以下に本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
図1は、フルライン型のシングルパス方式の液体吐出装置1の構成を示す模式図である。
ロール状に巻かれた長尺状の基材10は、図示しない駆動手段により巻き出しロール10Aから矢印X方向に繰り出され搬送される。
長尺状の基材10はバックロール20に巻回され支持されながら搬送される。液体吐出ヘッドユニット30より塗布液である液体が基材10に向け吐出され、液体が基材10に塗布(以下、印画とも言う。)される。液体吐出ヘッドユニット30は、基材幅方向に塗布幅に対応した複数のせん断モ−ド方式の液体吐出ヘッド2を有する。また、各液体吐出ヘッド2毎に設けられた駆動信号生成手段100(図5参照)を備える。
そして、詳細は後述するが、駆動信号生成手段100は、液体吐出ヘッド2の複数の圧力室をN個(Nは3以上の整数)の組に分割し、吐出に使用する圧力室を(N−2)個おきに選択し、各組の各圧力室に吐出パルスを含む駆動信号を時分割して供給する。
なお、本実施形態では、連続して配置される複数の圧力室のうち、(N−1)個おきの圧力室をまとめて1つの組とし、N個の組に分割している。
図2は、液体吐出ヘッドユニット30の液体吐出ヘッド2の配置例である。また、全ての液体吐出ヘッド2が、吐出する液体を一時的に貯留する中間タンク40に対して同じ高さに配置されている例である。前述のように、1つの液体吐出ヘッドで吐出できる塗布幅(吐出幅)は液体吐出ヘッドの外形寸法よりも狭いことから、隙間なく塗布するために複数の液体吐出ヘッドを基材搬送方向に対して千鳥配置している。図2に示す例では、基材幅方向に塗布幅に対応した複数の液体吐出ヘッドを2列の千鳥配置としている。図3に、液体吐出ヘッド2の外形、吐出幅及び千鳥配置の関係を示す。液体吐出ヘッド2の数及び千鳥配置の列数は、液体吐出ヘッド2の吐出幅、塗布幅等により適宜設定されるものであり、図2および図3の例に限定されるものではない。
塗布液としての液体は、液体吐出ヘッド2の液体の背圧を調整する中間タンク40から複数の送液配管43を介して液体吐出ヘッド2毎に供給される。なお、本説明において、図中の送液配管43は、複数の配管である。
図1において、中間タンク40への液体供給は、液体を貯留する貯留タンク50から供給管51の途中に配設された送液ポンプPで行われる。
画像データ、設定されている圧力室選択パターン等に基づいて制御部(図示せず)により前記駆動手段や駆動信号生成手段、供給ポンプ等の各種機器が制御されて基材への塗布が行われ、塗膜が形成された基材は、乾燥部101で塗膜の乾燥が行われ、巻き取りロール10Bに巻き取られる。
本実施形態においては、基材をX方向に搬送する搬送手段である駆動手段が、液体吐出ヘッドと基材を相対移動させる相対移動手段に相当し、シングルパス方式の液体吐出装置1は、基材の幅の全域をカバーするフルライン型の液体吐出ヘッドユニットを設け、基材10の搬送方向について基材10を液体吐出ヘッドユニットに対して相対移動させる動作を1回行うという、シングルパス方式により、基材10の全面に液体を吐出することができる。
なお、図2中、7は液体受け器であり、液体吐出ヘッドユニット30が画像印画領域外、即ち、非印画時のホームポジション等の待機位置に設けられている。
液体吐出ヘッドユニット30は、基材10に印画する際に、図示位置に停止しているが、例えば、液体受け器7にフラッシングを行う場合は、移動手段(図示せず)により基材搬送方向Xに略垂直な方向Yに移動し、液体受け器7に対向する位置に移動する。
液体吐出ヘッド2が液体受け器7に対向する位置にある時、ノズル開口で増粘した液体をリフレッシュのためにこの液体受け器7に向けて液体を少量はき捨てるフラッシングを行うようにする。液体吐出ヘッド2がこの待機位置において長期間作動停止している時は、図示しないが、液体吐出ヘッド2のノズル面にキャップを被せることにより保護するようになっている。
本実施形態においては、液体の非吐出時、即ち、印画やフラッシングによる液体の吐出を行わないときにノズル内のメニスカスをノズルから液体を吐出させない程度に微振動させる。
ここで画像印画領域内とは、画像データが液体吐出ヘッドに供給され、画像データに基づいて液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して印画が行われる領域であり、例えば基材としてA4の大きさの基材の全面に印画する場合等は、A4の大きさの基材全面が画像印画領域となる。
また、画像印画領域外とは、画像印画領域以外の領域であり、基本的には画像データが液体吐出ヘッドには供給されず、すべてのノズルから画像データに基づく液体の吐出は行われない。また、非吐出画素とは画像印画領域内において、液体の吐出を行わない画素を指す。
一般的に、インクジェット用の液体は、色材やポリマー等を含むため吐出をごく短時間、例えば秒のオーダー停止しただけで、ノズル開口から極微量の水分や溶剤が蒸発し被膜を形成するため粘度が急上昇する。従って、ごく短時間の吐出中断時にも乾燥によるノズル詰まりが起こり易くなる。
そこで、本実施形態では、液体の非吐出時に、ノズル内のメニスカスをノズルから液体を吐出させない程度に微振動させることにより、ノズル内の液体を効率良く攪拌させ、低温・低湿環境下でもデキャップ特性の改善効果が高く、安定吐出を可能としている。
ここで、デキャップ特性とは、ノズル面開放状態の場合にメニスカス乾燥によって液体が増粘する、いわゆるデキャップ現象による初発液滴速度の低下量を示す。
次に、せん断モ−ド方式の液体吐出ヘッド2について説明する。
