JP5286986B2 - 降伏強度が低く、焼付硬化性の高い高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

降伏強度が低く、焼付硬化性の高い高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車、家電等においてプレス成形工程を経て使用されるプレス成形用高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
従来、フード、ドア、トランクリッド、バックドア、フェンダーといった耐デント性の要求される自動車外板パネルには、極低炭素鋼をベースにNb、Ti等の炭窒化物形成元素を添加して固溶C量を制御したTS:340MPaクラスのBH鋼板(焼付け硬化型鋼板、以後、単に340BHと呼ぶ)が適用されてきた。しかしながら、近年の車体軽量化ニーズの更なる高まりから、これらの外板パネルを更に高強度化して耐デント性を向上させ、鋼板を薄肉化しようとする検討が進められている。また、現状と同板厚で高強度化により耐デント性の向上を図ろうとする検討やBHの付与される焼付け塗装工程の低温、短時間化を図ろうとする検討も進められている。
これまでに使用されてきた340BHでは、プレス成形性の観点からプレス成形前の降伏応力(YP)は230MPa程度に抑えられ、耐デント性確保の観点からプレス成形および焼付け塗装後の降伏応力(YP’)は300MPa程度に調整されていた。しかしながら、板厚0.65〜0.80mmの340BHから板厚を0.05mm薄肉化するためには、プレス成形および焼付け塗装後の降伏応力YP’は350MPa程度にする必要があり、340BHやIF鋼などの固溶強化を主たる強化因子とした鋼では、YP’>350MPaを得るためにプレス成形前のYPを280〜320MPa程度に増加させる必要がある。この場合、YPの増加に起因してプレス成形品の面歪が顕在化する。また、耐デント性を向上させる場合、焼付け塗装工程を低温短時間化する場合も同様だが、YPの上昇を伴うため、面歪が顕在化する。ここで、面歪とはプレス成形面の微小なしわ、うねり状の模様であり、この面歪が生じるとドアやトランクリッドなどの意匠性、デザイン性を著しく損なう。このため、このような用途では、プレス成形前には極力低い降伏応力を有し、少なくとも現状の340BHと同等レベルの耐面歪性を有する鋼板であることが望まれる。
このような背景から、例えば、特許文献1には、C:0.005〜0.15%、Mn:0.3〜2.0%、Cr:0.023〜0.8%を含有する鋼の焼鈍後の冷却速度を適正化し、主としてフェライトとマルテンサイトからなる複合組織を形成させることで、低い降伏応力(YP)、高い加工硬化(WH)、高い焼付け硬化(BH)を兼ね備えた鋼板を得る方法が開示されている。また、特許文献2には、C:0.005〜0.05%、Mn:3%以下を含有する鋼においてマルテンサイトの平均粒子径を1.5μm以下、第2相におけるマルテンサイトの割合を60%以上として、更にフェライト粒の個数に対するマルテンサイト粒子の個数の比を0.7〜2.4とすることで耐面歪性と耐割れ成形性の両立を図る方法が開示されている。特許文献3には、C:0.010〜0.06%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:1%以下を含有する鋼の焼鈍後の冷却速度を適正化し、第2相中のマルテンサイトの面積率の割合を80%以上に高め、高延性でYRの低い鋼板が得られることが開示されている。更に、特許文献4には、Mn:1.5〜2.5%、Cr:0.03〜0.5%を含有する鋼でC:0.02〜0.033%とC量を少なくすることでフェライトとマルテンサイトからなる降伏応力の低い複合組織鋼板が得られることが開示されている。特許文献5には、C:0.01〜0.04%、Mn:0.3〜1.6%、Mo:0.5%以下を含有し、1.3≦Mn+1.29Cr+3.29Mo≦2.1%を満足する鋼を少なくとも550℃以下の温度域において100℃/sec以上の冷却速度で冷却し、鋼中の固溶Cを増加させ、高いBHを得る方法が開示されている。
特公昭62-40405号公報 特開2004-307992号公報 特開2001-207237号公報 特開2001-303184号公報 特開2006-233294号公報
上記特許文献1〜5に記載の鋼板は、TS:440MPa程度、YP:210〜260MPa程度であり、従来の固溶強化型の440MPa クラスのIF鋼のYP:320MPaと比べると、降伏応力は低く抑えられているので耐面歪性は改善される。
しかしながら、実際のドアなどにプレス成形を行うと、340BHと比べて面歪の発生量は依然として大きく、より一層のYPの低減が必要である。なお、上記文献に記載の鋼板では、いずれも焼鈍後に直ちに引張試験により強度が測定されているが、実際の溶融亜鉛めっき鋼板では、通常は安定したプレス成形性を得るために、めっき表面の粗度を調整したり、鋼板の幅、長手方向の形状を平坦化する目的で伸長率0.3〜0.5%のスキンパス圧延が実施され、YPは更に20〜30MPa増加する。このような観点からも、より一層のYPの低減が必要とされる。
