JP5298430B2 - 半導体加熱装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコンウエハなどを加熱する半導体加熱装置に関し、特に複数の電気回路を有しているセラミックスヒータを備える半導体加熱装置の電気回路に対する安全装置に関するものである。
従来から、半導体ウエハに対する各種の処理、例えばCVDなどによる成膜、コータデベロッパなどでのレジストの硬化、あるいはウエハプローバによるウエハの検査などには、ウエハ加熱用のヒータとして窒化アルミニウムなどのセラミックスを用いた半導体加熱装置が用いられている。
これらの半導体加熱装置にヒータとして使用されているセラミックスは、一般には常温で絶縁体であるが、加熱により温度が上昇すると電気絶縁性が低下することが知られている。そのため、温度が上昇したときセラミックスヒータに形成された電気回路間の絶縁性が低下し、各回路に漏洩電流が発生しやすくなることが問題となっていた。
この問題を解決するための手段として、例えば特開平08−191049号公報には、半導体加熱装置における回路の放電現象をくいとめるために、セラミックスヒータのような加熱手段と交流電源とが絶縁トランスを介して電気的に接続されるようにした装置が提案されている。
特開平08−191049号公報
上記特開平08−191049号公報に提案されているように、セラミックスヒータと交流電源とを絶縁トランスを介して電気的に接続することは、漏洩電流を防止する意味では有効な手段である。
しかしながら、セラミックスヒータを通電加熱した状態で、チャンバーの蓋を開けて大気に開放する場合、ヒータ回路がアースに接続(接地)されていないので、2次側の回路に万が一漏電が発生しても、それを検知する手段が存在しないため危険であるという欠点があった。2次側の回路を接地して通電することも考えられるが、この場合には、各電気回路間の漏電やチャンバーに対する放電を防止することができなくなる。
本発明は、このような従来技術における問題点を解決するため、セラミックスヒータの温度が上昇しても漏洩電流がなく、万が一漏洩電流があった場合にも、チャンバーの蓋を開ける際には漏洩電流を検知することができ、高温まで安全に半導体ウエハの処理を実施することができる半導体加熱装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明が提供する半導体加熱装置は、チャンバー内にウエハ加熱用のセラミックスヒータが設置され、該セラミックスヒータは絶縁体を介して少なくとも一つの抵抗発熱体を含む複数の電気回路を有する半導体加熱装置において、前記抵抗発熱体は絶縁トランスを介して交流電源に接続されると共に、該抵抗発熱体と絶縁トランスとの間に漏電ブレーカーを備え、前記複数の電気回路のうち抵抗発熱体回路チャンバーの蓋の開閉に応じてチャンバーの蓋が閉じているときアースに接続されない状態と、チャンバーの蓋が開放されたときアースに接続される状態とに電気的又は機械的に切り替える手段を有していることを特徴とする。
上記本発明による半導体加熱装置においては、前記抵抗発熱体が絶縁トランスと漏電ブレーカーの間でマグネットスイッチを介してアースに接続可能に設けられ、該マグネットスイッチにON−OFF信号を送るリミットスイッチがチャンバーの蓋に取り付けてある。これにより、前記抵抗発熱体は、チャンバーの蓋が閉じているときはリミットスイッチの信号によりマグネットスイッチがOFFとなっているためアースに接続されず、チャンバーの蓋が開放されたときリミットスイッチの信号によりマグネットスイッチがONとなって抵抗発熱体がアースに接続される。
本発明によれば、セラミックスヒータの温度が上昇しても漏洩電流がなく、安定して半導体ウエハの加熱処理を実施することができる。しかも、万が一漏洩電流があった場合にも、チャンバーの蓋を開ける際には漏洩電流を検知することができ、漏電ブレーカーにより電流を遮断できるため、高温まで安全に半導体ウエハの処理を実施することができる。