各液体吐出ヘッド2は、ノズル面側が基材10の塗布面と対向するように配置されており、フレキシケーブル6を介して、駆動パルスを生成するための回路が設けられる駆動信号生成手段100(図5参照)に電気的に接続されている。
図4、図5は、せん断モード方式の液体吐出ヘッド2の一例を示す図であり、図4(a)は概観斜視図、(b)は断面図、図5は液体吐出時の作動を示す図である。図4、図5において、21は液体供給チューブ、22はノズル形成部材、23はノズル、24はカバープレート、25は液体供給口、26は基板、27は隔壁、Lは圧力室の長さ、Dは圧力室の深さ、Wは圧力室の幅である。そして、圧力室28が隔壁27、カバープレート24及び基板26によって形成されている。
液体吐出ヘッド2は、ここでは図5に示すように、カバープレート24と基板26の間に、電気・機械変換手段であるPZT等の圧電材料からなる複数の隔壁27A、27B、27Cで隔てられた圧力室28が多数並設されたせん断モード方式の液体吐出ヘッドを示している。図5では多数の圧力室28の一部である3本(28A、28B、28C)が示されている。圧力室28の一端(以下、これをノズル端という場合がある)はノズル形成部材22に形成されたノズル23につながり、他端(以下、これをマニホールド端という場合がある)は液体供給口25を経て、液体供給チューブ21によって図示されていない液体タンクに接続されている。そして、各圧力室28内の隔壁27表面には両隔壁27の上方から基板26の底面に亘って繋がる電極29A、29B、29Cが密着形成され、各電極29A、29B、29Cは、異方導電性フィルム78とフレキシブルケーブル6を介して、駆動信号生成手段100に接続している。
また、圧力室28は、圧力室28の出口側(図4(b)における左側)の深溝部28aと、該深溝部28aから圧力室28の入口側(図4(b)における右側)に行くに従って徐々に浅くなる浅溝部28bとを有している。
液体吐出ヘッド2の圧力室28の数(ノズル23の数)は、液体吐出ヘッド2の液体吐出幅に応じて適宜、10個〜1000個程度に設定される。
本実施形態において示したように、せん断モードで変形する圧電材料により構成される場合には、後述する矩形波をより効果的に利用することができ、駆動電圧を低下させ、より効率的な駆動が可能となる。
駆動信号生成手段100は、複数の駆動パルスを含む一連の駆動信号を各画素周期毎に発生する駆動信号発生回路と、各圧力室毎に前記駆動信号発生回路から供給された駆動信号の中から各画素のデータや圧力室の選択パターンデータに応じて駆動パルスを選択して各圧力室に供給する駆動パルス選択回路とからなり、各画素のデータや圧力室の選択パターンデータに応じて電気・機械変換手段としての隔壁27を駆動するための駆動パルスを供給する。本実施形態においては、駆動パルスは、吐出パルスとしての、圧力室の容積を膨張させた後に元の容積に戻す矩形波からなる膨張パルスと圧力室の容積を収縮させた後に元の容積に戻す矩形波からなる収縮パルスとを含んでいる。
各隔壁27は、ここでは図5の矢印で示すように互いに分極方向が異なる2枚の圧電材料27a、27bによって構成されているが、圧電材料は例えば符号27aの部分のみであってもよく、隔壁27の少なくとも一部にあればよい。
図6は、本発明における駆動信号の一例を示している。この例では、駆動信号は膨張パルスと収縮パルス各1種の駆動パルスで構成されたものを例に説明する。
図5の各隔壁27表面に密着形成された電極29A、29B、29Cに駆動信号生成手段100の制御により図6に示すような、駆動電圧(波高値)Von、パルス幅1ALで正電圧の膨張パルスと、膨張パルスに引き続いて印加され駆動電圧(波高値)Voff、パルス幅2ALで負電圧の収縮パルスとからなる吐出パルスが印加されると、以下に例示する動作によって液体をノズル23から吐出する。ここで、膨張パルス、収縮パルスはいずれも矩形波である。なお、図5ではノズルは省略してある。
なお、AL(Acoustic Length)とは、圧力室の音響的共振周期の1/2である。またパルス幅とは、電圧の立ち上がり始めから10%と立ち下がり始めから10%との間の時間と定義する。このALは、電気・機械変換手段である隔壁27に矩形波の駆動パルスを印加して吐出する液体の速度を測定し、矩形波の電圧値を一定にして矩形波のパルス幅を変化させたときに、液体の飛翔速度が最大になるパルス幅として求められる。さらにここで矩形波は、電圧の10%と90%との間の立ち上がり時間、立ち下がり時間のいずれもがALの1/2以内、好ましくは1/4以内であるような波形である。
電極29A、29B、29Cのいずれにも駆動パルスが印加されない時は、隔壁27A、27B、27Cのいずれも変形しないが、図5(a)に示す状態において、電極29A及び29Cを接地すると共に電極29Bに膨張パルスを印加すると、隔壁27B、27Cを構成する圧電材料の分極方向に直角な方向の電界が生じ、各隔壁27B、27C共に、それぞれ隔壁27a、27bの接合面にズリ変形を生じ、図5(b)に示すように隔壁27B、27Cは互いに外側に向けて変形し、圧力室28Bの容積を拡大して圧力室28B内に負の圧力が生じて液体が流れ込む。
更に、その後、電位を0に戻すと、隔壁27B、27Cは図5(b)に示す膨張位置から図5(a)に示す中立位置に戻り、圧力室28B内の液体に高い圧力が掛かる。次いで、図5(c)に示すように、隔壁27B、27Cを互いに逆方向に変形するように収縮パルスを印加して、圧力室28Bの容積を収縮させると、圧力室28B内に正の圧力が生じる。これにより圧力室28Bを満たしている液体の一部によるノズル内のメニスカスがノズルから押し出される方向に変化する。この正の圧力が液体をノズルから吐出する程に大きくなると、液体はノズルから吐出する。その後、電位を0に戻し、隔壁27B、27Cを収縮位置から中立位置に戻すと、残留する圧力波の一部がキャンセルされる。他の各圧力室も吐出パルスの印加によって上記と同様に動作する。
