JP5294167B2 - 窒化物半導体発光素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、窒化物半導体発光素子およびその製造方法に関し、特に、深紫外線波長のレーザ光等を発生する低閾値電流密度の窒化物半導体発光素子および製造方法に関する。
波長300nm以下の短波長光は、照明、殺菌・浄水、医療分野、生化学産業など幅広い分野で必須の光源として用いられている。特に、深紫外線レーザは波長の短いコヒーレント光源であることから、半導体製造工程において、リソグラフィ用の光源として用いられている。通常はエキシマランプ乃至はレーザがリソグラフィ光源として用いられるが、リソグラフィ装置には多数の光学部品が用いられるため、装置全体としては大型化してしまう。
また、ネオジム(Nd)ドープYAGレーザから発振させた波長1064nmの赤外線光を、非線形光学結晶を通して第4高調波(266nm)を発生させ、深紫外線レーザ光を得る手法も知られているが、この場合の変換効率は0.1%以下と低く、低消費電力化は不可能である。
これに対して、深紫外線半導体レーザダイオード(LD:Laser Diode)を光源として用いることができれば、装置の小型化を図ることが可能である。また、市販の青色発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)において実現された50%程度の発光効率を得ることができれば、低消費電力化が可能となる。
現在までのところ、波長300nm以下の短波長光が得られる材料としては、主面がc面({0001}面)のサファイア基板上にエピタキシャル成長させた、窒化アルミニウム(AlN)のモル分率(x)が0.3以上の窒化アルミニウムガリウム(AlGa1−xN)混晶が知られており、当該材料を用いた量子井戸(QW:Quantum Well)構造を有する発光素子が光源として専ら用いられている。例えば、波長250nmに迫るAlGaN/AlGaN多重量子井戸(MQW:Multi-Quantum Well)発光ダイオード(LED)が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、サファイア基板上にエピタキシャル成長させたAlGaN層には、市販の青色LEDに含まれる貫通転位(密度:10cm−2程度)に比べ、2〜3桁程度高い密度の貫通転位が含まれている。加えて、窒化物半導体結晶はc軸に沿った反転対称性をもたず、III族原子と窒素原子のサイズが異なることにより生じる「自発分極」と井戸層と障壁層の格子定数の差により生じる「圧電分極」により、ヘテロ界面電荷がc面内にシート状に発生する。このため、量子井戸内には1MV/cmを越える強い内部電場が発生してしまう結果、発光効率は0.1%に満たないという問題がある。
また、同波長領域のLDの開発に関しては、光励起による誘導放出に関する報告はあるものの、転位・欠陥密度の低減、p型層の最適化、光の導波方向の選定など多くの課題が残されており、実用化の目処は立っていないのが実情である(例えば、非特許文献2参照)。
特に、窒化ガリウム(GaN)とAlNは価電子帯におけるバンドオーダリング(ある対称性をもつバンドのエネルギの並び順)が異なるため、AlGa1−xN混晶からなる発光層(活性層)からの光の偏光方向は、AlNモル分率xの増加に伴って、光の電界成分Eがc軸に対して垂直な方向から平行な方向へと変化する。このため、AlGa1−xN系のLDでは、光を効率良く導波させるために、市販の窒化インジウムガリウム(InGaN)系のLDとは異なる構造が必要となる。
これまで、非極性面や半極性面を結晶成長面とするInGaN層とGaN層の積層構造(MQW構造)をLEDやLDの活性層として利用することにより内部電界を低減させる技術が知られており、市販の青紫色LEDの外部量子効率(約50%)に迫る効率(38.9%)を示すm面LEDが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。また、室温で連続発振する波長400nmの青紫色m面LDも報告されている(例えば、非特許文献4参照)。なお、上述の「非極性面」は、六方晶系の結晶面であって、具体的には、{11−20}面({イチ、イチ、ニバー、ゼロ}面:a面)や{1−100}面({イチ、イチバー、ゼロ、ゼロ}面:m面))である。
従来の紫外線(波長約300nm以下)発光LDは、GaN結晶(六方晶系)のc軸(極性面)面上またはc軸からやや傾斜させた結晶成長面で構成されている(例えば、特許文献1参照)。このため、歪みにより発生する圧電分極に起因する内部電界効果を十分に低減することはできなかった。また、発光紫外線の偏光特性も電界ベクトルEとc軸が垂直となるものであり、発光効率が低いという問題もあった。
c軸配向した基板上に、少なくともn型窒化物半導体層、発光層およびp型窒化物半導体層を積層して成るLEDにおいて、MQW構造のAlGaN混晶で、Alモル分率を30%以下乃至60%以上のものも既に開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、MQW構造のAlGaN混晶で、Alモル分率を30%〜60%の範囲のものは、未だ開示されてはいない。また、特許文献1に開示されているように、c軸またはc軸近傍で傾斜させた例は存在するが、c軸から、例えば、40°〜90°と大幅に活性層の軸方位を傾斜させた紫外領域の技術は、未だ開示されていない。
加えて、歪みm面をもつInGaN層とGaN層のMQW構造(InGaN/GaN−MQW)からの発光は、その電界成分Eが主にa軸に平行な偏光方向を示すため、共振器ミラー面をc面に沿って形成せざるを得ないこととなるが、c面はm面に比較して劈開性が良好ではないため、歩留まり低下の要因ともなっている。
特開2007−201019号公報 特開2007−165405号公報 M. Asif Khan, M. Shatalov, H. P. Maruska, H. M. Wang and E. Kuokstis, "III-Nitride UV Devices", Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 44, 7191 (2005). Takayoshi Takano, Yoshinobu Narita, Akihiko Horiuchi, and Hideo Kawanishi, "Room-temperature deep-ultraviolet lasing at 241.5 nm of AlGaN multiple-quantum-well laser", Appl. Phys. Lett. Vol. 84, 3567 (2004). Mathew C. Schmidt, Kwang-Choong Kim, Hitoshi Sato, Natalie Fellows, Hisashi Masui, Shuji Nakamura, Steven P. DenBaars, and James S. Speck, "High Power and High External Efficiency m-Plane InGaN Light Emitting Diodes", Japanese Journal of Applied Physics Vol. 46, L126 (2007). Kuniyoshi Okamoto, Hiroaki Ohta, Shigefusa F. Chichibu, Jun Ichihara, and Hidemi Takasu, "Continuous-Wave Operation of m-Plane InGaN Multiple Quantum Well Laser Diodes", Japanese Journal of Applied Physics Vol. 46, L187 (2007). S. Chichibu, A. Shikanai, T. Azuhata, T. Sota, A. Kuramata, K. Horino, and S. Nakamura, "Effects of biaxial strain on exciton resonance energies of hexagonal GaN heteroepitaxial layers" Appl. Phys. Lett. Vol. 68, 3766 (1996). Amane Shikanai, Takashi Azuhata, Takayuki Sota, Shigefusa Chichibu, Akito Kuramata, Kazuhiko Horino, and Shuji Nakamura, "Biaxial strain dependence of exciton resonance energies in wurtzite GaN", J. Appl. Phys. Vol. 81, 417 (1997). B. T. Liou, S. H. Yen, and Y. K. Kuo, "1219883468343_2", Appl. Phys. A Vol. 81, 1459 (2005). T. Onuma, S. F. Chichibu et al., "Radiative and nonradiative processes in strain-free AlxGa1-xN films studied by time-resolved photoluminescence and positron annihilation techniques", J. Appl. Phys. Vol. 95, 2495 (2004). K. Domen et al., "Electron Overflow to the AlGaN p-Cladding Layer in InGaN/GaN/AlGaN MQW Laser Diodes", MRS Internet J. Nitride Semicond. Res. Vol. 3, 2 (1999). J. Y. Chang et al., " Simulation of blue InGaN quantum-well lasers", J. Appl. Phys. Vol. 93, 4992 (2003). S. Nakamura et al., "InGaN/GaN/AlGaN-Based Laser Diodes Grown on GaN Substrates with a Fundamental Transverse Mode" Japanese Journal of Applied Physics Vol. 37, L1020 (1998). T. Onuma, S. F. Chichibu et al., " Recombination dynamics of localized excitons in Al1-xInxN epitaxial films on GaN templates grown by metalorganic vapor phase epitaxy", J. Appl. Phys. Vol. 94, 2449 (2003).
