JP5295749B2 - アクリル樹脂硬化体 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル樹脂硬化体に関し、特に高曲げ強度を維持したアクリル樹脂硬化体に関するものである。
アクリル樹脂硬化体は、機械的強度や成形加工性、耐候性等にバランスのとれた性質を有しており、シート材料あるいは成形材料として多方面に使用されている。
かかるアクリル樹脂硬化体は、メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体のラジカル重合によって得られるが、その重合の際の反応熱は膨大であり、該反応熱の低減と経済性等の観点から、フィラーが用いられている。
上記フィラーとしては、石灰石粉が多用されおり、該石灰石粉の添加により、反応熱の低減を図るとともに、クラックの発生を阻止し、欠陥のない成形体を得ることがなされている。
しかしながら、アクリル樹脂硬化体の場合、フィラーとして石灰石粉を用いたものにあっては、曲げ強度が、硬化直後においてはフィラー無添加のものに比べ増進が見られるが、その後低下し、材齢7日の時点においては、フィラー無添加のものと同等、場合によってはむしろ低下していると言う重大な欠点があった。
本発明は、上述した背景技術が有する実情に鑑み成されたものであって、その目的は、曲げ強度を樹脂単体の強度よりも向上させ、かつその高曲げ強度を維持したアクリル樹脂硬化体を提供し、もってアクリル樹脂硬化体の信頼性を向上させ、よりアクリル樹脂硬化体の使用範囲の拡大を図ることにある。
上記した課題は、次の〔1〕〜〔〕の本発明により解決された。
〔1〕 メタクリル酸メチルを80重量%以上含有するビニル単量体に、平均アスペクト比3〜50、平均繊維短径50〜100μmである繊維状フィラーとしてβ型ウォラストナイトをビニル単量体100重量部に対して3〜15重量部、アスペクト比2以下、平均粒径3〜15μmである粒状フィラーとして石灰石粉をビニル単量体100重量部に対して5〜50重量部それぞれ添加し、ラジカル重合により得られたアクリル樹脂硬化体であって、材齢7日の曲げ強度が硬化直後の曲げ強度の90%以上であり、かつフィラー無添加の曲げ強度と比べ強度増進率が120%以上であることを特徴とする、アクリル樹脂硬化体。
〔2〕 上記繊維状フィラーが、平均アスペクト比5〜40、平均繊維短径60〜90μmであり、ビニル単量体100重量部に対して5〜13重量部添加されていることを特徴とする、上記〔1〕に記載のアクリル樹脂硬化体。
〔3〕 上記粒状フィラーが、ビニル単量体100重量部に対して10〜40重量部添加されていることを特徴とする、上記〔1〕又は〔2〕に記載のアクリル樹脂硬化体。
上記した本発明によれば、繊維状フィラーを添加することにより、驚くべきことに高曲げ強度を維持したアクリル樹脂硬化体となり、アクリル樹脂硬化体の信頼性が向上し、その使用範囲を拡大することができる。
以下、本発明に係るアクリル樹脂硬化体について、詳細に説明する。
本発明に係るアクリル樹脂硬化体は、メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体に繊維状フィラーを添加し、ラジカル重合により得られるものである。
上記メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体は、アクリル樹脂硬化体に特有の性質、即ち、硬度が高く、酸やアルカリなどに対する耐薬品性に優れる等の性質を損なわない観点から、メタクリル酸メチルを80重量%以上含有しているものであり、当然に、メタクリル酸メチル100重量%のものであってもよい。0〜20重量%の範囲で含有される他の単量体の具体例としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体などが挙げられる。これらの単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明で使用する繊維状フィラーは、平均アスペクト比(長径/短径)が3〜50のものである。これは、平均アスペクト比が3未満のものは、形状が粒状に近づき、繊維成分としての効果が低下し、添加による曲げ強度向上効果及び曲げ強度維持効果が出にくくなり、また、平均アスペクト比が50を越えるものは、添加した場合の均一分散性が悪くなって、得られるアクリル樹脂硬化体の均質性、即ち、品質的にバラツキの大きな硬化体となってしまうためである。かかる観点から、平均アスペクト比が5〜40の繊維状フィラーがより好ましい。
また、本発明で使用する繊維状フィラーは、平均繊維短径が50〜100μmのものである。これは、上記平均アスペクト比の場合と同様に、平均繊維短径が50μm未満のものは、繊維径が細すぎて曲げ強度向上効果及び曲げ強度維持効果が出にくく、逆に平均繊維短径が100μmを越えるのものは、繊維径が太すぎて添加混合での均一分散性が悪くなって、均質なアクリル樹脂硬化体が得にくいためである。かかる観点から、平均繊維短径が60〜90μmの繊維状フィラーがより好ましい。
なお、本発明で使用する繊維状フィラー繊維長径は、上記アスペクト比及び繊維短径から自ずと決定される。