本発明の半導体加熱装置は、チャンバー内に設置されているウエハ加熱用のセラミックスヒータが絶縁体を介して抵抗発熱体を含む複数の電気回路を有し、その電気回路のうち少なくとも1回路、例えば高周波発生用電極や静電チャック用電極は常にアースに接続されている。一方、抵抗発熱体は絶縁トランスを介して交流電源に接続されると共に、抵抗発熱体と絶縁トランスとの間に漏電ブレーカーを備えている。更に、抵抗発熱体は、電気的なスイッチあるいは機械的な機構によって、チャンバーの蓋が閉じているときはアースに接続されず、チャンバーの蓋が開放されたときアースに接続されるようになっている。
次に、本発明の半導体加熱装置について、図1〜3を参照しながら具体的に説明する。これらの各図の装置において、チャンバー1内に設置されたセラミックスヒータ2には、セラミックス中に抵抗発熱体3と高周波(RF)発生用電極4の回路が埋設されている。高周波発生用電極4は、上部に存在するシャワー基板などの上部電極に対してアース回路として存在するために、常時アースに接続(接地)されている状態になる。高周波発生用電極4の接地場所としては、独立してアースに接続することも可能であるし、チャンバー1自体が接地されているなら、チャンバー1に対して接続することも可能である。また、抵抗発熱体3は、従来と同様に、絶縁トランス5を介して交流電源6に接続される。
本発明による図1の半導体加熱装置では、抵抗発熱体3と絶縁トランス5の間及び絶縁トランス5と交流電源6の間に、それぞれ漏電ブレーカー7を備えている。更に、抵抗発熱体3は、絶縁トランス5と漏電ブレーカー7の間で、マグネットスイッチ8を介してアースに接続可能に配置されると共に、チャンバー1の蓋1aが開放されたときのみアースに接続されるように、マグネットスイッチ8にON−OFF信号を送るリミットスイッチ9がチャンバー1の蓋1aに取り付けてある。
一方、参考のために図示した図2の装置では、図1と同様に抵抗発熱体3と絶縁トランス5の間及び絶縁トランス5と交流電源6の間に漏電ブレーカー7を備えているが、抵抗発熱体3は絶縁トランス5と漏電ブレーカー7の間で常時アースに接続されている。この抵抗発熱体回路に電圧を印加すると、抵抗発熱体3が発熱してセラミックスヒータ2の温度が上昇する。温度の上昇と共に、高周波発生用電極4と抵抗発熱体3の間の絶縁抵抗は低下し、一部の電流が高周波発生用電極4へ漏れ出して漏電が発生する。
ところが、高周波発生用電極4のアースは抵抗発熱熱体3のアースと電気的に接続されているため、漏れた電流は抵抗発熱体回路に接続された漏電ブレーカー7により検知され、所定量の電流が漏れた際には漏電ブレーカー7が作用して通電を遮断する。このため、図2の装置では、セラミックスヒータ2が高温になると漏れ電流量が大きくなり、この漏れ電流を検知した漏電ブレーカー7が通電を遮断するため、高温で使用することが困難となる。
また、同じく参考のために図示した図3の装置では、抵抗発熱体回路が接地されていない以外は上記図1の場合と同じである。この装置においては、抵抗発熱体3と高周波発生用電極4とのアース同士による接続回路が形成されないため、高温時においても漏れ電流が少なく、良好に使用することができる。しかし、発熱体回路がアースに接続されていないため、高周波発生用電極4から万が一電流が漏洩した場合でも、漏電ブレーカー7で検知されず、従って漏電ブレーカー7が作動しないので、チャンバー1の蓋を開放した場合などに危険である。
一方、上記した本発明の装置では、図1に示すように、抵抗発熱体3とアースの間にマグネットスイッチ8が介在し、チャンバー1の蓋1aが閉じた場合はマグネットスイッチ8がOFF状態であるためアースに接続されない。従って、セラミックスヒータ2が高温になり、漏れ電流量が大きくなった場合でも、チャンバー1の蓋1aが閉じた状態では漏電ブレーカー7が漏れ電流を検知しないため、通電が遮断されることはなく使用を続けることができる。
