無電解メッキ法により形成されたバンプが、回路パターンの電極パッド上に形成された、半導体ウエハの品質(実装品質)を向上させるためには、各パンプの丈を所望の高さに維持させること、各パンプの丈を一定化させること、および、各バンプと電極パッドとの密着性を向上させることが重要である。なお、本願明細書において「バンプの丈」とは、パンプが形成されている電極パッド部分から、該バンプの先端までの鉛直方向における長さ(高さ)を意味するものとする。
ここで、無電解メッキ法により、例えばNiとAuとからなるバンプを形成するための無電解メッキ処理に係る技術としては、エッチング処理、ジンケート(亜鉛置換)処理、無電解Niメッキ処理、および、無電解Auメッキ処理を順次行う技術が存在する(特許文献2参照)。
一般的に、上記無電解メッキ処理は、複数の処理槽に各々貯留された液体(薬液または流水)に、半導体ウエハが収容されているウエハキャリアを順次浸して行われる。但し、無電解メッキ処理を行うときに、特に、ウエハキャリアを複数の処理槽間で搬送するときに、ウエハキャリアに収容されている半導体ウエハからの液体の流下等に起因して、半導体ウエハの回路パターンの電極パッドが大気に触れて乾燥すると、電極パッドに形成されたバンプは、丈が低くなってしまったり、電極パッドとの密着性が低下してしまったりするという問題が発生する。この問題が発生する原因としては、電極パッドが大気に触れることに起因して、電極パッドの表面が酸化する(酸化膜が形成される)こと、および、ウォーターマークの発生により電極パッド表面の表面活性度が低下すること、等が推定される。
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的は、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させること、丈を一定化させること、および、電極パッドとの密着性を向上させることができるメッキ処理装置を提供することにある。
本願発明者らは、上記の問題に鑑みて鋭意検討を行った結果、半導体ウエハが収容されているウエハキャリアを、複数の処理槽に各々貯留された液体に順次浸して、該半導体ウエハに形成された回路パターンの電極パッド上に、無電解メッキ法によりバンプを形成するためのメッキ処理装置であって、上記回路パターンが形成されている上記半導体ウエハの回路形成面が、水平方向よりも上方を向くように、上記ウエハキャリアを傾斜させた姿勢で保持するキャリア保持装置と、上記キャリア保持装置により保持されているウエハキャリアに対し、上記処理槽に貯留された液体からの該ウエハキャリアの浮上と、該処理槽に貯留された液体への該ウエハキャリアの沈降と、複数の該処理槽間での該ウエハキャリアの搬送と、を行う搬送アームと、を備え、上記キャリア保持装置は、上記回路形成面に垂直な鉛直面内における該回路形成面の傾斜角度が、鉛直方向に対して20°以上かつ40°以下となるように、上記ウエハキャリアを傾斜させた姿勢で保持するものであることを特徴とするメッキ処理装置であれば、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させること、丈を一定化させること、および、電極パッドとの密着性を向上させることができることを独自に見出し、本発明を案出するに至った。
本願発明者らは、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させ、丈を一定化させ、電極パッドとの密着性を向上させるために、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減することが有効であると考えた。
そして、本願発明者らは、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減するために、回路形成面が水平方向よりも上方を向くように、ウエハキャリアを傾斜させて搬送するのが有効であると考えた。これにより、複数の処理槽間を搬送するときに、ウエハキャリアに収容されている半導体ウエハから液体が流下する虞を低減することができるため、電極パッドが大気に触れる虞を抑制することができると考えられる。
特許文献3には、ウエハカセットを、半導体ウエハのデバイス形成面が上になるように所定の角度傾斜させて、薬液処理と複数の処理槽間の搬送とを行う技術が開示されている。特許文献4には、カセットを、半導体ウエハのデバイス形成面が上になるように所定の角度傾斜させて、洗浄液に沈降させる技術が開示されている。特許文献5には、キャリアホルダーを前傾し、洗浄槽から取り出して搬送する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献3〜5に開示されている各技術は、それぞれ以下の理由により、そのまま無電解メッキ処理装置に適用しても、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減するという目的を達成することができなかった。
すなわち、特許文献3に開示されている技術では、ウエハカセットを傾斜させる角度を1°〜15°としている。しかしながら、該角度を1°〜15°とした場合、搬送するときに薬液が流下する虞を低減するためには傾斜させる角度が小さすぎるため、上記目的を達成することはできない。特許文献3に開示されている技術は、半導体チップのデバイス形成面への異物付着を低減するという観点から、該角度を1°〜15°とした発明であり、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減するという観点から為された発明でない。
