JP5278625B2 - センサチップおよびその保管方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面に材料物質を吸着し、その特性を測定するバイオセンサや化学物質同定センサなどに用いられるセンサチップおよびその保管方法に関する。
センサデバイスの一例である従来の細胞電気生理計測デバイスは、生体材料物質である細胞をセンサチップの表面に吸着させ、細胞の特性を測定することができる。
電気生理学におけるパッチクランプ法は、細胞膜に存在するイオンチャンネルを測定する方法として知られており、このパッチクランプ法によってイオンチャンネルの様々な機能が解明されている。イオンチャンネルの働きは細胞学において重要な関心事であり、薬剤の開発に応用されている。
しかし、一方でパッチクランプ法は、微細なマイクロピペットを1個の細胞に高い精度で挿入するという極めて高度な技術に基づいた操作を必要としている。そのため、熟練作業者でさえ多くの測定をこなせない。従って高いスループットの測定を必要とする場合にはあまり適切ではない。
このため、微細加工技術を利用した平板型の細胞電気生理計測デバイスが開発されている。これらは個々の細胞についてマイクロピペットの挿入を必要としないオートパッチシステムに適している。
細胞電気生理計測デバイスは、たとえば、樹脂からなる実装基板と、実装基板の底面に設けられた連通孔内に挿入されたセンサチップと、を有している。センサチップはシリコンやガラスから形成されている。さらにセンサチップには、曲面あるいは平面を持った仕切板に少なくとも一つ以上の貫通孔が設けられている。貫通孔の開口径は直径1マイクロメートル〜3マイクロメートルである。細胞電気生理計測デバイスには、一つのセンサチップに貫通孔が一つ形成された単孔のセンサチップと、一つのセンサチップに貫通孔が複数形成された多孔のセンサチップとがある。
そして、実装基板の仕切り板の上側に配置された上部電解槽と、仕切り板の下側に配置された下部電解槽とは、共に電解液で満たされている。上部電解槽と下部電解槽は実装基板とセンサチップで形成される仕切り板により上下に仕切られている。
そして、上部電解槽から被検体となる細胞を注入し、上部電解槽から加圧、あるいは下部電解槽から吸引することで細胞を貫通孔の上部電解槽側の開口部に吸着する。貫通孔の開口径は直径1〜3マイクロメートルであるが、これは細胞を保持、吸着するために適した範囲とされており、吸引された細胞膜の一部は貫通孔内へ引き延ばされて貫通孔壁面へ固着する。
この状態で、例えば細胞の周辺に薬剤を投与し、上下電解槽間で発生する電位差あるいは電流を上下電解槽内に配置された電極を用いて測定することにより、投与薬剤に対する細胞の薬理反応を判断できる(特許文献1)。
従来の平面型の細胞電気生理計測デバイスでは、ガラスピペットを用いたパッチクランプ法に比べてセンサチップと細胞との間に安定した高抵抗シールを確立することが難しい。ここでセンサチップと細胞との間が強固に固着され、高抵抗状態であることをギガシール状態とよぶ。
また、細胞が接触、固着する面(細胞接触面)は仕切り板および貫通孔壁面である。細胞の密着度を上げ、強固な固着状態を形成するためには、細胞接触面の表面にシラノール基(SiOH基)が十分形成されている必要がある。ガラスピペットの細胞接触面と細胞との密着度を上げた実施の形態が開示されている。(非特許文献1)。また、ガラスやSiOなどの表面に付着したシラノール基の量によって表面エネルギーや親水性が変化することが開示されている(非特許文献2)。すなわち、細胞接触面に細胞を強固に固着させるためには、シラノール基が十分付着している必要があり、シラノール基の付着量は表面の親水性や表面電荷などによって間接的に評価できる。
ガラスやSiOなどの表面の親水性を向上させる為には、酸素プラズマ、大気プラズマなどのプラズマを用いる方法や、エキシマUV露光などをエネルギーの強い光を照射する方法や、硫酸と過酸化水素水の混合溶液による洗浄する方法などがある。このように半導体作製やMEMSデバイス作製において、一般的に行われている方法を用いることができる(非特許文献3)。
また、ギガシール状態を形成するために、チップ表面の二酸化ケイ素層を酸素プラズマなどの処理を施して活性を高める方法がある。例えば、チップ表面に酸・塩基処理、酸素プラズマ処理などを施すことにより、SiOM(M:HあるいはNa、K、Mg、Caなどの金属)が形成されていることが開示されている(特許文献2)。
あるいは、チップ表面にLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Dposition)法によってSi34が主成分の窒化ケイ素層を成膜することが開示されている(特許文献3、4)。
従来のセンサデバイスにおいては、センサデバイスを作製した後、短期間の内に測定を行うのであれば、表面に形成されたシラノール基を十分な量に保ったまま測定できる。しかしながら、大量にセンサデバイスを同時に作製し、測定を開始するまでの間、相当期間保管することが必要な場合は、表面に形成されたシラノール基を十分な量に保ったまま、保管する必要がある。従来のセンサデバイスにおいては、たとえば細胞を投入する測定を実施する前の保管状態において、センサデバイス表面のシラノール基が解離してSi−O−Si(シロキサン結合)となることがある。あるいは、測定対象である細胞が吸着することを阻害する物質(以下、吸着阻害物質と呼ぶ)がセンサデバイス表面に吸着し、細胞の接着が不十分となり測定の精度が低下してしまう場合がある。
すなわち、センサデバイスの一例である従来の細胞電気生理計測デバイスにおいて、センサチップの表面に形成された細胞が吸着するための貫通孔の表面に、細胞吸着阻害物質が存在することにより貫通孔へ細胞吸着が十分に行われない場合がある。そのため、細胞表面と貫通孔表面の間にリーク電流が発生してしまい、測定精度を向上させることが困難になる。このため、シラノール基の解離の防止や、貫通孔表面への細胞吸着阻害物質の吸着防止手段として、細胞を吸着する測定直前まで、センサデバイスを水の中に保管させる水中保管や、真空容器の中に保管する真空保管、N等の不活性ガス雰囲気での保管が行われている。しかし、水中保管では測定前にセンサから水を抜き取る作業が必要であり、また真空保管や不活性ガス保管では保管効果が不十分な場合がある。
特にシラノール基の解離は、化1のように、表面にて隣り合う2つのシラノール基が解離結合して、H2Oを形成するメカニズムを進行する。そのため、真空保管や不活性ガス保管では、吸着阻害物質の付着を防ぐ効果はあっても、シラノール基の解離およびH2O生成を防ぐことはできない。このため、真空保管や不活性ガス保管では親水性劣化防止効果は限定的である。
Figure 0005278625
なお、この発明に関連する先行技術文献としては、例えば、下記特許文献が知られている。
特表2002−518678号公報 米国特許第7723029号明細書 米国特許第6863833号明細書 米国特許出願公開第2006/0251544号明細書
非特許文献1:Effect of Divalent Cations on The assemble of neutral and charged phospholipid bilayers in patch−recording pipettes, Roberto Coronado, Biophysics J. Volume47, June 1985.
非特許文献2:Preparation of glass capillary columns for GAS CHROMATOGRAPHY,Milton L. LEE and BOB W. Wright,Jounal of Chromatography, 184(1980) 235−312
非特許文献3:Biochemical and biophysical research communications Vol.191 No.2 P.447 (1993)
本発明のセンサチップは、表面に物質を吸着することによって、物質の特性を測定するセンサチップであり、第1の表面と、第2の表面とを有するとともに、第1の表面から第2の表面にかけて貫通する少なくとも一つの貫通孔が設けられたダイアフラムを備える。第1の表面と、第2の表面と、貫通孔の内壁表面と、のうちの少なくとも一部がSiOXを主成分とする非晶質固体層で被覆されており、物質Xは窒素、リン、フッ素、ホウ素のいずれかよりなる
図1は、本発明の実施の形態におけるセンサデバイスの断面図である。 図2Aは、本発明の実施の形態における単孔のセンサチップの斜視図である。 図2Bは、本発明の実施の形態における単孔のセンサチップの断面図である。 図2Cは、本発明の実施の形態における単孔のセンサチップの要部断面図である。 図3は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのダイアフラムの厚さ方向の組成の分布変化を示す図である。 図4は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのダイアフラム表面の、XPSによる窒素1sのコアレベル光電子スペクトルを示す図である。 図5は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのギガシール成功率を示すグラフである。 図6は、本発明の実施の形態におけるセンサチップの酸化膜表面の、XPSによる炭素1sコアレベルスペクトルを示す図である。 図7は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのギガシール成功率の保管時間に対する変化を示すグラフである。 図8は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのギガシール成功率の、保管時間による変化を示すグラフである。 図9は、本発明の実施の形態における多孔のセンサチップの斜視図である。 図10は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのシール抵抗値の分布を示すグラフである。 図11Aは、本発明の実施の形態における単孔のセンサチップの断面図である。 図11Bは、本発明の実施の形態における多孔のセンサチップの断面図である。 図12は、本発明の実施の形態における単孔のセンサチップのシール抵抗値分布を示すグラフである。 図13は、本発明の実施の形態における多孔のセンサチップの二項分布と合成抵抗値を示すグラフである。 図14Aは、本発明の実施の形態におけるギガシール状態のセンサチップの貫通孔の上面の電子顕微鏡写真を示す図である。 図14Bは、本発明の実施の形態におけるギガシール状態のセンサチップの貫通孔の断面図である。 図15Aは、本発明の実施の形態におけるギガシール状態ではないセンサチップの貫通孔の上面の電子顕微鏡写真を示す図である。 図15Bは、本発明の実施の形態におけるギガシール状態ではないセンサチップの貫通孔の断面図である。 図16は、本発明の実施の形態におけるセンサチップの水の接触角とギガシール成功率の関係を示すグラフである。 図17は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのXPSによるカーボン量とギガシール成功率の関係を示すグラフである。 図18は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのXPSによるカーボン量と水の接触角の関係を示すグラフである。 図19は、本発明の実施の形態における他のセンサチップの断面図である。 図20は、本発明の実施の形態におけるセンサチップの平均抵抗値の時間推移を示す図である。 図21は、本発明の実施の形態におけるセンサチップの観察結果を示す図である。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態におけるセンサデバイスの断面図である。以下、センサデバイス500について図面を参照しながら説明する。本実施の形態においては、センサチップ101を細胞電気生理計測デバイスに用いた例について説明する。また、一つのセンサチップ101に一つの貫通孔109を有する単孔のセンサチップを用いたセンサデバイス500について説明する。