図6に示す例では、膨張パルスの駆動電圧Vonと収縮パルスの駆動電圧Voffは、|Von|>|Voff|とすることが好ましい。|Von|>|Voff|の関係とすると、特に吐出する液体の粘度が高い場合において吐出後のノズル内のメニスカスの定常位置への復帰を促進する効果があり、高速安定出射が可能となり、好ましい態様である。
なお、この電圧Vonと電圧Voffの基準電圧は0とは限らない。この電圧Vonと電圧Voffは、それぞれ基準電圧からの差分の電圧である。また、同様な理由により|Von|/|Voff|=2とすることがより好ましい。本実施形態の図6の吐出パルスでは、|Von|/|Voff|=2としている。
このように少なくとも一部が圧電材料で構成された隔壁27によって隔てられた複数の圧力室28を有する液体吐出ヘッド2を駆動する場合、一つの圧力室の隔壁が吐出の動作をすると、隣の圧力室が影響を受けるため、通常、複数の圧力室28のうち、互いに2本以上の圧力室28を挟んで離れている圧力室28をまとめて1つの組となすようにして、3つ以上の組に分割し、各組毎に液体吐出動作を時分割で順次行うように駆動制御される。例えば、全圧力室28を駆動してベタ画像を出力する場合には、圧力室28を2本おきに選んで3相に分けて吐出する、いわゆる3サイクル吐出法が行われる。
かかる3サイクル吐出動作について、吐出ノズルの間引き無しの比較例について図7、図8を用いて更に説明する。図7に示す例では、液体吐出ヘッドは圧力室がA1、B1、C1、A2、B2、C2、A3、B3、C3、A4、B4、C4の12本の圧力室28で構成されているとして説明する。また、このときのA、B、Cの各組の圧力室28に印加される駆動パルスのタイミングチャートを図8に示す。図8は縦軸には圧力室A1〜C4を、また、横軸には時間をとってある。図8のDはエンコーダーのパルス信号であり、図8では、2回分の3サイクル駆動のタイミングチャートが示されているが、以降同様に3サイクル駆動が繰り返される。
液体吐出時には、まず第1周期t1では、B組、C組の圧力室の電極を接地してから吐出パルスPaをA組(A1、A2、A3、A4)の各圧力室の電極に電圧を印加する。A組の圧力室に膨張パルスと収縮パルスからなる吐出パルスPaを印加すると、A組の圧力室から液体が吐出される。
続いてB組(B1、B2、B3、B4)の各圧力室28へ、更に続いてC組(C1、C2、C3、C4)の各圧力室28へと上記同様に動作する。
勿論、図8に示す駆動方法において、実際に印画する場合には上記のように全ての圧力室に吐出パルスが印加されるとは限らず、画像信号に応じて駆動されない圧力室もある。
複数の圧力室が多数並んだせん断モード方式の液体吐出ヘッドを吐出ノズルの間引き無しで駆動すると、隔壁27が変形し圧力の一部が伝達して他の圧力室に影響し、圧力室の間でクロストークを生じ、液滴の飛翔速度を変化させる結果となり、着弾位置の変動等により画質に望ましくない影響が出る。
上記のように3サイクル駆動の場合、第1周期t1では、A組であるA1、A2、A3、A4の4つの圧力室が同時に駆動される。この場合、対称性によりB1、C1、B2、C2・・・は、A1、A2の半分で符号が反対の圧力変化が発生する。これに対し、A2単独駆動の場合は、C1、B1、A1、B2、C2、A3・・・まで圧力変化を生じさせる。その結果、同時駆動の場合の方が、A2に発生する圧力が大きくなり、液滴が高速で飛翔し、液滴の大きさ即ち液滴量も変わることになる。
この現象は、圧力室A1、圧力室A4についても、図では省略されている圧力室A1の左側にある圧力室A0、圧力室A4の右側にある圧力室A5の影響を相互に受け、所謂クロストークを生じるが、このように全てのA組の圧力室が駆動される場合には、両端の圧力室を除いて全てのA組の圧力室からの液滴は速い速度で飛翔する。即ち、両端の圧力室において速度低下が生じ、画質劣化の問題点がある。
また、圧力室A2のみが駆動される場合には、圧力室A2からの液滴の飛翔は同時駆動の場合より遅い速度となり、液滴量が変化したりして画質劣化の問題点がある。実際には画像信号のパターンによって個々の圧力室が受けるクロストークの影響は異なり、ノズルから飛翔する液滴の速度や液滴量も個々の状況によって異なる。
また、このクロストークが起こる圧力室の範囲は、圧力室を構成している材料の剛性にもよるが、通常数チャネル(圧力室)先までも伝達する。そこで、同時に動作する圧力室の間隔を大きくし、駆動するサイクルを増やして駆動すれば良いが、そうすると全体の印画時間が遅くなる等の問題がある。
また、クロストーク対策として使用する圧力室の条件に応じた複雑な駆動制御を行ったり、圧力室毎に液滴速度を個別に補正する方法を用いることも考えられるが、いずれも外部の駆動回路や制御ソフトウエアへの負荷が大きくなるという問題がある。
本発明においては、複数の圧力室をN個(Nは3以上の整数)の組に分割し、吐出に使用する圧力室を(N−2)個おきに選択し、前記基材の同一の領域に対して1回の相対移動をさせながら各組毎に液体吐出動作を時分割で順次行う点に特徴がある。吐出に使用する圧力室を(N−2)個おきに選択することにより、駆動するサイクルが増加することなく、同一サイクルで駆動する隣接圧力室間の距離を増加させ、クロストークを低減できる。