特許文献4に開示されている技術では、傾斜角θwの下限がπ/12rad、すなわち、15°程度であれば十分であり、傾斜角θwの上限を考慮する必要がない。しかしながら、傾斜角θwを15°程度とした場合、やはり、搬送するときに薬液が流下する虞を低減するためには傾斜角θwが小さすぎるため、上記目的を達成することはできない。一方、傾斜角θwが40°を超える程度に大きい場合には、半導体ウエハ上に残留する薬液の量が非常に多くなり、これにより、搬送中において半導体ウエハ上では種々の化学反応が不要に促進され、この結果、形成された各パンプの丈にばらつきが発生する虞がある。特許文献4に開示されている技術は、ウエハがウエハカセットの保持部分と摺れることによる塵挨の発生を低減するという観点から傾斜角θwを15°以上の任意の角度とした発明であり、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減するという観点から為された発明でない。
特許文献5に開示されている技術では、キャリアホルダーを前傾させる角度について具体的に述べられていない。ここで、キャリア掴みからの洗浄液の流下を防止するためには、キャリアホルダーを、40°を超える程度に前傾する必要があると考えられ、この場合には、半導体ウエハ上に残留する薬液の量が多くなり、これにより、搬送中において半導体ウエハ上では種々の化学反応が不要に促進され、この結果、形成された各パンプの丈にばらつきが発生する虞がある。特許文献5に開示されている技術は、作業者がキャリアに触れないで洗浄槽から乾燥機へキャリアを運べるようにし汚染や発塵の虞をなくすという観点から、キャリアホルダーを前傾させている発明であり、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減するという観点から為された発明でない。
そこで、上記の構成によれば、回路形成面に垂直な鉛直面内における回路形成面の傾斜角度が、鉛直方向に対して20°以上かつ40°以下となる。
上記傾斜角度を20°未満とした場合には、処理槽における無電解メッキ処理後(液体に浸した後)に、ウエハキャリアを搬送するときの、単位時間に対する、半導体ウエハに付着した液体の流下度合が、非常に大きくなる。このとき、半導体ウエハに付着した液体は、短時間で流下して、表面から消失する。そしてこれにより、半導体ウエハの表面が酸化し、半導体ウエハの回路パターンの電極パッドが大気に触れて乾燥する現象を引き起こす要因となる。一方、上記傾斜角度が40°を超えた場合には、該流下度合が、非常に小さくなる。このとき、半導体ウエハに付着した液体は、その残留量が非常に多くなり、これに伴い、搬送中において半導体ウエハ上では種々の化学反応が不要に促進され、この結果、形成された各パンプの丈にばらつきが発生する虞がある。
以上のことを考慮すると、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させ、丈を一定化させ、電極パッドとの密着性を向上させるべく、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減するためには、回路形成面の傾斜角度を、20°以上かつ40°以下とするべきであることが分かる。
また、本願発明者らは、上記の問題に鑑みて鋭意検討を行った結果、半導体ウエハが収容されているウエハキャリアを、複数の処理槽に各々貯留された液体に順次浸して、該半導体ウエハに形成された回路パターンの電極パッド上に、無電解メッキ法によりバンプを形成するためのメッキ処理装置であって、上記回路パターンが形成されている上記半導体ウエハの回路形成面が、水平方向よりも上方を向くように、上記ウエハキャリアを傾斜させた姿勢で保持するキャリア保持装置と、上記キャリア保持装置により保持されているウエハキャリアに対し、上記処理槽に貯留された液体からの該ウエハキャリアの浮上と、該処理槽に貯留された液体への該ウエハキャリアの沈降と、複数の該処理槽間での該ウエハキャリアの搬送と、を行う搬送アームと、を備え、上記搬送アームは、毎秒100ミリメートル以上かつ毎秒200ミリメートル以下の速度で、上記ウエハキャリアの、浮上および沈降の少なくとも一方を行うものであることを特徴とするメッキ処理装置であれば、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させること、丈を一定化させること、および、電極パッドとの密着性を向上させることができることを独自に見出し、本発明を案出するに至った。
上記の構成によれば、ウエハキャリアの、浮上および/または沈降の速度が、毎秒100ミリメートル以上かつ毎秒200ミリメートル以下となる。
浮上および/または沈降の速度を、毎秒100ミリメートル未満とした場合には、処理槽における無電解メッキ処理後(液体に浸した後)に、ウエハキャリアを搬送に要する時間が長時間化し、これに伴い、半導体ウエハ表面に付着した液体の流下量が増大し、半導体ウエハ表面から消失する。一方、浮上および/または沈降の速度が、毎秒200ミリメートルを超えた場合には、液体と空気との摩擦に起因して該液体が振り切られてしまうことで、半導体ウエハ表面に付着した液体の流下が促進されることとなるため、半導体ウエハ表面に付着した液体の流下量が増大し、半導体ウエハ表面から消失する。いずれの場合であっても、半導体ウエハの表面が酸化し、半導体ウエハの回路パターンの電極パッドが大気に触れて乾燥する現象を引き起こす要因となる。
以上のことを考慮すると、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させ、丈を一定化させ、電極パッドとの密着性を向上させるべく、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減するためには、ウエハキャリアの、浮上および/または沈降の速度を、毎秒100ミリメートル以上かつ毎秒200ミリメートル以下とするべきであることが分かる。
