JP5281558B2 - 塩素の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、触媒充填層を備えた反応器に、硫黄成分を含む塩化水素と酸素とを供給して塩化水素を酸化し、塩素を製造する方法に関する。
塩素は、塩化ビニルやホスゲン等の原料として有用である。その製造方法としては、酸化反応を利用する方法が知られている。すなわち、触媒存在下に、塩化水素ガスと酸素とを供給して、前記塩化水素を酸化して塩素を得る方法である。
前記触媒としては、例えばCu系のいわゆるディーコン(Deacon)触媒(例えば、特許文献1参照)、Cr23系触媒(例えば、特許文献2参照)、Ru系触媒(例えば、特許文献3参照)等が挙げられる。
一方、前記塩化水素や酸素中には、その発生源に起因して硫黄成分が含まれることがある。硫黄成分を含む塩化水素や酸素をそのまま原料として前記酸化反応に使用すると、触媒に悪影響を与えることはよく知られている。そのため、前記酸化反応に使用される塩化水素や酸素としては、硫黄成分の含有量を極力抑えたものが要望されている。
特許文献4には、イソシアネート類を製造する際に副生する塩化水素を前記酸化反応の原料として用いるにあたり、イソシアネート類の原料である一酸化炭素中の硫黄成分の含有量を2000体積ppb以下にすることにより、硫黄成分を極力抑えた副生塩化水素を前記酸化反応に用いる方法が記載されている。また、特許文献5,6には、所定の金属化合物に硫黄成分を含む塩化水素をほぼ室温で接触させ、該金属化合物に硫黄成分を吸着・吸収させることにより、硫黄成分を含む塩化水素から硫黄成分を除去する方法が記載されている。特許文献7には、塩素分離後の酸素を主成分とする塩素回収残ガスを原料の一部として再利用する塩素の製造方法において、塩素回収残ガス中に含まれる硫酸ミストをグラスウールで除去する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献4〜7に記載されているような硫黄成分の含有量が極力抑えられた塩化水素を前記酸化反応に使用する方法では、硫黄成分の除去工程が必須となるため、操業コストの点から必ずしも満足のいくものではなかった。
米国特許第3210158号明細書 特開昭61−136902号公報 特開平9−67103号公報 特開2006−117528号公報 特開2004−277282号公報 特開2005−177614号公報 特開平6−171907号公報
本発明の課題は、硫黄成分を含む塩化水素や酸素を使用しても良好に酸化反応を継続できる塩素の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、先ず触媒の存在下で塩化水素とともに硫黄成分を酸素で酸化し、次いで酸化された硫黄成分をアルミナに吸着および/または吸収させて除去した後、触媒の存在下で未反応の塩化水素を酸素で酸化する場合には、硫黄成分を含む塩化水素含有ガスや酸素含有ガスを使用しても触媒の劣化を抑制することができ、酸化反応を継続して行うことができるという新たな事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の塩素の製造方法は、以下の構成からなる。
(1)塩化水素含有ガス中の塩化水素を酸素含有ガス中の酸素で酸化して塩素を製造する方法であって、前記塩化水素含有ガスおよび酸素含有ガスのうち少なくとも一方が硫黄成分を含み、かつ以下の第1〜第3工程を含むことを特徴とする塩素の製造方法。
第1工程:触媒の存在下、前記塩化水素および硫黄成分を酸素で酸化する工程。
第2工程:前記第1工程で得られた硫黄酸化物をアルミナに吸着および/または吸収させる工程。
第3工程: 触媒の存在下、前記第2工程で脱硫黄処理された反応ガス中の未反応の塩化水素を酸素で酸化して塩素を得る工程。
(2)ガス流通方向に対して上流側から順に、前記第1工程で用いる触媒充填層と、前記第2工程で用いるアルミナ充填層と、前記第3工程で用いる触媒充填層と、が直列に接続されてなる前記(1)記載の製造方法。
(3)前記第1工程の触媒が、銅を含有する触媒、クロムを含有する触媒、およびルテニウムを含有する触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)前記ルテニウムを含有する触媒が、担体に酸化ルテニウムが担持されてなる担持酸化ルテニウムである前記(3)記載の製造方法。
(5)前記ルテニウムを含有する触媒が、担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなる担持酸化ルテニウムである前記(3)記載の製造方法。
(6)前記第1工程での塩化水素転化率が5〜80%である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)前記第3工程の触媒が、担体に酸化ルテニウムが担持されてなる担持酸化ルテニウムである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)前記第3工程の触媒が、担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなる担持酸化ルテニウムである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(9)前記第1ないし第3工程における各工程温度を独立に制御する前記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)前記第2工程における工程温度が250〜400℃である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)前記第1工程および第3工程で使用される反応器の少なくとも一方が、断熱式または熱交換式の固定床反応器である前記(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