センサチップ101はウェル102の底面に固定されている。ウェル102はポリスチレン、ポリカーボネートなどの樹脂材料によって成型された井戸型の容器である。測定される細胞などの生体試料である被検体112はウェル102内の第1の電解液103中に保持される。
また、流路105がウェル102の下側に設けられ、流路105には第2の電解液104が満たされる。センサチップ101の底部に相当するダイアフラム106により第1の電解液103と第2の電解液104が分離されている。第1電極107は、ウェル102の第1の電解液103に接して設置されている。第2電極108は、流路105内で第2の電解液104に接して設置されている。なお、第2電極108は必ずしも流路105内に形成されている必要はなく、第2の電解液104に接して設置されていればよい。
ウェル102に注入された溶液中の被検体112は、ダイアフラム106に設けられた貫通孔109を通して流路105側から陰圧を印加するか、ウェル102側から陽圧を印加することによって貫通孔109上に吸引され保持される。この際、貫通孔109の内周と被検体112との間が強固に接触されることでシールが形成される。
測定に当たっては、貫通孔109を通して流路105側から被検体112をより強く吸引するか、あるいは流路105内の第2の電解液104に特定の薬剤(例えばナイスタチン)を導入することによって、貫通孔109の内部の被検体112に小孔を形成する。これは一般的に窄孔パッチと呼ばれる。この小孔によって第1の電解液103と第2の電解液104は、被検体112を介して連通する。
その後、被検体112に対して刺激となる操作をウェル102側から行う。この操作としては、薬剤や毒物による化学的刺激のほか、電磁気、振動など機械的変位、光、熱などの物理的な刺激などである。
このような刺激に対して被検体112が活発に応答すると、被検体112の細胞膜に存在しているイオンチャネルが開閉することにより、被検体112を介して第1の電解液103と第2の電解液104との間にイオン電流が生じる。このイオン電流にともなう電気的変化を第1電極107と第2電極108によって検出する。この際、貫通孔109の内周と被検体112との間のシールが不完全であれば、不完全なシールを介して被検体112を介さずに流れる電流リークが生じ、イオンチャネル応答によるイオン電流の計測が困難になる。したがって貫通孔109と被検体112との間のシール特性が極めて重要である。シールが理想的な場合は、第1電極107と第2電極108との間の電気抵抗値(シール抵抗値)が10Ωを超える非常に高い値を示すことから、このような状態はギガシールと呼称される。
図2Aは、本実施の形態における単孔のセンサチップの斜視図である。図2Bは、本実施の形態における単孔のセンサチップの断面図である。
センサチップ101は直径約1mmの円柱であり、中央部に直径600μmの円柱状の凹部114を有している。凹部114の外周は壁層113によって包囲されている。図2Bに示すように、凹部114の底部に相当するダイアフラム106は第1の表面110と、第2の表面111を有する。第1の表面110はウェル102側で第1の電解液103と接している。第2の表面111は第1の表面110の反対側に設けられ、流路105側で第2の電解液104と接している。貫通孔109により第1の表面110と第2の表面111が連結されている。なお、ここで記載したセンサチップ構造は一例であり、大きさや数値などはこれに限定されるものではない。
ダイアフラム106の第1の表面110と第2の表面111のうちの少なくとも一部の表面は、SiOXを主成分とする非晶質固体層117で被覆されている。また、被検体112が捕捉される面は非晶質固体層117によって被覆されている。ここで、物質Xとしては、後述するように電気陰性度がケイ素よりも大きい物質である。
貫通孔109の直径は1μm以上10μm以下であり、さらには1.7μm以上2.3μm以下であることが望ましい。貫通孔109の直径が1μmよりも小さい場合、ギガシールを長時間維持することが難しくなる。また第2の電解液104が被検体112に届きにくくなり、イオン電流の測定に時間がかかったり、ばらつきが生じたりする。逆に貫通孔109の直径が10μmよりも大きい場合には、被検体112と貫通孔109の間に隙間が生じたり、貫通孔109内に被検体112が引き込まれたりしてシール抵抗値が低下する。本実施の形態においては貫通孔109の直径は2.0μmである。なお、貫通孔109の直径は、被検体112を捕捉するのに適した直径に適宜調整して形成できる。
また、貫通孔109の長さはダイアフラム106の厚さと同じ長さ程度であることが望ましい。貫通孔109が長すぎると第2の電解液104が被検体112に届きにくくなるため、5μm以上20μm以下であることが望ましい。ダイアフラム106の厚みが20μmよりも大きい場合には、第2の表面111側を、好適な貫通孔109の長さに一致するようにエッチングによってドーム状にくりぬくことも可能である。本実施の形態においては貫通孔109の長さとダイアフラム106の厚みは10μmで一致している。
なお、貫通孔109は、ダイアフラム106の第1の表面110での開口部径とダイアフラム106の第2の表面111での開口部径とが異なってもよい。例えば、ダイアフラム106の第2の表面111での開口部径をダイアフラム106の第1の表面110での開口部径よりも長くしてもよい。こうすることにより、流路105内に薬剤などを流入させた際に、貫通孔109内部に保持された被検体112へ薬剤をより効率的に到達できる。あるいは、ダイアフラム106の第2の表面111に貫通孔109に連通するように窪み(図示せず)を形成させても同様の効果を奏することができる。
なお、ダイアフラム106の第2の表面111は第1の表面110の反対側に設けられていることが望ましいが、貫通孔109の両端の領域が空間的に分離されていればよい。例えば、第2の表面111が第1の表面110と任意の角度で交わる側面と上面のような関係でもよく、貫通孔109がダイアフラム106内で湾曲していてもよい。
センサチップ101のダイアフラム106を形成するための基材として、例えばダイアフラム106に用いるケイ素層がケイ素(100)からなるSOI(Silicon on Insulator)基板を用いることができる。SOI基板は、ケイ素層115a−二酸化ケイ素層115b−ケイ素層115aの3層構造からなる。
SOI基板にフォトリソグラフィーおよびドライエッチング技術を用いて微細加工することによって、一括して多数個の高精度なセンサチップ101を作製できる。SOI基板はエッチングプロセスの際、二酸化ケイ素層115bがエッチングストップ層としての役割を果たすことができるため、高精度なセンサチップ101を作製できる。
さらに、ダイアフラム106の非晶質固体層117とSOI基板との間、すなわち非晶質固体層117の下面層に、酸化膜116が形成されていることが望ましい。酸化膜116としては、例えば二酸化ケイ素からなることが好ましい。
貫通孔109、壁層113、凹部114を形成したSOI基板の表面全体に酸化膜116を形成することにより、ダイアフラム106の表面が電気的絶縁体になる。酸化膜116の形成には熱酸化法を用いて、酸素と水蒸気雰囲気の下、1100℃で加熱することにより、酸化膜116を形成できる。必要な酸化膜の厚みは適宜決められるが、一般には500〜1000nmである。
なおセンサチップ101の一部に非晶質固体層117が形成されていなくても良いが、非晶質固体層117が形成されていない最表面は、二酸化ケイ素層115bあるいは酸化膜116が形成されていることが好ましい。
ダイアフラム106の非晶質固体層117が形成されていない最表面に、二酸化ケイ素層115bあるいは酸化膜116が形成されていると、それらは親水性に富むため、測定時における気泡の発生の抑制と気泡の除去が容易となる。そのため高精度な測定を実現できる。測定時に気泡が貫通孔109の近傍に残留しているとギガシール特性を大きく低下させることとなり、測定精度に大きな悪影響を及ぼす。
二酸化ケイ素層115bの厚みはエッチングストップ層として求められる厚みと生産性の観点から、0.5μm以上、20μm以下が好ましい。なお、SOI基板の二酸化ケイ素層115bを酸化膜116として用いることができる。
なお、センサチップ101は必ずしも壁層113と凹部114とを有する必要はなく、センサチップ101の形状と構造によって所定の寸法に適宜選択すればよい。少なくとも第1の表面110と第2の表面111とを有するダイアフラム106と、第1の表面110から第2の表面111を繋ぐようにダイアフラム106を貫通する貫通孔109が設けられていればよい。すなわち、センサチップ101は平板状であってもよい。
しかし、ダイアフラム106の厚さを数μmにする場合、製造工程におけるハンドリングと実装性を考慮して壁層113を形成することが望ましい。すなわち、壁層113はセンサチップ101の保持部として機能し機械的強度を高める。また、凹部114は液体を貯留しておくための機能を果たす。そのため、壁層113と凹部114が形成されていることが望ましい。
壁層113から構成される保持部の形成には、SOI基板からのエッチングによる方法や貼り合わせなどが考えられるが、プロセスの一貫性からSOI基板からのエッチングを用いるのがよい。
ダイアフラム106を厚くすれば割れにくくなるが、加工に必要な時間が長くなる。工程のスループットの観点からは、ダイアフラム106は薄い方が望ましい。また、ダイアフラム106を厚くすることにより貫通孔109の長さが長くなる。そのため、圧力で被検体112を吸着する際の流路抵抗が大きくなり、被検体112が吸引されにくくなり、測定の成功率は減少する。そのためダイアフラムの106の厚さは、望ましくは、5μm以上50μm以下、さらに望ましくは5μm以上、20μm以下である。
以上の説明では、センサチップ101を形成するためにダイアフラム106に用いるケイ素層115aが、ケイ素(100)からなるSOI基板を選択している。しかし、ケイ素(110)基板、ケイ素(111)基板およびその他の面方位を有したケイ素基板、ガラス基板、フィルム樹脂等の他の基板を用いても良い。
ただし、加工性や汎用性の観点から、ケイ素(100)を含む基板を用いることが好ましい。ケイ素(100)を含む基板とは、ケイ素(100)単体で構成されているものだけではなく、少なくともケイ素(100)が含まれていればよい。ダイアフラム106に用いるケイ素層115aがケイ素(100)を用いたSOI基板、一部また全体にホウ素等の元素をドーピングされた基板、ガラス等にケイ素(100)が貼り合わされた基板などを用いてもよい。
なお、エッチングストップ層として機能する二酸化ケイ素層115bは、熱酸化により形成した二酸化ケイ素層が一般的である。しかし、CVD法やスパッタ法やCSD法などの他の方法により形成した二酸化ケイ素層、リンをドープしたいわゆるPSG層、ホウ素をドープしたいわゆるBSG層、あるいはリンとホウ素をドープしたBPSG層などのドープトオキサイド層でもよい。
なお、本実施の形態においては、SOI基板からドライエッチングによって凹部114を形成し、その際に二酸化ケイ素層115bをエッチングストップ層として使用している。そのため、凹部114の表面は、二酸化ケイ素層115bによって形成されている。しかし、PSG層、BSG層あるいはPBSG層をエッチングストップ層として用いた場合は、凹部114の表面にさらに熱酸化によって酸化膜116を設けることが望ましい。
