JP5294927B2 - 炭化水素油の脱硫方法及び燃料電池システム - Google Patents

炭化水素油の脱硫方法及び燃料電池システム Download PDF

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Description

本発明は、炭化水素油の脱硫方法及び燃料電池システムに関し、特には、ゼオライト系吸着剤による前処理を行う、固体酸系脱硫剤を用いた炭化水素油の脱硫方法、更には、該方法で炭化水素油を脱硫する脱硫手段を具える燃料電池システムに関するものである。
家庭用などの定置式燃料電池で使用する一般灯油などの炭化水素油の脱硫法として、主にニッケル系脱硫剤を200℃前後で使用する化学吸着脱硫法が検討されている。しかしながら、該化学吸着脱硫法は、加熱のためにエネルギーを消費すること、起動に時間を要すること、炭化水素油の気化を防止するために加圧条件で行う必要があること、発生するガス対策のために脱硫後に気液分離を行う必要があること、更には、それらのためにシステムが複雑になることなどの問題点があった。また、銅を添加したニッケル系脱硫剤は、150℃程度のより低温でもある程度の活性を有するが、上記問題を解決するまでには至っていない。更に、ニッケル系脱硫剤は予め還元処理を施す必要があるが、還元処理を施したニッケル系脱硫剤は酸素と接触することにより急激な発熱反応を起こして活性が低下することから、保管や停止方法にも課題がある。また更に、ニッケル化合物は毒性を有することから、ニッケル系脱硫剤を用いた燃料電池システムが一般家庭に普及した場合には、管理方法を厳格にする必要もあるという課題がある(特許文献1〜4参照)。
また、製油所においては、120℃前後の比較的低温で、メルカプタン類などの硫黄化合物を含むナフサ留分を脱硫するのに酸化銅系脱硫剤が使用されているが、主にベンゾチオフェン類やジベンゾチオフェン類を含む灯油や軽油などの脱硫に十分な性能を有する酸化銅系脱硫剤は存在しなかった(特許文献5参照)。
一方、炭化水素油の脱硫法としては、ゼオライトや活性炭等を常温付近で使用する物理吸着脱硫法も検討されている。しかしながら、灯油などの炭化水素油は硫黄化合物と競争吸着となる芳香族化合物を含み、特にベンゾチオフェン類の除去について高い性能を有する物理吸着剤が存在せず、所望の硫黄含有量まで低減するには非常に多くの体積の吸着剤を必要とするため実用的ではなかった(特許文献6及び7参照)。
これに対して、本発明者らは、固体酸及び/又は遷移金属酸化物が担持された活性炭、並びに銅成分及び銀成分を含有する炭化水素油用脱硫剤を提案している。しかしながら、従来の固体酸は比表面積が小さいために硫黄化合物の吸着量が少なく、また、遷移金属酸化物が担持された活性炭は硫黄濃度が低い場合には吸着量が少なく、また、銅成分及び銀成分を含有する炭化水素油用脱硫剤はジベンゾチオフェン類の吸着量が少なく、いずれも十分な脱硫性能を有していなかった(特許文献8〜10参照)。
特公平6−65602号公報 特公平7−115842号公報 特開平6−315628号公報 特開平6−228570号公報 特開2000−42407号公報 特開2003−49172号公報 特開2005−2317号公報 国際公開第2005/073348号パンフレット 国際公開第2007/015391号パンフレット 国際公開第2007/020800号パンフレット
そこで、本発明は、還元処理や水素を必要とせず、また、常温から100℃程度までの温度で、炭化水素油、好ましくは燃料電池で使用する水素を発生させるための原燃料となる炭化水素油、特には灯油や軽油を効率的に脱硫できる脱硫方法、更には、該方法で炭化水素油を脱硫する脱硫手段を具える燃料電池システムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、炭化水素油を、ゼオライト系吸着剤と接触させた後に、次いで、固体酸系脱硫剤、好ましくは酸化アルミニウム(アルミナ)を主成分として含有し、特定の硫黄含有量、特定の物性を有する固体酸を含有する脱硫剤を用いて脱硫することで、灯油や軽油などの炭化水素油も、非水素雰囲気かつ低い温度条件下で効率よく脱硫できることを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明の炭化水素油の脱硫方法及び燃料電池システムは、以下のとおりである。
〔1〕固体酸系脱硫剤を用いて、ベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類からなる群から選択される少なくとも一種の硫黄化合物を含有する炭化水素油の硫黄分を低減する炭化水素油の脱硫方法であって、
前記固体酸系脱硫剤が、酸化アルミニウムを20〜99.9質量%および硫黄を0.10〜3.00質量%含有し、比表面積が150m 2 /g以上、ならびに細孔容積が0.35ml/g以上であり、かつピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm -1 )のピーク高さI 1450 に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm -1 )のピーク高さI 1540 の比(I 1540 /I 1450 )が0.12以下であるルイス酸系脱硫剤であり、
前記炭化水素油を、ゼオライト系吸着剤と接触させ、次いで、前記固体酸系脱硫剤と接触させることを特徴とする炭化水素油の脱硫方法。
〕前記酸化アルミニウムがγ−アルミナであることを特徴とする上記〔〕に記載の炭化水素油の脱硫方法。
〕前記ゼオライト系吸着剤が、A型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5、モルデナイト、L型ゼオライト、βゼオライト及びフォージャサイト型ゼオライトよりなる群から選ばれることを特徴とする上記〔1〕に記載の炭化水素油の脱硫方法。
〕前記ゼオライト系吸着剤の陽イオンが、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンよりなる群から選ばれることを特徴とする上記〔〕に記載の炭化水素油の脱硫方法。
〕前記ルイス酸系脱硫剤による脱硫方法の前処理として、活性炭系脱硫剤、またはピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm-1)のピーク高さI1450に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm-1)のピーク高さI1540の比(I1540/I1450)が0.12を超えるブレンステッド酸系脱硫剤のいずれか1つ、または両方を用いて、予め脱硫することを特徴とする上記〔〕に記載の炭化水素油の脱硫方法。
〕前記ルイス酸系脱硫剤による脱硫方法の前処理として、前記活性炭系脱硫剤を用いて、予め脱硫し、次いで、前記ゼオライト系吸着剤と接触させ、さらにその後に、前記ブレンステッド酸系脱硫剤を用いて脱硫し、最後に前記ルイス酸系脱硫剤を用いて脱硫することを特徴とする上記〔〕に記載の炭化水素油の脱硫方法。
〕100℃以下の温度で前記脱硫剤と前記炭化水素油とを接触させることを特徴とする上記〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
〕前記炭化水素油が、灯油又は軽油であり、硫黄分が0.1〜10質量ppmであることを特徴とする上記〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
〕上記〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の方法により炭化水素油を脱硫する脱硫手段と、燃料電池とを具え、
前記脱硫手段で脱硫した炭化水素油を前記燃料電池の原燃料として使用することを特徴とする燃料電池システム。
