JP5283246B2 - ヨウ化水素酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液からのヨウ化水素酸を得るヨウ化水素酸の製造方法に関する。
従来から、ヨウ化水素酸は、各種ヨウ化物の合成原料や、医療用中間体、還元剤などとして用いられるため有用な物質である。そして、このヨウ化水素酸は、通常、工業的にヨウ素と水との混合液または懸濁液に還元剤を添加することによってヨウ素を還元してヨウ化水素酸とした後に、このヨウ化水素酸を蒸留することによって製造されている。
ところで、このヨウ化水素酸の使用原料であるヨウ素は、希少な物質であり、極めて貴重な資源であることから、使用済みの廃液から高価なヨウ素化合物を回収することは、経済的あるいは自然環境保護の観点から極めて有益である。
そして、この種の廃液からのヨウ素化合物の回収方法としては、この廃液中からヨウ素化合物をヨウ素として回収する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平6−144803号公報
しかしながら、この種のヨウ素化合物の回収方法としては、廃液からヨウ素をヨウ化水素酸として回収する方法が知られていないという問題を有している。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被処理液からヨウ化水素酸を濃縮分離できるヨウ化水素酸の製造方法を提供することを目的とする。
請求項1記載のヨウ化水素酸の製造方法は、少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液から電気透析法によりヨウ化水素酸を濃縮分離するものである。
そして、電気透析法を用いることにより、少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液からヨウ化水素酸を濃縮分離できるので、被処理液からヨウ化水素酸を濃縮分離できる。
請求項2記載のヨウ化水素酸の製造方法は、少なくとも水、酢酸およびヨウ化水素酸を含む被処理液から蒸留法によりヨウ化水素酸を濃縮分離するものである。
そして、蒸留法を用いることにより、少なくとも水、酢酸およびヨウ化水素酸を含む被処理液からヨウ化水素酸を濃縮分離できるので、被処理液からヨウ化水素酸を濃縮分離できる。
請求項3記載のヨウ化水素酸の製造方法は、少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液から電気透析法によりヨウ化水素酸を濃縮分離してヨウ化水素酸濃縮液とする濃縮分離工程と、この濃縮分離工程にて得られたヨウ化水素酸濃縮液を蒸留精製する精製工程とを具備したものである。
そして、少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液から濃縮分離工程にて電気透析法を用いてヨウ化水素酸を濃縮分離してヨウ化水素酸濃縮液としてから、この濃縮分離工程にて得られたヨウ化水素酸濃縮液を精製工程にて蒸留精製する。この結果、少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液からより高濃度のヨウ化水素酸を得ることができるので、このヨウ化水素酸をより効率良く製造できる。
請求項4記載のヨウ化水素酸の製造方法は、少なくとも水、酢酸およびヨウ化水素酸を含む被処理液から蒸留法によりヨウ化水素酸を濃縮分離してヨウ化水素酸濃縮液とする濃縮分離工程と、この濃縮分離工程にて得られたヨウ化水素酸濃縮液を蒸留精製する精製工程とを具備したものである。
そして、少なくとも水、酢酸およびヨウ化水素酸を含む被処理液から濃縮分離工程にて蒸留法を用いてヨウ化水素酸を濃縮分離してヨウ化水素酸濃縮液としてから、この濃縮分離工程にて得られたヨウ化水素酸濃縮液を精製工程にて蒸留精製する。この結果、少なくとも水、酢酸およびヨウ化水素酸を含む被処理液からより高濃度のヨウ化水素酸を得ることができるので、このヨウ化水素酸をより効率良く製造できる。
