以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る負荷印加装置を適用した補助動力装置付き二輪車1の側面図である。また、図2は、補助動力装置付き二輪車1(以下、単に二輪車と示すこともある)の車体フレーム2の側面図である。二輪車1は、自転車と同様のペダルを有し、人力によるペダル踏力に応じて、駆動モータ24による補助動力を後輪WRに印加するようにした、いわゆる電動アシスト機能付きの二輪車である。
二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ5と、該ヘッドパイプ5から後方下方に延在するメインフレーム3と、該メインフレーム3の後部に接合されて上方に延在するシートチューブ4と、メインフレーム3の後部に配設される左右一対のチェーンステー19と、シートチューブ4の上部に接合されて後方下方に延在すると共にチェーンステー19の後端と接合される左右一対のシートステー18とからなる。
ヘッドパイプ5には、左右一対のフロントフォーク9を支持するステムシャフト(不図示)が回動自在に軸支されており、該ステムシャフトの上部には、左右一対のハンドルバー6が取り付けられている。ハンドルバー6の車幅方向の両端部には、ハンドルグリップ7およびブレーキレバー8がそれぞれ取り付けられており、フロントフォーク9の下端部には、車軸10を介して前輪WFが回転自在に軸支されている。前輪WFのドラム式ブレーキ11は、揺動アーム12の作動に伴って制動力を生じる。この揺動アーム12は、車幅方向右側のブレーキレバー8に連結された不図示のワイヤによって駆動される。
ヘッドパイプ5の前方には、ライトステー14を介してヘッドライト15が取り付けられている。フロントフォーク9の上部には、フロントフェンダ13が取り付けられている。メインフレーム3は中空構造とされており、その内部には、補助動力源および制御システムに電力を供給する第1バッテリB1および第2バッテリB2が収納されている。
メインフレーム3の後部で車体中央には、人力駆動系の機構と電力駆動系の機構とを一体に構成したパワーユニットPが取り付けられている。クランク軸21の車幅方向両端部には、乗員が踏む足乗せ部分を回転自在に軸支するクランクアーム22が固定されている。クランク軸21には、第1駆動側スプロケット20が固定されており、該第1駆動側スプロケット20に第1ドライブチェーン23が巻き掛けられて、人力動力伝達機構が構成されている。また、補助動力源としての駆動モータ24の出力軸には、第2駆動側スプロケット25が固定されており、該第2駆動側スプロケット25に第2ドライブチェーン28が巻き掛けられて電気動力伝達機構が構成されている。
チェーンステー19の後端部には、車軸30を介して後輪WRが回転自在に軸支されている。車軸30には、第1ドライブチェーン23を介して後輪WRに人力駆動力を伝達する第1従動側スプロケット101と、第2ドライブチェーン28を介して後輪WRに電気駆動力を伝達する第2従動側スプロケット102とが軸支されている。チェーンステー19の後端部には、第1ドライブチェーン23のテンショナ29が取り付けられている。
パワーユニットPとシートステー18との間には、駆動モータ24の出力を制御するモータドライバとしてのPDU(パワードライブユニット)39が配設されている。パワーユニットPの下部には、サイドスタンド40が取り付けられている。
円筒状のシートチューブ4には、その上方から、シート17を支持するシートピラー16が挿入固定されている。シートステー18には、左右一対のウインカ装置38が取り付けられており、後輪WRの上方を覆うリヤフェンダ34には、尾灯装置35が取り付けられている。リヤフェンダ34には、左右一対の支持ステー33が設けられている。
シートステー18の車軸30寄りの位置には、車体後方側に伸びる取付ステー41が設けられている。この取付ステー41には、後輪WRの回転速度を検知する車速センサ37を保持するホルダ36が固定されている。後輪WRのドラム式ブレーキ95(図5参照)を作動させる揺動アーム32は、車幅方向左側のブレーキレバー8に連動するワイヤ(不図示)に連結されている。
駆動モータ24の後方下方には、負荷印加装置としての負荷印加用モータ60が配設されている。本実施形態では、負荷印加用モータ60の出力軸62(図3参照)に固定された負荷印加用スプロケット61が、前記第1ドライブチェーン23の下側かつ内周側に噛合するように構成されている。
