ここ数年で携帯無線端末は急激な普及を果たし、利用可能な周波数資源は世界的に枯渇しつつある。また、リッチコンテンツの増加、サービスの多様化等から、市場からは大容量・高速度通信の要求も高まりつつある。これらを受けて、現在の第3世代方式(3G:3rd Generation)での利用周波数拡大、および大容量・高速度通信に対応するための次世代方式(LTE:Long Term Evolution)に対応するため、従来からのLow−Band(WCDMA、CMDA2000、AMPS、EGSM等の800〜900MHz帯)とHigh−Band(WCDMA、CMDA2000、DCS、PCS等の1700〜2100MHz帯)に加えて、Mid−Band(WCDMA Band IXの1.5GHz帯)を携帯無線端末で利用することが可能となった。さらに、多機能化が進み、国際ローミング、ワンセグ視聴、GPS、無線LAN、Bluetooth等、さまざまな無線通信方式への対応が必須となってきている。このため、携帯無線端末に内蔵されるアンテナは、限られたスペースの中で複数のアンテナエレメントを配置する事を求められている。
各アンテナエレメントは、各々が対応する周波数帯の波長に対して十分離間させて配置させれば、各アンテナエレメントの特性を確保しつつ各アンテナエレメント間の相互干渉による劣化も抑制可能であるが、携帯無線端末の小型化、薄型化に加え、上記のとおり多機能化を実現するために、無線端末内の或る一部分に複数のアンテナエレメントを配置する事が必要となってきている。
ここで、複数のアンテナエレメントからなるアンテナを備える無線装置において、装置内の或る一部分に当該アンテナが配置される場合がある。例えば、1つの筐体からなるストレート型の携帯無線端末では長辺方向の筐体端部、また、折り畳み型や2軸回転型のように操作側と表示側の2つの筐体からなり、両筐体を回動可能に接続するヒンジ部を有する携帯無線端末ではヒンジ部、或いは、操作側筐体のヒンジ部とは反対側の端部等、まとまったスペースが取りやすい領域にアンテナが配置される場合が多い。このとき、上記アンテナ内での各アンテナエレメントの配置は、当該アンテナのアンテナ特性を考える上で非常に重要となる。特に、3つのアンテナエレメントを備える複雑なアンテナにおいて、各アンテナエレメントのより好ましい配置を提供することは非常に有用である。
3つのアンテナエレメントを同一のスペースに配置する従来技術として、図12に示された折り畳み型の携帯無線端末、ならびに、特許文献1および特許文献2が開示されている。
まずは、図12を参照して、従来技術におけるアンテナエレメントの配置を、折り畳み型の携帯無線端末のヒンジ部に配置される場合について説明する。従来技術におけるアンテナエレメントの配置を、折り畳み型の携帯無線端末のヒンジ部に配置する場合について説明する。図12は、従来技術に係る携帯無線端末900のアンテナが配置された筐体901の内部を示す透視図であり、(a)は携帯無線端末900の透視上面図であり、(b)は携帯無線端末900の透視側面図であり、(c)は図12(a)からアンテナ土台915とアンテナエレメント911および913を除いた状態を示す図である。
図12(b)に示すように、携帯無線端末900は、第1の筐体901および第2の筐体902を備え、連結部材903によって2つの筐体が開閉可能に接続されている。
携帯無線端末900は、セルラー通信のために、800〜900MHz帯で動作する第1のアンテナエレメント911と、1.7〜2.1GHz帯で動作する第3のアンテナエレメント913と、セルラー通信用無線部回路921とを備えており、GPSの利用のために、1.5GHz帯で動作する第2のアンテナエレメント912と、GPS用無線部回路923とを備えている。セルラー通信用無線部回路921とGPS用無線部回路923とは、第1の筐体901に内蔵された回路基板920上に設けられている。回路基板920上にはまた、カメラ922が設置されている。
図12(a)に示すように、第1のアンテナエレメント911および第3のアンテナエレメント913は、回路基板920上に配置されたアンテナ土台915上に形成されており、筐体901内の最も外側に配置されている。一方、図12(c)に示すように、第2のアンテナエレメント912は、回路基板920上に形成されている。
一般に、アンテナは導体部品から離れて配置されるほど、或いはアンテナから放射される電磁波をシールドする部品が少ないほど、良好なアンテナ特性を得ることができる。また、図12(a)を参照して説明すると、第1および第3のアンテナエレメント911・913とセルラー通信用無線部回路921とを接続する第1および第3の接続用端部911b・913bに近い方に導体部品が近接するよりも、第1および第3の接続用端部911b・913bの反対側の端部を含む第1および第3の先端領域911a・913aに導体部品が近接した方が、よりアンテナ特性の劣化が大きくなる。ここでいうアンテナ特性とは、放射効率、帯域幅のことを指すが、同じアンテナ寸法で比較すると、放射効率と帯域幅とは相反する関係となる。つまり、放射効率を上げると帯域幅が狭くなり、帯域幅を広く取ろうとすると放射効率が下がるという関係になる。この観点から説明すると、図12のアンテナエレメントの配置では、回路基板920上の第2のアンテナエレメント912をシールドするように、その上方に第1のアンテナエレメント911および第3のアンテナエレメント913が配置されているため、また、図12(b)のように第2の筺体902が近い場合グランドが近づくことになるため、第2のアンテナエレメント912のアンテナ特性は悪くなるが、第2のアンテナエレメント912は、第1のアンテナエレメント911および第3のアンテナエレメント913のアンテナ特性に及ぼす影響は小さい。
ここで、第2のアンテナエレメント112の放射効率を上げるためには、上述したとおり帯域幅を狭くする必要があるが、例えば、第2のアンテナエレメント912が動作する周波数帯がGPS帯(帯域幅:約2MHz)の場合は動作周波数帯域が狭いため、不利なアンテナエレメントの配置でも放射効率を上げるのは比較的容易である。一方、帯域幅が比較的広いセルラー通信(WCDMA Band XIの帯域幅:約70MHz)に第2のアンテナエレメント912を用いる場合、GPS用途に比べて約35倍もの帯域幅を要するため、放射効率と帯域幅の両特性を同時に確保するためにはアンテナ寸法の増大が不可欠になり、昨今の携帯無線端末に対する小型化・薄型化の要求に反する。
次に、他の従来技術として、特許文献1および特許文献2について説明する。
特許文献1に記載の実施例では、アンテナエレメント配置領域のグランド近い端部側にループ状電極の先端領域を配置しているため、ループ状電極に対応する周波数帯のアンテナ特性を犠牲にしている。また、特許文献1の別の実施例では、アンテナエレメント配置領域のグランドに近い端部にモノポール状電極の先端領域を配置しているため、モノポール状電極で対応する周波数帯のアンテナ特性を犠牲にしている。このように、特許文献1においては、ループ状電極とモノポール状電極の相互干渉による特性劣化を回避するために、どちらかのアンテナ特性を犠牲にせざるを得ない構成になっている。また、図12に示される従来技術や特許文献1のように、回路基板上にアンテナを形成する場合、折り畳み型の携帯無線端末のように、折りたたんだ状態になると操作側と表示側の2つの筐体が略重なるため、アンテナの下部、または、上部に大きなグランドが近づくことになり、アンテナ特性の劣化が大きい。
特許文献2では、対応周波数帯ごとに共振するアンテナエレメントを有するものではなく、3つのアンテナエレメントのうち少なくとも2つを電磁的に結合させることで3つ目の共振を発生させるような構成も提案されている。しかし、結合によって共振を発生させるアンテナの多くはそのアンテナの特性が狭帯域になることが多い。即ち、狭帯域になる周波数帯の特性を犠牲にしている。また、実施例に記載されているとおり、アンテナエレメントの形状が非常に複雑になりやすい上に、アンテナの共振周波数を調整するために精密な設計が要求される等、実際に使用するには課題が多い。
このように特許文献1および特許文献2では、3つの共振を得るために、アンテナの給電点を2箇所に分けたり、複雑なアンテナ形状であったりと、アンテナのエレメントの引き回しが非常に重要となっている。
