図1と図2に断面を示すズームレンズカメラのズームレンズ鏡筒10は、箱形のハウジング11と、該ハウジング11内に伸縮可能に支持される伸縮筒部12を有している。ハウジング11の外側はカメラの外装部材で覆われているが、外装部の図示は省略している。ズームレンズ鏡筒10の光学系は、物体側から順に、第1レンズ群13a、シャッタ13b、絞13c、第2レンズ群13d、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCDイメージセンサ13g(以下、CCD13g)からなっており、被写体像がCCD13gの受光部(図21にハッチングで示す位置)の撮像面上に結像する。図5に示すように、CCD13gは画像処理回路を備えた制御回路14aと電気的に接続しており、カメラ外面に設けた液晶モニタ14bに電子画像を表示し、当該電子画像データをメモリ14cに記録することが可能である。そして、図2に示す撮影状態では、撮影光学系を構成する全ての光学要素が同一の撮影光軸(撮影光学系の共通光軸)Z1上に位置するが、図1の鏡筒収納(沈胴)状態で、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが撮影光軸Z1から離れてハウジング11内を上方に退避移動し、この退避移動の結果生じるスペースに第2レンズ群13dが進入する。これにより鏡筒の収納長を短縮することが可能となっている。以下、光学要素の退避機構を含めたズームレンズ鏡筒10の全体構造を説明する。なお、以後の説明中では、ズームレンズ鏡筒10を搭載するズームレンズカメラのボディを正面から見たときの上下方向をy軸、同じくカメラ正面から見て左右方向をx軸と定義する。
ハウジング11は、中空の箱状部15と、撮影光軸Z1を囲むようにして該箱状部15の前壁15aに形成した中空の固定環部16とを有する。固定環部16の中心である回転中心軸Z0は、撮影光軸Z1と平行で該撮影光軸Z1よりも下方に偏心している。箱状部15内には、固定環部16の上方に退避スペースSP(図1、図2)が形成されている。
固定環部16の内周面側には、回転中心軸Z0と平行な軸で回動可能なズームギヤ17(図8)が支持されている。ズームギヤ17は、ハウジング11に支持されたズームモータMZ(図5、図10及び図11)によって正逆に回転される。また、固定環部16の内周面には、雌ヘリコイド16aと、回転中心軸Z0を中心とした環状をなす周方向溝16bと、回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な直進案内溝16cとが形成されている(図3、図4参照)。
固定環部16の内側には、回転中心軸Z0を中心として回動可能にヘリコイド環18が支持されている。ヘリコイド環18は、雌ヘリコイド16aに螺合する雄ヘリコイド18aを有し、雌ヘリコイド16aと雄ヘリコイド18aの関係によって回転しながら光軸方向に進退することができる。ヘリコイド環18はまた、雄ヘリコイド18aの前方の外周面上に回転案内突起18bを有しており、固定環部16に対して最も前方に移動した状態(図2ないし図4)では、雌ヘリコイド16aと雄ヘリコイド18aの螺合が解除されるとともに回転案内突起18bが周方向溝16bに摺動可能に嵌まり、ヘリコイド環18は光軸方向移動が規制されて定位置回転のみが可能になる。ヘリコイド環18の外周面にはさらに、雄ヘリコイド18aと同一周面位置に、撮影光軸Z1と平行なギヤ歯を有する環状のスパーギヤ18cが形成されており、該スパーギヤ18cに対してズームギヤ17が噛合している。ズームギヤ17は軸線方向に長く形成され、図1及び図10に示すヘリコイド環18の収納状態から図2及び図11に示す繰出状態まで、常にスパーギヤ18cとの噛合を維持する。なお、ヘリコイド環18は、光軸方向に分割可能な2つの環状部材を組み合わせて構成されており、図10及び図11では、ヘリコイド環18のうち後方の環状部材のみを図示している。
ヘリコイド環18の内側には直進案内環20が支持されている。図4に示すように、直進案内環20は、その後端部付近に設けた直進案内突起20aを固定環部16の直進案内溝16cに摺動可能に係合させることで、回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ直進案内されている。ヘリコイド環18は、該ヘリコイド環18の内周面と直進案内環20の外周面との間に設けた回転案内部21を介して、直進案内環20に対して相対回転自在かつ光軸方向には一緒に移動するように支持されている。回転案内部21は、軸線方向に位置を異ならせて設けた複数の周方向溝と、各周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起とからなっている。
直進案内環20は内周面に回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な直進案内溝20bを有し、該直進案内溝20bに対して1群直進案内環22の直進案内突起22aと、2群直進案内環23の直進案内突起23aとがそれぞれ摺動可能に係合している。1群直進案内環22は、内周面の直進案内溝22b(図3)を介して1群支持枠24を回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な方向に直進案内し、2群直進案内環23は、直進案内キー23bを介して2群支持枠25を回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な方向に直進案内している。1群支持枠24はフォーカシング枠29を介して第1レンズ群13aを支持し、2群支持枠25は第2レンズ群13dを支持している。