上記した塩素は、以下の製造装置を用いて製造することができる。すなわち、本発明の塩素の製造装置は、以下の構成からなる。
(12)塩化水素含有ガスおよび酸素含有ガスのうち少なくとも一方が硫黄成分を含むとともに、前記塩化水素を酸素で酸化して塩素を製造する装置であって、前記塩化水素および硫黄成分を酸素で酸化する触媒充填層を有する第1反応器と、前記第1反応器で得られた硫黄酸化物を吸着および/または吸収させるアルミナ充填層を有する吸着・吸収器と、前記吸着・吸収器で脱硫黄処理された反応ガス中の未反応の塩化水素を酸素で酸化して塩素を得る触媒充填層を有する第2反応器と、を備え、ガス流通方向に対して上流側から順に、前記第1反応器と、前記吸着・吸収器と、前記第2反応器と、を直列に接続することを特徴とする塩素の製造装置。
(13)前記第1反応器を複数備え、各第1反応器の入口にそれぞれ接続される流路と、各流路のうち任意の流路にガスが流れるよう各流路の切り替えを行う手段と、を更に備える前記(12)記載の製造装置。
(14)前記吸着・吸収器を複数備え、各吸着・吸収器の入口にそれぞれ接続される流路と、各流路のうち任意の流路にガスが流れるよう各流路の切り替えを行う手段と、を更に備える前記(12)または(13)記載の製造装置。
本発明によれば、硫黄成分を含む塩化水素や酸素を使用しても良好に酸化反応を継続して塩素を製造することができるという効果を有する。
本発明の一実施形態にかかる塩素の製造装置を示す概略説明図である。 本発明の他の実施形態にかかる塩素の製造装置を示す概略説明図である。 本発明の更に他の実施形態にかかる塩素の製造装置を示す概略説明図である。 本発明の更に他の実施形態にかかる塩素の製造装置を示す概略説明図である。 実施例で使用した塩素の製造装置を示す概略説明図である。
本発明にかかる塩素の製造方法は、塩化水素含有ガスおよび酸素含有ガスのうち少なくとも一方が硫黄成分を含むとともに、前記塩化水素を酸素で酸化して塩素を製造する方法である。以下、本発明にかかる塩素の製造方法およびその製造装置の一実施形態について、図1を参照して詳細に説明する。
同図に示すように、本実施形態にかかる塩素の製造装置は、矢印Aに示すガス流通方向に対して上流側から順に、第1反応器10と、吸着・吸収器20と、第2反応器30と、が流路1によって直列に接続されている。
第1反応器10は、触媒充填層11を有している。該触媒充填層11は、第1反応器10の下部に仕切り材50を充填し、この仕切り材50上に触媒12を第1反応器10の上部開口から充填することにより形成されている。仕切り材50としては、例えばニッケル製の目皿、石英ウール等が挙げられる。
第1反応器10では、触媒12の存在下、前記塩化水素および硫黄成分を酸素で酸化する第1工程が行われる。該第1工程では、硫黄酸化物、水蒸気および塩素が得られる。
第1工程で使用される触媒12は、塩化水素を酸素で酸化すると同時に、硫黄成分を酸素で酸化するためのものである。該触媒12としては、例えば銅を含有する触媒、クロムを含有する触媒、およびルテニウムを含有する触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
前記銅触媒としては、例えば一般にDeacon触媒と称される、塩化銅と塩化カリウムに第三成分として種々の化合物を添加してなる触媒等が挙げられる。また、前記クロム触媒としては、例えば前記特許文献2の他、特開昭61−275104号公報、特開昭62−113701号公報および特開昭62−270405号公報等に記載されている酸化クロムを含有する触媒等が挙げられる。前記ルテニウム触媒としては、例えば前記特許文献3の他、特開平10−338502号公報、特開2000−281314号公報、特開2002−79093号公報および特開2002−292279号公報等に記載されている酸化ルテニウムを含有する触媒等が挙げられる。
本実施形態は、上記で例示した触媒のうちルテニウム触媒、特に酸化ルテニウムを含有する触媒に対して好適に用いられる。酸化ルテニウムを含有する触媒は、例えば実質的に酸化ルテニウムのみからなるものであってもよいし、酸化ルテニウムが、α−アルミナ、チタニア(酸化チタン)、シリカ、ジルコニア、酸化ニオブ、活性炭等の担体に担持されてなる担持酸化ルテニウムであってもよいし、酸化ルテニウムと、α−アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化ニオブ等の他の酸化物とからなる複合酸化物であってもよい。
前記担持酸化ルテニウムにおいて、担体は後述する高比表面積アルミナを含まない方が好ましい。担体中に高比表面積アルミナが存在すると、酸化された硫黄成分が担持酸化ルテニウムに吸着および/または吸収されやすくなり、触媒の活性が低下することがある。なお、α−アルミナは低いBET比表面積を有するため、硫黄成分の吸着および/または吸収には適さない。つまり、前記担体がα−アルミナを含有しても、前記問題は生じ難い。
前記担持酸化ルテニウムにおける担体としては、例えばチタニア、前述したα−アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化ニオブ等の金属酸化物が挙げられ、必要に応じて、それらの2種以上を用いることもできる。中でも、チタニアが好ましい。また、チタニアとしては、ルチル型の結晶構造を有するルチル型チタニア、アナターゼ型の結晶構造を有するアナターゼ型チタニア、非晶質のチタニア等からなるものや、これらの混合物からなるものが採用可能である。前記担体は、該担体中のチタニアの結晶形がルチル型チタニアおよび/またはアナターゼ型チタニアであるのが好ましい。
前記担体は、該担体総量に対して好ましくは30〜100重量%の割合でチタニアを含有するのがよい。担体に含有される前記チタニアにおいて、ルチル型チタニアの占める割合は好ましくは20〜100%であるのがよい。