しかし、例えばBand XI帯を利用するWCDMA方式のように、Low/Mid/High−Bandに対応する3つのアンテナエレメントを同一のシステムのために用いる場合、従来技術のような構成は好ましくない。なぜなら、3つのアンテナエレメントで構成するアンテナを同一のシステムのために用いる場合、(A)全てのアンテナエレメントのアンテナ特性が良好であり、(B)各アンテナエレメントの無線部回路への接続用端部が離れていないことが求められるからである。
すなわち、従来技術のように、一部のアンテナエレメントを或るシステムのための用い、他のアンテナエレメントを他のシステムのために用いる構成であれば、必要とされる動作周波数帯域が狭いシステム、または相対的に優先度が低いシステムのために用いるアンテナエレメントのアンテナ特性を犠牲にすることも可能である。しかし、3つのアンテナエレメントを同一のシステムのために用いる場合には、その全てのアンテナエレメントのアンテナ特性が良好であることが求められる。
また、互いに異なるシステムのために用いるアンテナエレメントの接続用端部同士が離れていても、それぞれがつながる無線部回路は別なので、回路基板上の部品レイアウトに自由度があり、つながるアンテナエレメントの近くにそれぞれの無線部回路を配置することが可能である。一方、同一のシステムのために用いるアンテナエレメントの接続用端部同士が離れている場合、何れかのアンテナエレメントの接続用端部と当該アンテナエレメントがつながる無線部回路との間も離れてしまい線路ロスが大きくなる。さらに、不要に配線を引き回すために回路基板上の配線領域が減少するデメリットが生じる。
このように、3つのアンテナエレメントを同一のシステムのために用いる場合には、従来技術のように各アンテナエレメントを複数のシステムのために用いる場合と異なり、(A)全てのアンテナエレメントのアンテナ特性が良好であり、(B)各アンテナエレメントの無線部回路への接続部が離れていないことが求められる。しかし、従来技術である図12、特許文献1および特許文献2の構成では、上記(A)又は(B)の要求を満足できない。
そこで、本願発明者等は、3つのアンテナエレメントを同一のシステムのために用いる場合に適した各アンテナエレメントの配置について鋭意検討した結果、第2のアンテナエレメント112を第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置することを見出した。
図13は、新規なアンテナエレメントの配置を示す上面図である。図13に示すように、第2のアンテナエレメント112を第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置することにより、同じアンテナ土台115上に、第1のアンテナエレメント111、第2のアンテナエレメント112、および第3のアンテナエレメント113を首尾よく配置することができる。このため、従来技術である図12や、特許文献1に示すようなアンテナエレメントの配置のように、第2のアンテナエレメント912が回路基板920上に形成されてアンテナ特性が劣化することを避け、より好適に、各アンテナエレメント111〜113のアンテナ特性を何れも良好なものにすることができる。
さらに、第2のアンテナエレメント112を第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置し、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bを、何れも第1の先端部111aよりも第3の先端部113aに近い位置に配置することにより、首尾よく第1、第2および第3の111b〜113bの位置を互いに離れないように配置することができる。
このように、図13に示すアンテナエレメントの配置によれば、(A)全てのアンテナエレメントのアンテナ特性が良好であり、(B)各アンテナエレメントの無線部回路への接続部が互いに離れていないアンテナを実現することができるものと考えられる。
ところが、図12に示すアンテナエレメントの配置では、第1のアンテナエレメント111は、第2のアンテナエレメント112とカメラ122との間に挿まれた状態になるため、第1のアンテナエレメント111の放射が第2のアンテナエレメント112とカメラ122とに邪魔されてアンテナ特性が劣化するという新たな問題が生じることが分かった。
本発明は上記のような新たな問題に鑑みてなされたものであり、3つのアンテナエレメントを備えたアンテナにおいて、各アンテナエレメントを同一のシステムのために用いる場合であっても、より良好なアンテナ特性を得ることができるアンテナを提供することを主たる目的とする。
本発明のアンテナは、上記の課題を解決するために、第1の周波数帯で動作する第1のアンテナエレメントと、第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯で動作する第2のアンテナエレメントと、第2の周波数帯よりも高い第3の周波数帯で動作する第3のアンテナエレメントと、を備えたアンテナであって、第1、第2および第3のアンテナエレメントはそれぞれ、無線部回路につながる側の端部である第1、第2および第3の接続用端部と、第1、第2および第3の接続用端部とは反対側の端部である第1、第2および第3の先端部と、第1、第2および第3の先端部を含む第1、第2および第3の先端領域とを備えており、第1、第2および第3の先端領域は何れも、該アンテナの或る方向における端部に配置されており、第2のアンテナエレメントは、第1のアンテナエレメントと第3のアンテナエレメントとの間に配置されており、第1、第2および第3の接続用端部は何れも、第1の先端部よりも第3の先端部に近い位置に配置されており、第1の周波数帯の電気信号を阻止する周波数制御手段を備え、該周波数制御手段が第2のアンテナエレメントに接続されていることを特徴としている。
また、本発明のアンテナでは、或る平面に投影したときに、上記第2のアンテナエレメントの影が、上記第1のアンテナエレメントの影と上記第3のアンテナエレメントの影とに挿まれていることが好ましい。
上記の構成によれば、本発明に係るアンテナは、3つのアンテナエレメントのうちで最も長い第1のアンテナエレメント、第2のアンテナエレメント、および、3つのアンテナエレメントのうちで最も短い第3のアンテナエレメントを備えている。
このようなアンテナエレメントを配置するとき、全てのアンテナエレメントのアンテナ特性を良好にするためには、第1、第2および第3の先端領域を、当該アンテナエレメントが内蔵される無線装置の筐体内で最も外側に配置することが好ましい。上記の構成によれば、第1、第2および第3の先端領域はアンテナ全体における或る方向の端部に配置されているため、当該方向を、上記無線装置の外側に向かう方向とすることで、第1、第2および第3の先端領域を、上記無線装置内の外側に配置することができる。したがって、上記の構成によれば、全てのアンテナエレメントのアンテナ特性が良好なアンテナを容易に実現することができる。
さらに、第1、第2および第3の接続用端部を互いに離れないように配置するためには、第1、第2および第3のアンテナエレメントのうち、第1のアンテナエレメントが最も長く、第3のアンテナエレメントが最も短いため、接続用端部が配置されるエリアから第1、第2および第3の先端部までの距離は、当該エリアから第1の先端部までの距離が最も長く、第3の先端部までの距離が最も短くなくてはいけない。
ここで、上記の構成によれば、第1のアンテナエレメントと第3のアンテナエレメントとの間に、第2のアンテナエレメントが配置されている。それゆえ、第1、第2および第3の先端領域は、この順に並ぶことになる。そして、第1、第2および第3の接続用端部は、第1の先端部よりも第3の先端部に近い位置に配置されている。したがって、第1、第2および第3の接続用端部が配置されているエリアから、第1、第2および第3の先端部までの距離は、上記の条件を満たす。よって、上記の構成によれば、第1、第2および第3のアンテナエレメントの無線部回路への接続部が互いに離れていないアンテナを実現することができる。
さらに、上記の構成によれば、第2のアンテナエレメントに周波数制御手段が接続されている。周波数制御手段は、第1の周波数帯の電気信号の通過を阻止するため、第1の周波数帯において、第2のアンテナエレメントは第2の接続用端部で開放された状態になる。したがって、第1の周波数帯での第2のアンテナエレメントの第1のアンテナエレメントへの干渉が抑制されるため、第1のアンテナエレメントのアンテナ特性劣化を防ぐことができる。
