JP5291028B2 - アルミニウム材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、例えば特許文献1に不純物の分析結果が示されるような、99.9999%の純度レベルを有する超高純度アルミニウム材も知られている。
しかし、下記に示すように、これら従来の高純度および超高純度アルミニウム材の不純物レベルでは十分でない場合があり、より一層不純物を低減したアルミニウム材への要望が高まっている。
非特許文献2には、酸素、炭素などの非金属元素および珪素などの不純物が取り込まれやすい元素として記されている。
非特許文献3には、CrやMnの影響について記載されている。
非特許文献4には、Si、Ge、P、As、Sb、CのAlN結晶中での存在状態を計算により検討している。
より詳細には、本発明は、包晶系7元素合計含有量が0.05ppm以下であり、好ましくは0.02〜0.05ppmであり、より好ましくは0.02〜0.04ppmであり、かつ金属35元素の合計含有量が0.2ppm以下であり、好ましくは0.05〜0.2ppmであり、より好ましくは0.05〜0.15ppmであるアルミニウム材である。
同様に、本明細書において用語「金属35元素」は、Li、Be、B、Na、Mg、Si、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、La、Ce、Pt、Hg、Pb、Biの35元素を意味する。
また、本明細書における「ppm」は原子比で示したppmである。
詳細を後述する帯溶融精製時にその一部分に溶融した溶融部を形成して不純物を除去するアルミニウム原料として、純度5N(99.999%、原子比)から6N(99.9999%、原子比)のアルミニウムを使用するのが好ましい。
アルミニウム材の純度を予め高めておくことにより、帯溶融精製をより効率的に行えるからである。
精製方法としては、特に制限されないが、好ましくは、三層電解法による精製と、一方向凝固法による精製との両方が用いられる。
三層電解法による精製と一方向凝固法による精製の実施順序は特に制限されないが、通常は、三層電解法で精製し、その後、一方向凝固法で精製される。また、三層電解法による精製と一方向凝固法による精製は、例えば、交互に繰り返し行ってもよく、またいずれか一方もしくは両方を各々繰り返し行ってもよい。
得られたアルミニウム原料は、後述の前処理、真空溶解に適した形状に加工することができる。アルミニウム原料の形状はペレット、棒、板、ブロック状などである。
アルミニウム原料は、真空精製に供せられる前に、好ましくは前処理が行なわれる。大気雰囲気中で表面に生じた酸化膜等およびアルミニウム原料を加工する際にその表面に付着した不純物元素を予め除去することで真空精製をより効率的に行えるからである。
前処理として、例えば酸処理、電解研磨などが挙げられる。
酸の種類および濃度: 純水で希釈した約20%塩酸水溶液
温度: 20℃〜40℃
時間: 1〜5時間
電解研磨液: 過塩素酸およびエタノール1:6混合液
温度: 19〜23℃
電圧: 25V(定電圧電解)
時間: 1〜10分
アルミニウム原料の不純物を除去し、目的の不純物レベルに到達したアルミニウム材を得るために帯溶融精製(帯溶融法)を行う。
帯溶融精製は、ボート上に配置したアルミニウム原料の一部分にアルミニウムが溶融した溶融部を形成し、この溶融部を所定の方向に移動させることにより行う。
以下に帯溶融精製の詳細を示す。
使用するボートは、帯溶融法で通常使用可能な各種のボートが使用可能である。このようなボートの例として、ステンレス鋼より成るボート、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)またはこれら金属の炭化物より成るボートおよびアルミナより成るボートがある。
好適なボートはグラファイトボートである。高純度で大型の素材が容易に入手でき、また真空中で安定であり、溶融アルミニウムとも反応しないためである。
アルミナ層の塗布はアルミナ粉末を有機溶剤等の液体中に分散させ、このアルミナ粉末を含む液体をボートに塗布した後、液体を蒸発させることにより行ってもよい。また、アルミナの固体粉末を直接ボート表面に塗布してもよい。後者の方が、より簡便に塗布できるため好ましい。