特に、ルチル型チタニアおよびアナターゼ型チタニアに対するルチル型チタニアの比率(以下、「ルチル型チタニア比率」と言うことがある。)が20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは90%以上の担体がよい。ルチル型チタニア比率が高くなるほど、担持酸化ルテニウムの触媒活性も良好となる。
前記ルチル型チタニア比率は、X線回折法(以下、「XRD法」と言う。)により測定され、下記式(I)より算出される値である。
Figure 0005281558
担持酸化ルテニウムとして、担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなるものも好適に採用可能である。担体上に酸化ルテニウムのみならず、シリカを担持させることにより、熱負荷による酸化ルテニウムの焼結(シンタリング)を抑制することができ、熱的安定性や触媒寿命を向上させることができる。
かかる担持酸化ルテニウムとしては、例えば以下の(i)〜(iv)に示すものが挙げられる。
(i)担体にケイ素化合物を担持させた後、ルテニウム化合物を担持させ、次いで酸化性ガス雰囲気下で焼成して得られるもの。
(ii)チタン化合物とケイ素化合物とを酸化性ガス雰囲気下で熱処理して、シリカが担持されてなるチタニア担体を得、該担体にルテニウム化合物を担持させた後、酸化性ガス雰囲気下で焼成して得られるもの。
(iii)担体にルテニウム化合物を担持させた後、ケイ素化合物を担持させ、次いで酸化性ガス雰囲気下で焼成して得られるもの。
(iv)担体に、ケイ素化合物およびルテニウム化合物を担持させた後、酸化性ガス雰囲気下で焼成して得られるもの。
例示したこれら(i)〜(iv)の担持酸化ルテニウムうち、特に(i),(ii)の担持酸化ルテニウムが好ましい。前記(i)〜(iv)の担持酸化ルテニウムにおいて、前記ケイ素化合物としては、例えばSi(OR)4(以下、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)等のケイ素アルコキシド化合物、塩化ケイ素(SiCl4)、臭化ケイ素(SiBr4)等のハロゲン化ケイ素、SiCl(OR)3、SiCl2(OR)2、SiCl3(OR)等のケイ素ハロゲン化物アルコキシド化合物等が挙げられ、特にオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC254)が好ましく、必要に応じて、その水和物を用いてもよいし、それらの2種以上を用いてもよい。
また、担体に、ケイ素化合物やルテニウム化合物を担持させる方法としては、各化合物を適当な溶媒に溶解させてなる溶液を担体に含浸させる方法や、担体を該溶液に浸漬して、各化合物を吸着させる方法等が挙げられる。
前記酸化性ガスとは、酸化性物質を含むガスであり、例えば酸素含有ガス等が挙げられ、その酸素濃度としては、通常、1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスや水蒸気で希釈される。酸化性ガスは、中でも、空気が好ましい。また、焼成温度は、通常、100〜1000℃、好ましくは250〜450℃である。
担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなる担持酸化ルテニウムにおいて、シリカの使用量は、担体1モルに対し、通常、0.001〜0.3モルであり、好ましくは0.004〜0.03モルである。
上記した担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなる担持酸化ルテニウムとしては、例えば特開2008−155199号公報、特開2002−292279号公報等に記載されているものが好適である。
触媒充填層11は、局所的な反応熱の蓄積によるホットスポットの発生を抑制する上で、触媒12を希釈剤で希釈充填してもよい。前記希釈剤には、前記酸化反応に対して不活性であることや、ホットスポットの熱を除く熱伝導性(除熱性)、酸化反応時の温度に耐え得る耐熱性等が要求される。これらの要求を満足する希釈剤としては、例えばα−アルミナ等が挙げられる。
第1反応器10(第1工程)での塩化水素転化率としては、5〜80%が好ましく、20〜80%がより好ましい。第1反応器10の塩化水素転化率が5%より低いと、硫黄成分の酸化反応が進み難くなり、80%よりも高いと、触媒12の硫黄被毒による活性低下が大きくなる。そのため、長時間酸化反応を継続して塩素を製造する運転では、触媒12の使用量が多くなるので、コスト面で好ましくない。前記塩化水素転化率は、後述する実施例で示す方法で測定することができる。
一方、吸着・吸収器20は、アルミナ充填層21を有している。該アルミナ充填層21は、吸着・吸収器20の下部に仕切り材50を充填し、この仕切り材50上にアルミナ22を吸着・吸収器20の上部開口から充填することにより形成されている。
吸着・吸収器20では、前記第1工程で得られた硫黄酸化物をアルミナ22に吸着および/または吸収させる第2工程が行われる。該第2工程で使用されるアルミナ22は、第1反応器10で塩化水素を酸化する際に生じた硫黄酸化物を吸着および/または吸収する吸着・吸収剤として機能するものである。
該アルミナ22としては、BET比表面積が10〜500m2/g、好ましくは20〜350m2/gのアルミナ(以下、「高比表面積アルミナ」と言うことがある。)が好ましく用いられる。このような高いBET比表面積を有するアルミナは、触媒12により生成した硫黄酸化物と水分の共存下、硫黄成分を吸着・吸収することができるので、硫黄成分によって後述する第2反応器30内の触媒32が劣化するのを抑制することができる。
これに対し、前記BET比表面積が小さすぎると、塩化水素中の硫黄成分の吸着・吸収効率が低くなるおそれがある。また、前記BET比表面積が大きすぎると、細孔径が小さくなりすぎるため、硫黄成分の吸着・吸収効率が低くなるおそれがある。前記BET比表面積は、窒素吸着法を原理とする比表面積測定装置を用いて測定して得られる値である。
