JP5288826B2 - 有機半導体素子及びその製造方法 - Google Patents

有機半導体素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁層の上に有機半導体層を設けた有機半導体素子及びその製造方法に関するものである。
近年、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)は、大きな進歩を遂げつつある。有機TFTを用いる利点は、無機TFTに比べ、低温でTFTを製造することができ、また安価な樹脂基板である可撓性基板を使用できることにある。このような利点によって、有機TFTは、スマートカード、電子タグ、及びディスプレイなどの低コストIC技術への応用が期待されている。
一般的な有機TFTは、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層から構成されている。ゲート電極に印加する電圧(ゲート電圧:Vg)を変えることにより、ゲート絶縁膜と有機半導体層の界面の電荷量を過剰あるいは不足にし、ソース電極/有機半導体層/ドレイン電極の間を流れるドレイン電流(Id)を変化させてスイッチングを行う。
有機TFTの性能を示す物理量として、移動度、オン/オフ比、及びゲート電圧しきい値が用いられる。移動度は、一般的には、Id1/2とVgが線形関係にある飽和領域における、Id1/2−Vg曲線の傾きから算出され、電流の流れやすさの度合いを示す指標である。オン/オフ比は、Vgを変化させたときの最小Idと最大Idの強度比で表わされる。ゲート電圧しきい値は、上記飽和領域におけるId1/2−Vg曲線に接する曲線のX切片で定義され、スイッチングが起こる電圧を示す。
有機TFTの特性を向上させるため、有機半導体層の結晶状態や配向、ゲート絶縁膜の改善など様々な試みがなされている。
特許文献1には、ゲート絶縁膜に高誘電率材料であるタンタル陽極酸化膜を用いた有機半導体装置が示されている。しかしながら、この手法により移動度は向上させることができるが、高品質のタンタル陽極酸化膜を得ることが難しく、ゲートリーク電流が生じ、オン/オフ比が十分でないという問題がある。
特許文献2には、ゲート絶縁膜と別に高分子層が設けられており、この高分子層がメタクリル酸メチルとジビニルベンゼンの共重合体からなる有機半導体装置が示されている。
特許文献3には、ゲート絶縁膜と有機半導体層との間に、厚さ40nm以下の非フッ素化された有機高分子層を設けた有機半導体装置が開示されている。
また、非特許文献1には、無機ゲート絶縁膜に、ポリメタクリル酸メチルの高分子層を形成することにより、オン/オフ比が改善する方法が示されている。
しかしながら、従来の方法では、オン/オフ比を向上させる効果が認められるものの、実用に十分な移動度が得られない。また、材料合成を含めた半導体装置の作製プロセスが簡便ではないという問題がある。
特開2003−258261号公報 特開2005−136383号公報 特表2005−509298号公報 A.-L.Deman,JTardy "Organic Electronics",Vol.6,78-84,2005年
本発明の目的は、絶縁層の上に有機半導体層を設けた有機半導体素子において、半導体特性に優れた有機半導体素子及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、絶縁層と、絶縁層上に設けられる有機半導体層とを備える有機半導体素子であって、絶縁層と有機半導体層の間に、以下の一般式で表わされる共重合体からなる高分子層が設けられていることを特徴としている。
Figure 0005288826
(式中、R、R及びRは、互いに同一であっても異なってもいてもよく、水素原子またはアルキル基を示す。x及びyは、0.001≦y/x<0.1の関係を満足する。)
本発明においては、絶縁層と有機半導体層の間に上記一般式で表わされる共重合体からなる高分子層が設けられている。この共重合体は、疎水性基であるエステル基を有するユニットと、親水性基であるカルボン酸基を有するユニットを有しており、これらのユニットを有する両親媒性の共重合体からなる高分子層を絶縁層と有機半導体層の間に設けることにより、有機半導体層における移動度を向上させ、半導体特性(オン/オフ比)を高めることができる。カルボン酸基を有するユニットを有することにより、有機半導体層との界面近傍に伝導キャリアとして電荷が十分に蓄積され、このため、移動度を高めることができるものと思われる。また、高分子層を形成する共重合体がカルボン酸基を有するユニットを有しているので、高分子層と絶縁層との親和性を高めることができ、ピンホールの少ない均一な成膜が可能となる。エステル基は、金属表面に化学吸着することから、ゲート絶縁膜の欠陥により露出しているゲート電極の金属表面を覆うように成膜する。これらの効果により、ゲートリーク電流を効果的に低減し、オン/オフ比を向上させる。また、エステル基を有する共重合体は表面エネルギーが小さいことから、グレインサイズが大きな結晶性の高い有機半導体層を形成できるものと思われ、移動度を高めることができる。