請求項5記載のヨウ化水素酸の製造方法は、請求項1または3記載のヨウ化水素酸の製造方法において、無機ヨウ素化合物は、ヨウ化水素酸およびヨウ化水素酸のアルカリ塩の少なくともいずれかであるものである。
そして、被処理液に含まれている無機ヨウ素化合物が、ヨウ化水素酸およびヨウ化水素酸のアルカリ塩の少なくともいずれかであるので、この被処理液からのヨウ化水素酸の濃縮分離がより効率良くできる。
本発明によれば、電気透析法または蒸留法を用いることにより、少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液からヨウ化水素酸を容易に濃縮分離できるので、この濃縮分離したヨウ化水素酸濃縮液を蒸留精製することにより、被処理液から高濃度のヨウ化水素酸を効率良く製造できる。
以下、本発明のヨウ化水素酸の製造方法の第1の実施の形態の構成を図1を参照して説明する。
まず、本発明で用いられる原料の被処理液は廃液である。そして、この廃液は、どのような製造工程で得られるか特定できないため、少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含んでいれば、これら各成分の濃度、不純物の種類あるいは含量などについて特に限定されるものではない。
そして、図1において、1は電気透析装置としての電気透析槽であり、この電気透析槽1は、廃液としての原液Dからヨウ化水素酸(HI)を濃縮分離する濃縮分離装置である。そして、この電気透析槽1は、2つの試料室に交互に仕切られて構成された2室1組の2室法である。具体的に、この電気透析槽1の両側には、一対の電極1a,1bが配設されている。そして、これら一対の電極1a,1bの一方、すなわち電極1aが正極としての陽極とされる。また、これら一対の電極1a,1bの他方、すなわち電極1bが負極としての陰極とされる。
さらに、電気透析槽1は、図示しない切欠部を有する枠体としての室枠2を備えており、この室枠2の長手方向に沿った両端部の内側に一対の電極1a,1bが取り付けられている。そして、この室枠2内には、この室枠2の電極1aが配設された側である正極側から、正極側の電極室11aに供給される極液Pを仕切る陽イオン交換膜Kにつづいて、10組の第1の陰イオン交換膜Aおよび第1の陽イオン交換膜Kが繰り返して等間隔に離間された状態で交互に配列されている。よって、電気透析槽1は、組込み膜数が10組であり、この電気透析槽1内の電極1a,1b間は、第1の陰イオン交換膜Aおよび第1の陽イオン交換膜Kにて交互に仕切られている。
また、これら陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜Aおよび第1の陽イオン交換膜Kのそれぞれは、これら各陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜Aおよび第1の陽イオン交換膜Kに張力を持たせるために、長手方向に沿って引っ張られた状態で、これら陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜Aおよび第1の陽イオン交換膜Kそれぞれの両端が室枠2の両側面に締め付け固定されている。
ここで、第1の陰イオン交換膜Aとしては、例えば一般的な強塩基性スチレン−ジビニルベンゼン系均一陰イオン交換膜などが使用される。そして、原液D中に硫酸イオン(SO )などの2価イオンが不純物として含まれている場合には、この第1の陰イオン交換膜Aとして一価陰イオン選択透過性を高めた膜である一価陰イオン選択透過膜を用いることにより、ヨウ素イオン(I)の選択透過性がより高くなるので、効果的である。さらに、この一価陰イオン選択透過膜としては、例えばセレミオンASV(旭硝子株式会社製)や、アシプレックスA−192(旭化成株式会社製)などがある。