本発明の炭化水素油の脱硫方法によれば、灯油や軽油などの炭化水素油を、常温から100℃程度までの低い温度で、液相状態で接触、脱硫することができ、しかも還元処理や水素添加を必要としないので、効率よく経済的に炭化水素油を脱硫できる。また、炭化水素油中の水分やアルコールなどの含酸素化合物をゼオライト系吸着剤で除去し、その後に固体酸系脱硫剤に接触させることで、水分やアルコールなどの含酸素化合物が硫黄化合物の吸着を阻害する作用が減少するため、固体酸系脱硫剤の吸着性能が充分に発揮される。そのため、従来よりもコンパクトな設備で、かつ、より低廉なコストで炭化水素油から硫黄を除去することが可能である。さらに、燃料電池の原燃料である灯油などの脱硫に用いることで、燃料電池の起動やメンテナンスが比較的容易となり、また燃料電池のシステムを簡略化できるという利点もある。
実施例1及び比較例の出口硫黄分の経時変化を示すグラフである。 実施例2の出口硫黄分の経時変化を示すグラフである。
〔固体酸〕
本発明の炭化水素油の脱硫方法は、固体酸系脱硫剤を用いて、炭化水素油の硫黄分を低減する。ここで、本発明の炭化水素油の脱硫方法に用いる固体酸系脱硫剤は、固体酸からなる或いは該固体酸を含む脱硫剤である。固体酸系脱硫剤に用いられる固体酸は、好ましくは酸化アルミニウム(いわゆるアルミナ)を20〜99.9質量%、硫黄を0.10〜3.00質量%含有し、比表面積が好ましくは150m2/g以上であり、細孔容積が好ましくは0.35ml/g以上であり、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm-1)のピーク高さI1450に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm-1)のピーク高さI1540の比(I1540/I1450)が好ましくは0.12以下である。また、該固体酸は、250℃から700℃までの質量減少率(A)に対する250℃から1000℃までの質量減少率(B)の比(B/A)が1.3以上のものであることが好ましい。
上記の固体酸は、炭化水素油中の硫黄化合物の吸着除去に好適に使用できる。例えば、灯油や軽油等の炭化水素油中に含まれる硫黄化合物を、常温から100℃程度までの温度で吸着除去する脱硫剤として好適である。
上記固体酸としては、硫酸根が担持されたかたちで硫黄を含有するアルミナ(硫酸根アルミナと言うことがある)が好ましく、該硫酸根アルミナは優れた脱硫性能を示す。該硫酸根アルミナは、硫黄の含有量が0.10〜3.00質量%であることが好ましく、この範囲で、脱硫性能を非常によく発揮する。
上記固体酸は、比表面積が好ましくは150m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上、より一層好ましくは250m2/g以上であり、細孔容積が好ましくは0.35ml/g以上、より好ましくは0.4ml/g以上、より一層好ましくは0.5ml/g以上である。該固体酸の比表面積が150m2/g以上、細孔容積が0.35ml/g以上の場合に、十分な脱硫性能が得られる。
さらに、上記固体酸は、ピリジン吸着フェーリエ変換赤外線分光分析(FT−IR)による、ルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm-1)のピーク高さI1450に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm-1)のピーク高さI1540の比、すなわちI1540/I1450が好ましくは0.12以下であり、より好ましくは0.01以下である。弱い酸点であるブレンステッド酸点は、チオフェン類やベンゾチオフェン類から重質硫黄化合物を生成する反応における触媒作用には重要な役割を果たすが、ジベンゾチオフェン類の吸着除去にはほとんど貢献しない。一方、強い酸点であるルイス酸点は、ベンゼン環とのπ電子相互作用によりジベンゾチオフェン類に対する高い物理吸着性能を有するので、チオフェン類やベンゾチオフェン類よりもジベンゾチオフェン類を除去する場合は、ブレンステッド酸点の残存量が少ない方が好ましい。このため、ジベンゾチオフェン類を含む灯油などの炭化水素油を脱硫するには、ピーク高さ比(I1540/I1450)が0.12以下の固体酸を使用することが好ましい。
また、上記固体酸は、250℃から700℃までの質量減少率(A)に対する、250℃から1000℃までの質量減少率(B)の比(B/A)が好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上である。比(B/A)が1.3以上のときに、十分な脱硫性能が得られる。この理由は必ずしも明らかでないが、比(B/A)が大きいことは高温でしか脱離しない安定な硫酸根が多く存在することを示し、比(B/A)が小さいと不安定な硫酸根の残存量が多くなるためであると考えられる。
上記固体酸において、酸化アルミニウム(アルミナ)は、スピネル構造又はスピネル類似構造のγ−アルミナであることが好ましい。酸化アルミニウムとしてγ−アルミナを用いることにより、硫酸根が安定的に担持され、良好な固体酸性が発現する。その結果、脱硫剤に用いたときに優れた脱硫性能を示す。
〔固体酸系脱硫剤〕
上述した固体酸は、そのまま本発明の脱硫方法における脱硫剤として用いることができるが、固体酸に、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの他の無機微粒子や活性炭などを混合して、粘土やピッチなどのバインダーを加えて成形および焼成し、脱硫剤が吸着し難い硫黄化合物の吸着性能を向上させたり、メソ孔及びマクロ孔の存在量を増やしたりして、硫黄化合物の拡散速度を向上させてもよい。また、酸化金属を担持したり混合したりするなどして、金属と複合化することにより、吸着性能を向上させてもよい。金属としては、ルイス酸性を向上させるために、特にガリウムを担持することが好ましい。
この固体酸を含む脱硫剤は、上述した固体酸の物性を保持するよう、すなわち、硫黄分を0.10〜3.00質量%含有し、比表面積が150m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上、より一層好ましくは250m2/g以上であり、細孔容積が0.35ml/g以上、より好ましくは0.4ml/g以上、より一層好ましくは0.5ml/g以上であり、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm-1)のピーク高さI1450に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm-1)のピーク高さI1540の比(I1540/I1450)が0.12以下、より好ましくは0.01以下となるように調製する。なお、本発明においては、比(I1540/I1450)が0.12以下となる固体酸系脱硫剤をルイス酸系脱硫剤と称し、比(I1540/I1450)が0.12を超える固体酸系脱硫剤をブレンステッド酸系脱硫剤と称する。
また、上記固体酸を含む脱硫剤は、同様に、250℃から700℃までの質量減少率(A)に対する250℃から1000℃までの質量減少率(B)の比(B/A)が1.3以上になるように調製することが好ましい。
上記のようにして得た固体酸系脱硫剤は、長期間放置し、大気に触れて吸湿すると脱硫性能、特にジベンゾチオフェン類の脱硫性能が低下する。このような場合は、空気雰囲気下、好ましくは空気気流下において、好ましくは200℃以上、より好ましくは300℃以上、特に好ましくは500℃以上の高温で加熱処理した後に使用する。この前処理(乾燥処理)を行うことで、脱硫性能が高くなる。なお、500℃以上の高温で前処理することにより脱硫性能が高くなる原因は必ずしも明確ではないが、前処理しない場合は、水分の吸着により弱い酸点(ブレンステッド酸点)が多く残存することが関与しているものと考えられる。特に、強い酸点(ルイス酸点)はベンゼン環とのπ電子相互作用によりジベンゾチオフェン類に対して高い物理吸着性能を有するので、チオフェン類やベンゾチオフェン類よりもジベンゾチオフェン類を除去する場合は、ブレンステッド酸点の残存量が少ない方が好ましい。なお、製造した後、吸湿する前に使用する場合は、製造時において通常500〜980℃で焼成されているので、上記の500℃以上での加熱処理を省くことができる。