本発明はこのような従来の窒化物半導体発光素子が抱える問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、例えば深紫外線を発光する素子の大型化や高効率を実現すべく、閾値電流密度の低い窒化物半導体発光素子(LD)を提供することにある。
より具体的には、本発明は、深紫外線波長の光等を発生する窒化物半導体発光素子の量子井戸構造において、効率的な光導波を実現するとともに、分極による内部電場効果を低減させることにより、発光効率の向上と低閾値電流密度化を実現することを目的とするものである。
このような課題を解決するために、第1の発明に係る窒化物半導体発光素子は、基板上に、第1の導電型の半導体層と、量子井戸構造を有する活性層と、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型の半導体層とが順次積層された窒化物半導体発光素子であって、前記基板の主面はa面であり、前記活性層は、AlGa1−yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlGa1−xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層を備えており、前記活性層の結晶成長の主面の法線方向はc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成し、該活性層からの発光は、前記c軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有していることを特徴とする。
前記結晶成長の主面は非極性面または半極性面であることが好ましく、非極性面は例えばm面またはa面であり、半極性面は例えば{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面である。
この窒化物半導体発光素子は、前記結晶成長の主面が非極性面のa面または半極性面の{11−22}面であり、m面を反射面とする共振器を備えている構成とすることができる。この場合、m面は劈開面であることが好ましい。
例えば、前記AlGa1−xN井戸層のAlNモル分率(x)は20%以上90%以下であり、該井戸層のAlNモル分率(x)と前記AlGa1−yN障壁層のAlNモル分率(y)との比(r=x/y)は0.7以上である。
また、例えば、前記第1の導電型の半導体層及び前記第2の導電型の半導体層の少なくとも一方はAlGaN混晶の窒化物半導体層であり、前記第1の導電型はn型であり、前記第2の導電型はp型である。
さらに、前記主面がa面の基板は、例えば、GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、又はSiC基板である。
第2の発明に係る窒化物半導体発光素子は、基板上に、第1の導電型の半導体層と、量子井戸構造を有する活性層と、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型の半導体層とが順次積層された窒化物半導体発光素子であって、前記基板の主面はa面であり、前記活性層は、AlIn1−yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlIn1−xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層を備えており、前記活性層の結晶成長の主面の法線方向はc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成し、該活性層からの発光は、前記c軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有していることを特徴とする。
例えば、前記AlIn1−xN井戸層のInNモル分率(x)は5%以下である。
また、例えば、前記第1の導電型の半導体層及び前記第2の導電型の半導体層の少なくとも一方はAlInN混晶の窒化物半導体層であり、前記第1の導電型はn型であり、前記第2の導電型はp型である。
さらに、前記主面がa面の基板は、例えば、GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、又はSiC基板である。
第3の発明に係る窒化物半導体発光素子は、基板上に、第1の導電型の半導体層と、量子井戸構造を有する活性層と、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型の半導体層とが順次積層された窒化物半導体発光素子であって、前記基板の主面はa面であり、前記活性層は、Al(GaβIn1−β1−yN(0≦y≦1、0≦β≦1)の組成の障壁層とAl(GaαIn1−α1−xN(0≦x≦1、0≦α≦1)の組成の井戸層を備えており、前記活性層の結晶成長の主面の法線方向はc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成し、該活性層からの発光は、前記c軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有していることを特徴とする。
例えば、前記第1の導電型の半導体層及び前記第2の導電型の半導体層の少なくとも一方はAlGaInN混晶の窒化物半導体層であり、前記第1の導電型はn型であり、前記第2の導電型はp型である。
また、前記主面がa面の基板は、例えば、GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、又はSiC基板である。
このような窒化物半導体発光素子を得るために、本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法は、主面がa面の基板上に第1の導電型を有する第1の半導体層を結晶成長させる工程(工程1)と、該第1の半導体層上に、AlGa1−yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlGa1−xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層からなる量子井戸構造を有する活性層を結晶成長させる工程(工程2−1)、または、AlIn1−yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlIn1−xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層からなる量子井戸構造を有する活性層を結晶成長させる工程(工程2−2)、或いは、Al(GaβIn1−β1−yN(0≦y≦1、0≦β≦1)の組成の障壁層とAl(GaαIn1−α1−xN(0≦x≦1、0≦α≦1)の組成の井戸層からなる量子井戸構造を有する活性層を結晶成長させる工程(工程2−3)と、該活性層上に、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型の第2の半導体層を結晶成長させる工程(工程3)とを備え、前記工程2−1乃至2−3は、前記活性層の結晶成長の主面の法線方向がc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成すように実行される。
本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法は、m面を反射面とする共振器を形成する工程をさらに備えるようにしてもよい。
この場合、前記共振器の反射面を前記m面に沿う劈開により得ることが好ましい。
例えば、前記第1及び第2の半導体層は窒化物半導体層であり、前記第1の半導体層にはn型不純物としてのSiがドーピングされ、及び/又は、前記第2の半導体層にはp型不純物としてのMgがドーピングされる。
本発明の窒化物半導体発光素子では、主面がa面の基板を用い、この上に成長させる活性層を、AlGa1−yN(0≦y≦1)の組成等の障壁層とAlGa1−xN(0≦x≦1、x<y)の組成等の井戸層を備えた量子井戸構造のものとし、当該活性層の結晶成長の主面の法線方向をc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成すようにして、該活性層からの発光が、c軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有するようにしたので、発光効率の向上と低閾値電流密度化を実現することが可能となる。
また、本発明では成長用基板としてその主面がa面のものを用いることとしているので、本発明の窒化物半導体発光素子をLDとした場合の共振器の反射面として、劈開性が良好なm面を用いることが可能となる。
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、参照する図面において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、これらの図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成部品の配置などをこれらのものに限定するものでない。本発明の窒化物半導体発光素子およびその製造方法は、本発明の技術的思想から逸脱しない限り、種々の変更を加えることができる。
[第1の実施の形態]
本発明の窒化物半導体発光素子の実施の態様について説明する前に、本発明の技術的思想を理解する上での基礎となる技術的事項について、予め説明しておく。
[GaN及びAlNのΓ点におけるバンド構造]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の製造に用いられる窒化物結晶であるGaNおよびAlNのバンド構造を説明するための図(バンドダイヤグラム)であり、図1(a)はGaNのΓ点におけるバンドダイヤグラム、図1(b)はAlNのΓ点におけるバンドダイヤグラムである。
III族窒化物半導体は、安定相として六方晶系のウルツ鉱型構造をとる。このため、価電子帯は、スピン−軌道分裂(Δso)に加え、結晶場分裂(Δcr)を生じる。その結果、無歪GaNの価電子帯は、図1(a)に示すように、高エネルギ側から順に、Γ9v、Γ 7v、Γ 7vの対称性をもつこととなる。
各々のバンドから伝導帯(Γ7c)への遷移は、順に、A遷移、B遷移、C遷移と呼ばれ、A遷移およびB遷移は光の電界ベクトルEと結晶の光学軸であるc軸が垂直(E⊥c)のときに主として許容される遷移であり、C遷移はEとc軸が平行(E//c)のときに主に許容される遷移である。
これに対し、無歪AlNでは、結晶場分裂Δcrが負のため、図1(b)に示すように、バンドオーダリングは高エネルギ側から順に、Γ 7v、Γ9v、Γ 7vとなる。この場合、A遷移は電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)のときに主として許容される遷移となり、B遷移およびC遷移は電界ベクトルEとc軸が垂直(E⊥c)のときに主に許容される遷移となる。
これまで、GaNに関しては、そのバンド端近傍の光学的特性に関する報告は数多くされており、例えば、励起子遷移エネルギの歪依存性や、ΔsoやΔcrなどのバンドパラメータの実験値も報告されている(例えば、非特許文献5や非特許文献6を参照)。これに対して、AlNに関しては、バンド端近傍の光学的特性に関する報告はこれまでなされていない。
そこで、本発明を完成させるにあたり、本発明者らは、c面サファイア基板上に成長したAlNにおける励起子遷移エネルギの歪依存性を実験データとして集め、それらの理論フィッティングからAlNのバンドパラメータを初めて定量化した。そして、これを基にした、GaNとAlNのデータの線形補間によって、AlGaN混晶(AlGa1−xN)のバンドパラメータを導き出し、価電子帯のバンドオーダリングのAlNモル分率(x)依存性を求めた。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の製造に用いられるAlGaN混晶(AlGa1−xN)の特性をシミュレーションにより求めた結果を説明するための図で、図2(a)は無歪みAlGa1−xN混晶の価電子帯頂上のバンドオーダリングのAlNモル分率x依存性を示す図であり、図2(b)は無歪みGaN基板上で面内に伸張歪みを受けたAlGa1−xN混晶のc軸方向の歪みεzz(%)のAlNモル分率x依存性を示す図である。
図2において、E、E、及びEは、価電子帯頂上から伝導帯への遷移エネルギを表している。GaNの場合、E、E、及びEはそれぞれ、A遷移、B遷移、及びC遷移のエネルギに相当する。また、δは、AlGaN混晶の面内格子定数aの非線形項の係数を表す。
図2(a)を参照すると、基準線であるE)線とE)−E)線の交点(x=0.125)において、Γ9vとΓ 7vが入れ替わっている。従って、図2(a)により、無歪みのAlGa1−xN混晶では、AlNモル分率x=0.125を越えると、バンドオーダリングがΓ9v、Γ 7v、Γ 7vからΓ 7v、Γ9v、Γ 7vへと入れ替わることが確認できる。