また、特許文献5に記載されている方法は、550℃以下の温度域で100℃/sec以上の急速冷却を必要とするので、通常450〜500℃の温度域でめっき処理が施され、更に必要に応じて500〜600℃に加熱保持して合金化処理の施される現状の連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)には適用することが難しく、また、YPも必ずしも低くない。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、YPが低く、BHの高い高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、CGLを用いて従来の比較的強度の低い複合組織鋼板のYPをより一層低減し、かつ同時に高いBHを得るための方法について鋭意検討を行い以下の結論を得た。
(I) 従来鋼より更にMn当量を高め、CrとMnの組成比を所定範囲に制御することで、合金化処理を施す熱履歴においてもパーライト、ベイナイトの生成が抑制できるとともに、第2相の粗大化、分散形態の均一化も図れ、低いYPが得られる。更にはこのような組成範囲に制御することで所定量の固溶Cが確保でき、高いBHをも同時に付与できる。
(II) 更にこのような鋼において、熱間圧延後に急速冷却し、冷間圧延率を適正化することで圧延方向に対して45度方向のYPが圧延方向および圧延直角方向のYPと同等レベルまで低減でき、自動車のドアなどの部品の面歪の生じやすい取手周りにおいて、面歪を効果的に低減できる。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、鋼の成分組成として、質量%で、C:0.01%超0.04%未満、Si:0.1%以下、Mn:2%未満、P:0.025%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.02%以上0.3%以下、N:0.005%未満、Cr:0.5%超2%以下を含有し、更に2.2≦[Mneq]≦3および0.32≦[%Cr]/[%Mn]を満足し、残部鉄および不可避不純物からなり、鋼の組織として、フェライトと第2相を有し、第2相の面積率が2〜20%、第2相の平均粒子径が0.9〜5μm、第2相におけるパーライトもしくはベイナイトの面積率の割合が0〜10%であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。ここで、[Mneq]はMn当量であり、[Mneq]=[%Mn]+1.3[%Cr]を表し、[%Mn]、[%Cr]はMn、Crのそれぞれの含有量を表す。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板においては、2.3<[Mneq]<2.9を満足させたり、0.39≦[%Cr]/[%Mn]を満足させることが好ましい。
更に、質量%で、Mo:0.15%以下、V:0.2%以下、B:0.005%以下、Ti:0.014%未満、Nb:0.01%未満、Ni:0.3%以下およびCu:0.3%以下のうちの少なくとも1種を含有させることが好ましい。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記の成分組成を有する鋼スラブを、スラブ加熱温度:1100〜1300℃、仕上圧延温度:Ar 3 変態点以上、仕上圧延後の平均冷却速度:10〜200℃/sec、巻取温度:400〜720℃として熱間圧延し、冷間圧延した後、CGLにおいて、740℃超820℃未満の焼鈍温度で焼鈍し、前記焼鈍温度から3〜15℃/secの平均冷却速度で冷却し、亜鉛めっき浴に浸漬後、あるいは前記亜鉛めっき浴に浸漬後更にめっきの合金化処理を施した後、7〜100℃/secの平均冷却速度で冷却することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法により製造できる。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、仕上圧延後、3sec以内に冷却を開始して、40℃/sec以上の平均冷却速度で600℃以下まで冷却し、その後400〜600℃で巻き取り、70〜85%の圧延率で冷間圧延することが好ましい。
本発明によれば、YPが低くBHの高い高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造できるようになった。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、優れた耐面歪性と優れた耐デント性を兼ね備えているため、自動車部品の高強度化、薄肉化を可能にする。
発明の実施の形態
以下、本発明の詳細を説明する。なお、成分の量を表す%は、特に断らない限り質量%を意味する。
1) 成分組成
Mn:2%未満、Cr:0.5%超2%以下、2.2≦[Mneq]≦3、0.32≦[%Cr]/[%Mn]
