(撮像装置の構成)
図1は、本実施例における撮像装置100(カメラ)の構成図である。
101は振れ補正レンズ(素子)である。振れ補正レンズ101は、モータ114によって光軸と垂直な方向に駆動され、撮像素子102の撮像面における像の位置を移動させることができる。このように、振れ補正レンズ101は、入射した外部の光の光軸に対して移動可能に支持されている。
102は撮像素子である。撮像素子102は、CCDセンサやCMOSセンサなどの光電変換素子で構成されている。撮像素子102は、振れ補正レンズ101を介して入射した外部の光を、電気信号に変換して出力する。
103は第1の信号処理回路である。第1の信号処理回路103は、撮像素子102から出力される電気信号を処理し、映像信号として出力する。より具体的には、撮像素子102から出力される電気信号はアナログ信号であるため、第1の信号処理回路103は、このアナログ信号に対してゲイン調整及びガンマ処理などを行い、RGB画像データなどのデジタル映像信号を出力する。
104はデータ処理回路である。データ処理回路104は、第1の信号処理回路103から出力されたデジタル映像信号を、データ圧縮などの処理を行い、記録用データを出力する。
105はメモリである。メモリ105は、データ処理回路104から出力された記録用データを記録する。本実施例では、メモリ105の種類は特に限定されるものではなく、振れ補正レンズ101及び撮像素子102から得られた映像を記憶する記憶手段であればよい。例えば、このような記憶手段として、メモリーカード、カメラ内蔵メモリ、テープ、ディスクなど各種メモリを用いることができる。
106はシステムコントローラである。システムコントローラ106は、レリーズボタン116から出力されるレリーズ信号に従ってデータ処理回路104及び振れ補正制御回路109を制御し、撮影のためのシーケンスを実行する。システムコントローラ106は、振れ補正レンズ101から得られた映像をメモリ105に記録する記録モードとメモリ105に記録しない非記録モードとを切り換える制御手段として動作する。
107は振れ検知センサである。振れ検知センサ107は、ジャイロスコープや加速度計などで構成される。振れ検知センサ107は、振れを検出する振れ検出手段として動作し、検出した振れを電気信号に変換して出力する。
108は第2の信号処理回路である。第2の信号処理回路108は、振れ検知センサ107から出力された電気信号を処理し、振れ情報信号を出力する。より具体的には、振れ検知センサ107から出力された電気信号はアナログ信号であるため、第2の信号処理回路108は、このアナログ信号に対してゲイン調整及び積分演算などを行い、A/D変換してデジタル振れ情報信号を出力する。
109は振れ補正制御回路である。振れ補正制御回路109は、第2の信号処理回路108から出力されたデジタル振れ情報信号に基づき、振れ補正レンズ101の目標駆動信号を出力する。より具体的には、第2の信号処理回路108から出力された振れ情報信号に応じて、振れを打ち消すために必要な振れ補正レンズ101の目標位置を算出する。目標駆動信号は、算出された振れ補正レンズ101の目標位置とカウンタ115から出力された振れ補正レンズ101の現在位置とから算出される。この目標駆動信号に従って振れ補正レンズ101が駆動されることにより、振れに起因する映像信号の振れが補正される。
このように、振れ補正制御回路109は、振れ検知センサ107からの出力信号に基づき、振れに起因する映像の振れを補正するように振れ補正レンズ101の目標駆動信号を出力する目標駆動信号出力手段として動作する。
本実施例では、目標駆動信号は振れ補正レンズ101の駆動速度すなわち目標駆動速度信号として出力される。このとき、目標駆動信号出力手段は、目標駆動信号として目標駆動速度信号を出力する目標駆動速度信号出力手段として動作する。ただし、これに代えて、目標駆動信号は振れ補正レンズ101の駆動量すなわち目標駆動量として出力されるように構成してもよい。
また本実施例では、位置センサ113から出力された検出信号に基づいて振れ補正レンズ101の現在位置を算出している。ただし、これに代えて、エンコーダなどを用いて直接振れ補正レンズ101の現在位置を検出してもよい。また、駆動回路110で算出された駆動信号を積算して振れ補正レンズ101の現在位置を算出するように構成することもできる。
110は駆動回路である。駆動回路110は、振れ補正制御回路109から出力された振れ補正レンズ101の目標駆動信号に従い、第1のドライバ111又は第2のドライバ112のいずれかを選択して、モータ114を駆動するための駆動信号を出力する。駆動回路110は、記録モードにおいて第1のドライバ111を動作させ、非記録モードにおいて第2のドライバ112を動作させる駆動選択手段である。
