液晶プロジェクタ装置は、光源からの光束を赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の光束に色分離するための複数のダイクロイックミラーと、色分離した各色の光束がそれぞれ照射される3つの液晶パネルと、各液晶パネルで空間変調された各色の画像光を色合成する色合成プリズムと、色合成された画像光をスクリーン上に投射する投射光学系とを有する。
液晶パネルは、マトリクス状に配置された複数の液晶セルを備え、各液晶セルを囲むように、ブラックマトリクスと呼ばれる遮光領域が設けられている。液晶セルは、透明電極が形成された面が対向するように配置された2枚のガラス基板の間に液晶物質を充填したものであり、透明電極に電圧を供給することにより液晶分子の向きを制御することで、入射光を遮ったり透過させたりすることができる。液晶セルにより光を遮る際に、液晶分子が光を吸収することで、液晶パネルが発熱する。また、ブラックマトリクスが光を吸収することで、液晶パネルが発熱する。液晶パネルの発熱により、液晶セルの配向膜がダメージを受ける場合がある。
また、液晶パネルとして、TN(Twisted Nematic)モードで動作する液晶パネルを用いる場合は、液晶パネルの入射面側および出射面側に偏光板が設けられる。この偏光板は、所定の偏光成分の光(例えばS偏光光)のみを透過し、それ以外の光を吸収する。光を吸収することで、偏光板も発熱する。偏光板の発熱により、偏光板の偏光選択特性が著しく低下する場合がある。
そこで、液晶パネルや偏光板を冷却するための冷却装置が提案されている。以下、本発明の関連技術として、そのような冷却装置を搭載する液晶プロジェクタについて説明する。
図14は、関連技術としての液晶プロジェクタを説明するための図であって、(a)は液晶プロジェクタの外観図、(b)は、液晶プロジェクタの内部構造を示す斜視図である。図15は、その液晶プロジェクタに搭載された冷却装置の構成を示す模式図である。
図14および図15に示すように、液晶プロジェクタ1の筐体内には、液晶ユニット部2、冷却ファン3、空冷ダクト4、光源5、リフレクタ6、ランプ用冷却ファン7、ランプ用冷却ダクト8、排気ファン9、電源ユニット10、および投射レンズ11が設けられている。
光源5から光がリフレクタ6で反射されて平行光束として液晶ユニット2に入射する。液晶ユニット部2は、複数のダイクロイックミラーによって赤(R)、緑(G)、青(B)に色分離された各色の光束が、それぞれ照射される3つの液晶パネルと、各液晶パネルで空間変調された各色の画像光を色合成する色合成プリズムとを備える。各液晶パネルの入射面側および出射面側には、偏光板が設けられている。色合成プリズムで色合成された画像光は、投射レンズ11によりスクリーン上に投射される。
ランプ用冷却ファン7およびランプ用冷却ダクト8は、光源5を冷却するための手段である。ランプ用冷却ファン7で発生した空気流がランプ用冷却ダクト8を通じて光源5まで到達する。冷却ファン3および空冷ダクト4は、液晶ユニット部2を冷却するための手段である。冷却ファン3で発生した空気流が空冷ダクト4を通じて液晶ユニット部2まで到達する。排気ファン9は、筐体内の空気を筐体外へ排出する。
図16は、液晶ユニット部2を冷却する冷却装置の具体的な構造を説明するための図であって、(a)は分解斜視図、(b)は冷却動作を説明するための模式的断面図である。
図16の(a)および(b)に示すように、冷却装置15は、空冷ダクト4および冷却ファン3を有する。空冷ダクト4は、冷却ファン3からの空気流を液晶ユニット部2に向けて送り出すための複数の吐出口17を備える。液晶ユニット部2は、吐出口17の上方に位置する。
液晶ユニット部2を構成する各液晶パネル13の入射面側には、偏光板12が配置され、出射面側(色合成プリズム側)には、偏光板14が配置されている。吐出口17は、液晶パネル13および偏光板12、14からなる部位毎に設けられている。
図16(b)に示すように、冷却ファン3からの送風16は、空冷ダクト4内を流れ、各吐出口17から液晶ユニット部2へ向けて送り出される。吐出口17から出た空気流が液晶パネル13および偏光板12、14の各隙間を通ることにより、液晶パネル13および偏光板12、14が冷却される。
特許文献1には、液晶ユニットを冷却する冷却装置の別の形態が記載されている。図17は、その冷却装置の構成を示す模式図である。
図17を参照すると、冷却ファン3からの送風16は、偏光板12と液晶パネル13の間および液晶パネル13と色合成プリズム35の間を流れる。色合成プリズム35を保持する部材の、冷却ファン3の側の部分には風向板39が設けられている。冷却ファン3からの送風16が液晶パネル13の面の方向に向かうように、風向板39により送風16の向きを変えることで、液晶パネル13の冷却効率の改善を図ることができる。