本発明において、エステル基を有するユニットの割合xと、カルボン酸基を有するユニットの割合yは、上述のように、0.001≦y/x<0.1の関係を満足する。y/xが0.001未満であると、半導体特性を高めることができず、高い移動度が得られない。また、y/xが0.1以上になると、半導体特性が低下し、移動度が低くなる。
共重合化率であるy/xは、さらに好ましくは、0.005以上である。また、共重合化率y/xは、0.02以下であることがさらに好ましい。
また、本発明における共重合体は、カルボン酸基を有するユニットの割合が上記の範囲内とされているため、有機溶剤への溶解性が高く、成膜性のよい高分子材料とすることができる。
上記一般式におけるR、R及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子またはアルキル基を示す。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。また、R、R及びRは芳香環を有するアルキル基であってもよい。この場合、芳香環上に置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、p−トリル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。置換基は、複数有していてもよい。R、R及びRは特に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。
上記共重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸との共重合体が挙げられる。特に好ましくは、メタクリル酸メチルとメタクリル酸の共重合体が好ましく用いられる。
本発明において、高分子層の厚みは、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは、50nm以下である。高分子層の厚みが厚くなり過ぎると、半導体特性が低下し、移動度が低くなるため好ましくない。誘起電界の効果は、ゲート絶縁膜と高分子層との界面から離れる程小さくなると考えられるので、高分子層の厚みはできるだけ薄いことが好ましい。高分子層の厚みは理論的には、単分子レベルまで薄くすることが可能である。しかしながら、極めて薄い膜を均一な厚さで形成することは困難である場合があるため、成膜の容易性の観点からは、1nm以上であることが好ましく、さらには5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。従って、本発明における高分子層の厚みは、1〜100nmの範囲内であることが好ましく、さらには1〜50nmの範囲内であることが好ましい。
本発明における絶縁層の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどの無機材料が挙げられる。また、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリパラキシレン、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、シルセスキオキサン、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリサルホン、ポリカーボネートなどの有機材料を用いて絶縁層を形成してもよい。絶縁層を形成する材料としては、無機材料が特に好ましく用いられる。絶縁層を形成する材料として無機材料を用いた場合に、特に本発明の効果がより一層得られる。
本発明において、有機半導体層を形成する有機半導体材料としては、電子受容性機能を有する材料と、電子供与性機能を有する材料のいずれも用いることができ、例えば、以下に例示するような材料が利用できる。上記電子受容性機能を有する材料としては、例えば、ピリジンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、キノリンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ベンゾフェナンスロリン類およびその誘導体によるラダーポリマー、シアノ− ポリフェニレンビニレンなどの高分子、フッ素化無金属フタロシアニン、フッ素化金属フタロシアニン類およびその誘導体、ペリレンおよびその誘導体( PTCDA 、PTCDI など)、ナフタレン誘導体(NTCDA 、NTCDIなど)、バソキュプロインおよびその誘導体などの低分子有機化合物が利用できる。