JP5282687B2 - 架橋性ptfe組成物、およびその成形体 - Google Patents

架橋性ptfe組成物、およびその成形体 Download PDF

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Description

本発明は、架橋性PTFE組成物、およびその成形体に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略する)樹脂は、耐薬品性、耐摩擦性、耐候性、電気絶縁性、および難燃性などに優れており、摺動材、シール材、摺動性シール材、難燃性添加剤、および低誘電率膜材料などとして広く利用されている。しかし、PTFE樹脂は摺動環境下および高温での圧縮環境下において磨耗およびクリープが大きいという問題がある。このため、産業界ではPTFE樹脂の摩耗特性およびクリープ特性などの一層の向上が望まれている。この問題を解決する手法としては、PTFE樹脂に添加剤を配合する手法、およびPTFE樹脂に電離性放射線を照射してPTFE樹脂を架橋化させる手法などが当業者に広く知られている。また、この問題を解決する手法として、さらに、「ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」と略する)に反応性官能基を導入した架橋性PTFE」が報告されている(例えば、特許文献1及び2参照)。この架橋性PTFEは、架橋反応完了後、従前のPTFEよりも優れた成形性、機械的物性および表面特性等を示すことが明らかとなっている。
国際公開第2007/52664号パンフレット 特表2006−511660号公報
しかし、さらなる機械的物性の向上が求められている。
本発明の課題は、優れた機械的物性を有するPTFE樹脂の成形体を提供することにある。
上記課題は、高分子量架橋性TFE重合体と、低分子量架橋性TFE重合体とを含有する架橋性PTFE組成物を成形することによって達成される。
本発明の架橋性PTFE組成物は、高分子量架橋性TFE重合体と、低分子量架橋性TFE重合体とを含有する。
本発明の架橋性PTFE組成物を成形して得られるPTFE樹脂成形体は、優れた機械的物性を有する。
前記高分子量架橋性TFE重合体の、下記測定条件で測定した結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度は、330.0℃を超え、かつ350.0℃以下である。
前記低分子量架橋性TFE重合体の、下記測定条件で測定した結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度は、300.0℃以上330.0℃以下である。
測定条件:
示差走査熱量計を用いて、3.0mgの試料を昇温速度10℃/分の条件で加熱し、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を測定する。
高分子量架橋性TFE重合体、および低分子量架橋性TFE重合体がそれぞれこのような理化学的性質を有することで、本発明の架橋性PTFE組成物を成形して得られるPTFE樹脂成形体は、優れた機械的物性を有する。
架橋性PTFE組成物は、好ましくは、混合粉末または液状組成物である。
本発明のPTFE樹脂成形体は、上記の架橋性PTFE組成物を成形して得られるPTFE樹脂成形体であり、優れた機械的物性を有する。
なお、本発明において、特に高純度かつ非汚染性が要求されない分野では、必要に応じてPTFE成形体に配合される通常の添加物(例、充填材、加工助剤、着色剤、安定剤、および導電剤など)を配合することができ、常用の架橋剤や架橋助剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
本発明の架橋性PTFE組成物を成形して得られるPTFE樹脂成形体、すなわち本発明のPTFE樹脂成形体は、優れた機械的物性を有する。
また、本発明に係る架橋性PTFE組成物を通常の添加物に配合して、難燃性、非粘着性、摺動性、撥水撥油性、電気特性、耐汚染性、耐蝕性、および/または耐候性などを向上させる改質材として使用することができる。
<架橋性PTFE>
本明細書中、「架橋性TFE重合体」とは、架橋性を有するTFE重合体である。「架橋性TFE重合体」は、架橋反応可能な部位、すなわち架橋性反応基を有する部位によって、架橋性を有する。
本明細書中、「TFE重合体」とは、テトラフロオロエチレン(TFE)を重合体構成単位の1つとして有する重合体を意味する。すなわち、本発明で用いられる「高分子量架橋性TFE重合体」および「低分子量架橋性TFE重合体」における「TFE重合体」は、TFEに加えて、TFE以外のフッ素含有単量体および/またはフッ素非含有単量体を構成単位として含有してもよい。かかる「フッ素含有単量体」および「フッ素非含有単量体」については、後述する。なお、本明細書中、当該「TFE重合体」を、PTFEと称する場合がある。
本発明の架橋性PTFE組成物に用いられる高分子量架橋性TFE重合体の、下記測定条件で測定した結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度は330.0℃を超え、かつ350.0℃以下であり、より好ましくは330.0℃を超え、かつ347.0℃以下である。
また、本発明の架橋性PTFE組成物に用いられる低分子量架橋性TFE重合体の、下記測定条件で測定した結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度は300.0℃以上330.0℃以下であり、より好ましくは310.0℃以上330.0℃以下であり、更により好ましくは320.0℃以上330.0℃以下である。
なお、本明細書中、当該最大ピーク温度は、以下の測定条件で測定される。
測定条件:
示差走査熱量計(RDC220;セイコー電子社製、またはその同等品)を用いて、3.0mgの架橋性TFE重合体を昇温速度10℃/分の条件で加熱し、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度(以下、「吸熱ピーク温度」という)を測定することにより算出した。
高分子量架橋性TFE重合体、および低分子量架橋性TFE重合体がそれぞれこのような理化学的性質を有することで、本発明の架橋性PTFE組成物を成形して得られるPTFE樹脂成形体は、優れた機械的物性を有する。
本発明で用いられる「高分子量架橋性TFE重合体」および「低分子量架橋性TFE重合体」としては、架橋反応可能な部位として、シアノ基(−CN基)、下記一般式(1)で表される架橋性反応基および下記一般式(2)で表される架橋性反応基から選択される1種以上の架橋性反応基を有するものが好ましく挙げられる。なお、本明細書中、架橋性TFE重合体を架橋性PTFEと称する場合がある。

(R1およびR2は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、−OR3,−N(R32,または−R3であり、R3はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基または水素原子である)

(R1は水素原子、ハロゲン原子、−OR3,−N(R32,−R3であり、R3はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基または水素原子である)
これらの架橋性反応基の中でも、反応性の点からは、シアノ基および一般式(1)で表される架橋性反応基がより好ましい。また、製造が容易な点からは、一般式(2)で表される架橋性反応基がより好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。
また、一般式(1)で表される架橋性反応基におけるRは、反応性の観点から、水素原子であることがより好ましい。
当該架橋性反応基は、架橋性PTFEの分子内または分子間で、1または複数の他の架橋性反応と反応して架橋構造を形成する。
架橋反応としては以下の2つのタイプが考えられる。
(1)π電子欠乏型複素環環化反応
このタイプの架橋反応では、アゾール、トリアゾール、アジン、ジアジン、またはトリアジン等が形成される。このような架橋反応としてはトリアジン環化反応が一例として挙げられる(化学反応式(A)参照)。なお、本明細書中、化学反応式中の記号△は加熱を意味する。

また、例えば、架橋性反応基としてシアノ基および下式のシアノ基誘導体


(式中の記号は前記と同意義を表す。)
の2種が共存する場合には、下記の化学反応式(B)で表されるイミダゾール環化反応を経て形成される架橋構造が一例として挙げられる。ここで、−OMeに代えて、−ORまたは−N(Rが用いられてもよい。なお、本明細書中、化学式中のMeは慣用の略記方法に従い、メチルを表す。

(式中の記号は前記と同意義を表す。)
(2)ラジカル的脱炭酸・脱CO反応
架橋性反応基がCOOHまたはCOOMeである場合、150℃以上に加熱すると、脱COが起こり、ラジカルが生じる。また、架橋性反応基がCHOまたはCOClの場合は、脱COが起こり、ラジカルが生じる。そして、このようなラジカルの2つがカップリングすることにより架橋構造が形成される(化学反応式(C)および(D)参照)。