また、陽イオン交換膜Kおよび第1の陽イオン交換膜Kとしては、例えば強酸性スチレン−ジビニルベンゼン系均一陽イオン交換膜などが使用される。そして、原液D中にナトリウムイオン(Na)やカルシウムイオン(Ca2+)などが不純物として含まれている場合には、これら陽イオン交換膜Kおよび第1の陽イオン交換膜Kとして水素イオン選択透過膜あるいは一価陽イオン選択透過膜を用いることにより、水素イオン(H)の選択透過性がより高くなるので、効果的である。さらに、これら水素イオン選択透過膜あるいは一価陽イオン選択透過膜としては、例えばセレミオンHSV(旭硝子株式会社製)、アシプレックスK−192(旭化成株式会社製)などがある。
一方、電気透析槽1の電極1a,1bが内部に収容され、両極側が陽イオン交換膜Kにて仕切られた室枠2内が極液室としての電極室11a,11bとなる。さらに、これら電極室11a,11b間の陽イオン交換膜Kと第1の陰イオン交換膜Aとにて仕切られた室枠2内が試料室としての生成槽である濃縮室13となる。また、これら電極室11a,11b間の第1の陰イオン交換膜Aと第1の陽イオン交換膜Kとにて仕切られた室枠2内が試料室としての脱塩室である原液室12となる。
言い換えると、この原液室12は、一対の電極1a,1bによる陽極側が第1の陰イオン交換膜Aにて仕切られ、陰極側が第1の陽イオン交換膜Kにて仕切られている。また、濃縮室13は、一対の電極1a、1bによる陽極側が陽イオン交換膜Kにて仕切られ、陰極側が第1の陰イオン交換膜Aにて仕切られている。そして、これら原液室12および濃縮室13は交互に形成されている。さらに、電極室11a,11bは、交互に形成された原液室12および濃縮室13の幅方向である両側に位置している。
また、陽極側の電極室11aは、陽イオン交換膜Kにて仕切られている。さらに、陰極側の電極室11bは、いずれかの第1の陽イオン交換膜Kである陽イオン交換膜Kにて仕切られている。そして、これら電極室11a,11bの長手方向に沿った室枠2の両側面に位置する液供給口および液排出口は、例えば硫酸(HSO)などの極液Pの入口および出口となる極液入口および極液出口とされている。
さらに、原液室12の長手方向に沿った室枠2の両側面に位置する液供給口および液排出口は、原液Dの入口および出口となる原液入口および原液出口とされている。したがって、この原液Dは、第1の陰イオン交換膜Aと第1の陽イオン交換膜Kとの間の原液室12に供給される。ここで、この原液Dは、少なくとも水(HO)、酢酸(CHCOOH)および無機ヨウ素化合物を含む廃液である。また、この原液D中には、無機ヨウ素化合物としてヨウ化水素酸(HI)またはヨウ化水素酸のアルカリ塩などが含まれている。
また、濃縮室13の長手方向に沿った室枠2の両側面に位置する液供給口および液排出口は、濃縮液Cの入口および出口となる濃縮液入口および濃縮液出口とされている。ここで、この濃縮液Cは、少なくとも水およびヨウ化水素酸を含み、このヨウ化水素酸が濃縮されたヨウ化水素酸水溶液などのヨウ化水素酸濃縮液である。
次いで、原液室12には、原液Dが原液入口から導入される。また、濃縮室13には、濃縮液Cが濃縮液入口から導入される。さらに、各電極1a,1bと接する両端に位置する電極室11a,11bには、陽極液および陰極液としての極液Pが極液入口から導入される。
ここで、電気透析槽1の室枠2内の第1の陰イオン交換膜Aと第1の陽イオン交換膜Kとの配列の繰り返し回数nは、目的に応じて選択でき、好ましくは10以上1000以下程度の繰り返し回数である。なお、電気透析槽1の電極室11a,11b、原液室12および濃縮室13への極液P、原液Dおよび濃縮液Cそれぞれの各液の供給は連続的にもできる。
さらに、原液室12内の原液Dは、この原液室12内で電気透析を続けることにより、ヨウ化水素酸の濃度が低下する。このため、ヨウ化水素酸の濃度が充分に低下した原液Dを処理液として適宜抜き出し、新たな原液Dを補充させる。また、この処理液を連続的に抜き出すとともに連続的に補充する連続運転とすることもできる。
