JP5294744B2 - 親水性ポリオレフィン焼結体 - Google Patents

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Description

本発明はポリオレフィン樹脂粒子の親水性多孔質焼結体に関する。さらに詳しくは、工業的に生産が可能で、連続空孔を持ち、吸水機能と生体親和性を兼ね備え、耐変色性、成形性、耐衝撃性、機械的強度および吸水時の寸法安定性に優れた親水性多孔質焼結体に関する。
連続空孔を有するポリオレフィン樹脂粒子の多孔質焼結体は、流体の濾過機能、透過機能、誘導機能等の優れた特徴を有しており、フィルター、散気管、液体の誘導材等として広く利用されている。特に、親水化されたポリエチレンを主体とする親水性多孔質焼結体は、その吸水機能を利用して、水の吸収、拡散、発散、透過、誘導等の用途に役立てられており、例えば、特許文献1に記載のポリオレフィン焼結体は、冷蔵庫の野菜室やチルド室等の結露水吸収材および庫内加湿体、エアコン等の加湿エレメント、プリンターのインク吸収体等の用途において実用化されている。
ところで、吸水機能を有する多孔質体としては、親水化を施された合成繊維の布や不織布、アスベスト布あるいは天然繊維の布帛、紙等の繊維素材、親水化を施された熱可塑性樹脂の中空糸膜や微多孔膜、金属やセラミックスの焼結体、吸水性高分子材料等も挙げられるが、ポリオレフィン樹脂粒子の多孔質焼結体は、吸水時の膨潤等による寸法変化が極めて小さい、成形体としての高い強度を維持する、複雑な形状にも対応できる等の利点が全て備わっていることから、様々な用途への展開が期待されている。しかし、医療、医薬品、あるいは食品等の用途においては、吸水機能に加えて、生体成分との相互作用が少なく、かつ、生体に対して安全であることが求められており、これらの要望を満たしうる親水性ポリオレフィン焼結体の開発が望まれている。
一方、上記の要望に関連する生体関連材料の分野では、ホスホリルコリン基含有重合体を利用した技術が注目を集めている。ホスホリルコリン基含有重合体は、細胞膜に由来するリン脂質類似構造に起因して、血液適合性、補体系非活性特性、生体物質非吸着性等の特性を有することが近年の研究で明らかとなっており、こうした特性を利用した生体関連材料の開発が盛んに行われている。例えば、特許文献2には、ホスホリルコリン類似基含有重合体が付着したポリオレフィン繊維を主体とする生体親和性材料が、特許文献3には、生体に由来する細胞、蛋白質又は情報伝達物質等を選択的に分離し、さらにその成分を回収することが可能なホスホリルコリン類似基を有する分離材が、特許文献4には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルの共重合体により被覆処理された生体親和性膜が、特許文献5には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のビニル重合性単量体との共重合体により改質された中空糸膜が、それぞれ開示されている。これら従来の生体関連材料は、いずれも血球細胞や血漿蛋白質等が材料表面に吸着することを防止又は抑制するというホスホリルコリン基含有重合体の作用に基づくものであり、生体に由来する成分と材料表面との相互作用を極力抑える方向で研究が進められている。しかしながら、ホスホリルコリン基含有重合体の親水性に着目してポリオレフィン樹脂粒子の多孔質焼結体に吸水機能を付与する試みについてはこれまで報告されていない。
特公平4−28021号公報 特開2005−6704号公報 特開2002−98676号公報 特許3207210号公報 WO2002/009857
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであって、工業的に生産が可能で、連続空孔を持ち、吸水機能と生体親和性を兼ね備え、耐変色性、成形性、耐衝撃性、機械的強度および吸水時の寸法安定性に優れた親水性多孔質焼結体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと特定のエチレン性不飽和基含有モノマーの共重合体をポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体の空孔内壁に保持することによって、優れた吸水機能と生体親和性を有する親水性ポリオレフィン焼結体が容易に得られることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと下記一般式(1)
(上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数2〜20の炭化水素基である。)
で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーとの共重合体がポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体の空孔内壁に保持されていることを特徴とする親水性ポリオレフィン焼結体。
(2)親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体中の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンモノマーユニット含有率が、3〜95モル%であることを特徴とする、上記(1)に記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
(3)親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体の保持率が、0.01〜50重量%であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
(4)親水性ポリオレフィン焼結体が、平均空孔率20〜80容積%、平均空孔径1〜150μmの連続空孔を有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
(5)親水性ポリオレフィン焼結体を構成するポリオレフィン樹脂粒子が、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数が3以上のオレフィンとの共重合体であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