直進案内環20の内側には回転中心軸Z0を中心として回動可能なカム環26が設けられ、該カム環26は、回転案内部27、28(図4)を介して、1群直進案内環22と2群直進案内環23に対してそれぞれ相対回転自在かつ光軸方向には一緒に移動するように支持されている。回転案内部27は、カム環26の外周面側に設けられた周方向溝と、1群直進案内環22に設けられ該周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起により構成されている。回転案内部28は、カム環26の内周面側に設けられた周方向溝と、2群直進案内環23に設けられ該周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起により構成されている。
図4に示すように、カム環26は径方向外側に突出するフォロア突起26aを有し、該フォロア突起26aが、直進案内環20のフォロアガイド溝20cを貫通し、ヘリコイド環18の内周面に形成した回転伝達溝18dに係合している。回転伝達溝18dは回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な溝であり、該回転伝達溝18dに対してフォロア突起26aは周方向への相対移動を規制された状態で摺動可能に嵌まっている。つまり、回転伝達溝18dとフォロア突起26aの関係によって、ヘリコイド環18の回転がカム環26に伝達される。一方、フォロアガイド溝20cは、図にその展開形状が表れていないが、回転中心軸Z0を中心とする周方向溝部と、雌ヘリコイド16aと同方向に傾斜するリード溝部とを有するガイド溝である。よって、ヘリコイド環18によってカム環26が回転されるとき、フォロア突起26aがフォロアガイド溝20cのリード溝部内に位置する状態では、カム環26が回転しながら回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ進退し、フォロア突起26aがフォロアガイド溝20cの周方向溝部内に位置する状態では、カム環26は前後への進退は行わずに定位置回転する。
カム環26は外周面と内周面にそれぞれカム溝26b、26cを有する両面カム環であり、外周面側のカム溝26bには、1群支持枠24から径方向内方に突出されたカムフォロア24aが摺動可能に係合し、内周面側のカム溝26cには、2群支持枠25から径方向外方に突出されたカムフォロア25aが摺動可能に係合している。つまり、カム環26が回転されると、1群直進案内環22を介して直進案内された1群支持枠24は、カム溝26bの形状に従って回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ所定の軌跡で進退される。同様に、カム環26が回転されると、2群直進案内環23を介して直進案内された2群支持枠25は、カム溝26cの形状に従って回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ所定の軌跡で進退移動される。
2群支持枠25は、第2レンズ群13dを保持する筒状部25b(図1、図2参照)の前部に、シャッタ13bと絞13cを開閉可能に支持している。シャッタ13bと絞13cはそれぞれ、2群支持枠25に支持されたシャッタ駆動アクチュエータMSと絞駆動アクチュエータMA(図5)によって開閉させることができる。
第1レンズ群13aを保持するフォーカシング枠29は、1群支持枠24に対して回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ移動可能に支持されており、フォーカシングモータMF(図5)によってフォーカシング枠29を前後に移動させることができる。
ズームモータMZ、シャッタ駆動アクチュエータMS、絞駆動アクチュエータMA、フォーカシングモータMFはそれぞれ制御回路14aによって駆動制御される。ズームレンズ鏡筒10は、カメラのメインスイッチ14d(図5)のオンによりズームモータMZが駆動されて図2の撮影状態となり、メインスイッチ14dのオフにより該撮影状態から図1の収納状態になる。
以上のズームレンズ鏡筒10の動作をまとめると、図1の鏡筒収納状態においてメインスイッチ14dをオンにしてズームギヤ17を繰出方向へ回転駆動すると、ヘリコイド環18が回転しながら光軸方向前方に移動し、該ヘリコイド環18と共に直進案内環20も光軸方向前方へ直進移動する。また、ヘリコイド環18から回転力が伝達されたカム環26が、直進案内環20に対して回転しながら光軸方向前方に相対移動する。1群直進案内環22と2群直進案内環23は、カム環26と共に光軸方向前方に直進移動する。1群支持枠24と2群支持枠25はそれぞれ、カム環26に対して光軸方向に所定の軌跡で相対移動する。つまり、収納状態から鏡筒を繰り出すときの第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの光軸方向移動量は、固定環部16に対するカム環26の相対移動量と、カム環26に対する1群支持枠24と2群支持枠25の相対移動量(各カム溝26b、26cによる進退移動量)の合算値として決定される。
