JP5299310B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動変速機の制御装置に関するものであり、特に、ニュートラル制御からの復帰における自動変速機の制御を行なう技術に関するものである。
自動変速機の制御方法の一つとしてニュートラル制御が注目されている。例えば特許文献1に記載の技術がそれである。かかるニュートラル制御においては、車両の停止時などにおいて自動変速機が動力の伝達されないニュートラル状態とされ、トルクコンバータの引き摺りを防止することなどにより、燃費が向上する。
かかるニュートラル制御が終了する際には、自動変速機は動力を伝達しない状態から動力を伝達する状態に切り換えられる。そのため、その切換えにともなってショックが発生しうる。かかるショックを低減するため、自動変速機への入力トルクの制御が行なわれる。
特許文献1には、かかる入力トルクの制御としてエンジントルク制御を行なう車両の制御装置であって、そのエンジン制御の終期を、エンジン回転速度と自動変速機の入力軸回転速度とに基づいて判定する技術が開示されている。
特開2009−191795号公報
ところで、前記ニュートラル制御の復帰時には、例えば発進クラッチと呼ばれる油圧式摩擦係合装置が係合され、動力の伝達が行なわれるようになる。その際、前記発進クラッチの係合に伴ってジャダー(摩擦および振動の特性による振動・騒音)を発生することがある。このジャダーを低減するためには、前記発進クラッチの係合油圧を増加させ、発進クラッチのクラッチトルクを増加させることが考えられる。しかしながら、クラッチトルクを増加させると発進クラッチの係合に伴う係合ショックが大きくなるという問題がある。すなわち、ジャダーの低減と係合ショックの低減という両者を両立するという課題は未解決であった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ニュートラル制御からの復帰時において、ジャダーの低減と係合ショックの低減とを両立させることのできる自動変速機の制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明は、(a)ニュートラル制御からの復帰制御において、発進クラッチの差回転速度が目標クラッチ差回転速度となるようにフィードバック制御を行なう自動変速機の制御装置であって、(b)前記復帰制御において要求エンジントルクを制限する第1制御手段と、(c)該第1制御手段による要求エンジントルクの制限が終了した後に前記フィードバック制御を実行する第2制御手段と、(d)前記発進クラッチの摩擦係数の変化量の差回転速度の変化量に対する比が0以上となるように該発進クラッチの係合圧を制御する発進クラッチ制御手段とを有し、(e)前記第1制御手段および前記第2制御手段は、該発進クラッチのトルク容量の増加に合わせて要求エンジントルクを上昇させることを特徴とする。
また、請求項に係る発明は、前記第制御手段による要求エンジントルクの制限は、前記要求エンジントルクの変化勾配を、前記発進クラッチの摩擦係数の変化量の差回転速度の変化量に対する比が0以上となるエンジントルクのガード値よりも大きくするものであることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、前記第1制御手段により前記復帰制御において要求エンジントルクが制限され、前記第2制御手段により該第1制御手段による要求エンジントルクの制限が終了した後に前記フィードバック制御が実行されるので、前記第1制御手段により要求エンジントルクが制限されたことに伴って前記第2制御手段による前記フィードバック制御の実行時にトルクの増加代が得られるので、ニュートラル制御からの復帰制御においてジャダーの低減および係合ショックの低減を両立しつつ発進クラッチの係合を行なうことができる。また、前記発進クラッチ制御手段により、ニュートラル制御からの復帰制御において前記発進クラッチの摩擦係数の変化量の差回転速度の変化量に対する比が0以上となるように該発進クラッチの係合圧が制御されるとともに、前記第1制御手段および前記第2制御手段によるフィードバック制御により、前記発進クラッチのトルク容量の増加に合わせて要求エンジントルクが上昇させられるので、ニュートラル制御からの復帰制御においてジャダーの低減および係合ショックの低減を両立することができる。
また請求項に係る発明によれば、前記要求エンジントルクの変化勾配は、前記第2制御手段により、前記発進クラッチの摩擦係数の変化量の差回転速度の変化量に対する比が0以上となるエンジントルクのガード値よりも大きくするように制御されるので、前記第2制御手段によるフィードバック制御が十分に行なわれることが可能となり、ニュートラル制御からの復帰制御においてジャダーの低減および係合ショックの低減を両立することができる。
本発明が適用された車両用動力伝達装置の一部である車両用自動変速機の骨子図である。 図1の自動変速機において、複数の変速段を成立させる際の摩擦係合要素すなわち摩擦係合装置の作動状態を説明する作動表である。 図1の自動変速機などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部およびエンジンから駆動輪までの動力伝達系の概略構成を説明するブロック線図である。 図3の油圧制御回路のうちクラッチおよびブレーキの各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)の作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する回路図である。 電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 車速およびアクセル開度を変数として予め記憶された関係から実際の車速およびアクセル開度に基づいて変速判断を行うための変速線図である。 クラッチにおける差回転速度と押付油圧に対する摩擦係数の関係を表わす図である。 油圧勾配設定手段による油圧勾配の決定の制御作動を、差回転速度と押付油圧に対する摩擦係数の関係を表わす図において説明する図である。 電子制御装置の制御作動の要部すなわちニュートラル制御からの解除制御におけるエンジントルク制御の制御作動を説明するフローチャートである。 電子制御装置の制御作動の要部すなわちニュートラル制御からの解除制御における押付油圧制御の制御作動を説明するフローチャートである。 本実施例におけるニュートラル制御からの解除制御が実行された場合における制御作動を説明するためのタイムチャートである。
