JP5279413B2 - ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、良好な寸法性および融着性を有する型内発泡成形体を幅広い成形加工条件で得ることが可能となるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂型内発泡成形体と比較して、耐薬品性能、耐熱性能、緩衝性能、圧縮歪み回復性能に優れ、ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体と比較しても、耐熱性能、圧縮強度に優れることから、緩衝包装資材や通い箱、自動車用部材として広く用いられている。
特に、様々な形状の緩衝包装資材として、内包する商品や部材の形状に合わせて柔軟に、かつ切削加工無しで成形できることから、電子機械から産業資材など幅広く利用されている。
しかし、様々な形状に成形できるとはいえ、所謂“薄肉”形状と呼ばれる、予備発泡粒子が厚み方向に数個程度しか入らないような厚さが薄く狭い形状や、予備発泡粒子の充填が不十分となりやすいような複雑形状がある型内発泡成形体を得ようとする場合、満足な形状を得ることが困難な場合もある。さらに、当該箇所においては緩衝性能や強度が十分に得られなかったり、予備発泡粒子同士の粒間が開き、美麗性を損ねるために、形状設計に大きな制約となっていた。ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いた型内発泡成形では、一般的に、樹脂融点温度が低い原料を使用すると、蒸気加熱した際の二次発泡性(二次発泡倍率)が高くなりやすくなる為、薄肉形状を成形する場合に、融点の低いポリプロピレン系樹脂を使用することは、前記課題を解決するための一手段となりうる。しかし、この場合、成形後の型内発泡成形体の収縮からの回復が十分でない場合が多く、箱形の型内発泡成形体を目的とした成形では、いわゆる“内倒れ”と呼ばれる現象が発生しやすい。内倒れとは、例えば図1および図2に示すような箱形型内発泡成形体において、図1における端部寸法(c)と中央部寸法(b)の差が生じることをいい、この差は、個々の製品サイズによって絶対的な数値は変わるが、内倒れが大きい場合、製品として使用できない不良品となる。そのため収縮からの回復時間を長くするなどして内倒れを小さくすることが行われるが、回復時間を長くすると生産性が低下する。
また、発泡粒子同士の融着を満足させつつ型内発泡成形体形状を所望の形状とするための加熱蒸気圧力の範囲等の成形条件幅がポリスチレンなどと比べて狭いため、成形時の加熱蒸気圧力の調整や加熱時間の調整、さらには冷却時間の調整などのユーザーの成形技術の熟練を要する。すなわち、従来のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を蒸気加熱により成形する場合、加熱蒸気圧力を高くすると融着性および薄肉部や複雑形状部位の表面美麗性は良化するが、前記の内倒れや、収縮が大きくなりやすいといった寸法性悪化と共に蒸気使用量の増加など経済性も損ね、反対に加熱蒸気圧力を低くすると、内倒れや収縮は減少し寸法性は良化するが、融着性および薄肉部や複雑形状部位の表面美麗性は悪化してしまう。
これまでは、寸法性、表面美麗性および融着性のバランスのとれた良品の型内発泡成形体を得るために成形加工条件を厳密に管理することが要求され、そのために労力が必要であり、幅広い加熱蒸気圧力幅、すなわち成形加工条件幅を有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が望まれていた。また、薄肉部や複雑形状部位の表面美麗性を有する型内発泡成形体を得るために低融点樹脂を原料として使用して従来の製造方法で予備発泡粒子を製造した場合、内倒れや収縮が大きくなりやすく、内倒れや収縮の少ない型内発泡成形体を得るために高融点樹脂を原料として使用して従来の製造方法で予備発泡粒子を製造した場合、薄肉部や複雑形状部位の表面美麗性や予備発泡粒子同士の融着性が損なわれたりする場合が多かった。つまり、基材樹脂の選択のみでは充分な成形加工条件幅を有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得られていなかった。
特許文献1では、メルトインデックスが6〜10g/10minのポリプロピレン系樹脂と0.5〜3g/10minのポリプロピレン系樹脂を混合し、良好な表面美麗性、寸法性を有する予備発泡粒子を製造する方法が開示されているが、成形加工条件幅改善には効果が見られない。
特許文献2では、融点温度差が15℃以上30℃以下の2種類のポリプロピレン系樹脂を混合し、幅広い成形加工条件で良好な表面美麗性、寸法性を有する予備発泡粒子が開示されている。しかしながら、混合する2種類のポリプロピレン系樹脂のうち、より低い融点を有するポリプロピレン系樹脂の融点が145℃を超えるようになると、融着性が不十分になる。
特許文献3では、樹脂融点が140℃以下のポリプロピレン系樹脂と145℃以上のポリプロピレン系樹脂を混合し、有機過酸化物によりメルトインデックスを調整することで、良好な二次発泡性、表面性および寸法性を有する予備発泡粒子が開示されている。しかし、混合する2種類のポリプロピレン系樹脂の融点温度差が15℃未満であるならば、成形加工条件幅が狭くなってしまう。
また、これらの従来技術においては、除圧発泡時の条件として、ポリプロピレン系樹脂粒子の基材樹脂の融点を基準とした温度幅が開示されてきているが、当該温度域にて発泡させることと、予備発泡粒子を型内発泡成形する場合の成形加工条件の幅との関連について言及されたものはない。
以上の様に従来技術の範疇では、幅広い成形加工条件で、寸法性が良好かつ表面美麗な型内発泡成形体を得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造する方法は見いだされていなかった。
特開2000−327825号公報 特開2006−96805号公報 WO2006/054727号公報
本発明の目的は、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を幅広い成形加工条件で、寸法性に優れかつ良好な表面性を有する型内発泡成形体を製造できるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供することにある。