さらに、本願発明者らは、上記の問題に鑑みて鋭意検討を行った結果、半導体ウエハが収容されているウエハキャリアを、複数の処理槽に各々貯留された液体に順次浸して、該半導体ウエハに形成された回路パターンの電極パッド上に、無電解メッキ法によりバンプを形成するためのメッキ処理装置であって、上記回路パターンが形成されている上記半導体ウエハの回路形成面が、水平方向よりも上方を向くように、上記ウエハキャリアを傾斜させた姿勢で保持するキャリア保持装置と、上記キャリア保持装置により保持されているウエハキャリアに対し、上記処理槽に貯留された液体からの該ウエハキャリアの浮上と、該処理槽に貯留された液体への該ウエハキャリアの沈降と、複数の該処理槽間での該ウエハキャリアの搬送と、を行う搬送アームと、を備え、上記搬送アームは、4秒以上かつ9秒以下の時間で、上記ウエハキャリアの搬送を行うものであることを特徴とするメッキ処理装置であれば、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させること、丈を一定化させること、および、電極パッドとの密着性を向上させることができることを独自に見出し、本発明を案出するに至った。
上記の構成によれば、複数の処理槽間での、ウエハキャリアの搬送時間が、4秒以上かつ9秒以下となる。
ウエハキャリアの搬送時間を、4秒未満とした場合には、搬送時間の短縮化に相反して、搬送速度の過度の高速化が予想される。搬送速度が過度に高速化した場合には、液体と空気との摩擦に起因して該液体が振り切られてしまうことで、半導体ウエハ表面に付着した液体の流下が促進されることとなるため、半導体ウエハ表面に付着した液体の流下量が増大し、半導体ウエハ表面から消失する。一方、ウエハキャリアの搬送時間が、9秒を超えた場合には、処理槽における無電解メッキ処理後(液体に浸した後)に、ウエハキャリアを搬送に要する時間が長時間化し、これに伴い、半導体ウエハ表面に付着した液体の流下量が増大し、半導体ウエハ表面から消失する。いずれの場合であっても、半導体ウエハの表面が酸化し、半導体ウエハの回路パターンの電極パッドが大気に触れて乾燥する現象を引き起こす要因となる。
以上のことを考慮すると、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させ、丈を一定化させ、電極パッドとの密着性を向上させるべく、無電解メッキ処理を行うときに、電極パッドが大気に触れる虞を低減するためには、ウエハキャリアの搬送時間を、4秒以上かつ9秒以下とするべきであることが分かる。
また、本発明に係るメッキ処理装置においては、回路形成面に垂直な鉛直面内における回路形成面の傾斜角度が、鉛直方向に対して20°以上かつ40°以下となる上記構成と、ウエハキャリアの、浮上および/または沈降の速度が、毎秒100ミリメートル以上かつ毎秒200ミリメートル以下となる上記構成と、複数の処理槽間での、ウエハキャリアの搬送時間が、4秒以上かつ9秒以下となる上記構成と、を任意に組み合わせて適用してもよく、各構成の組み合わせを適用した場合は、該構成のいずれか一つのみを適用した場合よりも、さらに大きな、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させ、丈を一定化させ、電極パッドとの密着性を向上させる効果を得ることができる。
また、本発明に係るメッキ処理装置は、複数の上記処理槽は、脱脂剤が貯留された脱脂処理槽、純水が貯留された第1水洗処理槽、エッチング液が貯留されたエッチング処理槽、純水が貯留された第2水洗処理槽、亜鉛置換液が貯留された第1亜鉛置換処理槽、純水が貯留された第3水洗処理槽、硝酸が貯留された硝酸処理槽、純水が貯留された第4水洗処理槽、亜鉛置換液が貯留された第2亜鉛置換処理槽、純水が貯留された第5水洗処理槽、ニッケル−リン系メッキ液が貯留された第1無電解メッキ処理槽、純水が貯留された第6水洗処理槽、金メッキ液が貯留された第2無電解メッキ処理槽、および、純水が貯留された第7水洗処理槽を有しており、上記メッキ処理装置は、上記ウエハキャリアを、上記脱脂処理槽に貯留された脱脂剤、上記第1水洗処理槽に貯留された純水、上記エッチング処理槽に貯留されたエッチング液、上記第2水洗処理槽に貯留された純水、上記第1亜鉛置換処理槽に貯留された亜鉛置換液、上記第3水洗処理槽に貯留された純水、上記硝酸処理槽に貯留された硝酸、上記第4水洗処理槽に貯留された純水、上記第2亜鉛置換処理槽に貯留された亜鉛置換液、上記第5水洗処理槽に貯留された純水、上記第1無電解メッキ処理槽に貯留されたニッケル−リン系メッキ液、上記第6水洗処理槽に貯留された純水、上記第2無電解メッキ処理槽に貯留された金メッキ液、上記第7水洗処理槽に貯留された純水、の順序で順次浸して、上記電極パッド上に、無電解メッキ法により上記バンプを形成するものであることを特徴としている。
上記の構成によれば、無電解メッキ処理時において、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させ、丈を一定化させ、電極パッドとの密着性を向上させる効果を得ることができるため、無電解メッキ法により形成されたバンプが、回路パターンの電極パッド上に形成された、半導体ウエハの品質(実装品質)を向上させることができる。
以上のとおり、本発明に係るメッキ処理装置は、半導体ウエハが収容されているウエハキャリアを、複数の処理槽に各々貯留された液体に順次浸して、該半導体ウエハに形成された回路パターンの電極パッド上に、無電解メッキ法によりバンプを形成するためのメッキ処理装置であって、上記回路パターンが形成されている上記半導体ウエハの回路形成面が、水平方向よりも上方を向くように、上記ウエハキャリアを傾斜させた姿勢で保持するキャリア保持装置と、上記キャリア保持装置により保持されているウエハキャリアに対し、上記処理槽に貯留された液体からの該ウエハキャリアの浮上と、該処理槽に貯留された液体への該ウエハキャリアの沈降と、複数の該処理槽間での該ウエハキャリアの搬送と、を行う搬送アームと、を備え、上記キャリア保持装置は、上記回路形成面に垂直な鉛直面内における該回路形成面の傾斜角度が、鉛直方向に対して20°以上かつ40°以下となるように、上記ウエハキャリアを傾斜させた姿勢で保持するものである。
