JP5289590B2 - プラズマ滅菌用インジケータ及び滅菌用包装材料 - Google Patents
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Description
このようなプラズマ滅菌処理に適合する表示組成物としては、例えば、特許文献4に記載のトリフェニルメタン系色素、シアニン系色素、特許文献5に記載のpH指示薬を変色色素として用いる技術などが提案されている。
これらの表示成分は、プラズマ滅菌に使用される酸化力の強いガスの酸化性により消色或いは変色する色素を含有するが、変色速度が遅く、短時間のプラズマ滅菌処理によっては、十分な変色が得られない、耐光性が不十分で、白灯下或いは昼光下での取り扱いにより所望されない変色が起こるなどの問題があり、実用上好ましくなかった。
このため、変色速度が速い指示薬として、pHにより色相が変わるpH指示薬の利用が検討されたが、この変色反応は可逆的であるため、このような表示部を有する滅菌バッグは、滅菌後であっても保存環境により色相が変化してしまい、滅菌処理を完了したか否かが不明瞭となり、安定性に欠けるという問題がある。
また、請求項2に係る本発明の滅菌用包装材料は、少なくとも一部がガス透過性の基材により構成され、プラズマ滅菌処理のための被滅菌物を収納しうる滅菌用包装材料であって、(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬である、コンゴーレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、ヘマトキシリン、モーダントブルー29、エリオクロムブラックT、キシレノールオレンジ、及び1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトール(PAN)からなる群より選択される1種以上の化合物と、(B)アルミニウムキレート化合物、及びチタンキレート化合物から選択される1種以上の有機金属化合物と、を含有し、前記(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬からなる群より選択される1種以上の化合物と、前記(B)有機金属化合物の1種以上の化合物とが、酸の存在下で反応して、pHに依存しないで不可逆的に色相が変わるプラズマ滅菌用インジケータからなる表示部が形成されてなることを特徴とする。
本発明のプラズマ滅菌用インジケータは、前記特定の(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬からなる群より選択される1種以上の化合物と、前記特定の(B)有機金属化合物から選択される1種以上の化合物と、を含有し、前記特定の(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬からなる群より選択される1種以上の化合物と、前記特定の(B)有機金属化合物の1種以上の化合物とが、酸の存在下で反応して、pHに依存しないで不可逆的に色相が変わることを特徴とする。
本発明に使用可能な吸着指示薬には特に制限はなく、一般に金属イオンの検出などに使用されるコロイド粒子に吸着されて変色する指示薬であれば、適宜使用し得る。
本発明に使用し得る吸着指示薬としては、例えば、コンゴーレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、チタンイエロー、エオシン、フルオレセイン、ジクロルフルオレセイン、ジブロムフルオレセイン、アルミノン、アリザリン、クルクミン、等が挙げられる。
上記のうち、本発明における吸着指示薬としては、コンゴーレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、及びブロモフェノールブルーより選択される1種以上を用いるのが好ましい。
ミノン、アリザリン、クルクミン、等が挙げられる。
上記のうち、本発明におけるキレート滴定・金属指示薬としては、モーダントブルー29、エリオクロムブラックT、キシレノールオレンジ、及び1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトールより選択される1種以上を用いるのが好ましい。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、目的に応じて2種以上を組み合わせて使うこともできる。
本発明のプラズマ滅菌用インジケータにおける前記(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬であるコンゴーレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、ヘマトキシリン、モーダントブルー29、エリオクロムブラックT、キシレノールオレンジ、及び1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトール(PAN)からなる群より選択される1種以上の化合物の含有量は後に詳述する(B)アルミニウムキレート化合物、及びチタンキレート化合物から選択される有機金属化合物との関係において適宜決定されるが、一般的には、固形分で0.2〜10.0重量%程度であり、0.5〜5.0重量%の範囲であることが好ましい。
含有量が0.2重量%未満であると耐光性が低下したり、滅菌して変色した後の表示部の色が薄く、視認性が低下する傾向にあり、10.0重量%を超えると表示部作成用の塗布液を調整する際などに、未溶解物が発生しやすくなる傾向があるため、いずれも好ましくない。