本発明者らは前記実情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。即ち、一般的に、型内発泡成形に用いられるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、示差走査熱量測定において、2つの融解ピークを示すが、型内発泡成形時には、低温側融解ピークに基づく結晶樹脂が溶融することで、成形時の予備発泡粒子同士の融着に寄与し、一方、高温側融解ピークに基づく結晶樹脂は、形状を保持し、寸法安定性を発現するための役割を果たすと考えることができる。この、2つの融解ピーク温度を制御することで、幅広い成形加工条件で複雑形状を有する型内発泡成形体を容易に得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の特性を見出した。
融解ピーク温度を制御する手段としては、140℃以下の融解ピークを有するポリプロピレン系樹脂に所定量の160℃以上の高融点ポリプロピレン系樹脂を混合した樹脂を基材樹脂とし、さらに、ポリエチレングリコールを特定量添加してなるポリプロピレン系樹脂粒子を、所定温度にて当該基材樹脂をアニーリングすることにより、成形加工条件幅が広く、且つ、型内発泡成形体の表面における皺や、アバタといわれる粒間の局所的な陥没の発生がない表面性が良好な型内発泡成形体が得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1は、140℃以下の樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂(A)85重量%以上99重量%以下と160℃以上の樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂(B)1重量%以上15重量%以下を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物(X)100重量部に対して、ポリエチレングリコールを0.01重量部以上5重量部以下添加してなるポリプロピレン系樹脂粒子を、示差走査熱量計法におけるポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピークの終点温度+1℃以下の温度で、水系分散媒中にてアニーリングすることにより製造されることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
好ましい態様としては、前記製造方法によって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、示差走査熱量計法で、40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線において、2つの融解ピークを有し、高温側融解ピーク温度が150℃以上、かつ、低温側融解ピーク温度が140℃未満であり、高温側融解ピーク熱量の融解ピーク全体熱量に対する比率が10%以上50%以下であり、発泡倍率が5倍以上45倍以下であることを特徴とする前記記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
本発明の第2は、前記記載の製造方法によって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形してなるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に関する。
本発明の製造方法によって、金型寸法に対する変形量が少なく融着性が良好な型内発泡成形体を幅広い成形加工条件で製造できるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造することが出来る。さらに、本発明の製造方法により得たポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、均一セル構造を有する。これにより、表面性が良好な型内発泡成形体を得ることが可能となる。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、単量体として、プロピレンを80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものであれば、その組成、合成法に特に制限はなく、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体などが挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の基材樹脂となるポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、140℃以下の樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂(A)と160℃以上の樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂(B)を含んでなる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)は樹脂融点が140℃以下であり、好ましくは139℃以下である。ポリプロピレン系樹脂(A)はポリプロピレン系樹脂組成物(X)中、85重量%以上99重量%以下であり、90重量%以上99重量%以下であることが好ましい。85重量%未満である場合、アニーリング時の温度が高温化しセル構造が不均一になりやすく型内発泡成形体の表面性が悪化する。99重量%を越えると、収縮などによる寸法性悪化や内倒れ現象が発生する。ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を形成するポリプロピレン系樹脂組成物(X)中において、ポリプロピレン系樹脂(A)は、蒸気加熱による融解・粒子同士の融着および二次発泡に大きく寄与する低温側融解ピークに強く影響する。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(B)は、樹脂融点が160℃以上であり、好ましくは161℃以上である。ポリプロピレン系樹脂(B)はポリプロピレン系樹脂組成物(X)中、1重量%以上15重量%以下であり、1重量%以上10重量%以下が好ましい。1重量%未満である場合、内倒れ現象が発生しやすく、15重量%を越えるとアニーリング時の温度が高温化しセル構造が不均一になりやすく型内発泡成形体の表面性が悪化する。ポリプロピレン系樹脂(B)は、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を形成するポリプロピレン系樹脂組成物(X)中において、蒸気加熱中で形状保持・寸法性に大きく寄与する高温側融解ピークに強く影響する。