前記高比表面積アルミナとしては、例えばγ−アルミナ、θ−アルミナ、δ−アルミナ、β−アルミナ、非晶質アルミナ、ベーマイト等が挙げられ、特にγ−アルミナ、θ−アルミナが好ましく、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
前記高比表面積アルミナの細孔容積としては、通常、0.05〜1.5ml/g、好ましくは0.1〜1.0ml/gである。細孔容積が小さすぎると、細孔径が小さくなりすぎるため、塩化水素中の硫黄成分の吸着・吸収効率が低くなるおそれがある。また、細孔容積が大きすぎると、強度が低下して安定的な塩素の製造を妨げるため好ましくない。前記細孔容積は、Hg圧入法で測定して得られる値である。
吸着・吸収器20に充填するアルミナ22の量は、塩化水素や酸素中の硫黄成分濃度に依存して任意に設定することができる。具体例を挙げると、先ず、塩化水素や酸素中の硫黄成分濃度に対するアルミナ単位体積当りの吸着・吸収量を実験的に求め、それらと、アルミナ単位体積当りの原料ガスフィード量とから、アルミナ単位体積当りの硫黄成分の吸着・吸収可能時間を算出する。次いで、塩素製造装置を連続運転する時間に対し、その時間を超える体積のアルミナを吸着・吸収器20に充填することにより、連続運転中に硫黄成分による触媒32の劣化を抑制することができる。
第2反応器30は、触媒充填層31を有している。該触媒充填層31は、第2反応器30の下部に仕切り材50を充填し、この仕切り材50上に触媒32を第2反応器30の上部開口から充填することにより形成されている。
第2反応器30では、触媒32の存在下、前記第2工程で脱硫黄処理された反応ガス中の未反応の塩化水素を酸素で酸化して塩素を得る第3工程が行われる。該第3工程で使用される触媒32は、吸着・吸収器20で脱硫黄処理された反応ガス中の未反応の塩化水素を酸素で酸化して塩素を得るためのものである。
第2反応器30は、塩素の収率を高くするための重要な設備である。したがって、触媒32は、第1反応器10に充填された触媒12より高活性であるのが好ましい。触媒32としては、例えば担体に酸化ルテニウムが担持されてなる担持酸化ルテニウム、担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなる担持酸化ルテニウム等が挙げられる。前記担持酸化ルテニウムとしては、触媒12で説明したのと同じ担持酸化ルテニウムが挙げられる。
なお、第2反応器30には、硫黄成分が低減された反応ガスが供給されるため、担体として高比表面積アルミナを含有する担体を用いてもよい。また、前記第1反応器10(第1工程)および第2反応器30(第3工程)を経た後の塩化水素転化率、すなわち前記第1,第3工程での各々の塩化水素転化率を合計した塩化水素転化率としては、70〜95%が好ましい。
上記した触媒12,32およびアルミナ22は、通常、成形体として充填する。該成形体の形状としては、例えば球状(ボール状)、円柱状、リング状、無定形の粒状等が挙げられる。成形法としては、例えば押出成形法、打錠成形法、噴霧成形法等が挙げられ、成形後には、適当な大きさに粉砕分級してもよい。その際、成形体の直径を0.5〜10mmとするのが好ましい。直径が小さすぎると、第1反応器10,吸着・吸収器20および第2反応器30の差圧が上昇し、安定的な塩素の製造が困難になる。また、直径が大きすぎると、塩素の製造効率が低下するため好ましくない。前記直径とは、球状の場合は球の直径、円柱状の場合は断面の円の直径、その他の形状の場合は任意の断面の最長径を意味する。
一方、前記塩化水素の酸化反応は平衡反応であり、あまり高温で行うと平衡転化率が下がるため、比較的低温で行うのが好ましい。反応温度は、通常、100〜500℃、好ましくは200〜450℃である。
ここで、アルミナ22に吸着および/または吸収される硫黄成分は、温度に依存するため、触媒活性の変化により温度変更がなされる第1反応器10,第2反応器30と同じ温度制御手段で吸着・吸収器20の温度制御を行うと、硫黄成分の吸着および/または吸収量が変化するため好ましくない。したがって、前記第1ないし第3工程における各工程温度は、独立に制御するのが好ましい。すなわち、第1反応器10,吸着・吸収器20および第2反応器30は、それぞれ独立した温度制御手段によって温度制御を行うのが好ましい。前記温度制御手段としては、例えば独立に温度制御可能なジャケット、電気炉等が挙げられる。
特に、前記第2工程における工程温度、すなわち吸着・吸収器20の温度としては、250〜400℃であるのが好ましい。吸着・吸収器20の温度が250℃よりも低いと、硫黄酸化物と水蒸気を硫酸塩として吸着および/または吸収する効率が低下するので好ましくない。また、前記温度が400℃を越えると、吸着および/または吸収した硫酸塩が再び分解または脱着し、第2反応器30へ流れるため好ましくない。なお、反応圧力としては、通常、0.1〜5MPa程度である。
酸素源としては、空気を使用してもよいし、純酸素を使用してもよい。塩化水素に対する酸素の理論モル量は1/4モルであるが、通常、この理論量の0.1〜10倍の酸素が使用される。また、塩化水素、酸素と共に水蒸気を供給することが好ましい。塩化水素に対する水蒸気のモル比は0.01〜0.2倍が好ましい。
また、塩化水素の供給速度は、触媒1Lあたりのガス供給速度(L/h;0℃、1気圧換算)、すなわちGHSV(Gas Hourly Space Velocity)で表して、通常、10〜20000h-1程度である。塩化水素における硫黄成分の含有量としては、塩化水素に対して30体積ppm以下程度であり、好ましくは1体積ppm以下が適当である。
前記硫黄成分としては、例えば硫化カルボニル(COS)、二硫化炭素(CS2)、二酸化硫黄(SO2)、硫化水素(H2S)、硫酸ミスト、メチルメルカプタン(CH3SH)、エチルメルカプタン(C25SH)、硫化ジメチル((CH32S)、硫化ジエチル((C252S)、二硫化ジメチル(CH3SSCH3)、単体硫黄(S)等が挙げられる。