なお、例えば、吐出に使用する圧力室を(N−1)個おきに選択した場合は、同一サイクルで駆動する隣接圧力室間の距離を増加させることができず、クロストークを低減できない。
また、(N−2)の代わりにN以上の整数とした場合は、同一サイクルで駆動する隣接圧力室間の距離を増加させ、クロストークを低減できるが、フルベタ時の圧力室(ノズル)使用率が低下するので、生産性が低下する。あえて、生産性よりもクロストークの低減効果を優先する場合には、吐出用として(N−2)個おきに選択された圧力室の一部に対して非吐出データを供給することにより、L個(LはN以上の整数)おきで間引いて、クロストークの低減効果を高めるようにしても良い。
前記基材の同一の領域に対して1回の相対移動をさせながら各組毎に液体吐出動作を時分割で順次行う1パス方式で印画することにより、マルチパス方式に比較して印画に要する時間は短くなり、生産性が向上する。
また、圧力室毎に液滴速度を補正したり画像信号のパターンによって駆動条件を変更するなどの複雑な駆動制御を行うことなく、各圧力室に共通の駆動パルスを印加する単純な駆動回路を用いることが可能になる。
本実施形態の間引き駆動のタイムチャートの一例を図9に示す。図9は縦軸には圧力室A1〜C4を、また、横軸には時間をとってある。
まず、本実施形態ではN=3であるので、図9に示すように12個の圧力室のうち、吐出に使用する圧力室を(N−2)=1個おきに選択し、各組毎に液体吐出動作を時分割で順次行う。図9の例では、A組では、A1〜A4の4個の圧力室のうちA1とA3が選択され、B組では、B1〜B4の4個の圧力室のうちB2とB4が選択され、C組では、C1〜C4の4個の圧力室のうちC1とC3が選択される。
このように(N−2)=1個おきに選択することにより、同一サイクル(組)で駆動する隣接圧力室間の距離を増加させ(図8の比較例に対して圧力室間のピッチが2倍になる)、クロストークを低減できる。
初め、B組、C組の圧力室の電極を接地してから第1周期t1の吐出パルスPaをA1、A3の圧力室に同時に印加し駆動すると、これらA1、A3の圧力室の隔壁が同時に変化し、各ノズルから液滴が飛翔する。前記のように液滴を吐出する圧力室は初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。
このようにして、第1周期t1では、A組のA2、A4の圧力室は電極を接地して、間引かれて駆動せず、A1、A3の圧力室のみ駆動する。
次に、A組、C組の圧力室の電極を接地してから第2周期t2の吐出パルスPbをB2、B4の圧力室に同時に印加し駆動すると、これらB2、B4の圧力室の隔壁が同時に変化し、各ノズルから液滴が飛翔する。前記のように液滴を吐出する圧力室は初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。
このようにして、第2周期t2では、B組のB1、B3の圧力室は電極を接地して、間引かれて駆動せず、B2、B4の圧力室のみを駆動する。
次に、A組、B組の圧力室の電極を接地してから第3周期t3の吐出パルスPcをC1、C3の圧力室に同時に印加し駆動すると、これらC1、C3の圧力室の隔壁が同時に変化し、各ノズルから液滴が飛翔する。前記のように液滴を吐出する圧力室は初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。
このようにして、第3周期t3では、C組のC2、C4の圧力室は電極を接地して、間引かれて駆動せず、C1、C3の圧力室のみを駆動する。
かかるせん断モード方式の液体吐出ヘッドでは、隔壁の変形は壁の両側に設けられる電極に掛かる電圧差で起こるので、液体吐出を行う圧力室の電極に負電圧を掛ける代わりに、液体吐出を行う圧力室の電極を接地して、その両隣の圧力室の電極に正電圧を掛けるようにしても同様に動作させることができる。この後者の方法によれば、図9の駆動信号を印加した場合と全く同一の効果を奏することができる上に、正電圧のみによって回路構成が可能であるため、回路設計上有利である。
尚、液体吐出ヘッドのノズルのピッチ(圧力室のピッチ)は、間引いた後のノズルのピッチが印画のピッチに合うように、ヘッド製造時に設計するか、長さの長いヘッドを作製しヘッドを回転させ図2のY方向に対して傾けることにより印画のピッチに合わせるようにするか、あるいは、(N−1)個分のヘッドを準備し、(N−1)個のヘッドの各ノズルがノズル列方向(図2のY方向)に同じ位置になるように貼り合わせてもよい。例えば、上記N=3の実施形態の場合、液体吐出ヘッド2を2つ用意し、2つのヘッドの各ノズルがノズル列方向(図2のY方向)に同じ位置になるように貼り合わせればよい。この2列ヘッドの各列の圧力室を前述したような間引きパターンで分割駆動すればよい。
具体的には、2つのヘッドで圧力室の選択パターンを異ならせ(例えば、一方のヘッドを図9の選択パターンで駆動し、他方のヘッドを後述する図12の選択パターンで駆動する)、選択された各ノズルがヘッド間で相互に1/2ピッチずらされ、千鳥状に配置するようにすればよい。これにより、各ヘッドが間引きにより、元のヘッドの2倍のノズルピッチのヘッドであるので、選択されたノズルのピッチを互いに1/2ずらせることで、間引かない状態の元のヘッドのノズルピッチの液体吐出ヘッドとして使用することが可能となり、ノズル数を増やし、高密度の液体吐出ヘッドとすることができる。
また、一方のヘッドの圧力室の選択パターンを変更する場合は、同時に他方のヘッドの圧力室の選択パターンを変更することで、即ち、ヘッド間で圧力室の選択パターンを交換することにより高密度の状態を維持できる。