ポリプロピレン系樹脂(B)は、ポリプロピレン単独重合体であることが、樹脂融点160℃以上を達成しやすいため好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)を含んでなる本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、樹脂融点が130℃以上160℃以下であることが好ましく、更には130℃以上155℃以下であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の樹脂融点が当該範囲内であると、良好な二次発泡性と寸法性を両立しやすく、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子としたときに高温側融解ピーク温度が150℃以上および低温側融解ピーク温度が140℃未満の特性を達成しやすい。
ここで、ポリプロピレン系樹脂(A)、(B)、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の樹脂融点は、示差走査熱量計法(DSC)において、試料1〜10mgを40℃から210℃まで10℃/分の速度で昇温し、当該温度で5分間保持後、ついで210℃から40℃まで10℃/分の速度で降温し、当該温度で5分間保持後、再度40℃から210℃まで10℃/分の速度で昇温したときに得られる融解ピークのピーク温度である。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物(X)のメルトインデックス(MIと表記する場合がある)は3g/10min以上20g/10min以下であることが好ましく、3g/10min以上15g/10min以下であることがより好ましい。メルトインデックスが当該範囲である場合、高い二次発泡性と良好な寸法性の両立が容易となる傾向がある。メルトインデックスの測定は、JIS−K7210記載のMFR測定装置を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。
メルトインデックスは、例えば、有機過酸化物の使用などにより調整してもよい。使用できる有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどがあげられる。
また、ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で添加して、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)としても良い。ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂、或いはポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂等が例示される。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、ポリプロピレン系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)を一緒に、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状で、その粒重量が好ましくは0.2〜10mg、更に好ましくは0.5〜6mgであるようなポリプロピレン系樹脂粒子に成形加工される。
また、この際、必要に応じて、例えば、タルク等の造核剤をはじめ酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸などの安定剤または架橋剤、連鎖移動剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化剤、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤等を本発明の効果を損なわない範囲でポリプロピレン系樹脂組成物(X)に添加してポリプロピレン系樹脂粒子としてもよい。
本発明ではポリプロピレン系樹脂粒子となったポリプロピレン系樹脂組成物(X)を、水系分散媒中にて、例えば、発泡剤と共に耐圧容器内で分散させ、アニーリング温度を140℃以下の樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピークの終点温度+1℃以下でアニーリングさせる。
当該温度を超えた温度でアニーリングを行うと、セル構造が不均一化し型内発泡成形体の表面性を悪化させる。この理由は不明であるが、当該温度を超えた温度でアニーリングすると低融点ポリプロピレン系樹脂(A)は主として溶融状態になると考えられる。その結果、主として溶融している低融点ポリプロピレン系樹脂(A)と、主として結晶状態である高融点ポリプロピレン系樹脂(B)は均一混合状態から各成分が分離した状態になり、高融点ポリプロピレン系樹脂(B)成分が多いドメインではラメラ結晶同士を結ぶ分子により擬似的架橋効果を発現しやすく、その結果高張力を保ちセルが微細となり、一方で、低融点ポリプロピレン系樹脂(A)成分が多いドメインではラメラ結晶が溶融することで擬似的架橋効果を発現しにくく低張力となりセルが粗大となることでセル径の不均一化が生じる可能性があると推測される。
アニーリングの温度は、好ましくは129℃以上、より好ましくは、130℃以上の温度であり、アニーリングの時間は、好ましくは、5〜180分間、より好ましくは10〜60分間である。
本発明におけるアニーリングとは、ポリプロピレン−ラメラ結晶を成長(厚化)させるプロセスを指し、温度変動を±0.05℃以下に抑えて、温度を保持するプロセスである。高いアニーリング温度や長時間のアニーリング、可塑化性能を有する発泡剤の量が多ければ、高温側融解ピーク温度は高温となりやすくなり、アニーリング時間が長くなるほどに高温側融解ピークの結晶熱量は増加する傾向がある、本発明においては、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)に160℃以上の樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂(B)を所定量含有させることにより、比較的短い時間で、高温側融解ピークをより高温に出現させることが可能となる。