第1反応器10,第2反応器30の反応方式としては、いずれも流動床、固定床、移動床等の反応方式が採用可能であり、断熱方式および/または熱交換方式の固定床反応器が好ましい。第1反応器10,第2反応器30に固定床反応方式を用いる場合には、反応器をガス流通方向に対して直交する方向に複数分割し、異なる触媒充填域を有する形態で使用することもできる。各触媒充填域は、独立に温度制御可能なジャケットや電気炉で区切られていてもよい。第1反応器10,第2反応器30に熱交換方式の固定床反応器を用いる場合には、単管式固定床反応器、多管式固定床反応器のいずれも使用することができるが、多管式固定床反応器を好ましく使用することができる。
一方、吸着・吸収器20の反応方式としては、硫黄成分の吸着・吸収が吸着・吸収器の入口部から始まるため、流動性のない固定床が好ましく用いられる。吸着・吸収器20に固定床反応器を用いる場合には、単管式固定床反応器、多管式固定床反応器のいずれも使用することができる。
ガス流通方向に対して最上流、すなわち第1反応器10の上部には、予熱層を形成してもよい。これにより、第1反応器10の入口温度を所定温度に保つことが容易になり、効率的に塩素を製造することができる。予熱層は、例えばα−アルミナ等を充填することによって形成することができる。
以上、本発明にかかる好ましい実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更や改良したものにも適用できることは言うまでもない。例えば、第1反応器10に充填された触媒12は、硫黄成分による被毒を受けるため、その活性は徐々に低下する。活性が低下すると反応温度を上昇させる必要があるが、活性低下が大きくなると、反応温度の上昇では対応できない場合がある。そのような場合には、製造装置の構成を図2に示すような構成にするのが好ましい。
同図に示すように、この製造装置は、2つの第1反応器10a,10bを備えている。第1反応器10aの入口には、流路2a1が接続され、第1反応器10bの入口には、流路2b1が接続されている。そして、流路2a1,2b1のうちいずれか一方の流路にのみガスが流れるよう流路2a1,2b1の切り替えを行う流路切り替え手段として、バルブ3を備えている。
これにより、第1反応器10a,10bの切り替え運転が可能になる。すなわち、触媒12の活性に応じて第1反応器10a,10bの切り替えを行うことができるので、効率よく塩素を製造することができる。バルブ3を自動弁とし、該自動弁を制御する制御手段を設ければ、切り替えを自動で行うこともできる。
なお、第1反応器の切り替え運転を行う場合において、第1反応器の数は2つに限定されるものではなく、反応条件等に応じて任意の数を採用することができる。第1反応器の数としては、通常、2〜4つ程度が適当である。また、第1反応器10a,10bの各出口に接続された流路2a2,2b2は、互いに接続され1つの流路2となり、吸着・吸収器20の入口に接続されているが、前記流路は、互いに接続されることなく独立した状態で吸着・吸収器20の入口に接続されていてもよい。
具体例を挙げると、製造装置の構成を図3に示すような構成にすることもできる。同図に示すように、この製造装置は、3つの第1反応器10c,10d,10eを備えている。第1反応器10c,10d,10eの各入口には、流路2c1,2d1,2e1がそれぞれ接続されている。流路2c1,2d1,2e1には、それぞれバルブ3が備えられている。したがって、前記した図2に示す製造装置と同様に、第1反応器10c,10d,10eの切り替え運転が可能になる。また、第1反応器10c,10d,10eの各出口に接続された流路2c2,2d2,2e2は、互いに接続されることなく独立した状態で吸着・吸収器20の入口に接続されているが、前記流路は、互いに接続され1つの流路として吸着・吸収器20の入口に接続されていてもよい。その他の構成は、前記した一実施形態にかかる製造装置と同様である。
また、前記した一実施形態では、所定の計算で吸着・吸収器20に充填するアルミナ22の量を設定する場合について説明したが、吸着・吸収器20の容量が、上記計算から大きくなりすぎる場合には、製造装置の構成を図4に示すような構成にするのが好ましい。
同図に示すように、この製造装置は、2つの吸着・吸収器20a,20bを備えている。吸着・吸収器20aの入口には、流路4a1が接続され、吸着・吸収器20bの入口には、流路4b1が接続されている。そして、流路4a1,4b1のうちいずれか一方の流路にのみガスが流れるよう流路4a1,4b1の切り替えを行う流路切り替え手段として、バルブ5を備えている。これにより、吸着・吸収器20a,20bの切り替え運転が可能になる。
なお、吸着・吸収器の切り替え運転を行う場合において、吸着・吸収器の数は2つに限定されるものではなく、反応条件等に応じて任意の数を採用することができる。吸着・吸収器の数としては、通常、2〜4つ程度が適当である。また、吸着・吸収器20a,20bの各出口に接続された流路4a2,4b2は、互いに接続され1つの流路4となり、第2反応器30の入口に接続されているが、前記流路は、互いに接続されることなく独立した状態で第2反応器30の入口に接続されていてもよい(図3参照)。その他の構成は、前記した一実施形態にかかる製造装置と同様である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例中、含有量ないし使用量を表す部および%は、特記ない限り、重量基準である。また、以下の実施例中、ガスの供給速度である(ml/分)は、特記ない限り、0℃、1気圧の換算値である。
以下の実施例で使用した担持酸化ルテニウムの製造は、次の通りである。
[参考例]
(担体の調製)
