従来、この種の糸通し装置としては、特許文献1〜4に記載されたものが知られている。特許文献1のスレダーでは、偏平な把持部と、この把持部から延び、先端に針穴に突入しうる屈曲部を有するループ状の糸導入部とを備える糸通し器であって、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部間を一連一体につなぎ、長さ方向中央部に屈曲部が形成された細帯板状部とを備える板状部材を有し、上記板状部材のうち、上記第1の端部と第2の端部とが重なるようにして上記把持部内に保持されており、上記細帯板状部が上記把持部から露出して上記ループ状の糸導入部を形成していることを特徴としており、このため糸および糸導入部を針穴に詰まらせることなくスムーズに針穴から抜くことができ、かつ、把持部に対する糸導入部の取り付け状態を適切に維持することができる。
特許文献2のスレダー、及びスレダー用の線材では、糸案内用の中空枠部およびこの中空枠部の基端部からその外方へ延びる線状の延伸部を形成する線材と、この線材の延伸部を挟み付けて支持する挟持部が設けられているベース部材と、を具備する糸通し器で、上記線材の延伸部には、この延伸部を屈曲または湾曲させた曲げ部が設けられており、かつこの曲げ部が上記ベース部材の挟持部に係止されていることが特徴であって、これにより線材がベース部材から安易に抜け外れるといった不具合を防止する。
特許文献3のスレダーは、線材によって中空状に形成された線材部を具備している糸通し器であって、上記線材部の一側方には、上記線材部とは異なる色彩の背景板部が設けられていることを特徴としており、このことから、使用者は線材部の位置を明確に認識することが可能となり、この線材部を縫い針などの針の穴に通す作業が簡単となる効果が得られる。
特許文献4の針糸通し装置は、針挿入穴と、該針挿入穴に対して角度を持った糸挿入スリットとを有する針受部材と、針受部材に対して離反した位置と接近した位置との間で揺動可能となっており、離反した位置から接近した位置へと揺動するときに、上記針挿入穴に挿入された針の針穴に、上記糸挿入スリットに挿入された糸を押し出し可能な糸通しピンを有する、糸通し部材を備えた糸通し器であって、このことから、糸通し部材が揺動してそれに応じて糸通しピンが針に接近したときに、糸通しピンが針穴を通過することができない場合には、糸通しピンが糸通し部材の本体に対して付勢部材の付勢力に抗して揺動することができるために、糸通しピンに作用する力を緩衝させることができ、糸通しピンの破損を防ぐことができる。
しかしながら、従来品は使用時や保管時に線材部が壊れやすく、また、小さいため使い難く、なくしやすいという問題があった。そのため不経済であり、それらを解決した製品は高価であるという問題もあった。
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、使用時や保管時に線材部が壊れにくく、また、糸を通しやすくすることができる糸通し器を提供することを目的とする。
なお、本発明の糸通し器は、特許文献1から4のものとは、構成が全くことなっている。
本発明の糸通し器は、線材を二つ折りに折り曲げた線材部と、内部に線材部を収納する収納部を有し、一端部に線材部を出し入れするための開口が設けられた収納体と、線材部の一方の端部が取り付けられると共に、収納体に対して、線材部を出し入れする方向に移動可能に配設された第1の操作部と、線材部の他方の端部が取り付けられると共に、収納体に対して、線材部を出し入れする方向に移動可能に配設され、かつ、第1の操作部よりも開口の側まで移動可能とされた第2の操作部とを備えたものである。
本発明の糸通し器では、例えば、第1の操作部を線材部が開口から出る方向に移動させる。次いで、線部材部の曲げられた部分を針の穴に通す。続いて、第2の操作部を更に開口側まで移動させると、線材部は大きく撓むので、糸が通り易くなる。糸を通した後、例えば、第2の操作部を戻し、針の穴から線材部を取り除くことにより、糸が針の穴を通る。最後に、第1の操作部および第2の操作部を開口から離れる方向に移動させることにより、線材部が収納体に収納される。