上記固体酸系脱硫剤のルイス酸量とブレンステッド酸量の割合は、一般に、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)により相対比較することができる。ルイス酸点に起因する吸光度のピークは1450±5cm-1に、ブレンステッド酸点に起因する吸光度のピークは1540±5cm-1に、ルイス酸とブレンステッド酸との両方に起因する吸光度のピークは1490±5cm-1に検出される。従って、ルイス酸点(1450±5cm-1)のピーク高さをI1450、ブレンステッド酸点(1540±5cm-1)のピーク高さをI1540とすると、ルイス酸量に対するブレンステッド酸量の比I1540/I1450を相対比較することで、酸性質の違いが分かる。なお、固体酸系脱硫剤のI1540/I1450が0.12以下、好ましくは0.01以下であると、ジベンゾチオフェン類の吸着性能が高くなる。
上記固体酸系脱硫剤の比表面積は、硫黄化合物の吸着容量に大きく影響するので、200m2/g以上が好ましく、特に好ましくは250m2/g以上である。また、固体酸系脱硫剤の細孔容積は0.35ml/g以上であり、0.4ml/g以上好ましく、特に好ましくは0.5ml/g以上である。
また、特定の範囲の細孔直径の占める細孔容積は、脱硫性能に影響する。特に、細孔直径10Å未満の細孔容積は、硫黄化合物の吸着容量を大きくするために、0.1ml/g以上、特には0.2ml/g以上とすることが好ましい。また、細孔直径10Å以上0.1μm未満の細孔容積は、硫黄化合物の細孔内拡散速度を大きくするために、0.05ml/g以上、特には0.1ml/g以上とすることが好ましい。更に、細孔直径0.1μm以上の細孔容積は、成形体の機械的強度を高くするために、0.3ml/g以下、特には0.25ml/g以下とすることが好ましい。
なお、通常、比表面積、全細孔容積は、窒素吸着法により、マクロ孔容積は水銀圧入法により測定される。窒素吸着法は簡便で、一般に用いられており、様々な文献に解説されている。かかる文献としては、例えば、鷲尾一裕:島津評論、48(1)、35−49(1991)、ASTM (American Society for Testing and Materials) Standard Test Method D 4365-95などが挙げられる。
上記固体酸系脱硫剤の破壊強度は1kg/ペレット以上、特には2kg/ペレット以上であることが固体酸系脱硫剤の割れを生じないので好ましい。通常、破壊強度は、木屋式錠剤破壊強度測定器(富山産業株式会社)等の圧縮強度測定器により測定される。
本発明の脱硫方法に用いる固体酸系脱硫剤は、上述のように硫酸根アルミナを含有することが好ましい。該硫酸根アルミナは固体超強酸に分類される。ここで、固体超強酸とは、ハメット(Hammett)の酸度関数H0が−11.93である100%硫酸よりも酸強度が高い固体酸をいう。
酸強度(H0)とは、固体酸表面の酸点が塩基にプロトンを与える能力(ブレンステッド酸性)あるいは塩基から電子対を受け取る能力(ルイス酸性)で定義され、pKa値で表わされるものであり、既知の指示薬法あるいは気体塩基吸着法等の方法で測定することができる。例えば、pKa値が既知の酸塩基変換指示薬を用いて、固体酸の酸強度を、直接、測定することができる。p−ニトロトルエン(pKa値;−11.4)、m−ニトロトルエン(pKa値;−12.0)、p−ニトロクロロベンゼン(pKa値;−12.7)、2,4−ジニトロトルエン(pKa値;−13.8)、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(pKa値;−14.5)、1,3,5−トリクロロベンゼン(pKa値;−16.1)等の乾燥シクロヘキサンあるいは塩化スルフリル溶液に固体酸を浸漬し、固体酸表面上の指示薬の酸性色への変色が認められたら、酸性色に変色するpKa値と同じかそれ以下の値である。固体酸が着色している場合には、指示薬による測定ができないので、ブタン、ペンタンの異性化活性から推定できることが報告されている〔表面科学および触媒の研究、90巻、酸系触媒 II("Studies in Surface Science and Catalysis" Vol. 90, ACID-BASE CATALYSIS II), p.507 (1994)〕。
〔脱硫方法〕
本発明の脱硫方法は、ベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類からなる群から選択される少なくとも一種の硫黄化合物を含有する炭化水素油を、ゼオライト系吸着剤と接触させ、次いで、上述した固体酸系脱硫剤と接触させるものである。
本発明の脱硫方法の対象となる炭化水素油としては、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカンなどのパラフィン系の炭化水素油、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどの芳香族系の炭化水素油、さらに灯油や軽油などを用いることができる。
なお、前記炭化水素油としては、代表的には灯油や軽油が挙げられ、灯油にナフサなどの軽質な炭化水素油が配合されてなるもの、灯油に軽油などの重質な炭化水素油が配合されてなるもの、市販の灯油よりも沸点範囲の狭いもの、市販の灯油から芳香族分などの特定成分を除去してなるもの、軽油に灯油などの軽質な炭化水素油が配合されてなるもの、市販の軽油よりも沸点範囲の狭いもの、市販の軽油から芳香族分などの特定成分を除去してなるものであってもよい。
また、燃料電池などの水素源として炭化水素油を用いる場合、炭化水素油に含まれる硫黄は、水素製造過程で改質触媒の触媒毒となることから厳しく除去する必要がある。これに対して、本発明の脱硫方法は、硫黄化合物を極めて微量濃度まで低減することができるので、灯油又は軽油をオンボード改質燃料として燃料電池自動車に使用する場合、特に好ましく用いることができる。したがって、本発明の脱硫方法は、燃料電池システムに組み込むことにより、水素製造用の改質触媒を被毒することなく水素を製造して燃料電池に供給することができる。
本発明の脱硫方法は、チオフェン類、ベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類の除去に顕著な効果を有することから、その他の硫黄化合物の含有量が少ない炭化水素油、なかでも灯油や軽油により好ましく使用できる。
灯油は、炭素数12〜16程度の炭化水素を主成分とし、密度(15℃)0.79〜0.85g/cm3、沸点範囲150〜320℃程度の炭化水素油である。灯油は、パラフィン系炭化水素を多く含むが、芳香族系炭化水素を0〜30容量%程度含み、多環芳香族も0〜5容量%程度含む。一般的には、灯火用及び暖房用・ちゅう(厨)房用燃料として日本工業規格JIS K2203に規定される1号灯油が対象となる。該1号灯油は、品質として、引火点40℃以上、95%留出温度270℃以下、硫黄分0.008質量%以下、煙点23mm以上(寒候用のものは21mm以上)、銅板腐食(50℃、3時間)1以下、色(セーボルト)+25以上と、規定されている。なお、灯油は、通常、硫黄分を数質量ppmから80質量ppm以下、窒素分を数質量ppmから10質量ppm程度含む。
軽油は、炭素数16〜20程度の炭化水素を主成分とし、密度(15℃)0.82〜0.88g/cm3、沸点範囲140〜390℃程度の炭化水素油である。軽油は、パラフィン系炭化水素を多く含むが、芳香族系炭化水素も10〜30容量%程度含み、多環芳香族も1〜10容量%程度含む。なお、軽油は、硫黄分を数質量ppmから100質量ppm以下、窒素分を数質量ppmから数10質量ppm程度含む。