また、濃縮室13内の濃縮液Cは、この濃縮室13内で電気透析を続けることにより、第1の陰イオン交換膜Aを透過したヨウ化水素酸によって、この濃縮液C中のヨウ化水素酸の濃度が上昇する。このため、このヨウ化水素酸の濃度が上昇した濃縮液Cを、必要に応じた回数または連続的に抜き出すことによって、高濃度のヨウ化水素酸濃縮液を得ることができる。
次に、上記第1の実施の形態のヨウ化水素酸の製造方法を説明する。
まず、電気透析槽1の各電極室11a,11bに極液Pを供給するとともに、原液室12に原液Dを供給し、濃縮室13に濃縮液Cを供給する。
この状態で、各電極室11a,11bの電極1a,1b間に、予め測定した限界電流密度以下の電流を供給する。
すると、図1に示すように、正極側の電極室11a内の水素イオン(H)が陽イオン交換膜Kを透過するとともに、原液室12内の水素イオンが第1の陽イオン交換膜Kを透過する。同時に、各原液室12内のヨウ素イオン(I)が第1の陰イオン交換膜Aを透過する。
このとき、このヨウ素イオンや硫酸イオンなどの陰イオンは、陽イオン交換膜Kおよび第1の陽イオン交換膜Kのそれぞれを透過できない。また、水素イオンは、第1の陰イオン交換膜Aを透過できない。
このため、濃縮室13内の濃縮液C中のヨウ化水素酸の濃度が上昇する。この後、この濃縮室13内のヨウ化水素酸の濃度が上昇した処理液、すなわち濃縮液Cを濃縮室13から抜き出すことによって、高濃度のヨウ化水素酸水溶液であるヨウ化水素酸濃縮液を得ることができる。
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、電気透析槽1の第1の陰イオン交換膜Aと第1の陽イオン交換膜Kとの間の原液室12に原液Dを供給するとともに、陽イオン交換膜Kと第1の陰イオン交換膜Aとの間の濃縮室13に濃縮液Cを供給してから、この電気透析槽1の電極1a,1b間に電流を供給することによって、この原液D中のヨウ化水素酸が電気透析法にて濃縮室13内の濃縮液Cへと分離される。この結果、この濃縮室13内の濃縮液C中のヨウ化水素酸濃度が上昇するから、原液Dからヨウ化水素酸を簡単な構成で容易に濃縮分離できる。
次に、本発明のヨウ化水素酸の製造方法の第2の実施の形態を説明する。
この図2に示す電気透析槽1は、基本的には図1に示す電気透析槽1と同様であるが、この電気透析槽1の両端に配設された電極室11a,11b間を正極側から極液Pを仕切る陽イオン交換膜Kにつづいて、第1の陰イオン交換膜A、第1の陽イオン交換膜K、第2の陰イオン交換膜Aおよび第2の陽イオン交換膜Kにて交互に仕切ることにより4つの試料室に交互に仕切れて形成された4室1組の試料室が、目的に応じて選択される複数、好ましくは5以上500以下程度の繰り返し回数nで設けられたものである。
そして、この電気透析槽1は、陰極側の電極室11bに隣接して原液室12が設けられている。よって、この原液室12は、陰極側が第2の陽イオン交換膜Kにて仕切られ、陽極側が第2の陰イオン交換膜Aにて仕切られている。また、この原液室12の陽極側には、第2の陰イオン交換膜Aを介して原液室12に隣接して濃縮室13が設けられている。このため、この濃縮室13は、陰極側が第2の陰イオン交換膜Aにて仕切られ、陽極側が第1の陽イオン交換膜Kにて仕切られている。
さらに、この濃縮室13の陽極側には、第1の陽イオン交換膜Kを介して濃縮室13に隣接して試料室としての溶液室である酸室15が設けられている。よって、この酸室15は、陰極側が第1の陽イオン交換膜Kにて仕切られ、陽極側が第1の陰イオン交換膜Aにて仕切られている。そして、この酸室15には、硫酸などの強酸の水溶液である酸液Aが供給される。ここで、この酸室15の長手方向に沿った室枠2の両側面に位置する液供給口および液排出口は、酸液Aの入口および出口となる酸入口および酸出口とされている。そして、この酸入口から酸液Aが供給されるとともに、酸出口から酸液Aが導出される。