図2は、車体フレーム2の側面図である。また、図3は、パワーユニットPの拡大側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。ヘッドパイプ5の前面部には、ライトステー14を取り付けるためのボス5aが設けられている。メインフレーム3は、第1バッテリB1および第2バッテリB2(図1参照)の収納を可能とする中空の箱形構造とされている。メインフレーム3の後端部には、シートパイプ4を結合するための延出部3aが設けられている。
シートパイプ4の下部とチェーンステー19の前端部との間には、パワーユニットPの輪郭に沿った形状を有するユニットケース42が結合されている。パワーユニットPは、ユニットケース42の前後に形成された取付部44およびメインフレーム3の後端に形成された取付部48を用いて、車体フレーム2に吊り下げられるように固定される。
ユニットケース42の上面側には、PDU39の後部を支持するための取付ステー43が設けられている。この取付ステー43の配置および形状により、PDU39は、車体前方側が直接ユニットケース42に接触する一方、車体後方側は宙に浮いた状態で固定される。これにより、PDU39の駆動時の発熱は、走行風およびユニットケース42への熱伝導によって効率よく冷却されることとなる。
左右一対のシートステー18およびチェーンステー19の後端部は、それぞれ、車軸30の貫通孔47が形成された板状のリヤエンド46に接合されている。チェーンステー19の後端近傍には、第1ドライブチェーン23のテンショナ29を取り付ける台座45が形成されており、シートステー18には、ウインカ装置38(図1参照)を取り付けるためのウインカステー18aが設けられている。
図3を参照して、PDU39の外枠には、取付ステー43の後方側で下方に延出するサブステー45が設けられている。サブステー45には、車速やペダル踏力等に基づいて駆動モータ24の出力の算出等を行う制御部としてのMCU46が取り付けられている。このようなMCU46の配置構造によれば、ユニットケース42とPDU39との間の隙間にMCU46を効率よく配置し、かつMCU46の周囲の風通しをよくして冷却効果を高めることが可能となる。
車体フレーム2へのユニットケースPの懸架作業は、前記取付部44,48(図2参照)にマウントシャフト44a,48aを貫通させることで実行される。また、駆動モータ24の出力軸25aは、パワーユニットPを車体フレーム2に懸架した状態において、クランク軸21とほぼ同じ高さで車体後方側に位置するように構成されている。
図4は、後輪WRの車軸30の周囲の構成を示す斜視図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。車軸30は、車幅方向左側にナット頭を有すると共に車体右側に向けて貫通するアクスルシャフトである。車軸30のナット頭とリヤエンド46との間には、車体右側と同様に、チェーン引き金具50および支持ステー33の下端部が挟まれている。テンショナ29は、2つのローラを支持する支持板49を台座45に取り付けることでチェーンステー19に固定されている。チェーンステー19の上部には、第1,第2ドライブチェーン23,28を覆うチェーンカバー54が設けられている。
車速センサ37は、2本のネジ37aによってホルダ36に固定されている。ホルダ36は、2本のネジ41aによって取付ステー41に固定されており、取付ステー41は、シートステー18に溶着されている。車速センサ37は、後輪WRと一体に回転するパルスリング51に形成された貫通孔52の通過を検知することによって、二輪車1の車速を検知するように構成されている。パルスリング51は、後輪WRのスポーク(不図示)を取り付けるハブフランジ53の車幅方向左側に取り付けられている。
図5は、動力伝達機構Kの全体構成を示す上面断面図である。また、図6はクランク軸21側の構成を示す拡大断面図であり、図7は車軸30側の構成を示す拡大断面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。動力伝達機構Kは、乗員によるペダル踏力を後輪WRに伝える第1動力伝達機構K1と、駆動モータ24の回転駆動力を後輪WRに伝達する第2動力伝達機構K2とからなる。