なお、本実施例では、駆動回路110から出力される駆動信号として、モータ114の駆動速度が出力される。ただし、駆動信号として、モータ114の駆動量が出力されるように構成してもよい。
111は第1のドライバである。第1のドライバ111は、駆動回路110から出力された駆動信号に従い、オープン通電切換駆動方式(以下、オープン通電切換駆動ともいう)によってモータ114を駆動する。第1のドライバ111は、目標駆動信号に基づき、所定の時間間隔でモータ114のコイルの通電状態を切り換える第1の駆動手段として動作する。なお、オープン通電切換駆動の詳細については後述する。
112は第2のドライバである。第2のドライバ112は、駆動回路110から出力された駆動信号に従い、フィードバック通電切換駆動方式(以下、フィードバック通電切換駆動ともいう)によってモータ114を駆動する。第2のドライバ112は、目標駆動信号に基づき、位置センサ113からの出力信号に従ってモータ114のコイルの通電状態を切り換える第2の駆動手段として動作する。なお、フィードバック通電切換駆動の詳細については後述する。
113は位置センサである。位置センサ113は、モータ114のロータ位置を検出して検出信号を出力する。このように、位置センサ113は、ロータ位置検出手段として動作する。なお、上述のとおり、ロータ位置検出手段としてエンコーダを用いることもできる。
114はモータである。モータ114は、振れ補正レンズ101を駆動するために、第1のドライバ111又は第2のドライバ112の出力に従って回転する。
115はカウンタである。カウンタ115は、位置センサ113から出力された検出信号をカウントしてカウント値を出力する。
116はレリーズボタン(RB)である。レリーズボタン116は、ユーザーが押圧操作を行うことによりレリーズ信号を出力し、撮影タイミングを撮像装置に指令する。
117はファインダである。ファインダ117は、振れ補正レンズ101を介した被写界の像を観察可能に構成されている。本実施例では、振れ補正レンズ101を介して入射した外部の光を分岐しているが、第1の信号処理回路103から出力されたデジタル映像信号を液晶ディスプレイなどの表示装置に投影する構成でもよい。
本実施例の撮像装置は、以上の要素により構成されている。
(撮影処理フロー)
次に、本実施例における撮像装置の撮影処理について説明する。図2は、本実施例における撮像装置の撮影処理を示すフローチャートである。
撮像装置における撮影処理が開始されると(ステップS101)、レリーズボタン116(RB)が半押しされているか否かを判定する(ステップS102)。レリーズボタン116が半押しされていない場合には、最初のステップS101に戻る。
レリーズボタン116が半押しされている場合、ファインダ117に映像が表示されているか否かを判定する(ステップS103)。ファインダ117に映像が表示されていれば、振れ補正制御回路109が振れ補正制御を行う(ステップS104)。ファインダ117に映像が表示されていなければ、ステップS104の振れ補正制御を行わず、次のステップに進む。
次に、レリーズボタン116の半押しが解除されているか否かを判定する(ステップS105)。レリーズボタン116の半押しが解除されている場合には、最初のステップS101に戻る。レリーズボタン116の半押しが解除されていない場合には、レリーズボタン116が全押しされているか否かを判定する(ステップS106)。
レリーズボタン116が全押しされていない場合には、ステップS103に戻り、ファインダ117に映像が表示されているか否かを判定する。レリーズボタン116が半押しされ、かつ、ファインダ117に映像が表示されている間は、振れ補正制御回路109が振れ補正制御を繰り返し行うことになる。この間にファインダ117を見ながらフレーミング動作を行うことで、振れのない状態で正確なフレーミングを行うことができる。
ステップS106において、レリーズボタン116が全押しされている場合には、データ処理回路104が映像信号の記録を開始する(ステップS107)。また、このとき振れ補正制御回路109が振れ補正制御を行う(ステップS108)。
その後、映像信号の記録が終了したか否かの判定を行う(ステップS109)。映像信号の記録が終了したと判定されない場合には、振れ補正制御回路109が再度振れ補正制御を行う(ステップS108)。映像信号の記録が終了したと判定された場合には、データ処理回路104による映像の記録を終了する(ステップS110)。