また、本発明に係るメッキ処理装置は、半導体ウエハが収容されているウエハキャリアを、複数の処理槽に各々貯留された液体に順次浸して、該半導体ウエハに形成された回路パターンの電極パッド上に、無電解メッキ法によりバンプを形成するためのメッキ処理装置であって、上記回路パターンが形成されている上記半導体ウエハの回路形成面が、水平方向よりも上方を向くように、上記ウエハキャリアを傾斜させた姿勢で保持するキャリア保持装置と、上記キャリア保持装置により保持されているウエハキャリアに対し、上記処理槽に貯留された液体からの該ウエハキャリアの浮上と、該処理槽に貯留された液体への該ウエハキャリアの沈降と、複数の該処理槽間での該ウエハキャリアの搬送と、を行う搬送アームと、を備え、上記搬送アームは、毎秒100ミリメートル以上かつ毎秒200ミリメートル以下の速度で、上記ウエハキャリアの、浮上および沈降の少なくとも一方を行うものである。
さらに、本発明に係るメッキ処理装置は、半導体ウエハが収容されているウエハキャリアを、複数の処理槽に各々貯留された液体に順次浸して、該半導体ウエハに形成された回路パターンの電極パッド上に、無電解メッキ法によりバンプを形成するためのメッキ処理装置であって、上記回路パターンが形成されている上記半導体ウエハの回路形成面が、水平方向よりも上方を向くように、上記ウエハキャリアを傾斜させた姿勢で保持するキャリア保持装置と、上記キャリア保持装置により保持されているウエハキャリアに対し、上記処理槽に貯留された液体からの該ウエハキャリアの浮上と、該処理槽に貯留された液体への該ウエハキャリアの沈降と、複数の該処理槽間での該ウエハキャリアの搬送と、を行う搬送アームと、を備え、上記搬送アームは、4秒以上かつ9秒以下の時間で、上記ウエハキャリアの搬送を行うものである。
従って、無電解メッキ法により形成された各パンプにおいて、丈を所望の高さに維持させること、丈を一定化させること、および、電極パッドとの密着性を向上させることができるという効果を奏する。
まずは、図1〜図5を参照して、無電解メッキ法によりバンプを形成するまでの各処理工程(無電解メッキ処理)について説明する。
図1に示す処理工程では、半導体ウエハ1の回路形成面20に、回路パターン3を形成する。なお、回路パターン3は、回路形成面20とは反対側の表面に、電極パッド2を有している。電極パッド2は、その表面が、厚さ0.5μm〜1.1μm程度のAl(アルミニウム)系合金により形成されている。回路形成面20に回路パターン3を形成するための具体的な処理工程については、特に限定されず、周知の半導体ウエハの製造プロセスが適用可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
図2に示す処理工程では、電極パッド2の表面を脱脂(脱脂処理)し、さらに、電極パッド2の表面のエッチング部分21を、約0.2μmエッチング(エッチング処理)する。脱脂処理は、例えば水酸化ナトリウムを約5重量%含んだ摂氏25度のアルカリ性脱脂剤に、半導体ウエハ1を約5分間浸して実施する。エッチング処理は、例えばリン酸を約10重量%含んだ摂氏25度のエッチング液に、半導体ウエハ1を約5分間浸して実施する、いわゆるディップ式のウェットエッチングである。
図3に示す処理工程では、電極パッド2の表面のエッチング部分21に、Zn(亜鉛)膜4を約0.1μm形成した後、一旦Zn膜4を剥離し、その後再び、エッチング部分21にZn膜4を約0.1μm形成(亜鉛置換処理、ジンケート処理)する。なお、Zn膜4の形成処理を2度実施する理由は、Zn膜4を複数回形成することで、より緻密なZn膜4を形成するためである。Zn膜4の形成処理はそれぞれ、例えば摂氏25度のジンケート液(亜鉛置換液)に、半導体ウエハ1を浸して実施する。Zn膜4の剥離処理は、例えば摂氏25度の硝酸に、半導体ウエハ1を浸して実施(硝酸処理)する。
図4に示す処理工程では、Zn膜4上を含む電極パッド2上に、無電解メッキ法により、丈2μm〜15μmのNiバンプ5を形成(第1無電解メッキ処理)する。なお、図3に示す処理工程において形成したZn膜4は、図4に示す処理工程の初期段階において、Niへと置換され、消失する。Niバンプ5の形成処理は、摂氏80〜90度のNi−P(リン)系メッキ液に、半導体ウエハ1を浸して実施する。
図5に示す処理工程では、Niバンプ5の周りに、無電解メッキ法により、厚さ0.05μm〜1.0μmのAu膜6を形成(第2無電解メッキ処理)する。Au膜6の形成処理は、摂氏80〜90度のAuメッキ液に、半導体ウエハ1を浸して実施する。
以上で、半導体ウエハ1に形成された回路パターン3の電極パッド2上に、無電解メッキ法により、Niバンプ5とAu膜6とからなるバンプを形成する、無電解メッキ処理は完了する。なお、以上の無電解メッキ処理は、特許文献2を参照としている。
なお、図2〜図5に示す全ての処理工程毎においては、半導体ウエハ1が純水に浸される、水洗処理が実施される。水洗処理は、各処理工程の終了を示すと共に、後の処理工程における、各処理に用いる薬液に対する薬液コンタミネーションの防止を目的に、実施している。
図6は、無電解メッキ処理を実施するための、メッキ処理装置の概略構成を示す断面図である。
図6に示す無電解メッキ装置(メッキ処理処置)60は、筐体7、複数の処理槽8、角度可変チャック(キャリア保持装置)9、および搬送アーム10を備える構成である。
筐体7は、内部に、複数の処理槽8、角度可変チャック9、および、搬送アーム10が収容されている、無電解メッキ装置60の筐体である。