Mn、Cr量の適正範囲を明確化するため、鋼組成と鋼板のYPの関係を調査した。C:0.020〜0.037%、Si:0.01%、Mn:1.2〜2.2%、P:0.01%、S:0.003%、sol.Al:0.04%、Cr:0.2〜1.2%、N:0.003%の組成のインゴットを真空溶解し、27mm厚のスラブを製造し、1250℃に加熱後、仕上圧延温度830℃で2.3mmまで熱間圧延し、620℃で1hrの巻取処理を施した。得られた熱延板を0.75mmまで圧延率67%で冷間圧延した。得られた冷延板に780℃×40secの焼鈍を施し、焼鈍温度から平均冷却速度4℃/secにて冷却し、460℃の亜鉛めっき浴に浸漬し、溶融亜鉛めっき処理を施した後、めっきを合金化処理するために460℃から530℃まで15℃/secで加熱して530℃で15secの保持を行い、その後100℃以下の温度域まで20℃/secの冷却速度にて冷却した。得られた鋼板より圧延方向と直角方向にJIS5号引張試験片を採取し、引張試験(JISZ2241に準拠)を実施した。
Mn、Cr量とYPとの関係を図1に示す。図中に示したMn当量は、上記[Mneq]のことである。なお、鋼板のTSは440〜460MPaである。また、第2相の割合はいずれの鋼板もC添加量を微調整することで4〜5%の範囲に制御してある。つまり、同一[Mneq]でもMn添加量が少なくなるほどFe-C状態図のA1およびA3線が高温、高C側にシフトするため、C添加量を調整しなければ第2相の面積率が少なくなりYPの比較が厳密にできなくなるためである。また、第2相の面積率は鋼板のL断面(圧延方向に平行な垂直断面)を研磨後ナイタールで腐食し、SEMで4000倍の倍率にて12視野観察し、撮影した組織写真を用いて測定した。組織写真で、フェライトはやや黒いコントラストの領域であり、炭化物がラメラー状もしくは点列状に生成している領域をパーライトおよびベイナイトとし、白いコントラストの付いている粒子をマルテンサイトもしくは残留γとした。また、250℃で4hrの焼戻し処理を施し、炭化物がラメラーもしくは点列状に生成している領域を熱処理前にパーライト、ベイナイト、マルテンサイトであった領域として再度その面積率を求め、白いコントラストのまま残存している微細粒子を残留γとしてカウントし、焼戻し熱処理前の面積率との差を計算し、パーライト+ベイナイト、マルテンサイト、残留γの面積率をそれぞれ区別した。このようにして求めた残留γの面積率の割合は、X線での定量解析の結果とでよく一致しており、1%未満であった。つまり、鋼板の組織は主として、フェライトとマルテンサイトとパーライトもしくはベイナイトからなることを確認した。なお、SEM写真上で認められる直径0.4μm以下の微細な点状粒子は、TEM観察より主に炭化物であり、また、これらの面積率は非常に少ないため、材質に殆ど影響しないと考え、ここでは0.4μm以下の粒子径の粒子は面積率や平均粒子径の評価から除外し、マルテンサイトと微量の残留γからなる焼戻し熱処理前の白いコントラストの粒子とパーライトおよびベイナイトからなるラメラーもしくは点列状の炭化物を含む組織を対象として面積率、平均粒子径を求めた。第2相の面積率はこれらの組織の総量を示す。平均粒子径は球状粒子の場合はその直径を採用したが、SEM画面上で楕円形の粒子の場合は、その長軸aと長軸と直角方向の単軸bを測定して(a×b)0.5をその相当粒子径とした。やや矩形形状を呈している粒子についてもここでは楕円形状の粒子と同様に扱い、上記の式に従い長軸と単軸を測定して粒子径を求めた。なお、第2相同士が隣接して存在している場合は、両者の接触部分が一旦粒界と同じ幅になっているものは別々にカウントし、粒界の幅より広い場合、つまりある幅で接触している場合は一つの粒子としてカウントした。
図1より、Mn当量すなわち[Mneq]が2.2以上の領域でYP≦210MPaが得られ、更に[Mneq]が2.3を超えるとYP≦200MPaに低減されることがわかる。これは[Mneq]の増加に伴い微細なパーライトおよびベイナイトの生成が抑制される効果と固溶Cが低減される効果による。つまり、パーライトもしくはベイナイトは微量でも鋼板のYPを上昇させており、この微量の微細なパーライト、ベイナイトが抑制されることでYPが低減されている。なお、このパーライト、ベイナイトはマルテンサイトに隣接して1μmかそれ以下の微小サイズで生成しており、光学顕微鏡やSEMの2000倍程度では識別することが難しいが、SEMで少なくとも3000倍以上の倍率で認められる。[Mneq]が2.2未満の領域ではパーライトもしくはベイナイトの面積率の総量が第2相の面積率に対して10%を超えて含まれており、[Mneq]が2.3を超えると7%以下に低減されていた。
しかしながら、同一[Mneq]でもCrとMnの組成比を適正化しなければ十分低いYPは得られず、0.32≦[%Cr]/[%Mn]に制御することで低いYPが得られることがわかる。また、0.39≦[%Cr]/[%Mn]に制御することでより低いYPが得られている。これは、Mn当量を制御するのにMn量を増加させて調整しようとすると、めっき処理を必要とし焼鈍後に緩冷却が施されるCGLの熱履歴では第2相が微細かつ不均一に分散して、必ずしも十分なYPの低減にはつながらない。これに対して、MnとCrの組成比を所定範囲に制御することで組織が均一、粗大化するためである。例えば、[Mneq]が2.5〜2.6の1.6%Mn-0.8%Cr鋼と1.8%Mn-0.6%Cr鋼と2.2%Mn-0.2%Cr鋼を比較すると平均粒子径は、順に1.2μm、1.1μm、0.8μmと変化する。また、Mn量が2%以上となるとマルテンサイトが微細化しすぎ、さらにMnの固溶強化量も大きくなりすぎるので、十分低いYPを得ることはできなくなる。このように、十分低いYPを得るためには、[Mneq]、[%Cr]/[%Mn]、Mn量の全てを適正化する必要があり、これらを適正範囲に制御することでパーライトやベイナイトの抑制、組織の均一、粗大化の双方が同時に達成され、低いYPを有する鋼が得られる。YPが210MPa以下の鋼板はいずれもこのような第2相におけるパーライトもしくはベイナイトの面積率が0%以上10%以下であり、かつ第2相の平均粒子径が0.9μm以上5μm以下を満たすものである。