そして、センサチップ101の表面上に形成された酸化膜116の上面、すなわちダイアフラム106の第1の表面110を、SiOXからなる非晶質固体層117で被覆する。一般にケイ素と酸素に加えて導入される物質Xとしては、電気陰性度がケイ素よりも大きい物質であり、例えば、窒素、リン、フッ素、ホウ素などである。ケイ素の電気陰性度は1.90であり、窒素、リン、フッ素、ホウ素の電気陰性度はそれぞれ3.04、2.19、3.98、2.04である。
また、物質Xは、非晶質固体層117の最表面において、その原子数組成比が、3%以上40%以下であること、さらには3.6%以上30%以下であることが好ましい。
なお、原子数組成比は、XPS(X−ray Photoelectron spectroscopy;X線光電子分光法)等、原子数を同定する手法により計測された原子数を元に算出することができる。
なお、非晶質固体層117として物質Xが窒素である酸窒化膜で被覆する場合、酸窒化膜は二酸化ケイ素層115b(または酸化膜116)を熱窒化することによって形成される。熱窒化はセンサチップ101をアンモニア雰囲気中で1100℃の高温で焼成することによって行う。ダイアフラム106の第1の表面110をXPSによって分析したところ、第1の表面110の物質組成はケイ素、酸素、窒素からなり、その原子数組成比はほぼ1:1:1である。
なお、ここでは原子数組成比として、XPS等、原子数を同定する手法により計測された原子数を元に算出したものを用いたが、表面における原子数密度に換算する方法でも説明できる。
非晶質SiOの最表面にはSi原子が1nmあたり、およそ7.9個存在することがZhuravlevらにより明らかにされている。また、一つのSi原子には4つの結合手が存在するが、最表層外側に出ることのできる結合手は一つである。すなわち、本実施の形態の非晶質SiOXにおいて、最表層の1nmの面積領域に存在している結合分子(たとえばOH基やNH基やCH基など)の数は最大で7.9個である。これらを前提に、SiOXのXがNである場合の最表面の1nmあたりに存在する原子数の数と、XPS等の原子数を同定する方法にて算出する原子数%との関係を計算した結果を表1に示す。ただし、カウントする原子数は最表層の1層のみと仮定する。
Figure 0005278625
サンプルAはSiOのみで構成されており、最表層がすべてシロキサン結合(Si−O−Si)している場合であり、表面にOH基は存在しない。このとき、原子数%で表記すると、Siは33.3%、Oは66.7%となる。
サンプルBはSiOで構成されているが、最表層にはすべてのSi原子にOH基が形成された最も親水性の高い状態である。このとき原子数%ではSiは28.6%、O(シロキサン由来)は42.9%、O(シラノール由来)は28.6%となる。
サンプルCは本実施の形態の非晶質SiOXの一例であり、物質XがNである構成において、最表層のすべてのSi結合手がNH分子で終端されている。このとき原子数%ではSiは28.6%、O(シロキサン由来)は42.9%、Nは28.6%である。
サンプルDは本実施の形態の非晶質SiOXの一例であり、物質XがNである構成において、最表層のSi結合手の半分がNH基で終端されており、残りの半分がOH基で終端されている。このとき原子数%ではSiは28.6%、O(シロキサン由来)は42.9%、O(シラノール由来)は14.3%、Nは14.3%である。
サンプルEは本実施の形態の非晶質SiOXの一例であり、物質XがNである構成において、最表層のSi結合手の内一つだけがNHで終端されており、残りがOH基で終端されている。このとき原子数%ではSiは28.6%、O(シロキサン由来)は42.9%、O(シラノール由来)は25%、Nは3.6%である。
上記、原子数と原子数%の関係を用いると、原子数組成比が3.6%以上30%以下であるということは、最表層の1nmあたりに存在するNHの数は1個以上、最大7.9個であるということに相当する。
なお、表1における原子数%の計算はZhuravlevモデルにおける非晶質SiOの表面に存在する原子配列について、表面で取り得る分子修飾のいくつかのケースについて理想的状態での計算を行ったものであり、小数点1位までの桁数で四捨五入処理している。そのため、合計が100%とならないケースが生じうるが、計算上の誤差であるので特に問題はない。
また、上記計算は理想的状態のものであり、実際には結晶欠陥、結晶歪み、測定機誤差、表面汚染等の誤差要因が発生しうる。そのため、XPS等で計測・同定される原子数%は必ずしもこの精度では計測されない。
なお、SiOXの物質XとしてNについて説明したが、後に説明するように他にも同様の効果を生む元素が存在する。
なお、図2Bでは非晶質固体層117として酸窒化膜を熱窒化によって形成しているため、非晶質固体層117はダイアフラム106の表面のみでなくセンサチップ101の全表面に渡って形成されている。センサチップ101の全表面とは貫通孔109の表面を含む。すなわち、貫通孔109の壁面にも非晶質固体層117が形成されている。
図2Cに示すように、被検体112が貫通孔109上に吸引され保持された状態では、被検体112の一部が貫通孔109に引き込まれた状態となる。従って被検体112の細胞膜は貫通孔109の内表面と広く接することとなる。このため、シール特性には貫通孔109の内表面と被検体112との親和性が重要となる。
なお、LPCVD法などを用いた製膜方法では、非晶質固体層117の物質の堆積は非等方的に行われるため、貫通孔109の内表面を含むセンサチップ101の全表面を被覆することはきわめて困難である。
図3は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのダイアフラムの厚さ方向の組成の分布変化を示す図である。測定資料としては、後述するサンプル2を用いた。XPSによってダイアフラムにおけるケイ素、酸素、窒素の組成の厚さ方向の変化を調べた結果を示している。図3より、窒素を含む層が一定の厚さで存在するのではなく、非晶質固体層117の最表面から変曲点を持つことなく、窒素の原子数組成比が厚さ約10nmまでほぼ指数関数的に減少する分布を示している。非晶質固体層117の最表面の窒素に富んだ部分からほぼ二酸化ケイ素である二酸化ケイ素層115b(または酸化膜116)となるまで、特定の明確な界面を持たずに連続的に組成が変化している。このことから、界面における格子不整合等による内部応力が緩和され、物理的に安定な構造が実現されているものと推定される。
図4は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのダイアフラム表面の、XPSによる窒素1sのコアレベル光電子スペクトルを示す図である。測定資料としては、後述するサンプル2を用いた。XPSによって得られた第1の表面110の、窒素1s(N1s)のコアレベル光電子スペクトルを示している。中心部分のピークの他に両側に裾状の構造が見られる。これをいくつかのピーク成分の重ね合わせに分解する。一般にXPSの単一の光電子ピークはガウス関数とローレンツ関数の組み合わせで表現可能である。そこでガウス関数に20%のローレンツ関数を重畳した関数でフィッティングを行ったところ、図4に示したように5つのピークの重ね合わせで表現できる。各ピークの帰属同定を行ったところ、中央部の最も高いピーク及びそれより結合エネルギーの高い側のピークは、ケイ素酸窒化膜に起因するものであることがわかる。一般的なLPCVD法によって成膜された窒化ケイ素層では主にSi層が見られ、本発明で用いた熱窒化プロセスによって形成された酸窒化膜はそれらとは異なる。
以上のように構成されたセンサチップ101を使用した細胞電気生理計測デバイスの特性について以下に説明する。
センサチップ101のダイアフラム106の表面組成を検討するため、ダイアフラム106に対して種々の表面改質プロセスを施したセンサチップ101を多数試作して評価している。評価実験は図1に示した細胞電気生理計測デバイスが96個、マトリックス状に形成されたプレートを作製し、被検体112がダイアフラム106の貫通孔109に保持された状態での第1電極107と第2電極108との間の電気抵抗値(シール抵抗値)を測定している。
実験に使用したセンサチップ101は、下記のような処理を施している。
サンプル1は、酸素と水蒸気の雰囲気下、1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後に、フッ化アンモニウム緩衝フッ酸溶液で洗浄した。さらに酸素プラズマによる灰化処理(酸素アッシング)を行っている。
サンプル2は、酸素と水蒸気の雰囲気下、1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後、アンモニア雰囲気で、1100℃に加熱して熱窒化により非晶質固体層117として酸窒化膜を形成している。
比較サンプル1は、酸素と水蒸気の雰囲気下、1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成している。
比較サンプル2は、酸素と水蒸気の雰囲気下、1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後に、フッ化アンモニウム緩衝フッ酸溶液で洗浄している。
これらのサンプルをプレート1枚分、すなわち96個のウェル102に実装してシール抵抗値を測定した。測定手順は以下の通りである。
ステップ1.第1の電解液103としてリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline;PBS)を使用し、被検体112としてRBL(Rat Basophilic Leukaemia;ラット好塩基球白血病)細胞株を分散して各ウェル102に分注する。
ステップ2.第2の電解液104としてNaCl、グルコン酸カリウム、キレート剤(EDTA−NaCl)と緩衝液(HEPES−NaCl)の水溶液を流路105に満たす。
ステップ3.流路105から貫通孔109を通してウェル102に対して陰圧を印加し、被検体112を貫通孔109に吸引、保持させ、2分経過後に第1電極107と第2電極108の間の電気抵抗値(シール抵抗値)を測定する。
ステップ4.第2の電解液104の中に窄孔パッチに用いられる抗生物質試薬を加えて貫通孔109内の被検体112の細胞膜に微小孔を形成し、ホールセル(whole cell)状態を形成し、シール抵抗値を測定する。
図5は、本発明の実施の形態におけるギガシール成功率を示すグラフである。比較サンプル1、2とサンプル1、2のシール抵抗値を測定した。それぞれ96個のウェル102について測定した抵抗値をギガシールが成功されたものとそれ以外のものに分けて棒グラフで表している。ここでは500MΩ以上のシール抵抗値を示したセンサチップ101をギガシール成功と判定している。図5より、熱酸化膜を形成したのみの未処理の比較サンプル1ではギガシール成功率は十数%である。しかし、BHF洗浄処理(比較サンプル2)、さらに酸素アッシング処理(サンプル1)を加えることによってギガシール成功率が向上することがわかる。
このことは以下のように説明出来る。比較サンプルにおいて、熱酸化によって酸化膜116形成後の表面に対してBHF洗浄を行うことで、表面の酸化膜116が弱くエッチングされる。この際に表面に付着していた汚染物質が除去されるため、被検体112との密着性が向上し、ギガシール成功率が上昇する。しかしBHF処理後の酸化膜116の表面では、水素終端されたケイ素原子が多数存在するため親水性が低く、親水性の被検体112の細胞膜表面との親和性が十分ではない。そこでサンプル1に示すように、酸素アッシング処理を行うことで終端の水素が水酸基に置き換わることで表面が親水性となり、細胞膜との親和性が向上するためにさらにギガシール成功率が上昇する。酸素アッシングでは炭素系の汚染物質の除去をより進める効果もある。