また、電子供与性機能を有する材料としては、チオフェンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フェニレン− ビニレンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フルオレンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ベンゾフランおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、チエニレン− ビニレンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、トリフェニルアミンなどの芳香族第3級アミンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、カルバゾールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ビニルカルバゾールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ピロールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、アセチレンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、イソチアナフェンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ヘプタジエンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマーなどの高分子、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン類およびそれらの誘導体、ジアミン類、フェニルジアミン類およびそれらの誘導体、ルブレン、ペンタセンなどのアセン類およびその誘導体、ポルフィリン、テトラメチルポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、テトラベンズポルフィリン、モノアゾテトラベンズポルフィリン、ジアゾテトラベンズポルフィン、トリアゾテトラベンズポルフィリン、オクタエチルポルフィリン、オクタアルキルチオポルフィラジン、オクタアルキルアミノポルフィラジン、ヘミポルフィラジン、クロロフィル等の無金属ポルフィリンや金属ポルフィリンおよびそれらの誘導体、シアニン色素、メロシアニン色素、スクアリリウム色素、キナクリドン色素、アゾ色素、アントラキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン系色素などの低分子有機化合物が利用できる。金属フタロシアニンや金属ポルフィリンの中心金属としては、マグネシウム、亜鉛、銅、銀、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、白金、鉛などの金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物などを用いることができる。
本発明の有機半導体素子としては、例えば、ゲート電極と、半導体層と、ゲート電極及び半導体層の間に設けられるゲート絶縁膜と、半導体層と接するように設けられるソース電極及びドレイン電極とを備える電界効果トランジスタが挙げられる。このような電界効果トランジスタにおいて、ゲート絶縁膜が上記絶縁層であり、半導体層が上記有機半導体層である。
電界効果トランジスタに、本発明の有機半導体素子を適用することにより、高い移動度を得ることができ、オン/オフ比を高め、良好なトランジスタ特性を得ることができる。
ゲート電極の材料としては、導電性の材料であれば、特に限定されるものではないか、例えば、金、白金、銅、銀、パラジウム、クロム、モリブデン、チタン、ニッケル、アルミニウムなどの金属材料や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物などの無機材料、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの有機材料、カーボン材料などが挙げられる。金属材料は、合金を用いてもよい。
また、本発明におけるソース電極及びドレイン電極は、上記ゲート電極を形成する材料と同様の材料を用いることができる。
また、本発明において、有機半導体素子を基板上に形成する場合には、基板材料を用いることができる。このような基板材料としては、有機材料及び無機材料など様々な材料から選択することができる。具体的には、シリコン、アルミニウム、ガラス、アルミナ焼結体などの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドなどの有機材料、ガラス繊維で強化された有機材料などの複合材料が挙げられる。基板として導電性の材料を用いる場合には、基板を上記ゲート電極として用いることもできる。
本発明の製造方法は、上記本発明の有機半導体素子を製造することができる方法であり、絶縁層を形成する工程と、絶縁層の上に、上記共重合体を含有した溶液を塗布して高分子層を形成する工程と、高分子層の上に有機半導体層を形成する工程とを備えることを特徴としている。