このように、上記の構成によれば、(A)全てのアンテナエレメントのアンテナ特性が良好であり、(B)各アンテナエレメントの無線部回路への接続部が互いに離れていないアンテナを実現することができる。したがって、各アンテナエレメントを同一のシステムのために用いる場合であっても良好なアンテナ特性を得ることができるアンテナを提供することができる。
なお、本発明に係るアンテナは、全てのアンテナエレメントを複数のシステムを利用するために用いる場合にも、好適に適用することができるだろう。
また、本発明のアンテナでは、上記周波数制御手段は、第2の周波数帯において容量性リアクタンスを有することが好ましい。
上記の構成によれば、周波数制御手段は、第2の周波数帯において容量性リアクタンスを有する。従って、上記周波数制御手段を第2のアンテナエレメントに装荷することにより、動作する周波数帯を変更せずに、第2のアンテナエレメントの物理長を首尾よく延長することができる。上述したように、第2のアンテナエレメントは、第1のアンテナエレメントと第3のアンテナエレメントとに挿まれているため、第2のアンテナエレメントの物理長が短い場合、第1および第3のアンテナエレメントに覆われてしまい、第2のアンテナエレメントのアンテナ特性が悪くなる場合がある。ここで、上記の構成によれば、第2のアンテナエレメントの物理長を延長することができるため、第2のアンテナエレメントのアンテナ特性を向上させることができる。
また、本発明のアンテナでは、第2のアンテナエレメントを整合するための整合回路を備え、上記第2の接続用端部と、該整合回路とをつなぐ配線上に、上記周波数制御手段が設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、整合回路によって接続される回路の出力インピーダンスと入力インピーダンスとを整合することにより、得られる電力が最大になるため、より良好なアンテナ特性を得ることができつつ、周波数制御手段が整合回路と第2のアンテナエレメントとの間に設けられているため、どのような整合回路を使用しても第1の周波数帯において第2のアンテナエレメントを両端が開放された導体素子として扱うことができるという利点がある。
また、本発明のアンテナでは、上記周波数制御手段が、帯域除去フィルタ、ハイパスフィルタ、帯域通過フィルタ、スイッチ、MEMS、FET、PINダイオードおよび移相器からなる群より選ばれる何れかを備えていることが好ましい。
上記構成によれば、帯域除去フィルタ、ハイパスフィルタ、帯域通過フィルタ、スイッチ、MEMS、FET、PINダイオードおよび移相器の何れかを用いることにより、第1の周波数帯の電気信号の通過を阻止すると共に、第2の周波数帯において容量性リアクタンスを有する周波数制御手段を容易に実現することができる。
また、本発明のアンテナでは、第1、第2および第3のアンテナエレメントが同一のアンテナ土台上に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、各アンテナエレメントが、同一のアンテナ土台上に設けられているため、何れかのアンテナエレメントの特性を犠牲にすることを首尾よく避けることができる。また、第1、第2および第3のアンテナエレメントを1つの部品として扱うことができるため、無線装置に組み込まれる部品点数の削減および無線装置の組み立ての効率化に寄与することができる。
また、本発明のアンテナでは、上記無線部回路に接続するための第1の配線および第2の配線を備えており、第1の配線は、第1および第3の接続用端部につながっており、第2の配線は、第2の接続用端部につながっていることが好ましい。
また、本発明のアンテナでは、上記第1の接続用端部と上記第3の接続用端部とが1つになっていることが好ましい。
上記の構成によれば、無線部回路から第1のアンテナエレメントまでの給電系統と、無線部回路から第3のアンテナエレメントまでの給電系統とを統合することができる。給電系統が多いと、それぞれにアンテナ整合回路、および回路基板とアンテナエレメントの接点バネ等が必要になり、アンテナ用部品の占有面積が増大するため、他の導電性部材を実装する回路基板上の導電性部材の実装可能面積が減少するが、上記の構成によれば、アンテナ用部品以外の導電性部材を実装する回路基板上の実装可能面積の減少を抑制することができる。
本発明の携帯無線端末は、上記の課題を解決するために、上記のアンテナと、上記無線部回路とを備え、第1、第2および第3のアンテナエレメントは何れも、上記無線部回路に接続されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係るアンテナを備え、当該アンテナの第1、第2および第3のアンテナエレメントが同一の無線部回路に接続されているので、本発明に係るアンテナの利点を生かした携帯無線端末を提供することができる。
また、本発明の携帯無線端末では、上記無線部回路が設けられた基板を備え、上記基板の基板面に投影したときに、第2のアンテナエレメントの影が、第1のアンテナエレメントの影と第3のアンテナエレメントの影とに挿まれていることが好ましい。
上記構成によれば、基板の基板面に平行な平面に基づいて、第1、第2および第3のアンテナエレメントの配置が特定される。これにより、携帯無線端末に応じた最適なアンテナエレメントの配置を実現することができる。
また、本発明の携帯無線端末では、金属部材を備え、該金属部材と、第2のアンテナエレメントとによって、第1のアンテナエレメントが挿まれている構成であってもよい。
上記構成によれば、第1のアンテナエレメントは、第2のアンテナエレメントと金属部材との間に挿まれているため、第2のアンテナエレメントからの干渉を受け易くなる。このような場合であっても、第2のアンテナエレメントに周波数制御手段が接続されているため、第2のアンテナエレメントとの干渉を抑制し、第1のアンテナエレメントのアンテナ特性劣化を防ぐことができる。
以上のように、本発明のアンテナは、第1、第2および第3のアンテナエレメントはそれぞれ、無線部回路につながる側の端部である第1、第2および第3の接続用端部と、第1、第2および第3の接続用端部とは反対側の端部である第1、第2および第3の先端部を含む第1、第2および第3の先端領域とを備えており、第1、第2および第3の先端領域は何れも、該アンテナの或る方向における端部に配置されており、第2のアンテナエレメントは、第1のアンテナエレメントと第3のアンテナエレメントとの間に配置されており、第1、第2および第3の接続用端部は何れも、第1の先端部よりも第3の先端部に近い位置に配置されており、第1の周波数帯の電気信号を阻止する周波数制御手段を備え、該周波数制御手段が第2のアンテナエレメントに接続されている。
本発明によれば、第1、第2および第3のアンテナエレメントを備え、各アンテナエレメントを同一のシステムのために用いる場合であっても良好なアンテナ特性を得ることができるアンテナであって、第1のアンテナエレメントは第2のアンテナエレメントの干渉を抑制してアンテナ特性の化を防ぐことができるアンテナを提供することができる。
本発明の実施形態について、図1〜9を参照して説明すれば以下のとおりである。なお、以下では、本発明に係るアンテナは、通話のための無線通信を基地局との間で行う携帯無線端末が備えるアンテナとして説明している。ただし、本発明に係るアンテナは、通話のための無線通信を基地局との間で行う携帯無線端末が備えるアンテナに限らず、何らかの信号が重畳された搬送波を受信および/または送信するアンテナ一般に適用することができ、携帯無線端末以外の無線装置が備えるものであってもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯無線端末100の概略構成を示す図であり、(a)は、携帯無線端末100の透視上面図であり、(b)は、携帯無線端末100の透視側面図である。図1に示すように、携帯無線端末100は、連結部材103によって連結された第1の筐体101および第2の筐体102を備えている。また、第1の筐体101は、回路基板120を内蔵している。