上記2つのタイプの架橋反応を適宜利用することによりPTFE架橋体を得ることができる。
複素環環化反応を利用する場合、重合性の観点、架橋反応性の観点、および架橋性反応基の安定性の観点からシアノ基を用いたトリアジン環化反応を利用することが好ましく、脱炭酸・脱CO反応を利用する場合、重合性、架橋反応性、および架橋性反応基の安定性の観点からカルボキシル基を用いた脱炭酸/カップリングによる架橋反応が好ましい。
架橋反応可能な部位はPTFEへ高分子反応により導入されるものであってもよいし、テトラフルオロエチレン(以下「TFE」と略する)と、架橋反応可能な部位を与える単量体との共重合により導入されるものであってもよい。高分子反応によりPTFEに架橋性反応基を有する置換基を導入する手法としては、PTFEを、放射線、レーザー、電子線、プラズマ、またはコロナ放電などにより処理してかかる置換基を導入する乾式法、および電気化学的にまたはLi金属/ナフタレン錯体により還元する湿式法などが従来より知られている。なお、製造容易であることから湿式法を採用することが好ましい。
架橋性PTFEにおいて、架橋反応可能な部位を与える単量体の含有量は、必須の単量体であるTFEに対して、架橋性の観点からは、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.03モル%以上、更に好ましくは0.06モル%以上であり、重合し易さ(すなわち、架橋性PTFEの製造の容易さ)の観点からは、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。
架橋反応可能な部位を与える単量体としては、エチレン性不飽和結合をもち、かつ、架橋性反応基としてシアノ基(−CN基)、上記一般式(1)で表される架橋性反応基、および上記一般式(2)で表される架橋性反応基から選択される架橋性反応基を有するものであり、かつ、TFEと共重合性をもつものであれば任意の化合物を用いることができる。
このような単量体としては、鎖状および環状のいずれの化合物も用いることができる。
かかる環状化合物としては、上記架橋性反応基を有するシクロペンテンおよびその誘導体、ノルボルネンおよびその誘導体、多環ノルボルネンおよびその誘導体、ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ならびにこれらの化合物の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)またはフッ化アルキル基で置換した化合物を例として挙げることができる。
なお、重合性の観点から、上記単量体は鎖状化合物であるのが好ましい。
また、鎖状化合物の中でも特に、下記の一般式(3)で表される単量体が好ましい。
CY=CY−(O)−(R−Z (3)
(式中、Y、Y、およびYはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、−CH、または−CFであり、Rは2価の有機基であり、nは0または1であり、Zはシアノ基(−CN基)、上記一般式(1)で表される架橋性反応基、または上記一般式(2)で表される架橋性反応基である。ただし、nが0である場合、mは0であり、nが1である場合、mは0または1である。)
上記の中でも、重合性の観点から、Y、Y、およびYは、水素原子またはハロゲン原子が好ましく、Y、Y、およびYとしてのハロゲン原子は、特に好ましくは、フッ素原子である。
一般式(3)におけるCY=CY−で表される部分として具体的には、例えば、CH=CH−、CH=CF−、CFH=CF−、CFH=CH−、およびCF=CF−が好ましい。なかでも例えば、CH=CH−、CH=CF−、およびCF=CF−がより好ましい。
nが0である場合、mは0であり、一般式(3)におけるCY=CY−(O)−で表される部分として具体的には、例えば、CH=CH−、CH=CF−、CFH=CF−、CFH=CH−、およびCF=CF−が好ましい。なかでも例えば、CH=CH−、CH=CF−、およびCF=CF−がより好ましい。
また、nが0である場合、上記一般式(3)で表される単量体としては、例えば、CH=CHCN、CH=CHCOOR、CH=CH−C(=NH)−OR、CF=CFCN、CF=CFCOOR、およびCF=CF−C(=NH)−ORが挙げられる。
nが1の場合、mは0であっても1であってもよい。
mが0である場合、一般式(3)におけるCY=CY−(O)−で表される部分として具体的には、例えば、CH=CH−、CH=CF−、CFH=CF−、CFH=CH−、およびCF=CF−が好ましい。なかでも例えば、CH=CH−、CH=CF−、およびCF=CF−がより好ましい。
mが1である場合、一般式(3)におけるCY=CY−(O)−で表される部分として具体的には、例えば、CH=CHO−、CH=CFO−、CFH=CFO−、CFH=CHO−、CF=CFO−が好ましい。なかでも例えば、CH=CHO−、CH=CFO−、およびCF=CFO−がより好ましい。
8としては、2価の有機基から任意のものを選ぶことができるが、合成および重合の容易性ならびに架橋後の好ましい特性の観点から、ハロゲン化されていてもよい炭素数1〜100のアルキレン基およびハロゲン化されていてもよい炭素数1〜100のポリオキシアルキシレン基が好ましい。炭素数は、1〜50であることがより好ましく、1〜20であることが更に好ましい。このようなハロゲン化されていてもよいアルキレン基およびハロゲン化されていてもよいポリオキシアルキシレン基は、水素原子の一部または全部がハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)で置換されていてもよい。上記アルキレン基およびポリオキシアルキシレン基は、それぞれ直鎖型または分岐型であってよい。そのような直鎖型または分岐型のアルキレン基およびポリオキシアルキシレン基を構成する最小構造単位の例を下記に示す。
(i)直鎖型の最小構造単位:
−CH2−、−CHF−、−CF2−、−CHCl−、−CFCl−、−CCl2−(ii)分岐型の最小構造単位:

で表されるハロゲン化されていてもよい炭素数1〜100のアルキレン基は、これらの最小構造単位の1つで、または、これらの最小構造単位を適宜組み合わせて構成される。また、Rで表されるハロゲン化されていてもよい炭素数1〜100のポリオキシアルキレン基は、これらの最小構造単位の1つと酸素原子の1つとで、または、これらの最小構造単位と酸素原子とを組み合わせて構成することができる。ただし、酸素原子同士が結合することはない。なお、Rは、以上の例示のなかでも、塩基による脱HCl反応が起こらず、より安定なことから、Clを含有しない構成単位から構成されることが好ましい。
また、Rは、−R10−、−(OR10)−、または−(R10O)−(R10は炭素数1〜6のフッ素を含んでいてもよいアルキレン基)で表される構造を含有することがさらに好ましい。すなわち、Rは、好ましくは、これらの構造からなるか、これらの構造の組み合わせからなる。R10の好ましい具体例としては、つぎの直鎖型または分岐鎖型のものが例示できる。
直鎖型のものとしては、−CH−、−CHF−、−CF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CHCHCH−、−CFCHCH−、−CHCFCH−、−CHCHCF−、−CFCFCH−、−CFCHCF−、−CHCFCF−、−CFCFCF−、−CHCHCHCH−、−CHCFCHCF−、−CHCFCFCF−、−CHCHCFCF−、−CHCFCHCFCH−、−CHCFCFCFCH−、−CHCFCFCHCH−、−CHCHCFCFCH−、−CHCFCFCFCF−、−CHCFCHCFCHCH−、−CHCHCFCFCHCH−、−CHCFCFCFCHCH−などが挙げられ、分岐鎖型のものとしては、


などを挙げられる。
また、一般式(3)で表される単量体として、下記の一般式(4)〜(26)で表される化合物を例示し得る。
CH2=CH−(CF2n−Z2 (4)
(式中、nは2〜8の整数である)
C(Y42=CY4(CF2n−Z2 (5)
(式中、Y4は各出現において同一または異なって水素原子またはフッ素原子であり、nは1〜8の整数である)
CF2=CFCF2f 4−Z2 (6)
(式中、