特許文献2には、液晶ユニットを冷却する冷却装置のさらに別の形態が記載されている。図18は、その冷却装置の構成を示す模式図である。
図18を参照すると、液晶パネル13の保持枠40の対向する縁に沿って、2つの突片部41が設けられている。各突片部41は、板状の部材であって、ダクト吐出口42から供給される空気が一定方向に流れるように制限する。これにより、ダクト吐出口42から供給される空気のほとんどが、液晶パネル13の面に沿って流れることになり、その結果、冷却効率が向上する。
特許文献3には、液晶ユニットを冷却する冷却装置のさらに別の形態が記載されている。図19は、その冷却装置の構成を示す模式図である。
図19を参照すると、液晶パネル13の保持枠40の、液晶パネル13と偏光板14との間の空気流路に面する部分に、切欠部43が形成されている。切欠部43を設けることで、空気流路幅(図19中のXとYで示した幅)が増大し、その結果、空気流量が増大する。
特許文献4には、液晶ユニットを冷却する冷却装置のさらに別の形態が記載されている。図20は、その冷却装置の構成を説明するための図であって、(a)は上面図、(b)は側面断面図である。
図20の(a)および(b)を参照すると、液晶パネル13を挟んで対向配置された、色合成プリズム35と偏光板12の間に、断面形状がU字状の導風板44が架設されている。冷却ファン3からの空気流は、色合成プリズム35と液晶パネル13の間を通過した後、導風板44により折り返される。導風板44により折り返された空気流は、液晶パネル13と偏光板12の間を通過する。この構成によれば、液晶パネル13の面に生じる温度ムラの発生を抑制することができる。
特許文献4には、上記の冷却装置の変形例がさらに記載されている。図21は、その変形例を説明するための図であって、(a)は上面図、(b)は側面断面図である。この変形例では、液晶パネル13の下方に冷却ファン3aは配置され、液晶パネル13の上方に冷却ファン3bが配置されている。冷却ファン3aからの空気流は、色合成プリズム35と液晶パネル13の間を通過する。冷却ファン3bからの空気流は、液晶パネル13と偏光板12の間を通過する。この変形例によっても、液晶パネル13の面に生じる温度ムラの発生を抑制することができる。
特許文献5には、液晶ユニットを冷却する冷却装置のさらに別の形態が記載されている。図22は、その冷却装置の構成を模式的に示す断面図である。
図22を参照すると、冷却装置は、冷却ファン3aにより発生した空気流が循環する循環ダクト45を備える内側循環部と、冷却ファン3bにより発生した空気流が循環する空気環流用ダクト46を備える外側循環部とを有する。冷却ファン3bにより外気が外側循環部内に取り込まれる。冷却ファン3bにより取り込んだ空気が循環ダクト45の外面に沿って流れることで、内側循環部が冷却される。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明は、互いの面が対向するように並設された複数の部材を有し、これら部材の少なくとも1つの部材の面が熱が放出される熱放出面を有する電子機器の冷却装置であって、熱放出面上を、該熱放出面上に設定される基準点に向って第1の方向に流れる第1の空気流と、熱放出面上を、基準点に向って第1の方向と交差する第2の方向に流れる第2の空気流とを発生させ、これら第1および第2の空気流を熱放出面上で衝突させることで乱流(衝突噴流)を発生させ、第1の方向と第2の方向との交差する角度を適宜に設定することで、乱流(衝突噴流)が所定の方向に向かって移動するように構成されている。基準点は空気流が衝突する位置の目標点であって、適宜に設定することができる。例えば、熱放出面を備える部材が液晶パネルである場合、液晶パネルの中心点を基準点とすることで、第1の空気流と第2の空気流とを液晶パネルの中心で衝突させることができる。
まず、本発明の冷却装置に適用可能な乱流発生機構およびその原理について詳細に説明する。
図2は、本発明に適用可能な乱流発生機構を備える冷却装置の構成を模式的に示す分解斜視図である。図3は、その乱流発生機構により発生する空気流を説明するための模式図、図4は、その乱流発生機構における乱流発生原理を説明するための模式図である。