サンプル2は、サンプル1に比べるとシール特性が若干低下しているものの、良好なギガシール成功率が得られる。
本実施の形態においては、第1の表面110の表面をLPCVD等のプロセスで得られるケイ素窒化膜Siではなく、熱窒化によるケイ素酸窒化膜(酸窒化膜)としている。これにより、酸素と窒素の比率を変えることで表面の活性、または表面電位を制御することが可能となる。また二酸化ケイ素層115bあるいは酸化膜116を形成する二酸化ケイ素との間の、格子不整合などによる不連続性に起因する物理的な不安定性を抑制し、表面が安定なセンサチップ101を形成することができる。さらに、熱窒化によるケイ素酸窒化膜は、窒素濃度がその深さ(厚み)方向に向かって連続的に変化しているので内部応力を低減させることができる。そして、形成した非晶質固体層117である酸窒化膜を酸やプラズマで処理することにより、表面に例えばシラノール基(Si−OH)を容易に形成できるなど、Si層に比べてより多様な表面修飾を行うことができる。
図6は比較サンプル1、比較サンプル2、サンプル1について、それぞれのダイアフラム106の表面の汚染物質として炭素1s(C1s)の存在量をXPSで調べた結果である。炭素は、例えばクリーンルーム内において大気中に試料を放置した場合に見られる代表的な汚染物質である。図6からも、BHF洗浄及び酸素アッシング処理によってダイアフラム106上の炭素が減少している様子が確認できる。
500MΩ以上のギガシール成功率が90%を超えるサンプル1の特性は、初期特性としては十分満足しうるものである。しかしながら、製造したセンサチップ101をウェル102に実装した測定プレートを量産、出荷してから使用するまでの間、長期間にわたって良好なシール特性を維持しなければならない。
そこで本発明者らは、上記実験において良好な特性が得られたサンプル1と同じ処理を施したセンサチップ101について、一定期間保管後のシール特性の変化を評価している。ここで保管には、密閉容器内に常時窒素ガスを流す窒素デシケータを使用している。
図7にサンプル1の保管時間とギガシール成功率との関係におけるグラフを示す。グラフの横軸はサンプル1と同様の酸素アッシング処理を行ってからシール抵抗の測定を実施するまでの経過時間を示している。酸素アッシング処理後5時間ですでにギガシール成功率が低下し始め、1日以内に成功率は20%程度まで急低下する。
これは以下のように考えられる。酸素アッシング処理をした後のダイアフラム106の酸化膜116表面が、きわめて表面エネルギーの高い状態となり、放置雰囲気中の汚染物質を吸着しやすくなっている。そのため、時間とともに表面の汚染が進みシール特性が低下する。ここで汚染物資は有機化合物と推定される。また、酸素アッシング後の酸化膜表面に存在するシラノール基(Si−OH)は大気中で容易に脱水縮合してシロキサンに変化し親水性を失う。なお、雰囲気は大気に限らず、窒素雰囲気、その他不活性ガス雰囲気あるいは真空状態であっても、同様の脱水縮合は発生する。そのため、被検体の細胞膜との親和性が低下することもシール特性の悪化の原因であると推定され、この低下は窒素雰囲気、真空状態などの環境であっても完全に防ぐことはできない。
図8は、サンプル2のギガシール成功率の、保管時間による変化を示すグラフである。保管は図7の場合と同様、窒素デシケータ内で行っている。図8は窒化処理として熱窒化処理を行った直後と、窒素デシケータ内で2週間保管した後の、サンプル2によるセンサチップ101のシール特性のグラフである。図7のサンプル1の結果と比べると明らかなように、図8のサンプル2では、2週間の保管後にもほぼ初期のギガシール成功率を維持しており、保管特性が劇的に改善している。
なお、上記劣化度合いの検査はRBL-1細胞を用いて行ったが、この劣化度合いは測定に用いる細胞の種類、状態によって大きく変わるので一慨に劣化寿命がどれほど上がるかは確定的ではない。しかしながら、サンプル1に用いた処理に比べてサンプル2で用いた処理のほうが劣化にかかる時間を遅くすることは明らかである。
サンプル1のように酸化膜に近いすなわち、N結合がない、あるいはN結合が少ない場合は同じ環境下においても、親水性が劣化しやすい。すなわちSiOHが解離しやすい。サンプル1では初期のギガシール成功率を維持するためには、水中保管や真空パッケージなどをする必要がある。冷凍容器や保冷材を使用したパッケージが必要となり、また輸送にも特別な配慮を要するなど、コストがかかる。しかしながらサンプル2の構成を採用することで、常温(25℃)でもサンプル1に比べて初期特性を維持したまま保管、輸送することが可能となり、パッケージ及び輸送コストを大幅に低減できる。
また、サンプル2のセンサチップ101では熱窒化処理を施す前にBHF洗浄や酸素プラズマ処理などの洗浄を行っていない。BHFは危険性が高いため高度な保護措置が必要であったり、プラズマ発生装置が高価でプロセスに時間がかかったりするなどのコスト上昇要因が多い。しかしサンプル2ではそれらのコスト上昇要因は存在しないため有利である。
なお、本実施の形態ではダイアフラム106の第1の表面110と第2の表面111の両方の表面、及び貫通孔109の内壁面にも非晶質固体層117を形成しているが、これに制限されるものではない。例えば第1の表面110のみに非晶質固体層117を形成してもよい。この場合、例えば熱窒化処理を行う際に第2の表面111側の面を雰囲気に曝露するようなセンサチップ101の固定方法を考慮する必要がなく、プロセスが簡易になる。または非晶質固体層117が第1の表面110と第2の表面111の両方に形成されていても良い。あるいは非晶質固体層117が貫通孔の壁面にのみに形成されていても良い。
しかし、センサチップ101の全表面に渡って非晶質固体層117である酸窒化膜を形成することにより、センサチップ101の表面の電気絶縁性を強固なものとすることができる。さらに、ダイアフラム106の第1の表面110と第2の表面111の両面にかかる応力を均等にすることができる。そのため、ダイアフラム106を物理的に安定にできる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における細胞電気生理計測デバイスについて図面を参照しながら説明する。図9は、本発明の実施の形態における多孔のセンサチップの斜視図である。
本実施の形態において、実施の形態1と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。ダイアフラム206上に複数の貫通孔209を有する多孔のセンサチップ2012を用いた細胞電気生理計測デバイスについて説明する。
本実施の形態では、64個の貫通孔209を形成したダイアフラム206を用いている。貫通孔209の数は任意の数を選択することができる。これは、貫通孔209を形成する前に形成したレジストマスクにおいて、マスクホールの個数を変更することで、実施の形態1と同様のプロセスを用いて多孔のセンサチップ2012の作製が可能である。実施の形態2では貫通孔209の数は64個としているが、これに制限されるものではない。なお、図9では煩雑となるため全ての貫通孔209を図示してはいない。貫通孔209の数が増加すると、平均化されたイオン電流の測定が可能となるので、被検体112の個々のイオンチャネルの特性のばらつきが平均化され、測定の成功率と精度が向上する。
本実施の形態のような複数の貫通孔209を用いた測定では、センサチップ2012全体としてのシール抵抗値は個々の貫通孔209のシール抵抗値が並列合成された抵抗値として現れる。また、多孔のセンサチップ2012においては、複数の貫通孔209から得られるイオン電流のデータを平均化される。そのため、合成シール抵抗値の制限は貫通孔209がひとつの場合よりは若干緩和される。そのため多孔のセンサチップ2012においては100MΩ以上の合成抵抗(シール抵抗)が常時得られること、あるいは少なくとも95%以上の確率で得られることが望ましい。なお、この制限数値はイオンチャネルが出力する電流Sとリーク電流Nとの比S/Nがどれほどかによって変わる。つまり細胞種によって変わるので、本実施の形態では必ずしも数値を上記値に限定するものでは無い。
以下具体例を用いて、本実施の形態による効果を説明する。サンプル3として、実施の形態1におけるサンプル1で示した処理を多孔のセンサチップ2012に施している。すなわちサンプル3として、酸素と水蒸気の雰囲気下において1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後、フッ化アンモニウム緩衝フッ酸溶液で洗浄している。さらに酸素プラズマによる灰化処理(酸素アッシング)を行っている。
またサンプル4として、実施の形態1におけるサンプル2で示した処理を多孔のセンサチップ2012に施している。すなわちサンプル4として、酸素と水蒸気の雰囲気下において1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後、アンモニア雰囲気で、1100℃に加熱して熱窒化により非晶質固体層117として酸窒化膜を形成している。
図10は、本発明の実施の形態におけるセンサチップのシール抵抗値の分布を示すグラフである。
サンプル3ではセンサチップ2012全体での平均した合成シール抵抗が100MΩより小さいセンサチップ2012が約30%である。さらに酸素アッシング処理を行ったのち、1日間窒素デシケータで保管した場合には64%に増加している。
これは貫通孔の数が多くなると、被検体がきちんと保持されない貫通孔が発生しやすくなるためであると考えられる。例えば本実施の形態のように64個の貫通孔209を備える場合、仮に被検体112の保持ができなかった貫通孔209のシール抵抗を10MΩ程度の低抵抗とすると、合成抵抗値が100MΩ以上となるためには低抵抗の貫通孔209は1個以下でなければならない。また、二項分布の計算結果より、例えば95%以上の確率で100MΩ以上の合成シール抵抗を成功するためには、低抵抗の貫通孔209の発生確率を0.5%以下にしなければならない(これらのことは図13を用いて後述する)。
複数の貫通孔209を用いてイオンチャネル電流を平準化するためには貫通孔209の数は多いほど良いが、一方で貫通孔209の穴数が多いほどリーク電流は増える。サンプル3のセンサチップ2012を用いた場合、測定の成功率を考えると、10個程度を超えることは現実的ではない。
サンプル4のセンサチップ2012を1週間窒素デシケータ内で保管し、同様の測定を行った結果を図10に示す。サンプル4においては、処理後1週間を経ているにも関わらず、95.8%のセンサチップ2012が100MΩ以上の合成シール抵抗値を示している。
これは以下のように考えられる。BHF洗浄後に酸素アッシング処理を施した直後のサンプル3のセンサチップ2012は高いシール抵抗値を示している。図5においても、酸素アッシング処理を施したサンプル1は高いシール抵抗値を示している。これは被検体112とダイアフラム206の親和性が高い状態になっているからであると考えられる。きちんと貫通孔209上に保持された被検体112に対しては高いシール抵抗値が得られる。しかし、被検体112が貫通孔209に中途半端に乗っているような場合、被検体112とダイアフラム206の表面との親和性が高すぎるため被検体112が移動できず、貫通孔209を完全にふさぐことができない。また被検体112として細胞を用い、貫通孔209付近で細胞膜の破れが発生した場合、破れた細胞膜の断片が貫通孔209の周辺から移動できない。そのため、貫通孔209に正常な被検体112がやってきても断片が邪魔になって完全に貫通孔209をふさぐことができない。その結果、貫通孔209のシール抵抗値が極端に低下する。このような貫通孔209が複数発生することで、センサチップ2012全体の(つまり64個の貫通孔209の)合成シール抵抗が低下する可能性が高くなる。