まず、チタニア粉末〔昭和タイタニウム(株)製の「F−1R」、ルチル型チタニア比率93%〕100部と、有機バインダー2部〔ユケン工業(株)製の「YB−152A」〕とを混合し、次いで純水29部と、チタニアゾル〔堺化学(株)製の「CSB」、チタニア含有量40%〕12.5部とを加えて混練し、混合物を得た。
この混合物を直径3.0mmφのヌードル状に押出し、60℃で2時間乾燥した後、回転式ノンバブリングニーダー〔(株)日本精機製作所製の「NBK−1」〕を破砕機として使用し、長さ3〜5mm程度に破砕して成形体を得た。得られた成形体を、空気中で室温から600℃まで1.7時間かけて昇温した後、同温度で3時間保持して焼成した。
(担体へのケイ素化合物の含浸)
得られた焼成物の内100.0gに、オルトケイ酸テトラエチル〔和光純薬工業(株)製の「Si(OC254」〕3.55gをエタノール14.6gに溶解して調製した溶液を含浸させた。
前記(担体へのケイ素化合物の含浸)と同様の操作を合計8回繰り返し、合計934gの白色固体を得た。この白色固体を、空気雰囲気下、20〜30℃で20時間静置した。得られた固体808gを、空気雰囲気下、室温から300℃まで0.8時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、シリカの含有量が1.0%である白色のチタニア担体を得た。この担体は、該担体総量に対して99%の割合でチタニアを含有している。また、該担体に含有される前記チタニアにおいて、ルチル型チタニアの占める割合は90%以上である。
(担持酸化ルテニウムの製造)
上記で得られたチタニア担体100.0gに、塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製の「RuCl3・nH2O」、Ru含有量40.0%〕2.43gを純水22.1gに溶解して調製した水溶液を含浸させ、空気雰囲気下、20〜33℃で15時間以上静置して風乾した。得られた固体103.3gを、空気流通下、室温から250℃まで1.3時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成した。これにより、酸化ルテニウムの含有量が1.25%である青灰色の固体、すなわち担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなる担持酸化ルテニウム100.7gを得た。
そして、前記(担持酸化ルテニウムの製造)と同様の操作を合計8回繰り返し、合計806gの前記担持酸化ルテニウムを得た。
<触媒充填>
図5に示すように、第1反応器15,吸着・吸収器25,第2反応器35に、それぞれ触媒を充填した。各部材は、次の通りである。
第1反応器15:外径4mmの温度計鞘管が設けられた内径21mmの石英製反応器。
触媒17:前記参考例で得た担持酸化ルテニウム。
吸着・吸収器25:外径4mmの温度計鞘管が設けられた内径21mmの石英製反応器。
高比表面積アルミナ27:直径3mmφのγ−アルミナボール〔住友化学(株)製の「NKHD−24」、BET比表面積311m2/g、細孔容積0.45ml/g〕。
第2反応器35:外径4mmの温度計鞘管が設けられた内径21mmの石英製反応器。
触媒37:前記参考例で得た担持酸化ルテニウム。
仕切り材50:石英ウール。
α−アルミナボール51:ニッカトー(株)製の「SSA995」、BET比表面積0.1m2/g未満。
触媒充填は、以下のようにして実施した。先ず、第1反応器15下部に仕切り材50を充填した。次いで、この仕切り材50上に2.0gの触媒17を第1反応器15の上部開口から充填して触媒充填域16cを形成した。次いで、仕切り材50を充填した後、5.1gの触媒17を7.5gのα−アルミナボール51で希釈して充填し、触媒充填域16bを形成した。さらに、仕切り材50を充填した後、5.1gの触媒17を7.5gのα−アルミナボール51で希釈して充填し、触媒充填域16aを形成した。以上のように、第1反応器15は、矢印Aに示すガス流通方向に対して上流側から順に、触媒充填域16a〜16cの3つの充填域を有する構成とした。
次いで、吸着・吸収器25の充填を行った。先ず、吸着・吸収器25下部に仕切り材50を充填した。次いで、この仕切り材50上に1.1gの高比表面積アルミナ27を吸着・吸収器25の上部開口から充填し、アルミナ充填域26dを形成した。次いで、仕切り材50を充填した後、同様にして高比表面積アルミナ27を1.1g充填する操作を繰り返し、合計4層の高比表面積アルミナ27を積層した。以上のように、吸着・吸収器25は、ガス流通方向に対して上流側から順に、アルミナ充填域26a〜26dの4つの充填域を有する構成とした。
次いで、第2反応器35の充填を行った。先ず、第2反応器35下部に仕切り材50を充填した。次いで、この仕切り材50上に8.8gの触媒37を第2反応器35の上部開口から充填し、触媒充填域36を形成した。以上のように、第2反応器35は1つの触媒充填域を有する構成とした。
<塩素の製造>
上記のようにして触媒を充填した第1反応器15,吸着・吸収器25,第2反応器35をガス流通方向に対して上流側から順に流路1で直列に連結した。また、第1反応器15の最上部にα−アルミナボール〔ニッカトー(株)製の「SSA995」、BET比表面積0.1m2/g未満〕15.0gを充填することで予熱層52を形成した。
第1反応器15の触媒充填域16a,16bと、触媒充填域16cとを別々に温度制御可能な電気炉で加熱した。吸着・吸収器25,第2反応器35も、それぞれ電気炉で加熱した。そして、第1反応器15の入口から窒素ガスを矢印A方向に200ml/分の速度で第1反応器15内に供給しながら、各設備の温度を300℃にした。
次いで、窒素ガスの供給を停止し、第1反応器15内に酸素ガスを100ml/分(0.27モル/時間)、および水蒸気を3.2ml/分(0.009モル/時間)供給後、続けて塩化水素ガスを200ml/分(0.54モル/時間)、窒素で10ppmに希釈された硫化カルボニル(COS)ガスを12ml/分(COSとして0.32モルppm/時間)を供給し、反応圧力0.1MPaで塩素の製造を開始した。