図2は、図1に示される回路基板120上の構成を説明するための斜視図である。なお、図2では、説明の便宜のため、アンテナ土台115を点線で示している。図2に示すように、回路基板120の一端部には、アンテナ土台115が配置されている。アンテナ土台115上には、本実施形態に係るアンテナ110を構成する第1のアンテナエレメント111、第2のアンテナエレメント112、および第3のアンテナエレメント113が設けられている。なお、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113とアンテナ土台115とを合わせてアンテナアセンブリと呼ぶこともある。また、本明細書において、「アンテナ」とは、アンテナエレメントから無線部回路121への接続部までを含む構成を指すものとする。また、回路基板120には、セルラー通信システムのための無線部回路121、カメラ(金属部材)122、第1整合部(整合回路)133、第2整合部(整合回路)134、周波数制御手段150等が設けられている。
アンテナ土台115は、例えば、誘電体、磁性体、セラミック等からなり、厚みを有している。第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113は、例えば、アンテナ土台115の天面(回路基板120に接する接続面とは反対の面)上で第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113の形状をメッキ処理することによって形成されていている。他の構成としては、例えば、薄い金属板を第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113の形状に加工し、それをアンテナ土台115でまとめて固定するインモールド成型、またはインサート成型と呼ばれる製法で形成されたり、銅箔等でフレキシブルな導電パターンを貼り付ける等して形成されている。このように、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113をアンテナ土台115上に形成することにより、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113を回路基板120上の導電パターンから遠ざけ、より第1の筐体101内の外側に配置することができる。
第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113は、それぞれ一部がアンテナ土台115の上記接続面近傍に延在しており、当該接続面に、無線部回路121につながる側の端部である第1の接続用端部111b、第2の接続用端部112b、および第3の接続用端部113bを備えている。第1の接続用端部111bと第3の接続用端部113bとは1つになっており、接続用端部114として、第1のアンテナエレメント111および第3のアンテナエレメント113に共有されている。接続用端部114と第2の接続用端部112bとは、対向する回路基板120上に設けられたバネ等の接続用端子、または第1、第2および第3の接続用端部1111b〜113bを含んで構成されたバネ性を有する部分によって、回路基板120上のマイクロストリップ線路やトリプレート線路や同軸ケーブル等で構成される配線(第1の配線130・第2の配線131)に接続され、接続用端部114は第1整合部133に、第2の接続用端部112bは周波数制御手段150に接続されている。
第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113はまた、アンテナ土台115の上記天面上に、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bとは反対側の端部である第1の先端部111a、第2の先端部112a、および第3の先端部113aを備えている。第1、第2および第3の先端部111a〜113aは、他の導電性部材に接続されず、開放端となっている。また、第1のアンテナエレメント111における第1の先端部111aの周辺領域(第1の先端部111aを含む)を第1の先端領域111cと称する。同様に、第2のアンテナエレメント112における第2の先端部112aの周辺領域(第2の先端部112aを含む)を第2の先端領域112cと、第3のアンテナエレメント113における第3の先端部113aの周辺領域(第3の先端部113aを含む)を第3の先端領域113cと称する。
第1のアンテナエレメント111が動作する第1の周波数帯、第2のアンテナエレメント112が動作する第2の周波数帯、および、第3のアンテナエレメント113が動作する第3の周波数帯は、この順にしたがって高い周波数となっている。本実施形態では、一例として、第1の周波数として、WCDMA Band VI、AMPS、EGSM、CDMA2000(BandClass 0、BandClass 3等)等のための800〜900MHz帯、第2の周波数帯として、WCDMA Band XI、GPS等のための1.5GHz帯、第3の周波数帯として、WCDMA (Band I、Band IX)、DCS、PCS、CDMA(Band Class 6等)等の1.7〜2.1GHz帯を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限定されず、第1の周波数帯よりも第2の周波数帯が高く、第2の周波数帯よりも第3の周波数帯が高いものであれば、本発明を適用することができる。
また、一般に、アンテナエレメントの長さは、動作する周波数に反比例する。すなわち、低い周波数帯のアンテナエレメントの方が長くなる。したがって、第1のアンテナエレメント111、第2のアンテナエレメント112および第3のアンテナエレメント113は、この順に長さが短くなる。
なお、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113は、第1、第2および第3の先端部111a〜113aが開放端となっているため、周波数をf、光速をcとすると、c/fで導出される波長λに対して、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113の電気長がλ/4となる、モノポールアンテナとして動作する。すなわち、第1の周波数帯の波長をλ1とすると、第1のアンテナエレメント111の電気長はλ1/4、第2の周波数帯の波長をλ2とすると、第2のアンテナエレメント112の電気長はλ2/4、第3の周波数帯の波長をλ3とすると、第3のアンテナエレメント113の電気長はλ3/4となる。
また、誘電率や透磁率は波長を短縮させる効果があるため、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113の近傍に誘電体や磁性体等の、比誘電率や比透磁率が1より大きい絶縁体が存在する場合、モノポールアンテナの物理長は厳密にはλ/4にはならない。
無線部回路121は、3つの周波数帯を用いてセルラー通信を行うものであり、第1整合部133および第2整合部134のそれぞれに接続されている。なお、本明細書において、「無線部回路」とは、送信回路、受信回路、アンテナ切替え用のスイッチ、送信回路からアンテナへの流れと、アンテナから受信回路への流れとを分波する分波フィルタ、IC等の各部品の少なくとも何れかからなる回路を総称するものである。
第1整合部133および第2整合部134は、出力インピーダンスと入力インピーダンスとを合わせる。第1整合部133は、第2のアンテナエレメント112を整合し、第2整合部134は、第1のアンテナエレメント111および第3のアンテナエレメント113を整合する。第1整合部133としては、第1の配線130に対して並列に装荷され、グランドに接続された並列共振回路を用いることが好ましい。なお、第1整合部133および第2整合部134は、目的に応じて適宜省略することができる。
周波数制御手段150は、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間に第2の配線131を介して配置されており、少なくとも第1の周波数帯の電気信号の通過を阻止する。周波数制御手段150には、例えば、帯域除去フィルタ、ハイパスフィルタ、帯域通過フィルタ、スイッチ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、FET(Field Effect Transistor)、PINダイオード、および移相器等を備えるものを用いることができる。周波数制御手段150としてスイッチやPINダイオード等の能動素子を使用する場合は、その能動素子を動作させるための電力供給用の回路や配線等を別途備えるものとする。周波数制御手段150の詳細は後述する。