本発明の糸通し器によれば、収納部を設けると共に、第1の操作部および第2の操作部を設け、収納体に対して、線材部を収納する方向に移動可能とするようにしたので、線材部を容易に収納することができ、保管時等であっても、壊れてしまうことを防止することができる。また、第1の操作部および第2の操作部を、収納体に対して、線材部を出す方向に移動可能とすると共に、第1の操作部よりも第2の操作部を、開口の側まで移動可能とするようにしたので、収納体から、線材部を出すことができると共に、例えば、線材部の折り曲げ部分を針の穴に通したのち、第2の操作部を、更に開口の側まで移動するようにすれば、線材部の大きく撓ませることができる。よって、糸を容易に通すことができる。
また、第1の操作部と第2の操作部とを、一部において、着脱可能に当接するようにし、第1の操作部を開口の方向に移動させる際には、第1の操作部が第2の操作部を押圧して、第2の操作部を開口の方向に移動させ、第2の操作部を開口から離間する方向に移動させる際には、第2の操作部が第1の操作部を押圧して、第1の操作部を開口から離間する方向に移動させるようにすれば、線材部を収納体に容易に出し入れすることができると共に、線材部を撓ませることができる。
更に、線材部を取り換え可能とするようにすれば、線材部が傷んだ場合であっても、全体を買い替えしなくてもよく、安価にすることができる。
更にまた、収納部の外側面の少なくとも一部に、滑り止め部材を配設するようにすれば、手の力が弱い人や高齢の人でも簡単に使用することができる。
加えて、線部材の折り曲げた位置から一方の端部までの長さより、他方の端部までの長さの方を長くするようにすれば、より線材部を撓ませることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る糸通し器10の構成を表すものであり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。また、図2(A)は、糸通し器10を正面から見た中心部を通る断面図であり、(B)は、糸通し器10を側面から見た中心部を通る断面図である。糸通し器10は、線材を二つ折に折り曲げた線材部11と、この線材部11を内部に収納する収納部12Aを有する収納体12とを有している。
線材部11は、例えば、ピアノ線により形成されており、線材部11の折り曲げ部分11Aは、針の穴に貫通するものである。収納体12は、例えば、直方体であり、一端には、線材部11を収納体12から出し入れするための開口12Bが設けられている。
線材部11の一方の端部11Bは、第1の操作部13に取り付けられており、この第1の操作部13は、収納体12に対して線材部11を出し入れする方向に移動可能に配設されている。第1の操作部13は、例えば、収納体12の内部から、収納体12の側面において上下方向に縦長に設けられた溝12Cを介して、収納体12の外部に突出するように設けられており、第1の操作部13は、この溝12Cに沿って移動することができるようになっている。
線材部11の他方の端部11Cは、第2の操作部14に取り付けられており、この第2の操作部14は、収納体12に対して線材部11を出し入れする方向に移動可能に配設されている。また、第2の操作部14は、第1の操作部よりも開口12Bの側まで移動可能となっている。第2の操作部14は、例えば、収納体12の内部から、収納体12の側面において上下方向に縦長に設けられた溝12Dを介して、収納体12の外部に突出するように設けられており、第2の操作部14は、この溝12Dに沿って移動することができるようになっている。溝12Dは、溝12Cよりも開口12B側まで設けられている。
第1の操作部13および第2の操作部14とは、例えば、収納体12の内部の一部において、着脱可能に当接されている。例えば、第1の操作部13の一部が第2の操作部14の一部よりも下部において当接することにより、第1の操作部13を開口12Bの方向に移動させる際には、第1の操作部13が第2の操作部14を押圧して、第2の操作部14を開口12Bの方向に移動させ、第2の操作部14を開口12Bから離間する方向に移動させる際には、第2の操作部14が第1の操作部13を押圧して、第1の操作部13を開口12Bから離間する方向に移動させることができるようになっている。なお、第1の操作部13と第2の操作部14とは、それぞれ凹部あるいは凸部を設けるようにすれば好ましい。
