JP5293822B2 - 車両用ダンパシステム - Google Patents

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Description

本発明は、電磁モータを有してばね上部とばね下部との接近動作・離間動作に対する減衰力を発生させる電磁式ダンパを含んで構成される車両用ダンパシステムに関する。
近年では、車両用のサスペンションシステムとして、電磁モータを有してその電磁モータに生じる起電力に依存してばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させる電磁式ダンパを含んで構成されるダンパシステムを一構成要素とするシステム、いわゆる電磁式サスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献に記載のシステムが存在する。
特開2007−290669号公報 特開2007−37264号公報 特開2001−310736号公報
発明の解決しようとする課題
電磁式ダンパを含んで構成されるダンパシステムは、一般的に、上記特許文献に記載されたシステムのように、電磁式ダンパが、電磁モータとしてのブラシレスDCモータと、そのブラシレスDCモータを駆動するために複数のスイッチング素子を含んで構成される駆動回路とを有しており、比較的複雑な構成で高価なものとなるという問題がある。電磁式ダンパを含んで構成されるダンパシステムは、未だ開発途上にあるため、現在検討されている一般的なダンパシステムの基本的な構成から生じる上記のような問題を抱え、実用性を向上させるための余地を多分に残すものとなっている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、新たな構成の車両用ダンパシステムを提案することで、車両用ダンパシステムの実用性を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するために、第1の発明の車両用ダンパシステムは、それの構成要素である電磁ダンパが、(i)電磁モータと、(ii)ばね上部とばね下部との接近離間動作と電磁モータの動作とを相互に変換する動作変換機構と、(iii)電磁モータの外部に設けられ、(A)電磁モータの2つの端子のうちの一方である第1端子から他方である第2端子への電流の流れが許容されるとともに第2端子から第1端子への電流の流れが禁止される第1接続路と、(B)電磁モータの第2端子から第1端子への電流の流れが許容されるとともに第1端子から第2端子への電流の流れが禁止される第2接続路と、(C)第1接続路に設けられて第1端子から第2端子へと流れる電流を調整する第1接続路電流調整器と、(D)第2接続路に設けられて第2端子から第1端子へと流れる電流を調整する第2接続路電流調整器とを有する外部回路とを備え、その外部回路を制御することで電磁モータに流れる電流を制御するための外部回路制御装置が、(a)ばね上部とばね下部との相対振動のばね上共振周波数域の成分であるばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との接近動作を示す値となっている場合に、第1接続路電流調整器を主調整器とし、かつ、ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との離間動作を示す値となっている場合に、第2接続路電流調整器を主調整器とし、その主調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方に対して、ばね上部とばね下部との相対振動を減衰するための主体となる制御である第1制御を実行する主調整器制御部と、(b)ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との接近動作を示す値となっている場合に、第2接続路電流調整器を補助調整器とし、かつ、ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との離間動作を示す値となっている場合に、第1接続路電流調整器を補助調整器とし、その補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方に対して、その第1制御によるばね上部とばね下部との相対振動の減衰を補助するための制御である第2制御を実行する補助調整器制御部とを有することを特徴とする。
また、第2の発明の車両用ダンパシステムは、それの構成要素である電磁ダンパが、(i)電磁モータと、(ii)動作変換機構と、(iii)(A)第1接続路と(B)第2接続路と(C)第1接続路電流調整器と(D)第2接続路電流調整器とを有する外部回路とを備え、第1接続路電流調整器および第2接続路電流調整器の各々が、その各々が設けられた第1接続路と第2接続路とのうちの一方を導通させる導通状態とその一方を遮断する遮断状態とを選択的に切り換えるスイッチング素子によって構成され、外部回路制御装置が、それらスイッチング素子の各々のデューティ比を制御することで電磁モータによる発電電流を制御するように構成され、かつ、第1接続路電流調整器および第2接続路電流調整器の各々を構成するスイッチング素子のデューティ比を、第1接続路と第2接続路とのいずれに発電電流が流れているかによっては変更しないように構成される。
ばね上部とばね下部との相対振動には比較的周波数の高い成分が含まれており、接近動作と離間動作とが非常に短い時間で切り換わるような場合、ばね上部とばね下部との相対動作の方向に応じて電流調整器の制御を切り換えるのは困難であると考えられる。第1の発明の車両用ダンパシステムは、ばね上部とばね下部との相対振動を種々の周波数の振動成分が合成したものと捉え、それらのうちのばね上共振周波数域の成分の値が示す動作の方向に基づいて2つの電流調整器に主従関係をつけてそれぞれを制御する構成、つまり、ばね上部とばね下部との相対動作の実際の方向ではなく、ばね上共振周波数域成分の値が示す動作の方向に基づいて制御を切り換えることが可能であるため、上述した問題が生じることはなく、効果的に相対振動を減衰させることが可能である。また、第2の発明の車両用ダンパシステムによれば、自身に対応する接続路に発電電流が流れているか否かに関わらずデューティ比が変更されずに維持され、自身に対応する接続路に発電電流が流れた際にその発電電流の量を調整することが可能であるため、上述した問題が生じることはなく、効果的に相対振動を減衰させることが可能である。したがって、そのような利点を有することで、本発明のダンパシステムは実用性の高いものとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求の範囲と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項,(21)項,(27)項の技術的特徴を合わせたものが請求項1に相当し、その請求項1に(22)項および(23)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1または請求項4に(29)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、その請求項5に(30)項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、その請求項6に(31)項の技術的特徴を付加したものが請求項7に、請求項6または請求項7に(32)項の技術的特徴を付加したものが請求項8に、請求項1,請求項4ないし請求項8のいずれか1つに(25)項および(26)項の技術的特徴を付加したものが請求項9に、請求項1,請求項4ないし請求項9のいずれか1つに(34)項の技術的特徴を付加したものが請求項10に、それぞれ相当する。また、請求項1,請求項4ないし請求項10のいずれか1つに(11)項の技術的特徴を付加したものが請求項11に相当し、その請求項11に(12)項の技術的特徴を付加したものが請求項12に、請求項11または請求項12に(14)項の技術的特徴を付加したものが請求項13に、それぞれ相当する。さらに、請求項1,請求項4ないし請求項13のいずれか1つに(4)項の技術的特徴を付加したものが請求項14に相当し、その請求項14に(6)項の技術的特徴を付加したものが請求項15に相当し、請求項1,請求項4ないし請求項15のいずれか1つに(28)項の技術的特徴を付加したものが請求項16に相当する。さらにまた、(1)項,(21)項,(25)項,(26)項の技術的特徴を合わせたものが請求項17に相当する。
(1)車両に搭載されて、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対して減衰力を発生させる電磁式ダンパを含んで構成されるダンパシステムであって、
その電磁式ダンパが、
電磁モータと、
ばね上部とばね下部との接近離間動作と前記電磁モータの動作とを相互に変換する動作変換機構と、
前記電磁モータの外部に設けられ、(A)前記電磁モータの2つの端子のうちの一方である第1端子から他方である第2端子への電流の流れが許容されるとともに前記第2端子から前記第1端子への電流の流れが禁止される第1接続路と、(B)前記電磁モータの前記第2端子から前記第1端子への電流の流れが許容されるとともに前記第1端子から前記第2端子への電流の流れが禁止される第2接続路とを有する外部回路と
を備え、
ばね上部とばね下部との接近動作に対しては、前記電磁モータによる発電電流が前記第1接続路を流れることで、ばね上部とばね下部との離間動作に対しては、前記電磁モータによる発電電流が前記第2接続路を流れることで、前記電磁モータに生じる起電力に依存した減衰力を発生させるように構成されたことを特徴とする車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様においては、電磁モータによる発電電流が、ばね上部とばね下部とが接近動作させられる場合と、それらが離間動作させられる場合とで、外部回路内の別の経路を流れることになる。つまり、後に詳しく説明するが、第1接続路を流れる電流に対する抵抗と第2接続路を流れる電流に対する抵抗とを異ならせることや、第1接続路と第2接続路との各々を流れる電流の量を調整すること等によって、ばね上部とばね下部との接近動作に対する減衰特性と、それらの離間動作に対する減衰特性とを、容易に相違させることが可能である。
本項の態様における「電磁モータ」は、特に限定されず種々のものを採用可能であるが、システムの構成を簡便にするという観点からすれば、電磁モータが有する端子が2つであるもの、例えば、ブラシ付きのDCモータや単相モータ等が望ましい。また、例えば、ばね上部とばね下部との相対動作の方向では発電電流の向きが変わらないモータであっても、その相対動作の方向に応じて発電電流の向きを逆向きにする方法はあるが、システムの構成を簡便にするという観点からすれば、本項の態様の「電磁モータ」は、ばね上部とばね下部との相対動作の方向に応じた発電電流の向きが、自身の構造によって逆向きになるものが望ましい。換言すれば、ばね上部とばね下部との相対動作の方向に応じて、2つの端子の高電位側のものと低電位側のものとが切り換わるもの、さらに言えば、2つの端子と、バッテリの高電位側端子および低電位側端子との接続を入れ換えることで回転方向が反転するものであることが望ましい。以上のことから、本項の「電磁モータ」は、例えば、永久磁石を用いたブラシ付きのDCモータとすることが可能である。
本項の態様における「動作変換機構」は、その構造,構成が特に限定されず、ばね上部とばね下部との接近離間動作を電磁モータの動作に変換すること、電磁モータの動作をばね上部とばね下部との接近離間動作に変換することが可能なものである。なお、電磁式ダンパが、専ら電磁モータに生じる起電力に依存した減衰力を発生させるものである場合には、動作変換機構は、ばね上部とばね下部との接近離間動作を電磁モータの動作に変換するものとなる。さらに言えば、電磁式ダンパにおいて動作変換機構および電磁モータ等の機械的な構成要素からなる部分をダンパ本体と定義すれば、そのダンパ本体の構造,構成も特に限定されない。例えば、電磁モータが回転動作するものであり、かつ、ダンパ本体が、ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との接近・離間に応じてばね上部側ユニットとの相対動作が可能なばね下部側ユニットとを含んで構成される場合には、動作変換機構としてねじ機構を採用し、そのねじ機構によってばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの上下方向の相対動作を回転型の電磁モータの回転動作に変換する構成とすることが可能である。具体的に言えば、伸縮可能に構成されてその伸縮に対する力を発生させる電磁式のショックアブソーバとすることが可能である。また、例えば、電磁モータが回転動作するものであり、ダンパ本体が、概して車幅方向に延びて両端部の各々がばね上部とばね下部との各々に回動可能に連結されたアームを含んで構成され、そのアームのばね上部に連結された端部の回転に伴って電磁モータが回転動作する構成とすることが可能である。なお、そのような構成とされた場合、アームは、動作変換機構の一構成要素と考えることができる。
(2)前記第1接続路が、前記第1端子から前記第2端子への電流の流れを許容するとともに前記第2端子から前記第1端子への電流の流れを禁止するための第1整流器を有し、
前記第2接続路が、前記第2端子から前記第1端子への電流の流れを許容するとともに前記第1端子から前記第2端子への電流の流れを禁止するための第2整流器を有する(1)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、2つの接続路の各々に一方向にしか電流が流れないようにするための構成を具体化した態様であり、第1整流器,第2整流器は、一方向にのみ電流を流すダイオードとすることが可能である。