図2および図3を参照すると、液晶ユニット部2は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応して設けられた3つの液晶パネル13を備える。液晶パネル13の入射面側には、偏光板12が配置され、出射面側には、偏光板14が配置されている。この液晶ユニット部2は、既存の液晶プロジェクタ装置に搭載されている液晶ユニットと同様のものである。
空冷装置は、液晶ユニット1の下方および上方にそれぞれ配置された空冷部29a、33aからなる。空冷部29aは、冷却ファン27aと冷却ダクト28aからなる。空冷部33aは、冷却ファン31aと冷却ダクト32aからなる。
空冷ダクト28aは、各液晶パネル13の下端まで伸びており、各下端に位置する部分に、各液晶パネル13に向けて空気を吹出すための3つの開口部が設けられている。冷却ファン27aにより発生した第1の送風(空気流)30aは、冷却ダクト28a内を通り、各開口部から各色の液晶パネル13に向かう。
冷却ダクト32aは、各液晶パネル13の上端まで伸びており、各上端に位置する部分に、各液晶パネル13に向けて空気を吹出すための3つの開口部が設けられている。冷却ファン31aにより発生した第2の送風(空気流)34aは、冷却ダクト32a内を通り、各開口部から各色の液晶パネル13に向かう。
空冷ダクト28aの各開口部のそれぞれは、図4に示すように、仕切りにより隔てられた第1および第2の開口を有する。仕切りは、液晶パネル13の下端と対向する位置に設けられている。第1の開口から吹出した第1の空気流は、液晶パネル13と入射側の偏光板12の間を下から上に向かって通過する。第2の開口から吹出した第2の空気流は、液晶パネル13と出射側の偏光板14の間を下から上に向かって通過する。
冷却ダクト32aの各開口部も、図4に示すように、仕切りにより隔てられた第1および第2の開口を有する。仕切りは、液晶パネル13の上端と対向する位置に設けられている。第1の開口から吹出した第3の空気流は、液晶パネル13と入射側の偏光板12の間を上から下に向かって通過する。第2の開口から吹出した第4の空気流は、液晶パネル13と出射側の偏光板14の間を上から下に向かって通過する。
液晶パネル13と入射側の偏光板12の間の第1の空気流路において、下から上に向かう第1の空気流と、上から下に向かう第3の空気流が衝突する。同様に、液晶パネル13と出射側の偏光板14の間の第2の空気流路において、下から上に向かう第2の空気流と、上から下に向かう第4の空気流が衝突する。各冷却ファン27a、31aの送風量が同じで、各冷却ダクト28a、32aの内面における流体に対する抵抗が等しい場合は、第1および第3の空気流の衝突位置は第1の空気流路の中間位置(図4中の衝突面a)となり、第2および第4の空気流の衝突位置は第2の空気流路の中間位置(図4中の衝突面a)となる。
第1の空気流路において、第1および第3の空気流は、衝突位置までは、液晶パネル13および偏光板12のそれぞれの表面に沿って進む。第1および第3の空気流が衝突すると、そこで、衝突噴流が発生する。同様に、第2の空気流路において、第2および第4の空気流は、衝突位置までは、液晶パネル13および偏光板14のそれぞれの表面に沿って進む。第2および第4の空気流が衝突すると、そこで、衝突噴流が発生する。これら衝突噴流は、非定常的な渦の生成/消失を伴う乱流であり、図4に拡大図として示したように、衝突面aに沿って液晶パネル13および偏光板14のそれぞれの表面に向かう旋回流(渦)を含む。この旋回流(渦)は、液晶パネル13および偏光板14のそれぞれの表面に対して略垂直に当たる空気流であり、その冷却効果は、表面に沿って流れる空気流に比べて大きい。
旋回流(渦)を含む衝突噴流による冷却では、
1)表面に形成された境界層の破壊(剥離)
2)衝突部で発生する旋回流による流体交換(温度置換)
3)コアンダ効果による噴流の壁面滑り
といった3つのプロセスを経る。ここで、流体交換(温度置換)は、表面近傍の流体と、表面から少し離れた位置にある流体との交換(温度置換)を意味する。コアンダ効果は、流れの中に物体を置くと、流体と固体壁面との間の圧力が低下し、流れが壁面に吸い寄せられ、その物体に沿って流れの向きが変わる流体の性質を言う。上記3つのプロセスにより、図2に示した冷却装置では、単に平板に沿って流体が流れる場合に比べ、5倍〜10倍の冷却能力を得られる。
上述したように、第1および第2の空気流路にて生じた衝突噴流は、液晶パネル13、偏光板12および偏光板14のそれぞれの表面からの放熱を促進させるように作用する。換言すると、衝突噴流となった流体の温度は、表面から放出された熱エネルギーによって上昇する。このため、衝突噴流となった流体が表面に留まると、表面からの放熱過程における熱伝達率が低下する場合がある。衝突噴流となった流体を表面上で移動させることで、熱伝達率の低下を抑制することができる。
