以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、クリーニングブレードの寿命末期にブラシローラ等の摺擦速度が高まる限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、中間転写体を用いる方式、記録材搬送体を用いる方式、タンデム型、1ドラム型、フルカラー、モノクロの区別なく、これらの画像形成装置において等しく実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1〜4に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
<画像形成装置>
図1は実施形態の画像形成装置の構成の説明図、図2は画像形成部の構成の説明図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト10に沿って画像形成部PY、PM、PC、PKを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
画像形成部PYでは、感光ドラム1Yにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト10に一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム1Mにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト10のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部PC、PKでは、それぞれ感光ドラム1C、1Kにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて同様に中間転写ベルト10に順次重ねて一次転写される。
中間転写ベルト10に一次転写された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。トナー像の転写を受けた記録材Pは、中間転写ベルト10から分離されて定着装置18へ搬送されてトナー像の定着処理を受ける。これにより、記録材Pは、画像形成物(プリント、コピー)として出力される。
中間転写ベルト10は、テンションローラ11、駆動ローラ12、及び対向ローラ13に掛け渡して支持され、駆動ローラ12に駆動されて所定のプロセススピードで矢印R2方向に回転する。中間転写ベルト10は、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどの樹脂にカーボンを分散して抵抗を調整したもので、周長が800mmである。テンションローラ11は、駆動ローラ12と対向ローラ13との間で中間転写ベルト10を一定のテンションで維持するように調整されている。
二次転写ローラ14は、中間転写ベルト10を挟んで対向ローラ13に9.8N(1000gf)の押圧力をもって圧接することにより、中間転写ベルト10と二次転写ローラ14との間に二次転写部T2の圧接ニップ部を形成する。
分離装置19は、記録材カセット20から引き出された記録材Pを1枚ずつに分離して、レジストローラ16へ送り出す。レジストローラ16は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト10のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り込む。
二次転写部T2に搬送された記録材Pは、トナー像を担持・搬送する中間転写ベルト10と二次転写ローラ14との間に挟持されて搬送される。その間、電源D2は、二次転写ローラ14にトナーの正規帯電極性である負極性とは逆極性である正極性の直流電圧(+1.5kV)を印加する。これにより、記録材P上に中間転写ベルト10上の4色重なったトナー像が静電転写される。
ベルトクリーニング装置15は、中間転写ベルト10のトナー画像が二次転写部T2を通過して記録材Pに二次転写された後、中間転写ベルト10の表面に残留する転写残トナーをクリーニングする。定着装置18は、ヒータを設けた定着ローラ18aに加圧ローラ18bを圧接して加熱ニップを形成する。記録材Pは、加熱ニップで挟持搬送される過程で、加熱加圧を受けてトナー像を溶融させ、フルカラー画像を表面に定着される。
画像形成部PY、PM、PC、PKは、それぞれの現像装置で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部PYについて説明し、他の画像形成部PM、PC、PKについては、説明中の符号末尾のYを、M、C、Kに読み替えて説明されるものとする。
図2に示すように、画像形成部PYは、感光ドラム1Yの周囲に、帯電ローラ2Y、露光装置3Y、現像装置4Y、一次転写ローラ5Y、クリーニング装置6Yを配置する。像担持体の一例である感光ドラム1Yは、不図示の駆動モータから駆動力を伝達されて矢印R1方向に回転する。
帯電手段の一例である帯電ローラ2Yは、接触帯電装置(接触帯電器)を構成する。帯電ローラ2Yの外形は14.0mmであり、芯金2aの両端部をそれぞれ軸受け部材により回転自在に保持される。軸受け部材が押し圧ばね2bによって付勢されることで、帯電ローラ2Yは、感光ドラム1Yの表面に対して総圧4.9N(500gf)の押圧力で圧接している。帯電ローラ2Yの芯金2aには、電源D3より、直流電圧(−500V)に交流電圧(周波数f=1kHz、ピーク間電圧Vpp1.5kVの正弦波)を重畳した振動電圧が印加される。これにより、帯電ローラ2Yと感光ドラム1Yとの間の交流電圧による放電を伴って、感光ドラム1Yの周面が一様な暗電位VD(−500V)に接触帯電処理される。なお、帯電手段は、コロナ放電を伴って感光ドラム1Yを帯電させるコロナ帯電器を用いてもよい。
露光装置3Yは、半導体レーザーを用いたレーザービームスキャナであって、画像読取装置等のホスト処理からプリンタ側に送られた画像信号に対応して変調されたレーザー光を出力する。露光装置3Yは、回転する感光ドラム1Yの一様帯電面を露光位置においてレーザー走査露光(イメージ露光)して、感光ドラム1Yの表面のレーザー光で照射されたところの電位をVL(−100V)に低下させる。これにより、感光ドラム1Yには走査露光した画像情報に対応した静電像が順次に形成されていく。