第1反応器15出口の塩化水素転化率を60〜75%に維持しながら、第2反応器35出口の塩化水素転化率を85%程度に保ち、運転を継続した。第2反応器35出口の塩化水素転化率は、第1反応器15および第2反応器35を経た後の塩化水素転化率である。塩化水素転化率の測定方法は、以下に示す通りである。
(塩化水素転化率の測定方法)
第1反応器15出口,第2反応器35出口のガスをそれぞれ30%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを20分間行い、ヨウ素滴定法により塩素の生成量を測定し、塩素の生成速度(モル/時間)を求めた。求めた塩素の生成速度と、前記塩化水素ガスの供給速度とを下記式(II)に当てはめて、塩化水素の転化率を算出した。
Figure 0005281558
反応開始から1200時間経過し、第1反応器15の触媒充填域16a,16bの温度が約350〜370℃となった時点で運転を停止した。反応開始から1200時間の間の第1反応器15の触媒充填域16cおよび第2反応器35の温度は、320〜350℃の範囲を保つように運転し、吸着・吸収器25の温度は、約335℃で一定とした。
運転停止後、触媒17,高比表面積アルミナ27,触媒37を抜き出し、使用前と1200時間後の触媒17,高比表面積アルミナ27,触媒37における硫黄含有量を測定した。また、触媒17,37の抜き出し品の活性を評価した。硫黄含有量の測定方法および活性の評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
(硫黄含有量の測定方法)
先ず、所定量の微粉状の試料と、所定量の過酸化ナトリウムとをアルミナ製の坩堝に入れた後、該坩堝の下部をバーナーで加熱しながら振とうして、試料を溶融した。次いで、溶融した試料を放冷した後、所定量の純水および塩酸水により試料をビーカー内に洗いこみ、これを約60〜70℃で加熱溶解した。得られた溶液を放冷した後、メスフラスコにて定容した。この溶液中の硫黄成分の濃度をICP−AES法(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)により測定し、得られたデータより試料中の硫黄成分の含有量を算出した。なお、前記溶液中の硫黄成分の濃度は、予め作成した検量線に基づいて求めるため、前記各試剤/溶媒の使用量は、試料中の硫黄成分の含有量に応じ適宜調整される。
(触媒17,37抜き出し品の活性の評価方法)
先ず、上記で抜き出した触媒17,37の各1.0gを、直径2mmのα−アルミナボール〔ニッカトー(株)製の「SSA995」〕12gでそれぞれ希釈し、ニッケル製の反応管(内径14mm)に充填した。次いで、前記反応管上部に前記と同じα−アルミナボール12gを充填し、予熱層を形成した。次いで、前記反応管に、塩化水素ガスを0.214モル/時間(0℃、1気圧換算で4.8L/時間)、および酸素ガスを0.107モル/時間(0℃、1気圧換算で2.4L/時間)の速度で常圧下に供給し、触媒層を282〜283℃に加熱して反応を行った。反応開始1.5時間後の時点で、反応管出口のガスを30%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを20分間行い、ヨウ素滴定法により塩素の生成量を測定し、塩素の生成速度(モル/時間)を求めた。この塩素の生成速度と、上記の塩化水素の供給速度とを上記式(II)に当てはめて、塩化水素の転化率を算出し、触媒17,37抜き出し品の活性を評価した。
Figure 0005281558
表1から明らかなように、第1反応器15の触媒充填域16cと、第2反応器35の触媒充填域36とを比較すると、反応温度条件は同じで、第2反応器35の触媒37の硫黄含有量が少なく、触媒活性も高いことがわかる。また、吸着・吸収器25において、硫黄が多く吸着・吸収されていることから、第2反応器35への硫黄流出が抑制されているのがわかる。
先ず、前記実施例1と同様にして第1反応器15,吸着・吸収器25,第2反応器35に、それぞれ触媒を充填した。次いで、前記実施例1と同様にして塩素の製造を開始し、第1反応器15出口の塩化水素転化率を50〜70%に維持しながら、第2反応器35出口の塩化水素転化率を75%程度に保ち、運転を継続した。
反応開始から1200時間経過し、第1反応器15の触媒充填域16a,16bの温度が約350〜375℃となった時点で運転を停止した。反応開始から1200時間の間の第1反応器15の触媒充填域16cおよび第2反応器35の温度は、295〜300℃の範囲を保つように運転し、吸着・吸収器25の温度は、約300℃で一定とした。
運転停止後、触媒17,高比表面積アルミナ27,触媒37を抜き出し、使用前と1200時間後の触媒17,高比表面積アルミナ27,触媒37における硫黄含有量を前記実施例1と同様にして測定した。また、触媒17,37の抜き出し品の活性を前記実施例1と同様にして評価した。これらの結果を表2に併せて示す。
Figure 0005281558
実施例2は、実施例1より第1反応器15出口および第2反応器35出口における塩化水素転化率を低くし、第1反応器15の触媒充填域16cおよび第2反応器35の触媒充填域36の反応温度条件を低くして塩素を製造した。
その結果、表2から明らかなように、第2反応器35の触媒充填域36が、第1反応器15の触媒充填域16cより硫黄含有量が少なく、触媒活性も高い結果を示した。また、吸着・吸収器25において、硫黄が多く吸着・吸収されていることから、第2反応器35への硫黄流出が抑制されているのがわかる。
先ず、前記実施例1と同様にして第1反応器15,吸着・吸収器25,第2反応器35に、それぞれ触媒を充填した。次いで、前記実施例1と同様にして塩素の製造を開始し、第1反応器15出口の塩化水素転化率を50〜70%に維持しながら、第2反応器35出口の塩化水素転化率を85%程度に保ち、運転を継続した。