上記固体酸系脱硫剤と炭化水素油とを接触させる方法は、回分式(バッチ式)でも流通式でもよいが、調製された固体酸系脱硫剤を容器(反応器)に充填して炭化水素油を流通させる流通式が好ましい。
流通式の場合、接触させる条件としては、圧力は、常圧〜1MPaG、特には常圧〜0.1MPaGが好ましい。脱硫中にガスが発生することは無いので圧力を高くする必要は無く、均一な流れとなる圧力であれば十分である。流れの方向は、下から上(アップフロー)が、流れを均一にできるので好ましい。
炭化水素油の流量は、固体酸系脱硫剤の体積に対して、LHSVで0.001〜10hr-1、特には0.01〜1hr-1が好ましい。見掛けの線速度(炭化水素油の流量を固体酸系脱硫剤層の断面積で割った値)は、0.001〜10cm/分、更には0.005〜1cm/分、特には0.01〜0.1cm/分が好ましい。見掛けの線速度が大きいと、吸着速度(液相から固相への移動速度)に比べて液相自体の移動速度が大きくなり、液相が固体酸系脱硫剤層出口に到達するまでに硫黄分を除去しきれず、除去されない硫黄分を含有したまま出口から流出される問題が生じやすくなる。逆に見掛けの線速度が小さいと、同一流量であれば固体酸系脱硫剤層の断面積が大きくなることから、液体の分散状態が不良となり、固体酸系脱硫剤層の流れ方向と直角な断面を通過する炭化水素油の流速(流量)にムラが生じ、固体酸系脱硫剤層の断面において吸着した硫黄分に分布が生じるため、固体酸系脱硫剤への負荷が不均一になり、やはり十分効率的に脱硫することができない。
脱硫処理を行う温度は、常温付近が好ましく−20〜120℃、更には−10〜100℃、特には0〜60℃が好ましい。120℃を超えると物理吸着性能が低下することから、主にルイス酸点への物理吸着により除去するジベンゾチオフェン類に対して十分な脱硫性能が得られない。一方、−20℃未満では反応活性(化学吸着性能)が低下することから、特にチオフェン類やベンゾチオフェン類の脱硫性能が低下してしまう。
チオフェン類は、1個以上の硫黄原子を異原子として含む複素環式化合物のうち、複素環が五員環又は六員環で且つ芳香性をもち(複素環に二重結合を2個以上有し)、さらに複素環がベンゼン環と縮合していない硫黄化合物及びその誘導体であり、複素環同士が縮合した化合物も含む。チオフェンは、チオフランとも呼ばれ、分子式C44Sで表わせる、分子量84.1の硫黄化合物である。その他の代表的なチオフェン類として、メチルチオフェン(チオトレン、分子式C56S、分子量98.2)、チオピラン(ペンチオフェン、分子式C56S、分子量98.2)、チオフテン(分子式C642、分子量140)、テトラフェニルチオフェン(チオネサル、分子式C2020S、分子量388)、ジチエニルメタン(分子式C982、分子量180)及びこれらの誘導体が挙げられる。
ベンゾチオフェン類は、1個以上の硫黄原子を異原子として含む複素環式化合物のうち、複素環が五員環又は六員環で且つ芳香性をもち(複素環に二重結合を2個以上有し)、さらに複素環が1個のベンゼン環と縮合している硫黄化合物及びその誘導体である。ベンゾチオフェンは、チオナフテン、チオクマロンとも呼ばれ、分子式C86Sで表わせる、分子量134の硫黄化合物である。その他の代表的なベンゾチオフェン類としては、メチルベンゾチオフェン、ジメチルベンゾチオフェン、トリメチルベンゾチオフェン、テトラメチルベンゾチオフェン、ペンタメチルベンゾチオフェン、ヘキサメチルベンゾチオフェン、メチルエチルベンゾチオフェン、ジメチルエチルベンゾチオフェン、トリメチルエチルベンゾチオフェン、テトラメチルエチルベンゾチオフェン、ペンタメチルエチルベンゾチオフェン、メチルジエチルベンゾチオフェン、ジメチルジエチルベンゾチオフェン、トリメチルジエチルベンゾチオフェン、テトラメチルジエチルベンゾチオフェン、メチルプロピルベンゾチオフェン、ジメチルプロピルベンゾチオフェン、トリメチルプロピルベンゾチオフェン、テトラメチルプロピルベンゾチオフェン、ペンタメチルプロピルベンゾチオフェン、メチルエチルプロピルベンゾチオフェン、ジメチルエチルプロピルベンゾチオフェン、トリメチルエチルプロピルベンゾチオフェン、テトラメチルエチルプロピルベンゾチオフェンなどのアルキルベンゾチオフェン、チアクロメン(ベンゾチア−γ−ピラン、分子式C98S、分子量148)、ジチアナフタリン(分子式C862、分子量166)及びこれらの誘導体が挙げられる。
ジベンゾチオフェン類は、1個以上の硫黄原子を異原子として含む複素環式化合物のうち、複素環が五員環又は六員環で且つ芳香性をもち(複素環に二重結合を2個以上有し)、さらに複素環が2個のベンゼン環と縮合している硫黄化合物及びその誘導体である。ジベンゾチオフェンはジフェニレンスルフィド、ビフェニレンスルフィド、硫化ジフェニレンとも呼ばれ、分子式C128Sで表わせる、分子量184の硫黄化合物である。4‐メチルジベンゾチオフェンや4,6−ジメチルジベンゾチオフェンは、水素化精製における難脱硫化合物として良く知られている。その他の代表的なジベンゾチオフェン類としては、トリメチルジベンゾチオフェン、テトラメチルジベンゾチオフェン、ペンタメチルジベンゾチオフェン、ヘキサメチルジベンゾチオフェン、ヘプタメチルジベンゾチオフェン、オクタメチルジベンゾチオフェン、メチルエチルジベンゾチオフェン、ジメチルエチルジベンゾチオフェン、トリメチルエチルジベンゾチオフェン、テトラメチルエチルジベンゾチオフェン、ペンタメチルエチルジベンゾチオフェン、ヘキサメチルエチルジベンゾチオフェン、ヘプタメチルエチルジベンゾチオフェン、メチルジエチルジベンゾチオフェン、ジメチルジエチルジベンゾチオフェン、トリメチルジエチルジベンゾチオフェン、テトラメチルジエチルジベンゾチオフェン、ペンタメチルジエチルジベンゾチオフェン、ヘキサメチルジエチルジベンゾチオフェン、ヘプタメチルジエチルジベンゾチオフェン、メチルプロピルジベンゾチオフェン、ジメチルプロピルジベンゾチオフェン、トリメチルプロピルジベンゾチオフェン、テトラメチルプロピルジベンゾチオフェン、ペンタメチルプロピルジベンゾチオフェン、ヘキサメチルプロピルジベンゾチオフェン、ヘプタメチルプロピルジベンゾチオフェン、メチルエチルプロピルジベンゾチオフェン、ジメチルエチルプロピルジベンゾチオフェン、トリメチルエチルプロピルジベンゾチオフェン、テトラメチルエチルプロピルジベンゾチオフェン、ペンタメチルエチルプロピルジベンゾチオフェン、ヘキサメチルエチルプロピルジベンゾチオフェンなどのアルキルジベンゾチオフェン、チアントレン(ジフェニレンジスルフィド、分子式C1282、分子量216)、チオキサンテン(ジベンゾチオピラン、ジフェニルメタンスルフィド、分子式C1310S、分子量198)及びこれらの誘導体が挙げられる。
灯油や軽油に含まれる主な硫黄化合物は、ベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類であるが、チオフェン類、メルカプタン類(チオール類)、スルフィド類、ジスルフィド類、二硫化炭素などを含む場合もある。これらの硫黄化合物の定性及び定量分析には、ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph:GC)−炎光光度検出器(Flame Photometric Detector:FPD)、GC−原子発光検出器(Atomic Emission Detector:AED)、GC−硫黄化学発光検出器(Sulfur Chemiluminescence Detector:SCD)、GC−誘導結合プラズマ質量分析装置(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer:ICP−MS)などを用いることができるが、質量ppbレベルの分析にはGC−ICP−MSが最も好ましい(特開2006-145219号公報参照)。