(3)前記外部回路が、
前記第1接続路を流れる電流に対する抵抗と前記第2接続路を流れる電流に対する抵抗とが、互いに異なるように構成された(1)項または(2)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、ばね上部とばね下部との接近動作に対する減衰特性と、それらの離間動作に対する減衰特性とを異ならせた態様、換言すれば、ばね上部とばね下部との接近動作に対する減衰力と、それらの離間動作に対する減衰力とを異ならせた態様である。本項に記載の態様は、2つの接続路の各々の抵抗値が互いに異なる態様に限定されるのではなく、ばね上部とばね下部との接近動作の速度と離間動作の速度とが同じ速度である場合において、2つの接続路の各々を流れる電流の量が互いに異なる態様も含まれる。ちなみに、その後者の態様について具体的に言えば、後に詳しく説明するが、2つの接続路の各々に自身に流れる電流を調整する電流調整器を設けて、その2つの接続路の各々に流れる電流の量を調整することで、ばね上部とばね下部との接近動作に対する減衰力と、それらの離間動作に対する減衰力とを異ならせた態様とすることができる。しかしながら、そのような態様においては、電流調整器の制御等が必要となるため、ダンパシステムの構成を簡便にするという観点からすれば、第1接続路と第2接続路との各々に、抵抗値の大きさが互いに異なる抵抗器を設けた態様とすることが望ましい。
(4)前記外部回路が、
前記電磁モータの2つの端子のうちの高電位となっているものから車両に搭載された蓄電装置の高電位側端子への電流の流れが許容されるとともに、前記蓄電装置の低電位側端子から前記電磁モータの2つの端子のうちの低電位となっているものへの電流の流れが許容される蓄電装置接続路を有し、
当該車両用ダンパシステムが、
前記電磁モータの起電力が前記蓄電装置の電圧を超える場合に、前記電磁モータによる発電電流の一部が、前記蓄電装置接続路を流れるように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、電磁モータの発電電力の少なくとも一部を蓄電装置に回生させる態様である。本項に記載のダンパシステムによって、蓄電装置が充電される、あるいは、蓄電装置の電力供給が補われるため、蓄電装置の効率を向上させることが可能である。なお、本項に記載の「蓄電装置」は、車両の駆動用の電源や、ランプ類,オーディオ類などの電装品および車両に搭載される他の装置等に電力を供給するものであってもよく、電磁式ダンパ専用のものであってもよい。また、蓄電装置は、バッテリであっても、電気二重層コンデンサ等のキャパシタであってもよい。
(5)前記蓄電装置接続路が、
前記第1端子から前記蓄電装置の高電位側端子への電流の流れが許容されるとともに前記蓄電装置の高電位側端子から前記第1端子への電流の流れが禁止される第1高電位側接続路と、
前記第2端子から前記蓄電装置の高電位側端子への電流の流れが許容されるとともに前記蓄電装置の高電位側端子から前記第2端子への電流の流れが禁止される第2高電位側接続路と、
前記蓄電装置の低電位側端子から前記第1端子への電流の流れが許容されるとともに前記第1端子から前記蓄電装置の低電位側端子への電流の流れが禁止される第1低電位側接続路と、
前記蓄電装置の低電位側端子から前記第2端子への電流の流れが許容されるとともに前記第2端子から前記蓄電装置の低電位側端子への電流の流れが禁止される第2低電位側接続路と
を含んで構成された(4)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、蓄電装置接続路の構成を具体化した態様であり、電磁モータの2つの端子のうちのいずれが高電位になるかに応じて、電流の流れる経路を換える態様である。なお、2つの接続路の各々が先に述べた整流器を有する態様である場合には、第1整流器を、第1高電位側接続路と第1低電位側接続路とのいずれかの構成要素として、第2整流器を、第2高電位側接続路と第2低電位側接続路とのいずれかの構成要素として、利用することが可能である。そのような構成とすれば、外部回路の構成、ひいては、ダンパシステムの構成を簡便なものとすることが可能である。
(6)前記外部回路が、
前記蓄電装置接続路を流れる電流を調整する蓄電装置接続路電流調整器を有する(4)項または(5)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様における「蓄電装置接続路電流調整器」には、例えば、可変抵抗器や、トランジスタ等のスイッチング素子を採用可能であり、本項の態様は、電磁モータの発電電流の少なくとも一部である蓄電装置への回生電流を調整可能な態様である。本項の態様は、例えば、蓄電装置の充電量(残存量,残存エネルギ量と考えることもできる)に基づいて、蓄電装置接続路電流調整器を制御する態様とすることができる。具体的には、蓄電装置の充電量が多いほど、回生電流を小さくするような態様とすることが可能である。
また、例えば、蓄電装置の車両に搭載された種々の装置への供給電力が増加して、蓄電装置の電圧が低下した場合を考える。そのように蓄電装置の電圧が低下した場合には、蓄電装置へ電流が流れやすくなるとともに、蓄電装置の電圧が高い場合に比較して、蓄電装置へ流れる発電電流の一部である回生電流が大きくなる。つまり、蓄電装置の電圧が低下した場合には、その電圧が高い場合に比較して、電磁式ダンパの減衰力が大きくなってしまう。本項に記載の態様は、上記蓄電装置接続路電流調整器によって、蓄電装置の電圧が低下した場合に回生電流を小さくして、電磁式ダンパの減衰力の増大を抑制する態様とすることも可能である。
(11)前記外部回路が、
前記第1接続路に設けられて前記第1端子から前記第2端子へと流れる電流に対する抵抗となる第1抵抗器と、前記第2接続路に設けられて前記第2端子から前記第1端子へと流れる電流に対する抵抗となる第2抵抗器とを有する(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、2つの接続路の各々に抵抗器を設けた態様である。それら2つの抵抗器の各々の抵抗値を適切化することによって、ばね上部とばね下部との接近動作に対する減衰特性と、離間動作に対する減衰特性とを、それぞれ、適切化することが可能である。なお、本項の態様の「第1抵抗器」および「第2抵抗器」の各々は、固定抵抗器であっても、可変抵抗器であってもよい。2つの抵抗器の各々として可変抵抗器を採用すれば、後に詳しく説明するが、車両の走行状態等に応じて、接近動作に対する減衰特性と離間動作に対する減衰特性とを、別個に変更することが可能である。
(12)前記第1抵抗器の抵抗値と前記第2抵抗器の抵抗値とが、互いに異なる(11)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、先に述べた態様である2つの接続路を流れる電流に対する抵抗を互いに異ならせる態様を、2つの接続路の各々に互いに抵抗値の異なる抵抗器を設けることで実現した態様であり、先に述べたように、ダンパシステムの構成を簡便にするという観点において望ましい態様である。
(13)前記第1抵抗器の抵抗値が、前記第2抵抗器の抵抗値より大きくされた(12)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、接近動作に対する減衰力が、離間動作に対する減衰力より小さくされた態様である。路面の凹所を車輪が通過する際の電磁式ダンパへの入力に比較して、路面の凸所を車輪が通過する際の電磁式ダンパへの入力の方が大きい。本項の態様によれば、その路面の凸所を車輪が通過する際のばね上部とばね下部との接近動作に対する減衰力が小さくされているため、その際のばね上部に加わる衝撃を効果的に緩和することが可能である。
(14)前記外部回路が、
前記第1抵抗器をバイパスする第1抵抗器バイパス路と、
その第1抵抗器バイパス路に設けられ、その第1抵抗器バイパス路に流れる電流の抵抗となる第1補助抵抗器と、
前記第1抵抗器バイパス路に電流が流れる状態と流れない状態とを切り換えるための第1開閉器と、
前記第2抵抗器をバイパスする第2抵抗器バイパス路と、
その第2抵抗器バイパス路に設けられ、その第2抵抗器バイパス路に流れる電流の抵抗となる第2補助抵抗器と、
前記第2抵抗器バイパス路に電流が流れる状態と流れない状態とを切り換えるための第2開閉器と
を有し、
前記第1開閉器によって、通常時に前記第1抵抗器バイパス路に電流が流れない状態となり、前記第1抵抗器にそれを電流が通過しない失陥が生じた場合に前記第1抵抗器バイパス路に電流が流れる状態となり、
前記第2開閉器によって、通常時に前記第2抵抗器バイパス路に電流が流れない状態となり、前記第2抵抗器にそれを電流が通過しない失陥が生じた場合に前記第2抵抗器バイパス路に電流が流れる状態となるように構成された(11)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
2つの接続路の各々に設けられた抵抗器は、発熱による断線等によって、電流が通過しない失陥が生じる虞がある。抵抗器にそのような失陥が生じた場合、電磁モータによる発電電流が流れないため、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対して減衰力が発生せず、車両の安定性が損なわれることになる。本項に記載の態様においては、抵抗器にそれを電流が通過しない失陥が生じた場合であっても、その抵抗器のバイパス路に電流が流れて補助抵抗器を電流が通過することになる。したがって、本項の態様によれば、フェールセーフという観点において優れたダンパシステムが実現する。
本項に記載の「抵抗器にそれを電流が通過しない失陥」が生じたか否か、詳しく言えば、電磁モータが動作しているにも関わらず抵抗器を電流が通過しない状態にあるか否かを検出する方法は、特に限定されない。例えば、電磁モータの回転角の変化に基づいて、ばね上部とばね下部とが接近動作あるいは離間動作していることが検出され、かつ、その動作の際に発電電流が流れる接続路に設けられた抵抗器に電流が流れていないことが検出された場合に、抵抗器にそれを電流が通過しない失陥が生じたと判定するように構成し、その判定が成された場合に、開閉器の切換が行われるような構成とすることが可能である。ちなみに、上記のことを判定するために、電磁モータの回転角を直接検出するセンサを用いてもよく、例えば、ばね上部とばね下部との間の距離を検出するセンサ等によって電磁モータの回転角を間接的に検出するものを用いてもよい。また、抵抗器を通過する電流を直接検出するセンサを用いてもよく、例えば、接続路のある点における電位や電圧等を計測するセンサ等によって抵抗器に電流が通過したか否かを間接的に検出するものを用いてもよい。
(21)前記外部回路が、
前記第1接続路に設けられて前記第1端子から前記第2端子へと流れる電流を調整する第1接続路電流調整器と、前記第2接続路に設けられて前記第2端子から前記第1端子へと流れる電流を調整する第2接続路電流調整器とを有し、
当該電磁式ダンパシステムが、
前記外部回路を制御することで、前記電磁モータに流れる電流を制御するための外部回路制御装置を備え、
その外部回路制御装置が、
前記第1接続路電流調整器を制御することで、ばね上部とばね下部との接近動作に伴う発電電流を制御するとともに、前記第2接続路電流調整器を制御することで、ばね上部とばね下部との離間動作に伴う発電電流を制御するように構成された(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
本項の態様における「外部回路制御装置」は、例えば、電磁モータによる発電電流や、電磁モータが蓄電装置と接続される場合には、蓄電装置からの供給電流をも制御するためのものとすること可能である。なお、電磁式ダンパが、専ら電磁モータに生じる起電力に依存した減衰力を発生させるものである場合には、外部回路制御装置は、電磁モータによる発電電流の流れを制御するためのものとなる。また、その「発電電流の流れ」とは、発電電流の流れる向きや、発電電流の量等を含む概念である。
本項の態様における「第1接続路電流調整器」および「第2接続路電流調整器」の各々は、自身に対応する接続路を流れる設定時間当たりの電流の量を調整するものであり、上記外部回路制御装置によって制御される。つまり、外部回路制御装置が、第1接続路電流調整器によって、ばね上部とばね下部との接近動作に伴う発電電流の量を制御することで、接近動作に対する減衰力を変更するとともに、第2接続路電流調整器によって、ばね上部とばね下部との離間動作に伴う発電電流の量を制御することで、離間動作に対する減衰力を変更することが可能である。なお、それら「第1接続路電流調整器」および「第2接続路電流調整器」の各々には、例えば、可変抵抗器や、トランジスタ等のスイッチング素子を採用可能である。つまり、先に述べた接続路に抵抗器が設けられた態様においてその抵抗器として可変抵抗器を採用したものは、本項の態様の一態様と考えることができる。ただし、車両の走行状態等に応じて、ばね上部とばね下部との相対動作に伴う発電電流を制御するためには、電流調整器は、後に説明するパルス駆動等が実行可能なスイッチング素子によって構成されることが望ましい。
ここで、例えば、電磁モータの2つの端子を結ぶ接続路が1つであり、かつ、その接続路に単一の電流調整器が設けられた構成のダンパシステム、つまり、接近動作に伴う発電電流と離間動作に伴う発電電流とが同じ経路を互いに逆方向に流れるように構成されたシステムを考える。このような構成のダンパシステムにおいては、外部回路制御装置から電流調整器への指令発生時点からその指令に基づいて電流調整器が実際に電流を調整し始めるまでの時間、つまり、電流調整器の制御における応答性が問題となる。具体的に言えば、ばね上部とばね下部との相対振動には比較的周波数の高い成分が含まれており、接近動作と離間動作とが非常に短い時間で切り換わるような場合、ばね上部とばね下部との相対動作の方向に応じて電流調整器の制御を切り換えるのは困難であると考えられる。