トナー像形成手段の一例である現像装置4Yは、非磁性トナ−と磁性キャリアからなる二成分現像剤が収容され、両者の混合比は重量比でおよそ9:1である。この重量比は、非磁性トナーの帯電量、磁性キャリアの粒径等により適正に調整されるべきものであって、必ずしもこの数値に従わなければいけないものではない。現像装置4Yは、感光ドラム1Yに対向した現像領域が開口しており、この開口部に一部露出するようにして現像スリーブ4bが回転可能に配置されている。現像スリーブ4bは、感光ドラム1Yとの最近接距離(S−Dギャップ)を350μmに保持して感光ドラム1Yに近接対向配設し、感光ドラム1Yと現像スリーブ4bとの対向部に現像部を形成する。現像スリーブ4bの外周面に、現像スリーブ4b内のマグネット4cの磁力によって、現像容器4a内の二成分現像剤の一部が磁気ブラシ層として吸着保持される。磁気ブラシ層は、現像スリーブ4bの回転に伴って回転搬送され、現像剤コーティングブレード4dにより所定の薄層に整層され、現像部において感光ドラム1Yに接触して適度に摺擦する。電源D4は、現像スリーブ4bに、例えば、直流電圧Vdc(−350V)に交流電圧Vac(周波数f=8.0kHz、ピーク間電圧1.8kVの矩形波)を重畳した振動電圧を印加する。現像スリーブ4bの外周面に薄層としてコーティングされ、現像部に搬送された二成分現像剤中のトナーは、振動電圧によって感光ドラム1Yの表面へ転移し、静電像に対して選択的に付着することで静電像がトナー像に現像される。ここでは、感光ドラム1Yの露光部にトナーが付着して静電像が反転現像される。
一次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト10を介して感光ドラム1Yに対向して配置されて、中間転写ベルト10と感光ドラム1Yとの間に一次転写部T1を形成する。一次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト10に対して総圧4.9N(500gf)の押圧力で圧接している。電源D1は、感光ドラム1Y上のトナー像が一次転写部T1に到達している間、一次転写ローラ5Yにトナーの正規帯電極性である負極性とは逆極性である正極性の直流電圧(+500V)を印加する。これにより、感光ドラム1Y上のトナー像が中間転写ベルト10へ静電転写される。
<現像剤>
二成分現像剤は、磁性キャリアと非磁性トナーを含む。非磁性トナー(以下トナー)は、結着樹脂,着色剤,その他帯電制御剤,ワックス等の添加剤を含む着色樹脂粒子からなる。そして、着色樹脂微粒子の表面には、流動性の改善,帯電量の調整等の必要に応じて、例えばコロイダルシリカ、チタニア等の無機酸化物微粒子が外添剤として付着している。実施例におけるトナーは、結着樹脂がポリエステル系樹脂からなり、抵抗値は約1014Ωcm,体積平均粒径は約6μmである。
トナーの体積平均粒径は、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を使用して測定した。一級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液からなる電解液100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加えて電解液を調合した。この電解液中にトナーの測定試料を2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行った。試料を懸濁した電解液は、コールターカウンターTA−II型により100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積を測定することにより体積分布を算出した。その測定結果から体積50%のメジアン径をもって体積平均粒径を求めた。
磁性キャリア(以下キャリア)は、例えば表面酸化或は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金、或は酸化物フェライトなどが好適に使用可能である。これらの磁性粒子の製造法は特に制限されない。実施例で使用したキャリアの抵抗値は1010Ωcm(108Ωcm〜1012Ωcm)であり、磁化量は200emu/cc(100emu/cc〜300emu/cc)であり、個数平均粒径は約35μmである。
キャリアの体積平均粒径は、フロー式粒子像分析装置FPIA3000(シスメックス社製)を用いて測定した。個数基準で粒径0.5〜200μmの範囲を32対数分割してそれぞれのチャンネルにおける粒子数を測定し、その測定結果から個数50%のメジアン径をもって個数平均粒径とした。キャリアの抵抗値は、測定電極面積10cm2、電極間間隔0.4cmのサンドイッチタイプのセルを用い、片方の電極に1kgの荷重を加え、両電極間に印加電圧E(V/cm)を印加した時の電流値から抵抗値を算出した。
<像担持体>
図3は感光ドラムの感光層の層構成を示した模式図である。像担持体の一例である感光ドラム1Yは、回転ドラム型の電子写真感光体である。感光ドラム1Yは、負帯電性の有機光導電体(OPC)で外形Φ30mmであり、中心支軸を中心に100mm/secのプロセススピード(周速度)をもって矢示R1方向に回転駆動される。
図3に示すように、感光ドラム1Yは、導電性支持体201上に、導電層207、電荷発生層203、電荷輸送層204、表面層205が順次積層されたもので、表面層205の最表面が自由表面206である。感光層202は、電荷発生物質を含有する電荷発生層203の上に電荷輸送物質を含有する電荷輸送層204を積層した機能分離型の感光体構成である。導電性支持体201と感光層202との間に、導電層や整流性を有する下引き層等からなる10〜20μmの導電層207が配置されている。
なお、電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一層中に分散した単層の感光層202を採用することも可能である。また、積層型の感光層では、電荷輸送層204が二層以上設けられた構成も可能である。いずれの場合においても、電荷輸送性化合物を感光層202が含有していればよい。
電子写真感光体としての特性、特に残留電位などの電気的特性及び耐久性の点より、表面層205には、電荷輸送性化合物を含有した連鎖重合性基を有する電荷輸送性化合物の重合体が含有されている。表面層205に電荷輸送物質を含有させて、電荷輸送性機能を有させることで、感度低下、残留電位上昇を抑制できる。表面層205が架橋構造を含有するとともに電荷輸送機能を有するため、電荷輸送能を低下させることなく表面層の高耐久化が可能となる。
具体的には、電荷輸送層204に炭素一炭素二重結合を有するモノマーを含有させ、熱あるいは光のエネルギーによって、表面層205の電荷輸送性化合物の炭素一炭素二重結合と反応させて電荷移動層硬化膜を形成した。表面層205は、摩擦特性を向上させるために、潤滑材としてフッ素原子含有化合物などを含有させた。
なお、シロキサン系化合物を架橋させて表面層を形成してもよい。表面層としては、熱硬化型表面層、紫外線硬化型表面層、電子線硬化型表面層等でもよい。