本発明の冷却装置は、衝突噴流となった流体を適切な方向に移動するように構成したことを特徴とする。
図1は、本発明の一実施形態である冷却装置の構成を示す模式図である。
図1を参照すると、冷却装置は、第1の冷却部を構成する下部ダクト100と、第2の冷却部を構成する上部ダクト101とを有する。図1に示した液晶パネル200の表面は光が入射する面(入射面)である。なお、図1には示されていないが、図面に向かって液晶パネルの手前側(入射面側)と奥側(出射面側)には偏光板が配置されている。
下部ダクト100は、開口100aを備える。開口100aは、液晶ユニット部の、液晶パネル200の入射面または出射面を含む平面と交差する第1の側面に向けて設けられている。ここでは、開口100aは、液晶パネル200の下方に位置しており、この開口100aから出た空気流(第1の空気流)は、液晶パネル200の表面上を、該表面の中心200aを通る直線200bに沿って第1の方向に流れる。ここで、液晶パネル200の表面の中心200aとは、該液晶パネルの表示領域(画素がある領域)の中心を意味し、具体的には矩形の表示領域の対角線の交点となる。液晶パネル200の表面側から見た場合、直線200bは、開口100aの、液晶パネル200の表面に平行な断面における開口幅の中心と基準点である中心200aとを結ぶ直線(第1の直線)である。
上部ダクト101は、開口101aを備える。開口101aは、液晶ユニット部の、液晶パネル200の入射面または出射面を含む平面と交差する、上記第1の側面に隣接する第2の側面に向けて設けられている。ここでは、開口101aは、液晶パネル200の入射面側から見て、液晶パネル200の左上に位置しており、開口101aから出た空気流(第2の空気流)は、液晶パネル200の表面上を、該表面の中心200aに向かって、第1の方向と交差する第2の方向に流れる。液晶パネル200の入射面側から見た場合、開口101aの、液晶パネル200の表面に平行な断面における開口幅の中心は、液晶パネル200の表面の中心200aを通り、かつ、直線200bと直交する直線200c(第2の直線)よりも上方に位置する。すなわち、直線200cを境にして、開口101aの中心は、開口100aが形成された側とは反対の側に位置する。
衝突噴流となった流体を移動させるために、本実施形態の冷却装置においては、第1の空気流の方向と第2の空気流の方向とのなす角度θ2を、90度より大きな角度、例えば120度に設定している。このため、衝突噴流となった流体は、液晶パネル200の入射面側から見た場合に、液晶パネル200の表面上を、右斜め上方向に移動する。図1中の破線で示した矢印は、衝突噴流の移動方向を示す。
角度θ2を大きくすると衝突噴流による冷却効果は高くなり、逆に角度θ2を小さくすると衝突噴流による冷却効果は低くなる。また、衝突噴流の移動方向は、第1および第2の空気流の流速(風速)や流量(風量)、第1の空気流の方向と第2の空気流の方向とのなす角度θ2によって決まる。本実施形態では、第1および第2の空気流の流速(風速)および流量(風量)は同じとされているので、衝突噴流の移動方向は角度θ2によって決まる。衝突噴流の移動方向は排熱する方向とほぼ一致するので、角度θ2により排熱する方向を定めることができる。
本実施形態の冷却装置によれば、衝突噴流を発生することで、境界層の破壊(薄膜化)が可能となっている。さらに、衝突噴流となった流体を移動させることで、衝突噴流で流体が奪い取った熱を効率よく廃熱することができ、その分、衝突噴流による冷却効果を増大することができる。衝突噴流が移動する場合における熱伝達率の改善効果は、衝突噴流が一定の位置に留まる場合に比べて大きいので、より大きな冷却効果を得ることができる。つまり、熱伝導率を改善することができる。
なお、上部ダクト101は、図5に示した構造に限定されるものではなく、開口101aから出た空気流を、液晶パネル200の中心200aの方向へ向かわせることができるのであれば、どのような構造であってもよい。
図6に、上部ダクト101の別の構造を示す。図6に示す上部ダクト101は、直線状に延伸した形状であって、その端部は、ダクト内を流れる空気流の進行方向に対して略垂直な面を備える壁部101dを有する。開口101aが端部の壁部101dに隣接して設けられている。開口101aの開口面は、端部の壁部101dの面に直交する。
図6に示した上部ダクト101において、ダクト内を流れる空気流は、端部の壁部101dの面に当たって、開口101aからダクト外に流れ出す。このとき、端部の壁部101dの面上において、空気流の淀みが発生する。この淀みの生じた領域(図6中の破線で示した領域)の、端部の壁部101dの面からの高さは、開口101a側に近づくほど低くなっている。すなわち、淀みを生じた領域は傾斜を有する。