図6は、ヘリコイド環18、カム環26、そして該カム環26に対する第1レンズ群13aと第2レンズ群13dのそれぞれの移動軌跡(カム溝26b、26cの軌跡)を示したものであり、縦軸が鏡筒収納状態からテレ端までの鏡筒回転量(角度位置)を示し、横軸が光軸方向への移動量を示している。同図に示すように、ズームレンズ鏡筒10が収納位置(図1)からワイド端(図2上半、図3)まで繰り出されるほぼ中間の回転角θ1までは、ヘリコイド環18は回転しながら光軸方向前方に繰り出され、この回転角θ1以降は、テレ端(図2の下半、図4)に至るまで前述の定位置回転を行う。一方、カム環26は、鏡筒収納位置からワイド端に至る直前の回転角θ2まで、回転しながら光軸方向前方に繰り出され、この回転角θ2からテレ端に至るまでは、ヘリコイド環18と同様に前述の定位置回転を行う。そして、ワイド端からテレ端までのズーム領域での第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの光軸方向移動量は、定位置回転するカム環26に対する1群支持枠24と2群支持枠25の相対移動量(各カム溝26b、26cによる進退移動量)によって決定され、この第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの相対移動によって変倍がなされる。図7は、ヘリコイド環18及びカム環26の移動量とカム溝26b、26cによる移動量とを合成した、第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの実際の移動軌跡を示している。
ワイド端とテレ端の間のズーム領域では、フォーカシングモータMFによって第1レンズ群13aを単独で光軸方向に移動させることでフォーカシングが行われる。
以上は第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの動作であるが、前述の通り、本実施形態のズームレンズ鏡筒10では、第3レンズ群13eからCCD13gまでの光学要素が、撮影光軸Z1上の撮影位置から、該撮影位置より上方の光軸外退避位置Z2へと退避移動可能である。また、この第3レンズ群13eからCCD13gまでの光学要素を、撮影光軸Z1と直交する平面に沿って移動させて手振れ補正を行うことが可能である。続いてこの退避機構と手振れ補正機構を説明する。
図8及び図18に示すように、第3レンズ群13eとローパスフィルタ13fとCCD13gは、CCDホルダ30に保持されてユニット化されている。CCDホルダ30は、ホルダ本体30a、パッキン30b、押さえ板30cを備え、ホルダ本体30aの前端開口部に第3レンズ群13eが保持され、該ホルダ本体30aの内側に設けたフランジとパッキン30bの間にローパスフィルタ13fが挟持され、パッキン30bと押さえ板30cの間にCCD13gが挟持されている。ホルダ本体30aと押さえ板30cは、CCDホルダ30の中心軸(撮影状態での撮影光軸Z1)を中心として離間させて配置した3本の固定ビス30d(図17及び図18)によって互いに固定されている。3本の固定ビス30dはまた、画像伝送FPC31の一端部を押さえ板30cの後面に共締めしており、CCD13gの支持基板と画像伝送FPC31とが電気的に接続されている。
画像伝送FPC31は、CCD13gへの接続端部からハウジング11内の退避スペースSPへ向けて延出されており、撮影光軸Z1と略直交し上方へ向かう第1直線状部31aと、該第1直線状部31aから下方に向けて湾曲されたU字状部31bと、該U字状部31bに続いて下方に向かう第2直線状部31cと、該第2直線状部31cから再び上方へ向けて折り返された第3直線状部31dとを有している(図1、図2参照)。第3直線状部31dはハウジング11の前壁15aの内面に沿って固定されており、この第3直線状部31d以外の第1直線状部31a、U字状部31b及び第2直線状部31cが、CCDホルダ30の移動に応じて変形可能な変形部となっている。
CCDホルダ30は、該CCDホルダ30の中心軸(撮影状態での撮影光軸Z1)を中心として離間させて配置した3本の調整ビス33(図17及び図18)を介して左右移動枠32に支持される。CCDホルダ30と左右移動枠32の間には、3つの圧縮コイルばね34が3つ配されている。3つの調整ビス33の軸部はそれぞれ、圧縮コイルばね34に挿通されており、各調整ビス33の締め付け量を変化させると、対応する圧縮コイルばね34の圧縮量が変化する。調整ビス33と圧縮コイルばね34は、第3レンズ群13eの光軸を囲む配置で3個所設けられているため、3つの調整ビス33の締め付け量を変化させることにより、左右移動枠32に対するCCDホルダ30の傾き調整、つまり撮影光軸Z1に対する第3レンズ群13eの光軸の傾き調整を行うことができる。
図15に示すように、左右移動枠32は、x軸方向に向く左右ガイド軸35を介して、上下移動枠36に対して移動可能に支持されている。詳細には、左右移動枠32は、CCDホルダ30を囲む四角の枠状部32aと、該枠状部32aから側方に延出された腕部32bとを有し、枠状部32aの上面にばね支持突起32cが形成され、腕部32bの先端部には傾斜面32dと位置規制面32eが形成されている。位置規制面32eはy軸と平行な平面である。一方、上下移動枠36は、x軸方向に離間して設けた一対の移動規制枠36a、36bと、該一対の移動規制枠36a、36bの間に位置するばね支持部36cと、該ばね支持部36cに対してx軸方向の延長上に位置する上方軸受部36dと、該上方軸受部36dの下方に位置する下方軸受部36eとを有している。図16に示すように、一対の移動規制枠36a、36bの間のスペースに枠状部32aを位置させ、移動規制枠36bと上方軸受部36dの間に腕部32bの傾斜面32dと位置規制面32eを位置させた状態で、左右移動枠32が上下移動枠36に支持される。
上下移動枠36における移動規制枠36aと上方軸受部36dには、左右ガイド軸35の一端部と他端部が固定されており、移動規制枠36bとばね支持部36cには、左右ガイド軸35を挿通させる貫通孔が形成されている。左右移動枠32の腕部32bとばね支持突起32cには、左右ガイド軸35に対して摺動可能に嵌まる左右貫通孔32x1、32x2(図16)が形成されており、この左右貫通孔32x1、32x2と左右ガイド軸35の摺動関係により、左右移動枠32が上下移動枠36に対してx軸方向へ移動可能に支持される。ばね支持突起32cとばね支持部36cの間には、左右ガイド軸35を囲む態様で左右移動枠付勢ばね37が配設されている。左右移動枠付勢ばね37は圧縮コイルばねであり、ばね支持突起32cを移動規制枠36aに接近させる方向(図16の左方)へ向けて左右移動枠32を付勢している。