なお、本実施形態に係るアンテナ110のように、第1のアンテナエレメント111および第3のアンテナエレメント113の給電経路を統合するのは、この組み合わせが最も好ましいからである。なぜなら、第1のアンテナエレメント111の動作する第1の周波数帯と、第3のアンテナエレメント113の動作する第3の周波数帯との差は、何れかと第2のアンテナエレメント112の動作する第2の周波数帯との差よりも大きい。さらに、本実施形態では、第2の周波数帯は、第1の周波数帯の約2倍波となるので、第1のアンテナエレメント111および第2のアンテナエレメント112が反共振し、また、第2の周波数帯は、第3の周波数帯の低域側(1.7GHz付近)と近接しているため相互干渉が大きく、良好なアンテナ特性が得られない。これに対し、第3の周波数帯は、第1の周波数帯の約3倍波となり、且つ、両周波数帯は近接することが無いため相互干渉が小さく、良好なアンテナ特性を得ることが出来る。したがって、第1のアンテナエレメント111および第3のアンテナエレメント113の給電経路を好適に統合することができる。このように、無線部回路121からアンテナエレメントに給電する経路の一部を統合することにより、省スペース化、低コスト化を実現することができる。なぜなら、給電経路が多いと、アンテナエレメントの数に応じた整合回路が必要であり、その分だけ整合回路と、アンテナエレメントの接続用端部と、配線とが多く必要になり、部品点数の増加と、回路基板120上の導電性部材を実装し得る面積を圧迫するからである。
なお、第1のアンテナエレメント111および第3のアンテナエレメント113の給電経路を統合する方法は特に限定されない。例えば、図16(a)に示すように、第1の配線130を分岐点において二股に分け、一方を第1の接続用端部111bにつなげ、他方を第3の接続用端部113bにつなげることにより、第1のアンテナエレメント111および第3のアンテナエレメント113の給電経路を回路基板120上で統合してもよい。また、図16(b)に示すように、第1のアンテナエレメント111および第3のアンテナエレメント113の給電経路を統合せず、それぞれを個別に無線部回路121等に接続してもよい。
このように、本実施形態に係るアンテナ110では、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113の第1、第2および第3の先端領域111c〜113cは何れも、携帯無線端末100の第1の筐体101の外縁に近い方の端部に配置されており、第2のアンテナエレメント112は、第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置されており、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bは何れも、第1の先端部111aよりも第3の先端部113aに近い位置に配置されている。
すなわち、第1、第2および第3の先端領域111c〜113cが携帯無線端末100の第1の筐体101の外縁に近い方の端部に配置されていることにより、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113のアンテナ特性が良好となる。言い換えれば、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113のアンテナ寸法を、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113のアンテナ特性を確保するために増大させる必要性が小さくなり、昨今の携帯無線端末に対する小型化、薄型化等の要求に応えることができる。
また、別の観点からみれば、第1、第2および第3の先端領域111c〜113cは、無線部回路121、カメラ122等の導電性部材がある側とは反対側から見たときに、他のアンテナエレメントによって覆われていないため、何れのアンテナエレメント111〜113のアンテナ特性も良好となる。
さらに、第2のアンテナエレメント112が第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置されており、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bは何れも、第1の先端部111aよりも第3の先端部113aに近い位置に配置されていることにより、首尾よく第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bの位置を互いに離れないように配置することができる。
なお、本明細書において、「第2のアンテナエレメント112が第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置されている」とは、第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間の空間に、第2のアンテナエレメント112の大部分、少なくとも半分以上が配置されていることを指すが、例えば、図1(a)に示すように、或る平面(図1(a)であれば、回路基板120の基板面に平行な平面)に投影したときに、第2のアンテナエレメント112の影が、第1のアンテナエレメント111の影と第3のアンテナエレメント113の影とに挿まれている状態を含んでいる。なお、第2のアンテナエレメント112の影の全体が、第1のアンテナエレメントの影と第3のアンテナエレメント113の影とに挿まれている必要はなく、少なくとも第2のアンテナエレメント112の全体の50%が挿まれていればよい。すなわち、大部分において、第2のアンテナエレメント112が第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に挿まれていればよい。また、別の観点からみれば、「第2のアンテナエレメント112が第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置されている」とは、第1のアンテナエレメント111、第2のアンテナエレメント112、および第3のアンテナエレメント113は、或る方向に沿ってこの順に配置されていることを含み、好ましくは、上記導電性部材に近い方から、上記順番に配置されていることを含む。
このように、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113が配置されていることが好ましい理由を、図14(a)を参照して、以下に説明する。
図14(a)に示すように、第1、第2および第3のアンテナエレメントの長さは、第1のアンテナエレメント111が最も長く、第2のアンテナエレメント112は第1のアンテナエレメント111よりは短く、第3のアンテナエレメント113は最も短い。そのため、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bを近接して配置するためには、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bが配置されるエリアから、第1、第2および第3の先端部111a〜113aまでのそれぞれの距離は、該エリアから第1の先端部111aまでの距離が最も長く、該エリアから第3の先端部113aまでの距離が最も短い必要がある。ここで、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113が、上述したような配置で無い場合、このような条件を満たすことが困難である。