データ処理回路104が記録映像を処理した後、所定のフォーマットに従って記録映像をメモリ105に保存し(ステップS111)、最初のステップS101に戻る。映像を記録している間は、振れ補正制御回路109が振れ補正制御を繰り返し行うため、振れのない高品位な映像が得られる。本実施例では、記録開始から予め定めたシャッター秒時が経過した時刻を記録終了の判定をしている。また、メモリ105に記録される映像は静止画である。
以上の撮影処理によって、本実施例における撮像装置は、振れのない映像を記録することが可能となる。
(モータの構成)
図3は、本実施例で用いられるモータと位置センサの構成を示す斜視図である。本図では、説明のために一部の部品が破断して示されている。なお、本図におけるモータの構造は、本出願人による特開平09−331666号公報に開示されている。
モータ114は、マグネット201を有するロータ202、第1のコイル203、第2のコイル204、第1のヨーク205、第2のヨーク206、第1の位置センサ207、及び、第2の位置センサ208を備える。これらの要素のうち、第1のコイル203、第2のコイル204、第1のヨーク205、第2のヨーク206、第1の位置センサ207、及び、第2の位置センサ208によってステータが構成されている。
マグネット201は、外周が多極着磁された円筒形状の永久磁石である。角度位置に対し、径方向の磁力の強さが正弦波状に変化する着磁パターンを有する。ロータ202は、ステータに対して回転可能に支持され、マグネット201と一体に固定されている。
第1のヨーク205は、第1のコイル203に励磁される磁極歯を複数有している。励磁される極を切り換えることで、ロータに与えるトルクを変化させることができる。第2のヨーク206は、第1のコイル204に励磁される磁極歯を複数有している。励磁される極を切り換えることで、ロータに与えるトルクを変化させることができる。第1の位置センサ207及び第2の位置センサ208は、マグネット201の磁束を検出して検出信号を出力するホール素子である。
なお、本実施例では、ロータマグネットの磁束をホール素子によって検出している。しかしながら、ロータ位置を検出する方式は特に限定されるものではない。例えば、ロータの回転に伴って変位する検出用マグネットを配置して検出してもよい。また、遮光板やパターン面を光学センサによって読み取るように構成することもできる。
また、位置センサは、モータと一体に構成されるものでもよいし、モータとは別部材で構成してモータに装着してもよい。
(モータ駆動方式)
次に、オープン通電切換駆動(OP駆動)とフィードバック通電切換駆動(FB駆動)について、詳細に説明する。オープン通電切換駆動は、第1のドライバ111により行われ、フィードバック通電切換駆動は、第2のドライバ112により行われる。
(オープン通電切換駆動)
モータ114は、第1のドライバ111により、オープン通電切換駆動方式で駆動される。第1のドライバ111は、第1のドライバ111に入力された駆動パルス間隔(駆動周波数)と回転方向に従って、第1のコイル203と第2のコイル204の通電を順次切り換えることで、ロータ202を所望の速度で回転させることが可能である。また、入力された駆動パルス数に従って、ロータ202を所望の角度だけ回転させることが可能である。
このように、オープン通電切換駆動は、第1のドライバ111が目標駆動信号に基づいた所定の時間間隔でモータ114のコイルの通電状態を切り換えることにより実行される。
また、第1のドライバ111は、オープン通電切換駆動の一種であるマイクロステップ駆動によりモータ114を駆動させることができる。マイクロステップ駆動では、第1のコイル203と第2のコイル204に印加する電圧を段階的に変化させることにより、1ステップの中を分割して位置決めすることができる。本実施例では、パルス幅変調(PWM)制御を行うことにより、電圧を段階的に変化させている。
オープン通電切換駆動は、入力される駆動パルス数に応じて回転角が決まるため、駆動パルス数を制御することにより正確な位置制御が可能である。また、極端に回転速度が速くなければ、一定の位置決め精度を持ち、低速駆動時において安定した位置制御が可能である。また、マイクロステップ駆動により高分解能化を図ることもできる。すなわち、高分解能で正確な位置制御が可能であり、高い精度で振れ補正制御を行うことが可能である。
ただし、モータ114の負荷が大きい場合、コイル通電の切り換えに対してロータが応答できなくなり、脱調を起こす可能性がある。このため、実際の負荷に対して所定の安全率を見込んだ電力条件でモータを駆動する必要がある。この結果、後述するフィードバック通電切換駆動と比較して効率が低く、消費電力が高くなる。