上下移動枠36の上方軸受部36dと下方軸受部36eにはさらに、撮影光軸Z1と直交しかつy軸方向に向く、上下貫通孔36y1、36y2(図15)が形成されている。上下貫通孔36y1と上下貫通孔36y2は一直線上に位置しており、上下ガイド軸38(図8、9)に対して摺動可能に挿通されている。上下ガイド軸38の両端部はハウジング11に固定されており、したがって上下移動枠36は、上下ガイド軸38に沿ってカメラ内をy軸方向に移動することができる。より詳細には、CCDホルダ30内の第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの中心を撮影光軸Z1上に位置させた図1の撮影位置と、これら第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの中心が固定環部16よりも上方の光軸外退避位置Z2に位置する図2の退避位置との間を、上下移動枠36が移動可能である。
上下移動枠36の一側部にはばね掛け部36fが突設され、該ばね掛け部36fとハウジング11内のばね掛け部11a(図8)との間に上下移動枠付勢ばね39が張設されている。上下移動枠付勢ばね39は引張ばねであり、上下移動枠36を下方、すなわち図1に示す撮影位置側へ付勢している。
以上のように、CCDホルダ30を保持する左右移動枠32は上下移動枠36に対してx軸方向へ移動可能に支持され、上下移動枠36はy軸方向へ移動可能に支持されている。このCCDホルダ30のx軸方向及びy軸方向の移動によって手振れ補正を行うことが可能であり、次のような手振れ補正機構が設けられている。
図9及び図19に示すように、左右駆動レバー40は、撮影光軸Z1と平行をなすレバー回動軸42により下端部が軸支され、上端部に先端着力部40aを有する。この先端着力部40aの近傍には、光軸方向後方に向けて突出された操作ピン40bと、ばね掛け部40cが設けられている。図12に示すように、左右駆動レバー40の先端着力部40aは移動部材43に当接している。移動部材43は、一対のガイドバー44(44a、44b)によってx軸方向へ摺動可能に支持されており、移動部材43に対してナット45が当接している。ナット45は、ガイドバー44bに摺動可能に嵌まる回転規制溝45aと、ねじ孔45bとを有し、ねじ孔45bに対して第1ステッピングモータ46のドライブシャフト(送りねじ、モータの回転軸)46aが螺合している。図13及び図14に示すように、カメラ正面から見て、ナット45は移動部材43の左側から当接している。また、左右駆動レバー40のばね掛け部40cには引張ばね47の一端部が係合し、引張ばね47の他端部はハウジング11内のばね掛け部11b(図12参照)に係合している。引張ばね47は、移動部材43をナット45に当接させる方向、すなわち図13、図14及び図19における反時計方向へ向けて左右駆動レバー40を回動付勢している。この構造から、第1ステッピングモータ46を駆動するとナット45がガイドバー44に沿って移動し、該ナット45と共に移動部材43が移動して左右駆動レバー40が揺動される。具体的には、図13及び図14の右方に向けてナット45を移動させると、引張ばね47の付勢力に抗しながら移動部材43が押圧され、左右駆動レバー40が同図の時計方向に回動する。逆に同図の左方に向けてナット45を移動させると、引張ばね47の付勢力によって移動部材43が追随して左方に移動し、左右駆動レバー40が反時計方向に回動する。
左右駆動レバー40に設けた操作ピン40bは、図19に示すように、左右移動枠32の腕部32bの先端部に設けた位置規制面32eに当接している。左右移動枠32は左右移動枠付勢ばね37によって同図の左方へ移動付勢されているため、位置規制面32eと操作ピン40bが当接した状態が維持される。そして、左右駆動レバー40が揺動すると操作ピン40bの位置がx軸方向に変位するので、左右ガイド軸35に沿って左右移動枠32が移動する。具体的には、図19の時計方向に左右駆動レバー40を回動させると、操作ピン40bが位置規制面32eを押圧し、左右移動枠付勢ばね37の付勢力に抗して左右移動枠32が同図の右方向へ移動する。逆に図19の反時計方向に左右駆動レバー40を回動させると、操作ピン40bが位置規制面32eから離れる方向に移動するため、左右移動枠付勢ばね37の付勢力によって左右移動枠32が追随して左方向へ移動する。
図8ないし図11、図13及び図14に示すように、上下ガイド軸38の近傍には、該上下ガイド軸38と平行なドライブシャフト(送りねじ、モータの回転軸)70aを備えた第2ステッピングモータ70と、ナット71が設けられている。図9に示すように、ナット71は、上下ガイド軸38に摺動可能に係合する回転規制溝71aと、ドライブシャフト70aに螺合するねじ孔71bとを有しており、第2ステッピングモータ70を駆動してドライブシャフト70aが正逆に回転すると、上下ガイド軸38に沿ってナット71がy軸方向に移動する。図10、図11、図13及び図14に示すように、ナット71は上下移動枠36の下方軸受部36eに対して下方から当接している。この構造から、第2ステッピングモータ70を駆動するとナット71が上下ガイド軸38に沿って移動し、該上下ガイド軸38に沿って上下移動枠36がy軸方向に移動する。具体的には、ナット71を上方へ駆動すると、該ナット71が下方軸受部36eを上方に向けて押圧し、上下移動枠付勢ばね39の付勢力に抗して上下移動枠36が上方向へ移動する。逆に、下方へ向けてナット71を駆動すると、これに追随して、上下移動枠付勢ばね39の付勢力によって上下移動枠36が下方向へ移動する。