また、図2(b)の図中に示したδ=0(Å)のラインはAlGa1−xN混晶の面内格子定数aに対する非線形効果を考慮しない場合の結果を、δ=−0.04(Å)のラインはAlGa1−xN混晶の面内格子定数aに対する非線形効果を考慮した場合の結果を、それぞれ示すものである(非特許文献7参照)が、これらのラインは、同図中に示した「バンドオーダリングが入れ替わる境界」のラインと、x=0.045(δ=0(Å)のライン)またはx=0.066(δ=−0.04(Å)のライン)で交差している。従って、図2(b)を参照すると、GaN上に成長した面内に伸張歪みを受けたAlGa1−xN混晶では、x=0.045〜0.066を越えると、バンドオーダリングがΓ9v、Γ 7v、Γ 7vからΓ 7v、Γ9v、Γ 7vへと入れ替わることが確認できる。
これらに対し、E)=E)のラインは、価電子帯頂上のバンドオーダリングが入れ替わる境界を表すものであり、当該E)=E)ラインの上部はバンドオーダリングがΓ9v、Γ 7v、Γ 7v、下部はバンドオーダリングがΓ 7v、Γ9v、Γ 7vとなる。つまり、δ=0(Å)の場合とδ=−0.04(Å)の場合は、それぞれ、x=0.045とx=0.066で、Γ9vとΓ 7vが入れ替わることとなる。
このような理由により、AlNモル分率xが概ね0.125以上であるAlGa1−xN混晶(及びその量子井戸)をLDの活性層として用いた場合には、電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)の偏光特性を示す発光が得られることとなる。なお、AlGaN混晶が基板に対してコヒーレント成長した場合には、上記偏光特性を効果的に得るためには、AlNモル分率xが0.4(40%)以上であることが好ましい。上述した計算値よりAlNモル分率xが大きいことが好ましい理由は、以下の通りである。
図3は実際のAlGa1−xN混晶におけるカソードルミネッセンス(CL)スペクトルの偏光特性のAlNモル分率x依存性を示す実験データであり、当該実験を行なった条件は以下の通りである。先ず、GaN基板上へ、アンモニアソース分子線エピタキシー法により、GaNを810〜880℃で厚さ1μm成長させた後、厚さ120〜400nmのAlGa1−xN(0.12≦x≦1)薄膜を870〜900℃で成長させた。このような試料に対し、加速電圧3.0kV、励起密度1.5×10−2Acm−2、温度12Kでカソードルミネセンス(CL)測定を行った。なお、CLスペクトルの偏光依存性はグラントムソン偏光子を用いて測定した。
図3(a)は、バンド端に近い波長領域の偏光依存CLスペクトルのAlNモル分率x依存性を纏めたものである。なお、各々のスペクトルは各xで強度の強い方の偏光スペクトルで規格化されている。得られたスペクトルの積分強度を基に偏光比(ρ=I−I///I−I//)を求めたものを図3(b)に示す。ここで、Iは電界ベクトルEとc軸が垂直なCLスペクトルの積分強度、I//は電界ベクトルEとc軸が平行なCLスペクトルの積分強度を示している。
この図からわかるように、電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)の偏光特性を示す発光が支配的になるのはAlNモル分率xが0.5を超えてからであり、上述したΓ9vとΓ 7vが入れ替わるxよりも大きなAlN組成で、電界ベクトルEとc軸が垂直(E⊥c)な偏光特性を示す発光強度より、電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)の偏光特性を示す発光強度が強くなっている。この理由は下記のとおり、歪を考慮したBir−Pikusハミルトニアンを用いて各々の遷移確率を計算した結果から説明できる。
すなわち、Γ9vとΓ 7vが入れ替わったとしても、xが0.5〜0.6より小さい場合、電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)の偏光特性を示す発光の遷移確率が、電界ベクトルEとc軸が垂直(E⊥c)な偏光特性を示す発光の遷移確率に比べ小さい。このために、Γ9vとΓ 7vが入れ替わるxよりも大きなAlN組成で、電界ベクトルEとc軸が垂直(E⊥c)な偏光特性を示す発光強度より、電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)の偏光特性を示す発光強度が強くなるのである。
電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)の偏光特性を示す発光が支配的になるのは、Γ9vとΓ 7vが入れ替わり電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)のときに主として許容される遷移に寄与する状態が正孔に占有されることと、電界ベクトルEとc軸が平行(E//c)の偏光特性を示す発光の遷移確率が相対的に大きくなることの両方が必要である。
また、実際の窒化物半導体発光素子に用いる量子井戸構造では、3軸に異方性を持つ歪みが入ることや量子閉じこめ効果が現れるため、上記偏光特性を効果的に得るためには、AlNモル分率xが0.2(20%)以上であることが好ましく、0.3(30%)以上であることが更に好ましく、0.5(50%)以上であることが特に好ましい。
また、AlNモル分率xが大きすぎると、井戸と障壁の間のバンド不連続量を十分取ることができずキャリアの閉じこめが不十分となるため、AlNモル分率xは0.9(90%)以下であることが好ましく、0.8(80%)以下であることが更に好ましく、特に好ましくは0.7(70%)以下である。
[非極性面と半極性面]
図4は、窒化物半導体結晶の非極性面および半極性面について説明するための模式図で、図4(a)は、III族窒化物半導体の結晶構造を示す模式図、図4(b)は非極性面であるm面{1−100}およびa面{11−20}を説明するための模式図、図4(c)は半極性面{10−11}を説明するための模式図、図4(d)は半極性面{10−12}を説明するための模式図、そして、図4(e)は半極性面{11−22}を説明するための模式図である。
図4(b)を参照すると、m面に垂直なm軸方向<10−10>は、c軸方向<0001>に対して角度θ=90°をなす。また、a面{11−20}とc軸は平行であり、a面{11−20}に垂直なa軸方向<11−20>は、c軸方向<0001>に対して90°をなす。
図4(c)を参照すると、半極性面{10−11}に垂直な<10−11>方向は、c軸方向<0001>に対して角度θ=62°をなす。
図4(d)を参照すると、半極性面{10−12}に垂直な<10−12>方向は、c軸方向<0001>に対して角度θ=43°をなす。
さらに、図4(e)を参照すると、半極性面{10−22}に垂直な<10−22>方向は、c軸方向<0001>に対して角度θ=58°をなす。
[基本素子構造]
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子(LD)の基本構造を説明するための斜視概念図で、ここに示した例では、a面GaN基板10上に、MQW構成のAlGaN/AlGaN活性層16が形成されている。
なお、便宜上、主面がa面の基板10をGaN基板とし、この基板10上に設けられる第1の導電型の半導体層(12,14)をn型不純物(Si)がドープされたAlGaN層(AlGaNクラッド層12,AlGaN導波層14)とし、活性層16の上に設けられる第2の導電型の半導体層(18,20)をp型不純物(Mg)がドープされたAlGaN層(AlGaNクラッド層12,AlGaN導波層14)として説明するが、a面基板としては、例えば、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC基板なども用いることができ、第1および第2の導電型の半導体層は他の組成の窒化物半導体層であってもよい。さらに、基板側をp側、表面側をn側とした積層構造としてもよい。これらの点は、他の実施の形態の説明においても同様である。
この窒化物半導体発光素子は、図5(a)に図示したように、主面がa面のGaNの基板10と、この基板10上に配置されn型不純物をドープされたAlGaN層(AlGaNクラッド層12,AlGaN導波層14)と、AlGaN導波層14上に配置され、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られた量子井戸構造を有するAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置され、p型不純物をドープされたAlGaN層(AlGaN導波層18,AlGaNクラッド層20)とを備えており、AlGaNクラッド層20上にはAlGaNコンタクト層22を介してp側電極26が、基板10の裏面にはn側電極24が形成されている。
この窒化物半導体発光素子を構成する上記各窒化物半導体層(AlGaN層)の結晶成長の主面は、図4(b)〜図4(e)に示したように、その法線方向(図5の例では[11−20]方向である)がc軸方向([0001]方向)と40°〜90°の範囲内の角度(図5の例では90°である)を成す結晶面である。
そして、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られた量子井戸構造を有するAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16から得られる発光(hν)は、図5(b)に示したように、その光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)となる偏光特性を示すものである。
つまり、この窒化物半導体発光素子は、基板上に、第1の導電型の半導体層と、量子井戸構造を有する活性層と、第1の導電型とは逆の第2の導電型の半導体層とが順次積層された窒化物半導体発光素子であって、基板の主面はa面であり、活性層は、AlGa1−yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlGa1−xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層を備えており、活性層の結晶成長の主面の法線方向はc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成し、該活性層からの発光は、c軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有している窒化物半導体発光素子である。
なお、図4(d)に示した例では、半極性面{10−12}に垂直な<10−12>方向は、結晶学的にはc軸方向<0001>に対して角度θ=43°を成すこととなるが、実際に結晶成長させる際には、半極性面{10−12}に対して±約3°程度のオフ角をもつ面を結晶成長の主面とすることにより、所望の結晶成長速度と表面モフォロジが確保される。
このように、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子においては、当該窒化物半導体発光素子を構成する各窒化物半導体層の結晶成長の主面として、その法線方向がc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成す結晶面が選択される。
このような条件を満足する結晶面(結晶成長主面)には、図4(b)乃至図4(e)を用いて説明したように、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、図4(b)に示したように、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、図4(c)乃至図4(e)に示したように、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、図4(b)及び図4(e)を参照すると明らかなように、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、図5に示したようなストライプ構造からなるレーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面(鏡面)として用いることが可能となる。
本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子においては、その主面がa面である基板10を用いることとし、当該基板10の上に成長させる各窒化物半導体層の結晶成長主面を、その法線方向がc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成す結晶面としているので、上記条件を満足する何れの面を結晶成長主面として選択した場合においても、レーザ共振器の端面はm面となる。
また、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
[詳細素子構造]