更に、上記鋼板のBHを調査した。BHは上記と同一の引張試験片に2%の予歪を付与し、170℃で20minの熱処理を施した後のYPの増加量として求めた。その結果、[Mneq]とMnとCrの組成範囲が適正化された鋼板ではBH≧50MPaが得られ、特にMn量が1.7%未満の領域の鋼ではBH≧60MPaが得られており、このような鋼では、YPが極めて低く、かつBHも高い値を有していることが明らかになった。
以上より、本発明では、[Mneq]は2.2以上、より好ましくは2.3超とする。一方、[Mneq]が増加しすぎるとMn、Crの増加によるめっき鋼板の外観品質の劣化や合金元素の多量添加によるコスト増を招くと同時に、BHが低下するので、[Mneq]は3以下とし、好ましくは2.9未満とする。
[%Cr]/[%Mn]は、第2相の粗大化とその分散形態の均一化による低YP化の観点から0.32以上とする。組織のより一層の均一、粗大化の観点からは[%Cr]/[%Mn]≧0.39とすることが望ましく、より望ましい範囲は[%Cr]/[%Mn]≧0.52である。
Mn量は、パーライトおよびベイナイトの生成を抑制し、フェライト中の固溶C低減するため、低YP化の観点から添加されるが、その添加量が多すぎると第2相が微細化、不均一化するとともにフェライトのMn固溶強化量が増加するのでYPが上昇する。また、Mnの過剰添加はBHの低下を招く。したがってMn量は2%未満にする必要がある。より一層低YP化する観点からはMn量は1.8%以下とすることが望ましい。更なる低YP化ならびに高いBHの両立の観点からは、Mn量は1.7%未満とすることがより望ましい。Mn量の下限は特に設けないが、Mn量が0.1%以下ではMnSの析出による赤熱脆性が生じて表面欠陥が生じやすくなるので、Mn量は0.1%以上とするのが望ましい。
Cr量は、Mn量に応じて[Mneq]や[%Cr]/[%Mn]が上記の範囲になるように制御する必要があるが、Cr量は少なくとも0.5%を超えて添加する必要がある。一方、Cr量が2%を超えるとコスト増やめっき鋼板の表面品質の劣化を招くので、Cr量は2%以下とする。
C:0.01%超0.08%未満
Cは所定量の第2相の面積率の割合を確保するために必要な元素である。Cの添加量が少なすぎると十分な第2相が確保できなくなり、低いYPが得られなくなる。更に、十分なBHが確保できなくなると同時に耐時効性も劣化する。十分な第2相を確保するためにはC量は0.01%を超えて添加する必要がある。一方、C量が0.08%以上となると第2相の面積率の割合が多くなりすぎてYPが増加する。したがって、C量の上限は0.08%未満とする。より低いYPを得るためにはC量は0.06%未満とすることが望ましく、さらに低いYPを得るためにC量は0.04%未満とすることがより好ましい。
Si:0.1%以下
Siは固溶強化量が大きく、低YP化の観点からは極力少なくする方がよい。ただし、Siは微量添加することで熱間圧延でのスケール生成を遅延させて表面品質を改善する効果、めっき浴中あるいは合金化中の地鉄と亜鉛の合金化反応を適度に遅延させる効果、鋼板のミクロ組織をより粗大化する効果等があるので、YP上昇への悪影響の小さい0.1%以下の範囲で添加することができる。
P:0.025%以下
Pは固溶強化量が大きく、低YP化の観点からは極力少なくする方がよい。ただし、めっき浴中あるいは合金化中の地鉄と亜鉛の合金化反応を適度に遅延させる効果、鋼板のミクロ組織をより粗大化する効果等があるので、YP上昇への悪影響の小さい0.025%以下の範囲で添加することができる。
S:0.02%以下
Sは鋼中でMnSとして析出するが、その含有量が多いと鋼板の延性を低下させ、プレス成形性を低下させる。また、スラブを熱間圧延する際に熱間延性を低下させ、表面欠陥を発生させやすくする。このため、S量は0.02%以下とするが、少ないほど好ましい。
sol.Al:0.3%以下
Alは脱酸元素、あるいはNをAlNとして固定して耐時効性を向上させる元素として利用されるが、熱間圧延後の巻き取り時もしくは焼鈍時に微細なAlNを形成してフェライトの粒成長を抑制し、低YP化をわずかに阻害する。鋼中の酸化物を低減する、あるいは耐時効性を向上させる観点からは、sol.Alは0.02%以上添加するのが良い。一方、粒成長性を向上させる観点からは、巻取温度を620℃以上に高温化することでフェライトの粒成長性は向上するが、微細なAlNは少ないほど好ましい。それには、sol.Al量を0.15%以上としAlNを巻き取り時に粗大に析出させることが好ましいが、0.3%を超えるとコスト増を招くので、sol.Al量は0.3%以下とする。ただし、sol.Alが0.1%を超えて添加されると、鋳造性を劣化させ、表面品質の劣化原因になるので、表面品質を厳格管理することが求められる外板パネル用途では、sol.Al量は0.1%以下とするのが好ましい。