本発明の製造方法においては、上述のように共重合体を含有した溶液を塗布して高分子層を形成している。共重合体を塗布する方法は特に限定されるものではないが、例えば、スピンコート法、スプレー塗装法、ディップコート法などが挙げられる。共重合体を溶解する溶剤としては、一般に有機溶剤が用いられる。有機溶剤としては、共重合体が溶解する溶剤であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1−クロロブタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化溶剤類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチルなどの有機酸エステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ニトロベンゼン、アセトニトリル、N ,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの含窒素有機溶剤類、二硫化炭素、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄有機溶剤類などが挙げられる。有機溶剤は単独で用いてもよいし、複数の種類を混合して用いてもよい。
本発明の製造方法においては、共重合体を含有した溶液を塗布して高分子層を形成している。しかしながら、本発明における高分子層は、このような方法により形成された高分子層に限定されるものではなく、他の方法を用いて形成した高分子層であってもよい。
本発明において、絶縁層及び有機半導体層の形成方法は、特に限定されるものではなく、使用する材料に応じて適宜公知の方法を用いて形成することができる。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー塗布法、印刷法などが挙げられる。
また、有機半導体素子として電界効果トランジスタを製造する場合、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極も、使用する材料に応じて公知の方法により、形成することができる。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー塗布法、印刷法などが挙げられる。
本発明における絶縁層、高分子層、有機半導体層、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極は、フォトリソグラフィー法とドライエッチング法またはウェットエッチング法の組み合わせで、パターン加工を行うことができる。
本発明によれば、動作が安定で、低電圧で駆動することができる、半導体特性に優れた有機半導体素子とすることができる。
本発明を電界効果トランジスタに適用することにより、移動度が高く、かつオン/オフ比が高いトランジスタ特性に優れた電界効果トランジスタとすることができる。
本発明の製造方法によれば、半導体特性に優れた有機半導体素子を簡便にかつ効率良く製造することができる。
以下、本発明を具体的な実施形態により説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明に従う一実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図である。図1に示すように、基板1の上には、ゲート電極2が形成されている。ゲート電極2の上にはゲート絶縁膜3形成されている。ゲート絶縁膜3の上には、高分子層4が形成されている。高分子層4の上には、有機半導体層5が形成されている。
有機半導体層5の上には、ソース電極6及びドレイン電極7が形成されている。ソース電極6及びドレイン電極7並びに露出している有機半導体層5を覆うように、保護層8が形成されている。保護層8は、素子全体を保護するため設けられているものであり、必要に応じて設けられるものであり、省略することも可能である。保護層8を形成する材料は、特に限定されるものではないが、一般的には、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの有機材料と、ガラス、アルミナなどの無機化合物との複合材料を用いることができる。
高分子層4は、本発明に従う共重合体を含有した溶液を塗布することにより、形成することができる。方法としては、上述のように、スピンコート法、スプレー塗布法、及びディップコート法などが挙げられる。
ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、有機半導体層5、ソース電極6、ドレイン電極7、及び保護層8は、上述のように、使用する材料に応じて、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー塗布法、印刷法などにより形成することができる。
また、ゲート絶縁膜3は、ゲート電極2の表面を酸化する方法により形成してもよい。
本実施形態においては、ゲート絶縁膜3の上に、高分子層4を形成し、高分子層4の上に有機半導体層5が形成されている。高分子層4は、カルボン酸基を有するユニットを適当な量含んでいるので、チャネル領域の近傍において、電荷を伝導キャリアとして十分に蓄積させることができ、有機半導体層5における移動度を高めることができる。