また、駆動速度を速く(駆動パルス間隔を短く)すると、コイル通電の切り換えに対してロータが応答できなくなり、脱調を起こす可能性が高まる。このため、駆動パルス間隔に下限を加える必要があり、高速度での駆動が制限される。
(フィードバック通電切換駆動)
モータ114は、第2のドライバ112により、フィードバック通電切換駆動方式で駆動される。第2のドライバ112は、第2のドライバ112に入力された駆動パルス数と回転方向、及び、第1の位置センサ207と第2の位置センサ208の出力信号に従って、第1のコイル203と第2のコイル204の通電を順次切り換える。第2のドライバ112は、このような駆動により、ロータ202を所望の速度で回転させることが可能である。また、第1のコイル203と第2のコイル204に流す電流を制御することにより、ロータ202を所望のトルクで回転させることが可能である。
このように、フィードバック通電切換駆動は、第2のドライバ112が目標駆動信号に基づき、位置センサからの出力信号に従ってモータのコイルの通電状態を切り換えることにより実行される。
図4は、ヨーク、位置センサ、及び、ロータの位相関係を示すモータ軸方向の断面図である。本図中において、時計回りを正の方向とする。
図4において、205a〜dは第1のヨーク205の磁極歯、206a〜dは第2のヨーク206の磁極歯である。本実施例では、マグネットの極数は8極、着磁角Pは45°である。また、第1のヨーク205を基準とすると、第2のヨーク206の位相P/2は−22.5°、第1の位置センサ207の位相β1は+22.5°、第2の位置センサ208の位相β2は−45°である。
以下の説明では、電気角を用いてフィードバック通電切換駆動の動作を説明する。ここで電気角とは、マグネット磁力の1周期を360°として表したものである。ロータの極数をM、実際の角度をθ0とすると、電気角θは以下の式(1)で表される。
θ=θ0×M/2 (1)
第1のヨーク205と第2のヨーク206の位相差、第1の位置センサ207と第2の位置センサ208の位相差、及び、第1のヨーク205と第1の位置センサ207の位相差は、全て電気角θで90°となる。なお、図4において、第1のヨーク磁極歯中心とマグネットのN極中心が対向している。この状態をロータの初期状態とし、このときの電気角θを0°とする。
図5は、(1)ロータの回転角度とモータトルクの関係、及び、(2)ロータの回転角度とセンサ出力の関係、をそれぞれ示すグラフである。
図5(1)において、横軸は電気角θを示し、縦軸はモータトルクTを示す。モータトルクTは、ロータを時計回りに回転させるトルクを正とする。
第1のコイル203に正方向の電流を流すと、第1のヨーク205がN極に磁化し、マグネットの磁極との間に電磁気力が発生する。また、第2のコイル204に正方向の電流を流すと、第2のヨーク206がN極に磁化し、マグネットの磁極との間に電磁気力が発生する。2つの電磁気力を合成すると、ロータの回転に伴い略正弦波状のトルクが得られる(トルク曲線A+B+)。
同様に、他の通電状態においても、略正弦波状のトルクが得られる(トルク曲線A+B−、A−B−、A−B+)。また、第1のヨーク205は第2のヨーク206に対して電気角で90°の位相をもって配置されるため、4つのトルクは互いに電気角で90°の位相差を有する。
図5(2)において、横軸は電気角θを示し、縦軸は位置センサの出力を示す。
マグネットの径方向磁力の強さは、電気角θに対して略正弦波状になるように着磁している。そのため、第1の位置センサ207からは略正弦波状の信号が得られる(センサ信号A)。なお、本実施例では、第1の位置センサ207は、マグネットのN極と対向するときに正の値を出力する。
また、第2の位置センサ208は、第1の位置センサ207に対して電気角で90°の位相をもって配置されている。このため、第2の位置センサ208からは略余弦波状の信号が得られる(センサ信号B)。なお、本実施例では、第2の位置センサ208は、第1の位置センサ207に対して極性が反転している。このため、第2の位置センサ208は、マグネットのS極と対向するときに正の値を出力する。
センサ信号A、センサ信号Bに対して2値化を行った信号が、それぞれ、2値化信号A、2値化信号Bである。フィードバック通電切換モードでは、2値化信号Aに基づいて第1のコイル203の通電を切り換え、2値化信号Bに基づいて第2のコイル204の通電を切り換える。すなわち、2値化信号Aが正の値を示すとき第1のコイル203に正方向の電流を流し、負の値を示すとき第1のコイル203に逆方向の電流を流す。また、2値化信号Bが正の値を示すとき第2のコイル204に正方向の通電を流し、負の値を示すとき第2のコイル204に逆方向の通電を流す。