であり、nは0〜5の整数である)
CF2=CFCF2(OCF(CF3)CF2m(OCH2CF2CF2nOCH2CF2−Z2 (7)
(式中、mは0〜5の整数であり、nは0〜5の整数である)
CF2=CFCF2(OCH2CF2CF2m(OCF(CF3)CF2nOCF(CF3)−Z2 (8)
(式中、mは0〜5の整数であり、nは0〜5の整数である)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2n−Z2 (9)
(式中、mは0〜5の整数であり、nは1〜8の整数である)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))m−Z2 (10)
(式中、mは1〜5の整数である)
CF2=CFOCF2(CF(CF3)OCF2nCF(−Z2)CF3 (11)
(式中、nは1〜4の整数である)
CF2=CFO(CF2nOCF(CF3)−Z2 (12)
(式中、nは2〜5の整数である)
CF2=CFO(CF2n−(C64)−Z2 (13)
(式中、nは1〜6の整数である)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF(CF3)−Z2 (14)
(式中、nは1〜2の整数である)
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−Z2 (15)
(式中、nは0〜5の整数である)、
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2n−Z2 (16)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数である)
CH2=CFCF2OCF(CF3)OCF(CF3)−Z2 (17)
CH2=CFCF2OCH2CF2−Z2 (18)
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)mCF2CF(CF3)−Z2 (19)
(式中、mは0以上の整数である)
CF2=CFOCF(CF3)CF2O(CF2n−Z2 (20)
(式中、nは1以上の整数である)
CF2=CFOCF2OCF2CF(CF3)OCF2−Z2 (21)
CF2=CF−(CF2C(CF3)F)n−Z2 (22)
(式中、nは、1〜5の整数である)、
CF2=CFO−(CFY5n−Z2 (23)
(式中、Y5はFまたは−CF3であり、nは1〜10の整数である)
CF2=CFO−(CF2CFY6O)m−(CF2n−Z2 (24)
(式中、Y6はFまたは−CF3であり、mは1〜10の整数であり、nは1〜3の整数である)
CH2=CFCF2O−(CF(CF3)CFO)n−CF(CF3)−Z2 (25)
(式中、nは0〜10の整数である)
CF2=CFCF2O−(CF(CF3)CF2O)n−CF(CF3)−Z2 (26)
(式中、nは1〜10の整数である)
(一般式(4)〜(26)中、Z2は、シアノ基(−CN基)、上記一般式(1)で表される架橋性反応基、または上記一般式(2)で表される架橋性反応基である。)
なお、上記Z2がCOOR1である場合、−COOR1基が架橋性反応基として作用するためには、−COOR1基が他の架橋性反応基または所望により用いられる架橋剤の反応性官能基と反応しやすい構造であることが好ましい。つまり、R1が脱離しやすいことが好ましい。そのような脱離したR1としては、トルエンスルホン酸、ニトロトルエンスルホン酸、およびトリフルオロメタンスルホン酸などのスルホニルエステル、リン酸エステル、ならびに有機リン酸エステルなどが挙げられる。しかし、スルホニルエステルは、脱離したスルホン酸の酸性度が高く、金属(例えば成形器の金型)を腐食するおそれがあるので、好ましくない。したがって、R1は、好ましくはアルキル基、またはエーテル結合(−O−)、2価の芳香環基、およびアルキレン鎖から選択される2価の基、またはそれらが連結して構成される2価の基を介してカルボニル炭素に連結するアルキル基であることが好ましい。この場合、R1の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。また、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されているものは脱離性が高いことから好ましい。R1として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロピル基、および1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基などが挙げられる。ただし、低温で脱COし、連鎖移動することなく効率良くカップリングできることから、Z2は−COOHであることが好ましい。
一般式(4)〜(26)で表される単量体では、シアノ基(−CN基)、上記一般式(1)で表される架橋性反応基、および上記一般式(2)で表される架橋性反応基が、架橋性PTFEの架橋部位となり、架橋反応が進行する。
一般式(3)で表される単量体の中でも、一般式(5)、または(22)〜(26)で表される単量体がより好ましい。
一般式(5)で表される単量体としては、具体的には、
CF2=CF−CF2−CN、
CF2=CF−CF2CF2−CN、
CF2=CF−CF2−C(=NH)−OR
CF2=CF−CF2−CF2−C(=NH)−OR
CF2=CF−CF2−COOH、
CF2=CF−CF2CF2−COOH、
CF2=CF−CF2−COOCH3、および
CF2=CF−CF2CF2−COOCH3
などが挙げられるが、
架橋反応性の点で、
CF2=CF−CF2−CN、
CF2=CF−CF2CF2−CN、
CF2=CF−CF2−C(=NH)−OR、および
CF2=CF−CF2−CF2−C(=NH)−ORが好ましく、
重合反応性が優れている点で、
CF2=CF−CF2−COOH、
CF2=CF−CF2CF2−COOH、
CF2=CF−CF2−COOCH3、および
CF2=CF−CF2CF2−COOCH3
が好ましい。
一般式(22)で表される単量体としては、具体的には、
CF2=CFCF2C(CF3)FCN、
CF2=CF(CF2C(CF3)F)2CN、
CF2=CFCF2C(CF)F−C(=NH)−OR
CF2=CF(CF2C(CF)F)−C(=NH)−OR
CF2=CFCF2C(CF3)FCOOH、
CF2=CF(CF2C(CF3)F)2COOH、
CF2=CFCF2C(CF3)FCOOCH3、および
CF2=CF(CF2C(CF3)F)2COOCH3などが挙げられるが、
重合反応性という点で、
CF2=CFCF2C(CF3)FCOOHが好ましい。
一般式(23)で表される単量体としては、具体的には、
CF2=CFOCF2CF2CF2CN、
CF2=CFOCF2CF2CN、
CF2=CFOCF2CN、
CF2=CFOCF2CF2CF2−C(=NH)−OR
CF2=CFOCF2CF2−C(=NH)−OR
CF2=CFOCF2−C(=NH)−OR
CF2=CFOCF2CF2CF2COOH、
CF2=CFOCF2CF2COOH、
CF2=CFOCF2COOH、
CF2=CFOCF2CF2CF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF2COOCH3、および
CF2=CFOCF2COOCH3
などが挙げられるが、
架橋反応性、および重合反応性という点で、
CF2=CFOCF2CF2CF2COOH、
CF2=CFOCF2CF2COOH、
CF2=CFOCF2CF2CF2COOCH3、および
CF2=CFOCF2CF2COOCH3が好ましい。
一般式(24)で表される単量体としては、具体的には、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2−C(=NH)−OR
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOH、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOCH3
などが挙げられるが、
反応性の点で、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、および
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2−C(=NH)−OR
が好ましく、
製造が容易な点で、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOH、および
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOCH3
が好ましい。
一般式(25)で表される単量体としては、具体的には、
CH2=CFCF2OCF(CF3)CN、
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CN、
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)2CF(CF3)CN、
CH2=CFCF2O(CF(CF3)−C(=NH)−OR、CH2=CFCF2OCF
(CF3)CF2OCF(CF3)−C(=NH)−OR
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)2CF(CF3)−C(=NH)−OR
CH2=CFCF2OCF(CF3)COOH、
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)2CF(CF3)COOH、
CH2=CFCF2OCF(CF3)COOCH3
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOCH3、および
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)2CF(CF3)COOCH3
などが挙げられるが、
重合反応性という点で、
CH2=CFCF2OCF(CF3)CN、
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CN、
CH2=CFCF2OCF(CF3)−C(=NH)−OR
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)−C(=NH)−OR
CH2=CFCF2OCF(CF3)COOH、
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、
CH2=CFCF2OCF(CF3)COOCH3、および
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOCH3
が好ましい。
一般式(26)で表される単量体としては、具体的には、
CF2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CN、
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)−C(=NH)−OR
CF2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、および
CF2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOCH3
などが挙げられるが、
反応性の点で、
CF2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CN、および
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)−C(=NH)−OR
が好ましく、
製造が容易な点で、
CF2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、および
CF2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOCH3
が好ましい。
また、一般的に、上記架橋性反応基は、−CF(CF)−CNおよび−CF(CF)−COORのように分岐アルキレン基に結合しているよりも、−CF−CNおよび−CF−COORのように直鎖アルキレン基に結合している方が、高い反応性を示す点で、好ましい。
なお、上述のように、本発明で用いられる架橋性PTFEでは、上述の架橋性反応基含有単量体(架橋部位を与える単量体)を共重合成分として用いるとともに、任意の単量体も共重合成分として用いてもよい。架橋部位を与える単量体以外の単量体は、特に限定されず、例えば、TFE以外のフッ素含有単量体およびフッ素非含有単量体などが挙げられる。このような共重合可能な単量体は架橋性反応基および所望により用いられる架橋剤と反応しない官能基を有していてもよい。架橋性反応基および所望により用いられる架橋剤と反応しない官能基としては、ヒドロキシル基、スルホン酸基、リン酸基、スルホン酸イミド基、スルホン酸アミド基、リン酸イミド基、リン酸アミド基、カルボン酸アミド基、およびカルボン酸イミド基などが挙げられる。架橋性反応基および所望により用いられる架橋剤と反応しない官能基を有する単量体を共重合成分に用いた場合は、接着性改善、分散性改善などの効果が期待される。また、このような官能基を含有しない単量体を共重合成分として導入した場合は、粒径の調整、融点の調整、および力学特性の調整などを行うことができる。また、上記「フッ素含有単量体」としては、例えば、フルオロオレフィン、環式のフッ素化された単量体、およびフッ素化アルキルビニルエーテル等が挙げられる。上記フルオロオレフィンとしては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(VDF)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン等が挙げられる。また、上記環式のフッ素化された単量体としては、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)等が挙げられる。また、上記フッ素化アルキルビニルエーテルとしては、例えば、一般式C(Y=CYOR12またはC(Y=CY−(OR13−OR12(Yは同一若しくは異なって水素原子またはフッ素原子であり、Yは水素原子またはフッ素原子であり、R12は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基または末端に架橋性反応基としてシアノ基(−CN基)、上記一般式(1)で表される架橋性反応基、および上記一般式(2)で表される架橋性反応基から選択される架橋性反応基をもつアルキル基であり、R13は同一若しくは異なって、水素原子のいくつかまたは全部がフッ素原子で置換されてもいてよい炭素数1〜8のアルキレン基であり、nは0〜10の整数である)で表されるものが挙げられる。なお、上記フッ素化アルキルビニルエーテルとしては、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましい。また、上記「フッ素非含有単量体」としては、上記TFEと共重合性を有するものであれば特に限定されず、例えば炭化水素系単量体等が挙げられる。上記炭化水素性単量体は、フッ素以外のハロゲン原子、酸素、窒素等の元素、各種置換基等を有するものであってもよい。上記炭化水素系単量体としては、例えば、アルケン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルエステル類、アルキルアリルエーテル類、アルキルアリルエステル類等が挙げられる。