また、この酸室15の陽極側には、第1の陰イオン交換膜Aを介して酸室15に隣接して試料室としての溶液室である塩室16が設けられている。よって、この塩室16は、陰極側が第1の陰イオン交換膜Aにて仕切られ、陽極側が陽イオン交換膜Kにて仕切られている。そして、この塩室16には、酸室15に供給される酸液Aに対応して副生される酸あるいは塩の水溶液、例えば硫酸水素ナトリウム(NaHSO)水溶液などの塩液Sが供給される。ここで、この塩室16の長手方向に沿った室枠2の両側面に位置する液供給口および液排出口は、塩液Sの入口および出口となる塩入口および塩出口とされている。そして、この塩入口から塩液Sが供給されるとともに、塩出口から塩液Sが導出される。
この結果、電気透析槽1による回分法での電気透析により、原液室12内へと供給した原液D中のヨウ化水素酸のヨウ素イオン(I)と、酸室15内に供給した酸液A中の水素イオン(H)とから複置換透析反応によってヨウ化水素酸(HI)が生成されて、濃縮室13内の濃縮液C中のヨウ化水素酸の濃度が上昇するとともに、塩室16内の塩液S中の酸あるいは塩の濃度、例えば硫酸水素ナトリウムの濃度が上昇する。
このため、原料系の原液室12内の原液D中のヨウ化水素酸の濃度および酸室15内の酸液A中の酸の濃度が次第に低下するとともに、この濃度の低下に伴って電流値が低下する。
そして、この電流値が充分に低下した場合には、電気透析槽1による電気透析を一旦停止して、原料系の原液室12および酸室15内の原液Dおよび酸液Aを処理液として適当量抜き出した後、これら原液室12および酸室15のそれぞれに原料液である原液Dおよび酸液Aをそれぞれ補充する。
さらに、生成系の濃縮室13および塩室16内の各濃縮液Cおよび塩液Sは、一部を次回の電気透析の原料として使用するために残し、残りを生成液として抜き出す。したがって、上述の工程を繰り返すことにより、高濃度の目的とするヨウ化水素酸の水溶液を得ることができる。
なお、上記各実施の形態では、室枠2内に陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を交互に配置した電気透析槽1について説明したが、電気透析法にてヨウ化水素酸が濃縮分離できれば、どのような構成の電気透析装置1であっても良い。
さらに、電気透析法にて原液Dからヨウ化水素酸を濃縮分離する方法以外に、蒸留法にて原液Dからヨウ化水素酸を濃縮分離しても、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。そして、蒸留法にて原液Dからヨウ化水素酸を濃縮分離する場合には、図示しない蒸留フラスコを備えた磁製ラシヒ充填塔などの蒸留装置を用いることによって、原液D中のヨウ化水素酸を効率良く濃縮分離できる。
図1に示す旭硝子株式会社製CH−O型の電気透析槽1(組込み膜数10対、有効膜面積0.022m/枚)を用いて、原液Dである廃液からヨウ化水素酸を濃縮分離する電気透析をした。
このとき、陽イオン交換膜Kおよび第1の陽イオン交換膜KとしてセレミオンCMV(旭硝子株式会社製)を用い、第1の陰イオン交換膜AとしてセレミオンAMV(旭硝子株式会社製)を用いた。
そして、調製した人工廃液1000g(組成:ヨウ化水素酸5質量%、酢酸45質量%、水50質量%)を原液Dとして原液室12に供給し、10質量%のヨウ化水素酸水溶液700gを濃縮液Cとして濃縮室13に供給した。さらに、10質量%の硫酸水溶液800gを極液Pとして各電極室11a,11bに供給した。
この状態で、10V定電圧で1.5時間電気透析処理した後、各室の液量を測定するとともに、これら各室の液組成をイオンクロマトグラフィにて測定した。この結果、各室の液量は、原液室12内の原液Dが835gで、濃縮室13内の濃縮液Cが861gで、電極室11a,11b内の極液Pが796gであった。さらに、各室の液組成は、原液室12内の原液Dがヨウ化水素酸<0.1質量%および酢酸47.3質量%で、濃縮室13内の濃縮液Cがヨウ化水素酸13.9質量%および酢酸6.2質量%であった。