淀みを生じた領域は、空気流に対して、あたかも壁のように働く。したがって、ダクト内を通る空気流は、この淀みを生じた領域の傾斜面に沿って開口101aへ向かい、そこからダクト外へ流れ出す。この開口101aから流れ出す空気流(第2の空気流)の方向と開口面とのなす角度は、淀みを生じた領域の傾斜の面と端部の壁部の面とのなす角度に一致する。
上記の上部ダクト101の構造によっても、開口101aから出た空気流を、液晶パネル200の中心200aの方向へ向かわせることができる。図5に示した構造では、ダクト端部が液晶パネル200側に飛び出している。これに対して、図6に示した構造では、そのようなダクト端部の飛び出し部分は存在しない。飛び出し部分がない分、ダクトの端部を小さくすることができ、その結果、ダクトと液晶パネルをより近接して配置することができる。
また、図1に示した例では、上部ダクトの数は1つであるが、衝突噴流の発生および移動が可能であれば、上部ダクトは複数設けても良い。図7に、本発明の他の実施形態として、2つの上部ダクトを備える冷却装置を示す。
図7を参照すると、冷却装置は、図1に示した構成に加えて、液晶パネルの右上に上部ダクト102を有する。上部ダクト102は、直線202bを中心に、上部ダクト101と線対称の構造とされている。
上部ダクト102は、開口102aを備える。開口102aは、液晶ユニット部の、液晶パネル200の入射面または出射面を含む平面と交差する、上記第2の側面と対向する第3の側面に向けて設けられている。ここでは、開口102aは、液晶パネル200の表面側から見て、液晶パネル200の右上に位置しており、開口102aから出た空気流(第3の空気流)は、液晶パネル200の表面上を、該表面の中心200aに向かって、第1の方向と交差する第3の方向に流れる。液晶パネル200の表面側から見た場合、開口102aの中心は直線200cよりも上方に位置する。すなわち、直線200cを境にして、開口102aの、液晶パネル200の表面に平行な断面における開口幅の中心は、開口100aが形成された側とは反対の側に位置する。
本他の実施形態によれば、液晶パネル200の表面上おいて、開口100aからの第1の空気流と、開口101aからの第2の空気流と、開口102aからの第3の空気流とが互いに衝突し、衝突噴流が発生する。この衝突噴流は、液晶パネル200の表面および不図示の偏光板の表面に向かう旋回流を含む。この衝突噴流となった流体は、液晶パネル200の表面側から見た場合に、液晶パネル200の表面上を、上方向、左斜め下方向、右斜め下方向の3つの方向に移動する。図7中の破線で示した矢印は、衝突噴流の移動方向を示す。
このように衝突噴流となった流体を移動させることで、衝突噴流で流体が奪い取った熱を効率よく廃熱することができ、その分、衝突噴流による冷却効果を増大することができる。つまり、熱伝導率を改善することができる。
また、本発明の別の実施形態によれば、互いの面が対向するように並設された複数の部材を有し、これら部材の少なくとも1つの部材の面が熱が放出される熱放出面を有する電子機器の冷却装置であって、上記複数の部材からなるユニット部の、上記熱放出面を含む平面と交差する第1の側面に向けて設けられた第1の開口を備え、該第1の開口から噴出した空気流が、上記熱放出面上に設定される基準点に向かって第1の方向に流れる第1の空冷部と、上記ユニット部の、上記熱放出面を含む平面と交差する、上記第1の側面に隣接する第2の側面に向けて設けられた第2の開口を備え、該第2の開口から噴出した空気流が、上記基準点に向かって上記第1の方向と交差する第2の方向に流れる第2の空冷部と、を有し、上記第1の開口の、上記熱放出面に平行な切断面における開口幅の中心と上記基準点とを結ぶ第1の直線と直交する、上記基準点を通る第2の直線を境として、上記第2の開口の、上記熱放出面に平行な切断面における開口幅の中心が、上記第1の開口が設けられた側とは反対となる側に位置するように構成される。この場合も、衝突噴流となった流体を移動させることで、衝突噴流で流体が奪い取った熱を効率よく廃熱することができ、その分、衝突噴流による冷却効果を増大することができる。つまり、熱伝導率を改善することができる。