それに対して、本項に記載のダンパシステムにおいては、接近動作に伴う発電電流が第1接続路を流れ、離間動作に伴う発電電流が第2接続路を流れるため、ばね上部とばね下部との相対動作の方向に応じて、第1接続路電流調整器および第2接続路電流調整器の制御を切り換える必要はなく、ばね上部とばね下部との相対振動を効果的に減衰させることができるのである。なお、後に詳しく説明するが、外部回路制御装置が、それら第1接続路電流調整器および第2接続路電流調整器を、車両の挙動や走行状態等に応じて制御するように構成することが可能であり、それら第1接続路電流調整器および第2接続路電流調整器に別々の役割を持たせるように制御することで、本ダンパシステムに優れた減衰性能を発揮させることが可能である。具体的に言えば、2つの電流調整器のうちの一方を、ばね上共振周波数域の振動を減衰させるように制御して車両の操縦性・安定性(以下、「操安性」という場合がある)を高めるとともに、それらの他方に、ばね下共振周波数域の振動を減衰させるように制御して車両の乗り心地を高めることが可能である。したがって、本項の態様のシステムは、互いに背反する関係にある乗り心地と操安性との両者の調和を図ることが可能であり、実用性の高いものとなる。
(22)前記外部回路制御装置が、
前記電磁式ダンパの減衰係数を制御すべく、前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器を制御する(21)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項の態様は、第1接続路電流調整器を制御することで、ばね上部とばね下部との接近動作に対する減衰係数を制御するとともに、第2接続路電流調整器を制御することで、ばね上部とばね下部との離間動作に対する減衰係数を制御するように構成された態様である。本項に記載の「電磁式ダンパの減衰係数」とは、電磁式ダンパのそれが減衰力を発生させる能力の指標であって、電磁式ダンパが発生させる減衰力の基準となるものである。一般的に、ダンパの減衰係数は、ばね上部とばね下部との相対動作の速度に対する減衰力の大きさで表される。
(23)前記外部回路制御装置が、
ばね上部とばね下部との接近動作に対する前記電磁式ダンパの減衰係数と、ばね上部とばね下部との離間動作に対する前記電磁式ダンパの減衰係数とが異なるように、前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器を制御する(22)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、先に述べた態様である2つの接続路を流れる電流に対する抵抗を互いに異ならせる態様を、2つの接続路の各々に流れる電流の量を調整することで実現した態様である。なお、本項の態様と、先に述べた2つの接続路の各々に抵抗器が設けられた態様とを合わせた態様においては、それら2つの抵抗器の抵抗値を互いに異ならせることで、2つの電流調整器を制御しない場合(接続路に電流が流れる状態を実現した場合)における2つの接続路の基本となる抵抗値を設定し、2つの接続路を流れる電流に対する抵抗を互いに異ならせる構成とされることが望ましい。そのような構成とすれば、例えば、2つの電流調整器を制御できないような失陥が生じた場合であっても、2つの接続路を流れる電流に対する抵抗を互いに異ならせることになるため、ばね上部とばね下部との接近動作と離間動作とを、それぞれ効果的に減衰させることが可能である。
(24)前記外部回路制御装置が、
ばね上部とばね下部との接近動作に対する前記電磁式ダンパの減衰係数が、ばね上部とばね下部との離間動作に対する前記電磁式ダンパの減衰係数より小さくなるように、前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器を制御する(23)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、接近動作に対する減衰力が、離間動作に対する減衰力より小さくされた態様であり、先にも述べたように、路面の凸所を車輪が通過する際にばね上部に対してばね下部が接近動作する場合のばね上部に加わる衝撃を効果的に緩和することが可能である。
(25)前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器の各々が、その各々が設けられた前記第1接続路と前記第2接続路とのうちの一方を導通させる導通状態とその一方を遮断する遮断状態とを選択的に切り換えるスイッチング素子によって構成され、
前記外部回路制御装置が、
それらスイッチング素子の各々を、前記導通状態および前記遮断状態が交互に連続して実現されるように制御するとともに、前記導通状態が実現される時間と前記遮断状態が実現される時間とに基づいて定まる比であるデューティ比を制御することで、前記電磁モータによる発電電流を制御するように構成された(21)項ないし(24)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、電流調整器をスイッチング素子に限定するとともに、そのスイッチング素子に対して外部回路制御装置がPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する構成に限定した態様である。例えば、電磁モータがDCモータであり、それの動作速度と発生させる力とが比例するものである場合、つまり、ばね上部とばね下部との相対動作の速度と電磁式ダンパの減衰力とが比例する構成のダンパシステムである場合には、スイッチング素子のデューティ比、つまり、導通状態が実現される時間と遮断状態が実現される時間とを足し合わせた時間であるパルス間隔に対する導通状態が実現される時間の比を変更することで、電磁式ダンパの減衰係数を変更することが可能となる。したがって、本項の態様は、先に述べた減衰係数を制御する態様ともなり得る。
(26)前記外部回路制御装置が、
前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器の各々を構成するスイッチング素子の前記デューティ比を、前記第1接続路と前記第2接続路とのいずれに発電電流が流れているかによっては変更しないように構成された(25)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、第1接続路電流調整器および第2接続路電流調整器の各々を構成するスイッチング素子のデューティ比を、第1接続路と第2接続路とのうちの自身に対応するものに発電電流が流れているか否かによっては変更しない態様と考えることもできる。本項の態様においては、例えば、2つの電流調整器の各々を構成するスイッチング素子に対して、自身に対応する接続路に発電電流が流れているか否かに関わらずデューティ比を変更せずに維持されれば、自身に対応する接続路に発電電流が流れた際に、その発電電流の量を調整することになる。したがって、本項の態様によれば、ばね上部とばね下部との相対振動が、接近動作と離間動作とが非常に短い時間で切り換わるような場合であっても、先に説明したスイッチング素子の制御における応答性が問題となることはなく、ばね上部とばね下部との相対振動を効果的に減衰させることが可能である。
(27)前記外部回路制御装置が、
ばね上部とばね下部との相対振動のばね上共振周波数域の成分であるばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との接近動作を示す値となっている場合に、前記第1接続路電流調整器を主調整器とし、かつ、前記ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との離間動作を示す値となっている場合に、前記第2接続路電流調整器を主調整器とし、その主調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する主調整器制御部と、
前記ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との接近動作を示す値となっている場合に、前記第2接続路電流調整器を補助調整器とし、かつ、前記ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との離間動作を示す値となっている場合に、前記第1接続路電流調整器を補助調整器とし、その補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する補助調整器制御部と
を有する(21)項ないし(26)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、ばね上部とばね下部との相対振動を種々の周波数の振動成分が合成したものと捉え、それらのうちのばね上共振周波数域の成分の値が示す動作の方向に基づいて、2つの電流調整器のうち、その相対振動を減衰させる主体となるもの、つまり、上記主調整器を認定するように構成された態様である。つまり、本項の態様の「主調整器」には、ばね上共振周波数域成分を減衰させることを主な目的として、ばね上共振周波数域成分を減衰させる役割を持たせることが望ましい。一方、本項に記載の「補助調整器」には、主調整器を補助すべく、後に詳しく説明する種々の役割を持たせることが可能であり、そのことにより、ばね上部とばね下部との相対振動を効果的に減衰させることが可能となる。
(28)前記主調整器制御部が、
前記電磁式ダンパの減衰係数が前記ばね上共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記主調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する(27)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、主調整器にばね上共振周波数域成分を減衰させる役割を持たせた態様である。なお、本項の態様においては、第1接続路電流調整器を制御する際の減衰係数と、第2接続路電流調整器を制御する際の減衰係数とは、同じ値であっても、同じ値でなくてもよい。後者について具体的に言えば、第1接続路電流調整器を制御する際の減衰係数は、接近動作を減衰させるのに適した値とし、第2接続路電流調整器を制御する際の減衰係数は、離間動作を減衰させるのに適した値とすることが可能である。
(29)前記補助調整器制御部が、
前記電磁式ダンパの減衰係数がばね上部とばね下部との相対振動のばね下共振周波数域の成分であるばね下共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する(27)項または(28)項に記載の車両用ダンパシステム。
ばね上部とばね下部との相対振動には、ばね上共振周波数域成分より周波数の高い成分も含まれているため、ばね上共振周波数域成分の値が示すばね上部とばね下部と相対動作の方向は、実際のばね上部とばね下部と相対動作の方向の逆向きとなる場合がある。その場合には、補助調整器が設けられた接続路を発電電流が流れることになる。そこで、本項に記載の態様は、補助調整器に、主調整器とは異なる役割である、ばね上部とばね下部との相対振動のばね下共振周波数域の成分を減衰させる役割を持たせた態様である。本項の態様によれば、2つの調整器の減衰係数を変更せずに、ばね上共振周波数域成分だけでなく、ばね下共振周波数域成分をも減衰可能であるため、ばね上部とばね下部との相対振動を効果的に減衰させることが可能である。なお、「補助調整器制御部」も、先に述べた「主調整器制御部」と同様に、第1接続路電流調整器を制御する際の減衰係数が、接近動作を減衰させるのに適した値となるように制御し、第2接続路電流調整器を制御する際の減衰係数は、離間動作を減衰させるのに適した値となるように制御するものとすることができる。
(30)前記補助調整器制御部が、
前記ばね下共振周波数域成分の強度が設定強度より高い状況下において、前記電磁式ダンパの減衰係数が前記ばね下共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する(29)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、補助調整器がばね下共振周波数域成分を減衰させる場合を、ばね下共振周波数域成分の強度に基づいて特定した態様であり、例えば、ばね下共振周波数域成分の強度が比較的高い状況下においてのみ、そのばね下共振周波数域成分を減衰させる態様とすることができる。本項に記載の「ばね下共振周波数域成分の強度」は、振動の激しさの程度をいい、例えば、ばね下共振周波数域成分の振幅、ばね下共振周波数域成分に関するばね上部とばね下部との相対動作の速度,加速度等に基づいて判断することができる。なお、その振動の強度は、現時点から遡った設定時間内におけるそれらの値、具体的には、最大値や実効値等に基づいて判断されることが望ましい。
ちなみに、本項に記載の態様ではないが、前述の主調整器制御部が、ばね下共振周波数域成分の強度が設定強度より高い状況下において、電磁式ダンパの減衰係数がばね下共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、主調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する態様とすることも可能である。そのような態様とすれば、2つの電流調整器の両者が、ばね下共振周波数域成分を減衰させるべく制御され、強度が高くなっているばね下共振周波数域成分を効果的に減衰させて、車両の乗り心地を向上させることが可能である。
(31)前記補助調整器制御部が、