本発明に用いられる(B)有機金属化合物としては、酸の存在下、前記(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬であるコンゴーレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、ヘマトキシリン、モーダントブルー29、エリオクロムブラックT、キシレノールオレンジ、及び1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトール(PAN)からなる群より選択される1種以上の化合物と反応して色相が明確に変わるものであり、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどのアルミニウムキレート化合物、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンなどのチタンキレート化合物から選ばれる化合物である。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて使うこともできる。
これらの化合物の含有量は、一般的には、固形分で0.2〜5.0重量%程度であり、0.5〜3.0重量%の範囲であることが好ましい。
含有量が0.2重量%未満であるとプラズマ滅菌前の色相が不安定となり、5.0重量%を超えると、プラズマ滅菌前の色相が経時的に変化したり、調製後のインジケータ用インキの粘度が上昇するなど、インキの安定性に問題が出やすくなるため、いずれも好ましくない。
具体的な変色について述べれば、例えば、(A)成分としてフェノールレッドを、(B)成分としてアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート用いた場合、滅菌前の色相は黄紅であり、滅菌後は赤に変色する。また、同じ(B)成分を用いた場合、(A)成分としてエリオクロムブラックTを用いた場合には、グレーから黄色へ、ヘマトキシリンを用いた場合には、こげ茶から黄色に変色する。これらはいずれも、一見して変色が検知できるものである。
本発明の滅菌用インジケータには、バインダーを含有することが好ましい。バインダーは、インジケータを包装材料の表示部として用いる場合の担持体となる。
バインダーには特に制限はなく、例えば、印刷用インキの調製に通常用いられる合成樹脂などを適宜選択して用いることができる。
本発明のインジケータにおいては、組成物としての安定性の観点からは耐アルカリ性の高分子材料であるポリアミドやエチルセルロース系バインダーが好ましいが、他の添加物を調製することによりアルカリ成分からのダメージを防止することができるため、必ずしも耐アルカリ性である必要はない。従って、色素の変色速度や安定性を考慮すれば、例えば、硝化綿などもバインダーとして好適に用いることができる。
バインダーの種類や添加量は、滅菌用インジケータとしての特性、適用される包装材料や容器などの材質、必要とされる耐久性などに応じて適宜選択すればよいが、添加量としては、5〜30重量%程度が一般的である。
とくに、耐光性向上の観点から、本発明のプラズマ滅菌用インジケータには、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、この分野で通常使用されているものであれば、本発明の目的達成に悪影響を与えるものでない限り、どのような種類のものでも使用することができる。具体的には、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダートアミン系化合物などが好適なものとして挙げられる。紫外線遮断効果を有するこのような化合物は、市販品としては、チバガイギー(Ciba-Geigy)社のチヌビン(Tinuvin)の商標で知られている種種の化合物を挙げることができる。
紫外線吸収剤は単独でも、また二種類以上の化合物を組み合わせて使用することもできるが、異なる特性を有する紫外線吸収剤を複数種用いることも効果的である。
溶剤は、前記アントラキノン系色素や他の成分の溶解性を考慮して選択されるが、バインダー樹脂の溶解性、色素の安定性及び印刷時の乾燥の効率を考慮すれば、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、酢酸エチル、イソプロパノール、n−プロパノール、トルエンなどが好ましい。
滅菌可能である領域、即ち、本発明に適用されるプラズマ滅菌処理に際して、有効成分であるガス(気体)を透過させ、菌を透過させない範囲の透過度を有する紙または不織布等からなる領域を少なくとも一部に有している必要がある。
包装材料のすべてをこのような滅菌可能な材料で構成することもできるが、コスト、強度、内容物の視認性の観点から、一方が紙または不織布等のガス透過性材料を用い、他方に透明の合成樹脂シートなどを用いることも好ましい態様である。例えば、一方にガス透過性の紙または不織布製シート、他方に透明な合成樹脂シートと2枚のシートを組合せて用いて、袋状に成形したものは、製造も容易であり、内容品の視認性、強度が確保される。
表示部の塗布量には特に制限はなく、表示が視認できる限り任意に選択できるが、一般的には、0.2〜20g/m2程度であり、好ましくは1〜10g/m2の範囲である。塗布量が少なすぎると滅菌処理後の視認性に劣り、多すぎると輸送や保管時における耐傷性が低下する傾向がある。
また、所望により設けられる表面保護層の塗布量は、1〜10g/m2の範囲であることが好ましい。
プラズマ滅菌用インジケータを構成する下記の各成分を混合し、均質になるまで撹拌して、指示部形成用の組成物を調製した。
(プラズマ滅菌用インジケータ組成物)
・ヘマトキシリン 1.0重量%
・ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン 1.0重量%
・ワニス(セーフル:商品名、T&K TOKA社製) 80.5重量%
・メタノール 15.0重量%
・紫外線吸収剤 2.5重量%
(チヌビン400:商品名、チバガイギー社製)
前記プラズマ滅菌用インジケータ組成物において、ヘマトキシリンに変えて、下記表1に記載の各吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬を用いた他は、実施例1と同様にして指示部形成用の組成物を調製し、表示部を形成した。表示部の色相も下記表1に併記する。
1.表示性能
前記不織布シートを低温プラズマ滅菌システム〔STERRAD−100(商標)ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル(株)製〕に入れて75分間滅菌処理を行ない、表示部の色相の変化を観察した。
2.変色速度
前記不織布シートに表示部を形成した直後に、低温プラズマ滅菌システム〔STERRAD−100(商標)ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル(株)製〕に入れて過酸化水素を注入後1分間で処理を中止し、目視にて表示部の色相の変化を観察した。完全に変色しているものを○、目視にては変色を検知できなかったものを×と評価した。
前記不織布シートを片面に用い、他方に透明のポリエステル/低密度ポリエチレン積層フィルムを用い、三方をヒートシールして滅菌包装袋を作成した。この滅菌袋の中に生物学的インジケータ(BI)を入れて密閉し、低温プラズマ滅菌システム〔STERRAD−100(商標)ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル(株)製〕に入れて75分間滅菌処理を行なった。滅菌後の表示部の色相の変化を観察した。結果を下記表2に示す。
また、生物学的インジケータを無菌的に取出し、滅菌済みTSB培地に植え込み、35℃で7日間培養した後、菌の発育の有無を目視により確認した。
これらの結果を前記表1に併記する。
また、滅菌包装材料の形態をとった場合でも、表示機能に問題はなく、プラズマ滅菌処理効果にも問題がないことが確認された。
前記実施例1〜10で用いた滅菌用インジケータ組成物において、有機金属化合物であるジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンに代えて、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートを用いた他は、実施例1と同様にして実施例11〜20の不織布シート及び滅菌包装材料を得て、実施例1と同様の評価を行なった。
評価の結果は、前記実施例1〜10と同様であり、有機金属化合物を変更した場合にも、おおむね同様の色相が得られ、いずれも良好な表示性能、滅菌性能が達成されていることが確認された。
前記実施例1の表示部用の組成物において、溶剤であるメタノールに変えてエタノールを用いた他は、実施例1と同様にして不織布シート及び滅菌包装材料を得て、実施例1と同様の評価を行なった。
変色前の色相はグレーであったが、滅菌後の色相は実施例1とほぼ同様であり、溶剤を変更した場合にも、同様の色相、表示性能、滅菌性能が得られることが確認された。
Claims (2)
- (A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬である、コンゴーレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、ヘマトキシリン、モーダントブルー29、エリオクロムブラックT、キシレノールオレンジ、及び1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトール(PAN)からなる群より選択される1種以上の化合物と、(B)アルミニウムキレート化合物、及びチタンキレート化合物から選択される1種以上の有機金属化合物と、を含有し、前記(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬からなる群より選択される1種以上の化合物と、前記(B)有機金属化合物の1種以上の化合物とが、酸の存在下で反応して、pHに依存しないで不可逆的に色相が変わるプラズマ滅菌用インジケータ。
- 少なくとも一部がガス透過性の基材により構成され、プラズマ滅菌処理のための被滅菌物を収納しうる滅菌用包装材料であって、(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬である、コンゴーレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、ヘマトキシリン、モーダントブルー29、エリオクロムブラックT、キシレノールオレンジ、及び1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトール(PAN)からなる群より選択される1種以上の化合物と、(B)アルミニウムキレート化合物、及びチタンキレート化合物から選択される1種以上の有機金属化合物と、を含有し、前記(A)吸着指示薬、キレート滴定・金属指示薬からなる群より選択される1種以上の化合物と、前記(B)有機金属化合物の1種以上の化合物とが、酸の存在下で反応して、pHに依存しないで不可逆的に色相が変わるプラズマ滅菌用インジケータからなる表示部が形成されてなることを特徴とする滅菌用包装材料。
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