チオフェン類もベンゾチオフェン類も硫黄原子を異原子として含む複素環の反応性が高く、固体酸系脱硫剤の存在下で、複素環の解裂や複素環と芳香環との反応、或いは、分解が容易に起こる。一方、ジベンゾチオフェン類はチオフェン環の両側にベンゼン環が結合していることから、チオフェン類やベンゾチオフェン類に比べて反応性が低い。なお、従来の固体酸、例えば、硫酸根ジルコニアやタングステン酸ジルコニアでは、ジベンゾチオフェン類の脱硫性能が低かったが、上述したルイス酸系脱硫剤は、高い比表面積、大きな細孔容積、及びルイス酸点により、ジベンゾチオフェン類に対しても高い脱硫性能を有するため、本発明の脱硫方法においては、上述したルイス酸系脱硫剤を使用することが好ましい。
〔脱硫方法の前処理〕
炭化水素油中の水分やアルコールなどの含酸素化合物は、固体酸系脱硫剤、特には、ルイス酸系脱硫剤の脱硫性能を低下させるので、固体酸系脱硫剤と接触させる前に、前処理として、ゼオライト系吸着剤により炭化水素油を予め処理することが必要である。
上記ゼオライト系吸着剤として使用するゼオライトは、一般式:xM2/nO・Al23・ySiO2・zH2O(ここで、nは陽イオンMの価数、xは1以下の数、yは2以上の数、zは0以上の数)で表される結晶性含水アルミノシリケートの総称である。ゼオライトの構造は、SiまたはAlを中心とするSiO4/AlO4四面体が三次元的に規則正しく配列したものであり、アルカリ金属やアルカリ土類金属等の電荷補償陽イオンを細孔や空洞内に保持している。電荷補償陽イオンは、プロトン等の別の陽イオンと容易に交換することが可能である。また、酸処理等により、SiO2/Al23モル比が高まり、酸強度が増加して固体酸量が減少する。吸着剤としては、酸強度はあまり影響しないので、SiO2/Al23モル比が低いことが好ましい。
上記ゼオライトは、その分子ふるい作用および結晶内空洞に存在する強い電場を利用して、水のような極性物質や不飽和性の高い炭化水素などを、流体中から優先的に且つ強力に吸着できる吸着剤である。
上記ゼオライトとしては、天然ゼオライトも利用されるが、水のような極性物質の除去には、均一な品質である合成ゼオライトが好ましい。該合成ゼオライトとしては、A型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5、モルデナイト、L型ゼオライト、βゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト(X型ゼオライト、Y型ゼオライト)などが、主に用いられる。
乾燥剤として用いられるのは、主としてA型ゼオライトであり、電荷補償陽イオンがカリウムであるもの(カリウムA型ゼオライト)、ナトリウムであるもの(ナトリウムA型ゼオライト)、および、カルシウムであるもの(カルシウムA型ゼオライト)が主に用いられており、それぞれ結晶細孔径が約3Å、約4Å、および、約5Åである。分子ふるい作用により、カリウムA型ゼオライトは、水の他に、アンモニアやメタノールなども吸着できるが、その結晶細孔径よりも大きい成分は吸着しない。また、ナトリウムA型ゼオライトには、炭素数3以上の飽和炭化水素は吸着しない。従って、水やメタノールを吸着する場合には、他の成分との競争吸着による吸着性能の低下を避けるために、カリウムA型ゼオライトやナトリウムA型ゼオライトを用いることが好ましい。
分子量が水よりも大きい成分の除去には、X型ゼオライト、特には、電荷補償陽イオンがナトリウムであるX型ゼオライト(ナトリウムX型ゼオライト)を用いることが好ましい。ナトリウムX型ゼオライトの結晶細孔径は約8Åであり、A型ゼオライトよりも分子量の大きな成分の吸着除去に好ましく用いられる。
本発明において、含酸素化合物の除去には、様々なゼオライト系吸着剤を用いることができるが、上述のように、水やメタノールを吸着するためには、カリウムA型ゼオライト、および/または、ナトリウムA型ゼオライトを用いることが好ましい。さらに、より大きな分子も吸着するためには、A型ゼオライトに加えて、ナトリウムX型ゼオライトを併用することが好ましい。
炭化水素油とゼオライト系吸着剤との接触方法は、回分式(バッチ式)でも流通式でもよいが、燃料電池の原燃料を処理する場合などにおいては、流通式が好ましい。
流通式の場合、接触させる条件としては、圧力は、常圧〜1MPaG、特には常圧〜0.1MPaGが好ましい。炭化水素油とゼオライト系吸着剤との接触中にガスが発生することは無いので圧力を高くする必要は無く、均一な流れとなる圧力であれば十分である。流れの方向は、下から上(アップフロー)が、流れを均一にできるので好ましい。
ゼオライト系吸着剤と固体酸系脱硫剤との体積比率は、炭化水素油の含酸素化合物含有率、炭化水素油の硫黄化合物含有率、ゼオライト系吸着剤の含酸素化合物吸着性能、並びに、固体酸系脱硫剤の脱硫性能(すなわち、硫黄化合物吸着性能)に応じて適宜設定できる。含酸素化合物のうち、一般的に最も含有率の高い水分は、灯油や軽油などの炭化水素油に最大で100質量ppm程度含まれる。また、硫黄化合物は、一般的に最大で硫黄分として10質量ppm程度含まれる。即ち、含酸素化合物は硫黄化合物よりも10倍程度多く含まれる。一方、ゼオライト系吸着剤の含酸素化合物吸着性能は、固体酸系脱硫剤の硫黄化合物吸着性能よりも、10〜1000倍、特には50〜500倍、さらに特には80〜300倍である。従って、ゼオライト系吸着剤の体積と固体酸系脱硫剤の体積との比(ゼオライト系吸着剤の体積:固体酸系脱硫剤の体積)は、1:1から1:100、特には1:5から1:50、さらに特には1:8から1:30の範囲が好ましい。
上記ゼオライト系吸着剤と固体酸系脱硫剤とは、一体型の容器を用いて、上流側にゼオライト系吸着剤、下流側に固体酸系脱硫剤を充填すると、別々の容器に充填するよりもコンパクトになるので好ましい。
炭化水素油の流量は、ゼオライト系吸着剤の体積に対して、LHSVで0.01〜100hr-1、特には0.1〜10hr-1が好ましい。見掛けの線速度(炭化水素油の流量をゼオライト系吸着剤層の断面積で割った値)は、0.001〜10cm/分、更には0.005〜1cm/分、特には0.01〜0.1cm/分が好ましい。見掛けの線速度が大きいと、吸着速度(液相から固相への移動速度)に比べて液相自体の移動速度が大きくなり、液相がゼオライト系吸着剤層出口に到達するまでに含酸素化合物を除去しきれず、除去されない含酸素化合物を含有したまま出口から流出される問題が生じやすくなる。逆に見掛けの線速度が小さいと、同一流量であればゼオライト系吸着剤層の断面積が大きくなることから、液体の分散状態が不良となり、ゼオライト系吸着剤層の流れ方向と直角な断面を通過する炭化水素油の流速(流量)にムラが生じ、ゼオライト系吸着剤層の断面において吸着した含酸素化合物に分布が生じるため、ゼオライト系吸着剤への負荷が不均一になり、やはり十分効率的に吸着することができない。
前処理を行う温度は、常温付近が好ましく−20〜120℃、更には−10〜100℃、特には0〜60℃が好ましい。120℃を超えると物理吸着性能が低下する。一方、−20℃未満では流体の粘性が上昇し、また、拡散速度が低下することから、吸着速度が低下してしまう。
〔予備脱硫〕