この結果、ヨウ化水素酸の分離率が100%であり、原液室12から濃縮室13へ移動した液中のヨウ化水素酸の濃度は、30.3質量%であった。
図2に示す旭硝子株式会社製G4型の電気透析槽1(4室1組、組込み膜数5対、有効膜面積0.022m/枚)を用いて、原液Dである廃液からヨウ化水素酸を濃縮分離する電気透析をした。
このとき、陽イオン交換膜K、第1の陽イオン交換膜Kおよび第2の陽イオン交換膜KとしてアシプレックスK−501(旭化成株式会社製)を用い、第1の陰イオン交換膜Aおよび第2の陰イオン交換膜AとしてアシプレックスA−192(旭化成株式会社製)を用いた。
そして、調製した人工廃液2500g(組成:ヨウ化ナトリウム6質量%、酢酸30質量%、水64質量%)を原液Dとして各原液室12に供給し、10質量%のヨウ化水素酸水溶液700gを濃縮液Cとして各濃縮室13に供給した。また、5質量%の硫酸水溶液1000gを酸液Aとして各酸室15に供給し、5質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液700gを塩液Sとして各塩室16に供給した。さらに、5質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1000gを極液Pとして各電極室11a,11bに供給した。
この状態で、10V定電圧で3.5時間電気透析処理した後、各室の液量を測定するとともに、これら各室の液組成をイオンクロマトグラフィにて測定した。この結果、各室の液量は、原液室12内の原液Dが2130gで、濃縮室13内の濃縮液Cが1047gで、酸室15内の酸液Aが885gで、塩室16内の塩液Sが822gで、電極室11a,11b内の極液Pが985gであった。
さらに、各室のイオン濃度は、原液室12内の原液Dのイオン濃度がヨウ素イオン0.2質量%、ナトリウムイオン(Na)<0.1質量%および酢酸イオン(CH COO )33質量%で、濃縮室13内の濃縮液Cのイオン濃度がヨウ素イオン18.2質量%および酢酸イオン4.3質量%で、酸室15内の酸液Aのイオン濃度が硫酸イオン<0.1質量%で、塩室16内の塩液Sのイオン濃度が硫酸イオン9.5質量%、ナトリウムイオン3.5質量%であった。
この結果、ヨウ素イオンの分離率が96%であり、原液室12および酸室15から濃縮室13へ移動した液中のヨウ化水素酸の濃度は、34.9質量%であった。
(1) 気液平衡組成の測定
少なくともヨウ化水素酸/酢酸/水を含む3成分系の原液Dから蒸留法にてヨウ化水素酸を濃縮分離する前に、図示しないオスマー気液平衡蒸留装置を用いて、この原液の48mmHgの定圧での気液平衡組成を測定した。
Figure 0005283246
この結果、表1および図3に示すように、原液Dはヨウ化水素酸の低濃度域で比揮発度(α)が非常に大きく、蒸留法によるヨウ化水素酸の濃縮が非常に容易であることが判った。
ここで、比揮発度(α)は、{気相部の酢酸のモル分率(YCH3COOH)/気相部のヨウ化水素酸のモル分率(YHI)}/{液相部の酢酸のモル分率(XCH3COOH)/液相部のヨウ化水素酸のモル分率(XHI)}にて示される。
(2) 濃縮分離工程
内径が22mm、塔の高さが1mの図示しない磁製ラシヒ充填塔を付した1L蒸留フラスコを用いた蒸留法にて実廃液を原液Dとしてヨウ化水素酸を濃縮した。
このとき、100mmHgに減圧した下で、実廃液5000g(組成:アセトニトリル(CHCN)35質量%、酢酸35質量%、ヨウ化水素酸6.5質量%、水23.5質量%)を蒸留フラスコへ連続して供給し、充填塔の塔頂から低沸点物を連続して留出させて留出液とした。ここで、この充填塔の塔頂の温度は、蒸留初期が30℃で、蒸留終了時が50℃であった。