クランク軸21には、第1駆動側スプロケット20が固定された支持部71が支持されており、乗員がペダルを漕ぐと、第1駆動側スプロケット20に巻き掛けられた第1ドライブチェーン23を介して、その踏力が第1従動側スプロケット101に伝達される。支持部71の車幅方向内側でパワーユニットPのケース内部には、ペダル踏力の大きさを検知するペダル踏力検知機構70が設けられている。
負荷印加用モータ60の出力軸62に固定された負荷印加用スプロケット61は、第1ドライブチェーン23の内周側に噛合している。負荷印加用モータ60は、第1動力伝達機構Kにおいて、第1ワンウェイクラッチ105の上流側に配設されており、必要に応じて、第1ドライブチェーン23の正転方向の回転を妨げる方向の負荷動力を与えるように構成されている。
一方、クランク軸21の車体後方に配設された駆動モータ24の出力軸25aに固定された第2駆動側スプロケット25は、第2ドライブチェーン28に噛合しており、必要に応じて、駆動モータ24による電気駆動力を第2従動側スプロケット102に伝達するように構成されている。
第2駆動側スプロケット101,102と後輪ハブ94との間には、ワンウェイクラッチ機構100が設けられている。本実施形態に係るワンウェイクラッチ機構100は、第1駆動側スプロケット101と車軸30との間に配設される第1ワンウェイクラッチ105(図7参照)と、第2従動側スプロケット102と車軸30との間に配設される第2ワンウェイクラッチ106(図7参照)とからなり、いずれも、二輪車1を前進させる方向の回転駆動力のみを後輪ハブ94に伝達するように構成されている。なお、後輪ハブ94の内部には、ドラム式ブレーキ95(図7参照)が内蔵されている。
図6を参照して、まずペダル踏力検知機構70の構造を説明する。本実施形態に係るペダル踏力検知機構70は、クランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に生じる相対力を検知するものである。より具体的には、クランク軸21と第1駆動スプロケット20との間に生じる相対力(ねじり力)を、カム機構によってクランク軸21の軸方向の押圧力に変換し、この押圧力によって油圧ピストンを押して生じた油圧を油圧センサで検知することにより、ペダル踏力の検知を行う。
ペダル踏力検知機構70において、ねじり力を軸方向の押圧力に変換する機構は、主に、第1駆動側スプロケット20の支持部71と一体回転するハブ217と、クランク軸21に回転不能かつ摺動可能に支持されたカムリング75と、ハブ217とカムリング75との間に配設される複数の鋼球73,74とからなる。クランク軸21の回転駆動力は、カムリング75から鋼球73,74を介してハブ217に伝達される。
ハブ217とカムリング75の対向面には、それぞれ、鋼球73,74が嵌る略半球状の凹部が形成されている。この凹部は、その底部近傍では鋼球73,74と同形状の部分球面である一方、縁の近傍では部分球面から接線方向に離れて広がる面を有している。これにより、ハブ217とカムリング75との間に相対力が作用すると、ハブ217とカムリング75との回転方向の位置がずれると共に、凹部の縁の面が鋼球73,74に乗り上げようとする。その結果、ハブ217に対してカムリング75を図示右方向に離間させる力、すなわち、カムリング75を図示右方向に押圧する力が生じる。
カムリング75の図示右方向には、本体77に収められて軸方向に摺動可能な円環状の油圧ピストン76が配置されている。ペダル踏力は、この油圧ピストン76が図示右方向に押されることで生じる油圧に基づいて検知される。
パワーユニットPは、右ケース80a、中ケース80b、左ケース80cからなるケース80を有する。ケース80の内部には、主に、ペダル踏力検知機構70、クランク軸21、駆動モータ24、回転軸83、出力軸25aが収納されている。クランク軸21は、右ケース80Cに嵌合された軸受79と、左ケース80Cに嵌合されてハブ217と接する軸受72とによって軸支されている。図示右側の軸受21の車幅方向内側には、クランク軸21の回転速度を検知するためのマグネット78が配設されている。