なお、「フッ素含有単量体」としては、上述したものの中でも、通常PTFEの変性に用いられるフルオロオレフィンおよびパーフルオロビニルエーテルがより好ましく、HFP、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、VDF、PMVE、PEVE、PPVEが特に好ましい。変性量は、架橋性PTFEとしての基本特性を損なわない限りの量であれば任意の量でよいが、フルオロオレフィンの場合、必須の単量体となるTFEに対して、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、好ましくは7モル%以下、より好ましくは5モル%以下、特に好ましくは2モル%以下であり、パーフルオロビニルエーテルの場合、必須の単量体となるTFEに対して、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、好ましくは1モル%以下である。
<架橋性PTFE組成物>
本発明の架橋性PTFE組成物は、高分子量架橋性TFE重合体および低分子量架橋性TFE重合体を、好ましくは95:5〜10:90、より好ましくは90:10〜20:80、更に好ましくは85:15〜30:70の重量比で含有する。
また、本発明の架橋性PTFE組成物は、高分子量架橋性TFE重合体および低分子量架橋性TFE重合体以外に、添加剤を含有してもよい。このような添加剤の含有率は、通常、本発明の架橋性PTFE組成物全体に対して、通常20重量%未満、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。したがって、本発明の架橋性PTFE組成物における、高分子量架橋性TFE重合体および低分子量架橋性TFE重合体の含有率の合計は、通常80重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
このような添加剤としては、例えば、架橋剤等が挙げられる。
本発明の架橋性PTFE組成物の形態は、好ましくは、混合粉末または液状組成物(例、水性分散液)である。
<製造方法>
<架橋性PTFE組成物の製造方法>
本発明の架橋性PTFE組成物の製造方法を説明する。
本発明の架橋性PTFE組成物に用いられる架橋性PTFE(高分子量架橋性TFE重合体および低分子量架橋性TFE重合体のそれぞれ)は、乳化重合法、懸濁重合法、および溶液重合法などの通常の重合法により製造することができる。
重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)等の過硫酸塩、ならびにジコハク酸パーオキシド(DSP)、およびジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独でまたはこれらの混合物の形で使用することができる。また、上記重合開始剤と、亜硫酸ナトリウム等の還元剤とを共用し、レドックス系開始剤にしたものを用いてもよい。重合開始剤としては、好ましくはカルボキシル基またはカルボキシル基を生成し得る基(例えば、酸フルオライド、酸クロライド、−CF2OHなどが挙げられる。これらはいずれも水の存在下、カルボキシル基を生ずる)を主鎖末端に存在させ得るものが好ましい。具体例としては、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)などが挙げられる。
また、高分子量架橋性TFE重合体および低分子量架橋性TFE重合体のそれぞれを製造するための、分子量の調整は、例えば、通常使用される連鎖移動剤の使用によって実施できる。このような連鎖移動剤は、例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、水溶性有機化合物、またはこれらの混合物である。上記連鎖移動剤は、炭化水素から成りハロゲン化炭化水素を含まないもの、ハロゲン化炭化水素から成り炭化水素を含まないもの、および、炭化水素とフッ化炭化水素とから成るもののいずれであってもよく、また、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、および水溶性有機化合物は、それぞれ1種または2種以上を用いることができる。上記連鎖移動剤としては、反応系内で分散性および均一性が良好である点で、メタン、エタン、ブタン、HFC−134a、HFC−32、メタノール、およびエタノールより成る群から選択される少なくとも1つから成るものであることが好ましい。
また、さらには、連鎖移動剤として、ヨウ素原子または臭素原子をもつ化合物を利用することにより、分子量分布が狭い重合体が得られる。例えば、ヨウ素原子をもつ連鎖移動剤としては下記の一般式(27)〜(35)で表される化合物が例示され得る。
I(CF2CF2nI (27)
ICH2CF2CF2(OCF(CF3)CF2mOCF(CF3)−Z3 (28)
ICH2CF2CF2(OCH2CF2CF2mOCH2CF2−Z3 (29)
I(CF2n3 (30)
I(CH2CF2n3 (31)
ICF2CF2OCF2CF(CF3)OCF2CF2−Z3 (32)
ICH2CF2CF2OCH2CF2−Z3 (33)
ICF2CF2OCF2CF2−Z3 (34)
ICF2CF2O(CF2nOCF2CF2−Z3 (35)
(式(27)〜(35)中、Z3はシアノ基(−CN基)、上記一般式(1)で表される架橋性反応基、または上記一般式(2)で表される架橋性反応基であり、mは0〜5の整数であり、nは1以上の整数である)で表される化合物などを用いることができる。これらの中でも、所望により用いられる架橋剤と反応可能な架橋部位を有する点から、一般式(28)〜(35)で表される連鎖移動剤が好ましい。
なお、乳化重合の場合、使用される乳化剤としては、広範囲なものが使用可能であるが、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖、またはフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が好ましい。
重合時の温度、および重合時間などの重合条件は、重合法および単量体の種類などを考慮して適宜決定すればよい。
本発明の架橋性PTFE組成物は、例えば、上記のようにしてそれぞれ得られる高分子量架橋性TFE重合体を含有する重合反応混合物、および低分子量架橋性TFE重合体を含有する重合反応混合物を混合し、得られた混合物から、必要に応じて不要な成分を除去して、液状組成物(例、水性分散液)として得てもよく、更に所望により前記混合物から、重合生成物を単離して粉末化して混合粉末として得てもよい。また、上記のようにしてそれぞれ得られる高分子量架橋性PTFE重合反応混合体と低分子量架橋性PTFE重合反応混合体の重合生成物を個別に単離して粉末化した後に乾燥し、両者をドライブレンド(乾式混合法)してもよい。当該液状組成物において、分散性を高める目的で、界面活性剤(例、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル系界面活性剤等の非イオン性界面活性剤)を添加してもよい。
当該界面活性剤の量は、好ましくは、架橋性PTFE固形分100重量%に対して0.5重量%〜25重量%である。
なお、架橋性PTFE混合水性分散液全体に対する架橋性PTFE固形分重量は、好ましくは、10重量%〜75重量%である。
乳化重合で得られた重合反応混合物の場合、重合生成物を単離する方法としては、酸処理により凝析する方法や、凍結乾燥または超音波などにより凝析する方法などが採用できるが、工程の簡略化の点から機械力により凝析する方法が好ましい。機械力により凝析する方法では、通常水性分散液が、10〜20重量%の重合体濃度になるように希釈され、場合によってはpH調整後、攪拌機付きの容器中で激しく攪拌される。また、インラインミキサー等を使用して連続的に凝析を行ってもよい。さらに、凝析前や凝析中に着色のための顔料や機械的性質を改良するための充填材を添加すれば、顔料や充填材が均一に混合された架橋性PTFEのファインパウダーを得ることができる。
凝析された架橋性PTFEの乾燥は、湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、減圧や、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にPTFEファインパウダーに好ましくない影響を与える。これは、この種のPTFE粒子が小さなせん断力でも簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。乾燥温度は、通常10〜250℃、好ましくは100〜200℃である。
本発明で用いる架橋性PTFEは、重合生成物を酸処理することにより、重合生成物に存在しているカルボン酸の金属塩やアンモニウム塩などの基をカルボキシル基に変換することができる。酸処理法としては、例えば、塩酸、硫酸、および硝酸など酸により洗浄するか、このような酸で重合反応後の混合物の系をpH3以下にする方法が適当である。
また、ヨウ素や臭素を含有するPTFEを発煙硝酸により酸化してカルボキシル基を導入することもできる。
さらに、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基の導入方法としては、国際公開第00/05959号パンフレットに記載の方法も用いることができる。
<PTFE樹脂成形体の製造方法>
本発明のPTFE樹脂成形体は、例えば、上記のようにして得られた架橋性PTFE混合粉末からPTFE架橋体粉末を得て、さらにPTFE架橋体粉末を所望する形状に成形することによって、製造することができる。なお、本発明の架橋性PTFE組成物が液状組成物である場合は、通常、前記のようにして粉末化してから、PTFE樹脂成形体の製造に用いられる。
PTFE架橋体粉末は、架橋性PTFEの粉末を適宜適切であると思われる条件下で処理されて得られる。架橋性反応基としてシアノ基または一般式(1)で表される架橋性反応基のようなシアノ基誘導体を用いる場合は、200℃以上で熱処理してPTFE架橋体粉末を得ることができる。この場合、架橋反応処理としては、架橋性PTFE粉末を空気循環炉等にて270℃以上で長時間加熱することが好ましく、反応速度を速めるために270〜320℃で1〜50時間加熱することがより好ましい。なお、あらかじめPTFE架橋体粉末を得る工程を経ずとも、成形・焼成工程において架橋反応を進行させることもできる。また、架橋性反応基としてカルボキシル基または一般式(2)で表される架橋性反応基のようなカルボニル誘導体を用いる場合も200℃以上で熱処理することによりPTFE架橋体粉末を得ることができる。この場合、架橋反応処理としては、架橋性PTFE粉末を空気循環炉等にて250℃以上で長時間加熱することが好ましく、反応速度を速めるために250〜320℃で1〜30時間加熱することがより好ましい。あらかじめPTFE架橋体粉末を得る工程を経ずに成形・焼成工程において架橋反応を進行させることも可能である。
なお、加熱温度は一定でなく、段階的に変化させるようにしてもよい。
架橋性PTFEまたはPTFE架橋体粉末から成形体を得る方法としては、例えば、圧縮成形法や、ラム押出成形法、ペースト押出成形法などの公知の方法が用いられる。圧縮成形法により成形体を得る場合は、ホットコイニング法での成形も可能であるが、ホットコイニング法よりも生産性の高いフリーベーキング法での成形も可能である。上記架橋性PTFEあるいはPTFE架橋体粉末を金型に充填し、2〜100MPa、好ましくは10〜70MPaの圧力で圧縮して予備成形体を得た後に、得られた予備成形体を空気循環炉中において融点〜420℃、好ましくは融点〜380℃の温度で10分間〜10日間、好ましくは30分〜50時間焼成すればよい。この際、昇温速度、冷却速度は、任意であってもかまわないが、10〜100℃/hrが好ましく、20〜60℃/hrがより好ましい。また、例えば、300℃までは昇温速度を高くし、300℃以上で昇温速度を低くし、300℃までは冷却速度を低くし、300℃以下で冷却速度を高めるといった段階的な温度調整方法を採用することもできる。
<変形例>
(変形例A)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、本発明で用いられる「高分子量架橋性TFE重合体」および「低分子量架橋性TFE重合体」は、単独または架橋性PTFE混合粉末の状態において、架橋剤との反応により架橋されてもよい。なお、かかる場合、架橋部位を与える単量体の含有量は、必須の単量体となるTFEに対して、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.03モル%以上、更に好ましくは0.06モル%以上、好ましくは50モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。架橋部位を与える単量体の含有量が0.01モル%以下であれば十分な効果が得られず、単量体の含有量が50モル%以上であれば重合体を得るのが困難になるからである。
以下、架橋剤について詳述する。
(1)架橋剤
架橋剤は、1または複数の反応性官能基と反応して環状構造を形成可能なものである。この架橋剤は、架橋反応可能な官能基のなかでも、1または複数の反応性官能基と反応して複素環を形成することが好ましい。なお、この架橋剤としては、特にπ電子欠乏型複素環環化反応を引き起こすものが好ましい。そして、この場合、架橋反応中に、耐酸化性および耐薬品性などに優れたπ電子欠乏型複素環(アゾール、トリアゾール、アジン、ジアジン、またはトリアジンなど)が形成される。このような、π電子欠乏型複素環を形成する架橋反応としては、例えば、「新編へテロ環化合物 基礎編、応用編、山中ら、講談社サイエンテイフィック 2004」に記載の公知の反応が利用できる。最終的に形成される架橋構造としては、例えば、シアノ基を含有する架橋性PTFEとシアノ基を複数個含有する架橋剤とからトリアジン環化反応を経て形成される架橋構造、シアノ基を含有する架橋性PTFEとヒドラジン基を複数個含有する架橋剤とからトリアゾール環化反応を経て形成される架橋構造、酸ハライド基、カルボキシル基、あるいはアルコキシカルボニル基を含有する架橋性PTFEとグアニジンを複数個含有する架橋剤とからトリアゾール環化反応を経て形成される架橋構造、酸ハライド基、カルボキシル基、あるいはアルコキシカルボニル基を含有する架橋性PTFEとアミドラゾンを複数個含有する架橋剤とから成るトリアゾール環化による架橋構造などが挙げられる。この中でもとりわけ、1,2結合形成による閉環反応を利用した1,3アゾールの環合成反応を架橋反応として利用することが好ましい。また、複素環を架橋点として導入することにより、PTFE架橋体の他材との密着性が向上するという効果もある。
そのような架橋剤としては、下記の一般式(36)で示される架橋性反応基を少なくとも2個含むビスジアミノフェニル化合物、ビスアミノフェノール化合物、およびビスアミノチオフェノール化合物、ならびに一般式(37)で示されるビスアミドラゾン化合物およびビスアミドキシム化合物、一般式(38)で示されるビスアミドラゾン化合物、一般式(39)で示されるビスアミドキシム化合物より成る群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。