図5に示した構造の窒化物半導体発光素子おいては、AlGaNコンタクト層22およびAlGaNクラッド層20の一部分をストライプ形状に反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などのエッチング技術を用いて除去し、リッジストライプ構造を形成している。すなわち、p型AlGaNクラッド層20の一部およびp型AlGaNコンタクト層22には、横モード制御のため、ドライエッチングにより、a軸に沿ってリッジ構造が形成される。このようなリッジストライプ構造を有するAlGaNコンタクト層22上には、p側電極26が配置されて、分離閉じ込め型の構造となっている。
p側電極26は、m軸に沿うストライプ状の領域に形成され、ストライプ方向に沿って共振器が形成されており、端面はm面になっている。GaN等の窒化物半導体結晶のm面は良好な劈開性を示すため、本発明の窒化物半導体発光素子をレーザダイオード(LD)とする場合、端面における反射ロスを低減し、閾値電流密度を低減させることができるという利点がある。
図5に示したLDでは、n型導電性を示す自立a面GaNを基板として用いその裏面にn側電極を形成しているが、基板による紫外線の光吸収を回避する目的で、自立a面AlNや自立a面AlGaN基板を用いてもよい。なお、これらの基板の主面のオフ角(結晶学的な意味でのa面からのずれ)は、例えば、±1°以内程度とする。
p型AlGaNコンタクト層22は、p側電極26とのオーミックコンタクトをとるための低抵抗層である。p型ドーパントとしてのMgを高濃度にドープ(例えば、3×1019cm−3程度のドーピング濃度)することによって、p型AlGaNコンタクト層22を形成することができる。
n型AlGaNクラッド層12およびp型AlGaNクラッド層20は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16からの光を閉じ込めるための層である。厚さは、例えば、約1μm程度とし、n型ドーパントとしてはSi(ドーピング濃度は、例えば、約1×1018cm−3)、p型ドーパントとしてはMg(ドーピング濃度は、例えば、約1×1019cm−3)をドープすることによって、n型AlGaNクラッド層12およびp型AlGaNクラッド層20を形成することができる。
なお、n型AlGaNクラッド層12およびp型AlGaNクラッド層20は、AlGaN導波層(14,18)よりも大きなバンドギャップ・エネルギを有する組成のものとすることにより、良好な光閉じ込めを行うことができる。
n型AlGaN導波層14およびp型AlGaN導波層18は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16にキャリア(電子および正孔)を閉じ込めるための層である。n型AlGaN導波層14およびp型AlGaN導波層18の厚さは、例えば、約0.1μm程度とし、n型ドーパントとしてはSi(ドーピング濃度は、例えば、約1×1018cm−3程度)、p型ドーパントとしてはMg(ドーピング濃度は、例えば、約5×1018cm−3程度)をドープすることによって、n型AlGaN導波層14およびp型AlGaN導波層18を形成することができる。
AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、AlGa1−xN井戸層とAlGa1−yN障壁層を複数周期積層して構成される。活性層全体の体積を小さくし閾値電流密度の低減を図るため、井戸数は3以下とする。ここで、上記井戸層は通常3nm以上10nm以下、上記障壁層は通常5nm以上10nm以下の範囲で適宜設定されるが、高い光閉じこめ効果を得るためには、上記井戸層は5nm以上が好ましく、7nm以上であることが更に好ましい。
p側電極26とn側電極24との間に順方向バイアス電圧を印加することで、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16に順方向電流が注入されて、この活性層16内にレーザ共振器が形成される。上述したように、レーザ共振器の端面は、劈開で形成されたm面とされ、レーザ共振器の長手方向はリッジストライプ形状に沿って形成される。
このように、p側電極26とn側電極24との間に設けられたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内に形成されるレーザ共振器が、ゲイン構造を構成している。また、AlGaNクラッド層(12および20)は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内へのキャリア閉込効果を奏している。さらに、AlGaN導波層(14および18)は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉込効果を奏している。
図5中で示したように、上述の構成の本発明の窒化物半導体発光素子から出射されるレーザ光は、電界ベクトル成分Eがc軸[0001]に平行なE//cの偏光特性を有するTEモードの偏波特性を示す。通常、劈開共振器LDではTEモードの光が導波されるから、本発明の窒化物半導体発光素子においては、効率的な導波性能が得られることとなり、閾値電流密度を低下させることができる。つまり、本発明の窒化物半導体発光素子では、発光効率の向上と、低閾値電流密度での深紫外線波長レーザ光の発生が可能となる。
[参考例]
図6は、参考例としての窒化物半導体発光素子(LD)の基本構造を説明するための斜視概念図で、ここに示した例でも、a面GaN基板100上に、MQW構成のAlGaN/AlGaN活性層160が形成されている。なお、このLDの発光波長は405nmの青紫色である。
図6に示した窒化物半導体発光素子は、c面GaN基板100と、c面GaN基板100上に配置されn型不純物をドープされたAlGaNクラッド層120と、AlGaNクラッド層120上に配置されn型不純物をドープされたAlGaN導波層140と、AlGaN導波層140上に配置されMQW構成のAlGaN/AlGaN活性層160と、AlGaN/AlGaN活性層160上に配置されp型不純物をドープされたAlGaN導波層180と、AlGaN導波層180上に配置されp型不純物をドープされたAlGaNクラッド層200と、AlGaNクラッド層200に配置されp型不純物をドープされたAlGaNコンタクト層220と、AlGaNコンタクト層220上に配置されAlGaNコンタクト層220とオーミック接触するp側電極260と、p側電極260と対向して設けられc面GaN基板100とオーミック接触するn側電極240とを備えている。
なお、このLDもリッジストライプ構造を有しており、p側電極260とn側電極240との間に順方向バイアス電圧が印加されて順方向電流が導通することで、AlGaN/AlGaN活性層160に電流が注入されて、AlGaN/AlGaN活性層160内にレーザ共振器が形成される。
レーザ共振器の端面は、m面で構成され、レーザ共振器の長手方向はリッジストライプ形状に沿ってm軸方向に形成される。このように、p側電極260とn側電極240との間のAlGaN/AlGaN活性層160内に形成されるレーザ共振器がゲイン構造を構成している。
図6中で示したように、上述の構成の本発明の窒化物半導体発光素子から出射されるレーザ光は、電界ベクトル成分Eがc軸[0001]に平行なE//cの偏光特性を有する発光はTMモードの偏波特性を示す。上述したように、通常、劈開共振器LDではTEモードの光が導波されるから、TMモードの偏波特性を示すLDの場合には、それが許容されるバンドまでキャリアを満たさないと発振に至らないこととなる。つまり、図6に示した構成の窒化物半導体発光素子では、閾値電流密度の増加は避けられないこととなる。
[共振器反射面と導波モード]
図7は共振器の反射面(鏡面)と導波モードについて説明するための図で、図7(a)はc面を共振器反射面(28a,28b)として用いた場合の導波モードを表す図であり、図7(b)はm面を共振器反射面(30a,30b)として用いた場合の導波モードを表す図である。図7(a)に示した反射面とした場合は、図7(a)中の実線で示されるように、電界ベクトル成分Eがc軸に垂直なE⊥cの偏光特性を有する光がTEモードの導波特性を示す。これに対して、図7(b)に示した反射面とした場合には、図7(b)中の実線で示されるように、電界ベクトル成分Eがc軸に平行なE//cの偏光特性を有する光がTEモードの導波特性を示す。
図7(b)に示したように、共振器反射面(30a,30b)をm面で形成すると、E//cの偏光特性をもつ光は導波路に対してTEモードの偏波特性を示すため、効率的な光導波が可能となる。なお、共振器反射面をa面で形成しても、E//cの偏光特性をもつ光は導波路に対してTEモードの偏波特性を示すため、効率的な光導波が可能となる。
そこで、本発明の窒化物半導体発光素子では、非極性面(a面、m面)または半極性面成長させた量子井戸構造の活性層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16)を発光層として採用している。そして、E//cの偏光特性をもつ光が導波路に対してTEモードの偏波特性を示すことから、効率的な光導波を可能とするために、共振器反射面(30a,30b)をm面あるいはa面で形成することとしている。
また、図5および図7(b)に示したように、本発明の窒化物半導体発光素子では、分極の生じる方向であるc軸が量子井戸面内にあることとなるため、量子井戸の上下の界面に固定電荷が発生せず、内部電界効果を低減することができる。
さらに、GaN系窒化物半導体結晶はm面で劈開され易いため、活性層をa面成長させてそのm面を反射面とした共振器を設けることにより、歩留まりを向上させ得ることとなる。
本発明の窒化物半導体発光素子において閾値電流密度の低減化が図られるのは、これらの理由による。
なお、半極性面とは、図4(c)乃至図4(e)に示したように、c面と非極性面(a面、m面)の間に位置することとなる傾斜した結晶面であるが、このような半極性面を成長面とする活性層を利用する場合は、E//cの偏光特性をもつ光が優先的にTEモードの偏波特性をもつように、c軸が量子井戸面の法線方向に対してm軸又はa軸方向に傾いた面(例えば、約40°〜90°の範囲内で傾いた面)を選択する。具体的には、図4(c)乃至図4(e)に示したように、{10−11}面、{10−12}面、{11−22}面などである。
[AlGa1−xN井戸層のAlNモル分率]
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の活性層(AlGa1−xN井戸層)のAlNモル分率(x)について説明するための図で、図8(a)はレーザ光の発振波長とAlNモル分率との関係を示す図であり、図8(b)はバンドギャップ・エネルギ(Eg)のAlNモル分率依存性を示す図である。
AlGa1−xN混晶のバンドギャップ・エネルギのAlNモル分率依存性(Eg(x))は、次式で表すことができる(非特許文献8を参照)。Eg(x)=6.04x+3.412(1−x)−0.82x(1−x)(式1)。波長300nmで発光させる場合は、AlGa1−xN井戸層のAlNモル分率xを0.3、波長285nmで発光させる場合はAlGa1−xN井戸層のAlNモル分率xを0.4、波長270nmで発光させる場合はAlGa1−xN井戸層のAlNモル分率xを0.5とする。
[AlGa1−yN障壁層のAlNモル分率]
これに対して、AlGa1−yN障壁層のAlNモル分率yは、AlGa1−xN井戸層への過大な圧縮歪みを回避するべく、以下の手順で設計する。
図9は、無歪みAlGa1−yN障壁層の上に積層したAlGa1−xN井戸層に発生する、c軸方向の歪みεzz(%)の、AlGa1−yN障壁層のAlNモル分率(y)依存性を示す。なお、これらの結果は、図2で示した結果を基に導き出したものである。また、図8中において、AlGa1−xN井戸層のAlNモル分率(x)とAlGa1−yN障壁層のAlNモル分率(y)とを結ぶ破線(x=y=0.1、0.2、0.3、0.4、および0.5)と交差する直線は、価電子帯頂上のバンドオーダリングが入れ替わる境界を表している(境界ライン)。
図8中において、境界ラインの上部はΓ9v、Γ 7v、Γ 7vの領域であり、下部はΓ 7v、Γ9v、Γ 7vの領域となる。例えば、AlGa1−xN井戸層のAlNモル分率がx=0.4のとき、AlGa1−yN障壁層のAlNモル分率がy>0.55となると、面内に生じる圧縮歪みによって、バンドオーダリングは、Γ 7v、Γ9v、Γ 7vからΓ9v、Γ 7v、Γ 7vへと入れ替わることとなる。
このような条件下では、発光の電界成分Eはm軸に平行な偏光方向となり、本発明の窒化物半導体発光素子において求められるE//cの偏光特性の発光は得られなくなってしまう。
以上の理由から、AlGa1−xN井戸層のAlNモル分率xを0.3、0.4、0.5とする場合は、AlGa1−yN障壁層のAlNモル分率yは0.39、0.55、0.71以下とする。この場合、AlGa1−xN井戸層のAlNモル分率(x)とAlGa1−yN障壁層のAlNモル分率(y)との比(r=x/y)はそれぞれ、0.77以上(x=0.3の場合)、0.73以上(x=0.4の場合)、0.70以上(x=0.5の場合)となり、何れの場合もr値は0.7以上である。なお、AlGa1−xN井戸層のAlNモル分率xが上記以外の場合にも、AlGa1−xN井戸層とAlGa1−yN障壁層のAlNモル分率比(r=x/y)は0.7以上が好ましいことを確認済みである。