すなわち、本実施形態であれば、第2のアンテナエレメント112が第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置されているか、第1のアンテナエレメント111、第2のアンテナエレメント112、および第3のアンテナエレメント113は、或る方向(図14(a)におけるD1方向)に沿ってこの順に配置されている。それゆえ、第1、第2および第3の先端領域111c〜113cは、第1の先端領域111c、第2の先端領域112c、第3の先端領域113cの順に配置される。そして、本実施形態であれば、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bは何れも、第1の先端部111aより第3の先端部113aに近い位置に配置されているため、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bが配置されるエリアから、第1、第2および第3の先端部111a〜113aまでのそれぞれの距離を、該エリアから第1の先端部111aまでの距離が最も長く、該エリアから第3の先端部113aまでの距離が最も短くすることができる。
このように、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113を上述したように配置することにより、首尾よく、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bを近接させることができ、アンテナ特性を向上させることができる。
また、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113がそれぞれ1つの周波数帯に対応するため、各周波数帯の調整は、第1、第2および第3アンテナエレメント111〜113を独立に調整することが可能となっている。これにより、アンテナ設計を簡易にすることができる。
また、本実施形態において、第1のアンテナエレメント111、第2のアンテナエレメント112および第3のアンテナエレメント113は、同じアンテナ土台115上に形成されている。これにより、3つのアンテナエレメントを1つの部品として扱うことができるため、無線装置に組み込まれる部品点数の削減および無線装置の組み立ての効率化に寄与することができる。また、図12に示すような従来技術に係るアンテナエレメントの配置のように、第2のアンテナエレメント912が回路基板920上に形成されて、第2のアンテナエレメント912のように特性が劣化することもない。
さらに、本実施形態に係るアンテナ110では、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間に第2の配線131を介して周波数制御手段150を配置することにより、アンテナエレメント間の相互干渉を抑制している。すなわち、第2のアンテナエレメント112を第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置した場合、第1のアンテナエレメント111は、第2のアンテナエレメント112とカメラ122との間に挿まれた状態になるため、第1のアンテナエレメント111からの放射が第2のアンテナエレメント112の干渉を受け易くなる。
そこで、本実施形態に係るアンテナ110では、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間に、周波数制御手段150を配置することにより、第2のアンテナエレメント112の干渉を抑制している。
図3は、周波数制御手段150の構成を示す概略図である。図3に示すように、本実施形態では、周波数制御手段150として、コイル150aとコンデンサ150bとが並列に接続されたLCノッチフィルタを用いている。周波数制御手段150は、一端が第2の配線131を介して第2の接続用端部112bに接続され、他端が第2の配線131を介して第2整合部134に接続される。
ここで、周波数制御手段150のインピーダンスは、下記の式(1)で表される。
上記式(1)において、Zは周波数制御手段150のインピーダンス[Ω]、Lはコイル150aのインダクタンス[H]、Cはコンデンサ150bのキャパシタンス[F]、ωは角周波数[Hz]、jは虚数をそれぞれ示している。
上記式(1)では、ω=√LCのとき、インピーダンスZは無限大となり、このような現象を共振という。角周波数ωは、交流電流の周波数をfとしたとき、ω=2πfで表されるため、インピーダンスZが無限大となる周波数、すなわち、共振周波数は、f=1/2π√LCで表すことができる。
ここで、周波数制御手段150では、共振周波数が第1の周波数帯に含まれるように、好ましくは共振周波数と第1の周波数帯の中心周波数とが略一致するように、コイル150aのインダクタンスLとコンデンサ150bのキャパシタンスCとが調整されている。このため、周波数制御手段150は、第1の周波数帯で共振現象が生じ、インピーダンスが無限大となるため、第1の周波数帯の電気信号を通過させないように動作する。
一方、第1の周波数帯で共振現象が生じる周波数制御手段150は、第1の周波数帯(共振周波数)より低い周波数帯では誘導性となり、高い周波数帯では容量性となる。したがって、周波数制御手段150は、第2の周波数帯で必然的に容量性となる。
なお、周波数制御手段150は、第1の周波数帯の電気信号を通過させず、第2の周波数帯の電気信号を通過させるものであればLCノッチフィルタに限定されない。
次に、本実施形態に係るアンテナ110の特性について説明する。
図4は、本実施形態に係るアンテナ110の利得を測定したグラフであり、(a)は第1の周波数帯で測定した第1のアンテナエレメント111の利得、(b)は第2の周波数帯で測定した第2のアンテナエレメント112の利得をそれぞれ示している。また、図5は、周波数制御手段の通過特性の変化を説明するためのイメージ図であり、(a)は共振周波数での開放状態の概念的構成、(b)は共振周波数より高い周波数での容量性状態の概念的構成をそれぞれ示している。さらに、図6は、第2のアンテナエレメント112のアンテナ特性を説明するためのイメージ図であり、(a)は第2のアンテナエレメント112の物理長が短いときの概念的構成、(b)は第2のアンテナエレメント112の物理長が適切であるときの概念的構成をそれぞれ示している。なお、図4(a)および(b)では、比較のために、周波数制御手段150を備えない構成で測定したときの利得も併せて表示している。
図4(a)に示すように、本実施形態に係るアンテナ110の第1の周波数帯での第1のアンテナエレメント111の利得は、周波数制御手段150を備えない構成に比べて向上している。これは、周波数制御手段150によって第2のアンテナエレメント112による第1のアンテナエレメント111への干渉が抑制されるためである。すなわち、第1の周波数では、周波数制御手段150はインピーダンスが無限大となり、図5(a)に示すように、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間の接続が開放(open)されたような状態となるため、第2のアンテナエレメント112は両端が開放された十分に短い導体素子と見做すことができる。一般に、両端が開放された導体素子は、1/2波長程度の電気長が無ければその周波数帯では励振せず、また、波長に対して小さければ小さいほど放射を邪魔するグランドとしては動作しなくなる。このため、本実施形態のように、物理長が第1のアンテナエレメント111より短く、第1の周波数帯の波長λ1に対してλ1/4未満となる第2のアンテナエレメント112は、電気的に両端が開放されたことによって、第1の周波数帯で第1のアンテナエレメント111のアンテナ特性への影響が小さくなる。したがって、第2のアンテナエレメント112による第1のアンテナエレメント111への干渉が抑制されるため、第1のアンテナエレメント111の放射特性を向上させることができる。
