JP5297752B2 - 筒状フィルム、およびその製造装置と製造方法 - Google Patents
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Description
例えばインフレーション成形法では、フィルムを筒状に成形する際にフィルムの内側に空気などの気体を注入して膨らまし、成形された筒状フィルムを冷却した後に扁平状にして巻き取るので、筒状フィルムの内側が外気から遮断された状態を維持できる。従って、医療用分野等で用いられるフィルム製の容器を製造する場合は、フィルムを筒状に成形する際に、無菌フィルターを通過した無菌エアーをフィルムの内側に注入することで衛生性を保つことができる。
また、フィルムを巻き取る際に、一定の間隔でフィルム、または巻芯を左右に動かして、フィルムの両端部が常に重ならないようにトラバースしながら巻き取る方法が知られている。例えば特許文献1には、最大振幅が1.0〜4.0mmになるように、フィルムロールの巻芯をその幅方向に規則的に反復運動させながらフィルムを巻き取る方法が開示されている。
なお、ニクロム線などの熱線や、所定の温度に加熱した切断刃をフィルムの両端に接触させ、接触部分を溶融接着しつつ切断する、いわゆる溶断を行ってフィルムを巻き取る方法も実用化されている。この方法の場合、密閉性を維持できるので気密性や衛生面を確保できるものの、溶断によって溶けて劣化したフィルム、すなわち樹脂劣化物が熱線や切断刃に付着しやすかった。該樹脂劣化物がフィルムに転移するとフィルムが汚染されるため、品質が低下する恐れがあった。
フィルムの蛇行は、機械的に強制してある程度は補正できるが、フィルムに大きなうねり等の変形がある場合は補正に限界があり、フィルムを溶着したり打ち抜いたりする際に、フィルムの位置決め精度が低下し、寸法や形状が規格外の不良品が発生する原因になりやすかった。
すなわち、本発明の筒状フィルムは、扁平な筒状フィルムにおいて、屈曲部のフィルムの厚さが、当該筒状フィルムの肉厚よりも薄く、前記屈曲部の幅が3〜20mmであることを特徴とする。
ここで、前記屈曲部のフィルムの厚さが、前記筒状フィルムの肉厚の20〜90%であることが好ましい。
ここで、前記ダイスの流路出口の幅狭部が、当該流路出口の流路幅の30〜90%であることが好ましい。
さらに、前記幅狭部の長さが、6〜40mmであることが好ましい。
ここで、前記屈曲部のフィルムの厚さが、前記筒状フィルムの肉厚の20〜90%になるように、前記ダイスよりフィルムを筒状に成形することが好ましい。
さらに、前記屈曲部の幅が3〜20mmになるように、前記ダイスよりフィルムを筒状に成形することが好ましい。
なお、図2〜6において、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する場合がある。また、図1〜8においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材に毎に縮尺を異ならせてある。
図1に示す筒状フィルム10は、扁平状であり、屈曲部11のフィルムの厚さD11が、当該筒状フィルム10の肉厚よりも薄いことを特徴とする。
本発明において「筒状フィルムの肉厚」を当該筒状フィルム10の標準厚さD10とする。また、「屈曲部のフィルムの厚さ」をフィルムの側端部の厚さとする。
屈曲部11のフィルムの厚さD11が、筒状フィルム10の肉厚の20%以上であれば、筒状フィルム10を容易に成形できる。一方、90%以下であれば、屈曲部11の厚みH11が厚くなるのを十分に防止でき、厚みムラが生じるのを抑制できる。従って、筒状フィルム10を巻き取る際に、両端部が盛り上がることなくフィルムを平坦に巻き取ることができる。
屈曲部11の幅W11が3mm以上であれば、屈曲部11の厚みH11が厚くなるのを十分に防止でき、厚みムラが生じるのを抑制できる。従って、筒状フィルム10を巻き取る際に、両端部が盛り上がることなくフィルムを平坦に巻き取ることができる。一方、屈曲部11の幅W11が20mmを超えても、屈曲部11の厚みH11が厚くなるのを防止して、厚みムラが生じるのを抑制する効果は頭打ちになる。従って、屈曲部11の幅W11の上限は20mm以下が好ましい。
図3は、本発明の筒状フィルムの製造装置の全体構成図の一例を示す概略図である。
図3に示す筒状フィルムの製造装置20は、筒状にフィルムを成形する成形手段21と、該成形手段21により成形された筒状フィルムを冷却する冷却手段22と、筒状フィルムを扁平にする扁平手段23と、扁平な筒状フィルム10を巻き取る巻き取り手段24とを有して構成されている。