ここで、ポリプロピレン系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の融解ピークの終点温度とは、前出のポリプロピレン系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の樹脂融点の測定において得られる融解ピークにおいて、吸収熱量測定ベースラインとなる低温から高温までの接線とDSC曲線の高温側の交点である温度をいう。
このとき、ポリプロピレン系樹脂粒子内に発泡剤を含浸させ、発泡剤の示す蒸気圧以上で、所望の発泡倍率を得るための適宜な圧力で容器内を一定に保持しながら、ポリプロピレン系樹脂粒子と水系分散媒との分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が得られる。
本発明において水系分散媒とは、水を主体としたものであり、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル等の親水性有機溶媒を含有していてもよい。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)を水系分散媒に分散させるにあたって、必要に応じて、分散剤、分散助剤を使用しても良い。
分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン等の無機系分散剤、分散助剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、n−パラフィンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。これらの中でも第三リン酸カルシウムとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの併用が更に好ましい。
分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水系分散剤100重量部に対して分散剤0.2重量部以上3重量部以下、分散助剤0.001重量部以上0.1重量部以下を配合することが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂粒子は、水系分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、水100重量部に対して20重量部以上100重量部以下使用するのが好ましい。
本発明において用いることのできる発泡剤としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等脂肪族炭化水素、モノクロルメタン、ジクロロメタン、ジクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、空気、水等の無機ガスが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を併用して用いることが出来る。発泡剤の添加量はポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率、発泡剤の種類、ポリプロピレン系樹脂の種類、ポリプロピレン系樹脂粒子と水の比率、含浸または発泡温度などによって異なるが、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対し、5重量部以上50重量部以下であることが好ましい。
また、発泡剤として無機ガスを使用する場合、発泡倍率を高めるために吸水性物質を、本発明を損なわない範囲でポリプロピレン系樹脂組成物(X)に添加して、ポリプロピレン系樹脂粒子としても良い。
本発明における吸水性物質とは、一般に吸水性、吸湿性、水への溶解性あるいは相溶性があるものをいい、このような物質としては、吸水性ポリマー、吸水性有機物、吸水性無機物などが挙げられる。これら吸水性物質の内、発泡核形成作用の無いものは、その添加量を増加させて発泡倍率を高めた場合でも平均気泡径の大幅な低下が無いことから好ましい。
吸水性ポリマーとしては、具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコールブロックを含む共重合体(例えば三洋化成工業株式会社の商品名ペレスタット)、などが挙げられる。
また吸水性有機物としては、具体的には、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール鎖を有する化合物;メラミン(化学名1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)、アンメリン(同1,3,5−トリアジン−2−ヒドロキシ−4,6−ジアミン)、アンメリド(同1,3,5−トリアジン−2,4−ヒドロキシ−6−アミン)、シアヌル酸(同1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオール)、イソシアヌル酸(同1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン)、アセトグアナミン(同1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン−6−メチル)、ベンゾグアナミン(同1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン−6−フェニル)、トリス(メチル)イソシアヌレート、トリス(エチル)イソシアヌレート、トリス(ブチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、メラミン・イソシアヌル酸縮合物などのトリアジン骨格を有する化合物;
脂肪族アミン塩、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルアミノ酸塩などのアニオン系界面活性剤;