前記ばね上共振周波数域成分の強度が設定強度より高い状況下において、前記電磁式ダンパの減衰係数がそのばね上共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する(29)項または(30)項に記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、2つの電流調整器の両者が、ばね上共振周波数域成分を減衰させるべく制御され、強度が高くなっているばね上共振周波数域成分を効果的に減衰させて、車両の操安性を向上させることが可能である。本項に記載の態様と、前述した態様である、ばね下共振周波数域成分の強度が設定強度より高い状況下においてばね下共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように補助調整器を制御する態様とを合わせた態様において、例えば、ばね上共振周波数域成分とばね下共振周波数域成分との両者がそれらの各々の設定強度より高い状況下においては、それらばね上共振周波数域成分とばね下共振周波数域成分とのいずれを優先して減衰させる態様であってもよい。具体的に言えば、車両の操安性を重視すべく、ばね上共振周波数域成分を減衰させることを優先させる態様であってもよく、車両の乗り心地を重視すべく、ばね下共振周波数域成分を減衰させることを優先させる態様であってもよい。
(32)前記補助調整器制御部が、
前記ばね上共振周波数域成分の強度が設定強度より低く、かつ、前記ばね下共振周波数域成分の強度が設定強度より低い状況下において、前記電磁式ダンパの減衰係数がばね上共振周波数域とばね下共振周波数域との間の周波数域の成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する(29)項ないし(31)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
一般的に、ばね上共振周波数域成分およびばね下共振周波数域成分を減衰すべく、減衰係数を高くすると、それらばね上共振周波数域とばね下共振周波数域との間の周波数の成分に対しては、振動の強度を高くしてしまうことになる。本項に記載の態様によれば、ばね上共振周波数域成分とばね下共振周波数域成分との両者がそれらの各々の設定強度より低い状況下において、ばね上共振周波数域とばね下共振周波数域との間の周波数の成分を減衰させるため、ばね上部とばね下部との相対振動を効果的に減衰可能である。ちなみに、本項に記載の態様ではないが、前述の主調整器制御部が、ばね上共振周波数域成分の強度が設定強度より低く、かつ、ばね下共振周波数域成分の強度が設定強度より低い状況下において、電磁式ダンパの減衰係数がばね上共振周波数域とばね下共振周波数域との間の周波数域の成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、主調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する態様とすることも可能である。
(33)前記補助調整器制御部が、
前記電磁モータの温度が閾温度より高い状況下においては、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を、それが設けられた前記第1接続路と前記第2接続路との一方に発電電流が流れないように制御する(27)項ないし(32)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様は、電磁モータの温度が比較的高くなった場合に、実際のばね上部とばね下部と相対動作の方向が、ばね上共振周波数域成分の値が示す相対動作の方向と逆向きである場合の発電電流を発生させないため、主調整器によってばね上部とばね下部との相対振動を減衰しつつ、電磁モータの負担が軽減され、その電磁モータの発熱を抑制することが可能である。なお、電流調整器が前述したスイッチング素子によって構成される態様である場合、本項の態様は、そのスイッチング素子のデューティ比が0となるように制御することで、実現可能である。ちなみに、主調整器をも、それが設けられた第1接続路と第2接続路との一方に発電電流が流れないように制御すれば、電磁モータの負担を無くし、確実に電磁モータの故障等を防止することが可能である。
(34)前記外部回路が、
前記第1接続路電流調整器をバイパスする通路であって、ばね上部とばね下部との接近動作に伴う前記電磁モータの起電力が設定電圧を超える場合に、前記第1端子側から前記第2端子側への電流の流れが許容される第1調整器バイパス路と、
前記第2接続路電流調整器をバイパスする通路であって、ばね上部とばね下部との離間動作に伴う前記電磁モータの起電力が設定電圧を超える場合に、前記第2端子側から前記第1端子側への電流の流れが許容される第2調整器バイパス路と
を有する(21)項ないし(33)項のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
本項に記載の態様においては、電磁モータの起電力が設定電圧を超える場合、換言すれば、ストローク速度が大きい場合には、電流調整器に関係なく、ある設定された減衰係数に応じた減衰力が発生することになる。したがって、本項の態様によれば、ストローク速度が大きく車両の安定性が必要とされる状況下において、安定した減衰力を発生させることが可能となる。また、本項の態様によれば、電流調整器においてそれを電流が通過しないような失陥が生じた場合であっても、電磁モータの起電力が設定電圧を超える場合、換言すれば、ストローク速度が大きい場合には、減衰力を発生させることが可能となる。つまり、本項の態様は、フェールセーフという観点において優れたシステムとなる。なお、第1調整器バイパス路および第2調整器バイパス路は、具体的には、それらの各々がツェナーダイオードを有するものとすることで構成することができる。
請求可能発明の実施形態である電磁式ダンパを含んで構成されるダンパシステムが搭載される車両の全体構成を示す模式図である。 図1に示す電磁式ダンパのダンパ本体を含んで構成されるスプリング・アブソーバAssyを示す正面断面図である。 図1に示す電磁式ダンパの一構成要素であって、図2の電磁モータの外部に設けられた外部回路の回路図である。 図3に示す外部回路の等価回路図である。 ばね上部とばね下部との相対振動の振幅,それのばね上共振周波数域成分の時間的変化を示す図である。 図2の電磁モータの回転速度とトルクとの関係、換言すれば、ばね上部とばね下部との相対動作の速度と電磁式ダンパが発生させる減衰力との関係を示す図である。 図1に示す外部回路制御装置によって実行される外部回路制御プログラムを表すフローチャートである。 図7の外部回路制御プログラムにおいて実行される補助調整器デューティ比決定処理サブルーチンを示すフローチャートである。 図1の外部回路制御装置の機能を示すブロック図である。
以下、請求可能発明の実施形態を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施形態の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施形態の変形形態を構成することも可能である。
<ダンパシステムの構成>
図1に、請求可能発明の実施形態である電磁式ダンパ10を含んで構成されるダンパシステムが搭載される車両を模式的に示す。本ダンパシステムは、車両に搭載されるサスペンションシステムの一構成要素であり、そのサスペンションシステムは、前後左右4つの車輪12FR,FL,RR,RLと車体14との間に、それら4つの車輪12の各々に対応して独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えている。それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
スプリング・アブソーバAssy20は、図2に示すように、車輪12を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム22と、車体14に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設されている。スプリング・アブソーバAssy20は、電磁式ダンパ10のダンパ本体としての電磁式ショックアブソーバ30と、それと並列的に設けられたサスペンションスプリングとしてのコイルスプリング32とを含んで構成されており、それらが一体化されたものとなっている。
i)ダンパ本体の構成
ショックアブソーバ30は、ねじ溝が形成されたねじロッド40と、ベアリングボールを保持してねじロッド40と螺合するナット42とを含んで構成される動作変換機構としてのボールねじ機構44と、回転型の電磁モータ46(以下、単に「モータ46」という場合がある)と、そのモータ46を収容するケーシング48とを備えている。そのケーシング48は、ねじロッド40を回転可能に保持するとともに、外周部において防振ゴム50を介してマウント部24に連結されている。
モータ46は、モータ軸52を有しており、そのモータ軸52の外周部には、周方向に複数の極体60(コアにコイルが巻回されたもの)が、固定されて配設されており、それらはモータ46のロータを構成している。その複数の極体60に対向するように、N極,S極の磁極を持つ1組の永久磁石62が、ケーシング48の内面に固定されて配設され、その永久磁石62とケーシング48とは、ステータを構成している。また、モータ46は、モータ軸52に固定された複数の整流子64と、その複数の整流子64と摺接するようにケーシング48に固定されたブラシ66とを有するものであり、いわゆるブラシ付きDCモータとされているのである。なお、モータ軸52は、ねじロッド40の上端部と一体的に接続されている。
また、ショックアブソーバ30は、アウターチューブ70と、そのアウターチューブ70に嵌入してそれの上端部から上方に突出するインナチューブ72とを含んで構成されるシリンダ74を有している。アウターチューブ70は、それの下端部に設けられた取付ブシュ76を介してロアアーム22に連結され、インナチューブ72は、上記ねじロッド40を挿通させた状態で上端部がケーシング48に固定されている。インナチューブ72には、それの内底部にナット支持筒78が立設され、それの上端部の内側には、上記ナット42が、ねじロッド40と螺合させられた状態で固定されている。
さらに、ショックアブソーバ30は、カバーチューブ80を有しており、そのカバーチューブ80が、上端部において防振ゴム82を介してマウント部24の下面側に、上記シリンダ74を挿通させた状態で連結されている。なお、このカバーチューブ80の上端部には、フランジ部84(上部リテーナとして機能する)が形成されており、そのフランジ部84と、アウタチューブ70の外周面に設けられた環状の下部リテーナ86とによって、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング32が挟まれる状態で支持されている。
上述のような構造から、ショックアブソーバ30は、ばね上部とばね下部とが接近動作・離間動作する場合に、ねじロッド40とナット42とが軸線方向に相対移動可能とされ、その相対移動に伴って、ねじロッド40がナット42に対して回転する。それによって、モータ軸52も回転する。後に詳しく説明するが、電磁式ダンパ10は、モータ46の外部に設けられた外部回路90(図3参照)をも含んで構成され、その外部回路90によって、モータ46が有する2つの端子が導通させられるように構成されている。つまり、モータ46が外部からの力によって回転させられることで、そのモータ46に起電力が生じ、モータ46は、その起電力に依存したモータ力(トルク)を発生させるのである。モータ46は、その起電力に依存したトルクを、ねじロッド40に付与可能とされ、このトルクによって、ねじロッド40とナット42との相対回転に対して、その相対回転を阻止する方向の抵抗力を発生させることが可能である。つまり、電磁式ダンパ10は、この抵抗力を、ばね上部とばね下部との接近動作・離間動作に対する減衰力として作用させるように構成されているのである。
ii)外部回路の構成
図3に、電磁式ダンパ10を構成する外部回路90の回路図を示す。外部回路90は、モータ46が有する第1端子100と第2端子102との間の電流の流れを許容するものであり、第1端子100側の点Aと第2端子102側の点Bとが導線ABによって結ばれるとともに、第1端子100側の点Cと第2端子102側の点Dとが導線CDによって結ばれている。その導線ABには、点Aから点Bに向かう方向の電流の流れを許容するとともに点Bから点Aに向かう方向の電流の流れを禁止する第1ダイオード104と、点Bから点Aに向かう方向の電流の流れを許容するとともに点Aから点Bに向かう方向の電流の流れを禁止する第2ダイオード106とが設けられている。また、導線CDには、点Cから順に、MOS形FETである第1スイッチング素子[SW1]108,固定抵抗器である第1抵抗器[RC]110,固定抵抗器である第2抵抗器[RS]112,MOS形FETである第2スイッチング素子114[SW2]が設けられている。そして、その導線ABの第1ダイオード104と第2ダイオード106との間の点Eと、導線CDの第1抵抗器110と第2抵抗器112との間の点Fとが、導線EFにより導通させられるとともに、接地されている。
また、導線CDの第1スイッチング素子108と第1抵抗器110との間の点Gと、第2抵抗器112と第2スイッチング素子114との間の点Hとが、車両に搭載される蓄電装置としてのバッテリ120(公称電圧EN:12.0V)の高電位側端子に接続されている。詳しく言えば、点Gとバッテリ120の高電位側端子側の点Iとを結ぶ導線GIには、第3ダイオード122が設けられ、点Gから点Iに向かう方向の電流の流れが許容されるとともに、点Iから点Gに向かう方向の電流の流れが禁止される状態とされている。点Hとバッテリ120の高電位側端子側の点Iとを結ぶ導線HIには、第4ダイオード124が設けられ、点Hから点Iに向かう方向の電流の流れが許容されるとともに、点Iから点Hに向かう方向の電流の流れが禁止される状態とされている。また、バッテリ120の高電位側端子側、詳しくは、点Iと高電位側端子との間には、MOS形FETである第3スイッチング素子[SW3]126が設けられている。一方、バッテリ120の低電位側端子は、接地されている。ちなみに、図3に記載されているバッテリ120の高電位側端子側の抵抗128は、そのバッテリ120の内部抵抗を表すものであり、以下の説明において、電源抵抗[RB]128と呼ぶこととする。