また、図4(b)に示すように、本実施形態に係るアンテナ110の第2の周波数帯での第2のアンテナエレメント112の利得は、周波数制御手段150を備えない構成に比べて向上している。これは、第2の周波数帯では、周波数制御手段150がアンテナエレメントの一部として動作するためである。すなわち、第2の周波数帯では、周波数制御手段150は容量性となるため、図5(b)に示すように、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間に容量性のコンデンサを備えたような状態となる。これにより、動作する周波数帯を変更せずに、第2のアンテナエレメント112の物理長を首尾よく延長することができる。上述したように、第2のアンテナエレメント112は、第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113とに挿まれているため、第2のアンテナエレメント112の物理長が短い場合、第1のアンテナエレメント111および第3のアンテナエレメント113に覆われてしまい、第2のアンテナエレメント112のアンテナ特性が悪くなる場合がある。ここで、上記の構成によれば、第2のアンテナエレメント112の物理長を延長することができるため、第2のアンテナエレメント112のアンテナ特性を向上させることができる。例えば、第2のアンテナエレメント112の物理長が短い場合や、回路基板120上のレイアウト等の問題で、第2の接続用端部112bが第3のアンテナエレメント113に接近した位置に配置された場合、図6(a)に示すように、第2のアンテナエレメント112の根元(第2の接続用端部112b側)が第3のアンテナエレメント113に覆われてしまう。このため、第2のアンテナエレメント112の放射の大部分が第3のアンテナエレメント113により邪魔されてしまう。一方、図6(b)に示すように、第2のアンテナエレメント112の物理長が十分長ければ、第2のアンテナエレメント112の全体に対して、第3のアンテナエレメント113によって覆われている部分が図6(a)に比べて相対的に小さくなり、第3のアンテナエレメント113に邪魔される度合いが小さくなるため、第2のアンテナエレメント112のアンテナ特性を向上させることができる。
このように、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間に周波数制御手段150を備えることにより、第1のアンテナエレメント111および第2のアンテナエレメント112のアンテナ特性を良好にすることができる。
以上のように、本実施形態に係るアンテナ110は、第2のアンテナエレメント112が、第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置されており、第1、第2および第3の先端領域111c〜113cは何れも、携帯無線端末100の、第1の筐体101の外縁に近い方の端部に配置されており、第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bは何れも、第1の先端部111aよりも第3の先端部113aに近い位置に配置されている構成である。
さらに、本実施形態に係るアンテナ110では、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間に第2の配線131を介して周波数制御手段150が配置されている。
このため、第1の周波数帯では、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間で第1の周波数帯の電気信号が通過しないので、第1の周波数帯では、第2のアンテナエレメントは第2の接続用端部で開放された状態になる。したがって、第1の周波数帯における第2のアンテナエレメント112の第1のアンテナエレメント111への干渉が抑制されるため、第1のアンテナエレメント111のアンテナ特性劣化を防ぐことにより、アンテナ特性を良好にすることができる。
また、第2の周波数帯では、周波数制御手段150が容量性となり、第2のアンテナエレメント112の物理長を延長することができるため、第2のアンテナエレメント112のアンテナ特性を向上させることができる。
したがって、本実施形態によれば、3つのアンテナエレメントを備えたアンテナにおいて、各アンテナエレメントを同一のシステムのために用いる場合であっても、より良好なアンテナ特性を得ることができるアンテナを実現することができる。
(変形例)
本実施形態では、周波数制御手段150としてLCノッチフィルタを用いた場合について説明したが、周波数制御手段150は、少なくとも第1の周波数帯の電気信号の通過を阻止するように作用するものであれば特に限定されない。ただし、第2のアンテナエレメント112のアンテナ特性を良好にするために、周波数制御手段150は、第1の周波数帯の電気信号を通過させず、第2の周波数帯では容量性リアクタンスを有して電気信号を通過させることが好ましい。
図7は、周波数制御手段150が有する通過特性の一例を示すグラフであり、(a)は帯域除去フィルタ、(b)はハイパスフィルタ、(c)は帯域通過フィルタの通過特性を示している。なお、図7では、横軸を周波数、縦軸を通過量として規定している。
図7(a)に示すように、帯域除去フィルタは、第1の周波数帯およびその周辺周波数で通過特性が小さいものを用いることができ、特に、第1の周波数帯の中心周波数で共振現象を生じて、インピーダンスが略無限大となるものが好ましい。これにより、帯域除去フィルタは、第1の周波数帯の電気信号の通過を阻止することができる。一方、帯域除去フィルタは、第2の周波数帯では容量性となって第2の周波数帯の電気信号を通過させるものが好ましい。
図7(b)に示すように、ハイパスフィルタは、第2の周波数帯よりも低い周波数帯で通過特性が小さいものを用いることができる。これにより、第1の周波数帯の電気信号の通過を阻止することができる。一方、ハイパスフィルタは、第2の周波数帯では容量性となって第2の周波数帯の電気信号を通過させるものが好ましい。
図7(c)に示すように、帯域通過フィルタは、第2の周波数帯およびその周辺周波数以外で通過特性が小さいものを用いることができる。これにより、帯域通過フィルタは、第2の周波数帯およびその周辺周波数の電気信号を通過させるため、第1の周波数帯の電気信号の通過を阻止することができる。一方、帯域通過フィルタは、第2の周波数帯では容量性となって第2の周波数帯の電気信号を通過させるものが好ましい。
このように、周波数制御手段は、第1の周波数帯の中心周波数で通過特性が小さくなり、第2の周波数帯で容量性を有した通過特性を有する各種の周波数フィルタで構成してもよい。
図8は、周波数制御手段150の変形例の構成を示す概略図である。図8に示すように、周波数制御手段155は、スイッチ155aとコンデンサ155bとを備える。周波数制御手段155では、スイッチ155aとコンデンサ155bとが直列に接続されており、コンデンサ155bは第2のアンテナエレメント112に第2の配線131を介して接続される。一方、スイッチ155aは、第2整合部134に第2の配線131を介して接続されている。周波数制御手段155では、スイッチ155aは、コンデンサ155bと第2整合部134とを接続する接続位置P1と、コンデンサ155bと第2整合部134との接続を解除する開放位置P2とに切替可能に構成されており、第1の周波数帯では開放位置P2に、一方、第2の周波数帯では接続位置P1に接続されるように制御される。このように、周波数制御手段155は、スイッチ155aを切り替えることにより、第1の周波数帯の電気信号を通過させず、第2の周波数帯の電気信号を通過させる構成であってもよい。なお、スイッチ155aは、FET等からなる半導体素子で構成されてもよく、MEMSのように機械的に切り替えるスイッチでもよい。また、コンデンサ155bを接続する位置は特に限定されず、図8に示すようにアンテナ側に接続してもよく、あるいは回路側に接続してもよい。さらに、接続を切り替えるのはスイッチ155a内のアンテナ側ではなく、回路側で切り替えてもよい。
図9は、周波数制御手段150の他の変形例の構成を示す概略図である。図9に示すように、周波数制御手段156は、PINダイオード156aとコンデンサ156bとを備える。周波数制御手段156は、PINダイオード156aとコンデンサ156bとが直列に接続されており、コンデンサ156bは第2のアンテナエレメント112に第2の配線131を介して接続される。一方、PINダイオード156aは、第2整合部134に第2の配線131を介して接続される。PINダイオード156aは、順方向バイアス時に高周波交流を通過させる特性がある。このため、周波数制御手段156は、PINダイオード156aの上記特性を利用して、第1の周波数帯使用時にはPINダイオード156aに順方向バイアスをかけない、または、逆方向バイアスをかけることで第1の周波数帯の電気信号を通過させず、第2の周波数帯使用時にはPINダイオード156aに順方向バイアスをかけることで第2の周波数帯の電気信号を通過させる構成であってもよい。また、PINダイオード156aを接続する向きは特に限定されず、図9に示すようにアノード側をアンテナ側に接続してもよく、あるいは回路側に接続してもよい。さらに、コンデンサ156bの位置は、PINダイオード156aのアノード側ではなく、カソード側であってもよい。