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用動力伝達装置の一部である車両用自動変速機10(以下、自動変速機10)の骨子図である。図2は複数の変速段を成立させる際の摩擦係合要素すなわち摩擦係合装置の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の左右方向(横置き)に搭載するFF車両に好適に用いられるものであって、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース26内において、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部20とを共通の軸心C上に有し、入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。この入力軸22は入力部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン30によって回転駆動される流体式伝動装置としてのトルクコンバータ32のタービン軸である。また、出力回転部材24は自動変速機10の出力部材に相当するものであり、図3に示す差動歯車装置40に動力を伝達するためにそのデフドリブンギヤ(大径歯車)42と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤとして機能している。エンジン30の出力は、トルクコンバータ32、自動変速機10、差動歯車装置40、および一対の車軸44を介して一対の駆動輪46へ伝達されるようになっている(図3参照)。なお、この自動変速機10やトルクコンバータ32は中心線(軸心)Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその中心線Cの下半分が省略されている。
トルクコンバータ32は、エンジン30の動力を流体を介することなく入力軸22に直接伝達するロックアップ機構としてのロックアップクラッチ34を備えている。このロックアップクラッチ34は、係合側油室36内の油圧と解放側油室38内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチであり、それが完全係合(ロックアップオン)させられることにより、エンジン30の動力が入力軸22に直接伝達される。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわちトルク容量がフィードバック制御されることにより、車両の駆動(パワーオン)時には例えば50rpm程度の所定のスリップ量でタービン軸(入力軸22)をエンジン30の出力回転部材に対して追従回転させる一方、車両の非駆動(パワーオフ)時には例えば−50rpm程度の所定のスリップ量でエンジン30の出力回転部材をタービン軸に対して追従回転させられる。
自動変速機10は、第1変速部14および第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)のうちのいずれかの連結状態の組み合わせに応じて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の6つの前進変速段(前進ギヤ段)が成立させられるとともに、後進変速段「R」の後進変速段(後進ギヤ段)が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、クラッチC1とブレーキB2との係合により第1速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB1との係合により第2速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB3との係合により第3速ギヤ段が、クラッチC1とクラッチC2との係合により第4速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB3との係合により第5速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB1との係合により第6速ギヤ段が、それぞれ成立させられるようになっている。また、ブレーキB2とブレーキB3との係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3のいずれも解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。
図2の作動表は、上記各変速段とクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。特に、第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)にはクラッチC1のみを係合させ、エンジンブレーキを作用させるときにはクラッチC1とブレーキB2とを係合させる。よって、第1変速段が成立させられている車両停止時にこのクラッチC1をスリップ状態乃至解放状態とすることにより、エンジン30のアイドリング負荷を抑制する所謂ニュートラル制御を実施することができる。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合要素(油圧式摩擦係合装置)であり、油圧制御回路50(図3参照)のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられるとともに係合、解放時の過渡油圧などが制御される。
図3は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部およびエンジン30から駆動輪46までの動力伝達系の概略構成を説明するブロック線図である。
図3において、電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機10の変速制御やロックアップクラッチ34のオンオフ制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用やリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を制御する変速制御用や油圧制御回路50のリニアソレノイドバルブSLUおよびソレノイドバルブSLを制御するロックアップクラッチ制御用等に分けて構成される。