駆動モータ24は、中ケース80bに固定されたインナステータ87と、複数の磁石88が取り付けられたアウタロータ86と、該アウタロータ86に固定される回転軸83とからなる。回転軸83は、右ケース80aに嵌合された軸受82と、左ケース80cに嵌合された軸受85とによって軸支されている。回転軸83には第1減速ギヤ84が形成されており、該第1減速ギヤ84には、出力軸25aに固定された第2減速ギヤ92が噛合している。出力軸25aは、中ケース80bに嵌合された軸受89と左ケースに嵌合された軸受91とによって軸支されている。第2駆動側スプロケット25は、ロックナット93を用いて回転軸25aに固定されている。
図7を参照して、後輪ハブ94は、車軸30に対して軸受111,112によって回転自在に軸支されている。後輪ハブ94は、ワンウェイクラッチ機構100のインナリング109にスプライン嵌合されている。インナリング109は、車軸30に対して2つのニードルローラベアリング107,108によって回転自在に軸支されている。
第1ワンウェイクラッチ105の外周側には、第1従動側スプロケット101が取り付けられたアウタ101aが係合し、一方、第2ワンウェイクラッチ106の外周側には、アウタ部材が一体形成された第2従動側スプロケット102が係合している。本実施形態では、第1ワンウェイクラッチ105にラチェット式が適用され、一方、第2ワンウェイクラッチ106には「ころ」式(アウタリングとインナリングとの間に形成されたテーパ溝にころが嵌ることで両者を結合する方式)が適用されている。アウタ101aと車軸30との間には、ダストシール103および円筒状のカラー104が配設されている。
上記したワンウェイクラッチ機構100によれば、乗員がペダルを漕ぐことによる人力駆動力は、第1従動側スプロケット20から第1ワンウェイクラッチ105を介して、インナリング109および後輪ハブ94に伝達され、他方、駆動モータ24による電気駆動力は、第2従動側スプロケット102から第2ワンウェイクラッチ106を介してインナリング109および後輪ハブ94に伝達され、複雑な断接機構を用いることなく、人力による後輪WRの駆動、電力による後輪WRの駆動、人力および電力の合力による後輪WRの駆動が可能になる。また、駆動モータ24の作動状態に関わらず、クランク軸21が停止した状態での惰性走行ができるようになる。
図8は、ペダル踏力検知機構70の構成を示す拡大断面図である。この図では、図6に示した断面とは異なる断面を示している。クランク軸21の左方には、スリーブ216が固定されている。カムリング75は、スリーブ216の外周部にスプライン嵌合されることで、クランク軸21に対して回転不能かつ軸方向に摺動可能に支持されている。支持部71と一体回転するハブ217は、スリーブ216と相対回転可能に支持されている。
本体77は、共に円環状とされるカムリング75および抑えリング209の間に挟まれるように配設されている。スリーブ216は、本体77の中央に形成された貫通孔に対し、所定の隙間を有して相互回転可能に貫通している。抑えリング209は、抑えプレート207および留めピン208を用いてスリーブ216に固定されている。本体77と抑えリング209との間には、円環状のスラストニードルベアリング210が配設されている。これと同様に、カムリング75と油圧ピストン76との間には、円環状のスラストニードルベアリング214が配設されている。
油圧ピストン76の内周側および外周側には、オイルシール211,213がそれぞれ取り付けられている。油圧ピストン76は、クランク軸21と同心の環状シリンダ212に挿入されている。環状シリンダ212の底部には、油圧ピストン76を常に図示左方向に付勢する環状の皿ばね206が配設されている。環状シリンダ212の底部は、本体77に設けられたオイル溜め202および圧力センサ218によって閉塞される圧力検知空間219と連通している。これにより、乗員がペダルを漕ぐことでクランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に相対力が生じると、油圧ピストン67が図示右方に押圧されて圧力検知空間219に満たされたオイルの圧力が高まることとなる。この圧力上昇は、油圧センサ218によって検知される。
環状シリンダ212とオイル溜め202との間には、チェックボール205を有する逆止弁203が配設されている。オイル溜め202の上部には、パッキン201を介して蓋200が取り付けられている。本体77は、オイル通路に混入した空気が抜けやすいように、オイル溜め202を車体上側に向けて配設されている。右ケース80aの内部には、ホールIC等によってマグネット78の通過状態に基づくクランク軸21の回転速度を検知するクランク軸回転速度センサ26が配設されている。