(6)親水性ポリオレフィン焼結体を構成するポリオレフィン樹脂粒子が、平均粒径10〜350μm、90重量%以上の粒径が1〜500μmの範囲内、嵩密度0.20〜0.55g/cm、密度0.850〜0.970g/cm、かつ、粘度平均分子量5万〜700万であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
(7)2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと下記一般式(1)
(上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数2〜20の炭化水素基である。)
で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーとの共重合体溶液にポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体を減圧下にて浸漬することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の親水性ポリオレフィン焼結体の製造方法。
本発明によって、工業的に生産が可能で、連続空孔を持ち、吸水機能と生体親和性を兼ね備え、耐変色性、成形性、耐衝撃性、機械的強度および吸水時の寸法安定性に優れた親水性多孔質焼結体が容易に得られる。
以下、本願発明について具体的に説明する。なお、本発明において「重合」という語は単独重合のみならず共重合を包含した意味で用いる場合がある。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂粒子としては、粒子状のポリオレフィンであれば特に限定されないが、焼結成形に好適な粒子が容易に得られる、焼結成形が容易であり賦形性に優れる、適度に柔らかく適度に剛性がある、耐薬品性に優れる、焼結体に成形した後も加工性に優れる、素材の吸湿性および吸水性が低いことにより吸水時の寸法安定性に優れる等の理由から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の単独重合体、エチレンやプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸およびこれらのエステルとの共重合体であることが好ましく、エチレンの単独重合体あるいはエチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体であることが特に好ましい。エチレンと共重合する炭素数3以上のオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。このうちのいくつかを組み合わせて、エチレンと共重合することもできる。また、ブタジエン、イソプレン等のジエンの共存下にオレフィンを重合することも可能であり、さらにはジエンを重合することも可能である。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂粒子は、重合によって得られた樹脂粒子をそのまま用いても良いし、分級して用いても良い。また、粒子以外の形状に賦形した物を機械粉砕、冷凍粉砕、化学粉砕等の公知の方法によって粉砕し、得られた樹脂粒子をそのまま用いても良いし、分級して用いても良い。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂粒子の形状について、特に制限はない。真球状でも不定形でもよく、一次粒子からなるものでも、一次粒子が複数個凝集し一体化した二次粒子でも、二次粒子をさらに粉砕したものでも構わない。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂粒子の製造方法について特に制限はなく、一般的に用いられている溶液法、高圧法、高圧バルク法、スラリー法、気相法のいずれの製造方法を用いても良いが、オレフィン重合触媒を用いた重合によって直接ポリオレフィン樹脂粒
子が得られるスラリー法又は気相法を用いることが好ましく、特にスラリー法を用いることが好ましい。製造時の重合圧力について特に制限はなく、通常はゲージ圧として0.1MPa〜300MPaであるが、スラリー法の場合には常圧〜10MPaが好ましい。
重合温度について特に制限はなく、通常は25℃〜300℃であるが、スラリー法の場合には25℃〜120℃が好ましく、50℃〜100℃が特に好ましい。スラリー法の溶媒としては、通常使用される不活性炭化水素溶媒が用いられ、例えば、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、又は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
本発明におけるポリオレフィン樹脂粒子の平均粒径とは累積重量が50%となる粒子径、すなわちメディアン径であり、特に制限はないが、親水性ポリオレフィン焼結体として十分な吸水量を確保し、かつ、毛細管現象による吸水機能を十分に発揮するには、10〜350μmの範囲にあることが好ましく、30〜350μmの範囲にあることが特に好ましい。また、90重量%以上の粒径が1〜500μmの範囲内であることが好ましい。ここで、本発明において90重量%以上の粒径が1〜500μmの範囲内であるためには、平均粒径を測定する際に別途算出した1〜500μmの範囲の累積重量が測定粒子全体の90重量%以上となれば良い。
本発明におけるポリオレフィン樹脂粒子の嵩密度とは該ポリオレフィン樹脂粒子に滑剤等の添加剤を添加することなくJIS K 6892に準じて測定した値であり、特に制限はないが、親水性ポリオレフィン焼結体として十分な吸水量を確保し、かつ、毛細管現象による吸水機能を十分に発揮するには、0.20〜0.55g/cmの範囲にあることが好ましく、0.22〜0.50g/cmの範囲にあることが特に好ましい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂粒子の密度とは、ポリオレフィン樹脂粒子のプレスシートから切り出した切片を用い、JIS K 7112に準じて測定した値であり、特に制限はないが、親水性ポリオレフィン焼結体としての柔軟性を損なわずに剛性や耐薬品性を確保するには、0.850〜0.970g/cmの範囲にあることが好ましく、0.920〜0.960g/cmの範囲にあることが特に好ましい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂粒子の融点は、PERKIN ELMER社製示差走査熱量分析装置Pyris1を用いて測定した。サンプル8.4mgを50℃で1分保持した後、10℃/分の速度で200℃まで昇温し、その際に得られる融解曲線において最大ピークを示す温度を融点とした。