例えば、電子制御装置100には、アクセル開度センサ54により検出されたアクセルペダル52の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、エンジン回転速度センサ56により検出されたエンジン30の回転速度であるエンジン回転速度Nを表す信号、冷却水温センサ58により検出されたエンジン30の冷却水温Tを表す信号、吸入空気量センサ60により検出されたエンジン30の吸入空気量Qを表す信号、吸入空気温度センサ62により検出された吸入空気の温度Tを表す信号、スロットル弁開度センサ64により検出された電子スロットル弁の開度θTHを表すスロットル開度信号、車速センサ66により検出された出力回転部材24の回転速度NOUTすなわち車速Vに対応する車速信号、ブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの作動中(踏込操作中)を示すフットブレーキペダル68の操作(オン)BONを表す信号、レバーポジションセンサ74により検出されたシフトレバー72のレバーポジション(操作位置、シフトポジション)PSHを表す信号、タービン回転速度センサ76により検出されたタービン回転速度N(=入力軸22の回転速度NIN)を表す信号、AT油温センサ78により検出された油圧制御回路50内の作動油の温度であるAT油温TOIL表す信号などがそれぞれ供給される。
また、電子制御装置100からは、電子スロットル弁の開度θTHを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、エンジン30の点火時期を指令する点火信号、エンジン30の吸気管または筒内に燃料を供給し或いは停止する燃料噴射装置によるエンジン30への燃料供給量を制御する燃料供給量信号、シフトインジケータを作動させるためのレバーポジションPSH表示信号、自動変速機10のギヤ段を切り換えるために油圧制御回路50内のシフト弁を駆動するシフトソレノイドを制御する信号およびライン圧を制御するリニヤソレノイド弁を駆動するための指令信号、ロックアップクラッチ34の係合、解放、スリップ量を制御するリニヤソレノイド弁を駆動するための指令信号などがそれぞれ出力される。
また、シフトレバー72は例えば運転席の近傍に配設され、図3に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。
「P」ポジション(レンジ)は自動変速機10内の動力伝達経路を解放しすなわち自動変速機10内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力回転部材24の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは自動変速機10の出力回転部材24の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは自動変速機10内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションは自動変速機10の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で第1ギヤ段「1st」〜第6ギヤ段「6th」の総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)であり、「S」ポジションはギヤ段の変化範囲を制限する複数種類の変速レンジすなわち高車速側のギヤ段が異なる複数種類の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行ポジション(位置)である。
この「S」ポジションにおいては、シフトレバー72の操作毎に変速範囲をアップ側にシフトさせるためのレバーポジションPSHとしての「+」ポジション、シフトレバー72の操作毎に変速範囲をダウン側にシフトさせるためのレバーポジションPSHとしての「−」ポジションが備えられている。例えば、「S」ポジションにおいては、「6」レンジ〜「L」レンジの何れかがシフトレバー72の「+」ポジション或いは「−」ポジションへの操作に応じて変更される。また、「S」ポジションにおける「L」レンジは第1ギヤ段「1st」にてブレーキB2を係合させて一層エンジンブレーキ効果が得られるためのエンジンブレーキレンジでもある。
上記「D」ポジションは自動変速機10の変速可能な例えば図2に示すような第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段の範囲で自動変速制御が実行される制御様式である自動変速モードを選択するレバーポジションでもあり、「S」ポジションは自動変速機10の各変速レンジの最高速側ギヤ段を超えない範囲で自動変速制御が実行されると共にシフトレバー72の手動操作により変更された変速レンジ(すなわち最高速側ギヤ段)に基づいて手動変速制御が実行される制御様式である手動変速モードを選択するレバーポジションでもある。
図4は、油圧制御回路50のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図である。
図4において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置100からの指令信号に応じた係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、エンジン30により回転駆動される機械式のオイルポンプ28(図1参照)から発生する油圧を元圧として図示しない例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度或いはスロットル開度で表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置100により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が制御される。そして、自動変速機10は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速機10の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速が実行される。例えば、図2の係合作動表に示すように3速→4速のアップシフトでは、ブレーキB3が解放されると共にクラッチC2が係合され、変速ショックを抑制するようにブレーキB3の解放過渡油圧とクラッチC2の係合過渡油圧とが適切に制御される。