反応開始から1200時間経過し、第1反応器15の触媒充填域16a,16bの温度が約330〜355℃となった時点で運転を停止した。反応開始から1200時間の間の第1反応器15の触媒充填域16cの温度は360〜375℃、第2反応器35の温度は340〜365℃の範囲を保つように運転し、吸着・吸収器25の温度は、約365℃で一定とした。
運転停止後、触媒17,高比表面積アルミナ27,触媒37を抜き出し、使用前と1200時間後の触媒17,高比表面積アルミナ27,触媒37における硫黄含有量を前記実施例1と同様にして測定した。また、触媒17,37の抜き出し品の活性を前記実施例1と同様にして評価した。これらの結果を表3に併せて示す。
Figure 0005281558
実施例3は、実施例1より第1反応器15出口の塩化水素転化率を低くし、第1反応器15の触媒充填域16cおよび第2反応器35の触媒充填域36の反応温度条件を高くして塩素を製造した。また、第1反応器15の触媒充填域16cにおける反応温度条件と、第2反応器35の触媒充填域36における反応温度条件とが、互いに異なるよう設定した。
その結果、表3から明らかなように、第2反応器35の触媒充填域36が、第1反応器15の触媒充填域16cより硫黄含有量が少なく、触媒活性も高い結果を示した。また、吸着・吸収器25において、硫黄が多く吸着・吸収されていることから、第2反応器35への硫黄流出が抑制されているのがわかる。
1 流路
10,15 第1反応器
11,31 触媒充填層
12,17,32,37 触媒
16a〜16c,36 触媒充填域
20,25 吸着・吸収器
21 アルミナ充填層
22 アルミナ
26a〜26d アルミナ充填域
27 高比表面積アルミナ
30,35 第2反応器
50 仕切り材
51 α−アルミナボール
52 予熱層

Claims (14)

  1. 塩化水素含有ガス中の塩化水素を酸素含有ガス中の酸素で酸化して塩素を製造する方法であって、前記塩化水素含有ガスおよび酸素含有ガスのうち少なくとも一方が硫黄成分を含み、かつ以下の第1〜第3工程を含むことを特徴とする塩素の製造方法。
    第1工程:触媒の存在下、前記塩化水素および硫黄成分を酸素で酸化する工程。
    第2工程:前記第1工程で得られた硫黄酸化物をアルミナに吸着および/または吸収させる工程。
    第3工程: 触媒の存在下、前記第2工程で脱硫黄処理された反応ガス中の未反応の塩化水素を酸素で酸化して塩素を得る工程。
  2. ガス流通方向に対して上流側から順に、前記第1工程で用いる触媒充填層と、前記第2工程で用いるアルミナ充填層と、前記第3工程で用いる触媒充填層と、が直列に接続されてなる請求項1記載の製造方法。
  3. 前記第1工程の触媒が、銅を含有する触媒、クロムを含有する触媒、およびルテニウムを含有する触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の製造方法。
  4. 前記ルテニウムを含有する触媒が、担体に酸化ルテニウムが担持されてなる担持酸化ルテニウムである請求項3記載の製造方法。
  5. 前記ルテニウムを含有する触媒が、担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなる担持酸化ルテニウムである請求項3記載の製造方法。
  6. 前記第1工程での塩化水素転化率が5〜80%である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記第3工程の触媒が、担体に酸化ルテニウムが担持されてなる担持酸化ルテニウムである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記第3工程の触媒が、担体に酸化ルテニウムおよびシリカが担持されてなる担持酸化ルテニウムである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記第1ないし第3工程における各工程温度を独立に制御する請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記第2工程における工程温度が250〜400℃である請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 前記第1工程および第3工程で使用される反応器の少なくとも一方が、断熱式または熱交換式の固定床反応器である請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 塩化水素含有ガスおよび酸素含有ガスのうち少なくとも一方が硫黄成分を含むとともに、前記塩化水素を酸素で酸化して塩素を製造する装置であって、
    前記塩化水素および硫黄成分を酸素で酸化する触媒充填層を有する第1反応器と、
    前記第1反応器で得られた硫黄酸化物を吸着および/または吸収させるアルミナ充填層を有する吸着・吸収器と、
    前記吸着・吸収器で脱硫黄処理された反応ガス中の未反応の塩化水素を酸素で酸化して塩素を得る触媒充填層を有する第2反応器と、を備え、
    ガス流通方向に対して上流側から順に、前記第1反応器と、前記吸着・吸収器と、前記第2反応器と、を直列に接続することを特徴とする塩素の製造装置。
  13. 前記第1反応器を複数備え、
    各第1反応器の入口にそれぞれ接続される流路と、
    各流路のうち任意の流路にガスが流れるよう各流路の切り替えを行う手段と、を更に備える請求項12記載の製造装置。
  14. 前記吸着・吸収器を複数備え、
    各吸着・吸収器の入口にそれぞれ接続される流路と、
    各流路のうち任意の流路にガスが流れるよう各流路の切り替えを行う手段と、を更に備える請求項12または13記載の製造装置。
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