次に、図10を用いて、かかるせん断モード方式の液体吐出ヘッド2において、間引かれて選択されなかった圧力室のノズルのメニスカスに微振動を与える好ましい例について説明する。ここでも上記同様に3サイクル吐出動作を行うものについて説明する。また、ここでは、図9に示すようにA組のA2、A4、B組のB1、B3、C組のC2、C4の圧力室がいずれも間引かれて吐出用の圧力室として選択されず、吐出を行わず、これらの圧力室のノズルのメニスカスに微振動を与える場合について説明する。
本実施形態においてノズルから液体を吐出させない程度に微振動させる微振動パルスは、図6に示す収縮パルスを利用する。また、微振動パルスは矩形波からなることが好ましい。
微振動パルスに矩形波を用いることで、台形波を使用する方法に比べてメニスカスを微振動させる効率が良く、低い駆動電圧で振動させることができる上に、簡単なデジタル回路で駆動回路を設計できる効果がある。
また、収縮パルスを微振動パルスに利用することにより、吐出パルス及び微振動パルスを発生するための駆動信号生成手段100における駆動パルスの数を少なくできるとともに電源電圧数を少なくして回路コストを下げることができる。また、|Von|>|Voff|に設定して、微振動パルスの電圧を電圧の低いVoff電圧に設定することで、微振動が強く掛かりすぎることがなく、液体をノズルから吐出させない程度の微振動を効率良く掛けることができる。更に、微振動パルスの印加によるクロストークへの影響を抑えることができる。
また、例えば、膨張パルスと収縮パルスで構成される吐出パルスとは別に微振動パルスを駆動信号に含ませるようにする場合において、微振動パルスの電圧を収縮パルスのVoff電圧に設定することで、駆動信号生成手段100における電源電圧数を少なくして回路コストを下げることができる。
図10に示す例では、画像印画領域内において、始めにA組の第1周期では、間引かれて吐出ノズルとして選択されないA2及びA4の圧力室の電極に正電圧の膨張パルスを印加する代わりに接地するとともに2AL幅の負電圧の矩形波からなる収縮パルスのみを印加している。これによりA2及びA4の圧力室のノズル内のメニスカスは、ノズルから液体を吐出させない程度に押し出させるように微振動が与えられ、隣接するB組(B2、B4)及びC組(C1、C3)の各圧力室は片側の隔壁のみが変位して、A組の圧力室の半分の強度の微振動が与えられる。
A組の圧力室の第一周期が終了し、続いてB組の第2周期も同様に、間引かれて吐出ノズルとして選択されないB1及びB3の圧力室の電極に2AL幅の負電圧の矩形波からなる収縮パルスのみを印加し、メニスカスを微振動させる。C組のC2、C4の圧力室の収縮パルスの印加及び微振動も同様に行われる。
このように、吐出用の圧力室として選択されなかった圧力室の電極にも常に、収縮パルスを印加していることで、ノズル開口付近の液体の増粘を効果的に抑制することができる。
実際には前記のように常に、選択された全ての圧力室が駆動されるとは限らず、画像信号に従って、印画画素の圧力室のみ駆動し、液滴を飛翔させて画像を形成する。
次に、図11を用いて、画像領域内で非吐出の画素の圧力室のノズルのメニスカスに微振動を与える好ましい例について説明する。ここでも上記図10と同様に間引かれて吐出ノズルとして選択されず、吐出を行わず、これらの圧力室のノズルのメニスカスに微振動を与えるものについて説明する。ここでは、図11に示すようにC組のC1の圧力室が吐出ノズルとして選択されているが、画像データは非吐出であり、吐出を行わず、このC1の圧力室のノズルのメニスカスに微振動を与える場合について説明する。
本実施形態においてノズルから液体を吐出させない程度に微振動させる微振動パルスは、図6に示す収縮パルスを利用する。C組の第3周期では、非吐出画素のC1の圧力室の電極に2AL幅の負電圧の矩形波からなる収縮パルスのみを印加している。これによりC1の圧力室のノズル内のメニスカスは、ノズルから液体を吐出させない程度に押し出させるように微振動が与えられ、隣接するB1、A2の各圧力室は片側の隔壁のみが変位して、C1の圧力室の半分の強度の微振動が与えられる。
このように、非吐出画素の圧力室の電極にも常に、収縮パルスを印加していることで、ノズル開口付近の液体の増粘を効果的に抑制することができる。
このようにして、図9、図10あるいは図11に示すようなパターンで、圧力室を1つおきに間引いて使用して印画を継続する。
そして、例えば、選択している圧力室に対応する複数のノズルのうち少なくとも1つのノズルに不吐出等の不具合が生じたときに、図12に示すように他のパターンに属するノズルを選択して使用する。
図12では、吐出に使用する圧力室を(N−2)=1個おきに、図9で選択されたかった圧力室を選択し、各組毎に液体吐出動作を時分割で順次行う。図12の例では、A組では、A1〜A4の4個の圧力室のうちA2とA4が選択され、B組では、B1〜B4の4個の圧力室のうちB1とB3が選択され、C組では、C1〜C4の4個の圧力室のうちC2とC4が選択される。
不具合の検出は、ノズル欠(液体の不吐出)を検出する検出手段を設け、検出手段からの信号に基づいて行うようにすれば良く、また、ユーザーが基材上の画像を観察してノズル欠(液体の不吐出)を認識した場合にユーザーからの指示で変更するようにしても良い。
図12では、A組の第1周期では、A2、A4の圧力室を選択し、A2、A4の圧力室の電極に吐出パルスを印加し、液滴を吐出させる。同様に、B組の第2周期では、B1、B3の圧力室を選択し、C組の第3周期では、C2、C4の圧力室を選択し、それぞれ液滴を吐出させる。