以上の構造により、第1ステッピングモータ46を正逆に駆動させることにより、左右移動枠32をx軸方向へ正逆に移動させることができ、第2ステッピングモータ70を正逆に駆動させることにより、上下移動枠36をy軸方向へ正逆に移動させることができる。
左右移動枠32には、腕部32bを延長して板状部32fが形成されている。板状部32fは、カメラ正面から見て逆L字状をなしており、その先端部が上下移動枠36の下方軸受部36eの近傍に達するように上下方向に長く形成されている。また、上下移動枠36には、下方軸受部36eの先端部に板状部36sが形成されている。図8ないし図11、図13及び図14に示すように、ハウジング11内には、左右移動枠32に設けた板状部32fの通過を検出することが可能なフォトインタラプタ55と、上下移動枠36に設けた板状部36sの通過を検出することが可能なフォトインタラプタ56が設けられている。各板状部32f、36sの通過をフォトインタラプタ55、56で検知することによって、左右移動枠32と上下移動枠36の初期位置を検出することができる。
本実施形態のズームレンズカメラは、撮影光軸Z1と直交する平面内において互いに直交する2軸(カメラの上下軸と左右軸)周りにおける移動角速度を検出する振れ検知センサ57(図5)を備えており、カメラに加わった振れの大きさと方向は、この振れ検知センサ57によって検知される。制御回路14aは、振れ検知センサ57の検出した2軸方向の振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から焦点面(CCD13gの撮像面)上でのx軸方向及びy軸方向の像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするための各軸方向に関する左右移動枠32と上下移動枠36の駆動量及び駆動方向(第1ステッピングモータ46、第2ステッピングモータ53の駆動パルス)を演算する。そして、この演算値に基づいて、第1ステッピングモータ46と第2ステッピングモータ70を駆動制御する。これにより、左右移動枠32と上下移動枠36はそれぞれ、撮影光軸Z1の振れをキャンセルするべく所定方向に所定量駆動され、焦点面上での画像位置が一定に保たれる。撮影モード切替スイッチ14e(図5)のオンによってこの手振れ補正モードに入ることができ、撮影モード切替スイッチ14eをオフにした状態では、手振れ補正機能が停止されて通常撮影を行うことができる。
本実施形態のズームレンズカメラは、以上の手振れ補正機構の一部を利用して、鏡筒収納時における第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの光軸外退避位置Z2への退避動作を行わせる。図8ないし図11、図13及び図14に示すように、第2ステッピングモータ70は、下方にモータ本体を位置させ、該モータ本体から上方に向けて延出されたドライブシャフト70aは、y軸方向における上下移動枠36の退避移動量を超える長さを有している。また、このドライブシャフト70aと平行をなす上下ガイド軸38は、ドライブシャフト70a以上の長さを有している。このように構成することで、上下移動枠36を、手振れ補正に必要な可動域を超えてy軸方向へ大きく移動させることが可能となっており、上下移動枠36に支持されている第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gを、撮影光軸Z1上の位置(図11及び図14)から光軸外退避位置Z2(図10及び図13)まで移動させることができる。
制御回路14aは、ズームレンズ鏡筒10の状態に応じて第2ステッピングモータ70を駆動して上下移動枠36の位置を制御する。まず、ズームレンズ鏡筒10が撮影状態(ワイド端からテレ端の間)にあるときには、図11及び図14に示すように、ナット71をドライブシャフト70aの下端部近くに位置させて、撮影光軸Z1上に上下移動枠36(第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13g)を位置させる。この撮影状態では、第1ステッピングモータ46と第2ステッピングモータ70を適宜駆動してx軸方向及びy軸方向における前述の手振れ補正を行うことができる。この手振れ補正は、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが撮影光軸Z1上に位置する範囲での駆動であり、撮影光軸Z1を超えて光軸外退避位置Z2側に大きく移動されることはない。
ズームレンズ鏡筒10は、カメラのメインスイッチ14d(図5)のオンにより図2の撮影状態となり、スイッチオフにより該撮影状態から図1の収納状態になる。メインスイッチ14dがオフされて撮影状態から収納状態になるとき、制御回路14aは、ズームモータMZによる鏡筒収納動作を行わせると同時に、図10及び図13に示すように、第2ステッピングモータ70を駆動してナット71をドライブシャフト70aの上端部付近まで移動させる。すると、ナット71が上下移動枠付勢ばね39の付勢力に抗して上下移動枠36を上方へ押し上げ、上下移動枠36は、上下ガイド軸38にガイドされて図1に示すようにハウジング11内の退避スペースSP内へ移動される。その結果、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが、撮影光軸Z1上から光軸外退避位置Z2へと退避される。