アルキルおよびアルキルアリルポリオキシエチレンエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、高級脂肪酸グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、脂肪族アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アミンオキシドなどのノニオン系界面活性剤;カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミノカルボン酸塩などの両性界面活性剤;などが挙げられる。
また吸水性無機物としては、具体的には、ゼオライト、ベントナイト、合成ヘクトライト(ラポナイト)などが挙げられる。これらの吸水性物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いても良い。
これらの中でも、好ましい吸水性物質として、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物が挙げられ、とりわけ、ポリエチレングリコールであることが好ましい。
さらには、平均分子量が200以上9000以下であるポリエチレングリコールであることが好ましく、最も好ましくは平均分子量が200以上600以下のポリエチレングリコールである。一般に、グリコール類はポリプロピレン系樹脂への相溶性にやや劣る特性があるが、平均分子量200以上9000以下といった比較的分子量の小さいポリエチレングリコールに関しては、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレングリコールを押出機にて混練、ストランドカット法にてポリプロピレン系樹脂粒子を作製する工程での分散不良によるストランド切れや、溶融樹脂の送り不安定などのトラブルの発生が少ない傾向がある。なお、分子量が異なるポリエチレングリコールを混合使用することも可能である。
また、ポリエチレングリコールの平均分子量は、液体クロマトグラフ質量分析装置(たとえばサーモフィッシャーサイエンティフィック製LCQアドバンテージ)を使用し、測定できる。
本発明の吸水性物質の添加量は、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)100重量部に対し、0.01重量部以上5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは、0.03重量部以上3重量部以下である。添加量の調整により、発泡倍率を変化させることが可能であり、添加量が0.01重量部未満であると、水あるいは炭酸ガスによる発泡倍率向上作用が小さくなる傾向がある。一方、添加量が5重量部を超えると、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の収縮が生じ易くなり、ポリプロピレン樹脂中への吸水性物質の分散が不十分となる傾向がある。
以上のようにして得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、5倍以上45倍以下であることが好ましく、より好ましくは10倍以上40倍以下である。発泡倍率が当該範囲内であると、型内発泡成形加工した発泡体の利点である軽量性と満足な圧縮強度が得られる傾向がある。
また、一旦5倍以上20倍以下のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造し、該ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を密閉容器内に入れて窒素、空気などを含浸させる加圧処理によりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子内の圧力を常圧よりも高くした後、該ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子をスチーム等で加熱して更に発泡させる、いわゆる二段発泡等の方法で25倍以上45倍以下のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子としても良い。
ここで発泡倍率は、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の重量とポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子をメスシリンダー中のエタノールに水没させてえられる容積からポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子密度を算出し、基材樹脂密度を除したものである。
また、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のセル径は50μm以上1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上750μm以下であり、さらに好ましくは、100μm以上500μmである。当該範囲内のセル径であると、成形性や寸法安定性が高い傾向がある為、好ましい。
セル径とはポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の中から任意に30個のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を取り出し、JIS K6402に準拠してセル径を測定し、算出される平均セル径である。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、示差走査熱量測定(DSC)で、試料1〜10mgを40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線において、2つの融解ピークを示す。
そして、2つの融解ピークのうち、低温側に現れる融解ピークのピーク温度を低温側融解ピーク温度(以下、Tと表記する場合がある)、低温側融解ピークより高温側に現れる融解ピークのピーク温度を高温側融解ピーク温度(以下、Tと表記する場合がある)と称す。
本発明においては、高温側融解ピーク温度(T)が好ましくは150℃以上であり、より好ましくは、Tが152℃以上である。Tが150℃未満である場合、型内発泡成形における加熱時の形状保持や寸法安定性を発現するための役割を果たす結晶が成形時に融解されやすく大きく内倒れしたり、収縮が大きくなるなど、型内発泡成形体の品質が低下する傾向がある。