図12のパターンにおいても、前述の図10、11のように、選択されなかった圧力室や選択されていて非吐出の画素の圧力室の電極に収縮パルスのみを印加して微振動させることが好ましい。
選択する圧力室を変更する際は、直前に選択されて使用していた圧力室(A1、C1、B2、A3、C3、B4)以外の圧力室(B1、A2、C2、B3、A4、C4)に対応するノズルからフラッシングを行うことが好ましい。
即ち、図12の選択パターンで印画動作を開始する前に、図12に示すようなパターンの吐出パルスを印加して、前述の液体受け7に向けて液体を吐出してフラッシングを行って目詰まり等の不具合を解消する。
なお、選択パターンを変更するタイミングは、選択している圧力室に対応するノズルの少なくとも1つのノズルに不吐出等の不具合が生じたときに限定するものではなく、所定量の画像情報の印画動作が完了する毎に変更する様にしてもよい。連続して画像情報を印画する際は、同一の選択パターンで印画することが好ましい。
通常、画像データの先頭部にヘッダ情報等が付随しているので、印画するジョブ毎、もしくは、頁毎に、選択パターンを切り換える様にすればよい。
また、選択パターンを変更することにより、ノズル位置にずれが生じる場合は、移動手段(図示せず)によりずれ量分だけ各液体吐出ヘッド2をY方向(ノズル配列方向)に移動させてから変更した選択パターンで印画をするようにすることが好ましい。
さらに、任意の1つの圧力室のノズルから液滴を吐出した後、隣接する圧力室に発生する圧力波の残響が減衰する減衰時間をTとしたとき、サイクル間の駆動周期tは、T以上に設定することが好ましい。
隣接する圧力室とは、吐出に使用する圧力室として選択された圧力室のうち、上記任意の1つの圧力室に最も近い位置にある圧力室を意味し、図9の3サイクル駆動の例では、例えば、A3の圧力室を任意の1つの圧力室として、ノズルから液滴を吐出した後、B2またはC3の圧力室(A3とは1本の圧力室を挟んで隣接している圧力室)に発生する圧力波の残響が減衰する減衰時間をTとする。
減衰時間Tは、駆動周期tと隣接する圧力室から吐出される液体の液滴速度の関係を測定することにより測定できる。圧力波の残響が減衰した時点では、駆動パルスが印加されていない状態での圧力に復帰しており、通常は圧力室内が定常的に若干の負の圧力に設定されている。この時点では、残響の影響がないので、吐出される液体の液滴速度は変動が無く通常の速度で吐出される。これにより例えば、図9において駆動周期tでA3から液体を吐出した後、次の周期でB2から液体を吐出するような場合においてもB2のノズルから安定に吐出できる。
図13は、図6に示す駆動周期tの吐出パルスで任意の1つの圧力室Xのノズルから液滴を吐出した後、1本の圧力室を挟んで隣接する圧力室Yに同様な吐出パルスを印加してノズルから液体を吐出させたときの、駆動周期tと隣接する圧力室Yのノズルから吐出される液体の液滴速度の関係を示している。駆動周期tは、パルス幅1ALの膨張パルスと2ALの収縮パルスに続くアース電位の休止期間を約2ALから13ALまで変化させることにより変化させている。
図13において、液滴速度変動がほぼ収まっている時間が減衰時間Tであり、約13ALである。
例えば、図9に示すようなN=3の間引き駆動では、駆動周期tは、T=13AL以上に設定することが好ましい。
以上の例では、N=3として3サイクルで駆動するようにしているが、Nは4以上の整数でもよい。なお、Nは、10以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。あまり長すぎると駆動周期が長くなってしまうため好ましくない。
また、以上の例のようにN=3として3サイクルで駆動するものは、圧力室の使用効率が高く、最短の周期で吐出させることができるので、特に高速印画を達成する場合に好ましい態様である。
次に、N=4として4サイクルで駆動する例について説明する。
本実施形態は、全圧力室28を駆動してベタ画像を出力する場合には、圧力室28を3本おきに選んで4相に分けて吐出する、いわゆる4サイクル吐出法が行われる。その他の構成及び制御動作は上述した3サイクル駆動の実施形態の場合と同様であるので、ここでは、上記圧力室の選択パターンであって上記実施形態との相違点について説明する。
かかる4サイクル吐出動作について間引き無しの比較例について図14を用いて更に説明する。図14に示す例では、液体吐出ヘッドは圧力室がA1、B1、C1、D1、A2、B2、C2、D2、A3、B3、C3、D3、A4、B4、C4、D4、A5、B5、C5、D5、A6、B6、C6、D6の24本の圧力室28で構成されているとして説明する。
液体吐出時には、まずA組(A1、A2、A3、A4、A5、A6)の各圧力室の電極に電圧を印加し、その両隣の圧力室の電極を接地する。A組の圧力室に膨張パルスと収縮パルスからなる吐出パルスPaを印加すると、吐出したいA組の圧力室から液体が吐出される。
続いてB組(B1、B2、B3、B4、B5、B6)の各圧力室28、続いてC組(C1、C2、C3、C4、C5、C6)の各圧力室28、更に続いてD組(D1、D2、D3、D4、D5、D6)の各圧力室28、へと上記同様に動作する。
この間引き駆動のタイムチャートの一例を図15に示す。
まず、本実施形態ではN=4であるので、図15に示すように24個の圧力室のうち、吐出に使用する圧力室を(N−2)=2個おきに選択し、各組毎に液体吐出動作を時分割で順次行う。図15の例では、A組では、A1〜A6の6個の圧力室のうちA1とA4が選択され、B組では、B1〜B6の6個の圧力室のうちB3とB6が選択され、C組では、C1〜C6の6個の圧力室のうちC2とC5が選択され、D組では、D1〜D6の6個の圧力室のうちD1とD4が選択される。