N:0.01%以下
Nは、熱間圧延後の巻き取り時もしくは焼鈍時に析出して微細なAlNを形成し、粒成長性を阻害する。このため、N量は0.01%以下とするが、少ないほど好ましい。また、N量が増加すると耐時効性の劣化を招く。粒成長性の向上ならびに耐時効性の向上の観点からは、N量は0.008%未満とすることが望ましく、更には0.005%未満とすることがより好ましい。
残部は、鉄および不可避不純物であるが、更に以下の元素を所定量含有させることもできる。
Mo:0.15%以下
MoはMn、Crと同様に焼入元素であり、めっき鋼板の表面品質改善の目的で添加することができる。しかしながら、過剰に添加されると、Mnと同様に組織を微細化、硬質化してYPを増加させるので、本発明ではYP上昇への影響が小さい0.15%以下の範囲で添加することが好ましい。YPを一層低減する観点からは、Mo量は無添加(不純物として混入する0.02%以下)とすることが望ましい。
V:0.2%以下
Vは同様に焼入元素であり、めっき鋼板の表面品質改善の目的で添加することができる。しかしながら、Vは0.2%を超えて添加すると著しいコスト上昇を招くので、Vは0.2%以下の範囲で添加することが好ましい。
B:0.005%以下
Bは同様に焼入元素として活用することができる。また、NをBNとして固定して粒成長性を向上させる作用がある。本発明鋼において0.001%超のBを添加することで、フェライトの粒成長性の向上効果が得られ、極めて低いYPを得ることができるとともに、BHが増加する。このため、低YPと高BHのバランスをさらに改善することができる。したがって、Bは0.001%超含有させることが望ましい。しかしながら、Bを過剰に添加すると焼入性が低下するとともに、残存する固溶Bの影響で組織が逆に微細化するので、B量は0.005%以下とすることが望ましい。
Ti:0.014%未満
TiはNを固定して耐時効性を向上させる効果や鋳造性を向上させる効果がある。しかし、鋼中でTiN、TiC、Ti(C,N)等の微細な析出物を形成し粒成長性を阻害するので、低YP化の観点からは、Ti量は0.014%未満とすることが好ましい。
Nb:0.01%未満
Nbは熱間圧延での再結晶を遅延させて集合組織を制御し、圧延方向と45度方向のYPを低減する効果を有する。しかしながら、鋼中で微細なNbC、Nb(C,N)を形成して粒成長性を著しく劣化させるので、NbはYP上昇の影響の少ない0.01%未満で含有させることが望ましい。
Cu:0.3%以下
Cuはスクラップ等を積極活用するときに混入する元素であり、Cuの混入を許容することでリサイクル資材を原料資材として活用でき、製造コストを削減することができる。本発明成分鋼では材質に及ぼすCuの影響は小さいが、過剰に混入すると表面キズの原因となるので、Cu量は0.3%以下とするのがよい。
Ni:0.3%以下
Niも鋼板の材質に対する影響は小さいが、Cuを添加する場合に表面キズを低減する観点から添加することができる。しかしながら、Niは過剰に添加するとスケールの不均一性に起因した表面欠陥を助長するので、Ni量は0.3%以下とするのが望ましい。
2) 組織
フェライトと第2相
本発明の鋼板は、主としてフェライトと、第2相であるマルテンサイト、パーライト、ベイナイト、微量の残留γ、炭化物からなる。このなかで炭化物の面積率は1%未満と少ない。フェライト粒は、粗大化しすぎるとプレス成形時に肌荒れなどが生じるので、その粒径は4〜15μmにするのが好ましい。
第2相の面積率:2〜20%
鋼板のYPElを低減してYPを十分低減させるためには、第2相の面積率は2%以上である必要がある。また、これにより高いWH、高いBH、優れた耐時効性など外板パネルに求められる機能を付与することができる。しかしながら、第2相の面積率が20%を超えると十分低いYPが得られない。したがって、第2相の面積率は2〜20%の範囲とする。なお、第2相はSEMで4000倍の倍率で観察されたマルテンサイト、パーライト、ベイナイト、微量の残留γのことである。
第2相の平均粒子径:0.9〜5μm
上述したように、本発明の鋼板はフェライト、マルテンサイト、パーライト、ベイナイト、残留γからなる組織を有するが、その大部分はフェライトとマルテンサイトである。マルテンサイトが微細に不均一分散するとYPが上昇することが本発明者らの実験で明らかになった。また、TEMで観察すると、マルテンサイトの周囲には焼入時に付与された転位が多数導入されているが、マルテンサイトが微細で、かつ不均一に分散していると、マルテンサイト周囲の転位の導入されている領域が互いにオーバーラップしていることが明らかになった。従来、フェライトとマルテンサイトからなる複合組織鋼のYPが低い原因として、硬質なマルテンサイトが存在しており、かつマルテンサイトの周囲に転位が多数導入されており、また、弾性的な歪も残存しているため、塑性変形時にこのようなマルテンサイトの周囲から容易に塑性変形が開始すると解釈されているが、マルテンサイトが不均一に微細分散した鋼板では、このようなマルテンサイトの周囲の転位はすでに絡み合った状態であり、初期の低い応力からの変形に寄与しにくいと考えられる。いずれにせよ、YPを低減するためには第2相の粒子径は大きいほどよく、[Mneq]の高い本発明の鋼板において十分YPを低減するためには第2相の平均粒子径は少なくとも0.9μm以上とすることが必要である。一方、第2相の粒径が5μmを超えるとフェライト粒径も著しく粗大化させる必要があり、プレス成形時に肌荒れが生じることが懸念されるため、第2相の粒子径は5μm以下とする。