また、高分子層4を形成する共重合体は、カルボン酸基を有するユニットを含んでいるので、ゲート絶縁膜3との親和性に優れている。また、ゲート絶縁膜3の上に、高分子層4を設けているので、ゲート絶縁膜3の上に直接有機半導体層5を形成する場合に比べ、有機半導体層を形成する表面を疎水化することができる。このため、有機半導体層5の結晶性を高めることができ、移動度やオン/オフ比などのトランジスタ特性を高めることができる。
図2は、本発明に従う他の実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図である。
本実施形態においては、高分子層4の上に、ソース電極6及びドレイン電極7が形成されており、有機半導体層5は、ソース電極6、ドレイン電極7及び高分子層4を覆うように形成されている。このようにして形成された有機半導体層5の上に、保護層8が設けられている。
本実施形態においても、有機半導体層5とゲート絶縁膜3の間に、高分子層4が設けられているので、高い移動度を得ることができ、良好なトランジスタ特性を発揮させることができる。
図3は、本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図である。
本実施形態においては、ゲート絶縁膜3の上に、ソース電極6及びドレイン電極7が設けられており、ソース電極6、ドレイン電極7及びゲート絶縁膜3を覆うように高分子層4が形成されている。このようにして形成された高分子層4の上に、有機半導体層5及び保護層8が形成されている。
本実施形態においても、有機半導体層5とゲート絶縁膜3の間に、高分子層4が形成されているので、高い移動度を得ることができ、良好なトランジスタ特性を発揮させることができる。
図4は、本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図である。
本実施形態においては、ゲート絶縁膜3の上にソース電極6が形成されており、ソース電極6及びゲート絶縁膜3を覆うように高分子層4が形成されている。
高分子層4の上には、有機半導体層5が形成されており、有機半導体層5の上にドレイン電極7が形成されている。ドレイン電極7及び有機半導体層5を覆うように、保護層8が設けられている。
本実施形態においても、有機半導体層5とゲート絶縁膜3の間に、高分子層4が設けられているので、高い移動度を得ることができ、良好なトランジスタ特性を発揮させることができる。
本実施形態では、ソース電極6をゲート絶縁膜3の上に設け、ドレイン電極7を有機半導体層5の上に設けているが、ドレイン電極7をゲート絶縁膜3の上に設け、有機半導体層5の上にソース電極6を設けてもよい。
図5は、本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図である。
本実施形態は、基板に対して略垂直方向である縦方向にチャネル領域が形成された縦型電界効果トランジスタである。
基板1の上には、基板1上の凸部となるゲート電極2が設けられており、ゲート電極2及び基板1を覆うように、ゲート絶縁膜3が形成されている。ゲート絶縁膜3の上には、高分子層4が形成されている。ゲート電極2により形成された凸部の両側の高分子層4の上を覆うようにソース電極6及びドレイン電極7がそれぞれ形成されている。ゲート電極2の上方の高分子層4の上には、フロティーング電極9が形成されている。
ソース電極6、ドレイン電極7、及びフロティーング電極9を覆うように、有機半導体層5が形成されている。ゲート電極2によって形成された凸部の側面は、高分子層4が露出しており、この高分子層4の上を覆うように有機半導体層5が形成されている。
ソース電極6とフロティーング電極9の間、及びフロティーング電極9とドレイン電極7の間にチャネル領域が形成される。従って、本実施形態においては、チャネル領域が縦方向に形成された縦型電界効果トランジスタとなっている。
本実施形態においても、チャネル領域が形成される凸部の側面において、有機半導体層5とゲート絶縁膜3の間に、高分子層4が設けられているので、高い移動度を得ることができ、良好なトランジスタ特性を発揮させることができる。
なお、本実施形態においては、保護層8が設けられていないが、必要に応じて、有機半導体層5の上に、保護層8を設けてもよい。
以下、本発明に従う具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔共重合体の合成〕
以下の実施例において用いる共重合体を以下のようにして合成した。
室温下で、トルエンに、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、及び重合開始剤を混合し、これを80℃まで昇温して4時間攪拌した。放冷した後、反応後の溶液をメタノール中に入れ、再沈殿させ、デカンテーションした。その後、メタノールで洗浄し、洗浄後ろ過し、減圧加熱乾燥により、共重合体を得た。