このように(N−2)=2個おきに選択することにより、同一サイクル(組)で駆動する隣接圧力室間の距離を増加させ(図14の比較例に対して圧力室間のピッチが3倍になる)、クロストークを低減できる。
初め、B組、C組、D組の圧力室の電極を接地してから第1周期t1の吐出パルスPaをA1、A4の圧力室に同時に印加し駆動すると、これらA1、A4の圧力室の隔壁が同時に変化し、各ノズルから液滴が飛翔する。前記のように液滴を吐出する圧力室は初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。
このようにして、第1周期t1では、A組のA2、A3、A5、A6の圧力室は電極を接地して、間引かれて駆動せず、A1、A4の圧力室のみを駆動する。
次に、A組、C組、D組の圧力室の電極を接地してから第2周期t2の吐出パルスPbをB3、B6の圧力室に同時に印加し駆動すると、これらB3、B6の圧力室の隔壁が同時に変化し、各ノズルから液滴が飛翔する。前記のように液滴を吐出する圧力室は初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。
このようにして、第2周期t2では、B組のB1、B2、B4、B5の圧力室は電極を接地して、間引かれて駆動せず、B3、B6の圧力室のみを駆動する。
次に、A組、B組、D組の圧力室の電極を接地してから第3周期t3の吐出パルスPcをC2、C5の圧力室に同時に印加し駆動すると、これらC2、C5の圧力室の隔壁が同時に変化し、各ノズルから液滴が飛翔する。前記のように液滴を吐出する圧力室は初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。
このようにして、第3周期t3では、C組のC1、C3、C4、C6の圧力室は電極を接地して、間引かれて駆動せず、C2、C5の圧力室のみを駆動する。
次に、A組、B組、C組の圧力室の電極を接地してから第4周期t4の吐出パルスPdをD1、D4の圧力室に同時に印加し駆動すると、これらD1、D4の圧力室の隔壁が同時に変化し、各ノズルから液滴が飛翔する。前記のように液滴を吐出する圧力室は初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。
このようにして、第4周期t4では、D組のD2、D3、D5、D6の圧力室は電極を接地して、間引かれて駆動せず、D1、D4の圧力室のみを駆動する。
前述の3サイクル駆動と同様に、吐出に使用する圧力室を選択するパターンを変更可能である。4サイクル駆動では、2個おきに間引くので、図15以外にもさらに2つの選択パターンが可能であり、合計3つの選択パターンで変更可能である。
次に、図16を用いて、間引かれて選択されなかった圧力室のノズルのメニスカスに微振動を与える好ましい例について説明する。ここでも上記同様に4サイクル吐出動作を行うものについて説明する。また、ここでは、図15に示すようにA組のA2、A3、A5、A6、B組のB1、B2、B4、B5、C組のC1、C3、C4、C6、D組のD2、D3、D5、D6の圧力室がいずれも間引かれて吐出用の圧力室として選択されず、吐出を行わず、これらの圧力室のノズルのメニスカスに微振動を与える場合について説明する。
図16に示す例では、画像印画領域内において、始めにA組の第1周期では、間引かれて選択されないA2、A3、A5、A6の圧力室の電極に正電圧の膨張パルスを印加する代わりに接地するとともに2AL幅の負電圧の矩形波からなる収縮パルスのみを印加している。これによりA2、A3、A5、A6の圧力室のノズル内のメニスカスは、ノズルから液体を吐出させない程度に押し出させるように微振動が与えられ、隣接するB組(B2、B3、B5、B6)及びD組(D1、D2、D4、D5)の各圧力室は片側の隔壁のみが変位して、A組の圧力室の半分の強度の微振動が与えられる。
A組の圧力室の第1周期が終了し、続いてB組の第2周期も同様に、間引かれて選択されないB1、B2、B4、B5の圧力室の電極に2AL幅の負電圧の矩形波からなる収縮パルスのみを印加し、メニスカスを微振動させる。C組、D組の選択されない圧力室の収縮パルスの印加及び微振動も同様に行われる。
この図15の4サイクル駆動の例では、例えば、A4の圧力室を任意の1つの圧力室として、ノズルから液滴を吐出した後、B3またはD4の圧力室(A4とは2本の圧力室を挟んで隣接している圧力室)に発生する圧力波の残響が減衰する減衰時間をTとする。駆動周期tをT以上に設定することが好ましい。これにより例えば、図15において駆動周期tでA4の圧力室のノズルから液体を吐出した後、次の駆動周期でB3の圧力室のノズルからから液体を吐出するような場合においても、B3のノズルから安定に吐出できる。
尚、以上に述べた本発明に係る液体吐出装置は、液体吐出ヘッドとして基材の幅に相当する長さを有するフルライン型のヘッドを有する1パス方式のものを例に採り説明したが、図19に示すように、液体吐出ヘッドとして、往復走査型のヘッドを採用する1パス方式の液体吐出装置を用いることも可能である。
図19において、液体吐出ヘッド2は、移動手段(図示せず)によりガイド52に沿って基材10上をX方向に往復移動可能に構成され、複数のノズル23の配列方向が基材の搬送方向Xに沿う方向になるように設置される。
なお、図中、7は液体受け器であり、液体吐出ヘッド2が画像印画領域外、即ち、非印画時のホームポジション等の待機位置に設けられている。
装置の印画作動について簡単に説明する。
まず、基材10をX方向に搬送し、液体吐出ヘッド2に対向する位置へと搬送して停止させる。