[電極]
本実施の形態において用いられる電極は、n側電極24は、例えば、Ti/Al合金からなり、p側電極26は、例えば、Al金属、Pd/Au合金からなる。当然のことであるが、これらの電極はそれぞれ、n型GaN基板10およびp型AlGaNコンタクト層22にオーミック接触される。
[MQWの井戸数]
図10は、GaN/InGaN青紫LDの一構造を例とする正孔密度と距離の関係を示す図であって、MQW活性層への不均一な正孔分布を説明するための図である(非特許文献9を参照)。また、図11は、GaN/InGaN青紫LDの別の構造を例とする正孔密度と距離の関係を示す図であって、MQW活性層への不均一な正孔分布を説明する図である(非特許文献10を参照)。さらに、図12は、GaN/InGaN青紫LDにおける閾値電流密度J(kA/cm)とInGaN井戸数の関係を示す図である(非特許文献11を参照)。
図10及び図11に示されているように、MQW活性層の各井戸へ注入される正孔密度は不均一であることがわかる。MQWの周期数を増加すると最上層の量子井戸の結晶性は向上するが、下部の井戸は正孔が十分に注入されないため、自己吸収層として働いてしまう。また、図12に示されているように、MQWの周期数が2のときに、閾値電流密度が最も小さくなる。
本発明の窒化物半導体発光素子においても、MQWの周期数には最適な数が存在する。本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子における活性層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16)のMQWの周期数の最適な数は、3以下である。なお、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16のMQWの周期数を増加しても最上層の量子井戸の結晶性は向上するが、下部の井戸には正孔が十分に注入されない結果となり、むしろ自己吸収層として働いてしまう。このような理由により、MQWの周期数の最適な数は3以下となる。
[結晶成長用装置:MOCVD装置]
図13は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の製造に使用されるMOVPE装置の構造例を説明するための概念図である。このMOVPE装置は、反応槽60内にサセプタ56と、サセプタ56上に配置された基板52を備え、反応槽60の外部には、加熱機構50を備えている。なお、加熱機構50は、ヒータ、赤外線(IR)ランプ、高周波誘導などで構成することができる。このような加熱機構50により過熱されるサセプタ56の温度は、例えば、約1050℃以上である。
また、反応槽60の外部の入力側には、水素(または窒素またはこれらの両方)をキャリアガスとして供給するためのキャリアガス供給槽40と、当該キャリアガス供給槽40に連結されるアルミニウム(Al)供給槽42、ガリウム(Ga)供給槽44、インジウム(In)供給槽45、マグネシウム(Mg)供給槽47、および、ジメチルヒドラジン(DMHy)供給槽46が設けられるとともに、キャリアガス供給槽40とは独立して反応槽60に連結されるアンモニア(NH3)ガスボンベ48とシリコン(Si)供給用ガスボンベ49が設けられている。また、反応槽60の外部の出力側には、排気口54が連結される。
なお、図13の構成例においては、反応槽60への原料供給ガスラインにおいて、アンモニア、ジメチルヒドラジン(DMHy)、およびIII族元素の供給ラインが分離して設けられているが、このような構成に限定されるものではない。
アルミニウム(Al)供給槽42から供給されるAl源は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、或いはトリイソブチルアルミニウム(TIBAl)などである。
ガリウム(Ga)供給槽44から供給されるGa源は、例えば、トリメチルガリウム(TMG)、トリエチルガリウム(TEG)、或いはトリプロピルガリウム(TPG)などである。
インジウム(In)供給槽45から供給されるIn源は、例えば、トリメチルインジウム(TMIn)やトリエチルインジウム(TEIn)などである。
マグネシウム(Mg)供給槽47から供給されるMg源は、例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)やビスエチルシスロペンタジエニルマグネシウム(EtCpMg)などである。
さらに、シリコン(Si)供給用ガスボンベから供給されるSi源は、例えば、シラン(SiH)やモノメチルシラン(CHSiH)などであり、原料ガスは、水素ガス乃至窒素ガスで1〜100,000ppmに希釈される。
活性層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)を結晶成長させる際の基板温度(サセプタ温度)は、例えば、約1050℃以上であり、1050℃〜1300℃、望ましくは、約1260℃〜1270℃である。場合によっては、1400℃以上であっても良い。
また、活性層の結晶成長時の反応槽60内圧力は、例えば、約0.02気圧〜0.3気圧(atm)程度であり、望ましくは約0.1気圧程度である。
[結晶成長用装置:MBE装置]
図14は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の製造に使用されるMBE装置の構造例を説明するための概念図で、このMBE装置は、反応槽内に基板ヒータ74,基板ホルダ72および基板52を備えている。
反応槽の内壁部は、液体窒素シュラウド76で形成され、反応槽の外部には、電子ビーム源70、Gaセル62、Alセル64、Inセル67、Siセル65、Mgセル63、アンモニア(NH)または窒素(N)ガスボンベ48に連結されたアンモニア(NH)セルまたはRFプラズマソース66、および、成長時の表面形態を観察するためのRHEEDスクリーン68が配置されている。
なお、基板52に対し、電子ビーム源70から電子ビーム70aが照射され、回折された電子ビーム70bは、RHEEDスクリーン68に導かれる。また、反応槽の外部の出力側には、排気バルブ78を介して排気口54が連結される。
[製造方法]
図5に示した構造の窒化物半導体発光素子を製造するためのプロセスは、主面がa面の基板10の上に第1の導電型(n型)を有する第1の半導体層(AlGaNクラッド層12およびAlGaN導波層14)を結晶成長させる工程と、この第1の半導体層上にAlGa1−yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlGa1−xN(0≦x≦1)の組成の井戸層からなる量子井戸構造を有する活性層16を結晶成長させる工程と、該活性層上に前記第1の導電型とは逆の第2の導電型の第2の半導体層(AlGaN導波層18およびAlGaNクラッド層20)を結晶成長させる工程とを備えており、かつ、量子井戸構造を有する活性層16は、その結晶成長の主面の法線方向がc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成すように実行される。
なお、この結晶成長プロセスが、AlGaNクラッド層20上にp型不純物をドープされたAlGaNコンタクト層22を形成する工程と、AlGaNコンタクト層22上にオーミック接触するp側電極26を形成する工程と、p側電極26と対向してa面GaN基板10上にオーミック接触するn側電極24を形成する工程も備えていることはいうまでもない。また、この窒化物半導体発光素子がLDである場合には、m面を反射面とする共振器を形成する工程がさらに実行されることとなる。この場合、共振器の反射面をm面に沿う劈開により得ることが好ましい点については、既に説明したとおりである。
[製造方法の具体例:MOVPE法の場合]
図5および図13を参照して、MOVPE法の場合の製造プロセス例を具体的に説明する。
先ず、基板52をサセプタ56に保持させる。この状態で、反応槽60内に、キャリアガスおよび窒素原料ガス(アンモニアガスまたはジメチルヒドラジン)を供給する。キャリアガスには水素もしくは窒素またはこれらの両方を用いる。さらに加熱機構50により基板52を昇温させる。ただし、SiC基板のような表面の窒化を避ける必要がある基板を用いる場合には、窒素原料ガスを供給せずに昇温する。
基板52の温度が、例えば約1050℃以上に達するまで待機した後、アルミニウム原料、ガリウム原料、窒素原料ガス、及びシリコン原料を反応槽60内に供給し、基板52の表面に、ドナーであるシリコンが添加されたn型AlGaNクラッド層12およびn型AlGaN導波層14を成長させる。
続いて、活性層16(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)の成長を行う。この工程では、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN活性層の成長時で、アルミニウム原料とガリウム原料の供給流量比を変化させる。これを例えば3回に渡って繰り返す。なお、この工程は、シリコン原料の供給を停止して実行してもよい。
さらに、マグネシウム原料を反応槽60内に供給し、マグネシウムが添加されたp型AlGaN導波層18、p型AlGaNクラッド層20、及びp型AlGaNコンタクト層22を成長させる。
これらの結晶成長の後、AlGaNコンタクト層22およびAlGaNクラッド層20の一部分を、RIEや収束イオンビーム(FIB: Focused Ion Beam)などのエッチング技術を用いてストライプ形状に加工し、例えば、m軸に沿ったリッジストライプ構造を形成する。
次いで、リッジストライプ構造を有するAlGaNコンタクト層22上へ、抵抗加熱または電子線ビームによる金属蒸着装置によって、例えば、Au/Ni金属、或いはPt/Au/Pd金属などを積層させたp側電極26を設け、分離閉じ込め型の構造を形成する。同様に、基板10の裏面に、例えば、Ti/Al金属などを積層させたてn側電極24を形成する。
最後に、上述のストライプ方向に沿って共振器を形成する。この時、端面はm面とする。以上のプロセスにより、紫外線発光する窒化物半導体レーザダイオードが得られる。
[製造方法の具体例:MBE法の場合]
図5および図14を参照して、MBE法の場合の製造プロセス例を具体的に説明する。
アルミニウム原料、ガリウム原料、インジウム原料、シリコン原料、マグネシウム原料は、クヌーセンセルの坩堝内に配置し、ヒータ加熱によって蒸発させ原子ビームとして供給する。シリコン原料に関しては、電子線や通電加熱により蒸発させ供給してもよい。また、これらの原料の代替として、MOVPE法に関連して説明した有機金属原料を用いてもよい。
先ず、基板52を基板ホルダ72に保持させる。超高真空中での熱伝導性をよくするため、基板52裏面に熱伝導のよい金属等を蒸着してもよい。この状態で、基板52へ窒素原料ガス(例えばアンモニアガスや窒素プラズマソース)を供給する。加熱機構(基板ヒータ74)により基板52を昇温させる。ただし、SiC基板のような表面の窒化を避ける必要がある基板を用いる場合には、窒素原料ガスを供給せずに昇温する。
基板52の温度が、例えば800〜1000℃以上に達するまで待機した後、アルミニウム原料、ガリウム原料、窒素原料ガス、及びシリコン原料を基板52へ供給し、基板表面に、シリコンが添加されたn型AlGaNクラッド層12およびn型AlGaN導波層14を成長させる。なお、成長時の表面形態は、RHEED像により観察する。
続いて、活性層16(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)の成長を行う。この工程では、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN活性層の成長時で、アルミニウム原料とガリウム原料の供給流量比を変化させる。これを例えば3回に渡って繰り返す。なお、この工程は、シリコン原料の供給を停止して実行してもよい。
次いで、マグネシウム原料を基板52へと供給し、マグネシウムが添加されたp型AlGaN導波層18、p型AlGaNクラッド層20、及びp型AlGaNコンタクト層22を成長させる。
これらの結晶成長の後、AlGaNコンタクト層22およびAlGaNクラッド層20の一部分を、RIEや収束イオンビーム(FIB: Focused Ion Beam)などのエッチング技術を用いてストライプ形状に加工し、例えば、m軸に沿ったリッジストライプ構造を形成する。
次いで、リッジストライプ構造を有するAlGaNコンタクト層22上へ、抵抗加熱または電子線ビームによる金属蒸着装置によって、例えば、Au/Ni金属、或いはPt/Au/Pd金属などを積層させたp側電極26を設け、分離閉じ込め型の構造を形成する。同様に、基板10の裏面に、例えば、Ti/Al金属などを積層させたてn側電極24を形成する。
最後に、上述のストライプ方向に沿って共振器を形成する。この時、端面はm面とする。以上のプロセスにより、紫外線発光する窒化物半導体レーザダイオードが得られる。