上記の場合、上記ユニット部の、上記熱放出面を含む平面と交差する、上記第2の側面と対向する第3の側面に向けて設けられた第3の開口を備え、該第3の開口から噴出した空気流が、上記基準点に向かって上記第1の方向と交差する第3の方向に流れる第3の空冷部と、を有し、上記第2の直線を境として、上記第3の開口の、上記熱放出面に平行な切断面における開口幅の中心が、上記第1の開口が設けられた側とは反対となる側に位置するように構成してもよい。この場合も、衝突噴流となった流体を移動させることで、衝突噴流で流体が奪い取った熱を効率よく廃熱することができ、その分、衝突噴流による冷却効果を増大することができる。つまり、熱伝導率を改善することができる。
また、上記第1および第2の空冷部に空気を供給するための共通の冷却ファンを有していてもよい。冷却ファンの共通化により、コストを削減することが可能となる。
さらに、第1の開口と連通する第1のダクトと、第2の開口と連通する第2のダクトとが共通の吸気口に連通していてもよい。
さらに、上記第1の開口の、上記熱放出面に平行な切断面における開口幅が、上記第1の側面の、上記熱放出面に平行な切断面における幅より狭くてもよい。
さらに、上記第2の開口の、上記熱放出面に平行な切断面における開口幅が、上記第2の側面の、上記熱放出面に平行な切断面における幅より狭くてもよい。
さらに、上記第1の開口と連通する第1のダクト、上記第2の開口と連通する第2のダクトおよび上記第3の開口と連通する第3のダクトのうちの少なくとも2つのダクトが共通の吸気口に連通していてもよい。
さらに、上記第3の開口の、上記熱放出面に平行な切断面における開口幅が、上記第3の側面の、上記熱放出面に平行な切断面における幅より狭くてもよい。
以上説明した各実施形態の冷却装置によれば、衝突噴流の移動による熱伝達率低下の抑制に加えて、以下のような効果も有する。
通常、液晶パネルへ駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブルは、液晶パネルの上部に設けられている。この場合、図2に示したように、上部ダクトの開口部が液晶パネルの真上に位置する冷却装置においては、上部ダクトの開口部がフレキシブルケーブルと干渉する、という問題が生じる。上述した本発明の各実施形態によれば、上部ダクトの開口は、液晶パネルの左右の端部に向けて配置されるので、上部ダクトの開口部がフレキシブルケーブルと干渉することを回避することができる。
次に、上述した本発明の冷却装置を搭載した液晶プロジェクタ装置について説明する。
図8は、本発明の冷却装置を搭載した液晶プロジェクタ装置の内部の構成を示す斜視図である。図9は、図8に示した冷却装置の部分の構成を示す斜視図である。
図8および図9を参照すると、液晶プロジェクタ装置は、シロッコファン301a、301b、302、303、ランプ304、偏光ビームスプリッタ(PBS)305、液晶パネル306〜308、光学エンジン309、投写レンズ310、上部ダクト311、吸気ダクト312、および下部ダクト313を有する。
ランプ304から出射した光束の進行方向にPBS305が配置されている。PBS305は、ランプ304からの光の偏光を揃える。PBS305を通過した光束の進行方向には、複数のダイクロイックミラーなどからなる色分離部(不図示)が配置されている。色分離部は、入射光束を赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に分離する。
液晶パネル306〜308のそれぞれの入射面側および出射面側には、偏光板がそれぞれ設けられている。これら液晶パネル306〜308および偏光板は、保持構造を介して光学エンジン309上に固定されている。色分離部で色分離した光束のうち、赤(R)の光束が液晶パネル306に照射され、緑(G)の光束が液晶パネル307に照射され、青(B)の光束が液晶パネル308に照射される。液晶パネル306〜308を通過した各色の光束は、不図示の色合成プリズムにて色合成された後、投写レンズ310に入射する。
シロッコファン303は、ランプ304を冷却するためのものである。シロッコファン301aは筐体側面の設けられた吸気口から外気を取り込む。シロッコファン301bは、吸気ダクト312を介して、外気を取り込む。シロッコファン301a、301bの吹出し口は下部ダクト313と連通しており、シロッコファン301a、301bで発生した空気流は、下部ダクト313を通って、液晶パネル306〜308に供給される。
シロッコファン302の吸気口は吸気ダクト312と連通している。シロッコファン302も、シロッコファン301bと同様、吸気ダクト312を介して、外気を取り込む。シロッコファン302の吹出し口は上部ダクト311と連通しており、シロッコファン302で発生した空気流は、上部ダクト311を通って液晶パネル308に供給される。