本発明におけるポリオレフィン樹脂粒子の粘度平均分子量とはポリマー溶液の比粘度から求めた極限粘度を粘度平均分子量に換算した値であり、特に制限はないが、焼結成形時に空孔の形成を阻害する要因となる樹脂の流動が少なく、かつ、隣り合うポリオレフィン樹脂粒子の融着性に優れるため、5万〜700万の範囲にあることが好ましく、10万〜500万の範囲にあることがより好ましく、20万〜400万の範囲にあることが特に好ましい。
本発明における焼結体は、ポリオレフィン樹脂粒子を所望の形状に堆積もしくは金型内に充填した後、粒子間に間隙を残しつつ無加圧又は加圧の状態で融点以上に加熱することによって得られる。ポリオレフィン樹脂粒子の表層が加熱融着することによって、連続空孔を容易に形成することができる。
焼結体の形状について、特に制限はないが、例えば板状、円筒状、円柱状、角柱状、球状、直方体、立方体、その他異形品等の形状にすることが可能である。
金型内に充填する方法としては、例えばバイブレートリパッカー等の振動式の充填装置を用いることができる。振動充填させる際の振幅が粒子に与える影響は比較的少ないものの、長時間の振動負荷によって粒径の小さな粒子が下部に沈み込むという粒子の再分配を
引き起こす可能性があることから、振動充填に要する時間は充填装置に合わせて必要最小限にすることが好ましい。
金型の材質について特に制限はなく、例えば鉄、ステンレス、真鍮、アルミニウム等が用いられるが、耐久性があり、熱容量が小さく、軽量で取扱いが容易であることから、アルミニウムが好ましい。金型の形状は、2枚の平板を平行に配した板用の物、直径の異なる円筒状のものを二重に配した円筒用の物等、粒子の充填が可能であれば特に制限はない。
本発明において焼結成形を行う際の加熱方法としては、温度制御が可能であれば特に制限はなく、例えば熱風乾燥機、電気誘電加熱、電気抵抗加熱等の方法を用いることができる。加熱温度は、ポリオレフィン樹脂粒子の融点付近で、粒子同士が十分に溶着する温度で、かつ、樹脂が流動し、粒子間隙を埋めることのない温度であれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンの場合、110〜220℃の範囲にあることが好ましく、120〜180℃の範囲にあることが特に好ましい。
本発明における焼結体の表面あるいは内部に、布、織物、編み物、不織布、穴あきフィルム、微多孔膜、金網等、本発明の吸水機能を阻害しないものを複合化することも可能である。また、一部分に非透湿性あるいは非透水性のフィルム、膜等を設けて、吸収した水分の影響を周囲に及ぼさないようにすることも可能である。さらに、着色、印刷等により意匠性を持たせることも可能である。なお、必要に応じて、熱安定剤、耐候剤、吸臭剤、脱臭剤、防かび剤、抗菌剤、香料、フィラー等を添加して焼結成形しても良い。これら添加剤を加える際には、流動パラフィン等の展着剤を用いることも可能である。
本発明における親水性ポリオレフィン焼結体の連続空孔とは、焼結体のある面からその他の面へ連続している空孔である。この空孔は、直線的であっても曲線的であっても良い。また、全体が均一な寸法であっても良いし、例えば表層と内部、あるいは一方の表層と他方の表層とで空孔の寸法を変えたものであっても良い。
本発明における親水性ポリオレフィン焼結体の平均空孔率とは、以下の式に従って算出された値であり、特に制限はないが、親水性ポリオレフィン焼結体として十分な吸水量と強度を確保し、かつ、毛細管現象による吸水機能を十分に発揮するには、20〜80容積%であることが好ましく、25〜60容積%であることがより好ましく、30〜55容積%であることが特に好ましい。
平均空孔率(容積%)=[(真の密度−見掛けの密度)/真の密度]×100
ここで、真の密度(g/cm)とはポリオレフィン樹脂粒子の密度であり、見かけの密度(g/cm)とは焼結体の重量を焼結体の外寸から算出した容積で割った値である。なお、焼結体の空孔は全体に均一であっても良いし、不均一であっても良い。
本発明における親水性ポリオレフィン焼結体の平均空孔径とは、平板状に焼結成形するか、又は焼結成形後に平板状に切り出した焼結体を用い、ASTM F 316−86に準じて測定した平均流量径の値であり、特に制限はないが、親水性ポリオレフィン焼結体として十分な吸水量と強度を確保し、かつ、毛細管現象による吸水機能を十分に発揮するには、1〜150μmであることが好ましく、3〜120μmであることがより好ましく、5〜100μmであることが特に好ましい。なお、水銀圧入法による測定結果からもほぼ同等の平均空孔径が得られる。
本発明における2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとは、以下の化学式
で示される化合物であり、例えば、特開昭54−63025号公報、特開昭58−154591号公報、特開昭63−222183号公報、Ishihara K, Ueda T, Nakabayashi N., Polymer Journal, 22, 355-360 (1990).等に示される公知の方法によって得ることができる。2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに含まれるホスホリルコリン基は、細胞膜を構成する脂質の極性基と同様の化学構造を有していることから、親水性に優れるとともに、良好な生体親和性を示す。
本発明における下記一般式(1)
(上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数2〜20の炭化水素基である。)
で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとの共重合体成分として用いられる。ここで、本発明におけるエチレン性不飽和基含有モノマーとは、エチレン性不飽和基、すなわち重合反応が生じるための重合性二重結合を有しているモノマーであり、それ自身が重合してマクロマーとなるものであっても良い。
上記の式中Rは水素原子又はメチル基であり、上記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーが、メタクリル酸エステル誘導体又はアクリル酸エステル誘導体であることを示している。