本発明の脱硫方法は、炭化水素油を、ゼオライト系吸着剤と接触させ、次いで、上述した固体酸系脱硫剤と接触させるものであるが、更に予備脱硫を行ってもよい。ここで、炭化水素油の脱硫方法にピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm-1)のピーク高さI1450に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm-1)のピーク高さI1540の比(I1540/I1450)が0.12以下の固体酸を用いた脱硫剤(即ち、ルイス酸系脱硫剤)を用いる場合、該脱硫方法の予備脱硫に用いる脱硫剤としては、活性炭系脱硫剤、及びピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm-1)のピーク高さI1450に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm-1)のピーク高さI1540の比(I1540/I1450)が0.12を超える固体酸を用いた脱硫剤(即ち、ブレンステッド酸系脱硫剤)が好ましく、両者のいずれか、あるいは両方で、予め脱硫する方法が、本発明に含まれる。なお、本発明では、上述のように、I1540/I1450比が0.12以下である固体酸系脱硫剤をルイス酸系脱硫剤と称し、I1540/I1450比が0.12を超える固体酸系脱硫剤をブレンステッド酸系脱硫剤と称するため、上記を言い換えると、ルイス酸系脱硫剤を用いた脱硫方法の予備脱硫として、活性炭系脱硫剤、またはブレンステッド酸系脱硫剤とを、何れか一つ、又は両方を用いて予め脱硫する方法が、本発明に含まれる。
上記ルイス酸系脱硫剤は、上記炭化水素油からベンゾチオフェン類とジベンゾチオフェン類の硫黄化合物を除去するために供することが好ましい。該ルイス酸系脱硫剤は、ブレンステッド酸系脱硫剤よりもジベンゾチオフェン類、特にはアルキル基の多いアルキルジベンゾチオフェン類に対して高い吸着活性を有する。該ルイス酸系脱硫剤は、吸着力が強いので硫黄化合物の吸着等温線がラングミュア型であり、硫黄化合物の濃度が低い場合でも硫黄化合物の吸着活性が高い。従って、ジベンゾチオフェン類、特にアルキル基の多いアルキルジベンゾチオフェン類のみが低濃度で残留する条件のみで、ルイス酸系脱硫剤を使用し、該ルイス酸系脱硫剤による脱硫よりも前に、活性炭系脱硫剤、ブレンステッド酸系脱硫剤等の他の脱硫剤で、予備脱硫を行うことが好ましい。なお、ルイス酸系脱硫剤への硫黄化合物の吸着機構は上記π電子吸着機構であると考えられ、反応温度は100℃以下が好ましい。
上記活性炭系脱硫剤は、比表面積が200m2/g以上、および平均細孔径が20Å以上である活性炭に乾燥処理を施すことにより脱硫剤として使用される。また、銀、水銀、銅、カドミウム、鉛、モリブデン、亜鉛、コバルト、マンガン、ニッケル、白金、パラジウム、鉄などの金属及び/又は金属酸化物との複合化、すなわちこれらの金属を担持することにより吸着性能を向上させることもできる。この活性炭は、孔隙構造の発達した炭素材料であり、吸着脱硫剤や触媒担体として広く工業的に用いられる。無煙炭のように天然のままでも吸着活性を示す炭素材料も存在するが、一般には有機物(炭素質物質)である活性炭原料を炭化して、必要に応じて賦活して製造されるが、特にその製法が限定されるものではない。活性炭の原料としては、多くの炭素質物質が挙げられ、原料の種類によって製造条件が異なる。原料としては、植物系の木材、のこくず、ヤシ殻、パルプ廃液などと、化石燃料系の石炭、石油重質油、或いはそれらを熱分解したピッチやコークスなどを用いることができる。繊維状活性炭は、合成高分子、タールピッチ或いは石油系ピッチを紡糸した繊維を出発原料とする。石炭は石炭化度の違いによって褐炭、瀝青炭及び無煙炭に分類される。出発原料となる合成高分子としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニルビニリデン樹脂、廃プラスチックなどが原料として挙げられる。活性炭系脱硫剤としては、国際公開第03/097771号に記載の吸着脱硫剤が特に好ましい。上記活性炭を脱硫剤として使用するための乾燥処理は、50〜150℃、好ましくは80〜130℃で1〜24時間程度行う。
上記活性炭系脱硫剤は、上記炭化水素油からジベンゾチオフェン類の硫黄化合物を除去するために用いられる。反応温度は100℃以下が好ましく、0〜80℃が特に好ましい。活性炭系脱硫剤はベンゾチオフェン類に対する吸着活性は低いが、ジベンゾチオフェン類の吸着活性は高い。活性炭系脱硫剤における硫黄化合物の吸着等温線は、フロイントリッヒ型なので硫黄化合物の濃度が高いほど硫黄化合物の吸着活性が高く、また、比表面積が比較的大きいことから飽和吸着量が多い。
一方、上記ブレンステッド酸系脱硫剤としては、ゼオライト、シリカ・アルミナ、活性白土などの固体酸のほかに、硫酸根ジルコニア、硫酸根アルミナ、硫酸根酸化スズ、硫酸根酸化鉄、タングステン酸ジルコニア、タングステン酸酸化すずなどの固体超強酸を挙げることができる。これらは、ブレンステッド酸性とルイス酸性とを合わせ持つ場合が多いが、特にブレンステッド酸性が強いことからブレンステッド酸系脱硫剤として使用できる。これらの中でも、硫酸根アルミナなどのアルミナ系脱硫剤が好ましい。また、銀、水銀、銅、カドミウム、鉛、モリブデン、亜鉛、コバルト、マンガン、ニッケル、白金、パラジウム、鉄などの金属及び/又は金属酸化物との複合化、すなわちこれらの金属を担持することにより吸着性能を向上させることもできる。
固体超強酸の酸性質は、その焼成温度で調整することができ、800℃以上の高温で焼成するとブレンステッド酸性が低下し、ルイス酸性が向上する。従って、固体超強酸をブレンステッド酸系脱硫剤として使用する場合には、焼成段階で800℃未満の温度、好ましくは500〜800℃、より好ましくは550〜650℃で焼成する。また、固体超強酸は、800℃以上の高温で焼成しても、大気中に放置することにより吸湿すると、容易にブレンステッド酸性が増加する。或いは、焼成後の硫黄含有率を3.00質量%より多くすることにより、固体超強酸のブレンステッド酸性を増加させることもできる。硫黄含有率としては、3.00〜5.00質量%、更には3.00〜4.00質量%が好ましい。
また、ブレンステッド酸系脱硫剤としては、プロトンタイプのフォージャサイト型ゼオライト、プロトンタイプのモルデナイト及びプロトンタイプのβゼオライトの中から選ばれる少なくとも1種のゼオライトも好ましい。特には、これらのゼオライトは、シリカ/アルミナ比が小さい方が吸着サイトとなる酸量が多いことから、シリカ/アルミナ比が100mol/mol以下であることが好ましく、さらには30mol/mol以下であることが好ましい。
上記ゼオライトは、一般式:xM2/nO・Al23・ySiO2・zH2O(ここで、nは陽イオンMの価数、xは1以下の数、yは2以上の数、zは0以上の数)で表される結晶性含水アルミノシリケートの総称である。該ゼオライトは、アルカリ金属やアルカリ土類金属等の電荷補償陽イオンを細孔や空洞内に保持している。ゼオライト中の電荷補償陽イオンは、プロトン等の別の陽イオンと容易に交換することが可能である。また、酸処理等により、SiO2/Al23モル比が高まり、酸強度が増加して固体酸量が減少する。硫黄化合物の吸着には酸強度はあまり影響しないので、固体酸量を低下させないことが好ましい。
上記の予備脱硫手段に用いられるゼオライトの電荷補償陽イオンは、プロトン、つまり水素であり、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのプロトン以外の陽イオン含有量は5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
上記のゼオライト結晶の性状としては、結晶化度は80%以上、特には90%以上が好ましく、結晶子径は5μm以下、特には1μm以下が好ましく、また、平均粒子径は30μm以下、特には10μm以下が好ましく、さらに比表面積は300m2/g以上、特には400m2/g以上が好ましい。
上記ブレンステッド酸系脱硫剤は、上記炭化水素油からベンゾチオフェン類を除去するために用いられる。反応条件は、水素を使用せず、大気圧下で、反応温度は常温(0〜40℃)から150℃程度までの温度範囲が好ましい。反応温度は、脱硫反応の経済性や該脱硫剤を用いた脱硫器の小型化の観点から、より好ましくは0〜120℃であり、特に好ましくは0〜40℃である。該ブレンステッド酸系脱硫剤は反応を伴う吸着脱硫機構であり、炭化水素油中の硫黄化合物の濃度が低い場合でも硫黄化合物の吸着活性が活性炭系脱硫剤よりも高い。しかしながら、該ブレンステッド酸系脱硫剤は、ジベンゾチオフェン類、特にアルキル基の多いアルキルジベンゾチオフェン類に対して活性が低く、所望の脱硫性能を長期間維持することが困難である。