図9は、本実施形態に係る二輪車の制御システムの構成を示すブロック図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。制御部としてのMCU46は、各種センサ出力に基づいて駆動モータ24の出力の算出を実行するほか、第1,第2バッテリB1,B2の状態の検知、各種センサの状態の検知等を行う。MCU46には、シート17への乗員の着座を検知するシートスイッチ158、サイドスタンド40の格納状態を検知するサイドスタンドスイッチ157、前後ブレーキレバー8の揺動に連動する前後ブレーキスイッチ155,156、クランク軸回転速度センサ26、ペダル踏力を検知する油圧センサ218、車速センサ37、バッテリ温度センサ168からの情報が入力される。また、MCU46には、乗員に各種警告を発する警告灯159が接続されている。
MCU46は、例えば、乗員がシート17に着座し、かつサイドスタンド40が格納されているときに所定のペダル踏力が入力されると、ペダル踏力および車速に応じた補助動力を算出し、CAN通信線167を介してPDU39に駆動モータ24の駆動指令を発する。また、MCU46は、走行中の車速やペダル踏力の変化に応じて駆動モータ24の出力を調整したり、補助動力の供給中にブレーキスイッチ155,156の作動が検知されると、駆動モータ24への電力供給を停止する制御等も可能とする。
PDU39には、ブレーカ169を介して直列接続された第1,第2バッテリB1,B2(例えば、26V/6Ah×2)から供給される主電源(例えば、48V)が入力されると共に、リレー165およびヒューズ166を介して、車載バッテリB1,B2の出力をDC/DCコンバータ164で降圧されたPDU用の制御電源(例えば、24V/1.2Ah)が入力されている。PDU39は、MCU46からの駆動指令に基づいて駆動モータ24に駆動電流を供給する。駆動モータ24には、その回転角度を検知する回転角度センサ152が近接配置されている。また、PDU39には、負荷印加手段としての負荷印加用モータ60が接続されている。
第1,第2バッテリB1,B2には、前記したバッテリ温度センサ168およびブレーカ169が設けられている。車載バッテリB1,B2の出力は、PDU39への供給経路とは異なる経路において、制御システムの主電源(例えば、12V/16.7Ah)を得るためにDC/DCコンバータ160で降圧される。この主電源は、メインスイッチ161、メインリレー162およびヒューズ163を介して、MCU46のほか、ヘッドライト15、各種スイッチ類、尾灯装置35、ウインカ装置等の補機類153に供給される。
図10は、本実施形態に係る二輪車の動力伝達機構の全体構成の模式図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。前記したように、ペダル22aに加えられた踏力は、クランクアーム22→クランク軸21→第1駆動側スプロケット20→第1ドライブチェーン23→第1従動側スプロケット101→第1ワンウェイクラッチ105→後輪WRの順で伝達される。この一連の伝達機構が第1動力伝達機構K1となる。
一方、駆動モータ24の回転駆動力は、回転軸83→第1減速ギヤ84→第2減速ギヤ92→出力軸25a→第2駆動側スプロケット25→第2ドライブチェーン28→第2従動側スプロケット102→第2ワンウェイクラッチ106→後輪WRの順で伝達される。この一連の伝達機構が第2動力伝達機構K2となる。
本実施形態では、検知されたペダル踏力が所定値を超えると、駆動モータ24によって後輪WRに補助動力を供給するように構成されている。具体的には、図11に示すように、ペダル踏力がアシスト開始閾値PT1を超えると、アシスト最大値AT1を上限として、ペダル踏力に比例して増加する補助動力を印加する。また、本実施形態において、アシスト開始閾値PT1は、車速に応じて変化するように設定されている。