このような表面層205を有する感光ドラム1Yは、耐摩耗性が非常に優れている。感光ドラム1Yが有する特徴的な物理量を規定すべく、25℃、湿度50%の環境下でビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて感光ドラム1Yの硬度を試験した。荷重6mNでダイヤモンド圧子を押し込んだ場合のユニバーサル硬さ値(HU)は、150〜220N/mm2の範囲であり、かつ、弾性変形率は、48〜65%の範囲であった。
一般的に膜の硬度は外部応力に対する変形量が小さいほど高く、電子写真感光体も当然の如く鉛筆硬度やビッカース硬度が高いものが機械的劣化に対する耐久性が高いと考えられる。しかし、これらの測定により得られる硬度が高過ぎると耐久性が逆に低下するので、上記の範囲が良好である。例えば、ユニバーサル硬さ値(HU)が220N/mm2を超えるとき、弾性変形率が48%未満であると、表面層の弾性力が不足しているが故に、結果として局部的に大きな圧力がかかり、感光層に深い傷が発生してしまう。また、このとき、弾性変形率が65%より大きいと、弾性変形率は高くても弾性変形量は小さくなってしまうが故に、結果として局部的に大きな圧力がかかり、感光層に深い傷が発生してしまう。よって、HUが高いものが必ずしも表面層として最適ではないと考えられる。また、ユニバーサル硬さ値(HU)が150N/mm2未満のときは、弾性変形率が65%を超えていると、弾性変形率が高くても塑性変形量も大きくなって、紙粉やトナーに擦られて削れたり細かい傷が発生したりする。よって、HUが150N/mm2未満では表面層として表面硬度が不足していると考えられる。
ここで、ユニバーサル硬さ値(HU)及び弾性変形率は、通常環境N/N(温度25±2℃、湿度50±10%)下で、微小硬さ測定装置フィッシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定した。圧子として対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用し、圧子に連続的に荷重をかけて、荷重下での押し込み深さを直読して連続的に硬さを求めた。荷重の条件は、最終荷重6mNまで段階的に各点0.1secの保持時間で273点測定した。
感光ドラム1の表面層205の特性を上述の範囲に収めるには、電荷輸送性化合物を含有した硬化性樹脂、または電荷輸送機能を有した硬化性樹脂により形成された保護層を有することが好ましい。硬化性樹脂を用いることで、硬化性樹脂の硬化度を調整することができ、表面層205のユニバーサル硬さ値(HU)や、特に弾性変形率Weを上述した範囲に収めることが容易になるからである。
なお、感光ドラム1Yは、硬質の保護層を有する有機感光体(OPC)に限定されるものでなく、感光ドラム1Y最外層の材質がアモルファスシリコンである無機感光体を用いても良い。
<実施例1>
(クリーニングブレード)
図4は表面層が架橋構造を有する感光ドラムの摩耗速度を従来の感光ドラムと比較した説明図である。クリーニング装置6Yには、ゴム弾性体からなるクリーニングブレード6aを使用している。これは、クリーニングブレード6aを使用することで、クリーニング装置6Yの構成が非常に単純かつ小型になり、コスト面からも有利である等の理由による。
クリーニングブレード6aの材質としては、耐薬品性、耐摩耗性、成形性、機械的強度などの点で優れている熱可塑性エラストマーの一種であるポリウレタンゴムが主に用いられている。クリーニングブレード6aを有するクリーニング装置6Yでは、走行する像担持体表面に対してカウンタ方向から、転写残トナーを除去するのに必要な力(5〜40gf/cm)でクリーニングブレード6aを圧接させている。
このように圧接させたクリーニングブレード6aのクリーニング作用のメカニズムは、いわゆるStick−Slip運動によるものと考えられている。すなわち、クリーニングブレード6aのエッジ部と像担持体の当接部では、まず当接部に働く摩擦力により像担持体表面に密着したエッジ部が像担持体の進行方向に変形(ずり変形、圧縮変形)する。次に、その応力に伴うエッジ部に蓄積されたエネルギーが復元力(反発弾性力)として働き、エッジ部が元の状態に戻る。
Stick−Slip運動によるクリーニング能力は、エッジ部に蓄積されるエネルギーによるエッジ部の振動運動の振幅及び振動数により決定される。そして、円柱状の像担持体の場合、エッジ部の振動運動が円柱の接平面上に限定されることが好ましい。Stick−Slip運動の振幅及び振動数は、クリーニングブレード6aの像担持体に対する摩擦係数、厚み、自由長、反発弾性率、硬度、モジュラス(応力−ひずみ曲線)等で決定される。
ところで、上記の条件に合わせてクリーニングブレード6aの適正化を図ったとしても、クリーニングブレード6aの耐用期間の末期になると、クリーニングブレード6aのクリーニング性能が低下する。
図4に示すように、通紙枚数が50000枚を超えた時に、感光ドラムA及び感光ドラムB共に摩耗速度が減少している。その理由としては、クリーニングブレード6aの加水分解による反発弾性率の低下や永久変形を原因とする、クリーニング装置6Yのクリーニング能力(感光ドラム1Yに対する摺擦能力)の低下である。すなわち、画像形成を繰り返し行なっていると、帯電ローラ2Yを用いて感光ドラム1Y表面を帯電処理した時に発生するオゾンや空気中の水分に起因してゴム材料の加水分解が進行して反発弾性率の低下や永久変形が発生する。そして、クリーニングブレード6aの反発弾性率の低下や永久変形が生じると、クリーニングブレード6aの感光ドラム1Yに対する圧接力が低下し、エッジ部のStick−Slip運動が小さくなる。
図4は従来の感光ドラムBと実施例で用いた感光ドラムAとについて、使用に伴う感光ドラムの摩耗量を図1の画像形成装置100で確認した結果である。感光ドラムA、Bの摩耗量は、渦電流式膜厚測定装置フィッシャースコープMMS(Fischer社製)を用いて測定した。最初と通紙枚数25000枚毎に、予め決定した感光ドラム上の主走査方向の3点について、同一周方向6箇所の計18点について、感光層の膜厚(207、203、204、205、206の合計:図3)を測定した。そして、膜厚の最初と各時点での差分を摩耗量とした。
このため、感光ドラム1Y上の転写残トナーを十分に除去回収することができなくなり、クリーニング不良等の問題を発生する可能性が出てくる。また、クリーニングブレード6aを用いて感光ドラム1Y上の帯電生成物、トナー樹脂、及び外添剤等を十分に除去することができなくなり、画像流れやフィルミング等の問題を発生する可能性が出てくる。