高温側融解ピーク温度(T)は、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)中の高融点ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量や、アニーリングする際の温度や時間、さらには可塑化性能を有する発泡剤の量等で調整することが出来る。
低温側融解ピーク温度(T)は、好ましくは140℃未満である。Tが140℃以上である場合、発泡倍率20倍以上の比較的高発泡での成形時の融解結晶量が少なくなりやすく、発泡粒子同士の融着能や複雑形状や鋭角なエッジ部分の“型決まり”が悪くなりやすい傾向がある。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の示差走査熱量計法による測定において、2つの融解ピークのうち低温側融解ピークに基づく融解ピーク熱量(Ql(J/g))と高温側融解ピークに基づく融解ピーク熱量(Qh(J/g))としたときに、高温側融解ピークに基づく融解ピーク熱量の融解ピーク全体熱量に対する比率(Qh/(Ql+Qh)×100)(以下、DSCピーク比と称す場合がある)が、10%以上50%以下であることが好ましく、15%以上45%以下であることがより好ましい。DSCピーク比が当該範囲内にある場合、本発明の効果である幅広い成形加工条件幅を得やすくなる。
ここで、低温側融解ピークに基づく融解ピーク熱量(Ql)と高温側融解ピークに基づく融解ピーク熱量(Qh)を、図3を用いて説明すると、低温側融解ピークに基づく融解ピーク熱量(Ql)は、低温側融解ピークと高温側融解ピークの間の極大点から融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量であり、高温側融解ピークに基づく融解ピーク熱量(Qh)は、低温側融解ピークと高温側融解ピークの間の極大点から融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量を言う。
本発明のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形することにより得られる。
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形体にするには、例えば、イ)発泡粒子を無機ガスで加圧処理して粒子内に無機ガスを含浸させ所定の粒子内圧を付与した後、金型に充填し、蒸気等で加熱融着させる方法(特公昭51−22951号公報)、ロ)発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し粒子の回復力を利用して、蒸気等で加熱融着させる方法(特公昭53−33996号公報)等の方法が利用しうる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度は、0.012〜0.075g/cmの範囲であることが好ましい。当該範囲の密度であるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、型内発泡成形体の特徴である軽量性を有し、かつ、型内発泡成形時に収縮、変形が起こりにくく、不良品の割合が低いため生産性が良好である傾向にある。
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率と型内発泡成形時の2次発泡倍率を適宜調整することで所望とする密度のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得ることが出来る。
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(発泡倍率測定)
試料となるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の重量を測定後、該試料をメスシリンダー中でエタノールに浸漬し、次式より算出した。
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の倍率=0.9(樹脂密度(g/cm))/(予備発泡粒子重量(g)/予備発泡粒子容積(cm
(セル径の均一性評価)
試料となるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を無作為に10粒抽出し、該断面を光学顕微鏡で観察し、目視により下記基準によって評価した。
○:セル構造が10粒中9粒以上で、図4のような均一構造を示し、10粒中1粒以下で、図5のような粗大セルと微細セルが混在した不均一構造を示している
△:セル構造が10粒中6粒以上8粒以下で、図4のような均一構造を示し、10粒中2粒以上4粒以下で、図5のような粗大セルと微細セルが混在した不均一構造を示している
×:セル構造が10粒中5粒以下で、図4のような均一構造を示し、10粒中5粒以上で、図5のような粗大セルと微細セルが混在した不均一構造を示している。
(成形評価)
成形評価では、図1および図2に示す形状の金型(成形体設計外形寸法 c×d×e=353mm×327mm×180mm、f=135mm、g=122mm、h=70mm、薄肉部寸法 103mm×153mm×5mm)を用いて、加熱水蒸気圧力0.20および0.31MPa(G)で成形を実施し、薄肉部表面aおよび変形量(c−b)(長手方向端部と長手方向中央部との寸法差)、融着性を評価した。
(1)表面性
0.20もしくは0.31MPa(G)の水蒸気加熱により成形した型内発泡成形体表面について、目視により下記基準によって評価した。
○:型内発泡成形体表面に現れるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の輪郭全てが隣り合った粒子と融着し、表面aのエッジ部分の型決まりが良好であり、型内発泡成形体の表面全体に皺および粒間の局所的な陥没(アバタ)が見られない
×:ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子間に隙間が見られるなど、エッジ部分の型決まりが不良であり、型内発泡成形体の表面全体に皺もしくはアバタが発生している。
(2)寸法性