図12は、アシストを開始する踏力と車速との関係を示すグラフである。本実施形態ででは、アシスト開始のトリガとなるペダル踏力のアシスト開始閾値PTが、速度上昇に伴って徐々に減少し、所定速度(例えば、約12km/h)を超えると一定値(例えば、約2.5kgf)となるように設定されている。この設定によれば、発進時にごくわずかな踏力でアシストが開始されてしまったり、また、速度が上昇しても大きなペダル踏力を入力しないとアシストが行われないといった現象が発生することがなく、通常の自転車と同様な自然な乗車フィーリングを得ることが可能となる。
ところで、本実施形態に係る二輪車1において、乗員が通常の速度でペダルを漕いでも後輪WRに回転駆動力が伝達されない(第1ワンウェイクラッチ105が接続されない)ほどの高い速度で走行している間は、乗員がペダルを踏んでもクランク軸21と第1駆動側スプロケット20との間に相対力が発生せず、ペダル踏力を検知できないという現象が発生する。このとき、乗員に対しては、ペダルの空回り感を与えることとなる。
前記した負荷印加装置としての負荷印加用モータ60は、上記したような状態に対処するために設けられている。本実施形態に係る負荷印加用モータ60によれば、通常であればペダルの空回りが生じる高速走行時においても、第1ドライブチェーン23に逆転方向の負荷を与えることで、ペダル操作に対する負荷を発生させることが可能となる。負荷印加用モータ60は、負荷を与える必要が生じた時だけ、励磁状態を切り換えて負荷運転制御を行い、通常時には負荷が生じない無負荷運転とすることが可能に構成されている。
図13は、負荷印加用モータ60によって与える負荷トルクとペダル回転数との関係を示すグラフである。本実施形態では、車速が所定値を超えた状態で、ペダル回転速度がペダル空回り閾値PN1を超えると、負荷最大値HT1を上限として、ペダル回転数の大きさに比例して増加する負荷を印加するように構成されている。これにより、高速走行時においてもペダルの空回り感が生じることがなく、かつペダル踏力の検知が可能となる。なお、負荷を印加するタイミングやその大きさは種々の変更が可能であり、例えば、上限値を設けずに車速の増加に伴って増加させるようにしてもよい。
そして、ペダル踏力に対する負荷印加制御は、第1ドライブチェーン23を逆転させる方向に負荷印加用モータ60を回転させるように電力を供給するほか、負荷印加用モータ60を発電機として駆動して回生発電に伴う負荷を生じさせることで行ってもよい。この構成によれば、人力によって発電された電力で第1,第2バッテリB1,B2を充電することができ、高速走行時における消費電力を抑えることが可能となる。
図14は、本実施形態に係る駆動モータ24のアシスト制御方法を示すグラフである。本実施形態に係る二輪車1では、通常のアシスト自転車のように、所定値を超えたペダル踏力が入力されている間のみ補助動力を供給するのではなく、ペダル踏力の山と山とをつなぐように補助動力を供給する「踏力保持制御」が可能に構成されている。
クランク軸21は、ペダルが左右交互に踏まれることで回転するため、ペダル踏力検知機構70によって検知されるペダル踏力の波形は、図示するように、山と谷とが周期的に繰り返される形状となる。本実施形態では、先に入力されたペダル踏力のピーク値を、次にペダル踏力のピーク値が検知されるまで保持するように補助動力を供給することで、ペダル踏力波形の山と山とをつなぐような制御が行われる。
図14において、時刻t1では、先に入力されたペダル踏力(波形A)がピーク値を越えて下がり始めたことが検知され、この波形Aのピーク値を保つための補助動力F1の供給が開始される。次に、時刻t2では、次に入力されたペダル踏力(波形B)がピーク値を越えて下がり始めたことが検知され、この波形Bのピーク値を保つための補助動力F2の供給が開始される。
本実施形態において、この踏力保持制御は、ペダル踏力(例えば、21kgf)が所定値を超えるような登坂路および平地での加速時に実行される。また、踏力保持制御は、乗員によるブレーキ操作等が行われるまで同じ大きさの補助動力を供給する「クルーズ走行」制御と同時適用するほか、補助動力の大きさを一定とせずに、供給開始時の大きさから漸減させる「準クルーズ走行」制御と同時適用することが可能である。さらに、ペダル踏力が所定値(例えば、1.5kgf)以下の状態でクランク軸21が所定回数回転(例えば、4回転)すると、補助動力の供給を停止するように構成することもできる。