さらに、外部回路90は、第1スイッチング素子108と並列に設けられた第1ツェナーダイオード140と、第2スイッチング素子114と並列に設けられた第2ツェナーダイオード142とを有している。その第1ツェナーダイオード140は、点G’から点C’への電流の流れを許容するとともに点C’から点G’への電流の流れを禁止し、さらに、自身にかかる電圧が自身の降伏電圧を超える場合に、点C’から点G’への電流の流れをも許容するものである。第2ツェナーダイオード142は、その第1ツェナーダイオード140と同様の構造のものであり、点H’から点D’への電流の流れを許容するとともに点D’から点H’への電流の流れを禁止し、さらに、自身にかかる電圧が自身の降伏電圧を超える場合に、点D’から点H’への電流の流れをも許容するものである。
さらにまた、外部回路90は、第1抵抗器110と並列に設けられた固定抵抗器である第1補助抵抗器150と、第2抵抗器112と並列に設けられた固定抵抗器である第2補助抵抗器152とを有している。その第1補助抵抗器150が設けられた導線G’F’には、その導線G’F’を電流が流れる状態と流れない状態とを切り換える第1リレー154が設けられ、第2補助抵抗器152が設けられた導線H’F’には、その導線H’F’を電流が流れる状態と流れない状態とを切り換える第2リレー156が設けられている。それら第1リレー154,第2リレー156は、自身が有する電磁コイルが励磁されると電流が流れない状態(OFF状態)とし、励磁されないと電流が流れる状態(ON状態)とするものである。
iii)外部回路の基本的な機能
4つの車輪12のうちの1つのものに対応する電磁式ダンパ10について、上記のように説明したが、その他の3つの車輪12に対応する電磁式ダンパ10も同様の構成のものであり、図3に示すように、バッテリ120に接続されている。以下に、その電磁式ダンパ10の基本的な機能を、図4を参照しつつ詳しく説明する。図4は、上述した外部回路90を、説明に必要な構成要素のみとし、簡便な構成とした等価回路図である。
まず、モータ46は、ばね上部とばね下部との接近動作の際に、第1端子100が高電位となるとともに第2端子102が低電位となり、ばね上部とばね下部との離間動作の際に、第1端子100が低電位となるとともに第2端子102が高電位となる。したがって、ばね上部とばね下部とが接近動作させられる場合において、モータ46の発電電流は、第1端子100から点C,F,E,Bを辿って第2端子102に流れることになる。一方、ばね上部とばね下部とが離間動作させられる場合において、モータ46の発電電流は、第2端子102から点D,F,E,Aを辿って第1端子100に流れることになる。つまり、第1ダイオード104が、モータ46の第1端子100から第2端子102への電流の流れを許容するとともに第2端子102から第1端子100への電流の流れを禁止する第1整流器として機能し、外部回路90における経路CFEBが、第1接続路として機能するものとなっている。また、第2ダイオード106が、モータ46の第2端子102から第1端子100への電流の流れを許容するとともに第1端子100から第2端子102への電流の流れを禁止する第2整流器として機能し、経路DFEAが、第2接続路として機能するものとなっている。したがって、本電磁式ダンパ10は、ばね上部とばね下部とが接近動作させられる場合と、離間動作させられる場合とで、発電電流が流れる経路が異なるため、接近動作に対する減衰特性と離間動作に対する減衰特性とを、容易に異ならせることが可能とされており、後に詳しく説明するが、種々の効果が得られることになるのである。
そして、第1接続路CFEBに設けられた第1抵抗器110は、第1端子から第2端子へと流れる電流に対する抵抗となり、第1スイッチング素子108は、第1端子から第2端子へと流れる電流を調整する第1接続路電流調整器として機能するものとなる。また、第2接続路DFEAに設けられた第2抵抗器112は、第2端子から第1端子へと流れる電流に対する抵抗となり、第2スイッチング素子114は、第2端子から第1端子へと流れる電流を調整する第2接続路電流調整器として機能するものとなる。なお、第1抵抗器110の抵抗値RCは、第2抵抗器112の抵抗値RSより大きくされており(例えば、RC=2×RS)、例えば、第1スイッチング素子108および第2スイッチング素子114によってCF間およびDF間の電流の流れが許容された状態とすれば、接近動作に対する減衰力が、離間動作に対する減衰力より小さくされたダンパシステムが実現する。本ダンパシステムは、通常時、後に詳しく説明するが、第1スイッチング素子108および第2スイッチング素子114を制御することで、ばね上部とばね下部との相対動作に対する減衰特性を変更するように構成されている。それに対して、例えば、適切な減衰特性を実現できないような失陥が生じた場合であっても、上述したように、第1スイッチング素子108および第2スイッチング素子114によってCF間およびDF間の電流の流れが許容された状態を実現することで、路面の凸所を車輪12が通過する際に車体14に対して車輪12が接近させられる場合における車体14に加わる衝撃を緩和することが可能であり、本ダンパシステムは、上記の失陥時における車両の乗り心地の悪化が抑制されるようになっている。
また、モータ46は、上述したようにバッテリ120に接続されているため、モータ46の起電力がバッテリ120の電圧を超えると、モータ46によって発電された電力の一部が、バッテリ120に回生されるようになっている。詳しく言えば、ばね上部とばね下部とが接近動作させられる場合には、モータ46の発電電流が、先に述べた第1接続路CFEBだけでなく、第1端子100から導線GIを通ってバッテリ120の高電位側端子へ流れるとともに、バッテリ120の低電位側端子から第2端子102へ流れるのである。一方、ばね上部とばね下部とが離間動作させられる場合には、モータ46の発電電流が、先に述べた第2接続路DFEAだけでなく、第2端子102から導線HIを通ってバッテリ120の高電位側端子に流れるとともに、バッテリ120の低電位側端子から第1端子100へ流れるのである。つまり、外部回路90における経路CGIが、第1端子100からバッテリ120の高電位側端子への電流の流れが許容されるとともにその逆向きの電流の流れが禁止される第1高電位側接続路として機能し、経路FEBが、バッテリ120の低電位側端子から第2端子102への電流の流れが許容されるとともにその逆向きの電流の流れが禁止される第1低電位側接続路として機能し、経路DHIが、第2端子102からバッテリ120の高電位側端子への電流の流れが許容されるとともにその逆向きの電流の流れが禁止される第2高電位側接続路として機能し、経路FEAが、バッテリ120の低電位側端子から第1端子100への電流の流れが許容されるとともにその逆向きの電流の流れが禁止される第2低電位側接続路として機能する。したがって、外部回路90は、それら第1高電位側接続路,第1低電位側接続路,第2高電位側接続路,第2低電位側接続路を含んで、モータ46の高電位となっている端子からバッテリ120の高電位側端子への電流の流れが許容されるとともに、バッテリ120の低電位側端子からモータ46の低電位となっている端子への電流の流れが許容される蓄電装置接続路を有するものとなっているのである。先に述べた第3スイッチング素子126は、その蓄電装置接続路を流れる電流を調整するものであり、蓄電装置接続路電流調整器として機能する。
iv)外部回路制御装置
本ダンパシステム10においては、外部回路制御装置としての電子制御ユニット200(以下、「ECU200」という場合がある)によって、外部回路90の制御が行われることで、モータ46による発電電流の流れが制御される。具体的には、ECU200には、第1スイッチング素子108,第2スイッチング素子114,第3スイッチング素子126,第1リレー154,第2リレー156が接続されており、そのECU200によって、それらの制御が行われる。なお、車両には、各車輪12についてのばね上部とばね下部との距離(ショックアブソーバ30の伸縮した量であるため、以下、「ストローク」という場合がある)を検出する4つのストロークセンサ[St]202,4つの電磁式ダンパ10の各々が有するモータ46の温度を検出する温度センサ[T]204,バッテリ120の電圧を測定する電圧センサ[EB]206等が設けられており、それらはECU200に接続されている。ECU200は、それらのセンサからの信号に基づいて、外部回路90の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]の文字は、上記センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、サスペンションECU200のコンピュータが備えるROMには、後に説明するところの外部回路90の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<ダンパシステムの制御>
本ダンパシステムでは、4つの電磁式ダンパ10の各々が有する外部回路90を独立して制御することが可能となっている。それら電磁式ダンパ10の各々において、その各々の減衰係数が独立して制御されて、自身に対応するばね上部とばね下部との相対振動に対する減衰力が制御される。そして、その電磁式ダンパ10の各々においては、接近動作に対する減衰係数CCと、離間動作に対する減衰係数CSとを、独立して制御することが可能となっている。先に述べたように、本電磁式ダンパ10においては、通常、接近動作に伴う発電電流が第1接続路CFEBを流れ、離間動作に伴う発電電流が第2接続路DFEAを流れるように構成されているため、第1接続路に設けられた第1スイッチング素子108が制御されることで、接近動作に伴う発電電流が制御されて接近動作に対する減衰係数CC(以下、「接近時減衰係数CC」という場合がある)が制御され、第2スイッチング素子114が制御されることで、離間動作に伴う発電電流が制御されて離間動作に対する減衰係数CS(以下、「離間時減衰係数CS」という場合がある)が制御される。
なお、例えば、モータの2つの端子を結ぶ接続路が1本で、その接続路に単一の電流調整器が設けられた構成のダンパシステムを考える。そのようなダンパシステムは、接近動作に伴う発電電流と離間動作に伴う発電電流とが、互いに逆向きに接続路を流れ、その接続路に設けられた単一の電流調整器によって、いずれの向きに流れる発電電流をも調整可能である。しかしながら、例えば、図5(a)に示すように、ばね上部とばね下部との相対振動には比較的周波数の高い成分が含まれており、接近動作と離間動作とが非常に短い時間で切り換わる場合がある。そのような場合、単一の電流調整器によって、ばね上部とばね下部との相対動作の向きに応じて減衰係数を切り換えることは、電流調整器の制御における応答性を考慮すると、困難であると考えられる。それに対して、本ダンパシステムにおいては、接近動作に伴う発電電流と離間動作に伴う発電電流とが、別の経路を流れるため、2つのスイッチング素子108,114の制御を、ばね上部とばね下部との相対動作の向きに応じて切り換える必要はないのである。したがって、本ダンパシステムは、車両の走行状態等に応じて、2つのスイッチング素子108,114の制御により接近時減衰係数CCと離間時減衰係数CSとを適切化することで、ばね上部とばね下部との相対振動を効果的に減衰することが可能となる。以下に、それら接近時減衰係数CCと離間時減衰係数CSとの決定方法について詳しく説明する。
i)減衰係数の決定
a)主調整器の減衰係数
本ダンパシステムにおいては、ばね上部とばね下部との相対振動を種々の周波数の振動が合成したものと捉え、それらのうちのばね上共振周波数域(例えば、0.1Hz〜3.0Hz)の成分を減衰させることを主な目的とする。詳しく言えば、ECU200は、図5(b)に示すように、そのばね上共振周波数域成分の値が示すばね上部とばね下部との相対動作の方向に基づいて、その方向の相対動作に伴う発電電流を調整するスイッチング素子を、主調整器として認定し、その主調整器にばね上共振周波数域成分を減衰させるように制御するのである。
具体的には、まず、ストロークセンサ202の検出値に基づき、ストロークの変化量、つまり、ストローク速度Vstが検出される。そして、そのストローク速度Vstに、バンドパスフィルタ処理、詳しくは、0.1Hzより大きく3.0Hzより小さい周波数の成分のみが通過するフィルタ処理が行われ、ストローク速度Vstのばね上共振周波数域成分であるばね上共振ストローク速度Vstbが取得される。そのばね上共振ストローク速度Vstbが、その符号から、ばね上部とばね下部との接近動作を示す値となっているか、離間動作を示す値となっているかが判断される。ばね上共振ストローク速度Vstbが負でばね上部とばね下部との接近動作を示す値となっている場合には、接近動作に伴う発電電流が流れる第1接続路に設けられた第1スイッチング素子108が主調整器と認定される。一方、ばね上共振ストローク速度Vstbが正で離間動作を示す値となっている場合には、離間動作に伴う発電電流が流れる第2接続路に設けられた第2スイッチング素子114が主調整器と認定される。