なお、AlGaN系LDの効率改善のためには、転位を縦方向に伝播させない横方向成長技術(LOG:Lateral Overgrowth)やAlGaN成長の初期に界面で転位の発生しにくいAlN基板等を用いるなどの手法を採用することにより、成長させる結晶中への転位・欠陥導入を抑制することが極めて有効である。従って、上述した本発明のプロセスをこのような手法と組み合わせることが好ましいことは言うまでもない。
本発明の窒化物半導体発光素子によれば、転位・欠陥低減化と並行して進めるべき、効率的な光導波を実現でき、分極による内部電場効果を低減でき、非極性面(a面、m面)または半極性面成長を行ったAlGaN混晶や、その量子井戸を活性層に用いたLDの構造により、低閾値電流密度化を図ることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子および製造方法によれば、波長300nm以下の紫外光を発光させるために、結晶成長面をc軸(極性面)から約40°〜90°程度に傾斜させて分極による内部電界効果を低減させることができる。
また、発光層としてAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層(MQW構造)を用い、井戸層のAlモル分率(x)を、20%以上90%以下とし、さらに井戸層のAlモル分率(x)と障壁層のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることにより、井戸層の面内圧縮歪みを低減させることができる。
このように、本発明により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子の閾値電流密度の低減と、発光効率の向上が可能となる。
[第2の実施の形態]
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。この窒化物半導体発光素子は、a面基板10(GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC基板等の導電性基板)と、a面基板10上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaN層13と、AlGaN層13上に配置されたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaN層17と、AlGaN層17上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNコンタクト層22と、AlGaNコンタクト層22上に配置され該AlGaNコンタクト層22とオーミック接触するp側電極26と、p側電極26と対向してa面基板10上に配置されa面基板10とオーミック接触するn側電極24とを備えている。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
また、第1の実施の態様において説明したのと同様に、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
この態様の窒化物半導体発光素子は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、相対的に厚いAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
このような理由により、本態様の窒化物半導体発光素子では、クラッド層、リッジストライプ構造、および導波層が基本的には不要となり、第1の実施の形態の窒化物半導体発光素子に比較して簡単な構成のものとすることができる。
[第3の実施の形態]
図16は、本発明の第3の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。この窒化物半導体発光素子は、a面基板10(GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等の絶縁性基板)と、a面基板10上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaNコンタクト層11と、AlGaNコンタクト層11上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaN層13と、AlGaN層13上に配置されたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaN層17と、AlGaN層17上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNコンタクト層22と、AlGaNコンタクト層22上に配置されAlGaNコンタクト層22とオーミック接触するp側電極26と、a面基板10面に対してp側電極26と同一表面側に配置されAlGaNコンタクト層22の表面からエッチングにより露出されたAlGaNコンタクト層11上に配置されてAlGaNコンタクト層11とオーミック接触するn側電極24とを備えている。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
また、第1の実施の態様において説明したのと同様に、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
この態様の窒化物半導体発光素子は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、相対的に厚いAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
このような理由により、本態様の窒化物半導体発光素子では、クラッド層、リッジストライプ構造、および導波層が基本的には不要となり、第1の実施の形態の窒化物半導体発光素子に比較して簡単な構成のものとすることができる。
しかも、p側電極26およびn側電極24を同一表面側から取り出すことができ、実装も容易となる。
[第4の実施の形態]
図17は、本発明の第4の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。この窒化物半導体発光素子は、a面基板10(GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等の導電性基板)と、a面基板10上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaN導波層14と、AlGaN導波層14上に配置されたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaN導波層18と、AlGaN導波層18上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNコンタクト層22と、AlGaNコンタクト層22上に配置され該AlGaNコンタクト層22とオーミック接触するp側電極26と、p側電極26と対向してa面基板10上配置され該a面基板10とオーミック接触するn側電極24とを備えている。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
また、第1の実施の態様において説明したのと同様に、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
この態様の窒化物半導体発光素子は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、n型AlGaN導波層14およびp型AlGaN導波層18に挟まれ、相対的に厚いAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
このような理由により、本態様の窒化物半導体発光素子では、クラッド層、および、リッジストライプ構造が不要となり、第1の実施の形態の窒化物半導体発光素子に比較して簡単な構成のものとすることができる。
[第5の実施の形態]
図18は、本発明の第5の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。この窒化物半導体発光素子は、a面基板10(GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等の絶縁性基板)と、a面基板10上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaNコンタクト層11と、AlGaNコンタクト層11上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaN導波層14と、AlGaN導波層14上に配置されたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaN導波層18と、AlGaN導波層18上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNコンタクト層22と、AlGaNコンタクト層22上に配置されAlGaNコンタクト層22とオーミック接触するp側電極26と、a面基板10面に対してp側電極26と同一表面側に配置されAlGaNコンタクト層22の表面からエッチングにより露出されたAlGaNコンタクト層11上に配置されてAlGaNコンタクト層11とオーミック接触するn側電極24とを備えている。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
また、第1の実施の態様において説明したのと同様に、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
この態様の窒化物半導体発光素子は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、n型AlGaN導波層14およびp型AlGaN導波層18に挟まれ、相対的に厚いAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
このような理由により、本態様の窒化物半導体発光素子では、クラッド層、および、リッジストライプ構造が不要となり、第1の実施の形態の窒化物半導体発光素子に比較して簡単な構成のものとすることができる。
しかも、p側電極26およびn側電極24を同一表面側から取り出すことができ、実装も容易となる。
[第6の実施の形態]
図19は、本発明の第6の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。この窒化物半導体発光素子は、a面基板10(GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等の導電性基板)と、a面基板10上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaNクラッド層12と、AlGaNクラッド層12上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaN導波層14と、AlGaN導波層14上に配置されたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaN導波層18と、AlGaN導波層18上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNクラッド層20と、AlGaNクラッド層20上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNコンタクト層22と、AlGaNコンタクト層22上に配置され該AlGaNコンタクト層22とオーミック接触するp側電極26と、p側電極26と対向してa面基板10上配置され該a面基板10とオーミック接触するn側電極24とを備えている。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
また、第1の実施の態様において説明したのと同様に、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
この態様の窒化物半導体発光素子は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、n型AlGaN導波層14およびp型AlGaN導波層18に挟まれ、相対的に厚いAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
このような理由により、本態様の窒化物半導体発光素子では、リッジストライプ構造が不要となり、第1の実施の形態の窒化物半導体発光素子に比較して簡単な構成のものとすることができる。
[第7の実施の形態]