上下移動枠36の退避移動、すなわち第2ステッピングモータ70の駆動は、ズームレンズ鏡筒10が完全な収納状態になるよりも前のθ3(図6及び図7)の回転角で完了されるように制御される。そして、このθ3の回転角から、ヘリコイド環18やカム環26がさらに回転しながら光軸方向後方へ移動する。そして、図1の収納状態まで達すると、第2レンズ群13dを保持する2群支持枠25の筒状部25bが、撮影時において上下移動枠36が占めていた空間まで入り込む。これにより、収納状態での撮影光学系の光軸方向の厚みを小さくすることができ、ズームレンズ鏡筒10及びそれを搭載するカメラの薄型化が可能になっている。なお、上下移動枠36の退避動作を開始させるタイミングは、図6及び図7におけるワイド端からθ3の間であれば任意に定めることができる。本実施形態では、カム環26の定位置回転動作と回転進退動作が切り換わるθ2の回転角付近で第2ステッピングモータ70による退避駆動が開始されるように制御されている。
ズームレンズ鏡筒10が収納状態から撮影状態になるときは、以上とは逆の動作が行われる。まず、カメラのメインスイッチ14dがオンされると、制御回路14aはズームモータMZに鏡筒繰出動作を開始させる。このとき第2ステッピングモータ70はまだ駆動されない。ズームモータMZによる繰出動作を受けて、第2レンズ群13dを保持する2群支持枠25が図1に示す最後方位置から前方へ向けて移動され、退避位置にある上下移動枠36の下方空間(撮影光軸Z1上の空間)が開放される。2群支持枠25は、図6及び図7に示すθ3の回転角になるまでには、上下移動枠36と重ならない前方位置までの移動が完了する。制御回路14aはこの時点から第2ステッピングモータ70を駆動させ、ナット71が上下ガイド軸38に沿ってドライブシャフト70aの下端部付近まで移動される。そして、上下移動枠付勢ばね39の付勢力により上下移動枠36がナット71に追随して下方に移動され、図10及び図13に示す撮影光軸Z1上の位置に達する。
なお、図20に示すように、上下移動枠36が光軸外退避位置Z2側へ退避されると、左右移動枠32の腕部32bに設けた位置規制面32eと左右駆動レバー40に設けた操作ピン40bの係合が解除され、左右移動枠32は左右移動枠付勢ばね37の付勢力によって同図の左方に移動されて、その枠状部32aが上下移動枠36の移動規制枠36aに当て付く。この状態から上下移動枠36が再び撮影光軸Z1側に移動されると、図20に二点鎖線で示すように左右移動枠32の傾斜面32dが操作ピン40bに当接する。傾斜面32dは、上下移動枠36の下降動作に従って操作ピン40bを位置規制面32e側に案内するように傾斜しているため、上下移動枠36が撮影位置まで下降されると、図19に示すように再び操作ピン40bが位置規制面32eに係合し、左右移動枠32の枠状部32aが移動規制枠36aと移動規制枠36bの間の中立位置に戻る。
以上のように、本実施形態のズームレンズ鏡筒10では、鏡筒収納時には、第2ステッピングモータ70の駆動力によって上下移動枠36が撮影光軸Z1上の位置から押し上げられて、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gからなるユニットが光軸外退避位置Z2(退避スペースSP)へと移動される。第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが退避した後の撮影光軸Z1上のスペースには、図1のように第2レンズ群13dが進入する。これによりズームレンズ鏡筒10を撮影光軸Z1方向において薄型化することができ、手振れ補正機構を備えていながら非撮影時にはカメラをコンパクトにできる。
図21は、手振れ補正機構を構成する各要素の、撮影光軸Z1に沿う方向での前後位置関係を示している。同図に示すように、CCDホルダ30をx軸方向に駆動する駆動源(駆動手段)である第1ステッピングモータ46とy軸方向に駆動する駆動源(駆動手段)である第2ステッピングモータ70は、CCD13gの撮像面を含む平面(以下、撮像平面と呼ぶ)Piを基準として、光軸方向前方(被写体側)の領域に配置されている。詳細には、第1ステッピングモータ46のドライブシャフト46aと第2ステッピングモータ70のドライブシャフト70aはそれぞれ撮像平面Piと平行な方向に軸線を向けており、ドライブシャフト46aの軸線位置Pf1とドライブシャフト70aの軸線位置Pf2が、それぞれ撮像平面Piに対して光軸方向前方にDf1、Df2ずらして配置されている。また、各ステッピングモータ46、70のみならず、第1ステッピングモータ46の駆動力を左右移動枠32に伝達する機構を構成する移動部材43、左右駆動レバー40及びナット45が、撮像平面Piに対して光軸方向前方に位置している。第2ステッピングモータ70の駆動力を上下移動枠36に伝達するナット71も、回転規制溝71aを有する先端部付近を除く大部分が、撮像平面Piに対して光軸方向前方に位置している。
一方、図21に示すように、左右移動枠32をx軸方向に案内する左右ガイド軸35と、上下移動枠36をy軸方向に案内する上下ガイド軸38はそれぞれ、撮像平面Piを基準として光軸方向後方(撮像面後方)の領域に配置されている。詳細には、左右ガイド軸35と上下ガイド軸38はいずれも撮像平面Piと平行な方向に軸線を向けており、このそれぞれのガイド軸35、38の軸線がいずれも、撮像平面Piに対して光軸方向後方にDrずれた軸線位置Prに位置している。本実施形態では、撮像平面Piに対する左右ガイド軸35と上下ガイド軸38の後方へのシフト量は同じであり、図21では左右ガイド軸35はばね掛け部36fの奥側に位置しているため直接見えていないが、左右ガイド軸35の軸線は軸線位置Prを通っている。なお、前述の通り、ナット71はねじ孔71bを含む大部分が撮像平面Piに対して光軸方向前方に位置しているが、回転規制溝71aが上下ガイド軸38に係合する関係上、この回転規制溝71aを含む先端付近だけが撮像平面Piを超えて光軸方向後方へ延出されている(図21参照)。