図6は、フィードバック通電切換駆動の動作を示すモータ軸方向の断面図である。
図6(a)は、ロータが電気角θで135°回転した状態(θ0=33.75°)を示している。各センサの出力は図5(2)の(a)で示した値を示しており、2値化信号Aは正、2値化信号Bは負の値を示している。従って、第1のコイル203には正方向の電流が流れて第1のヨーク205はN極に磁化する。また、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図5(1)のトルク曲線A+B−に対応する時計回りのトルクが働き、ロータはθ方向の回転力を受けて回転する。
図6(b)は、ロータが電気角θで180°回転した状態(θ0=45°)を示している。第1の位置センサ207はマグネットのN極とS極の境界に位置する。このため、電気角180°を境に2値化信号Aは正の値から負の値に切り換わり、第1のコイル203の通電方向が正方向から逆方向へ切り換わる。この電気角は、トルク曲線A+B−とトルク曲線A−B−との交点における電気角と一致する。
図6(b’)は、ロータが電気角θで180°回転し(θ0=45°)、第1のコイル203の通電方向が切り換わった状態を示している。第1のコイル203には逆方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化する。また、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図5(1)のトルク曲線A−B−に対応する時計回りのトルクが働き、ロータはθ方向の回転力を受けて回転する。
図6(c)は、ロータが電気角で225°回転した状態(θ0=56.25°)を示している。各センサの出力は図5(2)中の(c)で示した値であり、2値化信号A及び2値化信号Bはいずれも負の値を示している。従って、第1のコイル203には負方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化する。また、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図5(1)のトルク曲線A−B−に対応する時計回りのトルクが働き、ロータはθ方向の回転力を受けて回転する。
図6(d)は、ロータが電気角で270°回転した状態(θ0=67.5°)を示している。第2の位置センサ208はマグネットのN極とS極の境界に位置する。このため、電気角270°を境に2値化信号Bは負の値から正の値に切り換わり、第2のコイルの通電方向が逆方向から正方向へ切り換わる。この電気角は、トルク曲線A−B−とトルク曲線A−B+との交点の電気角と一致する。
図6(d’)は、ロータが電気角で270°回転し(θ0=67.5°)、第2のコイル204の通電方向が切り換わった状態を示している。第2のコイル204には正方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。また、第1のコイル203には逆方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化する。このとき、図5(1)のトルク曲線A−B+に対応する時計回りのトルクが働き、ロータはθ方向の回転力を受けて回転する。
以上の動作を繰り返すことにより、ロータを連続的に回転させることが可能となる。また、2値化信号A又は2値化信号Bの正負を反転させれば、逆回転も可能である。
フィードバック通電切換駆動では、駆動パルス数と回転方向を入力することで、ロータを所望の角度だけ回転させることが可能である。また、コイルに流す電流を制御することで各ヨークの磁極歯とマグネット磁極との間の磁力を変化させ、ロータに働く回転力を制御し、ロータを所望の速度で回転させることが可能である。
フィードバック通電切換駆動では、各トルク曲線の交点と一致する電気角において通電を切り換える。このため、モータから得られるトルクを最大にすることができる(図5(1)に示されるトルク曲線T)。
上述のとおり、オープン通電切換駆動では、負荷が大きくなると、通電切換に対してロータの回転が追いつかず、脱調を起こすことがある。これに対し、フィードバック通電切換駆動では、ロータの位置を検出しながら通電を切り換えるため、脱調を防止することができる。このため、オープン通電切換駆動のように安全率を見込む必要がなく、オープン通電切換駆動に対して高効率である。その結果、フィードバック通電切換駆動によれば、オープン通電切換駆動と比較して消費電力を低減することが可能である。