図5は、電子制御装置100による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、エンジン出力制御手段102は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置による点火時期を制御するなどしてエンジン30の出力制御を実行する。例えば、エンジン出力制御手段102は、予め記憶された関係からアクセル開度信号Accに基づいてスロットルアクチュエータを駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。具体的には例えば、エンジン出力制御手段102は、エンジン30から出力されるエンジントルクが後述するニュートラル制御復帰手段110によって指示された要求エンジントルクとなるように制御を行なうことができる。
変速制御手段104は、例えば図6に示すような車速Vおよびアクセル開度Accを変数として予め記憶された関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて変速判断を行い、自動変速機10の変速を実行すべきか否かを判断し、例えば自動変速機10の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速機10の自動変速制御を実行する。このとき、変速制御手段104は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速機10の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力、油圧指令)を油圧制御回路50へ出力する。
油圧制御回路50は、その指令に従って、自動変速機10の変速が実行されるように油圧制御回路50内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を作動させて、その変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3を作動させる。
図6の変速線図において、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。また、この図6の変速線図における変速線は、実際のアクセル開度Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、この値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。
ニュートラル制御条件判定手段106は、シフトレバー72の走行ポジションにおいて所定のニュートラル制御条件が成立するか否かを判定する。この所定のニュートラル制御条件は、例えば車両が停止中であってアクセルペダル52が踏み込まれておらず、フットブレーキペダル68が踏まれていることなどである。より具体的には、ニュートラル制御条件判定手段106は、例えばレバーポジションPSHが「D」ポジションであるときに、車速Vが所定の停止判定値以下であり且つブレーキスイッチ70がオンBONである場合に、ニュートラル制御条件が成立したと判定する。
また、このニュートラル制御条件判定手段106は、後述するニュートラル制御手段108によるニュートラル制御中に前記所定のニュートラル制御条件が成立するか否かを判定することにより、そのニュートラル制御を解除(終了)するか否かを逐次判定する、すなわちニュートラル制御からの復帰を開始するか否かを逐次判定するニュートラル制御解除判定手段でもある。具体的には、ニュートラル制御条件判定手段106は、ニュートラル制御中に、ブレーキスイッチ70がオンBONでなくなった場合に、ニュートラル制御の解除開始を判定する。
ニュートラル制御手段108は、前記ニュートラル制御条件判定手段106により例えばシフトレバー72の「D」ポジションにおいて前記所定のニュートラル制御条件が成立したと判定されたときは、第1速ギヤ段を達成するための係合装置であるクラッチC1をスリップ状態乃至解放状態とするニュートラル指令を前記変速制御手段104に出力して自動変速機10を含む動力伝達経路を動力伝達抑制状態乃至動力伝達遮断状態とするニュートラル制御を実行する。変速制御手段104は、そのニュートラル指令に従って、クラッチC1をスリップ状態乃至解放状態とするように予め定められた所定のパターンに従ってクラッチC1の係合圧を低下させる制御信号を油圧制御回路50に出力する。自動変速機10内の動力伝達が抑制乃至遮断(解放)されることにより、トルクコンバータ32が略一体回転するようになってエンジン30のアイドリング負荷が抑制され、燃費やNVH(騒音・振動・乗り心地)性能が向上する。
このように、このニュートラル制御では、クラッチC1が例えば解放(わずかにスリップ係合するような係合直前状態)させられることにより、自動変速機10内の動力伝達経路が実質的に解放状態とされつつ、クラッチC1の半係合から係合への切換によって直ちに発進可能な発進待機状態とされる。
ニュートラル解除時制御手段110は、ニュートラル制御中に前記ニュートラル制御条件判定手段106によりニュートラル制御の解除開始が判定されたとき、自動変速機10を含む動力伝達経路を動力伝達可能状態とするように、第1速ギヤ段の係合側係合装置であるクラッチC1のトルク伝達容量を増加させて係合させるニュートラル制御解除指令を変速制御手段104に出力する。なお、クラッチC1が、本発明の発進クラッチに相当する。
ところで、ニュートラル制御復帰手段110の実行時においては係合装置であるクラッチC1が係合されるが、このとき、係合終了時のクラッチトルク(クラッチのトルク容量)と入力トルクの偏差によるトルク段差を回避するため、目標差回転速度の変化量に対するフィードバック制御が行なわれる。かかるフィードバック制御において、差回転速度と係合油圧に起因するクラッチC1における摩擦材の押し付け圧とが変化する。そしてクラッチC1の摩擦材摩擦係数μの変化量であるΔμと差回転速度Vの変化量ΔVとが、Δμ/ΔV<0の関係を満たすと、クラッチC1の状態が不安定となり、ジャダーが発生することが判っている。
一方、かかるジャダーを回避、もしくは低減するため、Δμ/ΔV>0となるように係合油圧の挙動を変化させることが考えられる。しかしながら、一般的な油圧式摩擦係合装置においては、かかる係合油圧の挙動は油圧が増加する方向の変化である。そのためクラッチの係合時にクラッチトルクと入力トルクとの偏差が増大し、係合ショックが悪化する可能性がある。
本実施例のニュートラル制御復帰手段110は、かかる課題を解決するため、目標差回転速度変化設定手段112、差回転速度検出手段113、油圧勾配設定手段114、係合油圧設定手段115、第1要求エンジントルク制御手段116、第2要求エンジントルク制御手段118、およびガード値設定手段120を機能的に有している。