(式中、Ra1は、同じかまたは異なり、−NH2、−NHRa2、−OHまたは−SHであり、Ra2は、フッ素原子または1価の有機基である)

(式中、Ra3は、−SO−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基、又は単結合手であり、Ra4は、

である。)

(式中、Rf a1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基である)

(式中、n’は1〜10の整数である)
一般式(36)で示される架橋性反応基を少なくとも2個有する化合物は、架橋性反応基を2〜3個有することが好ましく、より好ましくは2個有するものである。一般式(36)で示される架橋性反応基が2個未満であると、架橋することができない。
一般式(36)で示される架橋性反応基における置換基Ra2は、水素原子以外の1価の有機基またはフッ素原子である。N−Ra2結合は、N−H結合よりも耐酸化性が高いため好ましい。
1価の有機基としては、限定されるものではないが、脂肪族炭化水素基、フェニル基またはベンジル基が挙げられる。具体的には、例えば、Ra2の少なくとも1つが−CH3、−C25、−C37などの炭素数1〜10、特に1〜6の低級アルキル基;−CF3、−C25、−CH2F、−CH2CF3、−CH225などの炭素数1〜10、特に1〜6のフッ素原子含有低級アルキル基;フェニル基;ベンジル基;−C65、−CH265などのフッ素原子で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基;−C65-n(CF3n、−CH265-n(CF3n(nは1〜5の整数)などの、−CF3で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基などが挙げられる。
これらのうち、耐熱性が特に優れており、架橋反応性が良好であり、さらに合成が比較的容易である点から、フェニル基、−CH3が好ましい。
また、前記架橋剤としては、下記の一般式(40)で示される化合物が、合成が容易な点から好ましい。

(式中、Ra1は上記Ra1と同じ、Ra5は、−SO2−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基、単結合手、または、

で示される基である)
炭素数1〜6のアルキレン基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などを挙げることができ、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基としては、

などが好ましい。なお、これらの架橋剤は、特公平2−59177号公報、特開平8−120146号公報などで、ビスジアミノフェニル化合物の例示として知られているものである。
これらの中でもより好ましい架橋剤としては、一般式(41)で示される化合物である。