また、フィードバック通電切換駆動では、ロータの位置を検出しながら通電を切り換えるため、速度を速くした場合でも脱調を起こしにくい。このため、オープン通電切換駆動のように駆動パルス間隔に下限を加える必要がなく、オープン通電切換駆動と比較して高速で駆動することが可能である。
一方、フィードバック通電切換駆動では、コイルに流す電流を制御することで速度制御を行うことができるが、負荷トルク変動などの影響を受けるため、オープン通電切換駆動と比較して高精度の速度制御は困難である。また、低速駆動時には電流値を低くしなければならず、トルクが低下する。そのため、低速駆動時の位置決め精度は低下し、低速の振れに対して高精度で振れ補正を行うことが困難となる。
(駆動方式とモータ出力の関係)
ここで、オープン通電切換駆動とフィードバック通電切換駆動でのモータ出力の関係に関してまとめると以下のようになる。
図7は、オープン通電切換駆動とフィードバック通電切換駆動でのモータ出力の関係を示すグラフである。横軸は駆動周波数PPSを、縦軸は出力トルクTを示している。また、T1はモータの最大出力トルクを表している。
オープン通電切換駆動及びフィードバック通電切換駆動のいずれでも、コイルへの通電切り換えを理想的なタイミングで行う場合には、脱調が発生しない。このとき、モータそのものの出力は、最大出力トルクT1と同等である。
しかし、オープン通電切換駆動において駆動速度を速く(駆動周波数を高く)すると、コイル通電の切り換えに対してロータが応答できなくなり、脱調を起こす可能性が高まる。このため、オープン通電切換駆動では、最大出力トルクT1に対しある安全率をもった特性範囲T1’のもとでモータは使用される。
これに対し、フィードバック通電切換駆動では、センサ信号を用いて脱調を防ぐため、最大出力トルクT1のもとでモータを使用することができる。このため、フィードバック通電切換駆動は、オープン通電切換駆動の場合より実質的には大きな出力トルクを安定的に取り出すことができ、高効率で低消費電力の駆動方式であるとみなすことができる。
(レンズ駆動処理フロー)
図8は、本実施例におけるレンズ駆動処理を示すフローチャートである。
まず、振れ補正レンズ101の目標駆動信号が振れ補正制御回路109から出力され、駆動回路110に入力されると(ステップS201)、データ処理回路104がメモリ105に対して映像記録を行っているか否かを判定する(ステップS202)。データ処理回路104が映像記録を行っている場合(記録モード)には、第1のドライバ111に目標駆動信号に応じた駆動信号が出力される。このため、モータ114は、オープン通電切換駆動(OP駆動)によって回転され、振れ補正レンズ101が駆動される(ステップS203)。一方、データ処理回路104が映像記録を行っていない場合(非記録モード)には、第2のドライバ112に目標駆動信号に応じた駆動信号が出力される。このため、モータ114は、フィードバック通電切換駆動(FB駆動)によって回転され、振れ補正レンズ101が駆動される(ステップS204)。いずれの場合でも、振れ補正制御回路109から出力される目標駆動信号に従って振れ補正レンズ101が駆動され、レンズ駆動処理は終了する(ステップS205)。
上述のとおり、駆動選択手段としての駆動回路110は、記録モードにおいて第1のドライバ111を動作させ、非記録モードにおいて第2のドライバ112を動作させる。
以上の駆動処理によって、本実施例における撮像装置は、目標駆動信号に従ってレンズ駆動を行い、振れ補正制御が可能になる。
本実施例のレンズ駆動処理によれば、振れ補正レンズは、映像記録を行っていない非記録モード時には低消費電力のフィードバック通電切換駆動で駆動される。また、映像記録を行っている記録モード時には低速の振れに対して位置決め精度の高いオープン通電切換駆動で駆動される。
従って、本実施例の撮像装置では、非記録モード時における振れ補正の消費電力を低減するとともに、記録モード時における振れ補正性能の劣化を防ぐことが可能となる。
次に、実施例2における撮像装置について説明する。本実施例において、実施例1における説明と重複する部分の説明は省略し、実施例1とは異なる部分のみ説明する。
(レンズ駆動処理フロー)
図9は、実施例2におけるレンズ駆動処理を示すフローチャートである。
まず、振れ補正レンズ101の目標駆動信号が振れ補正制御回路109から出力され、駆動回路110に入力されると(ステップS301)、データ処理回路104がメモリ105に対して映像記録を行っているか否かを判定する(ステップS302)。