そこで、クリーニングブレード6aの表面に耐候性樹脂をコーティングして、加水分解によるクリーニングブレード6aの劣化を防止する方法が提案された。しかし、コーティングによってクリーニングブレード6a全体が硬化するため、クリーニングブレード6aの反発弾性率、硬度、モジュラス(応力−ひずみ曲線)に悪影響が出て良好なクリーニング性能を発揮できなくなった。
また、画像形成動作時以外のタイミングで、クリーニングブレード6aを感光ドラム1Yから離間させて、クリーニングブレード6aの永久変形を防止する方法が提案された。しかし、離間だけではオゾンや空気中の水分に起因する反発弾性率の低下を防止することはできず、画像形成装置の機構の複雑化・大型化を招く新たな問題が発生する。
ところで、近年、市場ニーズとして、ランニングコスト低減のための消耗品の長寿命化、メンテナンスフリー特性が重視されている。具体的には、感光ドラム1Yには、帯電時のオゾン及び窒素酸化物による化学的劣化、帯電時の放電やクリーニングブレード6aの摺擦による機械的劣化、画像形成の繰り返しに伴う電気的劣化に対する化学的・電気的・機械的な耐久性が求められている。
このため、感光ドラム1Yの耐久性を高める方法として、硬化性の樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いる方法、電荷輸送物質を含有する硬化性樹脂を用いる方法、潤滑剤や酸化防止機能を具備した表面保護層を用いる方法が提案されている。
しかし、感光ドラム1Yの耐久寿命が伸びる一方で、クリーニングブレード6aの耐久寿命は伸びていない。このため、感光ドラム1Yとクリーニングブレード6aとを備えた交換ユニットでは、クリーニングブレード6aの寿命によるクリーニング不良が発生した場合、感光ドラム1Yがまだ寿命に達していない段階で全体が交換される。このため、ランニングコスト低減に結びつかない。
そこで、実施例では、架橋構造を有する樹脂からなる最表面を有する感光ドラム1Yとクリーニングブレード6aとを配置した系で、回転可能なブラシローラ6cを配置している。クリーニングブレード6aとブラシローラ6cとを並列に作用させることで、クリーニングブレード6aのクリーニング性能が低下した以降も必要なクリーニング性能を確保できるようにしている。
クリーニング装置6Yは、感光ドラム1Yに形成されたトナー像が一次転写部T1で中間転写ベルト10へ転写された後、感光ドラム1Yに残留する転写残トナーをクリーニングする。クリーニング装置6Yは、ウレタンゴムからなる板状部材であるクリーニングブレード6aを支持部材6dによって取り付けている。クリーニングブレード6aは、先端のエッジ部が感光ドラム1Yの表面の移動方向に対してカウンタ方向になるように当接しており、転写残トナーは、エッジ部によって感光ドラム1Yから掻き落とされる。
クリーニングブレード6aを感光ドラム1Yの表面に当接する条件としては、自由長10mm、板厚2mmのクリーニングブレード6aを当接角30°で配置し、不図示のばねにより当接圧4.9N(500gf)を付与している。
クリーニングブレード6aのゴム物性は、クリーニング性能の安定性や、クリーニングブレード6aの耐久性などの観点から、反発弾性率が10〜40%で、硬度が55〜85度の弾性ブレードであることが好ましい。実施例では、反発弾性率が20%、硬度が70度のクリーニングブレード6aを用いた。硬度は、JIS−A硬度でJIS K−6253に基づき測定を行った。反発弾性率は、JIS K−6255に基づき測定を行なった。
クリーニングブレード6aの反発弾性率が10%より低いと、クリーニングブレード6aのエッジ部におけるStick−Slip運動が小さくなり、クリーニングブレード6aの感光ドラム1表面への追従性が低下する。このため、感光ドラム1Y上の転写残トナーを十分に除去回収することができなくなり、クリーニング不良が発生する可能性が出てくる。
更に、クリーニングブレード6aのエッジによって感光ドラム1Y上の放電生成物を十分に除去することができなくなり、連続プリントの1枚目で画像流れの画像不良が発生する可能性が出てくる。トナー樹脂及び外添剤等を十分に除去することができなくなって、帯電ローラ2Yが汚れて帯電性能が低下するフィルミングが発生する可能性も出てくる。
一方、反発弾性率が40%よりも高いと、クリーニングブレード6aのエッジ部のStick−Slip運動が大きくなり、クリーニングブレード6aのエッジ部が感光ドラム1Yの表面で異常振動する。このため、異音やクリーニングブレード6aのめくれ等の問題が発生する可能性が出てくる。更に、異常振動に伴って感光ドラム1Yの表面を局所的に損耗させる可能性も出てくる。
(補助クリーニング手段)
クリーニングブレード6aに対して、感光ドラム1Yの回転方向上流側に、補助クリーニング手段の一例であるブラシローラ6cが配置される。ブラシローラ6cは、感光ドラム1Yに当接した状態で配設されており、独立したモータ22に駆動されて、初期状態では、感光ドラム1Yの表面の移動方向に対してカウンタ方向に周速比100%となるように回転駆動している。ブラシローラ6cは、感光ドラム1Yの表面の移動方向を考慮した場合、周速比(−100%)であり、200%の相対速度で感光ドラム1Yの表面を摺擦する。ブラシローラ6cは、ブラシの繊維に感光ドラム1Yに付着した転写残トナーや紙粉等をからめて感光ドラム1Yから除去する。また、ブラシの繊維及び繊維にからめたトナーで感光ドラム1Y表面を摺擦して感光ドラム1Yに付着した放電生成物やトナー樹脂及び外添剤等を拭い取る。
スクレーパー6fは、ブラシローラ6cに侵入させた状態で固定されたPET樹脂シートであって、ブラシローラ6cに蓄積した転写残トナーや紙粉等を掻き落として、ブラシローラ6cのクリーニング性能を維持させる。
ブラシローラ6cは、平板上の基布に対してブラシを形成する繊維(糸)を織り込み、その後適当な大きさにカットし、スパイラル状に芯金に巻きつけてローラ形状に仕上げる織物型のブラシローラである。ブラシローラ6cのブラシを形成する繊維(糸)としては、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、レーヨン、トリアセテート、キュプラなど様々な素材を利用できる。実施例ではコストなどの面からナイロンを選択した。
(1)ブラシローラ6cのブラシを形成する繊維(糸)には、ナイロンに導電物質であるカーボンブラックを所定量含有させて、抵抗率が104Ω・mから106Ω・mの範囲になるものを用いた。ブラシローラ6cのブラシを形成する繊維(糸)の抵抗率は特に限定されるものではないが、絶縁性のものを使用した場合には感光ドラム1Yに静電メモリを発生させる可能性があるからである。導電性のブラシローラ6cを用いる場合、適宜なバイアスが印加されていても構わないが、実施例では接地電位に接続している。