このうち、目標差回転速度変化設定手段112は、発進クラッチであるクラッチC1が係合する2つの回転要素の差回転速度Vの所定の微小時間あたりの変化量ΔVの目標値ΔVtgtを設定する。このクラッチC1の差回転速度の時間変化の目標値ΔVtgtは、具体的には例えば、ニュートラル制御からの復帰制御においてドラビリの観点から、すなわち運転者に与える違和感を低減する観点から、その復帰制御において発生することが許容されるトルクに基づいて設定される。
差回転速度検出手段113は、クラッチC1が係合する2つの回転要素の回転速度の差である差回転速度V(以下単にクラッチC1の差回転速度Vという。)を検出する。具体的には例えば、車速センサ66によって検出される自動変速機10の出力回転部材24の回転速度NOUT、タービン回転速度センサ76により検出されたタービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)、自動変速機10の変速比γ等に基づいて、クラッチC1が係合する2つの回転要素の差回転速度Vを検出する。また差回転速度検出手段113は、検出された差回転速度Vの予め定められた微小時間あたりの変化量である差回転速度変化ΔVを算出する。
油圧勾配設定手段114は、前記差回転速度変化設定手段112によって検出された差回転速度変化量ΔVに基づいて、発進クラッチであるクラッチC1の係合油圧Pの変化における勾配ΔPを設定する。具体的には例えば、電子制御装置100においては、予め図7に示すような差回転速度V、クラッチC1の摩擦係数μ、およびクラッチC1の係合油圧(押付油圧)Pとの関係を記憶している。そして、油圧勾配設定手段114は、この記憶された関係を利用してクラッチC1の係合油圧の勾配ΔPを設定する。
図7は、差回転速度V、クラッチC1の摩擦係数μ、およびクラッチC1の係合油圧(押付油圧)Pとの関係を表わす図である。この図7において、横軸はクラッチC1の差回転速度Vを、縦軸はクラッチC1の押付油圧Pをそれぞれ表わす座標平面が設けられており、座標平面上の各位置、すなわち差回転速度Vおよび押付油圧Pの組み合わせに対応するクラッチC1の摩擦係数μが等高線状に示されている。なお、図7の横軸によって表わされたクラッチC1の差回転速度Vは、右へ行くほど小さくなるようにされている。すなわち、クラッチC1の係合が進むほど差回転速度が小さくなるので、クラッチC1の状態を表わす点はその係合が進むに伴って図の右側に向かう。また、図7に示すように押付油圧Pが低い程、概ね摩擦係数μが高い傾向を有している。
図8は、図7の一部を部分的に拡大した図である。以下、この図8を用いて油圧勾配設定手段114による油圧勾配ΔPの決定の制御作動を説明する。図8においても、図7と同様に、横軸はクラッチC1の差回転速度Vを、縦軸はクラッチC1の押付油圧Pをそれぞれ表わす座標平面が設けられており、座標平面上の各位置、すなわち差回転速度Vおよび押付油圧Pの組み合わせに対応するクラッチC1の摩擦係数μがL1乃至L3により等高線状に示されている。すなわち、線L1上の各点における摩擦係数μはいずれもμ1であり、線L2上の各点における摩擦係数μは前記μ1よりも大きいμ2であり、線L3上の各点における摩擦係数μは前記μ1よりも小さいμ3である。
図8における点S1は、ある時点におけるクラッチC1の状態を表わすものであり、その差回転速度がV1、押付油圧がP1、摩擦係数がμ1である。この点S1で表わされる状態のクラッチC1について、目標差回転速度変化量ΔVだけクラッチC1の差回転速度が変化する場合を考える。図8に示すように、クラッチC1の目標差回転速度変化量がΔVだけ変化(図8の例においては減少)する際に、押付油圧Pが図8に示すΔPthだけ変化(図8の例においては増加)する場合には、変化後のクラッチC1は図8の点S2で表わされる状態となる。これは図8における矢印A2に対応する。この点S2で表わされる状態は、クラッチC1の差回転速度がV1+ΔV、押付油圧がP1+ΔPthである。ここで、点S1および点S2はいずれも線L1上にあるので、クラッチC1が点S1に対応する状態にある場合と、点S2に対応する状態にある場合の摩擦係数はいずれもμ1である。従って、差回転速度がΔVだけ減少する際に、押付油圧ΔPthだけ増加した場合、摩擦係数の変化量Δμは0となる。従って、Δμ/ΔV=0となる。同様に、差回転速度がΔVだけ減少する際に、押付油圧ΔPthよりも小さい値だけ増加した場合や減少した場合、例えば図8における矢印A1で示すように摩擦係数は増加することから、その変化量ΔμはΔμ>0となる。従ってΔμ/ΔV<0となる。また、差回転速度がΔVだけ減少する際に、押付油圧ΔPthよりも大きい値だけ増加した場合、例えば図8における矢印A3で示すように摩擦係数は減少することから、その変化量ΔμはΔμ<0となる。従ってΔμ/ΔV>0となる。
このように、差回転速度がΔVだけ減少する際に、Δμ/ΔV≧0となるためには、押付油圧がΔPth以上増加すればよいことになる。油圧勾配設定手段114はこのようにして差回転速度がΔVだけ変化する際の油圧勾配ΔPをΔPthと決定する。なお、このように押付油圧の油圧勾配ΔPがΔPth以上であればよいとされる場合において、油圧勾配設定手段114が油圧勾配ΔPをΔPthと決定するのは、ΔPの値が小さいほど係合ショックが小さくなるためである。
発進クラッチ制御手段115は、目標差回転速度変化設定手段112によって設定される差回転速度の時間変化の目標値ΔVtgt、および差回転速度検出手段113によって算出される差回転速度の時間変化ΔVに基づいて、発進クラッチであるクラッチC1の押付油圧Pを設定する。具体的には例えば、差回転速度の時間変化の目標値ΔVtgtと実際の差回転速度の時間変化ΔVとの偏差が小さくなるようにクラッチC1のクラッチトルクを変化させるフィードバック制御を実行する。
また、発進クラッチ制御手段115は、油圧勾配設定手段114によって押付油圧の勾配ΔPを設定される場合には、前記フィードバック制御に加えて、その押付油圧の勾配ΔPとなるように油圧を変化する。
第1要求エンジントルク制御手段116は、前記ニュートラル制御条件判定手段106によりニュートラル制御の終了、すなわちニュートラル制御からの復帰制御の実行が判断された場合に、要求エンジントルクの値を制限する。この要求エンジントルクの値の制限については後述する。第1要求エンジントルク制御手段116による制御は、ニュートラル制御からの復帰制御の開始から所定時間経過まで、具体的には例えば後述する第2要求エンジントルク制御手段118による制御の実行開始まで実行される。この第1要求エンジントルク制御手段116が本発明の第1制御手段に対応する。