そして、チャンバー1の蓋1aが開放された場合には、蓋1aに取り付けたリミットスイッチ9からマグネットスイッチ8にON信号を発するため、漏れ電流が発生していれば漏電ブレーカー7が動作して、通電を遮断することができる。従って、上記した図2〜3の各装置に比較して、セラミックスヒータ2を高温で使用できるのはもちろんのこと、万が一漏電があっても、チャンバー1の蓋1aを開放した時には電源を遮断できるため、より安全な装置であるといえる。
また、抵抗発熱体と静電チャック用電極を有する場合も、抵抗発熱体回路の方を、上記のようにチャンバーの蓋の開放時にアースに接続できる構造とすれば良い。更に、複数の抵抗発熱体を有する場合にも適用することができ、例えば、複数の抵抗発熱体回路に対して、それぞれチャンバーの蓋にリミットスイッチを取り付け、その信号をそれぞれの抵抗発熱体に接続されたマグネットスイッチに送るように構成することによって、蓋の開放中に漏電が発生しても漏電ブレーカーを作動させて通電を遮断することができる。
本発明による半導体加熱装置の電気回路に関しては、上記した抵抗発熱体回路、高周波発生用電極回路、静電チャック電極回路などが挙げられるが、これ以外の回路にも適用可能である。また、セラミックスヒータに関しては、抵抗発熱体、高周波発生用電極、静電チャック電極などの回路の形態として、例えば、金属箔や金属線、あるいはコイル等を用いることができ、またスクリーン印刷、蒸着、スパッタリングなどで形成した薄膜形状のものも使用可能である。
セラミックスヒータを構成するセラミックスとしては、特に制約はないが、高温によって絶縁性が低下する、即ち体積抵抗率の温度係数が負のセラミックスに対して特に効果が大きい。その中でも特に窒化アルミニウムに関しては、近年チャンバー内のクリーニングに使用されるハロゲン系ガスに対する耐食性に優れていることから需要が増大しているが、窒化アルミニウム自身の体積抵抗率は高温において急速に低下することが知られている。
従って、窒化アルミニウム(AlN)からなるセラミックスヒータは、高温状態では漏電量が多くなるため、図2に示すような装置では使用することはできなかったが、本発明により安全な半導体加熱装置を提供することができる。
次に、窒化アルミニウムからなるセラミックスヒータの作製方法について説明する。原料とする窒化アルミニウム粉末は、比表面積が2.0〜5.0m/gの範囲が好ましい。比表面積が2.0m/gよりも小さい場合は焼結性が低下し、また比表面積が5.0m/gよりも大きい場合は粉末の凝集が非常に強くなるため好ましくない。
窒化アルミニウム粉末に含まれる酸素量は2wt%以下が好ましい。酸素量が2wt%を超えると、焼結体の熱伝導率が低下するため好ましくない。また、アルミニウムを除く金属不純物量は、合計で2000ppm以下が好ましい。金属不純物が2000ppm以上存在すると、焼結体の熱伝導率が低下するため好ましくない。金属不純物としてSi等の4族元素やFe等の鉄族元素は、熱伝導率を低下させる作用が高いため特に好ましくなく、含有率としてはそれぞれ500ppm以下であることが好ましい。
窒化アルミニウムは難焼結材であるため、焼結助剤を添加することが好ましい。添加する焼結助剤としては、希土類元素化合物が好ましい。希土類元素化合物は窒化アルミニウム粒子の表面に存在するアルミニウム酸化物、もしくはアルミニウム酸窒化物と反応することで、窒化アルミニウムの緻密化を促進すると共に、窒化アルミニウムの熱伝導率低下の一因である酸素をトラップするため、熱伝導率を向上させる働きがある。希土類元素化合物に関しては、特に窒化アルミニウムの酸素を除去するトラップ能力の高いイットリウム化合物が好ましい。
また、焼結助剤の添加量としては、酸化物換算で0.01〜5.0wt%が好ましい。添加する焼結助剤が0.01wt%未満の場合、十分緻密な焼結体が得られにくいだけでなく、熱伝導率も低くなってしまうため好ましくない。焼結助剤量が5.0wt%を超えると、焼結体の粒界に焼結助剤が存在するため、腐食性雰囲気にて焼結体を使用する場合には、この粒界に存在する焼結助剤部がエッチングされ、脱粒やパーティクルの原因となるため好ましくない。特に焼結助剤量が1.0wt%以下のとき、粒界の3重点にも焼結助剤が存在しなくなり、更に耐食性が向上するため好ましい。