第2相中のパーライトもしくはベイナイトの面積率の割合:0〜10%
焼鈍後に緩冷却が施され、特に合金化処理も施される場合、[Mneq]が適正化されていなければ、主にマルテンサイトに隣接して微細なパーライトもしくはベイナイトが生成し、低YP化を妨げる。パーライトもしくはベイナイトの第2相中の面積率の割合を0〜10%とすることで十分な低YP化が図られるが、その面積率の割合を0〜7%とすることが好ましい。
3) 製造条件
本発明の鋼板は、上述したように、上記のように限定された成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延および冷間圧延した後、CGLにおいて、740℃超820℃未満の焼鈍温度で焼鈍し、前記焼鈍温度から3〜15℃/secの平均冷却速度で冷却し、亜鉛めっき浴に浸漬後、あるいは前記亜鉛めっき浴に浸漬後更にめっきの合金化処理を施した後、7〜100℃/secの平均冷却速度で冷却する方法により製造できる。
熱間圧延
鋼スラブを熱間圧延するには、スラブを加熱後圧延する方法、連続鋳造後のスラブを加熱することなく直接圧延する方法、連続鋳造後のスラブに短時間加熱処理を施して圧延する方法などで行える。熱間圧延は、常法にしたがって実施すればよく、例えば、スラブ加熱温度は1100〜1300℃、仕上圧延温度はAr3変態点以上、仕上圧延後の平均冷却速度は10〜200℃/sec、巻取温度は400〜720℃とすればよい。外板パネル用の美麗なめっき表面品質を得るためには、スラブ加熱温度は1200℃以下、仕上圧延温度は840℃以下とするのがよい。また、鋼板表面に生成した1次、2次スケールを除去するためにデスケーリングを十分に行うことが望ましい。YP低減の観点からは、巻取温度は高い方が望ましく、巻取温度は640℃以上とするのが良い。680℃以上の巻取温度では、熱延板の状態でMnやCrを十分第2相に濃化させることができ、その後の焼鈍工程でのγの安定性を向上させ、低YP化に寄与する。一方、ドア取手部のように、45度方向の材料流入と材料収縮がエンボス外周の面歪に大きな影響を及ぼすような形状のパネル部品に鋼板を適用する場合、この45度方向のYPを低く抑えることが面歪の低減に有効と考えられるので、このような用途の場合は、仕上圧延後3sec以内に冷却を開始し、40℃/sec以上の平均冷却速度にて600℃以下まで冷却し、その後400〜600℃で巻き取ることが好ましい。このような熱延条件とすることで、主としてベイナイトからなる微細な低温変態相を面積率で30%以上生成させることができ、45度方向のYPを相対的に低く抑える集合組織の発達を増長する。通常、C、Mn、Crからなる複合組織鋼板を常法に従い製造すると、圧延45度方向のYP(YPD)が圧延方向のYP(YPL)や圧延直角方向のYP(YPC)と比べて5〜15MPa高くなる傾向があるが、上記の熱延条件により、-10≦YPD-YPC≦5MPaの範囲に抑えることができる。
冷間圧延
冷間圧延では、圧延率を50〜85%とすればよい。圧延率を50〜65%に低下させればYPCは低減される。しかし、圧延率を低下させると45度方向のYPが相対的に増加して異方性も大きくなるので、ドア取手部のような用途の鋼板に対しては、圧延率を70〜85%にすることが好ましい。
CGL
冷間圧延後の鋼板には、CGLで焼鈍とめっき処理が施される。焼鈍温度は740℃超820℃未満とする。740℃以下では炭化物の固溶が不十分となり、安定して第2相の面積率が確保できなくなる。820℃以上では焼鈍中のγの割合が多くなりすぎてγへのMn、C等の元素濃化が不十分になり、十分低いYPが得られなくなる。これは、γへの元素濃化が不十分になることで、マルテンサイトの周囲に十分な歪が付与されなくなるとともに焼鈍後の冷却過程でパーライト、ベイナイト変態が生じ易くなるためと考えられる。均熱時間は通常の連続焼鈍で実施される740℃超の温度域で20sec以上とすればよく、40sec以上とすることがより好ましい。均熱後は、焼鈍温度から通常450〜500℃に保持されている亜鉛めっき浴の温度まで平均冷却速度3〜15℃/secで冷却する。冷却速度が3℃/secより遅い場合、550〜650℃の温度域でパーライト生成ノーズを通過するため、第2相中にパーライトおよびベイナイトが多量に生成し、十分低いYPが得られなくなる。一方、冷却速度が15℃/secより大きくなると、焼鈍温度から650℃までの温度域においてγ→α変態によるγへのMn、Cr、C等の濃化が起こり、480〜550℃の温度域においてγ→α変態および炭化物析出によるフェライト中の固溶Cの低減を十分促進させることができなくなり、低YP化することができなくなる。