図15は、ペダル踏力と駆動モータ出力との関係を示すグラフである。図14を用いて説明したようなクルーズ制御および準クルーズ制御によれば、駆動モータ24から供給される補助動力によって二輪車1が自走する状況も想定される。そして、このような自走中においては、乗員によるペダル踏力が入力された際に、駆動モータ出力とペダル踏力とが合成されて後輪WRに伝達されることで、ペダル踏力が加わった部分だけ余分な加速感が生じてしまう可能性がある。このような現象を回避するため、本実施形態では、加えられたペダル踏力のぶんだけ補助動力を低減するように構成されている。
図15に示す例では、駆動モータ出力MP1による補助動力の供給中に、時刻t10で最初のペダル踏力の入力が開始され、時刻t30に次のペダル踏力が入力された場合を示している。最初のペダル踏力は時刻t20でゼロに戻り、次のペダル踏力は時刻t40でゼロに戻るもので、いずれもピーク値PT10の大きさを有する波形が検知された場合、本実施形態では、この波形を打ち消すように駆動モータ24を駆動モータ出力MP2まで下げるように構成されている。このような補助動力低減制御によれば、駆動モータ24から一定の補助動力が供給されている間にペダル踏力が入力されても、両者の合成駆動力には大きな変化が生じることがなく、スムーズな走行フィーリングを得ることができる。
図16は、本発明の第2実施形態に係る補助動力装置付き二輪車の動力伝達機構の構成を示す模式図である。本実施形態では、人力動力伝達機構と電気動力伝達機構とを直列的に配置すると共に、駆動モータ308の補助動力で走行する際には、ペダル305と後輪WRとの間の伝達経路を切り離す点に特徴がある。図中(a)は、両者の伝達経路が切り離された状態であり、同(b)は両者が接続された状態を示している。
クランク軸301の両端部には、クランクアーム304および乗員が踏むペダル305が取り付けられている。また、クランク軸301には、負荷印加用モータ300およびワンウェイクラッチ303を介して駆動側ギヤ302が取り付けられている。本実施形態では、ペダル305から駆動側ギヤ302までが人力動力伝達機構に相当する。
一方、電気動力伝達機構は、駆動モータ308と後輪WRとの間に構成されている。駆動モータ308の回転軸309には、駆動側スプロケット310および従動側ギヤ314が固定されている。後輪WRの回転軸312には従動側スプロケット313が固定されており、駆動側スプロケット310と従動側スプロケット313との間には、ドライブチェーン311が巻き掛けられている。
そして、人力動力伝達機構の駆動側ギヤ302と電気動力伝達機構の従動側ギヤ314との間には、回転軸317の軸方向に摺動可能な切替用ギヤ306が配設されている。この構成によれば、(a)に示す切り離し状態においては、駆動モータ308で後輪WRを駆動すると共に、負荷印加用モータ300によって乗員のペダル操作に対する負荷を与えることが可能となる。なお、この負荷は、負荷印加用モータ300を回生発電させることで得るようにしてもよい。
一方、(b)に示すように切替用ギヤ306を図示右方向に摺動させて駆動側ギヤ302および従動側ギヤ314に噛合させれば、乗員のペダル踏力を後輪WRに伝達することが可能である。本実施形態に係る動力伝達機構の構成によれば、後輪WRに対する動力伝達経路を並列してふたつ設ける必要がなく、また、ワンウェイクラッチも人力動力伝達機構にひとつ設ければよく、簡易な構造の補助動力装置付き二輪車を得ることができる。なお、動力を任意に断接するための機構は種々の変形が可能である。
上記したように、本発明に係る補助動力装置付き二輪車によれば、高速走行時にペダルの空回りが生じる可能性のある動力伝達機構を有する場合でも、負荷印加手段によって、ペダルの正転方向の回転に対する負荷を発生させることが可能となる。これにより、高速走行時に乗員がペダルを正転させた際でも、ペダルの空回り感を生じさせないと共に、ペダル踏力検知機構によるペダル踏力の検知を行うことが可能となる。
なお、二輪車の各部構造、クランク回転速度センサおよび車速センサの構造や配置、ペダル踏力検知機構の構造、人力動力伝達機構および電気動力伝達機構の構造、負荷印加用モータの構造や配置、負荷印加用モータの制御方法等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、負荷印加手段は、摩擦等により動力伝達機構の正転駆動に抗する負荷を与えるローラやブレーキシュー等で構成してもよい。