収納部12の外側面の少なくとも一部に、例えば、滑り止め部材15が配設されている。第1の操作部13あるいは第2の操作部14を移動させる際に、手の力が弱い人や高齢の人でも簡単に使用することができる。
なお、収納体12は、例えば、開閉可能とすることにより、線材部11を取り換え可能とすることができることが好ましい。線材部が傷んだ場合であっても、全体を買い替えしなくてもよく、安価にすることができる。
糸通し器10は、例えば、次のようにして使用することができる。
図3は、糸通し器10の使用方法を説明するためのものである。まず、図3(A)に示した状態の糸通し器10の第1の操作部13を、図3(B)に示すように開口12Bに向かって移動させて、線材部11を開口12Bから外部に出す。その際、第1の操作部13により、第2の操作部14は押圧されて第1の操作部13と共に開口12Bに向かって移動する。次いで、図3(C)に示すように、線材部11の折り曲げ部分11Aを針の穴通す。続いて、第2の操作部14を更に開口12Bの側まで移動させる。これにより、線材部11の第2の操作部14の側が大きく撓み、糸を通す部分が大きくなるので、糸を通し易くすることができる。なお、折り曲げ部分11Aから一方の端部11Bまでの長さより、他方の端部11Cまでの長さの方をより長くすることが好ましい。撓みの量を大きくすることができ、糸を通す部分をより大きくすることができるからである。次いで、糸を通した後、第2の操作部14を第1の操作部13と当接する位置まで戻し、針の穴から線材部11を取り除くことにより、糸が針の穴を通る。最後に、第2の操作部14を開口12Bから離れる方向に移動させる。その際、第2の操作部14により、第1の操作部13は押圧されて第2の操作部14と共に開口12Bから離れる方向に移動する。これにより、線材部11が収納体12に収納される。なお、この糸通し器10であり、縫い針や刺繍針に限らず、ミシンにセットされたミシン用針にも使用することができる。
本実施の形態の糸通し器10によれば、収納部12Aを設けると共に、第1の操作部13および第2の操作部14を設け、収納体12に対して、線材部11を収納する方向に移動可能とするようにしたので、線材11部を容易に収納することができ、保管時等であっても、壊れてしまうことを防止することができる。また、第1の操作部13および第2の操作部14を、収納体12に対して、線材部11を出す方向に移動可能とすると共に、第1の操作部13よりも第2の操作部14を、開口12Bの側まで移動可能とするようにしたので、収納体12から、線材部11を出すことができると共に、例えば、線材部11の折り曲げ部分11Aを針の穴に通したのち、第2の操作部14を、更に開口12Bの側まで移動するようにすれば、線材部11の大きく撓ませることができる。よって、糸を容易に通すことができる。
また、第1の操作部13と第2の操作部14とを、一部において、着脱可能に当接するようにし、第1の操作部13を開口12Bの方向に移動させる際には、第1の操作部13が第2の操作部14を押圧して、第2の操作部14を開口12Bの方向に移動させ、第2の操作部14を開口12Bから離間する方向に移動させる際には、第2の操作部14が第1の操作部13を押圧して、第1の操作部13を開口12Bから離間する方向に移動させるようにすれば、線材部11を収納体12に容易に出し入れすることができると共に、線材部11を撓ませることができる。
更に、線材部11を取り換え可能とするようにすれば、線材部11が傷んだ場合であっても、全体を買い替えしなくてもよく、安価にすることができる。
更にまた、収納部12Aの外側面の少なくとも一部に、滑り止め部材15を配設するようにすれば、手の力が弱い人や高齢の人でも簡単に使用することができる。
加えて、線部材11の折り曲げた部分11Aから一方の端部11Bまでの長さより、他方の端部11Cまでの長さの方を長くするようにすれば、より線材部11を撓ませることができる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態で説明した収納体12を直方体とする場合について説明したが、例えば、円柱等の形状とすることもできる。