(式中、Ra6は、同一であるか又は相違し、いずれも水素原子、炭素数1〜10のアルキル基;フッ素原子を含有する炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基;ベンジル基;フッ素原子および/または−CF3で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基である)
なお、架橋剤としては、上述したような、1,2結合形成による閉環反応を利用した1,3ベンゾアゾールの環合成反応を架橋反応として利用できるものが特に好ましい。ベンゾアゾールおよび芳香環が導入されることにより、PTFEの他材との密着性が向上するからである。
具体例としては、限定的ではないが、例えば、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性が優れており、架橋反応性が特に良好である点から、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンがさらに好ましい。
これらのビスアミドキシム系架橋剤、ビスアミドラゾン系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、またはビスジアミノフェニル系架橋剤などは、本発明に用いられるPTFEが有するシアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、酸ハライド基と反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、PTFE架橋体を与える。
上記説明した架橋剤は、従来の強度、結晶性、および表面特性などを維持しており、かつ、異方性も不均一性もなく、かつ、従来のPTFE樹脂よりも変形しにくいPTFE架橋体を与えるものである。また、本実施の形態では、上述の架橋剤を採用することにより、PTFE架橋体と他材との密着性が向上するという効果もある。
架橋剤の添加量は、PTFE100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、0.03〜10重量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.01重量部未満であると、実用上充分な機械的強度、耐熱性、耐薬品性が得られない傾向があり、20重量部を超えると、架橋に多大な時間がかかる上、PTFE架橋体が脆くなる傾向があるからである。また、架橋剤の添加量を調整することにより、PTFE成形体の物性を変化させることができる。例えば、架橋性PTFEに導入されている反応性官能基の全てと反応し得る量の架橋剤を添加してもよいし、架橋性PTFEに導入されている反応性官能基の全てと反応させることなく未架橋部位を残し他材との密着性改善など、官能基由来の効果を意図した量の架橋剤を添加するようにしてもよい。
なお、かかる場合、PTFE架橋体粉末は、架橋性PTFE組成物から得られる。以下、架橋性PTFE組成物の調製方法について詳述する。
(2)架橋性PTFE組成物の調製方法
架橋性PTFE組成物は、架橋性PTFEと架橋剤とを、密閉式混合機などを用いて混合する等の乾式の混合方法により調製することができる。また、この架橋性PTFE組成物は、架橋剤を水もしくは有機溶媒に溶解もしくは分散させた液に架橋性PTFEを浸漬させる若しくは浸漬した後に溶液を攪拌する、または水もしくは有機溶媒に分散した架橋性PTFEディスパージョン液と架橋剤を混合して攪拌する等の湿式の混合方法により調製することも可能である。なお、湿式の混合手法を採用する場合には、さらに架橋剤と架橋性PTFEの接触性を高めるため、超音波振動を利用することが好ましい。また、重合後、一次粒子を保持したデイスパージョン溶液を攪拌しつつ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、あるいはジメチルスルホキシド(DMSO)といった極性の高い有機溶媒に溶解させた架橋剤溶液を滴下することにより、架橋密度を向上させることができる。
(3)PTFE架橋体粉末の調製方法
PTFE架橋体粉末は、適宜適切であると思われる条件下で処理されて得られる。例えば、オキサゾール架橋を行なう場合は、架橋性PTFE組成物あるいはPTFE架橋体粉末を空気循環炉に入れ、120〜320℃で1〜300分間保持することによってPTFE架橋体を得ることができる。また、イミダゾール架橋行なう場合は、比較的低い架橋温度(例えば、120〜280℃、好ましくは120〜250℃)で良好な物性をもつPTFE架橋体を得ることができる。なお、加熱温度は一定でなく、段階的に変化させるようにしてもよい。例えば、架橋剤の融点付近の温度で保持して架橋剤を架橋性PTFEに十分含浸させた後に昇温し架橋反応を行わせる手法なども考えられる。また、生成したPTFE架橋体粉末を100℃以上で一定時間保持することにより、内在する未反応の架橋剤や架橋反応時の副生物などの不純物を除去することができる。かかる場合、200℃以上で1時間以上保持することが好ましい。
(4)成形体の調製方法
架橋性PTFE組成物あるいはPTFE架橋体粉末から成形体を得る方法は通常の方法でよく、例えば、圧縮成形法や、ラム押出成形法、ペースト押出成形法などの公知の方法が挙げられる。圧縮成形法により成形体を得る場合は、ホットコイニング法での成形も可能であるが、ホットコイニング法よりも生産性の高いフリーベーキング法での成形も可能である。上記架橋性PTFE組成物あるいはPTFE架橋体粉末を金型に充填し、2〜100MPa、好ましくは10〜70MPaの圧力で圧縮して予備成形体を得た後に、得られた予備成形体を空気循環炉中において融点〜420℃、好ましくは融点〜380℃の温度で10分間〜10日間、好ましくは30分〜5時間焼成すればよい。この際、昇温速度、冷却速度は、任意であってもかまわないが、10〜100℃/hrが好ましく、20〜60℃/hrがより好ましい。また、例えば、300℃までは昇温速度を高くし、300℃以上で昇温速度を低くし、300℃までは冷却速度を低くし、300℃以下で冷却速度を高めるといった段階的な温度調整方法を採用することもできる。
本発明に係る架橋性PTFE組成物を架橋成形することにより、本発明に係るPTFE成形体を得ることができる。本発明に係るPTFE成形体は、従来の強度、結晶性、および表面特性などを維持しており、かつ、異方性も不均一性もなく、かつ、従来のPTFE樹脂よりも変形しにくいものである。また、このPTFE成形体は、耐熱性や耐薬品性にも優れる。
(変形例B)
本発明に係る架橋性PTFEの成形体は、PTFE架橋体粉末が分散あるいはブレンドされる樹脂組成物から形成されてもよい。なお、PTFE架橋体粉末の代わりに、架橋性PTFEを他の材料に分散あるいはブレンドさせた後に、その分散物あるいはブレンド物を加熱してPTFEを架橋してもかまわない。
他の材料の具体例としては、限定的ではないが、ポリメチルペンテン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、スチレン・メチルメタアクリレート共重合体樹脂、アクリロニトリル・ブチレン・スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリレート・スチレン共重合体樹脂(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエンゴム・スチレン共重合体樹脂(AES樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート共重合体樹脂(ASA樹脂)、シリコーン・アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂(SAS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン樹脂、芳香族ポリエステルアミド樹脂、芳香族アゾメチン樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリエーテルニトリル樹脂などのエンジニアリングプラスチックや、PTFE、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンーパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン系共重合体(FEP)、などのフッ素樹脂が挙げられる。PTFE架橋体粉末を改質材として利用する場合、添加量としては相手材に対して1〜80wt%であることが好ましく、5〜50wt%であることがさらに好ましい。
なお、PTFE架橋体粉末あるいは架橋性PTFE組成物の分散対象あるいはブレンド対象となる樹脂としては、結晶融点またはガラス転移温度が150℃以上の熱可塑性樹脂が好ましく挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステルアミド樹脂、芳香族アゾメチン樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、およびポリエーテルニトリル樹脂などである。
これらの中でも好ましい樹脂は、(1)耐熱性が高いもの、つまりPTFE架橋体粉末とのブレンドの際、ブレンド物の熱安定性を低下させないことが必要であり また、熱可塑性樹脂自体の耐熱性が高いために、熱可塑性樹脂の耐衝撃性や耐薬品性を改良する目的で、一般的な改質剤、添加剤を用いると、ブレンド物の耐熱性が低下してしまうため、耐熱性の高い含フッ素樹脂の添加が望まれているような樹脂、(2)機械的強度および寸法安定性に優れているもので、フッ素樹脂のそれらの物性を改質できるもの、(3)成形性に優れたもので、含フッ素樹脂とのブレンド物に優れた加工性を与えうるもの等であり、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂などは本発明の好ましい対象として挙げられる。
なお、PTFE架橋体粉末の表面には官能基が露出していると考えられるため、その官能基が熱可塑性樹脂の主鎖や末端の一部分と反応すること、その官能基と熱可塑性樹脂の官能基の一部分が化学反応を起こしその反応生成物が未反応物を含むブレンド物の相溶性改質剤として作用すること、熱可塑性樹脂との間で界面親和性や界面接着性が現れること等が想定される。なお、PTFE架橋体粉末が架橋性PTFEである場合は、さらにこの傾向が強まることが想定される。
また、樹脂ブレンド物には、PTFE架橋体粉末および熱可塑性樹脂以外の樹脂成分が含まれていてもかまわない。
さらに、本発明に係る樹脂ブレンド物は、その効果を損なわない範囲において、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、グラファイトウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、マグネシウムウィスカー、ホウ酸マグネシウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、アルミナウィスカー、炭化珪素ウィスカー、窒化珪素ウィスカー、ウォラスナイト、ゾノライト、セピオライト、石膏繊維、スラグ繊維などの繊維状の強化剤、カーボン粉末、グラファイト粉末、炭酸カルシウム粉末、タルク、マイカ、クレイ、ガラスビーズ等の無機充填材、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂、さらに二硫化モリブデンのような固体潤滑剤やその他の着色剤、難燃剤など通常使用される無機または有機の充填材を含んでいてもよく、その配合量は組成物全体の通常1〜30重量%である。このとき、本発明に係る樹脂ブレンド物に含まれる未反応の官能基が存在することによってこれらの充填効果が一層向上する場合もあり得る。