一方、熱窒化処理を施したセンサチップ2012では、図5のサンプル2から推測されるように被検体112とダイアフラム206の表面との親和性はそれほど高すぎず、ある程度被検体112の移動が可能な状態になっている。そのため、中途半端に貫通孔209に乗った被検体112は吸引によって少し移動して、完全に貫通孔209を塞ぐ。また細胞膜の断片が存在した場合にも、ダイアフラム206の表面との接着がそれほど強くないため細胞膜の断片が他に流出するので、被検体112の保持を妨げない。このような効果によって、サンプル4では極端に低いシール抵抗を示す貫通孔209がほとんど発生せず、合成抵抗値の低下が抑制される。サンプル4は、水中保管などの特別の処置をしなくてもサンプル3に比べて特性が長期間維持される。
なお、貫通孔209の中心間の距離は20μm以上が測定成功率の観点から望ましい。被検体112の種類や培養条件等にもよるが、一般的に被検体112の直径が約20μmである。そのため、貫通孔209の間隔が20μmより小さいと被検体112同士の干渉が生じるために測定の成功率が減少する。一方、貫通孔209同士の距離を大きくすることで、構造的に弱い部分が密集しにくくなるため、センサチップ2012の信頼性が向上する。
貫通孔209同士の間隔は等間隔がよく、配置はセンサチップ2012の中心に対して点対称であることが望ましい。被検体112の吸着の際の吸引性という観点において対称性が生まれ、平均化されたデータが得られやすいからである。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3における細胞電気生理計測デバイスについて図面を参照しながら説明する。本実施の形態において、実施の形態1、実施の形態2と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図11Aは、ダイアフラム306上に一つの貫通孔309を有する単孔のセンサチップ3011の断面図である。図11Bは、ダイアフラム306上に複数の貫通孔309を有する多孔のセンサチップ3012の断面図である。
本実施の形態では、ダイアフラム306の第1の表面310と、第2の表面311と、貫通孔309とのうち少なくとも一方の表面の表面電位が負電位である。
後述するように、センサチップ3011、3012の表面のゼータ電位と被検体密着性や長期保管時の特性維持確率に高い相関がある。そして、被検体密着性の評価にセンサチップ3011、3012の表面物性、つまり表面ゼータ電位(以下、表面電位)の測定を用いている。さらに、センサチップ3011、3012の形状に応じてセンサチップ3011、3012の表面を最適に処理する方法を見出している。ここでいう表面とは、第1の表面310と、第2の表面311と、貫通孔309の内壁の表面である。
単孔のセンサチップ3011においては、表面電位が−20mV以下であることが好ましい。表面電位が−20mVより高い場合は、細胞密着性が弱まり、ギガシールが形成されにくいため好ましくない。
多孔のセンサチップ3012においては、表面電位が−20mV以上、0mVより小さいことが好ましい。表面電位が−20mVより低い場合は、ギガシールを形成しやすい反面、低抵抗成分を生み出してしまうため好ましくない。また表面電位が0mVより高い場合は、細胞接着性が低いため好ましくない。
なお、少なくとも第1の表面310の表面電位若しくは第2の表面311の表面電位は、貫通孔309の内壁の表面電位と等しいことが望ましい。上記構成により、より密着性の高い状態が得られるためである。
表面電位を負電位とするためには、例えば、実施の形態1で示したように酸窒化膜を形成することにより実現することができる。酸窒化膜を形成する方法として、他にもCVD法やスパッタ法、CSD法、プラズマ窒化、熱窒化等の方法が挙げられる。これらの中で、任意の方法を選択すればよい。特に熱窒化が望ましい。熱窒化を行うことで、第1の表面310と第2の表面311に均一な膜厚で成膜され、その結果、ダイアフラム306の反りを抑制することも可能となる。また、均一に成膜することにより、第1の表面310の表面電位と第2の表面311の表面電位とが等しいダイアフラム306を形成することが望ましい。
次に、単孔のセンサチップ3011と、多孔のセンサチップ3012に求められる被検体112と貫通孔309との密着性について述べる。
単孔のセンサチップ3011は、一つの被検体112が貫通孔309に高い密着力で密着すればギガシールになるため、微少なチャネル電流しか流れないイオンチャネルの測定に向いている。しかし、被検体112が接触するダイアフラム306の表面親水性を高めると、被検体112とダイアフラム306との密着性が強すぎる。そのため、貫通孔309に正確に捕捉されずに貫通孔309以外のウェル側面や第一の基板表面など別の場所に密着し、密着した被検体112はそのまま動くことができなくなる。その結果、10MΩ以下の低抵抗になってしまうこともある。
図12は、本発明の実施の形態における単孔のセンサチップのシール抵抗値分布を示すグラフである。図13は、本発明の実施の形態における多孔のセンサチップの二項分布と合成抵抗値を示すグラフである。
図12に示すように、単孔のセンサチップ3011の抵抗値分布は500MΩ以上の高抵抗と10MΩ以下の低抵抗の2つの分布、いわゆるダブルピークを持つ。つまり、単孔のセンサチップ3011が複数実装された細胞電気生理計測デバイスは、低抵抗成分が少なく、高抵抗成分の比率が高ければ高性能であると言えるが、ギガシールを得るための表面状態を作り出している以上、数%の低抵抗成分は出現してしまう。
一方、多孔のセンサチップ3012は複数の被検体112が複数の貫通孔309にそれぞれ捕捉されるため、個々の被検体112自体が持つばらつきを平均化できる。そのため、単孔のセンサチップ3011に比べてセンサチップ3012間のばらつきが少ない均一な結果を得られやすいというメリットがある。多孔のセンサチップ3012の抵抗値は、ダイアフラム306上に開いた貫通孔309の一つ一つの抵抗値の合成抵抗となるため、1つのチップ内にN個の孔が開いた多孔のセンサチップ3012の合成抵抗値は以下の(数1)で表される。
Figure 0005278625
ここで、Rは合成抵抗値、R(n=1,2,・・・,N)は個々の抵抗値である。これを、1孔あたりの平均抵抗値Raveに換算すると、(数2)になる。
Figure 0005278625
これより、たとえ多孔のセンサチップ3012の大多数の貫通孔309がギガシール等の高い抵抗値を持っていても、少数の貫通孔309が数MΩ程度の低抵抗を持つと、合成抵抗としては低い抵抗値になってしまうことが分かる。
次に64個の貫通孔309を備えた多孔のセンサチップ3012の合成抵抗の算出例を示す。
多孔のセンサチップ3012では多少のリーク電流は許容されるが、理想的には1孔あたり100MΩの抵抗値を持つことが好ましい。64孔の貫通孔309がある場合、被検体112が貫通孔309に捕捉された成功抵抗値を120MΩ、捕捉に失敗し低抵抗となった低抵抗値を10MΩとして合成抵抗値を算出し、その合成抵抗値を1孔あたりの抵抗値に換算する。その結果、図13に示すように、1孔あたり100MΩの抵抗値を確保するためには、10MΩの低抵抗成分を持つことが許されるのは64孔中、1孔以下である。また、二項分布の計算より、95%以上の確率で100MΩ以上の抵抗値を確保するためには、10MΩ以下の低抵抗成分の発生確率は約0.5%以下に抑える必要がある。
これらの計算結果より、多孔のセンサチップ3012のチップ表面は、数%の低抵抗成分を生み出してしまう単孔のセンサチップ3011のチップ表面とは別の状態に処理しなければいけないことが分かる。つまり、多孔のセンサチップ3012の表面親水性に求められるのは、強い密着性ではなく、適度な密着性でかつ低抵抗を生まないバランスを持った表面親水性である。
次に、表面電位の測定に関して述べる。
溶液中で正または負に荷電しているコロイド粒子に外部から電場を印加すると、粒子はその電荷の符号と反対方向に向かって泳動する。泳動している粒子に光を照射し、その散乱光に比例したドップラーシフト量から、表面電位を求めることができる。検体の表面電位の測定には、平板状の検体を測定可能な大塚電子株式会社製のゼータ電位測定器ELS−Zを用いたが、例えばAnton Paar社製の表面分析用ゼータ電位測定装置SurPASSを用いてもよい。
本発明者らは、大塚電子製表面電位計ELS−Zを用いて、SiOのTEG(Test Element Group)基板に下記のように3種類の表面処理を施し、表面電位を測定している。また、それぞれ同一の処理を施したTEG基板を、XPSを用いて表面の組成を分析している。
TEGサンプル1は、Siの単結晶基板を酸素と水蒸気の雰囲気下、1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後に、フッ化アンモニウム緩衝フッ酸溶液で洗浄し、さらに酸素プラズマによる灰化処理(酸素アッシング)を行っている。
TEGサンプル2として、Si基板に、実施の形態1のサンプル2と同じ処理を施している。すなわち、TEGサンプル2は、酸素と水蒸気の雰囲気下、1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後、アンモニア雰囲気で、1100℃に加熱して熱窒化により非晶質固体層117として酸窒化膜を形成している。
TEGサンプル3は、Siの単結晶基板を酸素と水蒸気の雰囲気下、1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後に、フッ化アンモニウム緩衝フッ酸溶液で洗浄し、乾燥している。
その結果、各TEGサンプルにおける表面電位の測定結果を表2に示す。
Figure 0005278625
表2に示すように、SiO基板をBHF洗浄したTEGサンプル3の測定表面電位は+18.0mVである。実施の形態1の図5の比較サンプル2で示したようにSiO基板にBHF洗浄のみを行った場合、ギガシール成功率は30%を超える程度である。
図5のサンプル1で示したように、SiO基板をBHF洗浄した後に酸素プラズマで灰化処理を施すとギガシール成功率が9割を超える。TEGサンプル1の表面電荷を測定すると−25.3mVである。このことから、BHF洗浄だけでは表面電位はプラス、BHF洗浄後に酸素プラズマの灰化処理を施すと表面電位はマイナスになることが分かる。
またサンプル2では、サンプル1に比べギガシール成功率がやや低下すると同時に表面電位の絶対値もやや小さくなっており、上記の議論のように表面と細胞との親和性と、表面電位の相関を裏付ける結果となった。
また、SiO基板に酸窒化膜を製膜したTEGサンプル2をXPSで測定すると、カーボン量は9%である。そして、窒素の割合が27%と高く、Si:O:N≒1:1:1である。この表面処理後の表面電位の測定結果は、−11.8mVである。
これらの結果より、以下のことが言える。
まず第1に、SiO基板の表面処理として、BHF洗浄のみを行うと、ギガシール成功率は30%を超え、表面処理を行わない場合に比べて性能は上がる(図5)。また、この処理において基板の表面電位はプラスチャージを持ち、被検体接着の観点からは適していない。
次に、SiO基板の表面処理として、BHF洗浄後に酸素プラズマの灰化処理を施すと、ギガシール成功率は90%を超え、単孔のセンサチップとして用いる場合には非常に高性能になる。また、この処理後の表面電位は−20mV以下となる。
さらに、SiO基板上に酸窒化膜を製膜すると、Si:O:N≒1:1:1となる。Si−O−Nの酸素−窒素間の結合エネルギーは非常に強く、親水性を低下させるカーボンへの置き換わりを防ぐことができる。その結果、実施の形態1の図8で示すように経時劣化が少なくなる。ギガシール成功率は非常に高いというわけではないが、その分密着性が多少弱まり細胞が貫通孔上で比較的自由に移動するため低抵抗成分が少ない。よって、多孔のセンサチップ3012への表面処理に好適である。この表面処理後の表面電位は−11.8mVとなり、強すぎないマイナスチャージが多孔に好適な密着性を付与していると考えられる。