(2)ブラシローラ6cのブラシを形成する繊維(糸)の太さは、1.0デニールから10.0デニールの範囲が好ましい。ブラシを形成する繊維(糸)の太さが1.0デニール未満の比較的細い繊維(糸)を使用した場合、使用に伴いクリーニング能力が低下する可能性がある。転写残トナー等に対するクリーニング能力は、初期的には維持されるものの、ブラシを形成する繊維(糸)間に転写残トナー等を溜め込みやすく、前述のスクレーパー6fでは十分に除去することができないためである。また、感光ドラム1Yの表面の付着物に対する摺擦能力は、ブラシを形成する繊維(糸)の太さが細いほど低下する傾向にあるため、感光ドラム1Yの表面の付着物を十分に除去できないからである。一方、ブラシを形成する繊維(糸)の太さが10.0デニールより大きい比較的太い繊維(糸)を使用した場合、転写残トナー等に対するクリーニング能力が低下する可能性がある。感光ドラム1Yと当接するブラシを形成する繊維(糸)の先端部分の感光ドラム1Y表面に対する追従性が悪くなるためである。また、感光ドラム1表面の付着物に対する摺擦能力が必要以上大きくなり、感光ドラム1Yの表面をスジ状に傷付けて感光ドラム1Yの寿命を低下させるからである。よって、実施例では、ブラシローラ6cのブラシを形成する繊維(糸)の太さは、5.0デニールのものを選択した。
(3)ブラシローラ6cのブラシを形成する繊維(糸)の植毛密度は、15000本/cm2から40000本/cm2の範囲のものが好ましい。ブラシを形成する繊維(糸)の植毛密度が15000本/cm2未満の場合、ブラシローラ6c上で繊維(糸)の密な部分と疎な部分ができてしまい、転写残トナーに対するクリーニング能力を十分に発揮できない可能性がある。また、ブラシローラ6c上で繊維(糸)の粗密ができているがゆえに、ブラシを形成する繊維(糸)の毛倒れが発生し易くなり、感光ドラム1Y表面の付着物に対する摺擦能力を十分に発揮できない可能性がある。一方、ブラシを形成する繊維(糸)の植毛密度が40000本/cm2より大きい場合、初期的には転写残トナー等に対するクリーニング能力が維持されても、使用に伴いクリーニング能力が低下する可能性がある。ブラシを形成する繊維(糸)間に転写残トナー等を溜め込み易く、前述のスクレーパー6fで十分に除去できないためである。よって、実施例では、ブラシローラ6cのブラシを形成する繊維(糸)の植毛密度は、25000本/cm2のものを選択した。
(4)ブラシローラ6cのブラシを形成する繊維(糸)の長さ(パイル長)は5mm、芯金太さは6mmであるため、ブラシローラ6cの外径は16mmである。
(5)ブラシローラ6cの感光ドラム1Yに対する侵入量は1.5mmである。
補助クリーニング手段には、転写残トナーに対するクリーニング能力や感光ドラム1Y上の付着物に対する摺擦力に加え、感光ドラム1Y表面を傷付けないことや、耐久性も重要な要素として挙げられる。そのため、補助クリーニング手段としては、弾性部材からなる弾性ローラ(特許文献3)や、繊維からなるブラシローラ(特許文献4)が好ましい。
従って、補助クリーニング手段として以下のような弾性ローラを用いても構わない。弾性ローラは、芯金上に可澆性部材としてのゴムあるいは発泡体の弾性層を形成することにより作成される。弾性層はウレタン等の樹脂、硫化剤、発泡剤等により処方され、芯金の上にローラ状に形成後、必要に応じて切削、表面研磨して作成することができる。弾性ローラは、導電性のものが好ましく、カーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材あるいは発泡させたもの、または導電性物質を分散せずに導電性物質と併用してイオン導電性の材料を用いたものも使用できる。弾性ローラの材質としては、弾性発泡体以外にも、弾性体の材料として、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ウレタンゴム、シリコンゴム等が挙げられる。弾性ローラ表面は、摺擦力や異物除去能力を高めるため、平均セル径が5〜300μmの微小なセル又は凹凸を有していることも好ましい。セルは単泡、連泡のいずれでも構わない。
(実験結果)
図5は画像形成枚数の増加に伴うクリーニングブレードの反発弾性率の変化の説明図である。図6は画像形成枚数の増加に伴うトナーに対するクリーニング性能の変化の説明図、図7は画像形成枚数の増加に伴う放電生成物に対するクリーニング性能の変化の説明図である。
図2に示すように、電荷移動層硬化膜を形成した感光ドラム1Yの表面は、従来の感光ドラムと比較して非常に硬質であるため、クリーニングブレード6aの摺擦を受けてもほとんど摩耗しない。
図4に示すように、従来の感光ドラムBは、クリーニングブレード6aによって表面層が摩耗し易いため、通紙枚数が50000枚の時点で摩耗量が10μm、10000枚当たり摩耗量が2.0μmである。
これに対して、実施例で用いた感光ドラムAは、表面層が硬質であるため、通紙枚数が50000枚の時点で摩耗量が1.25μm、10000枚当たり摩耗量が0.25μmであり、従来の感光ドラムBと比較して1/8に過ぎない。すなわち、感光ドラムの摩耗量だけで考えると、実施例で用いた感光ドラムAの寿命は、従来の感光ドラムBの8倍になる。
前述したように、画像形成を繰り返し行なった場合、帯電ローラ2Yを用いて感光ドラム1Y表面を帯電処理する時に発生するオゾンや空気中の水分に起因して、クリーニングブレード6aの加水分解による反発弾性率の低下や永久変形が発生する。
クリーニングブレード6aの反発弾性率の低下や永久変形が生じた場合、クリーニングブレード6aの感光ドラム1表面に対する圧接力が低下し、クリーニングブレード6aのエッジ部のStick−Slip運動が小さくなる。その結果、感光ドラム1Y上の転写残トナーを十分に除去回収できなくなり、クリーニング不良が発生する可能性が出てくる。また、感光ドラム1Yの表面から放電生成物、トナー樹脂、外添剤等をクリーニングブレード6aによって十分に除去できなくなる結果、画像流れやフィルミングが発生する可能性が出てくる。
そこで、クリーニングブレード6aにブラシローラ6cを併設した画像形成装置100において、高濃度の画像の連続画像形成を行なって、クリーニングブレード6aのクリーニング性能の低下状態を加速実験した。図5は温湿度が23℃/50%(絶対水分量10.5g/m3)の環境下で連続画像形成を行った場合の、画像形成枚数に対するクリーニングブレード6aの反発弾性率の変化を実験した結果である。図6は、このときのクリーニングブレード6aの転写残トナーに対するクリーニング能力の変化を示しており、図7は、このときのクリーニングブレード6aの放電生成物に対するクリーニング能力の変化を示している。