また、焼結助剤である希土類元素化合物の形態としては、酸化物や窒化物、フッ化物、ステアリン酸化合物などが使用できる。これらのうちで酸化物は、特に安価で入手が容易であるというメリットがある。また、ステアリン酸化合物は、有機溶剤との親和性が高いため、特に原料粉末と焼結助剤等を有機溶剤にて混合する際には、混合性が高くなり特に好適である。
上記窒化アルミニウム粉末と焼結助剤の原料粉末に対して、所定量の溶剤、バインダー、更には必要に応じて分散剤や邂逅剤を添加して混合する。混合する手法としては、ボールミル混合や、超音波による混合が可能である。これら混合によってスラリーを作製する。得られたスラリーは、ドクターブレード法によってシート成形する。シート成形には特に制約はないが、シートの厚みとしては、乾燥後の厚みが3.0mm以下であることが好ましい。シート厚みが3.0mmを超えると、スラリーの乾燥収縮量が大きくなるため、シートに亀裂が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
次に、出来上がったシートに対して、コファイヤ法では、所定形状の回路パターン、即ち抵抗発熱体等の回路や、それに電気的に接続するためのリード回路等を、スクリーン印刷等の手法によって形成する。このとき、リード回路は発熱体回路に比較して膜厚を厚くするか、回路幅を大きくすることにより、発熱体よりも抵抗値を低くすることができる。スクリーン印刷に使用する導体ペーストとしては、後述するポストメタライズ法と同等のものを使用することができる。ただし、ペースト中に含有される酸化物の添加量は30wt%以下が好ましい。コファイヤ法の場合、シートと同時に焼結するため金属層の焼結が比較的進行しやすく、酸化物を添加しなくとも回路形成することが可能である。
上記回路形成を行ったシートと、回路形成していないシートとを積層する。積層の手法としては、各シートを所定の位置にセットして重ね合わせる。この状態で、必要に応じて各シート間に溶剤を塗付して加熱する。加熱温度は出来上がるシートの柔軟性に左右されるため、不要の場合もあるが、概ね150℃以下であることが好ましい。これ以上の温度をシートに加えると、シートが大きく変形してしまうため好ましくない。
そして、重ね合わせたシートに圧力を加え、一体化させる。加える圧力としては、1〜100MPaの範囲が好ましい。1MPa未満の圧力では、シート同士が十分に密着せず、後の脱脂や焼結等の工程でいわゆるデラミネーションが発生するため好ましくない。また、圧力が100MPaを超えると、シートの変形量が大きくなりすぎるため好ましくない。出来上がった積層成形体の脱脂は、後述するポストメタライズ法による窒化アルミニウムプレス体の脱脂と同一の条件で実施することが可能である。
脱脂後の積層成形体は、非酸化性雰囲気下において1700〜2000℃程度の温度で焼結する。使用する非酸化性雰囲気ガスとしては、窒素やアルゴンなどが好適であり、特に窒素は比較的安価であることからも好適である。また、このとき使用する窒素に含有される水分量としては、露点が−30℃以下であることが好ましい。これ以上の水分を含有する場合には、焼結時に窒化アルミニウムと雰囲気中に含有される水分との反応によって酸窒化物が形成され、熱伝導率の低下を引き起こす可能性があるためである。また、使用する窒素中に含有される酸素量も、上記と同様の理由で0.001%以下であることが好ましい。
更に、上記焼結時に積層成形体を載置する治具としては、窒化ホウ素(BN)からなる治具が好適である。この窒化ホウ素治具は、上記焼結温度に対する耐熱性を有するだけでなく、表面に固体潤滑性が存在するため、積層成形体が焼結によって収縮する際に、治具と積層成形体との摩擦を小さくすることができ、変形の少ない焼結体を得ることができるため特に好ましい。