0.20もしくは0.31MPa(G)の水蒸気加熱により成形した後、室温で3時間静置し、次いで75℃に温調した恒温室内に4時間静置した後、取り出し、25℃に温調した恒温室内で放冷した型内発泡成形体2試験体の寸法(b)と(c)を測定・平均化し、変形量(c−b)を求めた。変形量(c−b)の値が、0.31MPa(G)の際に11.0mm以下、0.20MPa(G)の際に7.0mm以下となる成形体を寸法性が良好と判断した。
(3)融着性
型内発泡成形体を破断させて断面を観察し、下記基準によって評価した。
○:予備発泡粒子が破断している割合が60%以上
×:予備発泡粒子が破断している割合が60%未満
(実施例1−4)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(密度0.9g/cm、MI2.0g/10min、樹脂融点139.0℃)100重量部に有機過酸化物(日本油脂株式会社製 製品名パーブチルI)0.07重量部を用いて、エチレン−プロピレンランダム共重合体(密度0.9g/cm、MI7.0g/10min、樹脂融点139.0℃)のポリプロピレン系樹脂(A)を得、該樹脂(A)にプロピレン単独重合体(B)(密度0.9g/cm、MI6.5g/10min、樹脂融点164.2℃)を表1に示す割合でもって二軸押出機で混合してなる樹脂100重量部にパウダー状タルク0.005重量部をブレンドし、該ブレンド物を単軸押出機にて押し出し、1.3mgの樹脂粒子とした。耐圧容器に該樹脂粒子100重量部、水300重量部、分散剤として第3リン酸カルシウム3.0重量部およびノルマルパラフィンスルホン酸ソーダ0.075重量部を仕込んだ後、該水系分散物を攪拌しながら発泡剤としてイソブタン15重量部を添加し、表2のアニーリング温度にまで昇温した。このとき、ガス状のイソブタンを追加して容器内圧を表2に示す保持圧力になるように調整し、30分間温度を保持した後、耐圧容器下部に設けた小孔ノズルに取り付けた直径4mmの円形オリフィスを通して、該水系分散物を大気圧下に放出し、表2に示す発泡倍率およびDSCピーク比を有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。
次に得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を1m耐圧容器に仕込み、空気で加圧処理し、空気を含浸させポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の内圧を0.2MPaに高めた後、加熱蒸気圧力0.20および0.31MPa(G)で成形し、75℃の乾燥室で4時間乾燥後、25℃の恒温室で12時間養生したところ、表面性、寸法性、融着性ともに良好なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができた。結果を表3に示す。
(実施例5)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(密度0.9g/cm、MI6.0g/10min、樹脂融点137.1℃)のポリプロピレン系樹脂(A)95重量部に実施例1〜4で用いたプロピレン単独重合体(B)5重量部を二軸押出機で混合してなる樹脂100重量部にポリエチレングリコール(平均分子量300)0.5重量部およびパウダー状タルク0.035重量部をブレンドし、該ブレンド物を二軸押出機にて押し出し、1.2mgの樹脂粒子とした。耐圧容器に該樹脂粒子100重量部、水265重量部、分散剤として第3リン酸カルシウム1.5重量部およびノルマルパラフィンスルホン酸ソーダ0.075重量部を仕込んだ後、該水系分散物を攪拌しながら発泡剤として二酸化炭素6重量部を添加し、表2のアニーリング温度にまで昇温した。このとき、ガス状の二酸化炭素を追加して容器内圧を表2に示す保持圧力になるように調整し、30分間温度を保持した後、耐圧容器下部に設けた小孔ノズルに取り付けた直径4mmの円形オリフィスを通して、該水系分散物を大気圧下に放出し、発泡倍率15.0倍のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を1m耐圧容器に仕込み、空気で加圧処理し、空気を含浸させ、該発泡粒子をスチームで加熱することで、表2に示す発泡倍率およびDSC比を有するポリプロピレン系樹脂二段発泡予備発泡粒子を得た。
該ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて実施例1〜5と同様な方法により、加熱蒸気圧力0.20および0.31MPa(G)で成形し、75℃の乾燥室で4時間乾燥後、25℃の恒温室で12時間養生したところ、表面性、寸法性、融着性ともに良好なポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得ることができた。結果を表3に示す。
(比較例1)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(密度0.9g/cm、MI2.0g/10min、樹脂融点136.6℃)100重量部に有機過酸化物(日本油脂株式会社製 製品名パーブチルI)0.07重量部を用いて、エチレン−プロピレンランダム共重合体(密度0.9g/cm、MI7.0g/10min、樹脂融点136.6℃)のポリプロピレン系樹脂を得、該樹脂100重量部にパウダー状タルク0.005重量部をブレンドし、該ブレンド物を単軸押出機にて押し出し、1.3mgの樹脂粒子を得、分散液の温度および耐圧容器の内圧を表2に示すアニーリング温度および保持圧力に調整した以外は実施例1〜4と同様な方法により、表2に示す発泡倍率およびDSCピーク比を有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。
該ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて実施例1〜4と同様な方法により加熱蒸気圧力0.20および0.31MPa(G)で成形し、75℃の乾燥室で4時間乾燥後、25℃の恒温室で12時間養生したところ、表面性および融着性は良好であったが、変形が大きな寸法性の悪いポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体となった。結果を表3に示す。
(比較例2)