予備脱硫方法としては、まず活性炭系脱硫剤を使用し、次いでブレンステッド酸系脱硫剤を使用することが好ましい。一方、処理する炭化水素油の硫黄分が1〜5質量ppmと、元々低い場合には、必ずしも予備脱硫として活性炭系脱硫剤を使用する必要は無く、第一の脱硫剤としてブレンステッド酸系脱硫剤を使用し、次いで第二の脱硫剤としてルイス酸系脱硫剤を使用することが好ましい。さらには、ベンゾチオフェン類を含まない軽油などを脱硫する場合には、必ずしもブレンステッド酸系脱硫剤を使用する必要も無く、第一の脱硫剤として活性炭系脱硫剤を使用し、次いで第二の脱硫剤としてルイス酸系脱硫剤を使用することが好ましい。
予備脱硫と前処理との順番については、活性炭系脱硫剤、またはブレンステッド酸系脱硫剤のいずれかひと1つ、または両方を用いて予備脱硫を行った後に、ゼオライト系吸着剤による前処理を行い、さらに、ルイス酸系脱硫剤で脱硫することが好ましい。また、まず、活性炭系脱硫剤で予備脱硫を行った後に、ゼオライト系吸着剤による前処理を行い、次いでブレンステッド酸系脱硫剤で予備脱硫を更に行い、最後にルイス酸性脱硫剤で脱硫することも好ましい。
〔燃料電池システム〕
本発明の燃料電池システムは、上述した方法により炭化水素油を脱硫する脱硫手段と、燃料電池とを具え、脱硫手段で脱硫した炭化水素油を燃料電池の原燃料として使用することを特徴とする。ここで、脱硫手段としては、公知の脱硫器を用いることができ、例えば、脱硫器に上述したゼオライト系吸着剤、固体酸系脱硫剤を充填し、炭化水素油を流通させることで、炭化水素油を脱硫する。なお、本発明の燃料電池システムは、該脱硫手段及び燃料電池の他に、通常、脱硫された炭化水素油を改質して水素を含む改質ガスを生成させる改質手段を具え、該改質ガスを用いて燃料電池で発電を行う。ここで、改質手段には、通常、公知の改質触媒が充填される。
上述のように、燃料電池の原燃料(水素源)として炭化水素油を用いる場合、炭化水素油に含まれる硫黄は、水素製造過程において改質触媒の触媒毒となるが、上述した本発明の脱硫方法は、硫黄化合物を極めて微量濃度まで低減できるので、該方法に従う脱硫手段を、燃料電池システムに組み込むことにより、水素製造用の改質触媒を被毒することなく水素を製造して燃料電池に供給することができる。従って、本発明の燃料電池システムは、灯油又は軽油をオンボード改質燃料として燃料電池自動車に使用する場合に、特に好適に適用できる。なお、本発明の燃料電池システムは、定置式であっても良いし、可動式(例えば、燃料電池自動車など)であってもよい。また、本発明の燃料電池システムにおいて、燃料電池で使用する水素を発生させるための原燃料である炭化水素油としては、灯油や軽油などが好ましく、灯油が特に好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
〔流通式脱硫実験〕
内容積10mlの透明耐圧ガラス製カラムに、ゼオライト系吸着剤として主に電荷補償陽イオンがカリウムで、結晶細孔径が約3ÅのA型ゼオライト(カリウムA型ゼオライト、関東化学株式会社製モレキュラーシーブ3A−1/16)を粉砕し、粒子サイズ0.36〜0.71mmに整粒して、さらに400℃で3時間乾燥した後に、2.0ml充填した。その上部に、ルイス酸系脱硫剤として硫酸根アルミナ系脱硫剤(分光分析ピーク比I1540/I14500.000、比表面積329m2/g、細孔容積0.71ml/g、γ−アルミナ含有率99.5質量%、硫黄含有率0.5質量%、粒子サイズ0.36〜0.71mm)8.0mlを充填した。充填は、硫黄分30質量ppb以下の脱硫灯油でスラリー状にして行った。
水素の非存在下、全て常温・常圧で、灯油を、流量0.12ml/分(LHSV 0.72hr-1、見掛けの線速度0.11cm/分)で下から上へ流通させ、流出灯油中の硫黄化合物をGC−ICP−MSで分析した。
灯油(ジャパンエナジー社製)は、沸点範囲158.0〜271.5℃、5%留出点170.5℃、10%留出点175.5℃、20%留出点183.0℃、30%留出点190.0℃、40%留出点197.5℃、50%留出点206.0℃、60%留出点215.0℃、70%留出点224.0℃、80%留出点234.0℃、90%留出点248.0℃、95%留出点259.5℃、97%留出点269.0℃、密度(15℃)0.7940g/ml、芳香族分16.9容量%、飽和分83.1容量%、硫黄分6.7 質量ppm、軽質硫黄化合物(ベンゾチオフェンよりも軽質の硫黄化合物)に由来する硫黄分1質量ppb、ベンゾチオフェン類(ベンゾチオフェン及びベンゾチオフェンよりも重質であり4−メチルジベンゾチオフェン(分子量198)よりも軽質の硫黄化合物)に由来する硫黄分5.3質量ppm、ジベンゾチオフェン類(4−メチルジベンゾチオフェン及び4−メチルジベンゾチオフェンよりも重質の硫黄化合物、分子量198以上の重質硫黄化合物)に由来する硫黄分0.9質量ppm、ジベンゾチオフェン類(分子量198以上の重質硫黄化合物)のうち、2,8−ジメチルジベンゾチオフェンなどのジベンゾチオフェンに炭素数2個分のアルキル基が結合した硫黄化合物(分子量212)よりも、さらに重質の硫黄化合物(分子量213以上の重質硫黄化合物)に由来する硫黄分0.3質量ppm、窒素分1質量ppm以下のものを使用した。
出口における硫黄濃度の到達時間を表1に、出口における硫黄分の経時変化を図1に示す。流通後、56時間まで20質量ppb以下で、その後緩やかに上昇し、250時間で1.0質量ppm、289時間で2.0質量ppm、481時間で3.0質量ppmとなった。
(比較例)
内容積10mlの透明耐圧ガラス製カラムに、実施例1と同じ硫酸根アルミナ系脱硫剤10mlを充填し、実施例1と同様の実験を実施した。
出口における硫黄濃度の到達時間を表1に、出口における硫黄分の経時変化を図1に示す。流通後、22時間まで20質量ppb以下であったが、その後速やかに上昇し、143時間で1.0質量ppm、250時間で2.0質量ppm、336時間で3.0質量ppmとなった。実施例よりも脱硫剤量が2.0ml多いにも拘らず、硫黄分の上昇が速く、炭化水素油中の水分が硫黄化合物の吸着を阻害しているものと考えられた。
(実施例2)
〔流通式脱硫実験〕
内容積4.2Lの透明ガラス製カラムに、活性炭系脱硫剤として繊維状活性炭(クラレケミカル社製FR−25、比表面積2660m2/g、細孔容積0.94ml/g)を0.2L充填した。その上部に、実施例1と同じゼオライト系吸着剤を粉砕し、粒子サイズ0.36〜0.71mmに整粒して、さらに400℃で3時間乾燥した後に、0.3L充填した。さらにその上部に、ブレンステッド酸系脱硫剤として銅を担持した硫酸根アルミナ系脱硫剤(分光分析ピーク比I1540/I14500.144、比表面積282m2/g、細孔容積0.70ml/g、銅含有率0.5質量%、アルミナ含有率99.0質量%、硫黄含有率0.5質量%、粒子サイズ0.36〜0.71mm)を0.7L充填した。最後に、その上部に、ルイス酸系脱硫剤として硫酸根アルミナ系脱硫剤(分光分析ピーク比I1540/I14500.000、比表面積306m2/g、細孔容積0.71ml/g、γ−アルミナ含有率99.5質量%、硫黄含有率0.5質量%、粒子サイズ0.36〜0.71mm)3.0Lを充填した。充填は、硫黄分30質量ppb以下の脱硫灯油でスラリー状にして行った。
水素の非存在下、全て常温・常圧で、灯油を、流量2.52ml/分(LHSV 0.04hr-1、見掛けの線速度0.035cm/分)で下から上へ流通させ、流出灯油中の硫黄化合物をGC−ICP−MSで分析した。