その後、亜鉛めっき浴に浸漬されるが、必要に応じて500〜650℃の温度域で30sec以内保持することにより合金化処理を施すこともできる。従来の[Mneq]が適正化されていない鋼板ではこのような合金化処理を施すことにより材質が著しく劣化していたが、本発明の鋼板ではYPの上昇が小さく、良好な材質を得ることができる。亜鉛めっき浴浸漬後あるいは合金化処理後は、平均冷却速度7〜100℃/secの冷却速度で冷却する。冷却速度が7℃/secより遅いと550℃付近でパーライトが、また400℃〜450℃の温度域でベイナイトが生成してYPを上昇させる。一方、冷却速度が100℃/secより大きいと連続冷却中に生じるマルテンサイトの自己焼戻しが不十分となってマルテンサイトが硬質化しすぎてYPが上昇すると共に延性が低下する。現状のCGLでは難しいが、焼戻し調質処理の可能な設備が設置できれば、300℃以下の温度で短時間の過時効処理を施すこともでき、BH性は少し低下するが、より一層の低YP化が可能である。
得られた亜鉛めっき鋼板は、本発明である第2相の面積率、第2相平均粒子径、所定のパーライトおよびベイナイトの面積率の割合に制御されていれば、めっき処理ままでYPElは0.5%未満でありYPも十分低いのでそのままプレス成形用鋼板として使用することもできる。しかしながら、上述したとおり、表面粗度の調整、板形状の平坦化などプレス成形性を安定化させる観点から通常スキンパス圧延が施されるが、その場合は低YP、高El、高WH化の観点からその伸長率は0.3〜0.5%とするのが好ましい。
表1に示す鋼番A〜ABの鋼を溶製後、230mm厚のスラブに連続鋳造した。このスラブを1180〜1250℃に加熱後、830℃(鋼番A〜E、H〜X、AA、AB)、870℃(鋼番F、Y)、900℃(鋼番G、Z)の仕上圧延温度にて熱間圧延を施した。その後、20℃/secの平均冷却速度で冷却し、640℃にて巻き取った。得られた熱延板は67%の圧延率にて冷間圧延を施し、板厚0.75mmの冷延板とした。得られた冷延板は、CGLにおいて、表2、3に示す焼鈍温度AT、冷却速度にて焼鈍を施し、冷却過程で溶融亜鉛めっき処理を施した。ここで、焼鈍温度ATからめっき浴温度までの冷却工程を1次冷却、めっき浴温度あるいは合金化する場合には合金化温度からの冷却を2次冷却とし、その平均冷却速度を表2、3に示してある。また、合金化処理は、めっき浴浸漬後、15℃/secの平均加熱速度で510〜530℃まで加熱してめっき中Fe含有量が9〜12%の範囲になるように10〜25secの保持して行った。めっき付着量は片側あたり45g/m2とし両面に付着させた。得られた溶融亜鉛めっき鋼板は未調圧(調質圧延無し)の状態でサンプル採取した。
得られたサンプルについて、先に述べた方法にて第2相の面積率、第2相の平均粒子径、第2相中のパーライトもしくはベイナイトの面積率の割合を調査した。さらに、圧延方向と直角方向よりJIS5号試験片を採取して引張試験(JISZ2241に準拠)を実施し、YP、TSを評価した。また、上記と同一の試験片に2%の予歪を付与し、170℃で20minの熱処理を施した後のYPの増加量であるBHを求めた。
結果を表2、3に示す。
本発明例の鋼板は、同一TSレベルの材料と比較して低いYPを有している。もしくは同一YPレベルの鋼板と比較して高いTSすなわち低いYRを有している。例えば、未調圧の状態で、TS:426〜503MPaの鋼板では、YRは43〜46%と低い。TS:400MPa未満の鋼板では、YRは51%と高めであるが、YPはYP:184MPaと極めて低い。とりわけ、[Mneq]が2.3超で、かつ[%Cr]/[%Mn]が0.39以上に適正化された鋼板は、第2相の粒子径が大きく、パーライトとベイナイトの生成が低く抑えられ、さらにMnや固溶Cによる固溶強化も低減されているので、低いYPを有している。鋼番A、B、Cの鋼では、[Mneq]が順次増加しているが、[%Cr]/[%Mn]が0.38と同一なので、[Mneq]の増加に伴いパーライト、ベイナイトの生成量は低減されているものの、組織が微細化し焼鈍温度775℃の条件で、YPは204〜208MPaの範囲となっている。これに対して、[Mneq]を2.3超に増加させつつ[%Cr]/[%Mn]を0.39以上に調整した鋼番D、Eの鋼等では鋼番A、B、Cと同じ製造条件では、YPは193〜198MPaと非常に低く抑えられている。また、このような鋼では、合金化処理有無によるYPの変化が非常に小さく抑えられている。例えば、鋼番Dの焼鈍温度775℃の鋼板では、合金化処理有無でのYPの差は2MPaと小さく、合金化処理によるYP上昇が抑制されている。すなわち、本発明例の鋼板は合金化処理を施しても良好な材質を得ることができ、このような用途に好適である。また、Cを増加させたときのYPの上昇も非常に小さく、鋼番J、K、L、Mと順次Cを0.07%まで増加させてもYPは229MPa以下に抑えられており、Cの変化に対するYPの変化が小さく、YRの低い鋼板が安定して得られる。