<応用例>
このようにして得られた、PTFE樹脂成形体は、優れた機械的特性(例、引張り弾性率、引張り降伏点強度)を有し、例えば、摺動材、シール材、摺動性シール材、難燃性添加剤、低誘電率膜材料摺動性シール剤として、好適に使用することができ、なかでも、摺動材として特に好適に使用することができる。
また、本発明に係るPTFE樹脂成形体の特に好ましい別の応用例としては、摺動性シール材が挙げられるが、特に限定されず、例えば、シールリング、索動管、カテーテル、圧縮機、食品工業用のパッキン、低速攪拌機等のグランドシール用としてソリッドパッキン、編み組みパッキン等のパッキン等、航空機用としてバルブ、コンプレッサー、ケーブル等、自動車用としてパワーステアリング装置、オイルレスタイプのパワーステアリング装置、オートマチックトランスミッション、エンジンピストンリング、ショックアブソーバー、モーター軸受け、オイルレスタイプのモータ軸受け、前輪受けのボールジョイント、ロッドエンドベアリング、ウインドウスタビライザー、ワイパー軸受け、ドアヒンジ等、薬液やガスの流量調整用のバルブ用部材としてボールバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブ、チェッキバルブ、ゲートバルブ等、軸受け材用として繊維工業における粗紡フロントトップローラーの軸受け材、半導体クリーンルーム内の駆動部軸受け材、化学機器用軸受け材、水門ゲート軸受け材等、スライディングパッドとしてタンクや橋梁等の伸縮可動端、電車台車等重量物の滑り部分の支柱等の摺動性シール材がPTFE架橋体から形成されてもよい。
また、本発明に係る架橋性PTFEの成形体の応用例としては、半導体等製造物品が挙げられるが、特に限定されず、例えば、ウェハキャリア、一体成形角槽、オーバーフロー、溶接角槽、硝子基板キャリア、その他プロセス装置のシール材、配管材、配管材の部品、継ぎ手、継ぎ手の部品、パッキン、バルブ、コック、コネクタ、ナット、ウェハボックス、ビーカー、フィルターハウジング、流量計、ポンプなどに適用されてもよい。なお、配管材等はチューブ状、ホース状のものが好ましい。
更に、本発明に係る架橋性PTFEの成形体の応用例としては、高周波信号伝送用製品が、挙げられるが、特に限定されず、例えば、高周波回路の絶縁板、接続部品の絶縁物、プリント配線基板等の成形板、高周波用真空管のベース、アンテナカバー等の成形品、同軸ケーブル、LANケーブル、フラットケーブル等の被覆電線などに適用されてもよい。
更に、本発明に係る架橋性PTFE混合水性分散液の応用例としては、プリント基板作成材料や塗料組成物が挙げられる。また、本発明に係る架橋性PTFE水性分散液からフィルムや、繊維、ブロック等の成形体が形成されてもよい。また、本発明に係る架橋性PTFE水性分散液は、活性剤等が混合されてペースト状とされ、電池用バインダー(結着剤)として利用されてもよい。
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
(1)合成例1:低分子量架橋性TFE重合体の合成
容量6Lの撹拌機付きステンレススチール製反応器に、3560gの脱イオン水、94gのパラフィンワックス及び分散剤として5.4gのパーフルオロオクタン酸アンモニウムを入れた。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFE単量体でパージして反応器内の酸素を除いた。その後、0.17gのエタンガスと7.3gのパーフルオロ[3−(1−メチル−2−ビニルオキシ−エトキシ)プロピオニトニル](以下、CNVEと略する)とを反応器に加え、内容物を280rpmで攪拌した。反応器中にTFE単量体を0.73MPaの圧力となるまで加えた。20gの脱イオン水に溶解した、重合開始剤としての0.36gの過硫酸アンモニウム(APS)を反応器に注入し、反応器内圧を0.83MPaにした。重合開始剤注入後の反応器内圧の低下により、重合の開始が観測された。TFE単量体を反応器に加えて圧力を保ち、約1.1KgのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた。その後に、反応器を排気し、内容物を反応器から取り出して冷却した。内容物の上澄みのパラフィンワックスを取り除き、低分子量架橋性PTFE水性分散液を得た。
得られた低分子量架橋性PTFE水性分散液の固形分濃度は22.8重量%であり、低分子量架橋性PTFE粒子の平均一次粒子径は0.18μmであった。なお、この平均一次粒子径は、固形分0.15重量%に調製されたPTFE水性分散液が注入された所定のセルに550nmの光を入射したときの透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して算出した数平均一次粒子径との相関関係を求めた後に、得られた試料について測定した上記の透過率を上記の相関関係に当てはめることにより求めた(検量線法)。
分析に供するため、得られた低分子量架橋性PTFE水性分散液の一部を脱イオン水で固形分濃度が約15重量%となるように希釈し、高速撹拌条件下で凝固させた。凝固した湿潤粉末を70℃で70時間真空乾燥した。このときのPTFE粉末のCNVE変性量は0.08mol%であった。なお、変性量は、プローブ直径:4.0mm、測定時回転数:13〜15KHz、測定雰囲気:窒素、測定温度:150℃の測定条件を採用した19F−MASNMR(BRUKER社製)測定法により、TFE由来のピークと変性剤(CNVE)由来のピーク(−77〜−88ppmのピーク)とを検出し、それらのピークの面積比から求めた。
また、得られた低分子量架橋性PTFE粉末を、PFAシートを敷いたトレーに約20mmの高さに充填したのち、電気炉に入れ、120℃にてフッ素ガス/窒素ガス(20/80容積比)の混合ガスを1リットル/分の流量で5時間通し、フッ素化低分子量PTFE粉末を得た。得られたフッ素化低分子量PTFE粉末のMFRは2.2g/10分であった。なお、MFRはASTM D−3307に準じて測定を行った(372℃、荷重5Kg)。また、得られた低分子量架橋性PTFE粉末の示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度は329.7℃であった。
(2)合成例2:高分子量架橋性TFE重合体の合成
エタンガスを添加せず、7.3gのCNVEを14.7gのCNVEに代えた以外は合成例1と同様に重合を行い、高分子量架橋性PTFE水性分散液を得た。また、合成例1と同様に、得られた高分子量架橋性PTFE水性分散液の一部を分析に供した。
得られた高分子量架橋性PTFE水性分散液の固形分濃度は26.1重量%であり、平均一次粒子径は0.23μmであった。また、高分子量架橋性PTFE粉末のCNVE変性量は0.14mol%であった。また、得られた高分子量架橋性PTFE粉末を合成例1と同様にしてフッ素化処理したフッ素化高分子量PTFE粉末のMFRは0.0g/10分であった。また、得られた高分子量架橋性PTFE粉末の示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度は341.1℃であった。
(3)合成例3:低分子量架橋性TFE重合体の合成
合成例1における7.3gのCNVEを15.2gのパーフルオロ[3−(1−メチル−2−ビニルオキシ−エトキシ)プロピオニックアシッド](以下、CBVEと略する)とした以外は合成例1と同様に重合を行った。
得られた低分子量架橋性PTFE水性分散液の固形分濃度は23.5%であり、平均一時粒子径は0.08μmであった。また、低分子量架橋性PTFE粉末のCBVE変性量は0.26mol%であった。また、得られた低分子量架橋性PTFE粉末を合成例1と同様にして測定した吸熱ピーク温度は327.7℃であった。
(4)合成例4:高分子量架橋性TFE重合体の合成
容量6Lの撹拌機付きステンレススチール製反応器に、3380gの脱イオン水を入れた。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFE単量体でパージして反応器内の酸素を除いた。その後、30.4gのCBVEとを反応器に加え、内容物を700rpmで攪拌した。反応器中にTFE単量体を0.73MPaの圧力となるまで加えた。20gの脱イオン水に溶解した、重合開始剤としての0.07gのAPSを反応器に注入し、反応器内圧を0.83MPaにした。重合開始剤注入後の反応器内圧の低下により、重合の開始が観測された。TFE単量体を反応器に加えて圧力を保ち、約0.8KgのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた。そして、反応器を排気し室温まで冷却し、内容物を脱イオン水で洗浄した上で濾別し、高分子量架橋性PTFE粉末を得た。
得られた高分子量架橋性PTFE粉末は粗く粉砕した後に145℃で18時間乾燥した。その後にフリッチュ・ジャパン(株)社製ロータースピードミルP−14型を用いて平均粒径が10〜150μmになるまで粉砕して、高分子量架橋性PTFE粉末を得た。このときの高分子量架橋性PTFE粉末のCBVE変性量は0.98mol%であった。また、得られた高分子量架橋性PTFE粉末を合成例1と同様にして測定した吸熱ピーク温度は344.0℃であった。
(5)合成例5:低分子量架橋性TFE重合体の合成
容量6Lの撹拌機付きステンレススチール製反応器に、3560gの脱イオン水、94gのパラフィンワックス及び分散剤として5.4gのパーフルオロオクタン酸アンモニウムを入れた。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFE単量体でパージして反応器内の酸素を除いた。その後、0.17gのエタンガスと16.6gのパーフルオロブテン酸(PFBA)とを反応器に加え、内容物を280rpmで攪拌した。反応器中にTFE単量体を0.73MPaの圧力となるまで加えた。20gの脱イオン水に溶解した、重合開始剤としての0.36gの過硫酸アンモニウム(APS)を反応器に注入し、反応器内圧を0.83MPaにした。重合開始剤注入後の反応器内圧の低下により、重合の開始が観測された。TFE単量体を反応器に加えて圧力を保ち、約1.1KgのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた。その後に、反応器を排気し、内容物を反応器から取り出して冷却した。内容物の上澄みのパラフィンワックスを取り除き、低分子量架橋性PTFE水性分散液を得た。
得られた低分子量架橋性PTFE水性分散液の固形分濃度は23.7重量%であり、低分子量架橋性PTFE粒子の平均一次粒子径は0.22μmであった。なお、この平均一次粒子径は、固形分0.15重量%に調製された架橋性PTFE水性分散液が注入された所定のセルに550nmの光を入射したときの透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して算出した数平均一次粒子径との相関関係を求めた後に、得られた試料について測定した上記の透過率を上記の相関関係に当てはめることにより求めた(検量線法)。