データ処理回路104が映像記録を行っている場合(記録モード)には、しきい値SHとして所定のしきい値Aを設定する(ステップS303)。一方、データ処理回路104が映像記録を行っていない場合(非記録モード)には、しきい値SHとして所定のしきい値Bを設定する(ステップS304)。ここで、しきい値Aは、しきい値Bより大きい値であることが望ましい。詳細については後述する。
次に、振れ補正制御回路109において目標駆動速度TGTが算出され(ステップS305)、目標駆動速度TGTがしきい値SHより小さいか否かが判定される(ステップS306)。
目標駆動速度TGTがしきい値SHより小さい場合、第1のドライバ111に目標駆動速度TGTに応じた駆動信号が出力され、オープン通電切換駆動(OP駆動)によってモータ114が駆動される(ステップS307)。一方、目標駆動速度TGTがしきい値SH以上の場合、第2のドライバ112に目標駆動速度TGTに応じた駆動信号が出力され、フィードバック通電切換駆動(FB駆動)によってモータ114が駆動される(ステップS308)。いずれの場合でも、振れ補正レンズ101は、振れ補正制御回路109から出力される目標駆動信号に従って駆動され、レンズ駆動処理が終了する(ステップS309)。
以上の駆動処理によって、本実施例における撮像装置は、目標駆動信号に従ってレンズ駆動を行い、振れ補正制御が可能になる。
図10(a)は、本実施例におけるモータの駆動速度と消費電力の関係を示すグラフである。本図において、横軸は駆動速度Vを、縦軸は消費電力Wを示している。また、図中のA、Bはしきい値A、Bを示している。OPで示された線はオープン通電切換駆動での駆動速度と消費電力の関係、FBで示された線はフィードバック通電切換駆動での駆動速度と消費電力の関係をそれぞれ示している。
オープン通電切換駆動では一定の電圧で駆動されるため、駆動速度Vによらず、略一定の消費電力W1を示す。一方、フィードバック通電切換駆動ではロータの位置を検出しながら通電を切り換えるため、脱調を防止することが可能であり、オープン通電切換駆動と比較して低消費電力での駆動が可能となっている。また、フィードバック通電切換駆動では、電圧又は電流制御により駆動速度を制御するため、低速になるに従って消費電力は低くなる。
本実施例のレンズ駆動処理によれば、映像記録を行っていない時(非記録モード)において、目標駆動速度信号がしきい値Bより小さい場合はオープン通電切換駆動で駆動される。一方、目標駆動速度信号がしきい値B以上の場合はフィードバック通電切換駆動で駆動される。このため、映像記録を行っていない時(非記録モード)は全てオープン通電切換駆動で駆動する場合に比べて、消費電力の低減が可能である。
なお、上述のとおり、駆動選択手段としての駆動回路110は、第1のドライバ111及び第2のドライバ112を動作させる。特に、図10(a)に示される駆動処理において、駆動回路110は、目標駆動速度信号に応じて、第1のドライバ111又は第2のドライバ112のいずれかでモータを駆動させるように信号を出力する。より具体的には、後述のとおり、目標駆動速度信号が所定のしきい値A(第1しきい値)又はしきい値B(第2しきい値)より大きいか否かで判定される。
図10(b)は、本実施例におけるモータの駆動速度と位置決めトルクの関係を示すグラフである。本図において、横軸は駆動速度Vを、縦軸は位置決めトルクTを示している。また、図中のA、Bはしきい値A、Bを示している。OPで示された線は、オープン通電切換駆動での駆動速度と位置決めトルクの関係、FBで示された線は、フィードバック通電切換駆動での駆動速度と位置決めトルクの関係を示している。また、T0は、補正レンズの駆動に必要な最低位置決めトルクである。なお、ここで言う位置決めトルクとは、停止位置からモータが動かず保持されたままの状態をキープするために必要なトルクのことである。
オープン通電切換駆動では、低速度時に高い位置決めトルクを持つ。しかし、高速時には徐々にトルクが落ち、速度V2では脱調が起きて位置決めトルクが急激に低下する。一方、フィードバック通電切換駆動では、ロータの位置を検出しながら通電を切り換えるため、脱調を抑えることが可能であり、オープン通電切換駆動と比較して高い速度でも駆動が可能である。
また、電圧制御又は電流制御によって位置決めトルクが最低位置決めトルクT0と釣り合うように制御されているため、トルクは最低位置決めトルクT0で一定となる。ただし、フィードバック通電切換駆動では、電圧制御又は電流制御により駆動速度を制御するため、低速になるに従って電流値が低くなる。この結果、出力可能なトルクが制限され、速度V1以下では最低位置決めトルクT0を下回ってしまう。