図5に示すように、クリーニングブレード6aの初期の反発弾性率は20%であり、画像形成枚数が50000枚までは大きな変化は見られない。しかし、50000枚以降では、クリーニングブレード6aの加水分解が進行するため、反発弾性率は100000枚で16%、150000枚で8%と大きく低下していく。
そして、クリーニングブレード6aの反発弾性率が10%よりも低くなると、上述したように、転写残トナーに対するクリーニング能力や、感光ドラム1Y表面の付着物に対する摺擦能力の低下が問題になる。反発弾性率は、JIS K−6255に基づき測定を行なった。
図6に示すように、クリーニングブレード6aをすり抜けて感光ドラム1Yに連れ回るトナー量は、図5で示したクリーニングブレード6aの反発弾性率の低下に伴って増加している。特に、画像形成枚数が150000枚以降では、クリーニングブレード6aの反発弾性率が10%以下となるため、すり抜けトナー量も2.0%以上となる。許容レベルは約1.5%未満であるため、現像時に発生するかぶりと同様に白地部では許容できないほど転写残トナーが目立ってしまう。
図7に示すように、クリーニングブレード6aで除去できないで感光ドラム1Yに残留する放電生成物は、図5で示したクリーニングブレード6aの反発弾性率の低下に伴って増加している。放電生成物の残留量は、感光ドラム1Y表面における水の接触角で評価しており、放電生成物の残留量が多いほど表面の親水性が高まって接触角は小さくなる。特に、画像形成枚数が150000枚以降では、クリーニングブレード6aの反発弾性率が10%以下となるため、感光ドラム1Y表面の接触角も80°以下となる。許容レベルは約80°以上であるため、画像流れや濃度むらが発生してしまう。
ここで、クリーニングブレード6aをすり抜けて感光ドラム1Yに連れ回るトナー量は、以下の方法を用いて測定した。
予め決められた画像形成枚数に到達した時点で、感光ドラム1Y上にトナー載り量が約0.6mg/cm2となるA3サイズ1枚分のトナー像を形成する。そして、一次転写ローラ5Yによる転写作用を与えずにトナー像の全量をクリーニング装置6Yに送り込んでクリーニングブレード6aによりクリーニングする。トナー像がクリーニングブレード6aを通過した時点で、画像形成装置100を停止させ、クリーニングブレード6a通過後の感光ドラム1Y上に粘着テープを貼付して剥離することにより、クリーニングブレード6aをすり抜けたトナーを回収する。
ここで、すり抜けたトナー量を数値化する方法としては、かぶり測定と同じ方法を用いた。つまり、すり抜けたトナーを回収したテープを白地の紙上に貼り付け、反射式濃度計(東京電色社製リフレクトメーターTC−6DS)により反射濃度Dsを測定する。次に、テープのみを白地の紙上に貼り付け、反射濃度Drを測定する。そして、DsとDrの差分をDsで除した数値をすり抜けトナー量と定義した。
図6の縦軸は以上のようにして求められたすり抜けトナー量(%)で表示している。
また、感光ドラム1Y表面における水の接触角は、接触角計CA−DS型(協和界面化学(株))を用いて測定した。感光ドラム1Yの表面の接触角とは、感光ドラム1Yの表面に例えば一定大きさの純水などの液滴を接触させた時に、感光ドラム表面と液面とのなす角度をいう。そして、感光ドラム1Yの接触角が大きい場合、感光ドラム1表面が水に対して濡れにくい、つまり撥水性が強いことを示している。
ここで、画像形成装置100は、上述したように、ブラシローラ6cの感光ドラム1に対する周速比が(−100%)に固定され、画像形成枚数の累積に寄らず周速比一定で回転する。
従って、感光ドラム1Yが硬質の表面層を有している場合、クリーニングブレード6cに加えてブラシローラ6cを設けたとしても、従来の感光ドラムの寿命を大きく超えた画像形成枚数まで使用すると、出力画像の品質が低下し易くなる。
(制御手段)
図8は実施例1におけるブラシローラの回転速度の制御の説明図、図9はブラシローラの周速比に対する感光ドラムの摩耗量の説明図である。図10は実施例1の制御による転写残トナーのクリーニング性能の説明図、図11は実施例1の制御による放電生成物のクリーニング性能の説明図である。
図2に示すように、ブラシローラ6cの回転速度を固定とする場合、画像形成を長期にわたり繰り返し行った時に発生するクリーニングブレード6aのクリーニング能力の低下を補うことができるようにブラシローラ6cの回転速度が設定される。クリーニングブレード6aとブラシローラ6cとを並列に作用させ、クリーニングブレード6aのクリーニング性能が低下した以降も必要なクリーニング性能を確保できるようにするためである。
しかし、この場合、クリーニングブレード6aが十分クリーニング能力を発揮する初期の段階でも、ブラシローラ6cは、感光ドラム1Yを長期使用後と同じように摺擦・摩耗してしまう。
この結果、長期使用後の感光ドラム1Yの摩耗量は適正となるが、クリーニングブレード6aの初期の段階では必要以上に感光ドラム1Yを摩耗することとなり、感光ドラム1Yの寿命を短縮させることとなる。感光ドラム1Yの摩耗量は、クリーニングブレード6aによる感光ドラム1Yの摩耗量とブラシローラ6cによる感光ドラム1Yの摩耗量の合計となるからである。
そこで、実施例1では、クリーニングブレード6aの耐用期間の後期において初期よりも摺擦速度を高めるように補助クリーニング手段(6c)を制御する制御手段(21)を備えている。
制御部21は、クリーニング装置6Y及び感光ドラム1Yを新品交換した後(厳密にはクリーニングブレード6aを交換した後)の画像形成の累積枚数に応じて、ブラシローラ6cの感光ドラム1Yに対する周速比を可変制御する。
制御部21は、モータ22を制御してブラシローラ6cの回転速度を可変制御する。具体的には、モータ22にはステッピングモーターが使用されており、制御部21から送出するパルス周波数に応じた回転速度でモータ22を回転させる。
制御部21は、画像形成カウンタ23に画像形成枚数の累積値をカウントする。画像形成カウンタ23は、クリーニングブレード6aの交換直後にリセットされる。制御部21は、画像形成カウンタ23の累積値を参照して画像形成枚数が50000枚累積するごとに、段階的にモータ22の回転数を変化させて、ブラシローラ6cの感光ドラム1Yに対する周速比を増加させる。画像形成カウンタ23は、通紙枚数をカウントする。具体的には、画像形成装置100内に内蔵された制御部21のCPUで、クリーニングブレード6a交換後の通紙枚数をA4サイズで1枚(A3サイズなら2枚)としてカウントし、随時画像形成カウンタ23のメモリに積算させていく。使用量としては、通紙枚数に限定されるものでなく、感光ドラム1Yの回転数あるいは回転時間、帯電ローラ2Yの電圧印加時間、現像装置4Yの現像スリーブ4bの回転数あるいは回転時間などを用いても良い。
制御部21は、画像形成カウンタ23のメモリに積算された使用量に応じて、予め決められた図8で示した画像形成枚数と周速比の関係から、適正な周速比でブラシローラ6cが回転するように制御を実施している。