従って、アルミニウム原料はボートのアルミナ層以外の部分とは接触しないように配置されるのが好ましい。
上述したボートのアルミナ層上にアルミニウム原料を配置する。アルミニウム原料は、その形状にもよるが1本または複数本配置される。アルミニウム原料の形状(複数本用いる場合は合わせた形状)は、棒状が好ましく、また概ね四角柱あるいは円柱が簡便で好ましいが他の形状でもよい。
このアルミニウム原料の形状を断面(溶融部の移動方向に垂直な断面)が正方形の四角柱とみなしたとき、正方形の一辺をw(アルミニウム原料の断面寸法と呼ぶこととする。従って、断面寸法wはアルミニウム原料の断面積の平方根に相当する。)、四角柱の長さ(溶融部の移動方向に平行な方向の長さ)をLとすると、Lはw×30以上、w×100以下であることが好ましい。Lがw×30未満では十分な精製効果が得られない場合があり、またLがw×100を越えると精製に長い時間が必要となり、効率的でないためである。
本願発明では帯溶融を高真空下、具体的には3×10−5Pa以下、より好ましくは3×10−6Pa以上2×10−5Pa以下で行う。圧力が高い(真空度が低い)と不純物成分が十分に除去されないためである。また圧力が低い(真空度が高い)ほど好ましいが、圧力が低すぎると設備が過剰となり、経済性が悪い。
このような高真空は、アルミニウム原料が配置された上述のボートが内部に配置されているチャンバの排気を、例えばターボ分子ポンプと油回転ポンプとの両方を用いて行うことで実現できる。これ以外にも油拡散ポンプおよびクライオポンプ等を他の真空ポンプと組み合わせて排気する方法も好ましい。
これ以外にも抵抗加熱により加熱してもよい。抵抗加熱する部分を移動させることで溶融部を容易に移動できるからである。
本発明の範囲を制限するものではない、本願発明者らが考えるメカニズムは、このように高真空中で帯溶融を行うことで、溶融部から液相部および固相部に不純物をはき出すという従来の帯溶融のメカニズムと、高真空下での真空精製(精錬)のメカニズムと、が同時に複合的に機能することで、従来にない高純度が達成できるというものである。したがって、真空精製で用いられる極めて高い真空度に比べて低い真空度であっても、帯溶融精製では二つの作用が同時に複合的に作用するために、高い精製効果が得られると考えられる。
なお、帯溶融を複数パス行う場合、溶融部の移動方向は原則として全てのパスで同じ方向である。
一方の端部がシールされ他方が真空ポンプ(排気装置)20に繋がる真空チャンバ14が、その長手方向が水平になるように配置されている。
真空チャンバ14は、好ましくはその内部を視認できるように石英等の透明な材料より成る。
高周波コイル12は、図中の矢印の向きに移動しており、これによりコイル内部に位置するアルミニウム原料10の一部を溶融し、溶融部10bを形成している。
このように高周波コイル12が移動することで、アルミニウム原料10は、溶融部10bの前方(高周波コイル12の進行方向)に未溶融部10cを有し、溶融部10bの後方に溶融凝固部(精製部)10aを有している。
図2に示す例では、まだ溶融が行われておらずアルミニウム原料10は全て未溶融部10cとなっている。
高周波コイル12を図2の左から右に(図2の4つのアルミニウム原料10の左端から右端)に移動することにより、溶融部は複数のアルミニウム原料10を横断して移動する。この結果、複数のアルミニウム原料10は1つに接合される。
接触するアルミニウム原料の端部同士が帯溶融時に接合し、長い一本のアルミウム材を得ることができるからである。
繰り返し数(パス数)は通常1以上20以下である。パス数をこれ以上多くしても、精製効果の向上は限定的である。
また、長手方向に複数のアルミニウム原料を互いに接触させて配置した場合、パス数が3より少ないと接合後の精製材(アルミニウム材)の形状(特に高さ寸法)が不均一となって、精製中に溶融幅が変動して均一な精製効果が得られにくい場合があるからである。
鉄(Fe)と珪素(Si)と銅(Cu)の3元素は高純度アルミニウム中の主要不純物であり、精製用素材を切出準備する際に混入しやすい。これらの元素をチャンバ内に持ち込まないように、精製原料を前処理し、精製原料表面の汚染成分を除去することが好ましい。