したがって、V1より小さい速度ではオープン駆動を用い、V2より大きい速度ではフィードバック駆動を用いることが望ましい。すなわち、本実施例におけるしきい値SHはV1より大きく、V2より小さい値であることが望ましい。
ここで、しきい値SHとして実際に設定される値の、しきい値Aおよびしきい値Bの大小関係について説明する。本実施例においては、しきい値Aはしきい値Bより大きい値に設定している。
図11(a)は、映像記録を行っている時のモータの駆動速度と消費電力との関係を示すグラフである。また、図11(b)は、映像記録を行っている時のモータの駆動速度と位置決めトルクとの関係を示すグラフである。映像記録を行っている時(記録モード)は、図9のフローチャートで示したように、しきい値SH(第1しきい値)はしきい値Aに設定される。図11中の斜線部が、映像記録を行っている時の消費電力および位置決めトルクを示している。
図12(a)は、映像記録を行っていない時のモータの駆動速度と消費電力との関係を示すグラフである。また、図12(b)は、映像記録を行っていない時のモータの駆動速度と位置決めトルクとの関係を示すグラフである。映像記録を行っていない時(非記録モード)は、図9のフローチャートで示したように、しきい値SH(第2しきい値)はしきい値Bに設定される。図12の斜線部が、映像記録を行っていない時の消費電力および位置決めトルクを示している。
また、前述したように、しきい値Aはしきい値Bより大きい値に設定されている。
図11(a)と図12(a)を比較すると、駆動速度がしきい値Aとしきい値Bの間の速度で、映像記録を行っていない時(図12(a))は、映像記録を行っている時に比べて消費電力が低く、映像記録を行っていない時の消費電力の低減が可能である。
図11(b)と図12(b)を比較すると、駆動速度がしきい値Aとしきい値Bの間の速度で、映像記録を行っている時(図11(b))は、映像記録を行っていない時に比べて位置決めトルクが高く、映像記録を行っている時の位置精度の向上が可能である。このため、しきい値A、Bは、次の範囲(2)で定めることが望ましい。
V1<B<A<V2 (2)
本実施例のレンズ駆動処理によれば、映像記録を行っている時(記録モード)に、目標駆動速度信号がしきい値A(第1しきい値)より小さい場合はオープン通電切換駆動で駆動される。一方、目標駆動速度信号がしきい値A以上の場合はフィードバック通電切換駆動で駆動される。このため、映像記録を行っている時は全てフィードバック通電切換駆動で駆動する場合に比べて、位置決めトルクを最低位置決めトルク以上に保つことができ、振れ補正精度を向上させることが可能である。
また、速度V2以上の高速領域においても、位置決めトルクを最低位置決めトルク以上に保つことができる。従って、映像記録を行っている時は全てオープン通電切換駆動で駆動する場合に比べて、高速での振れ補正精度を向上させることが可能である。
また、本実施例のレンズ駆動処理に従えば、映像記録を行っていない時(非記録モード)、目標駆動速度信号がしきい値B(第2しきい値)より小さい場合はオープン通電切換駆動で駆動される。一方、目標駆動速度信号がしきい値B(第2しきい値)以上の場合は、フィードバック通電切換駆動で駆動される。このため、速度V1以下の低速領域においても位置決めトルクを最低位置決めトルク以上に保つことができる。従って、映像記録を行っていない時は全てフィードバック通電切換駆動で駆動する場合に比べて、低速での振れ補正精度を向上させることが可能である。
また、本実施例のレンズ駆動処理によれば、しきい値A(第1しきい値)はしきい値B(第2しきい値)より大きい値に設定されている。そのため、非映像記録時における振れ補正の消費電力を低減するとともに、映像記録時における振れ補正性能の劣化を防ぐことが可能となる。
このように、駆動選択手段としての駆動回路110は、記録モードにおいて、目標駆動速度信号(つまりは目標駆動速度)が第1しきい値より小さいとき第1のドライバ111を動作させ、目標駆動速度信号が第1しきい値より大きいとき第2のドライバ112を動作させる。また、駆動回路110は、非記録モードにおいて、目標駆動速度信号が第2しきい値より小さいとき第1のドライバ111を動作させ、目標駆動速度信号が第2しきい値より大きいとき第2のドライバ112を動作させる。ここで、第1しきい値は、第2しきい値より大きく設定される。言い換えれば、第2しきい値は、第1しきい値よりも小さい。
以上のとおり、本実施例によれば、振れ補正可能な撮像装置において、非映像記録時における振れ補正の消費電力を低減するとともに、映像記録時における振れ補正性能の劣化を防ぐことが可能となる。