以上のように、CCDホルダ30(第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13g)を撮影光軸Z1と略直交する平面内で駆動して手振れ補正や光軸外への退避動作を行わせる装置において、撮像平面Piを基準とした前方(被写体側)領域に第1ステッピングモータ46(ドライブシャフト46a)や第2ステッピングモータ70(ドライブシャフト70a)といった駆動手段が配置され、撮像平面Piを基準とした後方領域に左右ガイド軸35と上下ガイド軸38といったガイド手段が配置されている。この配置により、手振れ補正時においてCCDホルダ30を精度良く駆動させることができる。その理由を説明する。
一般に、可動部材を案内するガイド手段には、円滑に移動させるために最小限のクリアランスが必要である。また、モータなどの駆動手段についても、動力伝達の過程でバックラッシュが不可避的に存在する。すなわち、本実施形態における左右ガイド軸35と左右移動枠32、及び上下ガイド軸38と上下移動枠36(上下貫通孔36y1、36y2)の間にはクリアランスがあり、第1ステッピングモータ46から左右移動枠32までの動力達経路(左右駆動レバー40、移動部材43、ナット45)や、第2ステッピングモータ70から上下移動枠36までの動力伝達経路(ナット71)にもバックラッシュやクリアランスがある。このようなクリアランスやバックラッシュは、実用上問題とならないような精度で設計されているが、部品の製造誤差を考慮すると、クリアランスやバックラッシュが駆動精度に及ぼす影響をより少なくした構造が望まれる。特に本実施形態では手振れ補正時に駆動される部材がCCD13gを含んでおり、CCD13gの撮像面の倒れや位置ずれが画像の質に大きく影響するので、撮像面の倒れや位置ずれを確実に防ぐ必要がある。また、手振れ補正用の駆動源としてステッピングモータ46、70を用いている。周知の通り、ステッピングモータはパルス入力に応じて回転軸をステップワイズに回転させるモータであり、その回転運動を直進運動に変換する機構に存在するバックラッシュが、手振れ補正での高速往復運動時の制御遅れを誘発するおそれがあるので、手振れ補正機構における精度を高めてモータ駆動時のCCDホルダ30の移動追従性を高める必要がある。
ところで、可動部材の駆動装置においては、ガタ(クリアランスやバックラッシュ)の発生部位と可動部材の距離が離れるほど、可動部材の駆動精度に及ぶ影響が大きくなりやすい。ガイド軸と摺動部材の関係を例にとると、摺動部材がガイド軸の一点を中心として倒れを生じる場合、同一の倒れ角であっても、倒れ中心から近い半径位置にある摺動部材より遠い半径位置にある摺動部材の方が、倒れを起因とする位置誤差が大きくなってしまう。また、ガイド手段や駆動手段と可動部材との距離が遠ければ間に介在する部材が長くなるため、この介在部材の撓みや製造誤差なども駆動精度に影響してくる。さらに、介在する部材が長いほど広いスペースを要するため、装置の大型化という問題も生じる。これらの理由から、可動部材のガイド手段や駆動手段は駆動対象のできるだけ近くに配置することが望ましい。この点に関して本実施形態では、第1ステッピングモータ46(ドライブシャフト46a)や第2ステッピングモータ70(ドライブシャフト70a)といった駆動手段と、左右ガイド軸35と上下ガイド軸38といったガイド手段とを、互いに撮像平面Piを挟んだ前後位置に分けて配置している。そのため、撮影光軸Z1に沿う方向において、駆動手段とガイド手段の両方を無理なく駆動対象であるCCD13gの撮像面の近くに位置させることが可能になっている。
より具体的に理解するべく、本実施形態に対応する図22と、その比較例である図24ないし図26を挙げる。図22はCCD13gに対するy軸方向の手振れ補正機構の要部を示しており、同図ではナット71の図示を省略し、駆動源である第2ステッピングモータ70と、y軸方向へのガイド手段である上下ガイド軸38のみを示している。図22のように撮像平面Piを挟んだ前後位置に第2ステッピングモータ70(ドライブシャフト70aの軸線位置Pf1)と上下ガイド軸38(軸線位置Pr)を分散配置することによって、第2ステッピングモータ70と上下ガイド軸38をそれぞれ、互いの存在に干渉されることなく撮像平面Piに接近させることができる。
比較例である図24と図25では、第2ステッピングモータ170、270(ドライブシャフト170a、270a)と上下ガイド軸138、238の両方が、CCD113g、213gの撮像平面Piの後方に位置されている。図24の構成では、第2ステッピングモータ170を間に挟んでいるために上下ガイド軸138を撮像平面Piに接近させることができず、上下ガイド軸138と上下移動枠136の摺接部分における精度誤差が、CCD113gの駆動精度に対して大きな影響を及ぼしてしまう。換言すれば、上下ガイド軸138と上下移動枠136の摺接部分で許容されるクリアランスの値が小さいため、部品に要求される精度が厳しくなり製造コストが高くなるおそれがある。図25の構成では、上下ガイド軸238を間に挟んでいるために第2ステッピングモータ270を撮像平面Piに接近させることができず、ドライブシャフト270aの回転駆動力をCCD213gに伝達する機構中に存在するバックラッシュなどが、CCD213gの駆動精度に対して大きな影響を及ぼしやすい。すなわち、図24の場合と同様に要求される部品精度が厳しくなり、製造コストが高くなってしまうおそれがある。
別の比較例である図26では、第2ステッピングモータ370(ドライブシャフト370a)と上下ガイド軸338の両方が、CCD313gの撮像平面Piの前方に位置されている。図26の構成では上下ガイド軸338を間に挟んでいるために第2ステッピングモータ370を撮像平面Piに接近させることができず、図25の場合と同様に、ドライブシャフト370aの回転駆動力をCCD313gに伝達する機構中に存在するバックラッシュなどがCCD313gの駆動精度に影響しやすくなってしまう。仮に図26における第2ステッピングモータ370と上下ガイド軸338の前後位置を入れ替えても、今度は上下ガイド軸338周りにおいて図24の場合と同様の問題が生ずる。