そして、その認定された主調整器は、ばね上共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように制御される。なお、本ダンパシステムにおいては、接近動作に対する減衰係数CCが、離間動作に対する減衰係数CSより小さくなるようにされており、主調整器と認定された第2スイッチング素子114は、離間時減衰係数CSがCS1(例えば、5000N・sec/m,車輪12の動作に対してその車輪12に直接作用させたと仮定した値)となるように制御され、主調整器とされた第1スイッチング素子108は、接近時減衰係数CCがCC1(例えば、2500N・sec/m)となるように制御される。
b)補助調整器の減衰係数
一方、上記主調整器ではないもう一方のスイッチング素子は、ECU200によって、補助調整器として認定され、主調整器を補助すべく制御される。補助調整器は、基本的に、ばね上部とばね下部との相対振動のばね下共振周波数域(例えば、8.0Hz〜24Hz)の成分を減衰させるように、そのばね下共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように制御される。具体的には、補助調整器と認定された第2スイッチング素子114は、離間時減衰係数CSがCS2(例えば、3000N・sec/m)となるように制御され、補助調整器とされた第1スイッチング素子108は、接近時減衰係数CCがCC2(例えば、1500N・sec/m)となるように制御される。
ただし、ECU200は、補助調整器に、ばね下共振周波数域成分を減衰させる役割だけでなく、ばね上共振周波数域成分の強度とばね下共振周波数域成分の強度に基づいて、他の役割を持たせるようになっている。具体的には、まず、ばね上共振周波数域成分の強度として、現時点から遡った設定時間t0内におけるばね上共振ストローク速度Vstbの最大値が取得され、その値が設定速度Vb0より大きいか否かが判断される。ばね上共振ストローク速度Vstbの最大値が設定速度Vb0より大きい場合には、そのばね上共振周波数域成分の減衰を優先させるべく、補助調整器も、主調整器と同様に、ばね上共振周波数域成分を減衰させるための減衰係数CS1あるいはCC1となるように制御される。
ばね上共振ストローク速度Vstbの最大値が設定速度Vb0より小さい場合には、ばね下共振周波数域成分の強度を取得する。まず、ストロークセンサ202の検出値に基づいて検出されたストローク速度Vstに、バンドパスフィルタ処理、詳しくは、8.0Hzより大きく24Hzより小さい周波数の成分のみが通過するフィルタ処理が行われ、ストローク速度Vstのばね下共振周波数域成分であるばね下共振ストローク速度Vstwが取得される。そして、ばね下共振周波数域成分の強度として、現時点から遡った設定時間t0内におけるばね下共振ストローク速度Vstwの最大値が取得され、その値が設定速度Vw0より大きいか否かが判断される。ばね下共振ストローク速度Vstwの最大値が設定速度Vw0より大きい場合には、そのばね下共振周波数域成分を減衰させるべく、先に述べたように、補助調整器が、ばね下共振周波数域成分を減衰させるための減衰係数CS2あるいはCC2となるように制御される。
また、ばね上共振ストローク速度Vstbの最大値が設定速度Vb0より小さく、かつ、ばね下共振ストローク速度Vstwの最大値が設定速度Vw0より小さい場合には、ばね上共振周波数域とばね下共振周波数域との間の周波数の成分(以下、「中周波数域成分」という場合がある)を減衰させるべく、補助調整器は、その中周波数域成分を減衰させるための減衰係数となるように制御される。具体的には、補助調整器と認定された第2スイッチング素子114は、離間時減衰係数CSがCS3(例えば、1000N・sec/m)となるように制御され、補助調整器とされた第1スイッチング素子108は、接近時減衰係数CCがCC3(例えば、500N・sec/m)となるように制御される。
本ダンパシステムによれば、補助調整器に種々の役割を持たせることによって、ばね上共振周波数域成分だけでなく、そのばね上周波数域より周波数の高い成分をも効果的に減衰させることが可能とされているのである。
ii)デューティ比の決定
ECU200は、通常、外部回路90が有する第1スイッチング素子108を制御して、ばね上部とばね下部との接近動作に伴う発電電流を制御することで、接近時減衰係数CCを制御するとともに、第2スイッチング素子114を制御して、離間動作に伴う発電電流を制御することで、離間時減衰係数CSを制御する。ECU200は、それらスイッチング素子108,114に対して、PWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する。詳しく言えば、自身に対応する接続路を導通させる時間であるパルスオン時間tONとそれを遮断する時間であるパルスオフ時間tOFFとを足し合わせたパルス間隔を一定とし、そのパルス間隔に対するパルスオン時間の比であるデューティ比rD(=tON/(tON+tOFF))を制御するのである。つまり、ECU200は、スイッチング素子108,114の各々のデューティ比rDを制御することで、モータ46による発電電流を制御して、上述した減衰係数電磁式ダンパ10の減衰係数Cを制御するようになっている。
以下に、スイッチング素子108,114の各々のデューティ比rDと、電磁式ダンパ10の減衰係数Cとの関係を説明する。電磁式ダンパ10が有するモータ46は、先に述べたようにブラシ付きDCモータであり、それに流れる電流をI,発生させるトルクをTq,回転速度をω,2つの端子100,102の間に発生した電圧をEとした場合において,以下の関係がある。
E=α・ω ・・・(1)
Tq=α・I ・・・(2)
ここで、αはモータ46のモータ定数(トルク定数,逆起電力定数である)である。
まず、スイッチング素子108,114によって自身に対応する接続路を導通させた状態、つまり、デューティ比rDが1.0である場合においてモータ46が回転させられ、そのモータ46の起電力Eがバッテリ120の公称電圧EN以下である場合について考える。この場合、モータ46の発電電流は、接近動作の際には第1接続路CFEBを、離間動作の際には第2接続路DFEAを流れることになるのであり、発電電流の大きさは、次式のように求まる。
接近動作:I=E/RC ・・・(3)
離間動作:I=E/RS ・・・(4)
ここで、スイッチング素子108,114がデューティ比rDで制御された場合を考えれば、その場合の発電電流の大きさは、次式のようになる。
接近動作:I=rD・E/RC ・・・(3')
離間動作:I=rD・E/RS ・・・(4')
この(3')式,(4')式に、上記(1)式を代入し、それによって得られたIを(2)式に代入すれば、次式が得られる。
接近動作:Tq=rD・α2/RC・ω ・・・(5)
離間動作:Tq=rD・α2/RS・ω ・・・(6)
電磁式ダンパ10の減衰係数Cは、ばね上部とばね下部との相対動作の速度Vstに対する減衰力の大きさFで表されるもの、換言すれば、モータ46の回転速度ωに対するモータ46のトルクTqで表されるものである。つまり、接近動作に対する減衰係数CC,離間動作に対する減衰係数CSは、次式となるのである。
C=rD・α2/RC ・・・(7)
S=rD・α2/RS ・・・(8)
次に、モータ46の起電力Eがバッテリ120の公称電圧ENを超える場合について考える。この場合、モータ46の発電電流は、接近動作の際には第1接続路および蓄電装置接続路を、離間動作の際には第2接続路および蓄電装置接続路を流れることになるのであり、発電電流の大きさは、次式のように求まる。
接近動作:I=E/RC+(E−EN)/RB
=(1/RC+1/RB)・E−EN/RB ・・・(9)
離間動作:I=E/RS+(E−EN)/RB
=(1/RS+1/RB)・E−EN/RB ・・・(10)
ここで、スイッチング素子108,114がデューティ比rDで制御された場合を考えれば、その場合の発電電流の大きさは、次式のようになる。
接近動作:I=rD・[(1/RC+1/RB)・E−EN/RB] ・・・(9')
離間動作:I=rD・[(1/RS+1/RB)・E−EN/RB] ・・・(10')
この(9')式,(10')式に、上記(1)式を代入し、それによって得られたIを(2)式に代入すれば、次式が得られる。
接近動作:Tq=rD・[α2・(1/RC+1/RB)−α・EN/(RB・ω)]・ω ・・・(11)
離間動作:Tq=rD・[α2・(1/RS+1/RB)−α・EN/(RB・ω)]・ω ・・・(12)
したがって、接近動作に対する減衰係数CC,離間動作に対する減衰係数CSは、次式となる。
C=rD・[α2・(1/RC+1/RB)−α・EN/(RB・ω)] ・・・(13)
S=rD・[α2・(1/RS+1/RB)−α・EN/(RB・ω)] ・・・(14)
以上のことから、ECU200は、第1スイッチング素子108のデューティ比rDSW1を制御することで、接近時減衰係数CCを制御するとともに、第2スイッチング素子114のデューティ比rDSW2を制御することで、離間時減衰係数CSを制御するのである。具体的には、上述した方法で目標となる減衰係数が決定されれば、その減衰係数となるように目標となるデューティ比rDが、次式に従って決定される。
DSW1=CC */(α2/RC) (E≦EN
=CC */[α2・(1/RC+1/RB)−α・EN/(RB・Vst)] (E>EN
DSW2=CS */(α2/RS) (E≦EN
=CS */[α2・(1/RS+1/RB)−α・EN/(RB・Vst)] (E>EN
そして、その決定されたデューティ比の下、スイッチング素子108,114の開閉が制御されて、電磁式ダンパ10の減衰係数が変更されるのである。なお、起電力Eがバッテリ120の公称電圧ENより高いか否かは、(1)式の関係から、モータ46の回転速度ωに比例するストローク速度Vstに基づいて判断される。つまり、ストローク速度Vstが、バッテリ120の公称電圧ENに対応する値V0(=K・EN/α,K:モータ回転速度ωとストローク速度Vstとの間の定数)より大きいか否かにより判断されるのである。
図6に、本ダンパシステムにおいて、先に述べたように決定される減衰係数CC *,CS *、換言すれば、スイッチング素子108,114の目標となるデューティ比rDSW1,rDSW2を示す。本ダンパシステムにおいては、2つのスイッチング素子108,114のばね上共振周波数域成分に対する減衰係数CC1,CS1の間の比が、第1抵抗器110の抵抗値RCと第2抵抗器112の抵抗値RSとの比と等しくされている。そのため、第1スイッチング素子108が減衰係数CC1を実現する場合のデューティ比rDSW1と、第2スイッチング素子114が減衰係数CS1を実現する場合のデューティ比rDSW2とが、起電力Eがバッテリ120の公称電圧ENより低い範囲において、同じデューティ比r1で良いことになる。また、ばね下共振周波数域成分に対する減衰係数CC2,CS2,中周波数域成分に対する減衰係数CC3,CS3においても同様のことが言え、ばね下共振周波数域成分に対するデューティ比がr2、中周波数域成分に対するデューティ比がr3とされている。
iii)その他の補助調整器の制御
また、ECU200は、上述した補助調整器に、上記以外の役割を持たせる場合がある。まず、バッテリ120の残存エネルギ量が減少しているような場合には、バッテリ120への回生電流が大きくされることが望ましい。そこで、電圧センサ206によって検出されたバッテリ120の実電圧EBが設定電圧E0より低下し、かつ、ストローク速度Vstがバッテリ120の実電圧EBに対応する値V1より大きくなった場合に、補助調整器と認定されたスイッチング素子のデューティ比rDが1.0とされ、バッテリ120への回生電流の大きさが最も大きくなるようにされるのである。
また、ばね下部から比較的大きな入力が続き、モータ46への負担が大きくなっているような場合には、モータ46が損傷する虞がある。そこで、温度センサ204によって検出されたモータ46の温度Tが設定温度T0より高くなっている場合には、モータ46への負担が大きくなっていると推定されるため、補助調整器と認定されたスイッチング素子のデューティ比rDが0とされ、モータ46への負担が軽減されるようになっている。
iv)バッテリへの回生電流の調整
バッテリ120の電圧は、ある程度の変動があり、例えば、バッテリ120が車両に搭載された電気的負荷部への供給電力が大きくなると、バッテリ120の電圧は低下することになる。その場合には、モータ46の発電電流がバッテリ120へ流れやすくなるのであり、バッテリ120の電圧が高い場合に比較してバッテリ120への回生電流が大きくなるのである。つまり、バッテリ120の電圧が低下した場合には、電圧が高い場合に比較して、電磁式ダンパ10の減衰力が大きくなってしまうのである。そこで、本ダンパシステムにおいては、バッテリ120の電圧が低下した場合に、第3スイッチング素子126を制御して、回生電流を減少させることで、電磁式ダンパ10の減衰力の増加を抑えるようにされている。具体的には、電圧センサ206によって検出されたバッテリ120の実電圧EBが、公称電圧ENより低下した場合に、第3スイッチング素子126の目標となるデューティ比rDSW3が、次式に従って演算される。
DSW3=EB/EN
そして、そのデューティ比の下、第3スイッチング素子126の開閉が制御されて、回生電流が減少させられ、電磁式ダンパ10の減衰力の増加が抑制されることになる。
v)失陥時の対処
次に、外部回路90に失陥が生じた場合の対処方法について説明する。まず、外部回路90の失陥として、例えば、発熱により第1抵抗器110あるいは第2抵抗器112が断線すること等によって、その第1抵抗器110あるいは第2抵抗器112に電流が通過しないような失陥が生じる場合がある。そのような失陥が生じた場合には、その失陥が生じた抵抗器が設けられた接続路に発電電流が流れないため、その接続路に対応するばね上部とばね下部との相対動作に対して減衰力が発生せず、車両の安定性が損なわれることになる。本ダンパシステムにおいては、第1抵抗器110においてそのような失陥が生じた場合、第1リレー154がON状態とされ、第2抵抗器112においてそのような失陥が生じた場合、第2リレー156がON状態とされるようになっている。