以上のように、周波数制御手段は、第1の周波数帯の電気信号を通過させず、第2の周波数帯の電気信号を通過させるものであれば特に限定されない。なお、上述したように、周波数制御手段は、第2の周波数帯で容量性リアクタンスを有していることが好ましい。
次に、上述した本実施形態に係る第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113の配置のバリエーションについて、図14および図15を参照してさらに詳細に説明する。図14(a)〜(d)および図15(a)〜(f)は、本実施形態に係るアンテナアセンブリのバリエーションを示す図である。
図14(a)に示すように、第1、第2および第3の先端領域111c〜113cは、アンテナ土台115上の、方向D1における端部に配置されている。なお、「端部」とは、必ずしも外部との境界その位置である必要はなく、図14(b)、図15(d)および図15(e)に示すように、第1、第2および第3の先端領域111c〜113cは、若干、内側に位置していてもよい。また、後述するように、第1、第2および第3の先端領域111c〜113cは、全領域にわたって、上記端部に配置されている必要はなく、少なくとも一点が、上記端部に配置されていればよい。
第1、第2および第3の接続用端部111b〜113bは、第1の先端部111aと、第3の先端部113aとの間の直線D2に対して第3の先端部113a側に位置している。図14(c)および図15(f)に示すように、方向D1に直交する方向における位置はずれていてもよい。
また、図15(a)〜(c)に示すように、第1、第2および第3の先端領域111c〜113cが、アンテナ土台115上の、方向D1における端部に配置されている限り、第1、第2および第3の先端部111a〜113aは、当該端部から外れた位置にまで伸びていてもよい。
そして、第2のアンテナエレメント112が第1のアンテナエレメント111と第3のアンテナエレメント113との間に配置されている。このことは、例えば、図14(a)において、直線D2上で、第2のアンテナエレメント112は第1のアンテナエレメント111よりも方向D1が向かう位置にあり、直線D3で、第3のアンテナエレメント113は第2のアンテナエレメント112よりも方向D1が向かう位置にあることからも示される。
また、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113は、例えば、薄い金属板を各アンテナエレメント形状に加工し、それをアンテナ土台115でまとめて固定するインモールド成型、又はインサート成型と呼ばれる製法で形成することもできる。
また、上述したように、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113はアンテナ土台115上に形成することが好ましいが、アンテナ土台115を省くことも可能である。例えば、FPC(Flexible printed circuits)に第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113を作成し、当該FPCを、アンテナを内蔵する筐体ケースや固定用の樹脂に貼り付けてもよいし、図14(d)に示すように、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113を、立体的な形状を有する板金によって形成し、アンテナを内蔵する筐体ケースの内側に貼り付けるような構成にしてもよい。
このように、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113が、少なくとも、空間的に上述したような配置となっていれば、第1、第2および第3のアンテナエレメント111〜113がどのような手法で形成および固定されているかによらず、本発明の範疇である。
実施形態に係るアンテナ110の特性の比較実験について、図10および図11を参照して説明すれば以下のとおりである。
図10は、比較実験に用いたアンテナの構成を示す概略図であり、(a)は実施例1の構成、(b)は比較例1の構成、(c)は比較例2の構成をそれぞれ示している。図10(a)に示すように、実施例1では、周波数制御手段150として、図3に示すLCノッチフィルタを用いた。ここで、LCノッチフィルタには、コイルのインダクタンスL=10nH、コンデンサのキャパシタンスC=3.3pFを選択し、共振周波数が約880MHzとなるようにした。このLCノッチフィルタは、880MHzより低い周波数では誘導性、880MHzより高い周波数で容量性となる。
また、図10(b)に示すように、比較例1では、周波数制御手段150に代えてコンデンサを用いた。コンデンサには、キャパシタンスC=2.2pFのものを用い、第2のアンテナエレメント112が、実施例1と同じ長さになるようにコンデンサを選択した。
さらに、図10(c)に示すように、比較例2では、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134との間に何も配置せずに、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134とを直に接続する構成とした。
また、各周波数帯は、下記のように設定した。
第1の周波数帯:GSM帯(880〜960MHz)
第2の周波数帯:W−CDMA Band XI帯(1427.9〜1495.9MHz)
第3の周波数帯:DCS帯(1710〜1880MHz)
PCS帯(1850〜1990MHz)
W−CDMA Band I帯(1920〜2170MHz)
以上の条件で、それぞれの平均利得[dBi]を測定した。
図11(a)および(b)は、比較実験で測定した平均利得を示すグラフであり、(a)は第1の周波数帯における第1のアンテナエレメント111の平均利得、(b)は第2の周波数帯における第2のアンテナエレメント112の平均利得をそれぞれ示している。図11(a)に示すように、実施例1の第1のアンテナエレメント111の平均利得は、第1の周波数帯において、比較例1および比較例2に比べて高い値が測定された。これは、実施例1では、第1の周波数帯の電気信号がLCノッチフィルタによって遮断されるため、第2のアンテナエレメント112による第1のアンテナエレメント111への干渉が抑制されるためである。
一方、比較例1および比較例2では、第1の周波数帯の電気信号が通過し、第2のアンテナエレメント112による干渉が生じるため、実施例1に比べて第1のアンテナエレメント111の平均利得が低下した。
また、図11(b)に示すように、実施例1および比較例1の第2のアンテナエレメント112の平均利得は、第2の周波数帯において、比較例2に比べて高い値が測定された。これは、第2の周波数帯では、LCノッチフィルタおよびコンデンサが容量性リアクタンスとなり、第2のアンテナエレメント112の物理長を好適に延長することができるので、第2のアンテナエレメント112が第1および第3のアンテナエレメント111、113に覆われることを回避してアンテナ特性を向上させることができるためである。
一方、比較例2では、第2のアンテナエレメント112と第2整合部134とが直に接続された構成であり、第2の周波数帯で容量性リアクタンスが無いため第2のアンテナエレメント112の物理長が短くなる。このため、第2のアンテナエレメント112が第1および第3のアンテナエレメント111、113に覆われる範囲が、実施例1および比較例1に比べて大きくなるため、第2のアンテナエレメント112からの放射が邪魔されて、実施例1および比較例1に比べて第2のアンテナエレメント112の平均利得が低下した。
以上の比較実験により、実施形態に係るアンテナ110によれば、第1の周波数帯における第1のアンテナエレメント111のアンテナ特性劣化を大幅に低減することができることが証明された。さらに、アンテナ110によれば、第2の周波数帯における第2のアンテナエレメント112のアンテナ特性の向上にも有効であることが証明された。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。