第2要求エンジントルク制御手段118は、クラッチC1の押付油圧Pの変化が前記油圧勾配設定手段114により設定された押付油圧の勾配ΔPとなるように、要求エンジントルクを制御する。第2要求エンジントルク制御手段118による要求エンジントルク制御は、例えばクラッチC1の係合において差回転速度Vが減少を開始するとともに開始されるとともに、係合の完了まで実行される。具体的には、クラッチC1の運動方程式が、エンジントルク(クラッチC1の入力トルク)Te、クラッチC1のクラッチトルクTcl、クラッチC1のイナーシャI、およびクラッチC1の回転角速度ωを用いて
Te−Tcl=I・(d/dt)ω ・・・(1)
のように表わされる場合、エンジントルクTeを上昇させる一方、それに伴ってクラッチトルクTclを上昇させることにより、イナーシャIおよび回転角速度の変化量(d/dt)ωは変化しない。このような性質に基づいて、前記油圧勾配設定手段114により押付油圧の勾配ΔPが設定されると、第2要求エンジントルク制御手段118は、押付油圧の勾配ΔPを満たすクラッチトルクTclとつりあうエンジントルクTeとなるように、エンジントルクTeをその勾配ΔTeにより変化させて出力するように要求エンジントルクを制御する。クラッチC1の押付油圧とそのクラッチトルクTclとの関係は、予め実験的に、あるいはシミュレーション等によって得ることができ、従って押付油圧Pとその得られた関係とに基づいてクラッチC1のクラッチトルクTclを得ることができる。以下においてこのように設定される要求エンジントルクの勾配ΔTeを、押付油圧の勾配ΔPに対応する要求エンジントルクの勾配ΔTeという。また、ニュートラル制御からの復帰制御の終了時、すなわちクラッチC1の係合の完了時において、アクセル開度Accに基づいて決定されるエンジントルクとなるように制御される。そして、この要求エンジントルクに基づいて前記エンジン出力制御手段102を制御する。この第2要求エンジントルク制御手段118が本発明の第2制御手段に対応する。
続いて、第1要求エンジントルク制御手段116による要求エンジントルクの値の制限について説明する。前述したように前記第2要求エンジントルク制御手段118によるおけるエンジントルクの制限は、押付油圧の勾配ΔPを満たすクラッチトルクTclとつりあうエンジントルクTeとなるように、エンジントルクTeを前記押付油圧の勾配ΔPに対応した勾配ΔTeにより変化させて出力するとともに、ニュートラル制御からの復帰制御の終了時において、アクセル開度Accに基づいて決定されるエンジントルクとなるように制御される。そのため、第1要求エンジントルク制御手段116は、かかる第2要求エンジントルク制御手段によるエンジントルクTeの増加代(図11のTe2−Te1に相当)を確保するために、アクセル開度Accに関わらず、要求エンジントルクの値を制御する。より具体的には、前記第2要求エンジントルク制御手段118においては、クラッチC1の差回転速度Vが減少を開始してから係合が完了するまでの間、押付油圧の勾配ΔPに伴ってエンジントルクTeが増加させられて、アクセル開度Accに基づくエンジントルクとさせられることから、このアクセル開度Accに基づくエンジントルクからエンジントルクの増加分を減じた値よりも小さくなるように要求エンジントルクの値が制御される。
ガード値設定手段120は、前記第2要求エンジントルク制御手段118による制御の実施中における要求エンジントルクの変化勾配を、予め定められたガード値よりも大きくなるように制御する。このガード値は、例えば、前記油圧勾配設定手段114によって設定されるクラッチC1の押付油圧Pの変化勾配ΔP、すなわちΔPthに対応するエンジントルクTeの変化勾配ΔTethである。すなわち、クラッチC1の摩擦係数μの変化量Δμの差回転速度Vの変化量ΔVに対する勾配Δμ/ΔVがΔμ/ΔV>0となる最も小さい押付油圧のΔPthに対応するエンジントルクの変化勾配となるように設定される。これにより、前記第2要求エンジントルク制御手段118の実行中において、アクセルが踏み戻された場合、すなわちアクセル開度Accが小さくなるように変化させられた場合であっても、要求エンジントルクの時間勾配が前記ガード値ΔTethよりも小さくなってジャダーが発生することが抑制できる。
図8は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわちニュートラル制御からの解除制御におけるエンジントルク制御の制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
まず、ニュートラル制御条件判定手段106に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、ニュートラル制御からの復帰制御が実行されるか否かが判断される。すなわち、既にニュートラル制御が実行されており、かつニュートラル制御からの復帰制御のための条件が満たされた場合には、本ステップの判断が肯定され、SA2が実行される。一方、ニュートラル制御が実行されていない場合や、ニュートラル制御からの復帰制御のための条件が満たされていない場合には、本ステップの判断が否定され、本フローチャートが終了させられる。
油圧勾配設定手段114に対応するSA2においては、前記差回転速度の変化量がΔVである場合に、Δμ/ΔV<0とならないように決定された押付油圧の勾配ΔPが設定される。
第1要求エンジントルク制御手段116および第2要求エンジントルク制御手段118に対応するSA3においては、後述するSA4において制限される要求エンジントルクの値が算出される。この要求エンジントルクの値は、後述するSA6において増加させられるエンジントルクの増加代を確保するために十分な値とされる。
第1要求エンジントルク制御手段116に対応するSA4においては、SA3で算出されたエンジントルクの値となるように要求エンジントルクが制限される。
SA5およびSA6は、第2要求エンジントルク制御手段118に対応する。このうちSA5においては、クラッチC1の差回転速度の減少が開始されたか否かが判断される。クラッチC1の差回転速度が減少を開始した場合には、本ステップの判断が肯定され、要求エンジントルクの制限が終了されて、SA6が実行される。一方、クラッチC1の差回転速度が減少を開始していない場合には、本ステップの判断が否定され、要求エンジントルクの制限が継続される。
SA6においては、要求エンジントルクの値が上昇させられる。本ステップにおいては、エンジントルクTeが前述のSA2において設定された油圧勾配ΔPに対応して発生するクラッチトルクTclとつりあうように、要求エンジントルクTeが変化させられる。