複数の処理槽8は、脱脂剤が貯留された脱脂処理槽8a、純水が貯留された水洗処理槽(第1水洗処理槽)8b、エッチング液が貯留されたエッチング処理槽8c、純水が貯留された水洗処理槽(第2水洗処理槽)8d、ジンケート液が貯留されたジンケート処理槽(第1亜鉛置換処理槽)8e、純水が貯留された水洗処理槽(第3水洗処理槽)8f、硝酸が貯留された硝酸処理槽8g、純水が貯留された水洗処理槽(第4水洗処理槽)8h、ジンケート液が貯留されたジンケート処理槽(第2亜鉛置換処理槽)8i、純水が貯留された水洗処理槽(第5水洗処理槽)8j、Ni−P系メッキ液が貯留されたNiメッキ処理槽(第1無電解メッキ処理槽)8k、純水が貯留された水洗処理槽(第6水洗処理槽)8l、金メッキ液が貯留されたAuメッキ槽(第2無電解メッキ処理槽)8m、および、純水が貯留された水洗処理槽(第7水洗処理槽)8nが、この順序で、かつ、各々が略等間隔(例えば、1000mm)で配置されている。複数の処理槽8(各処理槽8a〜8n)はいずれも、後述するウエハキャリア11が全て入る程度の容積を有する容器である。
図2〜図5に示す無電解メッキ処理は、図1に示す処理工程にて得られた、電極パッド2を有する回路パターン3が形成された半導体ウエハ1を、脱脂処理槽8aに貯留された脱脂剤に浸して上記脱脂処理(図2に示す処理工程参照)を行い、水洗処理槽8bに貯留された純水に浸して上記水洗処理を行い、エッチング処理槽8cに貯留されたエッチング液に浸して上記エッチング処理(図2に示す処理工程参照)を行い、水洗処理槽8dに貯留された純水に浸して上記水洗処理を行い、ジンケート処理槽8eに貯留されたジンケート液に浸して最初のZn膜4の形成処理(図3に示す処理工程参照)を行い、水洗処理槽8fに貯留された純水に浸して上記水洗処理を行い、硝酸処理槽8gに貯留された硝酸に浸してZn膜4の剥離処理(図3に示す処理工程参照)を行い、水洗処理槽8hに貯留された純水に浸して上記水洗処理を行い、ジンケート処理槽8iに貯留されたジンケート液に浸して再度Zn膜4の形成処理(図3に示す処理工程参照)を行い、水洗処理槽8jに貯留された純水に浸して上記水洗処理を行い、Niメッキ処理槽8kに貯留されたNi−P系メッキ液に浸してNiバンプ5の形成処理(図4に示す処理工程参照)を行い、水洗処理槽8lに貯留された純水に浸して上記水洗処理を行い、Auメッキ槽8mに貯留されたAuメッキ液に浸してAu膜6の形成処理(図5に示す処理工程参照)を行い、水洗処理槽8nに貯留された純水に浸して上記水洗処理を行うことで、実施することができる。但し、厳密には、半導体ウエハ1はウエハキャリア11に収容されており、このウエハキャリア11を、複数の処理槽8(各処理槽8a〜8n)に、上記の順序で順次浸して、無電解メッキ処理を実施する。
角度可変チャック9は、ウエハキャリア11を挟み込む(把持する)ことで、ウエハキャリア11の保持が可能なものである。また、角度可変チャック9は、傾斜機構61(図14参照)により、鉛直方向に対する傾斜角度(以下、「角度可変チャック9の傾斜角度」と称する)が、ウエハキャリア11の保持とは無関係に自在に変更されるものである。つまり、角度可変チャック9の傾斜角度が変更されると、これに追随して、該角度可変チャック9に保持されているウエハキャリア11は、鉛直方向に対する傾斜角度(以下、「ウエハキャリア11の傾斜角度」と称する)が、角度可変チャック9と同じだけ変更されることとなる。
搬送アーム10は、角度可変チャック9に連結されており、昇降機構62(図14参照)により、鉛直方向の位置が、水平移動機構63(図14参照)により、水平方向の位置が、それぞれ自在に変更されるものである。換言すれば、搬送アーム10は、昇降機構62により上昇および下降されると共に、水平移動機構63により水平移動されるものである。搬送アーム10の鉛直方向および/または水平方向の位置が変更されると、これに追随して、搬送アーム10に連結されている角度可変チャック9、さらには、該角度可変チャック9に保持されているウエハキャリア11は、鉛直方向および/または水平方向の位置が、搬送アーム10と同じだけ変更されることとなる。つまり、搬送アーム10は、上述した角度可変チャック9の傾斜角度とは無関係に、該角度可変チャック9を、上昇、下降、および水平移動させるものである。
ここで、角度可変チャック9および搬送アーム10を制御するための、制御系の構成を、図14を参照して説明する。
図14は、上記制御系の構成を示すブロック図である。図14に示す制御系は、角度可変チャック9および搬送アーム10の動作を制御するためのシステムであり、傾斜機構61、昇降機構62、水平移動機構63、チャック動作制御部64、アーム動作制御部65、および、CPU(Central Processing Unit)70により構成されている。チャック動作制御部64はさらに、傾斜制御部64aおよび保持制御部64bを有している。アーム動作制御部65はさらに、昇降制御部65aおよび水平移動制御部65bを有している。
CPU70は、RAM(Random Access Memory)等の記憶素子に記憶されたプログラムを実行することにより、無電解メッキ装置60(図6参照)の統括的な制御を行うものである。具体的に、CPU70は、上記プログラムに従い、無電解メッキ装置60による無電解メッキ処理の進捗状況に応じて、角度可変チャック9の傾斜角度を示す傾斜情報、および、角度可変チャック9に対してウエハキャリア11の保持が可能な姿勢にするか否かを示す保持可否情報を、チャック動作制御部64に送信する。また、CPU70は、上記プログラムに従い、無電解メッキ装置60による無電解メッキ処理の進捗状況に応じて、搬送アーム10の鉛直方向の位置を示す鉛直位置情報、および、搬送アーム10の水平方向の位置を示す水平位置情報を、アーム動作制御部65に送信する。保持可否情報にはさらに、角度可変チャック9がウエハキャリア11を保持する強度を示す情報がさらに含まれていてもよい。