得られた焼結体に対して、必要に応じて加工を施す。これは、焼結体の用途が半導体製造装置であることから、寸法に対する要求精度が非常に高いためである。加工精度として、例えばウエハ搭載面の平面度は0.5mm以下が好ましく、0.1mm以下が更に好ましい。ウエハ載置面の平面度が0.5mmを超える場合、搭載するウエハとセラミックスヒータの載置面との間に隙間が生じやすくなり、セラミックスヒータで発生した熱がウエハに伝わるとき温度ムラが発生しやすくなるため好ましくない。
また、ウエハ載置面における表面粗さは、Raが5μm以下であることが好ましい。これ以上の表面粗さである場合には、セラミックスとウエハの摩擦によって、セラミックスの脱粒が多くなることがある。この場合、脱落した粒子はパーティクルとなり、ウエハ上への膜形成やエッチング等の処理に対して悪影響を与えるため好ましくない。ウエハ載置面の表面粗さは、Raで1.0μm以下なら更に好適である。
次に、ポストメタライズ法について述べる。上記コファイヤ法と同様にスラリーを作製し、得られたスラリーに対して、スプレードライアー等の手法により顆粒を作製する。この顆粒を所定の形状の金型に挿入し、プレス成形を実施する。このときのプレス圧力としては、0.1t/cm以上であることが好ましい。この圧力に達しない場合、成形体の強度が十分得られないことが多く、ハンドリング等で破損しやすくなるため好ましくない。
また、成形体の密度としては、バインダー含有量や、助剤添加量によっても異なるが、1.5g/cm以上であることが好ましい。これを下回る成形体密度の場合、粒子間距離が相対的に大きくなり、焼結が進行しにくくなるため好ましくない。ただし、成形体密度は2.5g/cm以下であることが好ましい。2.5g/cmを超える成形体密度では、脱脂処理時に成形体内のバインダー成分を十分に除去することが困難となる。このため焼結時に成形体内部に過剰の炭素及び炭素化合物が残存することになり、これが窒化アルミニウムの焼結を阻害するため、得られる焼結体の密度が十分ではなくなる。
得られた成形体は、非酸化性雰囲気中にて脱脂処理を行う。大気等の酸化性雰囲気中で成形体を脱脂処理した場合、窒化アルミニウム粉末の表面が酸化されるため、焼結体の熱伝導率の低下を引き起こす。処理温度としては500〜1000℃の範囲が好ましい。500℃未満の温度で脱脂した場合、十分にバインダー成分が除去されず、過剰に残存した炭素が焼結を阻害するため好ましくない。脱脂完了後の成形体内に存在する炭素量としては、1.0wt%以下であることが好ましい。残存炭素量が1.0wt%を超えると、成形体内の炭素及び炭素化合物が窒化アルミニウムの焼結を阻害するため好ましくない。
脱脂後の成形体は、非酸化性雰囲気下にて1700〜2000℃程度の温度で焼結する。使用する雰囲気ガスとしては、窒素やアルゴンなどが好適であり、特に窒素は比較的安価であることからも好適である。このとき使用する窒素に含有される水分量としては、露点が−30℃以下であることが好ましい。これ以上の水分を含有する場合、焼結時に窒化アルミニウムと雰囲気中に含有される水分との反応によって酸窒化物が形成され、熱伝導率の低下を引き起こす可能性があるためである。
また同様に、使用する窒素中に含有される酸素量も、上記と同様の理由で0.001%以下であることが好ましい。更に焼結に使用する治具としては、窒化ホウ素の治具が好適である。この窒化ホウ素の治具は、上記焼結温度に対する耐熱性を有するだけでなく、表面に固体潤滑性が存在するため、成形体が焼結によって収縮する際に治具との摩擦を小さくすることができ、変形の少ない焼結体を得ることができるため特に好ましい。
得られた焼結体に対して、必要に応じて加工を実施する。即ち、この後の工程でスクリーン印刷により回路形成する場合には、表面粗さはRaで5.0μm以下とすることが好ましい。これ以上の表面粗さである場合は、スクリーン印刷により回路形成した際に、パターンのにじみや、ピンホール等の印刷の欠陥が発生しやすくなるためである。上記表面粗さがRaで1.0μm以下であれば更に好適である。また、焼結体を加工する際には、印刷面だけでなく、両主面(表面及び裏面)を加工することが好ましい。