引き続いて、液体吐出ヘッド2は、基材10の搬送方向Xと直交する方向Yに、初期位置から終点位置の間を往復作動し、例えば、往方向の作動に連動して前述のような間引きパターンで液体を吐出させる印画作動により、基材10に画像が印画される。
液体吐出ヘッド2による往方向での印画作動が終了すると、基材10は、液体吐出ヘッド2の往方向の作動で液体を吐出して印画できる、基材10の搬送方向の印画幅に相当する搬送量だけ搬送されて停止する。一方、液体吐出ヘッド2は基材10の搬送作動に連動して、終点位置から初期位置へと復帰する。
このように、基材の同一の領域に対して1回の走査で液体を吐出する液体吐出ヘッド2の印画作動と連携して、基材10を一定のタイミングで基材10の搬送方向の印画幅に相当する搬送量を搬送する搬送制御を繰り返して実行して、液体吐出ヘッド2が基材10に画像を印画(形成)できるようにしている。
即ち、本実施形態においては、液体吐出ヘッド2をX方向に往復移動させる移動手段が、液体吐出ヘッドと基材を相対移動させる相対移動手段に相当する。
また、基材の同一の領域に対して1回の走査で液体を吐出する間は、圧力室の選択パターンは変更しないことが好ましい。即ち、パターンの変更は、1走査が終了した時点で行うことが好ましい。
また、前述のようにパターンを変更して、印画作動を開始する場合は、液体吐出ヘッド2を液体受け器7に対向する位置に移動させて液体受け器7に向けて選択されていなかった全圧力室の全ノズルからフラッシングを行い目詰まり等を解消して、正常な液体の吐出ができるようにするようにした後に、初期位置から終点位置へと往復作動を開始し、基材10に画像を印画するようになっている。
なお、本実施の形態においては印画作動の説明を簡単にするために、液体吐出ヘッド2は、初期位置から終点位置へと移動する往方向でのみ液体を吐出して印画を実行するようにしたが、往方向と復方向の両方向で印画を行うようにしても良い。
なお、液体吐出ヘッド2が往復両方向で印画を行う場合は、前述した往方向での印画と同様に、液体吐出ヘッド2の復方向の印画と連携して、基材10の搬送方向の印画幅に相当する搬送量を搬送する搬送制御が実行される。
このように、本発明は、液体吐出ヘッドとして往復走査型のヘッドを有する液体吐出装置に対しても適用することができるものである。
以上説明したように、せん断モード方式の液体吐出ヘッドを用いて、複数の圧力室をN個(Nは3以上の整数)の組に分割し、吐出に使用する圧力室を(N−2)個おきに選択し、前記基材の同一の領域に対して1回の相対移動をさせながら各組毎に液体吐出動作を時分割で順次行うことにより、簡単な構成で、生産性が低下することなく、同一サイクル(組)で駆動する隣接圧力室間の「クロストーク」を極力抑え、「クロストーク」に起因する液滴速度及び液滴量の変動を低減することができる液体吐出装置を提供することができる。
また、N=3に設定することにより、圧力室の使用効率が高く、最短の周期で吐出させることができるので、特に高速印画を達成する場合に好ましい。
また、液体を吐出させる際に、選択されなかった圧力室の隔壁の電極に対して、ノズル内のメニスカスをノズルから液体を吐出させない程度に微振動させる微振動パルスを印加することにより、吐出用の圧力室として選択されなかった圧力室のノズル開口付近の液体の増粘を効果的に抑制することができる。
また、吐出に使用する圧力室を(N−2)個おきに選択する際に、選択する圧力室を変更可能であることにより、例えば、選択されている圧力室のノズルに不吐出が生じた時に、ヘッドを交換することなく、選択されていない圧力室から、新たに(N−2)個おきに選択し印画を継続できる。このことにより、ヘッド交換の回数を減らして稼働率の高い印画作業ができると共に、高い信頼性、高スループットが実現できる。
また、基材の同一の領域に対して1回の相対移動で液体を吐出させている間は、選択する圧力室を変更しないことにより、駆動制御が容易になる。
また、選択する圧力室を変更する際は、直前に選択されて使用していた圧力室以外の圧力室に対応するノズルからフラッシングを行うことにより、直前に使用していた圧力室からはフラッシングを行わずに無駄に消費される液体を節約すると共に、選択されずに使用されていなかった圧力室のノズル開口で増粘した液体を排出してノズル詰まりを防止できる。
また、選択された圧力室の隔壁の電極に対して、圧力室の容積を膨張させた後に元の容積に戻す矩形波からなる膨張パルスと、圧力室の容積を収縮させた後に元の容積に戻す矩形波からなる収縮パルスとを含む吐出パルスを印加することにより液体を吐出させることにより、駆動回路の簡素化を図ることが可能であり、また、駆動効率が高く、消費電力が低いという効果も得られる。
また、膨張パルスの電圧Von、収縮パルスの電圧Voffとの比|Von|/|Voff|が2であることにより、高粘度液体の吐出後のメニスカス復帰を促進し、高速安定出射が可能になる。
また、微振動パルスは、圧力室の容積を収縮させた後に元の容積に戻す矩形波を含み、前記収縮パルスの電圧Voffと同電圧であることにより、微振動パルスの電圧を電圧の低いVoff電圧に設定することで、微振動が強く掛かりすぎることがなく、液体をノズルから吐出させない程度の微振動を効率良く掛けることができる。
本発明に係る液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置、例えば有機ELディスプレイのEL材料の塗布や、液晶用パネルのスペーサー粒子や電極材料等の塗布等に用いられる塗布装置に限らず、インクジェットプリンタ等にも同様に採用することができる。