図10に、液晶パネル308の光入射側から見た場合の、上部ダクト311および下部ダクト313と液晶パネル308との位置関係を模式的に示す。
図10に示すように、下部ダクト313は開口313aを備える。開口313aは、液晶パネル308の下方に位置している。液晶パネル308の光入射側から見た場合、開口313aの、液晶パネル308の表面に平行な断面における開口幅の中心は、液晶パネル308の表面の中心308aを通る直線308bより左側に位置する。開口313aには、開口313aから吹出す空気流を液晶パネル308の表面の中心308aへ向かわせるための板部材313bが設けられている。この板部材313bにより、開口313aからの空気流の吹出し方向が制限される。その結果、開口313aから吹出した空気流(第1の空気流)は、液晶パネル308の表面上を、その中心308aに向かう第1の方向に流れる。
上部ダクト311は、図6に示したダクト構造と同様のものであって、開口311aを備える。開口311aは、液晶パネル308の光入射側から見て、液晶パネル308の左上に位置しており、開口311aから吹出した空気流(第2の空気流)は、液晶パネル308の表面上を中心308aに向かって、第1の方向と交差する第2の方向に流れる。液晶パネル308の光入射側から見た場合、開口311aの、液晶パネル308の表面に平行な断面における開口幅の中心は、液晶パネル308の表面の中心308aを通り、かつ、直線308bと直交する直線308cよりも上方に位置する。
液晶パネル308の表面上において、開口313aからの第1の空気流と開口311aからの第2の空気流とが衝突し、衝突噴流が発生する。この衝突噴流は、液晶パネル308の表面および該表面と対向する偏光板の表面にそれぞれ向かう旋回流を含む。衝突噴流となった流体は、液晶パネル308の表面側から見た場合に、液晶パネル308の表面上を、右斜め上方向に移動する。これにより、衝突噴流で流体が液晶パネル308から奪い取った熱を効率よく廃熱することができ、その分、冷却効果が増大する。つまり、熱伝導率を改善することができる。
図8から図10に示した液晶プロジェクタ装置においては、上部ダクト311が青色用の液晶パネル308にのみ形成されているが、これは、入射光の光エネルギーの違いにより、青色用の液晶パネル308における発熱量が、他の液晶パネル306、307に比べて大きいためである。
緑(G)用の液晶パネル307に対して上部ダクトを設けることもできる。図11に、上部ダクトを緑(G)用の液晶パネルに設けた冷却装置の構成を示す。
図11を参照すると、冷却装置は、上部ダクト311およびシロッコファン302からなる冷却部に代えて、上部ダクト311aおよびシロッコファン302aからなる冷却部を設けた以外は、図9に示した構成と同じである。
シロッコファン302aの吸気口は吸気ダクト312と連通している。シロッコファン302aも、シロッコファン302と同様、吸気ダクト312を介して、外気を取り込む。シロッコファン302aの吹出し口は上部ダクト311aと連通している。シロッコファン302aで発生した空気流は、上部ダクト311aを通って液晶パネル307に供給される。液晶パネル307の光が入射する側から見た場合の、上部ダクト311aおよび下部ダクト313と液晶パネル307との位置関係は、図10に示した位置関係と基本的に同じである。上部ダクト311aは、液晶パネル307の左上に位置する。
液晶パネル307の表面上において、下部ダクト313からの第1の空気流と上部ダクト311aからの第2の空気流とが衝突し、衝突噴流が発生する。この衝突噴流は、液晶パネル307の表面および該表面と対向する偏光板の表面にそれぞれ向かう旋回流を含む。衝突噴流となった流体は、液晶パネル307の表面側から見た場合に、液晶パネル307の表面上を、右斜め上方向に移動する。これにより、衝突噴流で流体が液晶パネル307の表面から奪い取った熱を効率よく廃熱することができ、その分、冷却効果が増大する。つまり、熱伝導率を改善することができる。
また、緑用の液晶パネル307および青用の液晶パネル308の双方に上部ダクトを設けることもできる。図12に、緑・青用の液晶パネル307、308の双方に上部ダクトを設けた冷却装置の構成を示す。
図12を参照すると、冷却装置は、図9に示した構成に、図11に示した上部ダクト311aおよびシロッコファン302aからなる冷却部を加えたものである。