図8に示すように、制御部21は、クリーニングブレード6aの交換後、画像形成枚数が50000枚までは周速比を100%とするが、50000枚から100000枚では周速比を110%にする。そして、画像形成枚数が100000枚から150000枚では周速比を130%、画像形成枚数が150000枚以降では周速比を150%という具合に徐々に周速比を増加させている。
図9は、ブラシローラ6cの感光ドラム1Yに対する周速比と感光ドラム1Yの摩耗速度との関係を示している。摩耗速度は、感光ドラム1Y表面を摩耗する能力、つまり感光ドラム1Yの表面から放電生成物、トナー樹脂、外添剤等を掻き取る摺擦能力を示す。
図9に示すように、ブラシローラ6cの周速比は、ブラシローラ6cのクリーニング性能に大きく影響する。周速比100%では摩耗速度が0.05μm/10000枚と非常に少ないので、クリーニングブレード6a交換直後から画像形成枚数が50000枚までは、ブラシローラ6cがクリーニング装置6Yの摺擦能力にあまり寄与しない。
しかし、周速比150%では摩耗速度が0.25μm/10000枚に達してクリーニングブレード6aの摺擦能力とほぼ同じとなる。このため、画像形成枚数が150000枚以上では、加水分解によってクリーニングブレード6aの摺擦能力が低下した分を、ブラシローラ6cが摺擦能力で補うことが可能となる。
図8に示すように、制御部21は、ブラシローラ6cの周速比を段階的に高めて150000枚以降で周速比を150%にする。このため、初期から150%一定で回転駆動する場合と比べて、必要以上の摺擦能力を感光ドラム1Yに与えなくて済む。従って、感光ドラム1Yの摩耗量を減らして感光ドラム1Yの寿命をより長くすることが可能となっている。
図10は、温湿度が23℃/50%(絶対水分量10.5g/m3)の環境下で画像形成枚数の累積に伴うクリーニング能力の変化を実験した結果である。ブラシローラ6cの周速比を100%一定とした場合(図中○)は、前述のように画像形成枚数の増加に伴って、クリーニング能力が低下して、すり抜けトナー量が増加する。
これに対し、実施例1の段階的に周速比を高める制御(図中●)では、画像形成枚数の増加に寄らず安定したクリーニング能力を維持できる。すり抜けトナー量が多少増加するものの、画像にほとんど影響ないレベル(閾値である1.5%を大きく下回っている)に止まる。
図11は、温湿度が23℃/50%(絶対水分量10.5g/m3)の環境下で画像形成枚数の累積に伴う摺擦能力の変化を実験した結果である。ブラシローラ6cの周速比を100%一定とした場合(図中○)では、前述のように画像形成枚数の増加に伴って、摺擦能力が低下して、感光ドラム1Yの接触角が低下する。
これに対し、実施例1の段階的に周速比を高める制御(図中●)では、画像形成枚数の増加に寄らず安定した摺擦能力を維持できる。感光ドラム1Yの接触角も多少減少するものの、問題ないレベル(閾値である80°を上回っている)に止まる。
実施例1の制御によれば、画像形成枚数の累積に伴ってブラシローラ6cの周速比を段階的に高めることにより、クリーニングブレード6aの反発弾性率の低下や永久変形が生じてもクリーニング装置6Yのクリーニング能力を維持できる。これにより、クリーニング不良の発生を防止すると共に、放電生成物に起因する画像ながれや外添剤に起因する帯電ローラ2Yのフィルミングを防止して、感光ドラム1Yの長寿命化,メンテナンスフリーを実現し、ランニングコストを低減できる。
<実施例2>
図12は実施例2におけるブラシローラの回転速度制御のブロック図、図13は温度湿度の違いによるクリーニングブレードの劣化速度の違いの説明図である。
実施例1では、感光ドラムの周囲の温度湿度とは無関係に、画像形成枚数の累積に伴ってブラシローラ6cの周速比を段階的に高めた。しかし、高湿度環境ではクリーニングブレード6aの加水分解の進行が早まるため、低湿度環境よりもブラシローラ6cの周速比を速めに高めることが望ましい。そこで、実施例2では、感光ドラムの周囲の温度湿度に応じてブラシローラ6cの周速比を速める画像形成の累積枚数を変化させている。実施例2の画像形成装置の基本構成は、図1〜図3を参照して説明した実施例1のものと同様である。
実施例2では、空気中の水分量を検出する検出手段を備え、検出された空気中の水分量が多い状態では、少ない状態よりも等しい使用の累積時間に対するブラシローラ6cの回転速度の増加量を大きくする。
図12に示すように、画像形成装置100内のクリーニング装置6Yの近傍に温度湿度センサ24が配置され、制御部21は、温度湿度センサ24の出力を取り込んで空気中の絶対水分量を演算する。制御部21は、画像形成カウンタ23に保持されたクリーニングブレード6aの交換後の画像形成枚数のカウント値と、温度湿度センサ24により測定した絶対水分量とに基づいてブラシローラ6cの周速比を設定する。制御部21は、モータ22を制御して設定した周速比の回転数でブラシローラ6cを回転させる。
図13は、温度湿度が23℃/50%の環境下(図中○)の環境下と、温度湿度が30℃/80%(図中●)の環境下とで、画像形成枚数に対するクリーニングブレード6aの反発弾性率の変化を実験した結果である。ブラシローラ6cの周速比を100%一定として画像形成装置100を使用して実験した。
ここで、温度湿度23℃/50%は、絶対水分量10.5g/m3に相当し、温度湿度30℃/80%は、絶対水分量21.6g/m3に相当している。
図13に示すように、高温高湿である30℃/80%の環境下では、標準環境である23℃/50%の環境下と比較して、少ない画像形成の累積枚数でクリーニングブレード6aの反発弾性率の低下が進行する。具体的には、クリーニング能力を維持する上での閾値である反発弾性率が10%を下回るタイミングが、23℃/50%では画像形成枚数150000枚前後であるのに対し、30℃/80%では画像形成枚数100000枚前後になる。
これは、クリーニングブレード6aの加水分解が、周囲の空気中の水分量に依存しているためである。クリーニングブレード6aの加水分解の進行度合いが、画像形成装置100を使用する環境の空気中の絶対水分量により異なるからである。
温度湿度センサ24は、クリーニング装置6Yの周囲の空気の温度と相対湿度とを検出する。相対湿度RH(%)は、水蒸気圧をE(Pa)とし、飽和水蒸気圧をEs(Pa)として次式(1)で表すことができる。
RH(%)=(E/Es)×100 …(1)
制御部21は、温度湿度センサ24により検出された相対湿度RH(%)と、温度により既知である飽和水蒸気圧Es(Pa)とから、水蒸気圧E(Pa)を算出する。