傾斜制御部64aは、CPU70からの傾斜情報に基づいて、傾斜機構61による角度可変チャック9の傾斜角度の変更を制御する。ここで、傾斜機構61は、例えば、角度可変チャック9と搬送アーム10との連結部分に形成されており、かつ、回転方向および回転度合に応じて角度可変チャック9に所定の傾斜角度を与えるローラー状の機構(図6の角度可変チャック9が有している円形の部材)であり、この場合、傾斜制御部64aは、傾斜情報に基づいて、傾斜機構61の回転方向および回転度合を制御する。そして、傾斜制御部64aにより、所望の回転方向および回転度合に設定された傾斜機構61は、角度可変チャック9に対して、所望の傾斜角度を与えることとなる。
保持制御部64bは、CPU70からの保持可否情報に基づいて、角度可変チャック9を、ウエハキャリア11の保持が可能な姿勢、または、ウエハキャリア11の保持が不可能な姿勢とする。また、保持制御部64bは、CPU70からの保持可否情報に基づいて、角度可変チャック9がウエハキャリア11を保持する強度を制御してもよい。
昇降制御部65aは、CPU70からの鉛直位置情報に基づいて、昇降機構62による搬送アーム10の鉛直方向の位置変更(上昇および下降)を制御する。ここで、図示しないが、昇降機構62は、例えば、搬送アーム10と一体化された、昇降機構62自身の上昇および下降が自在な柱状の機構であり、この場合、昇降制御部65aは、鉛直位置情報に基づいて、昇降機構62の上昇度合および下降度合を制御する。そして、昇降制御部65aにより、所望の鉛直位置にまで上昇または下降された昇降機構62は、搬送アーム10に対して、所望の鉛直方向の位置を与えることとなる。また、昇降機構62は他にも、搬送アーム10と一体化された、昇降機構62自身の鉛直方向への伸縮が自在な機構である場合も考えられ、この場合、昇降制御部65aは、鉛直位置情報に基づいて、昇降機構62の伸縮度合を制御する。そして、昇降制御部65aにより、所望の伸縮度合に設定された昇降機構62は、搬送アーム10に対して、所望の鉛直方向の位置を与えることとなる。
水平移動制御部65bは、CPU70からの水平位置情報に基づいて、水平移動機構63による搬送アーム10の水平方向の位置変更(水平移動)を制御する。ここで、図示しないが、水平移動機構63は、例えば、搬送アーム10と一体化された、無電解メッキ装置60の天井(筐体7内部の上面)に取り付けられたレールに沿って水平方向に自在に移動できる機構であり、この場合、水平移動制御部65bは、水平位置情報に基づいて、水平移動機構63の水平方向の位置を制御する。そして、水平移動制御部65bにより、所望の水平方向の位置に設定された水平移動機構63は、搬送アーム10に対して、所望の水平方向の位置を与えることとなる。
ここからは、図1に示す処理工程にて得られた、電極パッド2を有する回路パターン3が形成された半導体ウエハ1を、図2〜図5に示す無電解メッキ処理において、複数の処理槽8に順次浸していく場合の、角度可変チャック9および搬送アーム10を用いた、複数の処理槽8間でのウエハキャリア11の搬送要領について、図7〜図12を参照して説明する。
上記搬送要領の説明の前に、ウエハキャリア11は、例えば、電極パッド2を有する回路パターン3が形成された半導体ウエハ1であって、直径6インチの半導体ウエハ1、直径8インチの半導体ウエハ1、および、直径12インチの半導体ウエハ1を、それぞれ最大25枚ずつ収容可能なものである。ウエハキャリア11に収容された各半導体ウエハ1は全て、回路形成面20(図1参照)が略同一の方向を向いているものとする。
なお、本実施の形態では、ウエハキャリア11を、脱脂処理槽8aから水洗処理槽8bへと搬送する場合の要領を例に説明を行うが、上記搬送要領はこの例に限定されない。つまり、以下に示す搬送要領は、図1に示す処理工程にて得られた、電極パッド2を有する回路パターン3が形成された半導体ウエハ1を、図2〜図5に示す無電解メッキ処理において、複数の処理槽8に順次浸していく場合の、角度可変チャック9および搬送アーム10を用いた、任意の複数の処理槽8間でのウエハキャリア11の搬送に関して、同様に適用可能である。
まず、図7に示す要領では、脱脂処理槽8a内の脱脂液にウエハキャリア11を浸して、上記脱脂処理を行った後、搬送アーム10を下降させて、角度可変チャック9を脱脂処理槽8a内部に沈降させる。また、図7に示す要領では、脱脂処理槽8a内部に沈降された角度可変チャック9により、ウエハキャリア11を挟み込むことで、ウエハキャリア11を保持する。なお、このとき、角度可変チャック9により保持されたウエハキャリア11は、収容された各半導体ウエハ1の回路形成面20が水平方向Xを向いている。そして、回路形成面20が水平方向Xを向いている場合、回路形成面20に垂直な鉛直面内における回路形成面20の傾斜角度は、鉛直方向Yに対して0°である。なおここで、回路形成面20に垂直な鉛直面は、水平方向Xおよび鉛直方向Yに伸びる鉛直面であり、図7〜図12に示す断面図において、紙面と平行な面となる。
続いて、図8に示す要領では、ウエハキャリア11を保持している角度可変チャック9を、図7に示す姿勢に対して、所定の角度だけθ傾斜させる。これにより、角度可変チャック9の傾斜に追随して、該角度可変チャック9に保持されているウエハキャリア11は、角度可変チャック9と同様に、図7に示す姿勢に対して、角度だけθ傾斜される。なお、具体的に、角度θとは、上記鉛直面内において、鉛直方向Y(直線80参照)に対する、回路形成面20に平行な方向(直線81参照)の角度である。ここで、注意すべき点として、角度可変チャック9は、傾斜された後に、各半導体ウエハ1の回路形成面20が、水平方向Xよりも角度θ上方を向く(矢印Xt参照)ように傾斜される点である。
続いて、図9に示す要領では、図8に示す要領に係る角度可変チャック9およびウエハキャリア11の傾斜姿勢を維持したまま、搬送アーム10を、上昇距離luだけ上昇させる。これにより、搬送アーム10の上昇に追随して、角度可変チャック9およびウエハキャリア11は、搬送アーム10と同様に、上昇距離luだけ上昇される。ウエハキャリア11は、上昇距離lu上昇されることにより、脱脂処理槽8aに貯留された脱脂液から浮上されて、脱脂処理槽8aの上方に引き上げられる。