繊維状フィラーとしては、ウォラストナイト、ガラス繊維、チタン酸カリウムウイスカー、硼酸アルミニウムウイスカー、炭化珪素ウイスカーなどを挙げることができが、本発明においては、経済性、入手の容易性などの観点から、ウォラストナイトを使用する
ウォラストナイト(和名:珪灰石、英名:Wollastonite)は、化学式CaSiO3で示される珪酸塩鉱物であり、天然鉱物として産出されるウォラストナイトは、石灰石と花崗岩の接触部で変成作用を受けて発達した鉱物で、色はガラス光沢のある白色、帯灰色、帯褐色を呈し、結晶形態は針状、塊状をなしている。主成分は、SiO2とCaOをほぼ等量含有し、微量成分としてA123、Fe23等を含有している。またウォラストナイトには、天然に産出される低温型(β型)と合成の高温型(α型)があるが、一般に流通しているのはこのうち天然産(β型)である。これらのウォラストナイトのアスペクト比は、概ね3〜20であり、本発明において好適である。そのため、本発明においては、ウォラストナイトの中でも特にβ型ウォラストナイトを用いる。
本発明においては、上記繊維状フィラーを、上記メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体100重量部に対して3〜15重量部、好ましくは5〜13重量部添加する。これは、繊維状フィラーの添加量が3重量部に満たない場合には、繊維状フィラーを添加した場合の効果、即ち、曲げ強度向上効果及び曲げ強度維持効果が得られず、逆に繊維状フィラーの添加量が15重量部を越える場合には、メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体との混合攪拌が困難なものとなるためである
また、本発明においては、上記繊維状フィラーに加えて、アスペクト比が2以下の粒状フィラーを添加する。粒状フィラーとしては、平均粒径が3〜15μmであるものを用いることとし、例えば石灰石粉、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ粉、タルク、ガラス粉、水酸化マグネシウム、石英粉などが挙げられるが、本発明においては、石灰石粉を用いる。
上記粒状フィラーは、上記適量の繊維状フィラーと、ビニル単量体100重量部に対して上記粒状フィラーを5〜50重量部混合して使用する。粒状フィラーを混合使用することによって、流動性が向上し、メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体との混合攪拌が容易となる。粒状フィラーの混合量が5重量部に満たない場合には、上記した流動性向上の効果がなく、逆に粒状フィラーの混合量が50重量部を越える場合には、繊維状フィラーによる曲げ強度向上効果及び曲げ強度維持効果が低下するかかる観点から、粒状フィラーの混合量は、ビニル単量体100重量部に対して10〜40重量部がより好ましい。
本発明においてラジカル重合を開始させるラジカル重合開始剤としては、ビニル重合法で通常用いられている全てのアゾ系及び過酸化物系のラジカル重合開始剤が使用可能である。アゾ系開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等があり、過酸化物系開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。これらの群の中から、1種または2種以上を選択して使用できる。
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体に対して0.1〜5重量%であり、好ましくは0.5〜3重量%である。
上記メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体、繊維状フィラー、ラジカル重合開始剤などの混練は、通常用いられる混練機、例えばニーダー、ミキサー、ロールミル、スクリュー型押出機などを用いて行うことができ、得られた混練物を必要に応じて脱泡し、成形型に流し込み、硬化後脱型することにより、アクリル樹脂硬化体が得られる。成型はマイナス5℃〜プラス30℃の範囲で行うことが好ましい。ナイナス5℃に満たない温度で行う場合は、ラジカル反応が良好に起こらず、硬化不良を起こす憂いがある。逆に30℃を越える場合は、ラジカル反応が早すぎ、部分的な硬化になったり、良好な成形体が得られないために好ましくない。
上記のようにして得られた本発明のアクリル樹脂硬化体は、材齢7日の曲げ強度が硬化直後の曲げ強度の90%以上であり、かつフィラー無添加の曲げ強度と比べ強度増進率が120%以上である。具体的には、硬化直後から曲げ強度の低下が見られず、その曲げ強度は、通常のフィラー無添加のアクリル樹脂硬化体の曲げ強度である50N/mm2程度の120%以上である65N/mm2程度を維持したものとなる。このような高強度化のメカニズムは明らかではないが、アスペクト比の大きな繊維状フィラーを添加することにより、微小な部分でマイクロレインフォース効果が生じているものと考えられる。
試験例
以下、本発明を見出した試験例につき説明するが、本発明は、何らこれらの試験例によって限定されるものではない。
〔使用材料]
以下に示す材料を使用した。