尚、一主面に印刷する場合で且つ印刷面のみ研磨加工を実施した場合、研磨していない面がワークを支持することになる。そのため研磨していない面に存在する突起や異物の存在によってワークの固定が不安定になりやすい場合には、両面を上記の表面粗さ以下に研磨することが好ましい。また、このとき両加工面の平行度は、0.5mm以下であることが好ましい。平行度が0.5mmを超える場合には、スクリーン印刷時に膜厚のばらつきが大きくなることがあるため好ましくない。平行度は0.1mm以下であれば特に好適である。更に、印刷面の平面度に関しても、0.5mm以下であることが好ましい。これより大きな平面度である場合には、スクリーン印刷時に膜厚のばらつきが発生しやすいためである。平面度は0.1mm以下であれば特に好適である。
加工が完了した焼結体基板に対し、スクリーン印刷によって抵抗発熱体や高周波発生用電極などの回路形成を行う。使用する金属粉末としては、セラミックスとの熱膨張係数のマッチングの点から、タングステンやモリブデンあるいはタンタルなどが好ましい。また、これらの金属粉末に対して、窒化アルミニウム焼結体との密着強度を確保するため、酸化物を添加することが可能である。
添加する酸化物としては、窒化アルミニウムと上記高融点金属の両方に濡れるものであれば特に種類は問わない。具体的には、2A族元素、3A族元素の酸化物や、Al、SiOなどが好適に用いられる。また、これらの酸化物のうち酸化イットリウムは、窒化アルミニウムに対する濡れ性も非常に良好であるため特に好ましい。これらの酸化物の添加量としては、0.1〜30wt%が好ましい。上記酸化物の添加量が0.1wt%未満では金属層とセラミックスの密着強度を向上する効果が少なく、また30wt%を超えると金属層の抵抗値が高くなるため好ましくない。
また、ヒータの使用温度及び使用環境によっては、抵抗発熱体としてAg−PdやAg−Pt等の金属を使用することもできる。回路の抵抗値を高くするためには、パラジウムや白金の含有量を増やすことで対応することも可能である。この場合、添加するガラス成分としては、焼成温度に合わせて600〜1000℃で焼成できるガラス成分であれば特に制約はない。ガラス成分の添加量は、抵抗値を高くする場合には比率を高くし、抵抗値を低くするためには比率を少なくすれば良いが、概ね1〜30wt%が好適である。
次に、これらの粉末を十分に混合し、バインダー、溶剤を加えて、ペーストを作製する。このペーストをスクリーン印刷することにより、回路パターンを形成する。このときのペーストの乾燥膜厚としては、5〜100μmの範囲が好ましい。膜厚が5μm未満の場合は、抵抗値が高くなりすぎると共に、密着強度も低くなるため好ましくない。また、膜厚が100μmを超えても、密着強度の低下を引き起こすため好ましくない。抵抗発熱体のパターン間隔としては、0.1mm以上が好適である。これ以下の間隔では、抵抗発熱体に電流を流したときに、印加電圧及び温度によっては漏れ電流が発生するため好ましくない。特に500℃を超える温度で使用する場合、パターン間隔としては1mm以上が好適であり、3mm以上であれば更に好適である。
次に、形成した回路パターンに対して、非酸化性雰囲気中で脱脂を行う。処理温度としては、500℃以上が好ましい。これ以下の温度では、形成した金属層内にカーボンが残留し、焼成した際に高融点金属と炭化物を形成することがあるため好ましくない。
上記脱脂後の回路パターンは、非酸化性雰囲気中で焼成する。焼成温度に関しては、1500℃以上が好適である。これ以下の温度では、高融点金属粉末の粒成長が進まず、抵抗値が非常に高くなるため好ましくない。また、焼成温度はセラミックスの焼成温度を超えない方が良い。セラミックスの焼成温度を超えるような温度で金属層を焼成した場合、セラミックス中に含有される焼結助剤などが揮散しはじめ、更には金属層内の金属粉末の粒成長が促進され、セラミックスとの密着強度が低下するため好ましくない。
また、Ag系の回路パターンを形成した場合は、焼成温度としては700〜1000℃程度、雰囲気としては大気や窒素などでも焼成することができる。このため、Ag系の回路パターンの場合、通常は回路パターンの脱脂は不要である。