続いて、図10に示す要領では、依然図8に示す要領に係る角度可変チャック9およびウエハキャリア11の傾斜姿勢を維持したまま、搬送アーム10を、搬送距離lcだけ水平移動させる。これにより、搬送アーム10の水平移動に追随して、角度可変チャック9およびウエハキャリア11は、搬送アーム10と同様に、搬送距離lcだけ水平移動される。ウエハキャリア11は、搬送距離lc搬送されることにより、脱脂処理槽8aの上方から水洗処理槽8bの上方へと搬送される。
続いて、図11に示す要領では、依然図8に示す要領に係る角度可変チャック9およびウエハキャリア11の傾斜姿勢を維持したまま、搬送アーム10を下降させて、角度可変チャック9およびウエハキャリア11を水洗処理槽8b内部に沈降させる。なお、図示はしないが、このとき、ウエハキャリア11が下降される距離は、図9に示す要領に係る上昇距離luと概ね等しい距離であるのは言うまでも無い。
続いて、図12に示す要領では、水洗処理槽8b内部に沈降された角度可変チャック9に対し、図8に示す要領に係る傾斜姿勢を解除する。すなわち、図12に示す要領では、角度可変チャック9により保持されたウエハキャリア11に収容された各半導体ウエハ1の回路形成面20が水平方向Xを向き、上記鉛直面内における回路形成面20の傾斜角度が鉛直方向Yに対して0°となるように、角度可変チャック9を、図8に示す姿勢に対して、所定の角度θだけ傾斜させる。なお、図8に示す要領と図12に示す要領とでは、当然ながら、角度θ傾斜させる方向が互いに逆方向である。その後、水洗処理槽8bでの、上記水洗処理を行う。
図7〜図12に示す各要領を順次行い、ウエハキャリア11を角度θ傾斜させたまま、複数の処理槽8間を搬送することによって、半導体ウエハ1の回路パターン3の電極パッド上に形成された各バンプ(Niバンプ5およびAu膜6)の丈を均一かつ所望の高さに維持させることが可能となり、さらに、該バンプと電極パッド2との密着性の向上を図ることが実現可能となる。
図13は、無電解メッキ装置60を用いてバンプを形成した実験結果を示す表であり、ウエハキャリア傾斜角θ(上述した所定の角度θ)、ウエハキャリア昇降条件、ウエハキャリア搬送条件、および、バンプ性能の関係を示す表である。
図13に示す表において、ウエハキャリア昇降条件とは、上述した上昇距離luを示す距離lu(単位:mm)、距離luの上昇に要する時間(単位:sec)、および、距離lu上昇させる速度(単位:mm/sec)をそれぞれ規定したものである。なお、本実施の形態では、ウエハキャリア昇降条件における各初期条件として、距離luが400mm、距離luの上昇に要する時間が3.0sec、および、距離lu上昇させる速度が133mm/sec、という条件が設定されている。
図13に示す表において、ウエハキャリア搬送条件とは、上述した搬送距離lcを示す距離lc(単位:mm)、距離lcの搬送に要する時間(単位:sec)、および、距離lc搬送させる速度(単位:mm/sec)をそれぞれ規定したものである。なお、本実施の形態では、ウエハキャリア搬送条件における各初期条件として、距離lcが1000mm、距離lcの搬送に要する時間が6.5sec、および、距離lc搬送させる速度が154mm/sec、という条件が設定されている。
図13に示す表において、バンプ性能とは、回路パターン3に形成された各バンプの丈の均一性を示す指標であるバンプ面内均一性、および、バンプと電極パッド2との密着性低下の有無を示す指標であるバンプ強度弱発生をそれぞれ規定したものである。
バンプ面内均一性は、回路パターン3に形成された各バンプの丈に関して、下記数式(1)に示す基準を設け、この基準内である場合に良(○)、この基準外である場合に否(×)と判断している。ここで、下記数式(1)における、パラメータ「MAX」は、各バンプのうち最も高いバンプの丈であり、パラメータ「MIN」は、各バンプのうち最も低いバンプの丈である。
−20≦(MAX−MIN)/(MAX+MIN)×100≦20 ・・・(1)
バンプ強度弱発生は、単位面積当りのシェア強度が、0.003g/μm2未満であるバンプが、存在しない場合に良(無し)、存在する場合に否(有り)と判断している。
図13に示す表において、ウエハキャリアに収容される半導体ウエハとしては、直径8インチの半導体ウエハであり、実装された回路パターンの個数が1000個の半導体ウエハを使用した。
まず、ウエハキャリア昇降条件およびウエハキャリア搬送条件を全て上記の各初期条件とし、ウエハキャリア傾斜角θを0°〜90°の間で適宜変化させた(図13に示す表の1〜6行目参照)場合について説明する。この場合は、ウエハキャリア傾斜角θが20°〜40°である(図13に示す表の2〜4行目参照)ときに、バンプ面内均一性が良(○)、バンプ強度弱発生が良(無し)という結果が得られた。つまり、ウエハキャリア傾斜角θ、すなわち、上述したウエハキャリア11の所定の傾斜角度θ(図8参照)は、20°以上かつ40°以下とするのが適切である。
なお、ウエハキャリア傾斜角θを20°未満とした場合に、バンプ面内均一性が否(×)、バンプ強度弱発生が否(有り)となる理由としては、以下の理由が推測される。すなわち、この場合は、或る処理槽8(各処理槽8a〜8nのいずれか)での処理後に、ウエハキャリア11を搬送するときの、単位時間に対する、半導体ウエハ1に付着した液体の流下度合が、非常に大きくなる。このとき、半導体ウエハ1に付着した液体は、短時間で流下して、表面から消失する。そしてこれにより、半導体ウエハ1の表面が酸化し、半導体ウエハ1の回路パターン3の電極パッド2が大気に触れて乾燥する現象を引き起こす要因となる。