得られた共重合体について、1H−NMR(日本電子社製、共鳴周波数400MHz、溶媒CDCl、外部基準物質TMS、室温で測定)スペクトルを解析した結果、メタクリル酸メチル(A)/メタクリル酸(B)の共重合比(モノマーユニット比)は、A:B=1:0.02であった。共重合比率(一般式におけるy/x)は、モノマーユニット比におけるAに対するBの割合から求めた。
上記の方法により、使用するメタクリル酸メチル及びメタクリル酸の割合を変化させて、表1に示すように、共重合化率0〜0.1の範囲内の共重合体をそれぞれ合成し、以下の実施例において用いた。
(実施例1)
図6は、本実施例において作製した電界効果トランジスタを示す断面図である。
図6に示すように、基板1の上に、タンタルを蒸着法またはスパッタリング法などで成膜することにより、ゲート電極2を形成した。次に、ゲート電極2の表面を陽極酸化することにより、タンタル酸化膜を形成し、これをゲート絶縁膜3とした。陽極酸化は、具体的には、1.0重量%のホウ酸アンモニウム水溶液を化成液として用い、この化成液にゲート電極2が形成された基板1を浸漬し、ゲート電極2を陽極とし、別に準備した陰極との間に直流電界を70V印加することにより、110nmの厚みのゲート絶縁膜3を形成した。
ゲート絶縁膜3の上に、上記合成例で得た共重合化率0.02の共重合体を5mg/mlの濃度で含むトルエン溶液をスピンコート法により塗布して高分子層4を形成した。スピンコート法は、1000rpmで回転させることにより行った。高分子層4の厚みは、15nmであった。
高分子層4の上に、有機半導体層5を形成した。有機半導体材料としては、ペンタセンを用い、基板1を回転させながら、ペンタセンを蒸着させることにより、50nmの厚みの有機半導体層5を形成した。
次に、基板1を回転させながら、金を蒸着させ、ソース電極6及びドレイン電極7を形成した。ソース電極6及びドレイン電極7は、マスクを用いて成膜することにより、チャネル長3mm、チャネル幅0.1mmとなるようにそれぞれ形成した。
上記のようにして作製された電界効果トランジスタにおいては、ゲート電極2に電圧を印加することにより、ゲート絶縁膜3及び高分子層4によってゲート電極2から隔てられた有機半導体層5において、ゲート絶縁膜3及び高分子層4との近傍の領域に、チャネル領域が形成され、電荷が誘起される。このとき、ソース電極6及びドレイン電極7に電圧を印加することにより、トランジスタとしての動作させることができる。
高分子層4は、上述のように、カルボン酸基を有するユニットを含む共重合体から形成されているので、上記のようにして電荷が誘起される際に、高分子層4にも、伝導キャリアとして電荷を十分に蓄積させることができる。このため、本発明によれば、高い移動度を得ることができ、オン/オフ比を向上させることができる。
(実施例2〜15及び比較例1〜3)
表1に示す共重合化率を有する共重合体を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜15及び比較例1〜3の電界効果トランジスタを作製した。なお、比較例1においては、共重合化率0のものを用いている。従って、比較例1で用いた高分子は、共重合体ではなく、メタクリル酸メチル単独の重合体である。
〔トランジスタ特性の評価〕
HPパラメータアナライザ(HP4156C)を用いて、移動度及びオン/オフ比を求めた。
移動度は、以下の式(1)を用いて算出した。
Id=1/2×(L/W)×Ci×μ×(Vg−Vth)2 ・・・式(1)
Id:ドレイン電流(A)
L: ゲート長(cm)
W: ゲート幅(cm)
Ci:単位面積あたりの静電容量(C/cm2
μ:移動度(cm2 /Vs)
Vg:ゲート電圧(V)
Vth:ゲート電圧しきい値(V)
移動度及びオン/オフ比を表1に示す。
Figure 0005288826
表1に示すように、本発明に従う実施例1〜15は、比較例1〜3に比べ、高い移動度及び高いオン/オフ比が得られている。特に、共重合化率が0.001〜0.04の範囲において、移動度及びオン/オフ比が高く、良好なトランジスタ特性が得られている。この範囲の中でも、さらに0.05〜0.02の範囲で良好な特性が得られている。
また、比較例3で用いた共重合化率0.1の共重合体は、高分子層を形成した際、その表面が不均一であり、成膜性が良好でなかった。
(実施例16〜30)
共重合化率が0.02である共重合体を用い、高分子層の膜厚を表2に示すように、0.5nm〜65nmの範囲で変化させ、それ以外は実施例1と同様にして電界効果トランジスタを作製した。なお、実施例20は、実施例1と同様の電界効果トランジスタである。
(比較例4)
高分子層を形成せずに、ゲート電極の上に直接有機半導体層を形成する以外は、実施例1と同様にして電界効果トランジスタを作製した。従って、本比較例は、高分子層の膜厚が0nmに相当するものである。
実施例16〜30及び比較例4における移動度及びオン/オフ比を上記と同様にして測定し、測定結果を表2に示した。
Figure 0005288826
表2に示す結果から明らかなように、本発明に従い高分子層を形成した実施例16〜30においては、高分子層を形成していない比較例4に比べ、高いオン/オフ比が得られている。