次に、形成した回路パターン間の絶縁性を確保するために、回路パターン上に絶縁性コートを形成することも可能である。使用する材質としては、金属層が形成されているセラミックスと同材質のものを使用することが好ましい。これは、セラミックスと絶縁性コート膜の組成が大幅に異なると、当然のことながら熱膨張係数も異なるため、焼成後に反りが発生するなどの問題が生じるからである。
例えば、絶縁性コートが窒化アルミニウムの場合、窒化アルミニウムに焼結助剤として所定量の2A族、3A族の酸化物や炭酸化物を加えて混合し、これにバインダーや溶剤を加えてペーストとし、スクリーン印刷により金属層上に塗付することができる。このとき添加する焼結助剤量としては、0.01wt%以上であることが好ましい。これ以下の場合セラミックスが緻密化せず、回路パターン間の絶縁を確保するための効果が小さくなる。また、添加する焼結助剤量が20wt%を超えると、過剰の焼結助剤が金属層中に浸透し、抵抗発熱体の抵抗値を変化させることがあるため好ましくない。尚、回路としてAg系のものを使用した場合は、絶縁性コートの膜厚は5μm以上であることが好ましい。これ以下の膜厚では、目的とする絶縁性が得られにくい。
次に、上記のごとく抵抗発熱体などの回路パターンを形成し、必要に応じて絶縁層を形成したセラミックス基板に対して、更にセラミックス基板を接合することも可能である。接合の手法としては、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムに2A族元素化合物や3A族元素化合物にバインダーや溶剤を加え、ペースト化したものを接合面にスクリーン印刷等の手法にて塗付する。このときの接合層の厚みに関しては、特に制約はないが、5μm以上であることが好ましい。これ以下の膜厚では、接合層の厚みが薄いため、接合欠陥が生じやすい。
次に、塗付した接合層を非酸化性雰囲気中にて500℃以上の温度で脱脂する。その後、接合すべき基板同士を重ね合わせ、所定の荷重をかけ、非酸化性雰囲気中にて加熱し、基板同士の接合を行う。このときの荷重量としては、特に制約がないが、0.05kg/cm以上であることが好ましい。これ以下の荷重では、十分な接合強度が得られないか、あるいはピンホールや接合ムラなどの接合欠陥が生じやすいため好ましくない。接合温度に関しては、基板に接合した接合層が十分に密着できる温度であれば特に制約はないが、1500℃以上であることが好ましい。これ以下の温度では、十分な接合強度が得られにくく、接合欠陥を生じやすいため好ましくない。また、接合雰囲気に関しては、セラミックスの酸化を防ぐためにも、窒素やアルゴンなどの非酸化性雰囲気中で実施することが好ましい。
また、抵抗発熱体回路としてモリブデンのコイルを、高周波発生用電極回路としてモリブデンやタングステンのメッシュを使用することも可能である。この場合の作製方法としては、原料粉末中に上記の金属コイルやメッシュを内蔵させ、ホットプレス法によりセラミックスヒータの成形体を形成することもできる。この場合の焼結温度や雰囲気に関しては、上記窒化アルミニウムの焼結温度に順ずる条件で構わないが、圧力を10kg/cm以上加える必要がある。これ以下の圧力では、上記金属部品とセラミックスの間に隙間が生じてしまうため好ましくない。出来上がった焼結体に対する加工については、コファイヤ法と同様の手法を施せばよい。
焼結助剤としてYを0.5wt%添加した窒化アルミニウム(AlN)のグリーンシートを作製した。また、W粉末にYとAlをそれぞれ0.5Wt%添加し、更に有機バインダーや溶剤を添加して、Wペーストを作製した。このWペーストを使用して、窒化アルミニウムグリーンシート上にスクリーン印刷により抵抗発熱体パターンを形成した。この発熱体の最大線幅は5mm、乾燥膜厚は30μmであった。
次に、別の窒化アルミニウムグリーンシート上に、高周波発生用電極を同様の手法で形成した。このときの膜厚は40μmであった。これら以外に何も印刷していない窒化アルミニウムグリーンシートを用意し、これらを重ね合わせて、70℃、10MPaの圧力でラミネートした。その後、窒素雰囲気中にて850℃で脱脂し、更に窒素雰囲気中にて1850℃で焼結することにより、セラミックスヒータを作製した。このとき使用した窒素の露点は−60℃であった。