成膜法はMBEに限定されず、アルミニウムを含有する半導体材料の成膜方法であれば、例えば、HVPE法(ハイドライド気相成長法)のような他の成膜法でも利用可能であり、これにより不純物の少ない高品質な成膜が可能である。
このような半導体のバルク単結晶の製造方法の具体例として、フラックス法、昇華再結晶法、HVPE法が挙げられ、これらを含む半導体のバルク単結晶の製造方法において、本願発明のアルミニウム材を用いることでアルミニウムを含有する半導体のバルク単結晶を得ることができる。
純度99.93%(原子比、以下同じ)のアルミニウムを三層電解法により精製して純度が99.999%以上の5Nアルミニウムを得た。この5Nアルミニウニムの成分分析結果は、Si=2.4ppm、Cu=0.47ppm、Fe=0.30ppm、Mg=0.54ppm、これら以外の他の31元素(すなわち、Li、Be、B、Na、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Co、Zn、Ga、Ge、As、Se、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、La、Ce、Pt、Hg、Pb、Bi。以下、単に「31元素」という場合がある。)が0.33ppmでありこれら不純物35元素の合計が4.0ppmであった。
より詳細には、黒鉛製ルツボ(内寸法:幅65mm×長さ400mm×高さ35mm)の中に1.8kgの5Nアルミニウムを原料として配置し、これを、炉体移動式管状炉の炉心管(石英製、内径100mm×長さ1000mm)の内部に収容し、1×10−2Paの減圧雰囲気にて炉体を700℃に温度制御して、5Nアルミニウムを溶解させた。その後、炉体を30mm/時間の速度で炉心管から引き抜くことにより一方の端部(凝固開始端)から他方の端部に向けて一方向に凝固させた。そして、長さ方向において凝固開始端より50mmの位置から凝固開始端より250mmの位置までを切出し、幅65mm×長さ200mm×厚さ26mmの塊状の6Nアルミニウムを得た。
帯溶融精製装置の真空チャンバ(外径50mm、内径46mm、長さ1400mmの石英管)内部に、グラファイトボートを配置した。グラファイトボートの原料配置部には、住友化学株式会社製の高純度アルミナ粉末AKPシリーズ(純度99.99%)を押圧しながら塗布してアルミナ層を形成した。
ベーキングは10−5〜10−7Paの真空中で、帯溶融に用いる高周波加熱コイル(加熱コイル巻数3、内径70mm、周波数約100kHz)にて加熱し、100mm/時間の速度でボートの一端から他端まで移動して、グラファイトボート全体を順に加熱して行った。
溶融部の溶融幅が約70mmとなるように高周波電源(周波数100kHz、最大出力5kW)の出力を調整した。そして高周波コイルを毎時100mmの速度で移動させ、溶融部を約900mm移動させた。このときのチャンバ内の圧力は5×10−6〜9×10−6Paであった。溶融部の温度を放射温度計にて測定した結果、660℃〜800℃であった。
そして、高周波コイルを溶融開始位置(最初に溶融部を形成した位置)まで移動させ、チャンバ内を真空に維持したまま、溶融開始位置で再度アルミニウム原料を加熱溶融させて溶融部を形成した。この溶融部を移動させて帯溶融精製を繰り返した。溶融幅約70mm、溶融部の移動速度毎時100mmでの帯溶融精製を、合計3回(3パス)行った時点で、溶融開始部から終了部まで形状がほぼ均一となり、それ以降(以下に示す7パスの間)は均一な形状を維持した。
合計10パス終了後にチャンバを大気開放し、アルミニウムを取り出し、長さ約950mmの精製アルミニウム材を得た。
FeとSiとCuの合計含有量が0.011〜0.074ppmであった。
なお、検出限界以下(0.001ppm未満)の微量不純物については、0.001として金属35元素の合計含有量を計算した。
実施例1と同様に、溶融幅約60mm、移動速度毎時60mmとして、10パスの帯溶融精製を行った。他の条件は実施例1と同様である。得られたアルミニウム材から分析試料を切出し、分析した結果を表1に示す。