表2から明らかなように、高分子層の厚みを1〜50nmの範囲内とすることにより、高い移動度でかつ高いオン/オフ比が得られることがわかる。この範囲の中でも、5〜50nmの範囲内にすることより、さらにトランジスタ特性を高めることができ、10〜30nmの範囲とすることにより、さらに良好なトランジスタ特性が得られることがわかる。
(実施例31)
ゲート電極としてSi膜を形成し、ゲート絶縁膜として、SiOを形成する以外は、上記実施例1と同様にして電界効果トランジスタを作製した。作製した電界効果トランジスタについて、上記と同様にしてトランジスタ特性を評価したところ、移動度は0.2cm/Vsであり、オン/オフ比は2×10であった。
(比較例5)
共重合化率が0であるポリメタクリル酸メチルを用いて高分子層を形成する以外は、上記実施例31と同様にして電界効果トランジスタを作製した。作製した電界効果トランジスタについてトランジスタ特性を評価したところ、移動度は0.08cm/Vsであり、オン/オフ比は2×10であった。
上記の実施例31及び比較例5の比較から明らかなように、ゲート絶縁膜としてSiO膜を用いた場合にも、本発明の作用効果が得られることが確認された。
(比較例6)
ポリメタクリル酸メチルとポリビニルフェノールの共重合体(PMMA−PVP)を用いて高分子層を形成する以外は、実施例1と同様にして電界効果トランジスタを作製した。
作製した電界効果トランジスタのトランジスタ特性を、上記と同様にして測定したところ、移動度は0.01cm/Vsであり、オン/オフ比は50であった。
このことからも、本発明に従い、カルボン酸基を有するユニットを含む共重合体を用いて高分子層を形成することにより、移動度及びオン/オフ比を高められることがわかる。
本発明に従う有機半導体素子である電界効果トランジスタは、例えば、ディスプレイの駆動回路、理論回路、メモリー回路、及び2次元イメージセンサ等に好適に用いることができるものである。
上記実施例においては、有機半導体素子として、電界効果トランジスタを例にして説明したが、本発明の有機半導体素子は、電界効果トランジスタに限定されるものではなく、その他の半導体素子に用いることができるものである。
本発明に従う一実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図。 本発明に従う他の実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図。 本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図。 本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図。 本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体素子である電界効果トランジスタを示す断面図。 本発明に従う実施例における電界効果トランジスタを示す断面図。
符号の説明
1…基板
2…ゲート電極
3…ゲート絶縁膜(絶縁層)
4…高分子層
5…有機半導体層
6…ソース電極
7…ドレイン電極
8…保護層
9…フロティーング電極

Claims (4)

  1. 絶縁層と、前記絶縁層上に設けられる有機半導体層とを備え、
    前記絶縁層と前記有機半導体層の間に、以下の一般式で表わされる共重合体からなる高分子層が設けられている有機半導体素子であって、
    前記共重合体が、メタクリル酸メチルとメタクリル酸の共重合体であることを特徴とする有機半導体素子。
    Figure 0005288826
    (式中、R、R及びRは、互いに同一であっても異なってもいてもよく、水素原子またはアルキル基を示す。x及びyは、0.001≦y/x<0.1の関係を満足する。)
  2. 前記高分子層の厚みが、1〜50nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体素子。
  3. 前記有機半導体素子が、ゲート電極と、半導体層と、前記ゲート電極及び前記半導体層の間に設けられるゲート絶縁膜と、前記半導体層と接するように設けられるソース電極及びドレイン電極とを備える電界効果トランジスタであって、
    前記ゲート絶縁膜が前記絶縁層であり、前記半導体層が前記有機半導体層であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機半導体素子。
  4. 請求項1または2に記載の有機半導体素子を製造する方法であって、
    前記絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層の上に前記共重合体を含有した溶液を塗布して前記高分子層を形成する工程と、
    前記高分子層の上に前記有機半導体層を形成する工程とを備えることを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
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