また、本発明例の鋼板は、YPを極めて低く抑えつつもBH≧50MPaの高いBHが得られており、特にMn量が1.7%未満の鋼板でBH≧60MPa、さらにはMn量が1.5%未満ではBH≧70MPaが得られている。このため、YPを低減しても十分高い耐デント性が得られ、耐面歪性の向上と耐デント性の向上に寄与する。
これに対して、[Mneq]の少ない鋼番S、Tはパーライト、ベイナイトの生成量が多く、同一強度レベルの本発明例の鋼板よりもYPが高い。また、焼鈍後の冷却速度が遅い鋼板ではBHが低い。また、[Mneq]は所定範囲にあっても[%Cr]/[%Mn]が適正化されていない鋼番Uはマルテンサイトが微細でMnの固溶強化量も大きいので十分低YP化することができない。Moが添加された鋼番Vは組織が微細化する傾向があり、YPが高い。C量が所定範囲になく、結果的として第2相の体積率が所定範囲にない鋼番Wでは、低いYPが得られない。P、Siの添加量の多い鋼番AA、ABは組織は粗大化するものの固溶強化量が大きくなりすぎ、低いYPが得られない。
Figure 0005286986
Figure 0005286986
Figure 0005286986
表1に示した鋼番Dの組成のスラブを1200℃に加熱し、830℃の仕上圧延温度にて熱間圧延後、表4に示す種々の時間保持して冷却開始時間を調整し、表4に示す種々の冷却速度にて600℃まで冷却し、表4に示すCTで巻取処理を施した。得られた熱延板について77%の圧延率で冷間圧延し、CGLにおいて、775℃で焼鈍後、1次平均冷却速度4℃/secで冷却し、次いで溶融亜鉛めっきを施し、520℃×20secの合金化処理をした後、2次平均冷却速度20℃/secの条件にて冷却を行った。得られた鋼板より圧延方向と直角方向(C方向)、圧延方向と45度方向(D方向)よりJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を実施した。また、圧延方向と直角方向より採取したJIS5号引張試験片を用いて、実施例1と同様の方法にて、BHを測定した。
結果を表4に示す。
仕上圧延後3sec以内に40℃/sec以上の冷却速度で急冷することで、圧延方向と45度方向のYPが低く抑えられる。このように熱延条件を制御することで、圧延方向と45度方向に極めてYPの低い本発明の鋼板は、ドアの取手回りの面歪を効果的に低減できると考えられる。
Figure 0005286986
Mn、Cr量とYPとの関係を示す図。

Claims (6)

  1. 鋼の成分組成として、質量%で、C:0.01%超0.04%未満、Si:0.1%以下、Mn:2%未満、P:0.025%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.02%以上0.3%以下、N:0.005%未満、Cr:0.5%超2%以下を含有し、更に2.2≦[Mneq]≦3および0.32≦[%Cr]/[%Mn]を満足し、残部鉄および不可避不純物からなり、鋼の組織として、フェライトと第2相を有し、第2相の面積率が2〜20%、第2相の平均粒子径が0.9〜5μm、第2相におけるパーライトもしくはベイナイトの面積率が0〜10%であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板;ここで、[Mneq]はMn当量であり、[Mneq]=[%Mn]+1.3[%Cr]を表し、[%Mn]、[%Cr]は、Mn、Crのそれぞれの含有量を表す。
  2. 2.3<[Mneq]<2.9を満足することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 0.39≦[%Cr]/[%Mn]を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 更に、質量%で、Mo:0.15%以下、V:0.2%以下、B:0.005%以下、Ti:0.014%未満、Nb:0.01%未満、Ni:0.3%以下およびCu:0.3%以下のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼スラブを、スラブ加熱温度:1100〜1300℃、仕上圧延温度:Ar 3 変態点以上、仕上圧延後の平均冷却速度:10〜200℃/sec、巻取温度:400〜720℃として熱間圧延し、冷間圧延した後、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)において、740℃超820℃未満の焼鈍温度で焼鈍し、前記焼鈍温度から3〜15℃/secの平均冷却速度で冷却し、亜鉛めっき浴に浸漬後、あるいは前記亜鉛めっき浴に浸漬後更にめっきの合金化処理を施した後、7〜100℃/secの平均冷却速度で冷却することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  6. 仕上圧延後、3sec以内に冷却を開始して、40℃/sec以上の平均冷却速度で600℃以下まで冷却し、その後400〜600℃の巻取温度で巻き取り、70〜85%の圧延率で冷間圧延することを特徴とする請求項5に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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