つまり、これらの比較例から分かるように、撮像平面Piを基準とする前後いずれかの領域にまとめて駆動手段(ステッピングモータ)とガイド手段(ガイド軸)を配置する構造は、駆動手段とガイド手段のいずれかが撮像面から遠くなってしまうので、低コストで高精度な手振れ補正駆動を行わせることが難しい。これに対し、図22に示す本実施形態の構造によれば、撮像平面Piを挟む前後位置に上下ガイド軸38と第2ステッピングモータ70(ドライブシャフト70a)を分散配置することによって、駆動手段とガイド手段の両方について撮像面の位置精度に及ぼす影響を小さくすることができ、低コストで高精度に手振れ補正駆動を行うことができる。
CCD13gを高精度に駆動するためには、図23のように、上下ガイド軸38の軸線位置Pf1と第2ステッピングモータ70のドライブシャフト70aの軸線位置Pf2の前後位置を逆にしてもよい。但し、本実施形態のズームレンズカメラにおけるスペース効率を考慮すると図22の形態の方が好ましい。その理由として、まず図2に示すように、撮影状態においてCCDホルダ30の前方にはヘリコイド環18やカム環26といった回転部材があり、これら前方の回転部材と手振れ補正機構との干渉を防ぐ必要がある。また、CCDホルダ30の後方はカメラの背面が近いため、カメラの厚み方向(図1及び図2の左右方向)において広いスペースを確保することが難しい。上下ガイド軸38と第2ステッピングモータ70を比較した場合、図22から分かる通り、上下ガイド軸38はy軸方向に長いが径サイズ(図22の左右方向幅)は小さい部材である。一方、第2ステッピングモータ70は、ドライブシャフト70aが上下ガイド軸38よりもy軸方向に短く、モータ本体部分の径サイズ(図22の左右方向幅)が大きい部材である。したがって、ヘリコイド環18やカム環26といった回転部材が存在する撮像平面Piの前方領域には、上下ガイド軸38よりもy軸方向の全長が短い第2ステッピングモータ70を配置する方が、ヘリコイド環18やカム環26などとの干渉が生じにくいので好ましい。また、カメラの厚み方向への幅が狭い撮像平面Piの後方領域には、第2ステッピングモータ70のモータ本体部分よりも小径な上下ガイド軸38を配置することが好ましい。換言すれば、撮像平面Piの後方に上下ガイド軸38を設ける方がカメラを薄型化できる。CCD13gの後方領域には、鏡筒収納状態でもヘリコイド環18やカム環26が進入しないスペースがあるため(図1参照)、y軸方向に長い上下ガイド軸38であっても、ヘリコイド環18やカム環26と干渉させずに配設することができる。
なお、図22では撮像平面Piに対して前後の軸線位置Pf2、Prが略等距離に表されているが、実際には図21に示すように、撮像平面Piに対する左右ガイド軸35と上下ガイド軸38の後方への距離Drと、撮像平面Piに対する各ステッピングモータ46、70のドライブシャフト46a、70aの前方への距離Df1、Df2は、Df1>Dr、Df2>Drという関係にある。つまり、CCD13gの前後方向(撮影光軸Z1と平行な方向)において、各ステッピングモータ46、70よりも各ガイド軸35、38の方が撮像平面Piに近く位置している。前述の通り、カメラの薄型化を考慮した場合には特にCCD13gの背後スペースが制約されるので、図21のように各ガイド軸35、38を可能な限り撮像平面Piに近づけて配置することが好ましい。
以上ではy軸方向の手振れ補正機構である上下ガイド軸38と第2ステッピングモータ70の配置の特徴とその効果について説明したが、x軸方向の手振れ補正機構である左右ガイド軸35と第1ステッピングモータ46についても、上下ガイド軸38と第2ステッピングモータ70と同様の技術思想に基づいて配置されている。すなわち、CCD13gの撮像平面Piを挟む前後位置に分けて第1ステッピングモータ46(ドライブシャフト46a)と左右ガイド軸35が設けられており(図21参照)、撮影光軸Z1方向において第1ステッピングモータ46と左右ガイド軸35をそれぞれCCD13gに近く位置させることが可能になっている。この配置により、製造コストを抑えつつ、CCD13gを含むCCDホルダ30をx軸方向へ高精度に駆動することができる。
なお、図23に示すy軸方向の手振れ補正機構の変形例と同様に、x軸方向の手振れ補正機構においても、撮像平面Piの前方に左右ガイド軸35を設け、後方に第1ステッピングモータ46を設けることが可能である。しかし、x軸方向の手振れ補正機構では特に、図13や図14から分かるようにズームレンズ鏡筒10の正面から見てヘリコイド環18の輪郭内に左右ガイド軸35の一部が位置するので、左右ガイド軸35とヘリコイド環18の干渉を避けるべく、撮像平面Piの前方領域に第1ステッピングモータ46(ドライブシャフト46a)を設け、後方領域に左右ガイド軸35を設ける方が好ましい。第1ステッピングモータ46は、左右ガイド軸35よりもx軸方向への全長が短いので、ヘリコイド環18などの環状部材と干渉することなく、撮像平面Piの前方領域にスペース効率良く配置することができる(図13、図14参照)。
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではない。実施形態のズームレンズ鏡筒10の光学系は撮影光軸Z1が屈折しないタイプであるが、本発明は、撮影光軸が屈折されるタイプの撮像装置にも適用可能である。また、実施形態では手振れ補正時に第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが一体に移動されるが、本発明ではCCD(及びカバーガラス)のみが移動する態様とすることもできる。