アルミニウム材の溶融開始端からの距離が810mm〜930mmの領域において、包晶系7元素の合計含有量が0.033〜0.045ppm、金属35元素の合計含有量が0.156〜0.17ppmであった。また、精製アルミニウム材は、FeとSiとCuの合計含有量が0.058〜0.098ppmであった。このように溶融領域の溶融幅および移動速度を一定にした場合にも、優れた精製効果が得られた。
実施例1で示した、三層電解法により精製した5Nアルミニウムおよびこの5Nアルミニウムを一方向凝固して作製した6Nアルミニウムについて、組成分析を行った結果を表1に示す。アルミニウム材は、包晶系7元素含有量が0.055〜0.076ppm、金属35元素の合計含有量が0.65〜4.0ppmであった。また、FeとSiとCuの合計含有量が0.43〜3.2ppmであった。
三層電解法により精製した上述の5Nアルミニウムを精製原料として帯溶融精製を行った。移動速度は毎時55mmであり、他の条件は実施例1および2と同様である。10パスの精製により得られたアルミニウム材から分析試料を切出し、分析した結果を表1に示す。
成分分析用の試料は溶融開始位置から20mm、290mm、490mm、690mmの4箇所より採取した。
FeとSiとCuの合計含有量が0.058〜0.61ppmであった。このように、場所によらずFe、SiおよびCuについては良く精製されているものの、包晶系元素が十分に低減されておらず、金属35元素の含有量の精製効果も、実施例に比較すると劣る結果となった。
アルミニウム原料 10
溶融凝固部(精製部) 10a
溶融部 10b
未溶融部 10c
高周波コイル 12
真空チャンバ 14
グラファイトボート 16
アルミナ層 18
真空ポンプ 20
Claims (8)
- チタン(Ti)とバナジウム(V)とクロム(Cr)とヒ素(As)とセレン(Se)とジルコニウム(Zr)とモリブデン(Mo)の合計含有量が原子比で0.05ppm以下であり、
リチウム(Li)とベリリウム(Be)とホウ素(B)とナトリウム(Na)とマグネシウム(Mg)と珪素(Si)とカリウム(K)とカルシウム(Ca)とチタン(Ti)とバナジウム(V)とクロム(Cr)とマンガン(Mn)と鉄(Fe)とニッケル(Ni)とコバルト(Co)と銅(Cu)と亜鉛(Zn)とガリウム(Ga)とゲルマニウム(Ge)とヒ素(As)とセレン(Se)とジルコニウム(Zr)とモリブデン(Mo)と銀(Ag)とカドミウム(Cd)とインジウム(In)とスズ(Sn)とアンチモン(Sb)とバリウム(Ba)とランタン(La)とセリウム(Ce)と白金(Pt)と水銀(Hg)と鉛(Pb)とビスマス(Bi)の合計含有量が原子比で0.4ppm以下であることを特徴とするアルミニウム材。 - 鉄(Fe)と珪素(Si)と銅(Cu)の合計含有量が原子比で0.1ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材。
- 請求項1または2のいずれか1項に記載のアルミニウム材の半導体成膜プロセスでの使用。
- 請求項1または2のいずれか1項に記載のアルミニウム材の半導体バルク単結晶成長プロセスでの使用。
- アルミニウムの一部分を溶融した溶融部を形成し、該溶融部を移動させて不純物を除去する帯溶融工程を含むアルミニウム材の製造方法であって、
前記溶融部が3×10−5Pa以下の真空中で形成され、前記溶融部を形成するアルミニウムがアルミナ層の上に配置されていることを特徴とするアルミニウム材の製造方法。 - 前記アルミニウムの溶融時の真空度が3×10−6Pa〜2×10−5Paであることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
- 前記溶融部の移動方向の長さが、前記アルミニウムの断面を正方形とみなした場合の該正方形の1辺の長さwに対して、w×1.5より大きく、w×6より小さいことを特徴とする請求項5または6に記載の製造方法。
- 前記真空精製工程で溶融するアルミニウムの表面層を予め除去することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
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