制御部21は、水蒸気圧E(Pa)と、温度湿度センサ24により検出された温度T(℃)とを用いて次式(2)により空気中の絶対水分量Mを算出する。
M(g/m3)=(0.749×10−2×E)/(1+0.00366×T) …(2)
実施例1では、図10に示した通紙枚数とクリーニング補助手段6cの周速比の関係から、必要なクリーニング補助手段6cの周速比を決定した。
制御部21は、A4サイズ横送りの画像形成を1枚としてカウントし、絶対水分量Mを用いて次式(3)により画像形成枚数Nのカウントに重み付けを行う。
N(枚)=(α1)×A)+(α2×B)+(α3×C)+(α4×D)+(α5×E) …(3)
(3)式中、α1、α2、α3、α4、α5は表1に示す各区分の絶対水分量に応じた重み係数であり、A、B、C、D、Eは絶対水分量の各区分の環境下における画像形成枚数である。
制御部21は、式(3)によって重み付けをした枚数で図8のようにブラシローラ6cの周速比を設定する。
その結果、例えば、高温高湿である30℃/80%の環境下で連続して80000枚の画像形成を実行した場合、実施例1では、図8に示すように、ブラシローラ6cの周速比は110%に設定される。これに対して、実施例2では、式(3)の重み付けにより、80000枚の画像形成は、画像形成カウンタ23に120000枚としてカウントされる。これにより、図8に示すように、ブラシローラ6cの周速比は130%に設定される。
実施例2の制御を実施することで、画像形成装置100を使用する雰囲気環境により、クリーニングブレード6aの加水分解が早く進行した場合でも、クリーニング装置6Yのクリーニング能力を維持することが可能となる。
実施例2の制御によれば、温度湿度の異なる環境下で画像形成装置が使用された場合でもクリーニングブレード6aのクリーニング性能の低下を正確に見積もった適正なブラシローラ6cの周速比を設定できる。これにより、初期状態でのブラシローラ6cの周速比を低く抑えつつ、高温高湿で画像形成装置が使用された場合でも、クリーニング装置6のクリーニング性能の低下に起因するクリーニング不良と画像流れ等の画像不良とを発生させないで済む。
なお、像担持体が等しい使用の累積時間であっても、画像形成時に空気中の水分量が多いと画像流れが発生し易い。このため、検出された空気中の水分量が多いほどブラシローラ6cの摺擦速度を高めることが望ましい。
すなわち、重み付けされた画像形成枚数の過去の累積値が等しい場合でも、現在の空気中の水分量が多いほど、画像流れは発生し易くなる。
上述したように、画像流れは、感光ドラムの表面が放電生成物によって吸湿することにより発生するため、放電生成物の付着状態(クリーニング状態)が等しくても、空気中の水分量が多いほど吸湿量が増えて画像流れが発生し易くなる。
そこで、重み付けされた画像形成枚数の過去の累積値に応じて設定されるブラシローラ6cの周速比に対して、現在の空気中の水分量に応じた補正を行う。ここでは、空気中の水分量が20g/m3以上の場合にブラシローラ6cの周速比を10%割り増しし、5g/m3未満の場合にブラシローラ6cの周速比を10%減らしている。
<実施例3>
図14は実施例3のプロセスカートリッジを用いた制御の説明図である。実施例3の基本構成は、実施例1のものと同様であるため、図14中、実施例1と共通する構成には図2と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
実施例1、実施例2では、画像形成装置の本体に準備した画像形成カウンタを用いてクリーニングブレード交換後の画像形成枚数をカウントした。しかし、クリーニング装置が画像形成装置から取り外された場合、クリーニングブレード交換後の画像形成枚数のカウントが途切れてしまい、別の画像形成装置に取り付けた際に適正なブラシローラ6cの周速比を設定できない。このため、実施例3では、画像形成カウンタが、クリーニング装置を含む交換ユニットと一体に画像形成装置に交換、着脱されて、運搬、保管されるように、画像形成カウンタを不揮発メモリで構成して交換ユニットに付設した。
図14に示すように、感光ドラム1Yと帯電ローラ2Yと現像装置4Yとクリーニング装置6Yとは、一体的に着脱が可能な交換ユニットであるプロセスカートリッジ(プロセスユニット)30に組み立てられている。プロセスカートリッジ30は、図1に示す画像形成装置100に対して各色ごとに一体的に着脱して交換及び再装着が可能である。
プロセスカートリッジ30に組み込まれたクリーニング装置6Yは、周速比が可変制御されるブラシローラ6cを有しており、プロセスカートリッジ30には不揮発メモリ23Aが固定して取り外し不可能に付設されている。
不揮発メモリ23Aは、読み込み及び書き込み可能なメモリ素子で構成され、プロセスカートリッジ30が装着された時に、制御部21と通信を行い、プロセスカートリッジ30の新旧及び画像形成枚数を読み取られる。
制御部21は、プロセスカートリッジ30を用いた画像形成枚数をカウントして不揮発メモリ23Aに随時書き込む動作を行なう。実施例2と同様に、絶対水分量Mを用いて重み付けを行った画像形成枚数を書き込む。
例えば、新品のプロセスカートリッジ30を本体に装着した時には、プロセスカートリッジ30の不揮発メモリ23Aから画像形成枚数が0で、プロセスカートリッジ30が新品であるという情報が制御部21に送信される。
その後、画像形成装置100でA4サイズ横送りの画像を重み付け後で1000枚画像形成した場合、制御部21は、不揮発メモリ23Aの画像形成枚数データを0から1000に上書きする。
プロセスカートリッジ30の不揮発メモリ23Aに書き込まれた画像形成枚数は、プロセスカートリッジ30が本体から抜き取られた後も保存される。そして、次回画像形成装置本体に装着された時に、プロセスカートリッジ30の画像形成枚数が1000であるという情報が制御部21に送信される。
制御部21は、プロセスカートリッジ30の不揮発メモリ23Aとの通信により、プロセスカートリッジ30に搭載されたクリーニングブレード6aを用いた画像形成枚数を読み込む。そして、画像形成枚数に応じた周速比を設定してモータ22を制御することにより、クリーニングブレード6aの劣化状態に応じた適正な回転速度でブラシローラ6cの回転させる。
実施例3の制御によれば、プロセスカートリッジ30が画像形成装置から抜き出された場合でも、プロセスカートリッジ30と一体にクリーニングブレード6aの劣化状態を示す情報を利用できる。このため、プロセスカートリッジ30を画像形成装置に再装着した場合や別の画像形成装置に装着した場合に、ブラシローラ6cの周速比を適正に設定して、クリーニング不良と画像流れ等の画像不良とを防止できる。そして、初期状態でのブラシローラ6cの周速比を低く抑えて、感光ドラムの長寿命化とメンテナンスフリーを実現して画像形成装置のランニングコストを低減できる。