この冷却装置によれば、液晶パネル308の表面上において、下部ダクト313からの第1の空気流と上部ダクト311からの第2の空気流とが衝突し、衝突噴流が発生する。そして、発生した衝突噴流が、液晶パネル308の表面上を右斜め上方向に移動する。これと同様に、液晶パネル307の表面上において、下部ダクト313からの第1の空気流と上部ダクト311aからの第2の空気流とが衝突し、衝突噴流が発生する。この衝突噴流は、液晶パネル307の表面上を、右斜め上方向に移動する。これにより、衝突噴流で流体が液晶パネル307、308の表面とおよび偏光板の表面から奪い取った熱を効率よく廃熱することができ、その分、冷却効果が増大する。つまり、熱伝導率を改善することができる。
なお、図8から図12に示した例では、青用の液晶パネルまたは緑用の液晶パネルもしくは両液晶パネルに対して上部ダクトを設けているが、赤用の液晶パネルに対して上部ダクトを設けても良い。
以上の本発明の冷却装置を適用した液晶プロジェクタ装置によれば、上部ダクトは、液晶パネルに隣接して設けられている、フレキシブルケーブル、フランジ、光学エンジンなどの障害物のない空間に配置される。また、液晶パネルの表面上で、第1の空気流と第2の空気流とを発生させ、それにより生じた衝突噴流を、障害物のない方向へ移動させる。これにより、熱せられた空気が冷却風として還流することを避けることができるので、液晶パネルの冷却効果がより増大する。
また、本発明の冷却装置を適用した液晶プロジェクタ装置において、上部ダクトの開口は、該開口を複数の開口部に分割するための少なくとも一つの仕切りを設けてもよい。図13に、そのような仕切りを有する上部ダクトの構成を示す。
図13において、(a)は上部ダクトの開口が設けられた面側から見た模式図、(b)上部ダクトの側面図である。上部ダクト400は、図1に示した上部ダクト101または図7に示した上部ダクト102であって、開口した部分(開口101aまたは開口102a)は、仕切り402により隔てられた2つの開口401a、401bを有する。仕切り402は、液晶パネル13の端部と対向する位置に設けられている。
液晶パネル13の入射面側には、偏光板12および光学補償板12aが配置されている。液晶パネル13の出射面側には、検光子14a、14b、14cが配置されている。偏光板12と光学補償板12aの間隔は1.5mmである。光学補償板12aと液晶パネル13の間隔は3.3mmである。液晶パネル13と検光子14aの間隔は3.1mmである。検光子14aと検光子14bの間隔は1.5mmである。検光子14bと検光子14cの間隔は1.0mmである。
液晶パネル13の厚さは5.7mmである。光学補償板12aの厚さは0.7mmである。検光子14a、14b、14cの厚さは、それぞれ1.0mm、0.5mm、1.5mmである。仕切り板402の幅t1は2mmで、厚さt2は1.5mmである。開口401aの幅は5.1mmであり、開口401bの幅は8.1mmである。
上部ダクト400の開口部分に仕切り402を設けたことで、開口401a、401bから吹出す空気流の流速(風速)が、仕切り402を設けない場合に比べて上がる。
液晶パネル13は5.7mmという厚さを有するため、上部ダクト400の開口部分に仕切り402を設けない場合は、この液晶パネル13の端部が、開口からの空気流の抵抗となってしまい冷却効率が低下してしまう懸念がある。
上部ダクト400の開口部分に仕切り402を設けることで、開口401a、401bから吹出す空気流の流速(風速)が、仕切り402を設けない場合に比べて上がる。開口401aからの空気流は、液晶パネル13および検光子14a、14b、14cの各間を通過する。開口401bからの空気流は、液晶パネル13、偏光板12、光学補償板12aの各間を通過する。このように、より流速(風速)の速い空気流により冷却を行うことが可能となっている。なお、偏光板12、光学補償板12a、検光子14a、14b、14cの厚さは、液晶パネル13に比べて十分に薄いので、偏光板12、光学補償板12a、検光子14a、14b、14cの各端部による空気流に対する抵抗はあまり問題にならない。
以上説明した本発明の冷却装置は、液晶ユニットに限定されるものではなく、互いの面が対向するように並設された複数の部材を有し、これら部材の少なくとも1つの部材の面が熱が放出される熱放出面を有する電子機器に適用することができる。適用可能な電子機器として、例えば複数のプリント回路板を並列に実装したラックユニットや、筐体内にICチップ基板が実装された小型の電子機器などがある。
また、本発明の冷却装置を適用した液晶プロジェクタ装置において、液晶パネルの入射面側および出射面側にはそれぞれ、偏光板または位相シフト板もしくは光学補償板のいずれか1つまたはそれらの組み合わせからなる光学素子を設けてもよい。この場合、液晶ユニット部は、これら液晶パネルおよび光学素子からなる。