また、筒状フィルムの製造装置20には、必要に応じて扁平手段23と巻き取り手段24との間に、筒状フィルム10を乾燥する乾燥手段25と、筒状フィルムの表面に印刷を施す印刷手段26が備えられていてもよい。
以下、扁平前の筒状フィルムを「成形フィルム10’」と略す場合がある。
押出機21bとしては特に制限されず、公知の押出機を用いることができる。
幅狭部212cの幅W212が、流路出口211cの流路幅W211の30%以上であれば、筒状フィルムを容易に成形できる。一方、90%以下であれば、図1に示すように屈曲部11の厚みH11が厚くならず、厚みムラのない筒状フィルム10が得られる。従って、後述する巻き取り手段24にて筒状フィルム10を巻き取る際に、図2に示すように両端部が盛り上がることなくフィルムを平坦に巻き取ることができる。
なお、本発明において「流路出口の流路幅」を流路出口の標準流路幅とする。
幅狭部212cの長さL212が6mm以上であれば、図1に示すように屈曲部11の厚みH11が厚くならず、厚みムラのない筒状フィルム10が得られる。従って、後述する巻き取り手段24にて筒状フィルム10を巻き取る際に、図2に示すように両端部が盛り上がることなくフィルムを平坦に巻き取ることができる。一方、幅狭部212cの長さL212が40mmを超えても、屈曲部11の厚みH11が厚くなるのを防止して、厚みムラが生じるのを抑制する効果は頭打ちになる。従って、幅狭部212cの長さL212の上限は40mm以下が好ましい。
なお、幅狭部212cの長さL212の半分が、図1に示す筒状フィルム10の屈曲部11の幅W11に相当する。
印刷手段26としては、筒状フィルムの表面に印刷を施すことができるものであれば、特に制限されないが、例えばインライン印刷機などが挙げられる。
本発明の筒状フィルムの製造方法は、筒状にフィルムを成形する成形工程と、該成形工程により成形された筒状フィルムを冷却する冷却工程と、筒状フィルムを扁平にする扁平工程と、扁平な筒状フィルムを巻き取る巻き取り工程とを有する。
また、本発明においては、必要に応じて、扁平工程と巻き取り工程の間に、筒状フィルムを乾燥する乾燥工程と、筒状フィルムの表面に印刷を施す印刷工程を有してもよい。
図3に示す例では、成形フィルム10’は下向き、すなわち鉛直方向に引き取られる。
引き取り速度は3〜100m/分が好ましい。
その際、屈曲部11の厚さD11が、筒状フィルム10の肉厚の20〜90%になるように、フィルムを筒状に成形することが好ましく、より好ましくは30〜80%である。屈曲部11のフィルムの厚さD11が、筒状フィルム10の肉厚20%以上であれば、筒状フィルム10を容易に成形できる。一方、90%以下であれば、得られる筒状フィルム10の屈曲部11の厚みH11が厚くなるのを十分に防止でき、厚みムラが生じるのを抑制できる。従って、筒状フィルム10を巻き取る際に、両端部が盛り上がることなくフィルムを平坦に巻き取ることができる。
本発明の筒状フィルムは、1種類の材料からなる単層フィルムであってもよく、複数の種類の層からなる多層フィルムであってもよい。
冷却方法としては、空冷や水冷などが挙げられる。空冷の場合は、成形手段21より成形された成形フィルム10’を自然冷却したり、空気などを吹きつけて冷却したりする。一方、水冷の場合は、図3に示すように、成形フィルム10’を水冷リングなどの冷却手段22の内側を通過させて冷却する。
扁平手段23への引き取り速度は、成形工程時の引き取り速度と同じ速度に設定するのが好ましい。
印刷工程は、筒状フィルムの表面に印刷を施す工程である。印刷方法としては特に制限されない。
巻取り速度は成形工程時の引き取り速度と同じ速度に設定するのが好ましい。
さらに、トラバース法の場合、フィルムを平坦に巻き取ることはできるものの、フィルムを左右に振りながら張力をかけて巻き取るので、フィルムにかかる張力が左右方向で不均衡になりやすかった。その結果、フィルムの伸びが左右方向で不均一となり、フィルムにうねり癖が残りやすく、フィルムを巻き戻した際にフィルムが蛇行しやすかった。そのため、フィルムを溶融させてシールしたり打ち抜いたりする際にフィルムの位置決め精度が低下し、寸法や形状が規格外の不良品が発生する原因になりやすかった。
従って、フィルムを巻き戻しても変形不良が起きず、フィルムを製袋したり印刷を施したりする際にフィルムの位置決め精度を維持できるので、不良品の発生を抑制できる。