上記の式中Rで表される炭素数2〜20の炭化水素基としては、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−メチルプロピル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、オクチル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、2−メチルオクチル基、2−エチルヘプチル基、デシル基、2−メチルノニル基、2−エチルオクチル基、ラウリル基、ミスチル基、セチル基、ステアリル基等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキシル基、tert−ブチルシクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられ、脂肪族炭化水素基が好ましい。
なお、上記の式中Rで表される炭化水素基の炭素数が2〜20の範囲にあることによって、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとの共重合体の疎水性およびガラス転移温度の低下が抑制され、かつ、モノマー自体の取り扱い性に優れる等の利点がある。
本発明における上記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−メチルプロピルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、2−メチルブチルメタクリレート、2−エチルプロピルメタクリレート、2,2−ジメチルプロピルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−メチルペンチルメタクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、2−メチルヘキシルメタクリレート、2−エチルペンチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メチルヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、2−メチルオクチルメタクリレート、2−エチルヘプチルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、2−メチルノニルメタクリレート、2−エチルオクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ミスチルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等の直鎖又は分岐アルキルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、tert−ブチルシクロヘキシルメタクリレート等の環状アルキルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、2,4−ジメチルフェニルメタクリレート、2−ナフチルメタクリレート等の芳香族メタクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルプロピルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、2−エチルプロピルアクリレート、2,2−ジメチルプロピルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−メチルヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ノニルアクリレート、2−メチルオクチルアクリレート、2−エチルヘプチルアクリレート、n−デシルアクリレート、2−メチルノニルアクリレート、2−エチルオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ミスチルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート等の直鎖又は分岐アルキルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、tert−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の環状アルキルアクリレート、フェニルアクリレート、2−メチルフェニルアクリレート、4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジメチルフェニルアクリレート、2−ナフチルアクリレート等の芳香族アクリレート等が挙げられ、直鎖又は分岐アルキルメタクリレート、直鎖又は分岐アルキルアクリレートが好ましい。これらのエチレン性不飽和基含有モノマーは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明において親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体中の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンモノマーユニット含有率について特に制限はないが、生体親和性や親水性を発揮しながら水に対する溶解性や膨潤等による強度低下が抑えられるため、共重合体中の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンモノマーユニット含有率が、3〜95モル%の範囲にあることが好ましく、5〜70モル%の範囲にあることがより好ましく、10〜50モル%の範囲にあることが特に好ましい。
なお、本発明において親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体中の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンモノマーユニット含有率とは、以下の式に従って算出された値である。
含有率(モル%)=[A/(A+B)]×100
(上記の式中、Aは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのモル数、Bは上記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーのモル数である。)