〔1〕主剤;メタクリル酸メチル(三菱レーヨン株式会社社製、XD、密度:0.94g/cm3
〔2〕ラジカル重合開始剤;過酸化ベンゾイル(関東化学株式会社社製、1級、密度:1.33g/cm3
〔3〕繊維状フィラー;ウォラストナイトA(関西マテック株式会社社製、ノーマルグレード、密度:2.91g/cm3、平均アスペクト比:23、平均繊維短径:70μm)
繊維状フィラー;ウォラストナイトB(NYCO Minerls社製、NYAD−G、密度:2.90g/cm3、平均アスペクト比:20、平均繊維短径:50μm)
〔4〕粒状フィラー;石灰石粉A(太平洋セメント株式会社社製、密度:2.72g/cm3、平均アスペクト比:1、平均粒径:5μm)
粒状フィラー;石灰石粉B(太平洋セメント株式会社社製、密度:2.69g/cm3、平均アスペクト比:1、平均粒径:15μm)
〔試験例1〜26〕
上記した主剤であるメタクリル酸メチル、ラジカル重合開始剤である過酸化ベンゾイル、及びフィラーであるウォラストナイトA,B、石灰石粉A,Bを、表1に示す種々の割合で混練し、脱泡した後、図1に示したガラス製の型枠に注入し、3時間後に脱型し、厚さ5mmのアクリル樹脂硬化体を得た。なお、成型は常温(20℃)、常圧で行った。
Figure 0005295749
〔曲げ強度試験〕
得られたアクリル樹脂硬化体から、ダイヤモンドカッターで長さ16cm、幅4cmの試験片(厚さ5mm)をそれぞれ切り出し、該試験片について、JIS−R−5201に準拠した3点曲げ試験を行い、曲げ強度を測定した。
なお、曲げ強度の測定は、試験例1〜26の全ての試料につき、硬化直後(材齢0日)に行った。また、フィラーの添加量が5重量部である試験例2、フィラーの添加量が10重量部である試験例4,9,14及び19、繊維状フィラーと粒状フィラーの混合添加を行った試験例24の試料については、材齢7日、材齢14日、及び材齢28日においても曲げ強度の測定を行った。曲げ強度は、各試験例試料につき3回曲げ試験を行ない、その平均値とした。
測定結果を、表2及び図2〜図7に示す。なお、図2〜図7に図示するにあたり、フィラーの添加量は、重量部に換算して図示した。
Figure 0005295749
〔試験結果〕
表2及び図2〜図6に示した試験結果から、繊維状フィラー及び/又は粒状フィラーの添加により、フィラー無添加の場合に比べ硬化直後の曲げ強度を向上させることができることが分かった。そして、その添加量の最適値は、主剤(メタクリル酸メチル)100重量部に対して10重量部前後にあることが分かった。
また、表2及び図7に示した試験結果から、粒状フィラーのみを添加したものにあっては、材齢とともに曲げ強度が低下し、フィラー無添加のものに比べむしろ曲げ強度が低くなってしまうことが分かった。これに対し、繊維状フィラーを添加したものにあっては、驚くべきことに曲げ強度が低下せず、高曲げ強度を維持したアクリル樹脂硬化体が得られることが分かった。
試験試料を作製するために使用したガラス製型枠を示した概念的な縦断面側面図および横断面正面図である。 ウォラストナイトAの添加量を横軸に、曲げ強度を縦軸に、試験結果を示したグラフである。 ウォラストナイトBの添加量を横軸に、曲げ強度を縦軸に、試験結果を示したグラフである。 石灰石粉Aの添加量を横軸に、曲げ強度を縦軸に、試験結果を示したグラフである。 石灰石粉Bの添加量を横軸に、曲げ強度を縦軸に、試験結果を示したグラフである。 ウォラストナイトA10重量部と混合添加した石灰石粉Aの添加量を横軸に、曲げ強度を縦軸に、試験結果を示したグラフである。 主剤(メタクリル酸メチル)100重量部に対して、ウォラストナイトAを5重量部添加した場合、ウォラストナイトA、ウォラストナイトB、石灰石粉A、石灰石粉Bをそれぞれ10重量部添加した場合、及びウォラストナイトA10重量部と石灰石粉A22重量部との混合物を添加した場合の、材齢を横軸に、曲げ強度を縦軸に、試験結果を示したグラフである。

Claims (3)

  1. メタクリル酸メチルを80重量%以上含有するビニル単量体に、平均アスペクト比3〜50、平均繊維短径50〜100μmである繊維状フィラーとしてβ型ウォラストナイトをビニル単量体100重量部に対して3〜15重量部、アスペクト比2以下、平均粒径3〜15μmである粒状フィラーとして石灰石粉をビニル単量体100重量部に対して5〜50重量部それぞれ添加し、ラジカル重合により得られたアクリル樹脂硬化体であって、材齢7日の曲げ強度が硬化直後の曲げ強度の90%以上であり、かつフィラー無添加の曲げ強度と比べ強度増進率が120%以上であることを特徴とする、アクリル樹脂硬化体。
  2. 上記繊維状フィラーが、平均アスペクト比5〜40、平均繊維短径60〜90μmであり、ビニル単量体100重量部に対して5〜13重量部添加されていることを特徴とする、請求項1に記載のアクリル樹脂硬化体。
  3. 上記粒状フィラーが、ビニル単量体100重量部に対して10〜40重量部添加されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアクリル樹脂硬化体。
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