SA7およびSA8はガード値設定手段120に対応する。まずSA7においては、アクセルペダルの踏戻し、すなわちアクセル開度Accが減少したか否かが判断される。アクセル開度Accが減少した場合には、本ステップの判断が肯定され、SA8が実行される。アクセル開度Accが減少していない場合には、本ステップの判断が否定され、引き続きニュートラル制御からの復帰制御の完了まで、すなわちクラッチC1の係合の完了まで、SA6の制御が実行される。
SA8においては、要求エンジントルクの変化勾配が、予め設定されたガード値を下回ることがないように制御される。このガード値は、例えば前述のSA2で設定されるクラッチC1の押付油圧Pの変化勾配ΔPに対応するエンジントルクの変化勾配である。
図9は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわちニュートラル制御からの解除制御におけるクラッチC1の押付油圧制御の制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
まず目標差回転速度変化設定手段112に対応するSB1においては、予め定められた差回転速度の目標値ΔVtgtの値が読み込まれる。この差回転速度の目標値ΔVtgtは、ニュートラル制御からの復帰制御においてドライバビリティの観点から、すなわち運転者に与える違和感を低減する観点から予め設計される。
続いて差回転速度検出手段113に対応するSB2においては、クラッチC1の差回転速度Vが検出される。具体的には例えば、車速センサ66によって検出される自動変速機10の出力回転部材24の回転速度NOUT、タービン回転速度センサ76により検出されたタービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)、自動変速機10の変速比γ等に基づいて検出される。また、検出された差回転速度Vの予め定められた微小時間あたりの変化量である差回転速度変化ΔVが算出される。
SB3乃至SB6は発進クラッチ制御手段115に対応する。このうち、SB3においては、SB1で読み込まれた差回転速度の目標値ΔVtgtとSB2で検出された差回転速度変化ΔVとの偏差が0となるような押付油圧Pが算出される。この制御は、例えば予め設計されたゲインなどを用いて行なわれるフィードバック制御である。
SB4においては、第2要求エンジントルク制御手段118による制御の実行中であるか否かが判断される。第2要求エンジントルク制御手段118による制御の実行中である場合には、押付油圧Pは油圧勾配設定手段114などによって設定される油圧勾配ΔPを満たす必要があるとして、本ステップの判断が肯定され、SB5が実行される。一方、第2要求エンジントルク制御手段118による制御の実行中でない場合には、押付油圧PはSB3で算出されたフィードバック制御に基づくものであればよいとして、本ステップの判断が否定され、SB6が実行される。
SB5においては、SB3で算出された押付油圧Pが、設定された油圧勾配ΔPを満たすように変更される。
SB6においては、SB4の判断が否定された場合にはSB3において算出された押付油圧P、また、SB4の判断が肯定された場合においてはSB5において変更された押付油圧Pとなるように、変速制御手段104を介してクラッチC1の押付油圧が制御される。
図10は、本実施例におけるニュートラル制御からの解除制御が実行される場合の制御作動を説明するためのタイムチャートである。
ニュートラル制御が実行されている状態で、t1時点においてブレーキペダル68がオフ操作(ブレーキSWオフ)されると、ニュートラル制御条件判定手段106によりニュートラル制御の解除制御の実行が判断され、ニュートラル制御復帰手段110によるニュートラル制御からの復帰制御が開始される。具体的には、t1時点において、実線に示すように第1速ギヤ段を成立させる係合装置であるクラッチC1の係合油圧PC1(指令油圧)が急激引き上げられることで、クラッチC1のクリアランスを詰める所謂ファーストフィルが実施される。
そして、t2時点においてアクセルペダル52の踏込みが行なわれるが、このときの要求エンジントルクは、アクセル開度Accの値に対応する要求エンジントルクに代えて、第1要求エンジントルク制御手段116によって制限された値Te1とされる。なお、図10においては、破線は本制御を実行しない場合の一例を示している。すなわち、本制御を実行しない場合には、要求エンジントルクはアクセル開度Accに対応したものとなる。
t3においてクラッチC1の差回転速度が減少を開始すると、第1要求エンジントルク制御手段116による制御に代えて、第2要求エンジントルク制御手段118による制御が行なわれる。すなわち、要求エンジントルクの値は、油圧勾配設定手段114において設定されたクラッチC1の押付油圧の変化勾配ΔPに対応する要求エンジントルクの値とされる。なお、図10においては、t3の前においてクラッチC1の係合油圧Pがステップ状に引き上げられているが、これは前記発進クラッチ制御手段115によって行なわれる、差回転速度の時間変化の目標値ΔVtgtと実際の差回転速度の時間変化ΔVとの偏差に基づくフィードバック制御に基づくものである。
このとき、クラッチC1の押付油圧は図10の実線で示すように、その時間変化量が前記ΔPとなるように変化させられる。一方、なお、本発明が適用されず、差回転速度の目標変化量ΔVtgtと実際の差回転速度の変化量ΔVとの偏差に基づくフィードバック制御のみが行なわれた場合のクラッチC1の押付油圧は、図10において破線で表わされている。このように本発明が適用されず前記フィードバック制御が行なわれる場合には、クラッチC1の押付油圧Pは減少することから、クラッチC1の摩擦係数の時間変化量Δμと差回転速度の時間変化量ΔVとの比がΔμ/ΔV<0となって、ジャダーが発生するところ、本発明が適用 された場合には、クラッチC1の押付油圧Pは増加し、Δμ/ΔV>0となって、ジャダーが発生しない。
また、クラッチC1の押付油圧Pの増加は、そのクラッチC1のトルクと要求エンジントルクTeの増加とがつりあうように行なわれることから、クラッチC1における回転要素の回転角速度やイナーシャに影響を与えることがなく、運転者へ与える違和感が抑制される。なお、前述のように、油圧勾配設定手段114によりクラッチC1の押付油圧Pの変化勾配ΔPとして、その変化勾配ΔPが取り得る範囲において最も小さい値であるΔPthが設定される場合には、t3乃至t4における要求エンジントルクの変化勾配ΔTeは、そのガード値ΔTethと同じものとなる。このガード値ΔTethは、図11において二点鎖線で表わされている。かかるガード値が設けられている場合、例えばアクセルペダルの踏戻があったような場合であっても、要求エンジントルクの変化勾配ΔTethはそのガード値ΔTethよりも小さくなることがない。すなわち図11において二点鎖線よりも勾配が緩くなることがない。