なお、第1抵抗器110および第2抵抗器112に電流が通過しない失陥が生じたか否かは、ストロークセンサ202と、外部回路90とECU200との間に設けられた2つのシュミットトリガ220,222に基づいて判断される。シュミットトリガ220は、外部回路90の接点Gの電位が、第1閾値を超えた場合に出力し、その第1閾値より低い電位の第2閾値を下回った場合に出力を停止するものである。また、もう1つのシュミットトリガ222は、外部回路90の接点Hの電位によって、出力する状態と出力しない状態とが切り換わるものである。そして、ストロークセンサ202によって、シュミットトリガ220,222の第1閾値に相当する速度より速いストローク速度が検出されているにもかかわらず、シュミットトリガ220,222からECU220への入力がない場合に、第1抵抗器110あるいは第2抵抗器112に電流が通過しない失陥が生じたと判断される。第1抵抗器110あるいは第2抵抗器112のいずれが失陥しているかは、検出されたストローク速度の符号により判断される。
上述したように、本ダンパシステムにおいては、第1抵抗器110に電流が通過しないような失陥が生じた場合であっても、接近動作に伴う発電電流は、第1抵抗器110に代わって第1補助抵抗器150に流れることになる。また、第2抵抗器112に電流が通過しないような失陥が生じた場合であっても、離間動作に伴う発電電流は、第2抵抗器112に代わって第2補助抵抗器152に流れることなる。したがって、第1抵抗器110あるいは第2抵抗器112に電流が通過しないような失陥が生じた場合であっても、先に述べた通常通りの制御を実行することが可能であり、車両の安定性を悪化させることはないのである。なお、外部回路90における経路GG'F'が第1抵抗器110をバイパスする第1抵抗器バイパス路として機能し、経路HH'F'が第2抵抗器112をバイパスする第2抵抗器バイパス路として機能するものとなっている。
また、例えば、図4に示す回路図において、第1スイッチング素子108あるいは第2スイッチング素子114に、それを電流が通過しないような失陥が生じた場合、具体的には、スイッチング素子自体の故障やECU200の故障により、スイッチング素子が開状態となってしまった場合を考える。そのような場合には、その失陥が生じたスイッチング素子が設けられた接続路に発電電流が流れないため、その接続路に対応するばね上部とばね下部との相対動作に対して減衰力が発生せず、車両の安定性が損なわれることになる。本ダンパシステムにおいては、第1スイッチング素子108においてそのような失陥が生じた場合であっても、その第1スイッチング素子108と並列に設けられた第1ツェナーダイオード140の降伏電圧を超える起電力が生じた場合に、そのツェナーダイオード140を電流が流れるため、ばね下部から大きな入力があった場合には、減衰力を発生させることが可能となる。また、第2スイッチング素子114において上記のような失陥が生じた場合であっても、その第2スイッチング素子114と並列に設けられた第2ツェナーダイオード142が、第1ツェナーダイオード140と同様に働くことになる。
つまり、外部回路90は、第1スイッチング素子108をバイパスして、ばね上部とばね下部との接近動作に伴うモータ46の起電力が設定電圧を超える場合にのみ、第1端子100から第2端子102への電流の流れが許容される第1調整器バイパス路を有しており、外部回路90の経路C'G'Gがその第1調整器バイパス路として機能する。また、外部回路90は、第2スイッチング素子114をバイパスして、ばね上部とばね下部との離間動作に伴うモータ46の起電力が設定電圧を超える場合にのみ、第2端子102から第1端子100への電流の流れが許容される第2調整器バイパス路を有しており、外部回路90の経路D'H'Hがその第2調整器バイパス路として機能する。
なお、上記2つのツェナーダイオード140,142は、第1スイッチング素子108あるいは第2スイッチング素子114にそれを電流が通過しないような失陥が生じていない場合であっても、モータ46の起電力がそれらツェナーダイオード140,142の降伏電圧を超えると、そのツェナーダイオード140,142を、発電電流が流れることになる。つまり、ばね下部から大きな入力があり、車両の安定性が必要とされる状況下において、スイッチング素子108,114の制御を必要とせず、安定した減衰力を発生させることが可能となる。
<外部回路の制御フロー>
上述のような外部回路90の制御は、図7にフローチャートを示す外部回路制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいてECU200により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、外部回路制御プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられた電磁式ダンパ10の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つの電磁式ダンパ10に対しての本プログラムによる処理について説明する。
本プログラムにおいては、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、ストロークセンサ202の検出値に基づいてストローク速度Vstが取得され、S2において、そのストローク速度Vstに、ばね上共振周波数域のバンドパスフィルタ処理が行われ、ストローク速度Vstのばね上共振周波数域成分であるばね上共振ストローク速度Vstbが演算される。次いで、S3において、そのばね上共振ストローク速度Vstbの符号によって、ばね上部とばね下部との相対振動のばね上共振周波数域成分の値が、接近動作と離間動作とのいずれを示すものとなっているかが判断される。
S3において、ばね上共振ストローク速度Vstbが負で接近動作を示すものとなっている場合には、S4において、第1スイッチング素子108が主調整器として認定されるとともに、第2スイッチング素子114が補助調整器として認定される。そして、主調整器として認定された第1スイッチング素子108に対しては、S5において、それのデューティ比rDSW1が、ばね上共振周波数域成分に対する減衰係数であるCC1を実現するように、先に述べた式に従って決定される。また、補助調整器として認定された第2スイッチング素子114に対しては、S6において、補助調整器のデューティ比を決定するための処理が実行される。
また、S3において、ばね上共振ストローク速度Vstbが正で離間動作を示すものとなっている場合には、S7において、第2スイッチング素子114が主調整器として認定されるとともに、第1スイッチング素子108が補助調整器として認定される。そして、主調整器として認定された第2スイッチング素子114に対しては、S8において、それのデューティ比rDSW2が、ばね上共振周波数域成分に対する減衰係数であるCS1を実現するように、先に述べた式に従って決定される。また、補助調整器として認定された第1スイッチング素子108に対しては、S9において、補助調整器のデューティ比を決定するための処理が実行される。
上述した補助調整器のデューティ比を決定するための処理は、図8にフローチャートを示す補助調整器デューティ比決定処理サブルーチンが実行されることによって行われる。その処理では、まず、S21において、温度センサ204によって検出されたモータ46の温度Tが設定値T0より高くなっているか否かが判定される。モータ46の温度が高くなっている場合には、S22において、補助調整器と認定されたスイッチング素子のデューティ比が0とされ、モータ46の負担が軽減される。
モータ46の温度が高くなっていない場合には、S23において、電圧センサ206によって検出されたバッテリ120の実電圧EBが設定電圧E0より低下しているか否かが判定される。バッテリ120の実電圧EBが設定電圧E0より低下している場合には、S24において、ストローク速度Vstがバッテリ120の実電圧EBに対応する値V1より大きいか否かが判定される。ストローク速度VstがV1より大きい場合には、補助調整器と認定されたスイッチング素子のデューティ比が1.0とされる。この場合、モータ46の発電電流の一部がバッテリ120へ回生される状態にあり、補助調整器のデューティ比が1.0とされることで、バッテリ120へ流れる回生電流が最も大きくなるようにされる。
バッテリ120の実電圧EBが設定電圧E0より低下していない場合、あるいは、ストローク速度VstがV1より小さい場合には、S26において、現時点から遡った設定時間t0内におけるばね上共振ストローク速度Vstbの最大値が取得され、その値が設定速度Vb0より大きいか否かが判断される。ばね上共振ストローク速度Vstbの最大値が設定速度Vb0より大きい場合には、S27以下において、補助調整器のデューティ比が、ばね上共振周波数域成分に対する減衰係数であるCS1あるいはCC1を実現するように、先に述べた式に従って決定される。
ばね上共振ストローク速度Vstbの最大値が設定速度Vb0より小さい場合には、S30において、S1で取得されたストローク速度Vstに、ばね下共振周波数域のバンドパスフィルタ処理が行われ、ストローク速度Vstのばね下共振周波数域成分であるばね下共振ストローク速度Vstwが演算される。次いで、S31において、現時点から遡った設定時間t0内におけるばね下共振ストローク速度Vstwの最大値が取得され、その値が設定速度Vw0より大きいか否かが判断される。ばね下共振ストローク速度Vstwの最大値が設定速度Vw0より大きい場合には、S32において、ばね下共振周波数域成分に対する減衰係数であるCS2あるいはCC2を実現するように、補助調整器のデューティ比がr2とされる。一方、ばね下共振ストローク速度Vstwの最大値が設定速度Vw0より小さい場合には、S33において、中周波数域成分に対する減衰係数であるCS3あるいはCC3を実現するように、補助調整器のデューティ比がr3とされる。以上の一連の処理により、補助調整器のデューティ比が決定された後、外部回路制御プログラムの1回の実行が終了する。
<ECUの機能構成>
上述したECU200の機能を、模式的に示した機能ブロック図が、図9である。上記機能に基づけば、ECU200は、2つのスイッチング素子108,114の各々の役割を分担させるべくそれらの各々を主調整器あるいは補助調整器と認定する調整器役割認定部250と、主調整器と認定された第1スイッチング素子108と第2スイッチング素子114との一方を制御する主調整器制御部252と、補助調整器と認定された第1スイッチング素子108と第2スイッチング素子114との一方を制御する補助調整器制御部254とを含んで構成されるものとなっている。なお、本ダンパシステムのECU200においては、外部回路制御プログラムのS1〜S4およびS7の処理を実行する部分を含んで調整器役割認定部250が構成され、外部回路制御プログラムのS5,S8の処理を実行する部分を含んで主調整器制御部252が構成され、外部回路制御プログラムのS6,S9の処理を実行する部分、つまり、補助調整器デューティ比決定サブルーチンを実行する部分を含んで補助調整器制御部254が構成されている。また、ECU200は、発電電流の一部がバッテリ120へ回生される際の減衰力の変動を抑制するために、蓄電装置接続路電流調整器としての第3スイッチング素子126を制御することで回生電流を制御する回生電流制御部260を有している。
10:電磁式ダンパ 12:車輪 14:車体 20:スプリング・アブソーバAssy 22:ロアアーム(ばね下部) 24:マウント部(ばね上部) 30:ショックアブソーバ(ダンパ本体) 32:コイルスプリング(サスペンションスプリング) 40:ねじロッド 42:ナット 44:ボールねじ機構(動作変換機構) 46:電磁モータ 52:モータ軸 60:極体 62:永久磁石 64:整流子 66:ブラシ 90:外部回路 100:第1端子 102:第2端子 104:第1ダイオード(第1整流器) 106:第2ダイオード(第2整流器) 108:第1スイッチング素子[SW1](第1接続路電流調整器) 110:第1抵抗器[RC] 112:第2抵抗器[RS] 114:第2スイッチング素子[SW2](第2接続路電流調整器) 120:バッテリ(蓄電装置) 122:第3ダイオード 124:第4ダイオード 126:第3スイッチング素子[SW3](蓄電装置接続路電流調整器) 128:電源抵抗[RB] 140:第1ツェナーダイオード 142:第2ツェナーダイオード 150:第1補助抵抗器 152:第2補助抵抗器 154:第1リレー(第1開閉器) 156:第2リレー(第2開閉器) 200:電子制御ユニット(ECU,外部回路制御装置) 202:ストロークセンサ[St] 204:温度センサ[T] 206:電圧センサ[EB] 220,222:シュミットトリガ 250:調整器役割認定部 252:主調整器制御部 254:補助調整器制御部 260:回生電流制御部
経路CFEB:第1接続路 経路DFEA:第2接続路 経路CGI:第1高電位側接続路 経路FEB:第1低電位側接続路 経路DHI:第2高電位側接続路 経路FEA:第2低電位側接続路 経路GG'F':第1抵抗器バイパス路 経路HH'F':第2抵抗器バイパス路 経路C'G'G:第1調整器バイパス路 経路D'H'H:第2調整器バイパス路
C:第1抵抗器の抵抗値 RS:第2抵抗器の抵抗値 CC:接近時減衰係数 CS:離間時減衰係数 CC1,CS1:ばね上共振周波数域成分に対する減衰係数 CC2,CS2:ばね下共振周波数域成分に対する減衰係数 CC3,CS3:中周波数域成分に対する減衰係数 Vst:ストローク速度 Vstb:ばね上共振ストローク速度 Vstw:ばね下共振ストローク速度 rDSW1:SW1のデューティ比 rDSW2:SW2のデューティ比 α:モータ定数 EN:バッテリ公称電圧 EB:バッテリ実電圧 T:モータ温度