さらに、トラバースしながらフィルムを巻き取る必要がないので、フィルムにうねり癖を残すことなく平坦に巻き取ることができる。従って、フィルムを巻き戻してもフィルムが蛇行しないので、フィルムを溶融したり打ち抜いたりする際にフィルムの位置決め精度を維持できるので、不良品の発生を抑制できる。
しかし、本発明であれば、フィルムの肉厚を厚くしても、屈曲部のフィルムの厚さを肉厚よりも薄くすることで厚みムラを解消できるので、容易に筒状フィルムを平坦に巻き取ることができる。従って、例えば輸液バッグなど薬剤を収容する医療容器用のフィルムのように、フィルムに100〜1000μm程度の厚みを持たす必要がある場合でも、本発明により得られる筒状フィルムは所望の厚さのフィルムを製造することができるので、医療容器用のフィルムとしても好適である。
また、筒状フィルム、およびその製造装置と製造方法を説明するに際して、筒状フィルムがダイスより下向きに吐出される水冷インフレーション型の装置を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば筒状フィルムが上向きに吐出される空冷インフレーション型の装置を用いてもよい。
[実施例]
図3に示す筒状フィルムの製造装置20を用い、以下のようにして筒状フィルムを製造した。
樹脂として低密度ポリエチレンをホッパ21aに投入し、径が65mmのスクリュを備えた押出機21bにて、成形温度160℃、スクリュの回転数20rpmの条件で樹脂を可塑化した。
次いで、押出機21bの先端に接続され、160℃に温調されたダイス21cにより、溶融樹脂を押し出し、筒状にフィルムを成形した。ダイス21cの出口には、図4に示すように、流路出口211cの流路幅W211が3.5mmのリップリングを設置した。該リップリングは、外径が200mmであり、幅狭部212cの幅W212が2.3mm、長さL212が25mmになるように、180度相対する2箇所の流路出口211cの内側に樹脂の流れを制限する制限部材213cを設けた。
その後、扁平手段23として一対のピンチロールを用い、ピンチロールの間に成形フィルム10’を通過させて扁平にし、図1に示すような、扁平な筒状フィルム10を得た。
さらに、筒状フィルム10を乾燥手段25に通過させて水分を除去した後、巻き取り手段24にて巻芯24aに筒状フィルム10を巻き取った。
さらに、巻き取った筒状フィルムを巻き戻すと、うねり癖がないことが確認できた。
Claims (8)
- 扁平な筒状フィルムにおいて、
屈曲部のフィルムの厚さが、当該筒状フィルムの肉厚よりも薄く、前記屈曲部の幅が3〜20mmであることを特徴とする筒状フィルム。 - 前記屈曲部のフィルムの厚さが、前記筒状フィルムの肉厚の20〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の筒状フィルム。
- 樹脂を溶融してダイスより筒状にフィルムを成形し、フィルムの内側に気体を注入する成形手段と、該成形手段により成形された筒状フィルムを冷却する冷却手段と、筒状フィルムを扁平にする扁平手段と、扁平な筒状フィルムを巻き取る巻き取り手段とを具備し、
前記扁平手段により筒状フィルムを扁平にしたときの屈曲部のフィルムの厚さが、当該筒状フィルムの肉厚よりも薄くなるように、前記ダイスの流路出口が狭くなっていることを特徴とする筒状フィルムの製造装置。 - 前記ダイスの流路出口の幅狭部が、当該流路出口の流路幅の30〜90%であることを特徴とする請求項3に記載の筒状フィルムの製造装置。
- 前記幅狭部の長さが、6〜40mmであることを特徴とする請求項3または4に記載の筒状フィルムの製造装置。
- 樹脂を溶融してダイスよりフィルムを筒状に成形し、フィルムの内側に気体を注入する成形工程と、該成形工程により成形された筒状フィルムを冷却する冷却工程と、筒状フィルムを扁平にする扁平工程と、扁平な筒状フィルムを巻き取る巻き取り工程とを有し、
前記扁平工程により筒状フィルムを扁平にしたときの屈曲部のフィルムの厚さが、当該筒状フィルムの肉厚よりも薄くなるように、前記ダイスよりフィルムを筒状に成形することを特徴とする筒状フィルムの製造方法。 - 前記屈曲部のフィルムの厚さが、前記筒状フィルムの肉厚の20〜90%になるように、前記ダイスよりフィルムを筒状に成形することを特徴とする請求項6に記載の筒状フィルムの製造方法。
- 前記屈曲部の幅が3〜20mmになるように、前記ダイスよりフィルムを筒状に成形することを特徴とする請求項6または7に記載の筒状フィルムの製造方法。
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