本発明において親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体は、通常のラジカル重合により製造することができる。製造方法について特に制限はなく、例えば
、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと上記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーとを溶媒中で開始剤の存在下で反応させて得られる。
本発明において親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体を重合する際の溶媒としては、モノマーが均一溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルムおよびこれらの混合物等が挙げられる。
本発明において親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体を重合する際の開始剤としては、通常のラジカル開始剤あれば特に制限はなく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスマレノニトリル等の脂肪族アゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過酸化物等が挙げられる。これらのラジカル開始剤は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、開始剤の使用量について特に制限はないが、反応溶液中に0.001〜10重量%の割合となるよう添加することが好ましく、0.01〜5重量%の割合となるよう添加することがより好ましい。
本発明において親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体を重合する際の重合温度について特に制限はなく、例えば、熱分解によりラジカルを発生させる場合は、5〜100℃の範囲にあることが好ましく、10〜90℃の範囲にあることがより好ましく、20〜80℃の範囲にあることが特に好ましい。また、重合時間について特に制限はないが、10分間〜24時間が好ましく、30分間〜12時間がより好ましい。
本発明における親水性ポリオレフィン焼結体は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと上記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーとの共重合体がポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体の空孔内壁に保持されていることを特徴としている。
ここで、ポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体の空孔内壁とは、焼結体の連続空孔を形成している樹脂表層であり、流体が焼結体の連続空孔を通過する際に接触する部位である。
また、空孔内壁に保持されている状態とは、空孔内壁に上記共重合体の被覆層が形成されている状態である。ポリオレフィン樹脂粒子の多孔質焼結体は元々が疎水性であるため、空孔内壁に保持される共重合体の疎水性成分であるメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルのモノマーユニットが疎水/疎水相互作用で強く吸着しており、安定に保持される。さらに、細胞膜の主要構成成分であるリン脂質に類似した2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンモノマーユニットが表面に出るため、極めて生体親和性に優れたものになる。これは、界面活性剤によって親水化した従来の親水性ポリオレフィン焼結体では得られない効果である。
本発明において親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体の保持率について特に制限はないが、親水性ポリオレフィン焼結体の実用的な透過性能を維持しつつリン脂質類似構造に起因する機能を十分に発揮するには、0.01〜50重量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜40重量%の範囲にあることがより好ましく、0.10〜30%の範囲にあることが特に好ましい。
なお、本発明における保持率とは、以下の式に従って算出された値である。
保持率(重量%)=[(保持後の重量−保持前の重量)/保持前の重量]×100
本発明においてポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体の空孔内壁に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体を保持する方法としては、気相で行う方法であっても液相で行う方法であっても良く、特に制限はないが、より均一に保持することが
できる液相で行う方法が好ましい。
また、均一性を高めるために、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体はあらかじめ溶媒中に溶解させてから用いることが好ましい。具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体を適切な溶媒に溶解させた共重合体溶液を調製し、ポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体の空孔内壁にこの共重合体溶液を接触させ、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体を吸着させる。その後、過剰の共重合体溶液を除去し、必要に応じて乾燥を行うことにより、焼結体の空孔内壁に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体が被覆層となって保持される。
なお、上記の接触方法について特に制限はなく、例えば、共重合体溶液に焼結体を浸漬する、焼結体の連続空孔に共重合体溶液を通過させる、焼結体に共重合体溶液を封入する等の接触方法が挙げられるが、吸着処理溶液に焼結体を浸漬する方法が好ましい。