また、ウエハキャリア傾斜角θが40°を超えた場合に、バンプ面内均一性が否(×)、バンプ強度弱発生が否(有り)となる理由としては、以下の理由が推測される。すなわち、この場合は、或る処理槽8での処理後に、ウエハキャリア11を搬送するときの、単位時間に対する、半導体ウエハ1に付着した液体の流下度合が、非常に小さくなる。このとき、半導体ウエハ1に付着した液体は、その残留量が非常に多くなり、これに伴い、搬送中において半導体ウエハ1上では種々の化学反応が不要に促進され、この結果、形成された各パンプの丈にばらつきが発生する虞がある。
次に、ウエハキャリア傾斜角θを30°とし、ウエハキャリア搬送条件を全て上記の各初期条件とし、ウエハキャリア昇降条件のうち、距離luを上記の初期条件とした上で、ウエハキャリア昇降条件のうち、距離lu上昇させる速度を80mm/sec〜400mm/secの間で適宜変化させた(図13に示す表の7〜10行目参照)場合について説明する。なお、この場合は、該速度の変更に対応して、距離luの上昇に要する時間も、図13の表に示すとおり、5sec〜1secの間で変化されることとなる。この場合は、距離lu上昇させる速度が100mm/sec〜200mm/secである(図13に示す表の8・9行目参照)ときに、バンプ面内均一性が良(○)、バンプ強度弱発生が良(無し)という結果が得られた。距離lu上昇させる速度が100mm/sec〜200mm/secである場合、距離luの上昇に要する時間は、4sec〜2secである。つまり、上昇距離lu(図9参照)の上昇に要する時間、さらには、上昇距離luに概ね等しい、ウエハキャリア11が下降される距離(図11に係る説明参照)の下降に要する時間は、100mm/sec以上200mm/sec以下とするのが適切である。
距離lu上昇および/または下降させる速度を、100mm/sec未満とした場合に、バンプ面内均一性が否(×)、バンプ強度弱発生が否(有り)となる理由としては、以下の理由が推測される。すなわち、この場合は、ウエハキャリア11の搬送時間が長時間化し、これに伴い、半導体ウエハ1表面に付着した液体の流下量が増大し、半導体ウエハ1表面から消失する。このことは、半導体ウエハ1の表面が酸化し、半導体ウエハ1の回路パターン3の電極パッド2が大気に触れて乾燥する現象を引き起こす要因となる。
距離lu上昇および/または下降させる速度が、200mm/secを超えた場合に、バンプ面内均一性が否(×)、バンプ強度弱発生が否(有り)となる理由としては、以下の理由が推測される。すなわち、この場合は、半導体ウエハ1表面に付着した液体の流下が、液体と空気との摩擦に起因して(液体が振り切られることで)促進されることとなるため、半導体ウエハ1表面に付着した液体の流下量が増大し、半導体ウエハ1表面から消失する。このことは、半導体ウエハ1の表面が酸化し、半導体ウエハ1の回路パターン3の電極パッド2が大気に触れて乾燥する現象を引き起こす要因となる。
最後に、ウエハキャリア傾斜角θを30°とし、ウエハキャリア昇降条件を全て上記の各初期条件とし、ウエハキャリア搬送条件のうち、距離lcを上記の初期条件とした上で、ウエハキャリア搬送条件のうち、距離lcの搬送に要する時間を3sec〜12secの間で、適宜変化させた(図13に示す表の11〜14行目参照)場合について説明する。なお、この場合は、該時間の変更に対応して、距離lc搬送させる速度も、図13の表に示すとおり、333mm/sec〜83mm/secの間で変化されることとなる。この場合は、距離lcの搬送に要する時間が4sec〜9secである(図13に示す表の12・13行目参照)ときに、バンプ面内均一性が良(○)、バンプ強度弱発生が良(無し)という結果が得られた。距離lcの搬送に要する時間が4sec〜9secである場合、距離lc搬送させる速度は、250mm/sec〜111mm/secである。つまり、搬送距離lcの搬送に要する時間(図10参照)は、4sec以上9sec以下とするのが適切である。
搬送距離lcの搬送に要する時間を、4sec未満とした場合に、バンプ面内均一性が否(×)、バンプ強度弱発生が否(有り)となる理由としては、以下の理由が推測される。すなわち、この場合は、距離lc搬送させる速度の過度の高速化が予想される。該速度が過度に高速化した場合には、半導体ウエハ1に付着した液体の流下が、液体と空気との摩擦に起因して(液体が振り切られることで)促進されることとなるため、該液体は半導体ウエハ1の表面から消失する。このことは、半導体ウエハ1の表面が酸化し、半導体ウエハ1の回路パターン3の電極パッド2が大気に触れて乾燥する現象を引き起こす要因となる。
一方、搬送距離lcの搬送に要する時間が、9secを超えた場合には、或る処理槽8での処理後に、搬送距離lcの搬送に要する時間が長時間化し、これに伴い、半導体ウエハ1表面に付着した液体の流下量が増大し、該液体は半導体ウエハ1の表面から消失する。このことは、半導体ウエハ1の表面が酸化し、半導体ウエハ1の回路パターン3の電極パッド2が大気に触れて乾燥する現象を引き起こす要因となる。
半導体ウエハ1表面に付着した液体は、半導体ウエハ1を或る処理槽8から引き上げたときに、表面張力と重力との関係で、半導体ウエハ1の外周部分から中心部分へと向かって、徐々に流下するため、半導体ウエハ1の表面の乾燥は、半導体ウエハ1の外周部分に発生しやすい。つまり、半導体ウエハ1の表面の乾燥を防止し、回路パターン3の電極パッド2の乾燥を防止するためには、半導体ウエハ1が収容されたウエハキャリア11の搬送中において、半導体ウエハ1の表面全体に、付着した液体を残しておく必要がある。以上で説明した、実験結果に鑑みて、適切な、ウエハキャリア傾斜角θ、ウエハキャリア昇降条件、およびウエハキャリア搬送条件を、いずれか1つ、または、任意に組み合わせて適用することにより、無電解メッキ装置60は、バンプ面内均一性が確保され、かつ、バンプ強度弱発生が無い、バンプを形成することができる、ということが分かった。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。