出来上がったセラミックスヒータに研磨加工を施し、抵抗発熱体及び高周波発生用電極に導通が確保できるように穴あけ加工を実施した。次に、ウエハ搭載面にあたる部分に、直径301mm、深さ0.6mmのザグリ加工を実施した。そして、ヒータ外周部の形状を整え、直径330mmとした。最後に、抵抗発熱体及び高周波発生用電極の各電極部に活性金属ロウによりMo電極を取り付け、セラミックスヒータを完成した。
得られたセラミックスヒータをチャンバー内に設置し、図1〜3に示す各電気回路を備えた装置を作製し、それぞれ750℃まで昇温させた。その結果、図2の電気回路の構成では、300℃程度になると漏電量が30mAを超え、漏電ブレーカー7が抵抗発熱体3への通電を遮断するため、それ以上の温度に昇温させることができなかった。これに対して図1、3の電気回路の構成では、いずれも750℃まで昇温することが可能であった。
更に、チャンバーの蓋を開放した際には、本発明による図1の電気回路の構成では、漏電量が30mAを超えると漏電ブレーカー7が作動し、抵抗発熱体3への通電を遮断することができたが、図3の構成では漏電ブレーカー7が作動しなかった。この結果から、電気回路の漏電量を必要なときに検知できる図1の回路構造が、より安全な回路であることが分かる。尚、図1、3の抵抗発熱体回路において、回路を設置していないときの漏電量は2mA未満であり、ヒータを高温にする場合には、抵抗発熱体回路を設置しないことが必要であることが分る。
本発明の半導体加熱装置の一具体例におけるセラミックスヒータの回路図である。 参考例の半導体加熱装置におけるセラミックスヒータの回路図である。 他の参考例の半導体加熱装置におけるセラミックスヒータの回路図である。
符号の説明
1 チャンバー
1a 蓋
2 セラミックスヒータ
3 抵抗発熱体
4 高周波発生用電極
5 絶縁トランス
6 交流電源
7 漏電ブレーカー
8 マグネットスイッチ
9 リミットスイッチ

Claims (5)

  1. チャンバー内にウエハ加熱用のセラミックスヒータが設置され、該セラミックスヒータは絶縁体を介して少なくとも一つの抵抗発熱体を含む複数の電気回路を有する半導体加熱装置において、前記抵抗発熱体は絶縁トランスを介して交流電源に接続されると共に、該抵抗発熱体と絶縁トランスとの間に漏電ブレーカーを備え、前記複数の電気回路のうち抵抗発熱体回路チャンバーの蓋の開閉に応じてチャンバーの蓋が閉じているときアースに接続されない状態と、チャンバーの蓋が開放されたときアースに接続される状態とに電気的又は機械的に切り替える手段を有していることを特徴とする半導体加熱装置。
  2. 前記抵抗発熱体は絶縁トランスと漏電ブレーカーの間でマグネットスイッチを介してアースに接続可能に設けられ、該マグネットスイッチにON−OFF信号を送るリミットスイッチがチャンバーの蓋に取り付けてあり、チャンバーの蓋が開放されたときリミットスイッチの信号によりマグネットスイッチがONとなり抵抗発熱体がアースに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の半導体加熱装置。
  3. 前記複数の電気回路の少なくともひとつが高周波発生用電極であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導体加熱装置。
  4. 前記複数の電気回路の少なくともひとつが静電チャック用電極であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体加熱装置。
  5. 前記セラミックスヒータの材質が窒化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体加熱装置。
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