さらに、焼結体の空孔内部にまで均一に保持することができるため、共重合体溶液に焼結体を浸漬する際は、減圧下にて浸漬することが好ましい。減圧時の真空度は、焼結体の空孔内部から気泡が除去できれば特に制限はなく、減圧によって溶媒が蒸発しても良い。加えて、焼結体の空孔内壁に共重合体溶液を接触させる前には、脱気することが好ましい。脱気した反応容器に共重合体溶液を吸引導入することにより、焼結体の空孔内部にまで均一に保持することができる。脱気する際の反応容器内の真空度は0〜1340Paの範囲にあることが好ましく、0〜134Paの範囲にあることがより好ましく、0〜13.4Paの範囲にあることが特に好ましい。
本発明において2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体を溶解させる溶媒としては、均一溶解できるものであれば良く、特に制限はないが、ポリオレフィン樹脂の膨潤度が小さいものを用いることが好ましい。中でも、膨潤度が10%以下の溶媒が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトンや2−ブタノン等のケトン類、水、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。なお、本発明における膨潤度とは、溶媒中に1時間浸漬したポリオレフィン樹脂粒子の平均粒径と、浸漬前のポリオレフィン樹脂粒子の平均粒径との差を、浸漬前のポリオレフィン樹脂粒子の平均粒径で割った値である。
本発明において2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体を溶媒に溶解させる場合、共重合体溶液の濃度について特に制限はないが、親水性ポリオレフィン焼結体の実用的な透過性能を維持しつつリン脂質類似構造に起因する機能を十分に発揮するには、0.001〜10重量%の範囲にあることが好ましく、0.01〜7重量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5重量%の範囲にあることが特に好ましい。なお、共重合体溶液の量について特に制限はないが、工業生産の観点からポリオレフィン樹脂粒子又はその焼結体1gに対して2×10−6〜5×10−3の割合で用いることが好ましく、3×10−6〜2×10−3の割合で用いることが特に好ましい。
本発明においてポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体の空孔内壁に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体を保持する際の温度は、ポリオレフィン樹脂粒子の融点未満であれば特に制限はないが、0〜100℃の範囲にあることが好ましく、5〜90℃の範囲にあることがより好ましく、10〜80℃の範囲にあることが特に好ましい。本発明における2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体の分子量について特に制限はないが、溶媒への溶解性に支障がなく、かつ、溶出や脱落を抑制できることから、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量(Mw)が5000〜100万の範囲にあることが好ましく、7000〜50万の範囲にあることがより好ましく、1万〜30万の
範囲にあることが特に好ましい。
本発明では、親水性ポリオレフィン焼結体の吸水機能を評価するため、水滴吸収時間を測定する。ここで、本発明における水滴吸収時間について説明する。まず、縦50mm、横50mm、厚さ2mmの焼結体を、大気圧下、25℃にて24時間水中に浸漬し静置する。その後、大気圧下、25℃にて焼結体を取り出し、連続空孔中の水分をガーゼで吸い取ったらすぐさま、焼結体の中央に高さ20mmの位置から35μlの水滴を滴下して、全量が焼結体内部に吸収されるまでに要する時間を測定し、この時間を水滴吸収時間とする。本発明における水滴吸収時間について、特に制限はないが、親水性ポリオレフィン焼結体として吸水機能を十分に発揮するには、30秒以下であることが好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下が特に好ましい。
本発明において使用する水は、ろ過、蒸留、逆浸透、およびイオン交換のいずれか、又は、これらの組み合わせによって不純物や金属イオン等を除去し、抵抗率で5万Ω・cm以上の純水を用いることが望ましい。
本発明によって得られる親水性ポリオレフィン焼結体は、一般工業部材として利用可能であるほか、イムノクロマト法による迅速検査キットの支持体、アフェレシス治療用のフィルター、人工透析等用のフィルター、各種インプラント、生体分析キット等のプレフィルター、剛性の低いフィルター等の支持体、イオン交換樹脂の支持体等のライフサイエンス分野や、プリンタヘッド用インク吸収体、固体電解質の支持体、燃料電池用部材等のエレクトロニクス分野においても利用可能である。
次に、実施例および比較例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[焼結体の作製]
本発明の実施例および比較例における焼結体の作製は、以下の方法によって行った。まず、厚さ2mmのアルミニウム板を用いて、外寸が厚さ6mm、幅112mm、高さ108mm、内寸が厚さ2mm、幅100mm、高さ100mmの金型を作製した。金型の上蓋となるアルミニウム板を外し、30秒間バイブレーターで振動を与えながらポリオレフィン樹脂粒子を充填した。上蓋を元に戻した後、150℃のオーブンで25分間加熱して平板状の焼結体を得た。
[平均空孔率の測定]
本発明の実施例および比較例における平均空孔率は、以下の式に従って算出した。
平均空孔率(容積%)=[(真の密度−見掛けの密度)/真の密度]×100
ここで、真の密度(g/cm)とはポリオレフィン樹脂粒子の密度であり、見かけの密度(g/cm)とは焼結体の重量を焼結体の外寸から算出した容積で割った値である。[平均空孔径の測定]
本発明の実施例および比較例における平均空孔径は、ユアサアイオニクス株式会社製ポアサイズメーターPSM165、および、株式会社島津製作所製自動ポロシメータオートポアIV9510を用いて求めた。自動ポロシメータの測定条件は、低圧部測定範囲0.54〜40psia、低圧部測定点数46点、高圧部測定範囲50〜6000psia、高圧部測定点数43点とした。
[水滴吸収時間の測定]
本発明の実施例および比較例における水滴吸収時間の測定は、以下の方法によって行った。まず、縦50mm、横50mm、厚さ2mmの焼結体を、大気圧下、25℃にて24時間水中に浸漬し静置した。その後、大気圧下、25℃にて焼結体を取り出し、連続空孔中の水分をガーゼで吸い取ったらすぐさま、焼結体の中央にエッペンドルフ株式会社製マ