図20は、本発明の第7の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。この窒化物半導体発光素子は、a面基板10(GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等の絶縁性基板)と、a面基板10上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaNコンタクト層11と、AlGaNコンタクト層11上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaNクラッド層12と、AlGaNクラッド層12上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaN導波層14と、AlGaN導波層14上に配置されたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaN導波層18と、AlGaN導波層18上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNクラッド層20と、AlGaNクラッド層20上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNコンタクト層22と、AlGaNコンタクト層22上に配置されAlGaNコンタクト層22とオーミック接触するp側電極26と、a面基板10面に対してp側電極26と同一表面側に配置されAlGaNコンタクト層22の表面からエッチングにより露出されたAlGaNコンタクト層11上に配置されてAlGaNコンタクト層11とオーミック接触するn側電極24とを備えている。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
また、第1の実施の態様において説明したのと同様に、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
この態様の窒化物半導体発光素子は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、相対的に厚いAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
このような理由により、本態様の窒化物半導体発光素子では、リッジストライプ構造が不要となり、第1の実施の形態の窒化物半導体発光素子に比較して簡単な構成のものとすることができる。
しかも、p側電極26およびn側電極24を同一表面側から取り出すことができ、実装も容易となる。
[第8の実施の形態]
図21は、本発明の第8の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。この窒化物半導体発光素子は、a面基板10(GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等の導電性基板)と、a面基板10上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaNクラッド層12と、AlGaNクラッド層12上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaN導波層14と、AlGaN導波層14上に配置されたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaN導波層18と、AlGaN導波層18上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNクラッド層20と、AlGaNクラッド層20上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたリッジストライプ構造を有するAlGaNコンタクト層22と、AlGaNコンタクト層22上に配置され該AlGaNコンタクト層22とオーミック接触するp側電極26と、p側電極26と対向してa面基板10上配置され該a面基板10とオーミック接触するn側電極24とを備えている。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
また、第1の実施の態様において説明したのと同様に、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
この態様の窒化物半導体発光素子は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、n型AlGaN導波層14およびp型AlGaN導波層18に挟まれ、相対的に厚いAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
[第9の実施の形態]
図22は、本発明の第9の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。この窒化物半導体発光素子は、a面基板10(GaN基板、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等の絶縁性基板)と、a面基板10上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaNコンタクト層11と、AlGaNコンタクト層11上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaNクラッド層12と、AlGaNクラッド層12上に配置されn型不純物(Si)をドープされたAlGaN導波層14と、AlGaN導波層14上に配置されたAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16と、この活性層16上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaN導波層18と、AlGaN導波層18上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたAlGaNクラッド層20と、AlGaNクラッド層20上に配置されp型不純物(Mg)をドープされたリッジストライプ構造を有するAlGaNコンタクト層22と、AlGaNコンタクト層22上に配置されAlGaNコンタクト層22とオーミック接触するp側電極26と、a面基板10面に対してp側電極26と同一表面側に配置されAlGaNコンタクト層22の表面からエッチングにより露出されたAlGaNコンタクト層11上に配置されてAlGaNコンタクト層11とオーミック接触するn側電極24とを備えている。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
また、第1の実施の態様において説明したのと同様に、量子井戸構造内での井戸層の面内圧縮歪みを低減させる観点からは、AlGa1−yN障壁層とAlGa1−xN井戸層を積層させて得られる単一乃至多重の量子井戸構造の発光層(AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層)において、井戸層(AlGa1−xN)のAlモル分率(x)を20%以上90%以下とし、井戸層のAlモル分率(x)と障壁層(AlGa1−yN)のAlモル分率(y)とのモル分率比(r=x/y)を0.7以上とすることが好ましく、このような量子井戸構造の設計により、紫外線発光用の窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることが容易化される。
この態様の窒化物半導体発光素子は、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、相対的に厚いAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlGa1−yN/AlGa1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
しかも、p側電極26およびn側電極24を同一表面側から取り出すことができ、実装も容易となる。
[第10の実施の形態]
本発明の第10の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子は、AlIn1−yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlIn1−xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層を積層させた量子井戸構造の活性層(AlIn1−yN/AlIn1−xN活性層)を備えている。なお、AlInN混晶の組成を表現するに際しても、AlGaN混晶で用いたものと同様のパラメータ(x、y)を用いることとするが、これは便宜上のものであって、相互の関連はない。
図23は、本発明の第10の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の活性層(AlIn1−xN井戸層)のInNモル分率(x)について説明するための図で、図23(a)はレーザ光の発振波長とInNモル分率との関係を示す図であり、図23(b)はバンドギャップ・エネルギ(Eg)のInNモル分率依存性を示す図である。
また、図24は、上述のAlIn1−yN/AlIn1−xN活性層を備えた本発明の第10の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子におけるバンドギャップ・エネルギとa軸の格子定数の関係、および発光波長とa軸の格子定数の関係を示す図である。
本発明の第10の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子は、第1乃至9の実施の形態のものにおけるAlGa1−yN/AlGa1−xN活性層を上述のAlIn1−yN/AlIn1−xN活性層とした以外は、同様の構造および製造プロセスとすることができる。なお、活性層の上下に設けられる第1および第2の導電型の半導体層はAlInN混晶である必要はなく、他の組成の窒化物半導体層であってもよい。また、基板側をn型、表面側をp側とした積層構造である必要もなく、基板側をp側、表面側をn側とした積層構造としてもよい。さらに、基板としては、GaN基板の他、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等を用いることができる。
つまり、本発明の第10の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子は、基板上に、第1の導電型の半導体層と、量子井戸構造を有する活性層と、第1の導電型とは逆の第2の導電型の半導体層とが順次積層された窒化物半導体発光素子であって、基板の主面はa面であり、活性層は、AlIn1−yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlIn1−xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層を備えており、活性層の結晶成長の主面の法線方向はc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成し、該活性層からの発光は、c軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有している。
図23に示したように、AlIn1−xN混晶のバンドギャップ・エネルギのInNモル分率依存性(Eg(x))は、次式で表すことができる(非特許文献12を参照)。Eg(x)=0.65x+6.04(1−x)−3.1x(1−x)(式2)。ここで、井戸層の面内圧縮歪みの低減と波長300nm以下の波長の紫外光の発光とを同時に満足させるためには、AlIn1−xN井戸層のInNモル分率xを0.05以下(5%以下)とすることが好ましい。
なお、この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlIn1−yN/AlIn1−xN活性層16は、そのc軸が結晶成長の主面の法線方向から40°〜90°の範囲内で傾いた面を結晶成長の主面とし、かつ、この活性層から発光する光の電界成分Eが主にc軸と平行(E//c)なる偏光特性を示す。
また、本態様の窒化物半導体発光素子においても、上述の結晶成長主面には、非極性面や半極性面が含まれる。
この場合、非極性面には、m面やa面が含まれる。
また、上述の半極性面には、{10−11}面、{10−12}面、或いは{11−22}面が含まれる。
さらに、a面({11−20}面)及び{11−22}面は何れもm面({1−100}面)と直交する結晶面であるから、上述した結晶成長主面としてa面及び{11−22}面の何れの結晶面を選択した場合においても、レーザ共振器の端面を劈開性が良好なm面とすることができ、劈開面としてのm面をLDの共振器の反射面として用いることが可能となる。
この態様の窒化物半導体発光素子においても、AlIn1−yN/AlIn1−xN活性層の結晶成長面を非極性面とし、この活性層16のストライプ方向の劈開面をm面とすることによって、水平横モードの光については利得・偏光導波の利用が可能となる。また、垂直横モードの光については、相対的に厚いAlIn1−yN/AlIn1−xN活性層16を用いる(例えば、MQWの井戸数を3以下として、全体の厚さを約30nm程度とする)ことによって、AlIn1−yN/AlIn1−xN活性層16内への光閉じ込め効果による導波の利用が可能となる。