Claims (15)

  1. 車両に搭載されて、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対して減衰力を発生させる電磁式ダンパを含んで構成される車両用ダンパシステムであって、
    その電磁式ダンパが、
    電磁モータと、
    ばね上部とばね下部との接近離間動作と前記電磁モータの動作とを相互に変換する動作変換機構と、
    前記電磁モータの外部に設けられ、(A)前記電磁モータの2つの端子のうちの一方である第1端子から他方である第2端子への電流の流れが許容されるとともに前記第2端子から前記第1端子への電流の流れが禁止される第1接続路と、(B)前記電磁モータの前記第2端子から前記第1端子への電流の流れが許容されるとともに前記第1端子から前記第2端子への電流の流れが禁止される第2接続路とを有する外部回路と
    を備え、
    ばね上部とばね下部との接近動作に対しては、前記電磁モータによる発電電流が前記第1接続路を流れることで、ばね上部とばね下部との離間動作に対しては、前記電磁モータによる発電電流が前記第2接続路を流れることで、前記電磁モータに生じる起電力に依存した減衰力を発生させるように構成され、
    前記外部回路が、さらに、
    (C)前記第1接続路に設けられて前記第1端子から前記第2端子へと流れる電流を調整する第1接続路電流調整器と、(D)前記第2接続路に設けられて前記第2端子から前記第1端子へと流れる電流を調整する第2接続路電流調整器とを有し、
    当該車両用ダンパシステムが、
    前記外部回路を制御することで、前記電磁モータに流れる電流を制御するための外部回路制御装置を備え、
    その外部回路制御装置が、
    前記第1接続路電流調整器を制御することで、ばね上部とばね下部との接近動作に伴う発電電流を制御するとともに、前記第2接続路電流調整器を制御することで、ばね上部とばね下部との離間動作に伴う発電電流を制御するように構成され、かつ、
    (a)ばね上部とばね下部との相対振動のばね上共振周波数域の成分であるばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との接近動作を示す値となっている場合に、前記第1接続路電流調整器を主調整器とし、かつ、前記ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との離間動作を示す値となっている場合に、前記第2接続路電流調整器を主調整器とし、その主調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方に対して、ばね上部とばね下部との相対振動を減衰するための主体となる制御である第1制御を実行する主調整器制御部と、(b)前記ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との接近動作を示す値となっている場合に、前記第2接続路電流調整器を補助調整器とし、かつ、前記ばね上共振周波数域成分がばね上部とばね下部との離間動作を示す値となっている場合に、前記第1接続路電流調整器を補助調整器とし、その補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方に対して、その第1制御によるばね上部とばね下部との相対振動の減衰を補助するための制御である第2制御を実行する補助調整器制御部とを有する車両用ダンパシステム。
  2. 前記外部回路制御装置が、
    前記電磁式ダンパの減衰係数を制御すべく、前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器を制御するものであり、
    ばね上部とばね下部との接近動作に対する前記電磁式ダンパの減衰係数と、ばね上部とばね下部との離間動作に対する前記電磁式ダンパの減衰係数とが異なるように、前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器を制御する請求項1に記載の車両用ダンパシステム。
  3. 前記補助調整器制御部が、
    前記電磁式ダンパの減衰係数がばね上部とばね下部との相対振動のばね下共振周波数域の成分であるばね下共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する請求項1または請求項4に記載の車両用ダンパシステム。
  4. 前記補助調整器制御部が、
    前記ばね下共振周波数域成分の強度が設定強度より高い状況下において、前記電磁式ダンパの減衰係数が前記ばね下共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する請求項5に記載の車両用ダンパシステム。
  5. 前記補助調整器制御部が、
    前記ばね上共振周波数域成分の強度が設定強度より高い状況下において、前記電磁式ダンパの減衰係数がそのばね上共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する請求項5または請求項6に記載の車両用ダンパシステム。
  6. 前記補助調整器制御部が、
    前記ばね上共振周波数域成分の強度が設定強度より低く、かつ、前記ばね下共振周波数域成分の強度が設定強度より低い状況下において、前記電磁式ダンパの減衰係数がばね上共振周波数域とばね下共振周波数域との間の周波数域の成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記補助調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する請求項5ないし請求項7のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
  7. 前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器の各々が、その各々が設けられた前記第1接続路と前記第2接続路とのうちの一方を導通させる導通状態とその一方を遮断する遮断状態とを選択的に切り換えるスイッチング素子によって構成され、
    前記外部回路制御装置が、
    それらスイッチング素子の各々を、前記導通状態および前記遮断状態が交互に連続して実現されるように制御するとともに、前記導通状態が実現される時間と前記遮断状態が実現される時間とに基づいて定まる比であるデューティ比を制御することで、前記電磁モータによる発電電流を制御するように構成され、かつ、前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器の各々を構成するスイッチング素子の前記デューティ比を、前記第1接続路と前記第2接続路とのいずれに発電電流が流れているかによっては変更しないように構成された請求項1,請求項4ないし請求項8のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
  8. 前記外部回路が、
    前記第1接続路電流調整器をバイパスする通路であって、ばね上部とばね下部との接近動作に伴う前記電磁モータの起電力が設定電圧を超える場合に、前記第1端子側から前記第2端子側への電流の流れが許容される第1調整器バイパス路と、
    前記第2接続路電流調整器をバイパスする通路であって、ばね上部とばね下部との離間動作に伴う前記電磁モータの起電力が設定電圧を超える場合に、前記第2端子側から前記第1端子側への電流の流れが許容される第2調整器バイパス路と
    を有する請求項1,請求項4ないし請求項9のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
  9. 前記外部回路が、
    前記第1接続路に設けられて前記第1端子から前記第2端子へと流れる電流に対する抵抗となる第1抵抗器と、前記第2接続路に設けられて前記第2端子から前記第1端子へと流れる電流に対する抵抗となる第2抵抗器とを有する請求項1,請求項4ないし請求項10のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
  10. 前記第1抵抗器の抵抗値と前記第2抵抗器の抵抗値とが、互いに異なる請求項11に記載の車両用ダンパシステム。
  11. 前記外部回路が、
    前記第1抵抗器をバイパスする第1抵抗器バイパス路と、
    その第1抵抗器バイパス路に設けられ、その第1抵抗器バイパス路に流れる電流の抵抗となる第1補助抵抗器と、
    前記第1抵抗器バイパス路に電流が流れる状態と流れない状態とを切り換えるための第1開閉器と、
    前記第2抵抗器をバイパスする第2抵抗器バイパス路と、
    その第2抵抗器バイパス路に設けられ、その第2抵抗器バイパス路に流れる電流の抵抗となる第2補助抵抗器と、
    前記第2抵抗器バイパス路に電流が流れる状態と流れない状態とを切り換えるための第2開閉器と
    を有し、
    前記第1開閉器によって、通常時に前記第1抵抗器バイパス路に電流が流れない状態となり、前記第1抵抗器にそれを電流が通過しない失陥が生じた場合に前記第1抵抗器バイパス路に電流が流れる状態となり、
    前記第2開閉器によって、通常時に前記第2抵抗器バイパス路に電流が流れない状態となり、前記第2抵抗器にそれを電流が通過しない失陥が生じた場合に前記第2抵抗器バイパス路に電流が流れる状態となるように構成された請求項11または請求項12に記載の車両用ダンパシステム。
  12. 前記外部回路が、
    前記電磁モータの2つの端子のうちの高電位となっているものから車両に搭載された蓄電装置の高電位側端子への電流の流れが許容されるとともに、前記蓄電装置の低電位側端子から前記電磁モータの2つの端子のうちの低電位となっているものへの電流の流れが許容される蓄電装置接続路を有し、
    当該車両用ダンパシステムが、
    前記電磁モータの起電力が前記蓄電装置の電圧を超える場合に、前記電磁モータによる発電電流の一部が、前記蓄電装置接続路を流れるように構成された請求項1,請求項4ないし請求項13のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
  13. 前記外部回路が、
    前記蓄電装置接続路を流れる電流を調整する蓄電装置接続路電流調整器を有する請求項14に記載の車両用ダンパシステム。
  14. 前記主調整器制御部が、
    前記電磁式ダンパの減衰係数が前記ばね上共振周波数域成分を減衰させるのに適した減衰係数となるように、前記主調整器とされた第1接続路電流調整器と第2接続路電流調整器との一方を制御する請求項1,請求項4ないし請求項15のいずれか1つに記載の車両用ダンパシステム。
  15. 車両に搭載されて、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対して減衰力を発生させる電磁式ダンパを含んで構成される車両用ダンパシステムであって、
    その電磁式ダンパが、
    電磁モータと、
    ばね上部とばね下部との接近離間動作と前記電磁モータの動作とを相互に変換する動作変換機構と、
    前記電磁モータの外部に設けられ、(A)前記電磁モータの2つの端子のうちの一方である第1端子から他方である第2端子への電流の流れが許容されるとともに前記第2端子から前記第1端子への電流の流れが禁止される第1接続路と、(B)前記電磁モータの前記第2端子から前記第1端子への電流の流れが許容されるとともに前記第1端子から前記第2端子への電流の流れが禁止される第2接続路とを有する外部回路と
    を備え、
    ばね上部とばね下部との接近動作に対しては、前記電磁モータによる発電電流が前記第1接続路を流れることで、ばね上部とばね下部との離間動作に対しては、前記電磁モータによる発電電流が前記第2接続路を流れることで、前記電磁モータに生じる起電力に依存した減衰力を発生させるように構成され、
    前記外部回路が、さらに、
    (C)前記第1接続路に設けられて前記第1端子から前記第2端子へと流れる電流を調整する第1接続路電流調整器と、(D)前記第2接続路に設けられて前記第2端子から前記第1端子へと流れる電流を調整する第2接続路電流調整器とを有し、
    それら第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器の各々が、その各々が設けられた前記第1接続路と前記第2接続路とのうちの一方を導通させる導通状態とその一方を遮断する遮断状態とを選択的に切り換えるスイッチング素子によって構成され、
    当該車両用ダンパシステムが、
    前記外部回路を制御することで、前記電磁モータに流れる電流を制御するための外部回路制御装置を備え、
    その外部回路制御装置が、
    前記第1接続路電流調整器を制御することで、ばね上部とばね下部との接近動作に伴う発電電流を制御するとともに、前記第2接続路電流調整器を制御することで、ばね上部とばね下部との離間動作に伴う発電電流を制御するように構成され、かつ、
    それら第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器を構成するスイッチング素子の各々を、前記導通状態および前記遮断状態が交互に連続して実現されるように制御するとともに、前記導通状態が実現される時間と前記遮断状態が実現される時間とに基づいて定まる比であるデューティ比を制御することで、前記電磁モータによる発電電流を制御するように構成され、かつ、前記第1接続路電流調整器および前記第2接続路電流調整器の各々を構成するスイッチング素子の前記デューティ比を、前記第1接続路と前記第2接続路とのいずれに発電電流が流れているかによっては変更しないように構成された車両用ダンパシステム。
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