つまり、単孔のセンサチップ3011には、BHF洗浄後に酸素プラズマの灰化処理が適切であり、その表面電荷は−20mV以下であることが望ましい。また、多孔のセンサチップ3012には、酸窒化膜をSiO基板上に製膜する熱窒化処理が最適であり、その表面電荷は−20mV以上、0mVより小さいことが望ましい。
なお、TEGサンプル2の処理を施すことにより、センサチップ3011、3012の負電位を常温でも維持することができるため常温での保管が可能となる。
前述の通り、SiO基板の表面処理方法としてBHF洗浄後に酸素プラズマによる灰化処理を施すことで、シラノール基(Si−OH)を修飾させることができる。ギガシール状態を高確率で達成するためには、センサチップ表面にシラノール基で結合させ、その表面状態を保つことが必要である。しかし、図7に示すように、表面処理後のセンサチップを常温環境に放置すると5時間後には劣化が進む。
この劣化原因は、センサチップ表面の弱い結合のSi−OH結合が、より強固で安定なSi−Cの結合に変わるからである。このため、表面処理後の細胞電気生理計測デバイスは極冷凍環境で保管し、化学反応を起こさせないことが重要となる。
一方、一般的に熱窒化処理後のSi−ON結合は強固で安定であるため、Si−OH結合のように常温でカーボンに簡単に置き換わったり、脱水によりシロキサン結合したりすることが少なくなる。これは図8に示したように、熱窒化後2週間経過してもギガシール成功率が劣化しておらず、実験的にも確認できている。
つまり、センサチップ3011、3012の表面の負電位を常温で保つことが可能となるため、細胞電気生理計測デバイスの保管に冷凍手段を使う必要がなく、保管にかかるコストを削減することができる。
また、センサチップ3011、3012の表面が負電位であればSi−OH結合がSi−C結合に置き換わっていないと考えられる。そのため、センサチップ3011、3012の表面電位を品質管理に用いることで、破壊検査となる細胞測定を行わずに細胞電気生理計測デバイスの品質管理を簡便に行える。
さらに、細胞などの生体試料である被検体が単孔のセンサチップ3011に形成された貫通孔309にどのように密着するのかを光学顕微鏡を用いて観測した結果を以下に示す。ここで、単孔のセンサチップ3011がウェルの底面に固定されている。
図14A、図15Aに細胞電気生理計測デバイスを用いて測定した際の上面電子顕微鏡写真の説明図を示す。図14Aには、ギガシールが得られたセンサチップ301aでの上面写真の説明図を示す。図15Aには、ギガシールに到達しなかったセンサチップ301bでの上面写真の説明図示す。図14B、図15Bにはそれぞれの断面模式図を示す。なお、図14A、14Bに示すサンプルは、シール特性として、500MΩ以上の高抵抗シールを示す。
このようにギガシールが得られたセンサチップ301aとそれ以外のセンサチップ301bで被検体312aの貫通孔309への張り付き方に大きな違いがあることが分かる。
ギガシールが得られたセンサチップ301aでは、被検体312aである細胞が大きく変形しながら貫通孔309aに張り付き、球形を保っていない。
一方、ギガシールが得られなかったセンサチップ301bでは、被検体312bである細胞の球形が変化することなく貫通孔309b上に接触している。
つまり、ギガシールを得るためには、被検体は貫通孔に接触しているだけでは不十分で、センサチップのダイアフラム表面には被検体が変形するほどの表面状態が求められる。
このように、被検体の密着性はセンサチップのダイアフラムの表面の親水性に強く依存していると予想される。ここで、センサチップ301a、301bの第一の表面の水の接触角を測定している。図16に、センサチップ301a、301bの水の接触角とギガシール成功率の関係を示している。接触角の小さい、つまり親水性の高いセンサチップが実装された細胞電気生理計測デバイスでは高いギガシール成功率を示している。一方で、接触角の大きい、つまり親水性の低いセンサチップが実装された細胞電気生理計測デバイスでは低いギガシール成功率を示した。接触角が大きいセンサチップは、センサチップのダイアフラム表面に疎水性の物質が付着していると考えられる。
センサチップの表面の親水性向上による被検体との親和性向上の効果は、ダイアフラムの表面電位という観点から、以下のように説明できる。
被検体として細胞を用いた場合、その細胞膜の構造を考えると、リン脂質二重膜構造の外側に存在する親水部はリン酸の外側にコリン、エタノールアミン、セリン、イノシトールといった極性をもったアルコールがエステル結合した構造となっている。このリン酸エステル部位が極性を持つため、細胞膜は親水性を示す。リン酸エステルの構造を微細に見ると、マイナスに荷電したリン酸とアルコールとの総体としての荷電はマイナスである。
しかしながら、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中に分散した細胞とダイアフラム表面の酸化ケイ素との相互作用を考えた場合、PBS中の電解質による電荷の遮蔽効果を考慮する必要がある。リン酸エステル構造におけるリン酸と外側のアルコールの荷電中心との距離は5〜10オングストローム程度である。一方でPBS中の電荷の遮蔽距離(デバイ長)は8〜12オングストローム程度となる。そのため、細胞膜の外側から見た場合、リン酸のマイナス荷電は遮蔽されて見えず、コリンやエタノールアミンといったアルコールが持つプラスの荷電のみが見える状態となっていると考えられる。従って、ダイアフラムはマイナスの表面電位を持っている場合に、細胞膜最表面のプラス荷電と引き合うことによって高い親和性を示す。また、マイナスの表面電位を持つダイアフラムは親水性を示す。図5の結果と比較すると、マイナスの表面電位が大きくなるにつれてギガシール成功率が高くなる。すなわち表面と細胞との親和性と、表面電位の相関を裏付ける結果となっている。
次に、センサチップ3011、3012のダイアフラム306の表面に疎水性をもたらす物質の特定にXPSを用いて測定を行っている。測定したSiO基板の表面処理状態を表3に示す。
サンプル5として、ダイアフラム306をBHF洗浄後、灰化処理し、窒素デシケータにて2週間保管している。
サンプル6として、ダイアフラム306をBHF洗浄後、灰化処理し、−40℃にて冷凍保管している。
比較サンプル3として、表面処理なしのSiO基板を用いた。
Figure 0005278625
表3に示すように、SiO基板の主成分であるSiとO以外に、多くのC(以下、カーボン)が観測される。このカーボンが、被検体とセンサチップとの密着力を低下させる疎水性の物質であると判断し、カーボン量とギガシール成功率との相関を調べている。
その結果、図17に示すように、カーボン量が増加するとギガシール成功率が低下する。また、水の接触角も測定している。XPS結果から得られたカーボン量と、水の接触角との相関を図18に示す。カーボン量が多い基板は接触角も大きく、カーボン量が少ない基板は接触角が小さい。つまり、疎水性を高めている原因は基板表面のカーボンであると判断できる。
一連の検討により、センサチップ表面のカーボンが被検体とセンサチップの密着性、つまりギガシール成功率に大きく影響を与えることがわかる。実験結果から明らかなように、カーボン量が約10%以下であれば被検体とセンサチップとは高い密着性を示す。
センサチップ表面に付着したカーボンとしては、大気中に含まれる炭素以外にも、センサチップとウェルとを接着させるために使用する接着剤の揮発成分などが挙げられる。これらのカーボン成分は、GC−MS(Gas Chromatograph−Mass Spectrometry)によって検出することができる。
前述したようにBHF洗浄をすることによって、センサチップに付着したカーボンを除去することができる。また、BHF洗浄をした後に、酸素プラズマによる灰化処理を施すことで、センサチップ表面のカーボン除去能力を高めることができる。すなわち、図5に示す通り、BHF洗浄をしていない比較サンプル1ではギガシール成功率が10数%と低い。BHF洗浄をした比較サンプル2ではギガシール成功率が30%を超えている。BHF洗浄の後に酸素プラズマで灰化処理を施したサンプル1ではギガシール成功率が90%を超えている。
しかし、サンプル1で示した表面処理を施すと、図7に示したように処理後の時間とともにギガシール成功率が低下する。これは、活性化され親水性が高まったセンサチップの表面に、疎水性であるカーボンあるいはカーボン化合物が再付着し、センサチップの表面親水性が低下したと予想される。従って、センサチップ表面のカーボンを除去した後は、前述したように親水性が高く、かつ結合エネルギーが高い非晶質固体層をSiO基板上に製膜する方法が有効である。これらの非晶質固体層として酸窒化膜を製膜後のセンサチップでは、図8で示したように長期保管後の性能劣化も見られない特徴を持つ。すなわち、酸窒化膜を製膜することによって、カーボンの付着を低減できる。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4における細胞電気生理計測デバイスについて図面を参照しながら説明する。
図3に示すように、ダイアフラム106の第1の表面110と第2の表面111のうち少なくとも一方の表面に形成された非晶質固体層117は、最表面から変曲点を持つことなく、窒素の原子数組成比が厚さ約10nmまでほぼ指数関数的に減少するような分布を持つ。また、図11A、11Bにおいて、ダイアフラム306の第1の表面310と第2の表面311のうち少なくとも一方の表面電位が負電位である。電位は負電位の表面から中央に向けて厚さ方向に一様ではなく、徐々に増加する。図11A、11Bにおけるダイアフラム306内部の電位は、第1の表面310あるいは第2の表面311のうちの少なくとも一方の表面の電位と異なっている。電位は、ダイアフラム306の内部から第1の表面310若しくは第2の表面311に向かって減少するような分布を示す。
なお、本実施の形態においてダイアフラム306内部の電位とは、ダイアフラム306の表面から内部に向かってある一定の深さの仮想的な面を考え、その面がエッチング等の操作により最表面に現れたと仮定した場合に得られる仮想的な表面電位を意味する。
本実施の形態では、この性質を利用し、被検体112とセンサチップ101との密着性をより効率的に制御する。すなわち、センサチップの最表面から中央に向けて単位格子中の分極率が異なり、非晶質固体層117の窒素密度が徐々に減少する構成である。あるいは、ダイアフラム306の電位が最表面から厚さの中央に向けて徐々に増加する構成である。これらのことにより、測定の目的に応じて表面状態をその測定の最適状態に容易に変更することができる。
例えば、被検体112を単孔のセンサチップ3011に強固に密着させる場合、酸窒化膜をエッチングし、SiO膜を露出させた後にBHF洗浄、酸素プラズマ処理を行えばよい。一方、多孔のセンサチップ3012のように、被検体112と多孔のセンサチップ3012との密着性は高くなくてもよく、10MΩ以下の低抵抗成分を出現させたくない状況であれば酸窒化膜のエッチングをせずにそのまま使えばよい。1つのセンサチップに存在する貫通孔109の数によって、求められる合成抵抗値や、それに伴い許容できる低抵抗成分の数が異なる。そのため、孔数と必要な抵抗値に応じて酸窒化膜のエッチング量を決めればよい。これは、酸窒化膜が厚さ方向に一様でない特徴だから可能な制御である。また、前述の通り抵抗値分布と表面電位には相関があるため、酸窒化膜のエッチング後の表面電位を測定することでおおよその抵抗値分布が分かる。そのため、品質管理において製品を破壊せずに検査できる。