灯油(ジャパンエナジー社製)は、沸点範囲154.5〜278.0℃、5%留出点166.0℃、10%留出点169.5℃、20%留出点175.5℃、30%留出点182.0℃、40%留出点188.5℃、50%留出点196.0℃、60%留出点205.0℃、70%留出点215.0℃、80%留出点227.0℃、90%留出点243.0℃、95%留出点258.0℃、97%留出点269.0℃、密度(15℃)0.7945g/ml、芳香族分17.63容量%、飽和分82.37容量%、硫黄分5.0質量ppm、軽質硫黄化合物(ベンゾチオフェンよりも軽質の硫黄化合物)に由来する硫黄分2質量ppb、ベンゾチオフェン類(ベンゾチオフェン及びベンゾチオフェンよりも重質であり4−メチルジベンゾチオフェン(分子量198)よりも軽質の硫黄化合物)に由来する硫黄分3.6質量ppm、ジベンゾチオフェン類(4−メチルジベンゾチオフェン及び4−メチルジベンゾチオフェンよりも重質の硫黄化合物、分子量198以上の重質硫黄化合物)に由来する硫黄分1.4質量ppm、ジベンゾチオフェン類(分子量198以上の重質硫黄化合物)のうち、2,8−ジメチルジベンゾチオフェンなどのジベンゾチオフェンに炭素数2個分のアルキル基が結合した硫黄化合物(分子量212)よりも、さらに重質の硫黄化合物(分子量213以上の重質硫黄化合物)に由来する硫黄分0.6質量ppm、窒素分1質量ppm以下のものを使用した。
出口における硫黄分の経時変化を図2に示す。図2から分かるように、流通後、543時間まで5質量ppb以下であり、上昇傾向は表れなかった。
〔試験方法〕
なお、上記で特に説明をしていない、脱硫剤と灯油の物性等の測定は、次の試験方法に準じて行った。
・蒸留性状:JIS K2254に準拠して測定した。
・密度(15℃):JIS K2249に準拠して測定した。
・炭化水素の成分組成(芳香族分、飽和分、オレフィン分):英国石油協会(The Institute of Petroleum)規格IP標準法391/95(屈折率検出器を用いた高速液体クロマトグラフによる中間留出物の芳香族炭化水素の分析)に準拠して測定した。
・硫黄分(全硫黄分):燃焼酸化-紫外蛍光法で分析した。
・硫黄化合物タイプ分析(ベンゾチオフェンよりも軽質の硫黄化合物に由来する硫黄分、ベンゾチオフェン及びベンゾチオフェンよりも重質であり4−メチルジベンゾチオフェンよりも軽質の硫黄化合物に由来する硫黄分、4−メチルジベンゾチオフェン及び4−メチルジベンゾチオフェンよりも重質の硫黄化合物に由来する硫黄分):GC−ICP−MSで分析した。
・窒素分:JIS K2609に記載の微量電量滴定法に準拠して測定した。
・アルミナ含有量:試料をアルカリ融解したものを酸性溶液中に溶解し、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析装置)で分析した。
・アルミナの種類:X線回折で分析した。
・硫黄含有量:燃焼酸化して、二酸化硫黄の赤外線吸収強度を測定することで分析した。
・比表面積:窒素吸着法により測定し、BET(Brunouer-Emmett-Teller)法により算出した。
・細孔容積:窒素吸着法により測定した。
・ルイス酸量とブレンステッド酸量の割合:ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)装置(Nicolet社製Avatar360)により分析した。試料約0.0070gを10mmφのディスク状に成型し、セルに固定して、500℃で1時間真空排気した後、30℃に冷却して真空下でリファレンスの測定を行い、100℃に昇温して5分間ピリジンを吸着させた。150℃に昇温し、1時間真空排気を行うことで物理吸着していたピリジンを除去した後に、30℃に冷却して真空下でサンプルの測定を行い、得られたデータとリファレンスデータを用いてフーリエ変換により吸光度表示した。ルイス酸点に起因する吸光度のピークは1450±5cm-1に、ブレンステッド酸点に起因する吸光度のピークは1540±5cm-1に、ルイス酸とブレンステッド酸との両方に起因する吸光度のピークは1490±5cm-1に検出された。ルイス酸点(1450±5cm-1)のピーク高さをI1450、ブレンステッド酸点(1540±5cm-1)のピーク高さをI1540とし、ルイス酸量に対するブレンステッド酸量の比I1540/I1450を求めた。

Claims (9)

  1. 固体酸系脱硫剤を用いて、ベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類からなる群から選択される少なくとも一種の硫黄化合物を含有する炭化水素油の硫黄分を低減する炭化水素油の脱硫方法であって、
    前記固体酸系脱硫剤が、酸化アルミニウムを20〜99.9質量%および硫黄を0.10〜3.00質量%含有し、比表面積が150m 2 /g以上、ならびに細孔容積が0.35ml/g以上であり、かつピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm -1 )のピーク高さI 1450 に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm -1 )のピーク高さI 1540 の比(I 1540 /I 1450 )が0.12以下であるルイス酸系脱硫剤であり、
    前記炭化水素油を、ゼオライト系吸着剤と接触させ、次いで、前記固体酸系脱硫剤と接触させることを特徴とする炭化水素油の脱硫方法。
  2. 前記酸化アルミニウムがγ−アルミナであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  3. 前記ゼオライト系吸着剤が、A型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5、モルデナイト、L型ゼオライト、βゼオライト及びフォージャサイト型ゼオライトよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  4. 前記ゼオライト系吸着剤の陽イオンが、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  5. 前記ルイス酸系脱硫剤による脱硫方法の前処理として、活性炭系脱硫剤、またはピリジン吸着フーリエ変換赤外分光分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm-1)のピーク高さI1450に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm-1)のピーク高さI1540の比(I1540/I1450)が0.12を超えるブレンステッド酸系脱硫剤のいずれか1つ、または両方を用いて、予め脱硫することを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  6. 前記ルイス酸系脱硫剤による脱硫方法の前処理として、前記活性炭系脱硫剤を用いて、予め脱硫し、次いで、前記ゼオライト系吸着剤と接触させ、さらにその後に、前記ブレンステッド酸系脱硫剤を用いて脱硫し、最後に前記ルイス酸系脱硫剤を用いて脱硫することを特徴とする請求項5に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  7. 100℃以下の温度で前記脱硫剤と前記炭化水素油とを接触させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
  8. 前記炭化水素油が、灯油又は軽油であり、硫黄分が0.1〜10質量ppmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法により炭化水素油を脱硫する脱硫手段と、燃料電池とを具え、
    前記脱硫手段で脱硫した炭化水素油を前記燃料電池の原燃料として使用することを特徴とする燃料電池システム。
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