる。
光路偏向素子には直線偏光が入射する(図7(a)、(b)中の70)。z軸に平行な太い矢印は光路を示し、x軸に平行な細い矢印は電場の振動方向を示すものとする。
直線偏光の光路が液晶層65で変わるのは、液晶の複屈折性によるものである。
出射光は、図7(a)、(b)中の71a、71bに示す。
液晶の分子配向の切り替えにより、光路の偏向方向も変わり二方向を取り得る。
電界の極性反転の周期は、60Hz以上であることが好ましい。また、応答速度の観点から、高速応答が可能なカイラルスメクチックC相を成す液晶が好適である。
液晶の配向は、液晶分子長軸が、基板及び配向膜に対して垂直であるが、配向膜に接する、あるいはこれとの極近傍の液晶分子の分子長軸が傾いている。いわゆるプレチルト角がついていてもよい。
また、液晶分子の大きさや各層の厚さは誇張して表現されているものとする。
また液晶分子は、セルギャップ間に一個ではなく、数千〜数万の単位で連なって存在する。
カイラススメクチックC相は、これらの液晶分子が電圧を印加していないときには螺旋状になっており電圧を印加すると螺旋がほどける性質を有している。
基本的な構成として、光源100、偏光変換素子101、色分離素子102、104、反射鏡103、105、空間光変調素子(LCoS:Liquid Crustal on Silicon)106、108、109、偏光分離素子107、110、111、空間光変調素子108、空間光変調素子109、色合成素子(Xプリズム)112、光路偏向素子113、115、1/2波長板114、投射レンズ116、スクリーン117、である。
光源100は超高圧水銀ランプ等であり、非偏光の白色光を放射する。
偏光変換素子101は、非偏光光を直線偏光とする。
また図示していないが、光源の配光分布を均一にするための一対のフライアイレンズからなる、均一照明光学系が入る。
三枚のLCoSを用いた三板式であり、赤、緑、青(R、G、B)の各色に一つのLCoSが対応する。
また、偏光分離素子(偏光ビームスプリッタ:PBS)も各色に対応している。
色分離素子102、104は、二枚で白色光からR、G、Bを分離する。
光路偏向素子は二枚用いる。これは四方向に偏向させたいためである。
図7に示した例においては、二方向のみであったため、これを二枚組み合わせて四方向の偏向とする。このとき二枚の光路偏向素子において、直線偏光の電場の振動方向を変える必要があり、1/2波長板114を間に設ける。1/2波長板により、第一の光路偏向素子を透過した直線偏光はその電場の振動方向を90°回転させる。第一の光路偏向素子と第二の光路偏向素子とは、偏向方向が直交するように設置する。また1/2波長板も遅相軸をx軸、或いはy軸から45°回転させて設置する。
反射型空間光変調素子201は、レンズアレイ基板202、蒸着膜203、液晶層204、画素電極205、スイッチング素子アレイ基板206、透明電極2031を具備している。
ここで、蒸着膜203は,液晶配向膜及び位相差手段を兼ねる。
マイクロレンズに入り、屈折され、透明電極を経た直線偏光は、マイクロレンズの曲線半径に応じて位相差を持つようになる。従って直線偏光でなくなる。これが液晶層において漏れ光を生じる原因となりコントラスト比の低下をひき起こす。
しかし液晶層に光が入るまでに本発明に係る蒸着膜を設けたことにより、位相差を低減化でき、コントラスト比を向上させることができる。
この位相差は、マイクロレンズアレイの曲率半径による。
空間光変調素子は反射型に限られるものではなく透過型であってもよい。
またこれに、前記光路偏向素子を用いた実施例を図11に示す。
図10、図11において、光学素子、部品の番号は、上述した図8と共通のものを適用した。
但し、図10には、光路偏向素子を含めていない。空間光変調素子は、図中の、106、108、109に示す。
コントラスト比を向上可能な空間光変調素子を用いたことにより、プロジェクタのコントラスト比の向上が図られた。
2 柱状構造体
3 孔
4 真空槽
5 蒸発源
6 シャッタ
7 基板
8 スリット部
10 膜厚モニター
12 蒸気の垂直方向成分
14 上記の所定の角度を有している成分
61 透光性(ガラス)基板
62 透明電極
63 配向膜
64 スペーサ
65 液晶層
66 抵抗膜
67 電圧印加手段
68 導電ライン
71a,71b 出射光
100 光源
101 偏光変換素子
102,104 色分離素子
103,105 反射鏡
106,108,109 空間光変調素子
107,110,111 偏光分離素子
108 空間光変調素子
109 空間光変調素子
112 色合成素子(Xプリズム)
113,115 光路偏向素子
114 1/2波長板
116 投射レンズ
117 スクリーン
201 反射型空間光変調素子
202 レンズアレイ基板
203 蒸着膜
204 液晶層
205 画素電極
206 スイッチング素子アレイ基板
2031 透明電極
Claims (6)
- SiOxを主成分とし、基板上に斜方蒸着法により作製された蒸着膜であって、
蒸発源からの垂線と基板面の法線との成す角度を基板傾き角θとしたときに、前記基板を9×10 -3 Paから2×10 -2 Paの真空度で該基板傾き角θを60±1°として保持し、蒸着中に酸素ガスを40sccm〜80sccm(sccm:standard cc/min)で流して作製されてなり、
複数の柱状構造体を具備しており、当該複数の柱状構造体は、それぞれが多孔性を有していることを特徴とする蒸着膜。 - 蒸着中に酸素ガスを流し、当該酸素ガスの流量は、前記SiOxのxが、略2となる量以上に設定されたものであることを特徴とする請求項1に記載の蒸着膜。
- 請求項1または2に記載の蒸着膜を具備することを特徴とする光路偏向素子。
- 請求項3の光路偏向素子を液晶光変調素子として用いたことを特徴とする投射型画像表示装置。
- 請求項1または2に記載の蒸着膜を具備することを特徴とする空間光変調素子。
- 請求項5の空間光変調素子を用いたことを特徴とする投射型画像表示装置。
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