そして、この充填塔によるヨウ化水素酸の濃縮が終了した後、この充填塔から留出した留出液と、蒸留フラスコ内に残った液とのそれぞれの質量を測定するとともに、これら液の組成をイオンクロマトグラフィにて測定した。
この結果、留出液は、質量が3680gで、組成がアセトニトリル47質量%、酢酸35質量%であった。また、蒸留フラスコ内に残った液は、質量が1240gで、組成が酢酸35質量%、ヨウ化水素酸26質量%であった。したがって、実廃液の充填塔内への付着による損失は、80gであった。さらに、留出液中にヨウ化水素酸が全く認められなかった。
(3) 蒸留精製工程
内径が25mm、塔の高さが1.5mの図示しない磁製ラシヒ充填塔を付した1L蒸留フラスコを用いて、上記(2)で得られた濃縮液Cの全量を原液Dとして蒸留精製した。
このとき、蒸留フラスコヘ30質量%の次亜リン酸(HPO)5gを添加して回分法にて蒸留した。具体的には、100から50mmHgへと減圧度を徐々に下げ1以上2以下の還流比にて充填塔の塔頂の温度42℃以下の留出液を初留分として得てから、50mmHgの減圧度とし5以上10以下の還流比にて充填塔の塔頂の温度42℃以上61℃以下の留出液を中間留分として得た。次いで、50mmHgの減圧度とし0.1の還流比にて充填塔の塔頂の温度61℃以上62℃以下の留出液を主留分として得た。
この充填塔によるヨウ化水素酸の蒸留が終了した後、留出した各留分と、蒸留フラスコ内に残った液とのそれぞれの液量を測定するとともに、これら各留分および液それぞれの組成をイオンクロマトグラフィにて測定した。
この結果、初留分は、液量が672gで、組成がヨウ化水素酸2.1質量%、酢酸61質量%であった、また、中間留分は、液量が71gで、組成がヨウ化水素酸31質量%、酢酸39質量%であった。さらに、主留分は、液量が405gで、組成がヨウ化水素酸58質量%、酢酸<0.1質量%であった。したがって、濃縮液Cの蒸留フラスコ内に残ったり充填塔内に付着したりした損失が、92gであった。また、得られた主留分である蒸留精製後の濃縮液Cは、無色透明で、留分収率が72.5%であった。
本発明の第1の実施の形態のヨウ化水素酸の製造方法を示す説明図である。 本発明の第2の実施の形態のヨウ化水素酸の製造方法を示す説明図である。 本発明の実施例3のヨウ化水素酸の製造方法にて測定した濃縮液中のヨウ化水素酸の濃度と分離との関係を示すグラフである。
符号の説明
C ヨウ化水素酸濃縮液としての濃縮液
D 被処理液としての原液

Claims (5)

  1. 少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液から電気透析法によりヨウ化水素酸を濃縮分離する
    ことを特徴とするヨウ化水素酸の製造方法。
  2. 少なくとも水、酢酸およびヨウ化水素酸を含む被処理液から蒸留法によりヨウ化水素酸を濃縮分離する
    ことを特徴とするヨウ化水素酸の製造方法。
  3. 少なくとも水、酢酸および無機ヨウ素化合物を含む被処理液から電気透析法によりヨウ化水素酸を濃縮分離してヨウ化水素酸濃縮液とする濃縮分離工程と、
    この濃縮分離工程にて得られたヨウ化水素酸濃縮液を蒸留精製する精製工程と
    を具備したことを特徴とするヨウ化水素酸の製造方法。
  4. 少なくとも水、酢酸およびヨウ化水素酸を含む被処理液から蒸留法によりヨウ化水素酸を濃縮分離してヨウ化水素酸濃縮液とする濃縮分離工程と、
    この濃縮分離工程にて得られたヨウ化水素酸濃縮液を蒸留精製する精製工程と
    を具備したことを特徴とするヨウ化水素酸の製造方法。
  5. 無機ヨウ素化合物は、ヨウ化水素酸およびヨウ化水素酸のアルカリ塩の少なくともいずれかである
    ことを特徴とする請求項1または3記載のヨウ化水素酸の製造方法。
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