実施例1〜4で用いたポリプロピレン系樹脂(A)80重量部と実施例1〜4で用いたポリプロピレン系樹脂(B)20重量部とを二軸押出機で混合してなる樹脂100重量部にパウダー状タルク0.005重量部をブレンドし、該ブレンド物を単軸押出機にて押し出し、1.3mgの樹脂粒子を得、分散液の温度および耐圧容器の内圧を表2に示すアニーリング温度および保持圧力に調整した以外は実施例1〜4と同様な方法により、表2に示す発泡倍率およびDSCピーク比を有し、セル構造が不均一となるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。
該ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて実施例1〜4と同様な方法により加熱蒸気圧力0.20および0.31MPa(G)で成形し、75℃の乾燥室で4時間乾燥後、25℃の恒温室で12時間養生したところ、寸法性および融着性は良好であった。表面性についてはどちらの加熱蒸気圧力の成形においても、表面aのエッジ部分の型決まりが良好であり、型内発泡成形体の表面全体に皺は見られなかったが、0.31MPa(G)での成形では型内発泡成形体表面に局所的なアバタの発生が見られた。結果を表3に示す。
特許文献1〜3で示すように、従来技術では保持温度を、例えば樹脂融点−25℃から+10℃が好ましいとしている。比較例2での保持温度は該温度域に含まれるが、樹脂(A)の融解ピーク終点温度+1℃を超えているため、セル構造が不均一となった。
(比較例3)
実施例5で用いたポリプロピレン系樹脂(A)90重量部と実施例1〜4で用いたポリプロピレン系樹脂(B)10重量部とを二軸押出機で混合してなる樹脂100重量部にポリエチレングリコール(平均分子量300)0.5重量部およびパウダー状タルク0.035重量部をブレンドし、該ブレンド物を二軸押出機にて押し出し、1.2mgの樹脂粒子を得、分散液の温度および耐圧容器の内圧を表2に示すアニーリング温度および保持圧力に調整した以外は実施例5と同様な方法により、表2に示す発泡倍率およびDSCピーク比を有し、セル構造が不均一となるポリプロピレン系樹脂二段発泡予備発泡粒子を得た。
該ポリプロピレン系樹脂二段発泡予備発泡粒子を用いて実施例1〜4と同様な方法により加熱蒸気圧力0.20および0.31MPa(G)で成形し、75℃の乾燥室で4時間乾燥後、25℃の恒温室で12時間養生したところ、融着性は良好であり、表面性ついてはどちらの加熱蒸気圧力の成形においても、表面aのエッジ部分の型決まりが良好であったが、型内発泡成形体表面全体に皺が発生していた。さらに寸法性に関しては、比較例1よりは良好であるものの、表面全体の皺の影響により変形の大きなポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体となった。結果を表3に示す。
特許文献1〜3で示すように、従来技術では保持温度を、例えば樹脂融点−25℃から+10℃が好ましいとしている。比較例3での保持温度は該温度域に含まれるが、樹脂(A)の融解ピーク終点温度+1℃を超えているため、セル構造が不均一となった。実施例5と比較例3は、いずれも基材樹脂の融点+9.5℃でアニーリングを行っているが、寸法性、セル構造の点において比較例3のほうが劣っている。
成形評価に用いた箱型型内発泡成形体の形状を示す斜視図である。 成形評価に用いた箱型型内発泡成形体の形状を示す側面図である。 示差走査熱量計を用い、実施例1のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を測定した際に得られるDSC曲線である。横軸は温度、縦軸は熱量の単位時間当たりの変化量である。低温側の網掛け部分がQl、高温側の網掛け部分がQhである。 ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の均一なセル構造の一例を示す断面図である。 ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の不均一なセル構造の一例を示す断面図である。
符号の説明
a 薄肉形状部位
b 中央部寸法を測定した箇所(型内発泡成形体外形x方向)
c 端部寸法を測定した箇所(型内発泡成形体外形x方向)
d 型内発泡成形体外形y方向
e 型内発泡成形体外形z方向
f 型内発泡成形体yz平面における中央部高さ
g 型内発泡成形体yz平面における上部凹み部の長辺
h 型内発泡成形体yz平面における上部凹み部の短辺

Claims (3)

  1. 140℃以下の樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂(A)85重量%以上99重量%以下と160℃以上の樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂(B)1重量%以上15重量%以下を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物(X)100重量部に対して、ポリエチレングリコールを0.01重量部以上5重量部以下添加してなるポリプロピレン系樹脂粒子を、示差走査熱量計法におけるポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピークの終点温度+1℃以下の温度で、水系分散媒中にてアニーリングすることにより製造されることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
  2. 前記製造方法によって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、示差走査熱量計法で、40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線において、2つの融解ピークを有し、高温側融解ピーク温度が150℃以上、かつ、低温側融解ピーク温度が140℃未満であり、高温側融解ピーク熱量の融解ピーク全体熱量に対する比率が10%以上50%以下であり、発泡倍率が5倍以上45倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法によって得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて、型内発泡成形してなるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
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