酸窒化膜を形成する方法として、他にもCVD法やスパッタ法、CSD法、プラズマ窒化、熱窒化等の方法がある。これらの中で、任意の方法を選択すればよいが、特に、熱窒化が望ましい。熱窒化を行うことで、貫通孔109内壁にも均一な膜厚で成膜される。被検体112はダイアフラム306だけでなく、陰圧で貫通孔109側壁にも密着する。そのため、貫通孔109内壁にも均一な膜厚で成膜されていると、より密着性の高い状態が得られる。
CVD法やスパッタ法、CSD法等を選択すると、酸窒化膜は均一に塗付することが困難である。貫通孔109の内壁(特に深い部分)には、酸窒化膜は形成されないため、酸窒化膜による密着性向上の効果が低減する。プラズマ窒化では、バイアス電圧を用いて指向性を持ったプラズマを発生させる場合、CVD法等と同様均一に塗付することが困難である。指向性を持たないプラズマを用いた場合には、熱窒化と同様の効果が得られるが、装置の生産性や製造コスト等を考慮すると、熱窒化が優れる。
熱窒化とは、例えば、NHのような還元性ガスにNが含まれた雰囲気中においてチップ全体を加熱することが望ましい。還元ガスとは、NHの他に、H、CO、HS、SO、HCHO(ホルムアルデヒド)などのガスが存在する雰囲気のことを指す。これらのガスに適宜、Nが含まれた雰囲気中ならばよい。
熱窒化を行うことにより、ダイアフラム306の裏面(すなわち第2の表面111)やセンサチップ101の周囲にも同様に酸窒化膜が形成される。CVD法やスパッタ法、CSD法等を選択すると、ダイアフラム306の裏面にも酸窒化膜を形成することは困難である。そのため、酸窒化膜の応力によって、ダイアフラム306に反りや割れが発生したり、酸窒化膜の剥離が生じたりする場合がある。熱窒化を行うことにより、ダイアフラム306の裏面やセンサチップ101の周囲にも同様に酸窒化膜が形成される。そのため、ダイアフラム306には応力が均一に印加されるので、反りや割れが発生したり、酸窒化膜の剥離が生じたりすることがなくなるため、生産性に優れる。
また、熱窒化によって形成された酸窒化膜はグラジェント分布を持つため、センサチップ3011、3012との密着性に優れる。シリコンに対する酸素と窒素の電気陰性度の違いが表面電位を決めている。窒素の電気陰性度の方が低いため、窒素密度が高くなることにより電荷の偏りが低下する。その結果、ダイアフラム306の表面に現れたときの表面電位の絶対値が小さくなる。純粋な窒化膜は強い応力を持ち、酸窒化膜はその組成に応じて、応力が発生する。そのため、シリコンからなるセンサチップ3011、3012の表面において、剥離が発生しやすくなる。グラジェント分布を持つことにより、徐々に応力が緩和されるため、剥離が発生しやすくなる。
センサチップ3011、3012の全体が均一に酸窒化され、深さ(厚み)方向へグラジェント分布を持っていれば、熱窒化されているのが分かる。酸窒化膜の組成は温度、時間、雰囲気、グラジェント分布によって任意に制御可能である。
(実施の形態5)
以下、本実施の形態におけるセンサチップについて説明する。なお実施の形態において先行する実施の形態と同様の構成をなすものは同じ符号を付して説明し、詳細な説明を省略する。また本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。実施の形態1と異なる点はセンサチップがナノファイバプレートからなる点である。
図19は、本実施の形態におけるセンサチップの断面図である。センサチップ600は、ナノファイバ518の表面に生体組織、細胞、タンパク質、核酸、ペプチド、糖鎖、ウイルス等の物質を吸着することによって物質の特性を測定する。
センサチップ600はダイアフラム506と、ダイアフラム506の第1の表面510に接合した複数のナノファイバ518を有する。ダイアフラム506は、第1の表面510と、第1の表面510と空間的に分離された第2の表面511とを有する。ナノファイバ518は、ナノスケールの直径を持つ、酸化シリコン、好ましくは二酸化ケイ素からなり、少なくとも表面の一部に、OH基を有している。そして、このナノファイバ518の表面は、SiOXを主成分とする非晶質固体層517で被覆されており、物質Xはケイ素よりも電気陰性度の大きい元素からなる。
このナノファイバの表面にタンパク質、核酸、ペプチド、糖鎖、ウイルス等の物質が吸着することにより、検査対象の中に特定の物質が存在しているかどうかを検出できる。
このように、ナノファイバ518表面が非晶質固体層517で被覆されていることによって、表面に構成されたOH基の解離を抑制する。そしてその結果として、ナノファイバ518の表面の安定性が図れる。これはセンサチップの製造において、表面の一部にOH基を構成した後、計測するまでの間にOH基の解離を防ぐという点においても効果を発揮する。
さらに、非晶質固体層517の上層にさらに、シランカップリング剤などを反応させる場合においても同様にこれらを安定して形成できる。
本実施の形態のセンサチップは、DNAアレイ、プロテインアレイ、糖鎖アレイ、マイクロ流体チップ、細胞培養チップに用いることができる。
なお、本実施の形態でのナノファイバプレートはアレイ基板として用いることもできる。アレイ基板とは、検出用物質と試料中に含有されている標的物質との間の相互作用を進行させ、蛍光強度などによりその相互作用の度合いを検出することで解析を行うことができる基板である。基材表面に予め相互作用を引き起こす場となる反応場領域をアレイ状に設け、その反応場領域毎に目的となる検出用物質をそれぞれ固定した後、試料となる溶液を滴下することにより、試料を解析する。このような構成とすることで、一枚で複数の測定を行うことができる。本実施の形態のナノファイバプレートに複数の反応場領域を並べてアレイ化するためには、インクジェットディスペンサ、フォトリソグラフィー、ピンスポット等、ガラスプレートに対して行う通常の手段を用いることができる。
(実施の形態6)
以下、本実施の形態におけるセンサチップの保管方法について説明する。なお本実施の形態において先行する実施の形態と同様の構成をなすものは同じ符号を付して説明し、詳細な説明を省略する。また本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本実施の形態におけるセンサチップとは、実施の形態1〜4で示されるセンサチップであり、表面に生体組織、細胞、タンパク質、核酸、ペプチド、糖鎖、ウイルス等の物質を吸着することによって各物質の特性を測定するセンサチップである。第1の表面と、第1の表面と空間的に分離された第2の表面とを有したダイアフラムと、ダイアフラムの第1の表面から第2の表面にかけて貫通する少なくとも一つの貫通孔とを備えている。そして、センサチップに形成された貫通孔に細胞、タンパク質、核酸、ペプチド、糖鎖、ウイルス等の吸着物質を吸着することによって、それらの物質の特性を測定できる。ダイアフラムは少なくとも例えば、ガラスやシリコン、酸化シリコン、熱酸化SiO、ポリシリコン、アモルファスシリコンなどの無機材料あるいはそれらの混合物で形成できる。あるいは、センサチップに、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、環状ポリオレフィンなどの樹脂材料を接合したセンサデバイスとさせてもよい。
このようなセンサチップあるいはセンサデバイスを、少なくとも密閉されたパッケージ内に封入し、封止した後、室温(25℃)より低い温度で保管させる。パッケージは、例えばアルミニウムかもしくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、環状ポリオレフィンの樹脂などを用いることができる。
ここで、室温より低い温度は少なくとも10℃以下であり、4℃以下であることが望ましく、氷点下であることがより望ましい。氷点下は−10℃以下の低温環境に保管することが望ましい。
この時、密閉されたパッケージ内の雰囲気は、ヘリウム、窒素、アルゴン、クリプトン、6フッ化硫黄等、室温以下の環境で通常、不活性であるガスであることが好ましい。
センサチップを使用する寸前まで上記保管方法によって保管し、使用直前にセンサチップを室温(25℃)にまで戻してから、直ちに測定を行う。
このように保管されることによって、長期にわたる保管であっても特性劣化を抑制することができ、長期保管可能で高精度なセンサチップを提供することができる。
つぎに、センサチップあるいはセンサデバイスを少なくとも密閉されたパッケージ内に封入され、室温より低い温度で保管されることによる効果について説明する。
センサチップあるいはセンサデバイスを室温よりも低い温度で保管することにより、センサチップ表面の生体組織、細胞、タンパク質、核酸、ペプチド、糖鎖、ウイルス等の吸着物質を吸着する領域、例えば、センサチップの貫通孔表面周辺に、吸着物質が吸着することを阻害する吸着阻害物質が付着することが少なくなる。通常、このような吸着阻害物質は、例えば、パッケージやセンサチップあるいはセンサデバイスに用いられている樹脂材料や接着材から揮発する有機化合物であったり、雰囲気内に微量に存在する有機化合物であったりすることが多い。細胞などの物質を投入する測定を実施する前の保管状態において、センサチップの表面に、吸着阻害物質が吸着することにより、測定対象である物質が吸着しにくくなり、測定の精度が低下してしまう場合がある。すなわち、センサチップを用いたセンサデバイスの一例である従来の細胞電気生理計測デバイスでは、センサチップの表面に形成された細胞が吸着するための貫通孔の表面に、細胞吸着阻害物質が存在することにより貫通孔へ細胞吸着が十分に行われないことがある。そのため、細胞表面と貫通孔表面の間にリーク電流が発生してしまい、測定精度を向上させることが困難になる。このため、貫通孔表面への細胞吸着阻害物質の吸着防止手段として、細胞を吸着する測定直前まで、センサチップあるいはセンサデバイスを水の中に保管させる水中保管や、真空容器の中に保管する真空保管が行われている。しかし、水中保管では測定前にセンサから水を抜き取る作業が必要であり、また真空保管では保管効果が不十分なことがある。
しかし、本実施の形態のように低温で保管することによって有機化合物が揮発することが極めて少なくなる。さらに、有機化合物が雰囲気内に存在していたとしても、低温であるため運動エネルギーが低くなり、表面に存在している分子への結合や付着が起きにくくなる。このため、センサチップの貫通孔表面に不要な吸着阻害物質が付着しにくくなる。さらに、従来用いられたような水中保管ではないので、パッケージ開封後、使用前に表面に付着している水を抜き取る必要性がなく、作業前の時間短縮に繋がる。
さらにもう一つの効果である、親水性を安定的に維持する仕組みについて説明する。実施の形態1の表1におけるサンプルAのようにSiOのみで構成されている場合において、最表面では表1におけるサンプルAとサンプルBへの状態変化が化1に示すように可逆的に起こることは既に述べた。
Figure 0005278625
そして、この状態変化は温度によって平衡状態に達することが知られており、室温ではOH基の数が5.6−5.9個になると推定される。すなわち、センサチップを製造した直後は最表面のOH基が最大の7.9個/nmであっても、室温に放置することで環境がたとえ、水、真空、不活性ガスであっても、OH基の解離は発生し、7.9個/nmより減少する。これは、最表面にOH基が構成されたセンサチップは室温での長期保管が困難であるということを示している。
この課題を解決するため、本実施の形態ではこのセンサチップを室温より低い温度で保管する。
表4は、センサデバイスの一例である、細胞電気生理計測デバイスにおける、細胞の密着性を指標とし、所定の密着が確保出来なくなったものを寿命であると判断し、それぞれの温度において寿命がどう変化するかを示している。
室温(25℃)において11.3時間であった寿命が、室温より低い10℃においては67時間、氷点下15℃においては2058.8時間と飛躍的に伸びている。
Figure 0005278625