そしてt4において、発進クラッチであるクラッチC1の係合が完了する。このとき、要求エンジントルクの値は、アクセル開度Accに対応する値Te2となるように制御されている。
上述の実施例によれば、前記第1要求エンジントルク制御手段116(SA4)により前記ニュートラル制御からの復帰制御において要求エンジントルクが制限され、前記第2要求エンジントルク制御手段118により該第1制御手段による要求エンジントルクの制限が終了した後に(SA5)発進クラッチ制御手段115によるフィードバック制御が実行される(SA6)ので、前記第1要求エンジントルク制御手段116により要求エンジントルクが制限されたことに伴って前記第2要求エンジントルク制御手段118によるフィードバック制御の実行時にエンジントルクの増加代が得られ、ニュートラル制御からの復帰制御においてジャダーの低減および係合ショックの低減を両立しつつ発進クラッチの係合を行なうことができる。
また上述の実施例によれば、前記発進クラッチ制御手段115により、ニュートラル制御からの復帰制御において前記発進クラッチとしてのクラッチC1の摩擦係数μの変化量Δμの差回転速度Vの変化量ΔVに対する勾配が0以上となるように該発進クラッチの係合圧が制御されるとともに、前記第1要求エンジントルク制御手段116および前記第2要求エンジントルク制御手段118によるフィードバック制御により、前記発進クラッチのトルク容量Tclの増加に合わせて要求エンジントルクTeが上昇させられるので、ニュートラル制御からの復帰制御においてジャダーの低減および係合ショックの低減を両立することができる。
また上述の実施例によれば、前記要求エンジントルクTeの変化勾配は、前記第2要求エンジントルク制御手段118およびガード値設定手段120により、前記発進クラッチであるクラッチC1の摩擦係数μの変化量Δμの差回転速度の変化量ΔVに対する勾配(Δμ/ΔV)が0以上となるエンジントルクのガード値よりも大きくするように制御されるので(SA8)、前記第2要求エンジントルク制御手段118によるフィードバック制御より、ニュートラル制御からの復帰制御においてジャダーの低減および係合ショックの低減を両立することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、自動変速機10は前進6段後進1段の有段変速機が用いられたが、これに限定されない。例えば自動変速機10が有段変速機である場合において、その有する変速段の数は限定されない。また、実施例に開示された内部構造の自動変速機に限定されず、いわゆるダブルクラッチ式の自動変速機であってもよい。また、自動変速機10は発進クラッチのようにニュートラル制御の実行時に動力を遮断することのできる係合装置を有するものであれば、無段変速機(CVT)であってもよい。すなわち、ニュートラル制御が実施可能であり、且つ、ニュートラル制御が解除される際に、所定の係合装置を係合させる構成であれば、本発明を適用することができる。また、発進クラッチとしてクラッチC1に代えてトルクコンバータ32のロックアップクラッチ34が用いられてもよい。
また、前述の実施例では、クラッチC1が係合装置として機能するものであったが、必ずしもクラッチC1が係合装置として機能するものとは限らず、自動変速機の内部構造に応じて適宜変更される。
また、前述の実施例では、クラッチC1の差回転速度Vは、出力軸回転速度NOUTおよびタービン回転速度Nに基づいて算出されたが、これに限定されず、例えば車速などを用いてもよい。
また、前述の実施例では、第1要求エンジントルク制御手段116および第2要求エンジントルク制御手段118はクラッチC1の差回転速度Vが減少を開始したことによっての切り換わるものとされたが、これに限定されない。例えばニュートラル制御からの復帰制御の開始から予め定められた所定時間が経過した場合に切り換わるようにしてもよい。
また、前述の実施例では、ガード値設定手段120(SA7、SA8)によるガード値の設定は、アクセルペダルの踏戻し、すなわちアクセル開度Accが減少する場合に実行されたが、これに限定されず、要求エンジントルクを減少させる操作が行なわれる場合に対して実行されうる。また、ガード値設定手段120は本発明の実施において必須ではなく、これを有さなくても一定の効果を生じ得る。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:自動変速機
30:エンジン
46:駆動輪
52:アクセルペダル
108:ニュートラル制御手段
106:ニュートラル制御条件判定手段
110:ニュートラル制御復帰手段
114:油圧勾配設定手段
115:発進クラッチ制御手段
116:第1要求エンジントルク制御手段(第1制御手段)
118:第2要求エンジントルク制御手段(第2制御手段)
120:ガード値設定手段
C1:クラッチ(発進クラッチ)
Teth:要求エンジントルクのガード値
ΔPth:係合油圧(押付油圧)の変化量のガード値

Claims (2)

  1. ニュートラル制御からの復帰制御において、発進クラッチの差回転速度が目標クラッチ差回転速度となるようにフィードバック制御を行なう自動変速機の制御装置であって、
    前記復帰制御において要求エンジントルクを制限する第1制御手段と、
    該第1制御手段による要求エンジントルクの制限が終了した後に前記フィードバック制御を実行する第2制御手段と、
    前記発進クラッチの摩擦係数の変化量の差回転速度の変化量に対する比が0以上となるように該発進クラッチの係合圧を制御する発進クラッチ制御手段とを有し、
    前記第1制御手段および前記第2制御手段は、該発進クラッチのトルク容量の増加に合わせて要求エンジントルクを上昇させることを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 前記第2制御手段による要求エンジントルクの制限は、前記要求エンジントルクの変化勾配を、前記発進クラッチの摩擦係数の変化量の差回転速度の変化量に対する比が0以上となるエンジントルクのガード値よりも大きくするものであること
    を特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
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