イクロピペットを用いて高さ20mmの位置から35μlの水滴を滴下して、全量が焼結体内部に吸収されるまでに要する時間を測定し、この時間を水滴吸収時間とした。なお、本発明の実施例および比較例における水は、イオン交換水(岡山汽水工業有限会社製、採水時の抵抗率が200万Ω・cm以上)を使用した。
[平均粒径の測定]
本発明の実施例および比較例におけるポリオレフィン樹脂粒子の平均粒径は、株式会社島津製作所製SALD−2100を用い、メタノールを分散媒として測定することによって求めた。また、1〜500μmの範囲の累積重量を算出し、測定粒子全体の90重量%以上であるか否かを判定した。
[嵩密度の測定]
本発明の実施例および比較例におけるポリオレフィン樹脂粒子の嵩密度は、該ポリオレフィン樹脂粒子に滑剤等の添加剤を添加することなく、JIS K 6892に準じて測定することによって求めた。
[密度の測定]
本発明の実施例および比較例におけるポリオレフィン樹脂粒子の密度は、ポリオレフィン樹脂粒子のプレスシートから切り出した切片を120℃で1時間アニーリングし、その後25℃で1時間冷却したものを密度測定用サンプルとして用い、JIS K 7112に準じて測定することによって求めた。なお、ポリオレフィン樹脂粒子のプレスシートは、縦60mm、横60mm、厚み2mmの金型を用い、ASTM D 1928 Procedure Cに準じて作製した。
[粘度平均分子量の測定]
本発明の実施例および比較例におけるポリオレフィン樹脂粒子の粘度平均分子量は、以下に示す方法によって求めた。まず、20cmのデカリン(デカヒドロナフタレン)にポリマー10mgをいれ、150℃で2時間攪拌してポリマーを溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、ウベローデタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(t)を測定した。同様に、ポリマー5mgの場合についても測定した。ブランクとしてポリマーを入れていない、デカリンのみの落下時間(t)を測定した。以下の式に従って求めたポリマーの比粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)とポリマーの比粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿した極限粘度(η)を求めた。
ηsp/C=(t/t−1)/0.1
この極限粘度(η)から以下の式に従い、粘度平均分子量(Mv)を求めた。
Mv=5.34×10η1.49
[重量平均分子量の測定]
本発明の実施例および比較例における2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体の重量平均分子量は、以下に示す方法によって求めた。まず、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの共重合体を1mg/mlになるよう溶出溶媒を用いて希釈し、この溶液を孔径0.45μmのメンブランフィルタで濾過し、試験溶液とした。ポリエチレングリコールを標準サンプルとして以下に示す条件でGPC測定を行った。
カラム;Shodex OHpak SB−804HQ×1本
溶出溶媒;[LiBr]=10mmol/l、MeOH/HO=7/3溶液
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー株式会社製)
検出;視差屈折計
流速;0.5ml/分
試料溶液使用量;100μl
カラム温度;25℃
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量測定(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の計算;日本分光ChromNAVを使用
[2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと2−エチルヘキシルメタクリレートの共重合体の合成]
本発明の実施例における2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと2−エチルヘキシルメタクリレートの共重合体は、以下に示す方法によって合成した。Ishihara K, Ueda T, Nakabayashi N., Polymer Journal, 22, 355-360 (1990).に記載の方法により合成した2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン7.8g、2−エチルヘキシルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製、和光一級)12.2g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製、和光特級)0.03g、およびエタノール(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)80gとからなる混合液を、かき混ぜ機、温度計、還流器、窒素導入管を備えた容量200cmの4つ口フラスコに仕込み、恒温槽中で60℃、10時間加熱重合させた。重合後、ジエチルエーテル(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)1800cmとクロロホルム(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)200cmの混合溶媒に重合液を滴下し、重合物を沈殿させた後、濾別、真空乾燥させた。得られた重合体は重量平均分子量(Mw)=3.3×10、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=1.45(GPC:標準ポリエチレングリコール換算)であった。
[実施例1]