本実施態様の窒化物半導体発光素子においても、活性層の結晶成長面をc軸(極性面)から約40°〜90°程度に傾斜させることで分極による内部電界効果を低減させ、井戸層のInNモル分率を5%以下とすることによって井戸層の面内圧縮歪みを低減させることにより、活性層から発光する光の電界ベクトルEとc軸を平行ならしめて効率的な光導波を実現する。これにより、窒化物半導体発光素子(LD)の閾値電流密度を低減させ、発光効率を向上させることができる。
[その他の実施の形態]
以上、実施の態様により本発明の窒化物半導体発光素子およびその製造方法について説明したが、活性層は、AlGaN混晶やAlInN混晶のほかに、4元系のAlGaInN混晶とすることもできる。活性層を4元系のAlGaInN混晶としても、上述したものと同様の構造および製造プロセスとすることができる。
この場合の窒化物半導体発光素子は、基板上に、第1の導電型の半導体層と、量子井戸構造を有する活性層と、第1の導電型とは逆の第2の導電型の半導体層とが順次積層された窒化物半導体発光素子であって、基板の主面はa面であり、活性層は、Al(GaβIn1−β1−yN(0≦y≦1、0≦β≦1)の組成の障壁層とAl(GaαIn1−α1−xN(0≦x≦1、0≦α≦1)の組成の井戸層を備えており、活性層の結晶成長の主面の法線方向はc軸方向と40°〜90°の範囲内の角度を成し、該活性層からの発光は、c軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有している。なお、ここでも、組成を表現するためのパラメータとして、AlGaN混晶およびAlInN混晶で用いたものと同様のパラメータ(x、y)を用いているが、これは便宜上のものであって、相互の関連はない。
そして、かかる4元系のAlGaInN混晶の活性層を備えた窒化物半導体発光素子においても、活性層の上下に設けられる第1および第2の導電型の半導体層はAlGaInN混晶である必要はなく、他の組成の窒化物半導体層であってもよい。また、基板側をn型、表面側をp側とした積層構造である必要もなく、基板側をp側、表面側をn側とした積層構造としてもよい。さらに、基板としては、GaN基板の他、AlN基板、AlGaN基板、ZnO基板、GaO基板、或いはSiC等を用いることができる。
以上、本発明を実施形態により説明したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。例えば、本発明のさらなる応用として、活性層をZnO、MgZnO混晶、CdZnO混晶、ZnOS混晶、ZnOSe混晶とする半導体発光素子を提供することもできると考えられる。
本発明の実施の形態においては、主として半導体レーザダイオードについて説明したが、発光ダイオードにも適用できることは明らかであり、本発明は記載されてはいない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
本発明に係る窒化物半導体発光素子およびその製造方法によれば、窒化物半導体発光素子の低閾値電流密度化を実現することができることから、殺菌・浄水、医療機器、生化学産業、半導体リソグラフィなどの幅広い分野で必須とされる光源が提供される。
本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の製造に用いられる窒化物結晶であるGaNおよびAlNのバンド構造を説明するための図(バンドダイヤグラム)であり、図1(a)はGaNのΓ点におけるバンドダイヤグラム、図1(b)はAlNのΓ点におけるバンドダイヤグラムである。 本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の製造に用いられるAlGaN混晶(AlGa1−xN)の特性をシミュレーションにより求めた結果を説明するための図で、図2(a)は無歪みAlGa1−xN混晶の価電子帯頂上のバンドオーダリングのAlNモル分率x依存性を示す図であり、図2(b)は無歪みGaN基板上で面内に伸張歪みを受けたAlGa1−xN混晶のc軸方向の歪みεzz(%)のAlNモル分率x依存性を示す図である。 実際のAlGa1−xN混晶におけるカソードルミネッセンス(CL)スペクトルの偏光特性のAlNモル分率x依存性を示す実験データで、図3(a)はバンド端に近い波長領域の偏光依存CLスペクトルのAlNモル分率x依存性を纏めたもの、図3(b)は得られたスペクトルの積分強度を基に偏光比(ρ=I−I///I−I//)を求めたものである。 窒化物半導体結晶の非極性面および半極性面について説明するための模式図で、図4(a)は、III族窒化物半導体の結晶構造を示す模式図、図4(b)は非極性面であるm面{1−100}およびa面{11−20}を説明するための模式図、図4(c)は半極性面{10−11}を説明するための模式図、図4(d)は半極性面{10−12}を説明するための模式図、そして、図4(e)は半極性面{11−22}を説明するための模式図である。 本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子(LD)の基本構造を説明するための斜視概念図である。 参考例としての窒化物半導体発光素子(LD)の基本構造を説明するための斜視概念図である。 共振器の反射面(鏡面)と導波モードについて説明するための図で、図7(a)はc面を共振器反射面として用いた場合の導波モードを表す図であり、図7(b)はm面を共振器反射面として用いた場合の導波モードを表す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の活性層(AlGa1−xN井戸層)のAlNモル分率(x)について説明するための図で、図8(a)はレーザ光の発振波長とAlNモル分率との関係を示す図であり、図8(b)はバンドギャップ・エネルギ(Eg)のAlNモル分率依存性を示す図である。 無歪みAlGa1−yN障壁層の上に積層したAlGa1−xN井戸層に発生する、c軸方向の歪みεzz(%)の、AlGa1−yN障壁層のAlNモル分率(y)依存性を示す図である。 GaN/InGaN青紫LDの一構造を例とする正孔密度と距離の関係を示す図であって、MQW活性層への不均一な正孔分布を説明するための図である。 GaN/InGaN青紫LDの別の構造を例とする正孔密度と距離の関係を示す図であって、MQW活性層への不均一な正孔分布を説明する図である。 GaN/InGaN青紫LDにおける閾値電流密度J(kA/cm)とInGaN井戸数の関係を示す図である。 MOVPE装置の構造例を説明するための概念図である。 MBE装置の構造例を説明するための概念図である。 本発明の第2の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。 本発明の第3の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。 本発明の第4の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。 本発明の第5の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。 本発明の第6の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。 本発明の第7の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。 本発明の第8の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。 本発明の第9の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構造を説明するための断面概略図である。 本発明の第10の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の活性層(AlIn1−xN井戸層)のInNモル分率(x)について説明するための図で、図23(a)はレーザ光の発振波長とInNモル分率との関係を示す図であり、図23(b)はバンドギャップ・エネルギ(Eg)のInNモル分率依存性を示す図である。 AlIn1−yN/AlIn1−xN活性層を備えた本発明の第10の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子におけるバンドギャップ・エネルギとa軸の格子定数の関係、および発光波長とa軸の格子定数の関係を示す図である。
符号の説明
10,52 基板
11,22 コンタクト層
12,20 クラッド層
13,17 AlGaN層
14,18 導波層
16 活性層
24 n側電極
26 p側電極
28a,28b,30a,30b 共振反射面
40 水素キャリアガス槽
42 Al供給槽
44 Ga供給槽
45 In供給槽
46 DMHy供給槽
47 Mg供給槽
48 NHまたはNガスボンベ
49 Si供給用ガスボンベ
50 加熱機構
54 排気口
56 サセプタ
60 反応槽
62 Gaセル
63 Mgセル
64 Alセル
65 Siセル
66 NHセルまたはRFプラズマソース
67 Inセル
68 RHEEDスクリーン
70 電子ビーム源
70a,70b 電子ビーム
72 基板ホルダ
74 基板ヒータ
76 液体窒素シュラウド
78 排気バルブ

Claims (7)

  1. GaN基板上に、第1の導電型の半導体層と、量子井戸構造を有する活性層と、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型の半導体層とが順次積層された窒化物半導体発光素子であって、
    前記GaN基板の主面はa面であり、
    前記活性層は、AlyGa1-yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlxGa1-xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層を備えており、
    前記活性層の結晶成長の主面が非極性面のa面であり、
    前記AlxGa1-xN井戸層のAlNモル分率(x)は58%以上90%以下で、該井戸層のAlNモル分率(x)と前記AlyGa1-yN障壁層のAlNモル分率(y)との比(r=x/y)は0.7以上であり、
    該活性層からの発光は、c軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有し
    m面を反射面とする共振器を備えていることを特徴とする窒化物半導体発光素子。
  2. 前記m面は劈開面である請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
  3. 前記第1の導電型の半導体層及び前記第2の導電型の半導体層の少なくとも一方はAlGaN混晶の窒化物半導体層である請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。
  4. 前記第1の導電型はn型であり、前記第2の導電型はp型である請求項1乃至3の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
  5. 活性層からの発光がc軸と平行な電界成分E(E//c)が支配的となる偏光特性を有する窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
    主面がa面のGaN基板上に第1の導電型を有する第1の半導体層を結晶成長させる工程Aと、
    該第1の半導体層上に、AlyGa1-yN(0≦y≦1)の組成の障壁層とAlxGa1-xN(0≦x≦1、x<y)の組成の井戸層からなる量子井戸構造を有する活性層を結晶成長させる工程Bと、
    該活性層上に、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型の第2の半導体層を結晶成長させる工程Cと
    m面を反射面とする共振器を形成する工程Jを備え、
    前記工程Bは、前記活性層の結晶成長の主面が非極性面のa面となるように実行され、かつ、前記AlxGa1-xN井戸層のAlNモル分率(x)が58%以上90%以下で、該井戸層のAlNモル分率(x)と前記AlyGa1-yN障壁層のAlNモル分率(y)との比(r=x/y)が0.7以上となるように実行されることを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法。
  6. 前記共振器の反射面を前記m面に沿う劈開により得る請求項5に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  7. 前記第1及び第2の半導体層は窒化物半導体層であり、前記第1の半導体層にはn型不純物としてのSiがドーピングされ、及び/又は、前記第2の半導体層にはp型不純物としてのMgがドーピングされる請求項5又は6に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
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