分析にするため、得られた低分子量架橋性PTFE水性分散液の一部を脱イオン水で固形分濃度が約15重量%となるように希釈し、高速撹拌条件下で凝固させた。凝固した架橋性PTFE粉末を145℃で18時間乾燥した。このときの架橋性PTFE粉末のPFBA変性量は0.28mol%であった。なお、変性量は、プローブ直径:4.0mm、測定時回転数:13〜15KHz、測定雰囲気:窒素、測定温度:150℃の測定条件を採用した19F−MASNMR(BRUKER社製)測定法により、TFE由来のピークと変性剤由(PFBA)来のピーク(−179〜−190ppmのピーク)とを検出し、それらのピークの面積比から求めた。また、得られた高分子量架橋性PTFE粉末を合成例1と同様にして測定した吸熱カーブの最大ピーク温度は326.9℃であった。
(6)合成例6:高分子量架橋性TFE重合体の合成
合成例5におけるPFBAの量を6.6gとし、エタンの量を3.0mlとした以外は合成例5と同様に重合を行った。
得られた高分子量架橋性PTFE水性分散液の固形分濃度は23.7%であり、平均一次粒子径は0.23μmであった。また、高分子量架橋性PTFE粉末のPFBA変性量は0.12mol%であった。また、得られた高分子量架橋性PTFE粉末を合成例5と同様にして測定した吸熱ピーク温度は330.6℃であった。
(7)合成例7:高分子量架橋性TFE重合体の合成
容量6Lの撹拌機付きステンレススチール製反応器に、3380gの脱イオン水を入れた。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFE単量体でパージして反応器内の酸素を除いた。その後、15.2gのCBVEを反応器に加え、内容物を700rpmで攪拌した。反応器中にTFE単量体を0.73MPaの圧力となるまで加えた。20gの脱イオン水に溶解した、重合開始剤としての0.07gのAPSを反応器に注入し、反応器内圧を0.83MPaにした。重合開始剤注入後の反応器内圧の低下により、重合の開始が観測された。TFE単量体を反応器に加えて圧力を保ち、約0.8KgのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた。そして、反応器を排気し室温まで冷却し、内容物を脱イオン水で洗浄した上で濾別し、高分子量架橋性PTFE粉末を得た。
得られた高分子量架橋性PTFE粉末は粗く粉砕した後に145℃で18時間乾燥した。その後にフリッチュ・ジャパン(株)社製ロータースピードミルP−14型を用いて平均粒径が10〜150μmになるまで粉砕して、高分子量架橋性PTFE粉末を得た。このときの高分子量架橋性PTFE粉末のCBVE変性量は0.35mol%であった。また、得られた高分子量架橋性PTFE粉末を合成例1と同様にして測定した吸熱カーブの最大ピーク温度は345.4℃であった。
(8−1)架橋性PTFE混合粉末の調製
得られるPTFE成形体の樹脂成分の組成比が、表1(実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例1、および比較例2)に示す組成比となるように、合成例2で得られた高分子量架橋性PTFE水性分散液と合成例1で得られた低分子量架橋性PTFE水性分散液を適当な比率で混合して共凝析させたのち、上澄み液を濾去して得られた湿潤粉末を70℃で70時間真空乾燥を行うことにより、架橋性PTFE混合粉末を得た。
(8−2)架橋性PTFE混合粉末の調製
得られるPTFE成形体の樹脂成分の組成比が、表1の実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例1、および比較例2の組成比とそれぞれ同じ組成比になるように、合成例2で得られた高分子量架橋性PTFE粉末と合成例1で得られた低分子量架橋性PTFE粉末とを、カッターミキサー(愛工舎製作所社製 K−55型)を用いて3000回転/分で1分間十分に混合し、架橋性PTFE混合粉末を得た。
(8−3)架橋性PTFE混合水性分散液の調製
得られるPTFE成形体の樹脂成分の組成比が、表1の実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例1、および比較例2の組成比とそれぞれ同じ組成比になるように、合成例2で得られた高分子量架橋性PTFE水性分散液(高分子量架橋性PTFE固形分濃度26.1重量%)と合成例1で得られた低分子量架橋性PTFE水性分散液(低分子量架橋性PTFE固形分濃度22.8重量%)を適当な比率で混合したのち、非イオン性界面活性剤(ポリオキシアルキレントリデシルエーテル系界面活性剤)(第一工業製薬株式会社製 製品名:ノイゲンTDS−80C)を架橋性PTFE固形分重量に対して18重量%添加し、得られた水性分散液を数分間緩やかに攪拌した。
そして、この水性分散液を70℃で温浴加温し、20時間静置した。そして、その後生じた透明な上澄み層を除去して固形分濃度が65重量%の架橋性PTFE濃縮分散液を得た。なお、TDS−80Cの含有量は架橋性PTFE固形分に対して3.9%であった。
また、この架橋性PTFE濃縮分散液にTDS−80Cをさらに添加し、TDS−80Cが架橋性PTFE固形分重量に対して6.0重量%になるように調整した。
(9)架橋性PTFE組成物、PTFE架橋体粉末の調製
合成例5で得られた100gの低分子量架橋性PTFE粉末と合成例6で得られた100gの高分子量架橋性PTFE粉末および0.54gの2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、BDHFと略する)とを400gのTHF溶媒中で混合し、室温下でよく攪拌した。THF溶媒を30℃で減圧下7時間静置することにより取り除き、架橋性PTFE組成物を調製した。
得られた架橋性PTFE組成物を空気循環炉に入れ、220℃で2時間加熱処理した後ゆっくり室温まで冷却してPTFE架橋体粉末を得た。
(10)成形、架橋、焼成、評価(引張り試験)
前記(8−1)で得られた架橋性PTFE混合粉末12gを直径29.0mmの円筒形状の金型に充填し、成形圧力が14.0MPaになるまで除々に圧力を加え、さらに2分間その圧力を保持し予備成形体を作製した。得られた予備成形体を金型から取り出して電気炉に入れ、50℃/hrの昇温速度で室温から370℃まで昇温した。そして、その予備成形体を370℃で表1に示す時間(焼成保持時間)保持した後、50℃/hrの降温速度で室温まで冷却し成形体を得た。得られた成形体を厚み0.5mmのフィルム状に切削加工し、そのフィルムからASTM D4895−94に記載のミクロダンベルを用いて成形圧力方向と直角の方向に打ち抜き、試験片とした。
引張り試験は(株)島津製作所社製オートグラフ AGS−J 5kNを用いて引張速度50mm/分で行った。結果(弾性率、降伏点強度)を表1に記載する。
(11)PTFE成形体の調製
前記(9)で得られた12gのPTFE架橋体粉末12gを直径29.0mmの円筒形の金型に室温で充填した。次に徐々に加圧し14.0MPaで2分間保持した後、金型から取り出して予備成形体を得た。この予備成形体を、290℃の空気循環炉に入れ、120℃/時間の昇温速度で380℃まで加熱して30分間焼結した後、60℃/時間の冷却速度で294℃まで冷却し、294℃で24分間保持した後、炉内から取り出して室温までゆっくりと冷却し、PTFE成形体を得た。
以下に、樹脂ブレンド組成物についての製造例(実施例5〜12)を示す。
実施例5
55.0gのポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製 パンライトL−1125WP)を280℃に設定した内容積60cmのブラベンダーミキサー(東洋精機株式会社製 ラボプラストミル)に投入し、回転数50rpmで5分間溶融させたのち実施例2で得られた6.0gの架橋性PTFE混合粉末を加え、回転数50rpmで10分間混錬して樹脂ブレンド組成物を得た。
実施例6
実施例5における55.0gのポリカーボネート樹脂を57.0gのナイロン66(旭化成株式会社製 レオナ1300S)とした以外は実施例5と同様に混錬して樹脂ブレンド組成物を得た。
実施例7
実施例5における55.0gのポリカーボネート樹脂を72.0gの液晶ポリエステル(ポリプラスチックス株式会社製 べクトラA130)に代え、さらに架橋性PTFE混合粉末6.0gを7.9gとし、280℃から320℃に設定温度を代えた以外は実施例5と同様に混錬して樹脂ブレンド組成物を得た。
実施例8
実施例5における55.0gのポリカーボネート樹脂を77.0gのフッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製 ネオフロンEFEP RP―5000)に代え、さらに架橋性PTFE混合粉末6.0gを8.5gとした以外は実施例5と同様に混錬して樹脂ブレンド組成物を得た。
実施例9
実施例5における55.0gのポリカーボネート樹脂を93.0gのテトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(ダイキン工業株式会社製 ネオフロンFEP NP−30)に代え、さらに架橋性PTFE混合粉末6.0gを10.3gとし、280℃から300℃に設定温度を代えた以外は実施例5と同様に混錬して樹脂ブレンド組成物を得た。
実施例10
実施例5における55.0gのポリカーボネート樹脂を93.0gのテトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(ダイキン工業株式会社製 ネオフロンPFA AP−231)に代え、さらに架橋性PTFE混合粉末6.0gを10.3gとし、280℃から320℃に設定温度を代えたこと以外は実施例5と同様に混錬して樹脂ブレンド組成物を得た。
実施例11
実施例5における55.0gのポリカーボネート樹脂を92.0gのポリクロロトリフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製 ネオフロンPCTFE M−300)に代え、さらに架橋性PTFE混合粉末6.0gを10.3gとし、280℃から320℃に設定温度を代えた以外は実施例5と同様に混錬して樹脂ブレンド組成物を得た。
実施例12
実施例5における55.0gのポリカーボネート樹脂を82.0gのテトラフルオロエチレンーエチレン共重合体(ダイキン工業株式会社製 ネオフロンETFE EP−610)に代え、さらに架橋性PTFE混合粉末6.0gを9.1gとした以外は実施例5と同様に混錬して樹脂ブレンド組成物を得た。
本発明の架橋性PTFE組成物を成形して得られるPTFE樹脂成形体、すなわち本発明のPTFE樹脂成形体は、優れた機械的物性を有し、摺動材等として好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 高分子量架橋性TFE重合体と、低分子量架橋性TFE重合体とを含有する架橋性PTFE組成物であって、
    前記高分子量架橋性TFE重合体の、下記測定条件で測定した結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が、330.0℃を超え、かつ350.0℃以下であり、かつ、
    前記低分子量架橋性TFE重合体の、下記測定条件で測定した結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が、300.0℃以上330.0℃以下である架橋性PTFE組成物。
    測定条件:
    示差走査熱量計を用いて、3.0mgの試料を昇温速度10℃/分の条件で加熱し、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を測定する。
  2. 混合粉末または液状組成物である請求項に記載の架橋性PTFE組成物。
  3. 請求項1または2に記載の架橋性PTFE組成物を成形して得られるPTFE樹脂成形体。
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