平均粒径が163μm、粒径が1〜500μmの範囲内の累積重量が90重量%以上、嵩密度が0.44g/cm、密度が0.940g/cm、粘度平均分子量が330万である超高分子量高密度ポリエチレンパウダー(旭化成ケミカルズ株式会社製サンファインTM UH901)を用いて平板状の焼結体を作製した。減圧下、25℃にて2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと2−エチルヘキシルメタクリレートの共重合体の0.3重量%エタノール溶液1000cmに上記の焼結体を気泡が生じなくなるまで20分間浸漬した後、取り出して乾燥させることによって、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体の保持率0.40%の親水性多孔質焼結体を得た。得られた親水性多孔質焼結体の平均空孔率、平均空孔径、および水滴吸収時間を表1に示す。この親水性多孔質焼結体は、湿潤状態において優れた吸水機能を示した。
[比較例1]
実施例1で使用した超高分子量高密度ポリエチレンパウダーを用いて平板状の焼結体を作製した。得られた多孔質焼結体の平均空孔率、平均空孔径、および水滴吸収時間を表1に示す。この多孔質焼結体に吸水機能は認められなかった。
[実施例2]
実施例1で使用した超高分子量高密度ポリエチレンパウダーを用いて平板状の焼結体を作製した。大気圧下、25℃にて2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと2−エチルヘキシルメタクリレートの共重合体の0.3重量%エタノール溶液1000cmに上記の焼結体を10分間浸漬した後、取り出して乾燥させることによって、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体の保持率0.25%の親水性多孔質焼結体を得た。得られた親水性多孔質焼結体の平均空孔率、平均空孔径、および水滴吸収時間を表2に示す。この親水性多孔質焼結体は、湿潤状態において優れた吸水機能を示した。
[実施例3]
平均粒径が277μm、粒径が1〜500μmの範囲内の累積重量が90重量%以上、嵩密度が0.45g/cm、密度が0.955g/cm、粘度平均分子量が30万である高密度ポリエチレンパウダー(旭化成ケミカルズ株式会社製サンファインTM SH821)を用いた以外は、実施例1と同様の操作によって、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体の保持率0.40%の親水性多孔質焼結体を得た。得られた親水性多孔質焼結体の平均空孔率、平均空孔径、および水滴吸収時間を表2に示す。この親水性多孔質焼結体は、湿潤状態において優れた吸水機能を示した。
[実施例4]
実施例3で使用した高密度ポリエチレンパウダーを用いた以外は、実施例2と同様の操作によって、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体の保持率0.30%の親水性多孔質焼結体を得た。得られた親水性多孔質焼結体の平均空孔率、平均空孔径、および水滴吸収時間を表2に示す。この親水性多孔質焼結体は、湿潤状態において優れた吸水機能を示した。
本発明によって得られる親水性ポリオレフィン焼結体は、工業的に生産が可能で、連続空孔を持ち、吸水機能と生体親和性を兼ね備え、耐変色性、成形性、耐衝撃性、機械的強度および吸水時の寸法安定性に優れた多孔質素材として有用である。

Claims (7)

  1. 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと下記一般式(1)
    (上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数2〜20の炭化水素基である。)
    で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーとの共重合体がポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体の空孔内壁に保持されている親水性ポリオレフィン焼結体であって、かつ
    親水性ポリオレフィン焼結体を構成するポリオレフィン樹脂粒子が、平均粒径10〜350μm、90重量%以上の粒径が1〜500μmの範囲内、嵩密度0.20〜0.55g/cm 、密度0.850〜0.970g/cm 、かつ、粘度平均分子量5万〜700万である、
    ことを特徴とする親水性ポリオレフィン焼結体。
  2. 親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体中の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンモノマーユニット含有率が、3〜95モル%であることを特徴とする、請求項1に記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
  3. 親水性ポリオレフィン焼結体の空孔内壁に保持される共重合体の保持率が、0.01〜50重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
  4. 親水性ポリオレフィン焼結体が、平均空孔率20〜80容積%、平均空孔径1〜150μmの連続空孔を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
  5. 親水性ポリオレフィン焼結体を構成するポリオレフィン樹脂粒子が、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数が3以上のオレフィンとの共重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
  6. 一般式(1)で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーが、2−エチルヘキシルメタクリレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の親水性ポリオレフィン焼結体。
  7. 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと下記一般式(1)
    (上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数2〜20の炭化水素基である。)
    で示されるエチレン性不飽和基含有モノマーとの共重合体溶液にポリオレフィン樹脂粒子からなる焼結体を減圧下にて浸漬することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の親水性ポリオレフィン焼結体の製造方法。
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