室温より低い温度において寿命が延びている理由は、最表層のOH基がセンサチップを作製したときから安定しており、結果として親水性が高い状態を保っているからである。すなわち、低温であればあるほど、OH基の解離は少なくなり、センサチップ製造当初の高いOH基密度を保っている。
なお、センサチップの親水性を保つ構造として、本実施の形態1〜4では少なくとも最表層をSiOX構造にしている。すなわち、最表層のSi結合手の内、少なくとも1つより多い個数でNHを結合させることで、より安定な表面にできる。既に述べたように最表層がOH基だけの場合、隣り合うOH基が合し、HOへの解離を起こす。しかし、いくつかの結合手がNH基終端されることによってOH基が隣同士になる確率は減少し、結果としてOH基の解離も減少する。また、NH基はOH基と同様に親水性を持っているので、結果として、より安定した状態にセンサチップの親水性状態を保つことができる。
ここで、パッケージ内は真空状態となっていないことが好ましい。本実施の形態により、真空保管を用いるよりも吸着阻害物質を抑制できる。真空保管の場合には雰囲気に元々存在している有機化合物は除去できるものの、樹脂や接着材から発生する有機化合物量を減らすことはできない。さらに、真空であるために樹脂や接着材から揮発した有機化合物は真空下では平均自由行程が増えるため運動エネルギーは高くなり、表面に存在している分子への結合や付着が促進されてしまうからである。
さらに、既に述べたように、二酸化ケイ素(SiO)で形成された表面に細胞などが強固に吸着するためには、Si原子に結合したOH基(Hydroxy基)の量が豊富である必要があり、これはOH基の量が多いほうが好ましい。しかしながら、表面のOH基は隣り合うOH基と反応し、表面からHOが解離する現象が起こり、環境温度条件によって平衡状態に達することが知られている。そして、このとき環境温度が高いほど、OHの解離は進み、室温においてはアモルファス二酸化ケイ素の表面の1nmあたりOH基の数は4.6個から4.9個であるとされている。つまり、室温においては、パッケージ環境として真空や不活性ガスにしても、この表面からのSiOHの解離はある程度避けられない。
そこで、パッケージ内には水蒸気が封入されているのがより好ましい。パッケージ雰囲気にHOガスを混入しておくことで、表面からのOH解離を防ぐことができる。つまり、化1が可逆的に起こる。つまり、HOガスが混入していることで各温度での平衡状態をSiOH側(化1の左辺)へシフトできる。つまり、親水性が失われにくくなる。このような本実施の形態のセンサチップ保管方法により、センサチップ使用時に測定精度が落ちることなく使用できる。
図20は、本発明の実施の形態におけるセンサチップの平均抵抗値の時間推移を示す図である。サンプルとして、図9に示すセンサチップ2012あるいは図11Bに示すセンサチップ3012を用い、複数の貫通孔に細胞を捕捉している。
そして、実施の形態2のサンプル3と同じ処理を施している。すなわち、酸素と水蒸気の雰囲気下において1100℃で加熱する熱酸化プロセスによって酸化膜116を形成した後、フッ化アンモニウム緩衝フッ酸溶液で洗浄している。さらに酸素プラズマによる灰化処理(酸素アッシング)を行っている。
センサチップを室温(25℃)、4℃、−20℃、−80℃でそれぞれ保管し、1週間後、2週間後、1月後の平均抵抗値を計測した。ここで平均抵抗値が高いということは、細胞の捕捉率が高いということを示しており、吸着阻害物質が付着しにくいということを示している。
センサチップを室温で保管することにより、平均抵抗値が減少する。一方、室温保管に比べ、4℃、−20℃、−80℃での保管は保管時間が長くなっても、平均抵抗値が室温保管ほど減少しない。特に−20℃、−80℃での保管はこの効果が著しく、保管1ヶ月を経過しても製造直後の平均抵抗値とほぼ変わらない。
すなわち、4℃、−20℃、−80℃での保管は保管時間が長くなってもセンサチップに吸着阻害物質が付着しにくい。その結果、細胞の捕捉率を高めることができる。
なお、本実施の形態ではダイアフラムに形成された貫通孔を有するセンサチップについての保管方法について説明した。しかし、センサチップは必ずしも貫通孔を有する必要は無く、表面に吸着面を有するセンサチップであっても良い。その場合も同様の保管方法によって、長期にわたる保管であっても特性劣化を抑制することができ、長期保管可能で高精度なセンサチップを提供できる。
(実施の形態7)
以下、本実施の形態におけるセンサチップの保管方法について説明する。実施の形態6と異なる点はセンサチップが図19に示すようなナノファイバプレートからなる点である。
本実施の形態におけるセンサチップは、ナノスケールの直径を持つ酸化シリコン、好ましくは二酸化ケイ素を多数構成した基板を有するナノファイバプレートである。ナノファイバの表面に細胞、タンパク質、核酸、ペプチド、糖鎖、ウイルス等の物質が吸着させることにより、検査対象の中に特定の物質が存在しているかどうかを検出する。
このようなセンサチップにおいては、測定を開始する前に、目的である物質の吸着を阻害する吸着阻害物質がナノファイバの表面に吸着したり、目的のタンパク質の光学的検出を行う際に、光学検出を阻害する物質、例えばCH基、COOH基等の有機物がナノファイバの表面に吸着したりすることでセンサチップの感度を著しく劣化させる。そのため、センサチップの製造後、これら阻害物質の吸着を防ぐ保管方法が必要である。
上記センサチップを製造直後と、室温(25℃)と低温(4℃、−20℃、−80℃)とで一週間保管した後に観察した。図21は、本発明の実施の形態におけるセンサチップの観察結果を示す図である。蛍光プレートリーダー(GenePix4000A)を用いてレーザー照射(635nm、532nm)し、蛍光状態を撮影したセンサチップの観察結果を示している。有機物質など光学検出を阻害する吸着阻害物質がセンサチップに多量に付着することにより、光学バックグランドノイズが増える。すなわち、センサチップが強く発光しているということは、光学バックグランドノイズが増えているということであり、センサチップの感度を著しく劣化させる原因になる。
図21より、センサチップを室温で保管することにより、センサチップの発光強度が上昇している。室温保管により、有機物質など光学検出を阻害する吸着阻害物質がセンサチップに多量に付着し、光学バックグランドノイズが増えているからである。
一方、室温保管に比べ、4℃、−20℃、−80℃での室温より低い低温保管はバックグランドノイズが抑えられている。すなわち、低温保管によって吸着阻害物質がセンサチップに吸着していないことが分かる。特に−20℃、−80℃での保管はこの効果が著しく、光学バックグランドノイズが増加していない。従って、室温より低い温度で保管することによって、光学バックグランドノイズが抑制し、その結果センサチップの感度を維持できる。保管温度が室温より低ければ低い程、本効果を奏する。
なお、ナノファイバの表面は、SiOXを主成分とする非晶質固体層で被覆されており、物質Xはケイ素よりも電気陰性度の大きい元素からなっていてもよい。ナノファイバの表面が非晶質固体層で被覆されることによって、表面に構成されたOH基の解離を抑制し、ナノファイバの表面が安定になる。これにより、センサチップの製造において、表面の一部にOH基を構成した後、計測するまでの間にOH基の解離を防げることができる。
さらに、非晶質固体層517の上層にシランカップリング剤などを反応させる場合においても、シランカップリング剤を安定して反応させることができる。
本実施の形態のセンサチップは、DNAアレイ、プロテインアレイ、糖鎖アレイ、マイクロ流体チップ、細胞培養チップに用いることができる。なお、本実施の形態でのナノファイバプレートはアレイ基板として用いることもできる。
このように、本実施の形態の保管方法により、測定を阻害する物質の吸着を防止でき、長期にわたる保管であっても特性劣化を抑制することができる。
本発明は、表面に材料物質を吸着し測定するバイオセンサや化学物質同定センサなどに用いられるセンサチップおよびその保管方法に関し、保管時間経過に伴うシール特性の劣化を防止できる。
101,301a,301b,600,2012,3011,3012 センサチップ
102 ウェル
103 第1の電解液
104 第2の電解液
105 流路
106,206,306,506 ダイアフラム
107 第1電極
108 第2電極
109,209,309,309a,309b 貫通孔
110,310,510 第1の表面
111,311,511 第2の表面
112,312a,312b 被検体
113 壁層
114 凹部
115a ケイ素層
115b 二酸化ケイ素層
116 酸化膜
117,517 非晶質固体層
500 センサデバイス
518 ナノファイバ

Claims (24)

  1. 表面に物質を吸着することによって、前記物質の特性を測定するセンサチップであって、第1の表面と、第2の表面とを有するとともに、前記第1の表面から前記第2の表面にかけて貫通する少なくとも一つの貫通孔が設けられたダイアフラムを備え、前記第1の表面と、前記第2の表面と、前記貫通孔の内壁表面と、のうちの少なくとも一部がSiOXを主成分とする非晶質固体層で被覆されており、物質Xは窒素、リン、フッ素、ホウ素のいずれかよりなるセンサチップ。
  2. 前記物質Xの原子数組成比が前記ダイアフラムの厚さ方向に指数関数的に減少する請求項1に記載のセンサチップ。
  3. 前記物質Xが窒素である
    請求項1に記載のセンサチップ。
  4. 前記非晶質固体層が前記第1の表面に形成されている
    請求項1に記載のセンサチップ。
  5. 前記非晶質固体層が前記第1の表面と前記第2の表面の両方に形成されている請求項1に記載のセンサチップ。
  6. 前記非晶質固体層が前記貫通孔の壁面に形成されている請求項1に記載のセンサチップ。
  7. 前記物質を含んだ溶液を保持するためのウェルが前記第1の表面に隣接して形成されている請求項1に記載のセンサチップ。
  8. 前記第2の表面は前記第1の表面の反対側に設けられている
    請求項1に記載のセンサチップ。
  9. 前記物質Xの最表面原子数組成比が3.6%以上30%以下である
    請求項1に記載のセンサチップ。
  10. 記第1の表面と、前記第2の表面と、前記貫通孔の内壁の表面と、のうちの少なくとも一部の電位が負電位である
    請求項1に記載のセンサチップ。
  11. 一つの前記ダイアフラムに一つの前記貫通孔が形成されており、
    前記電位が−20mV以下である
    請求項10に記載のセンサチップ。
  12. 一つの前記ダイアフラムに複数の前記貫通孔が形成されており、
    前記電位が−20mV以上0mVより小さい
    請求項10に記載のセンサチップ。
  13. 前記第1の表面若しくは前記第2の表面の前記電位と、前記貫通孔内壁との電位とが等しい
    請求項10に記載のセンサチップ。
  14. 前記第2の表面は前記第1の表面の反対側に設けられている
    請求項10に記載のセンサチップ。
  15. 前記ダイアフラムの電位が、前記第1の表面若しくは前記第2の表面から前記ダイアフラムの厚さ方向に一様ではない
    請求項10に記載のセンサチップ。
  16. 前記ダイアフラムの電位が、前記第1の表面若しくは前記第2の表面から前記ダイアフラムの厚さの中央に向けて増加する
    請求項10に記載のセンサチップ。
  17. 前記第1の表面と前記第2の表面のうちの少なくとも一方の表面の電位の負電位は常温で維持される
    請求項10に記載のセンサチップ。
  18. 表面に生体組織、細胞、タンパク質、核酸、ペプチド、糖鎖、ウイルスのうちいずれかの物質を吸着することで前記物質の特性を測定するセンサチップであって、
    少なくとも表面の一部に、OH基を有し、
    前記表面の一部がSiOXを主成分とする非晶質固体層で被覆されており、物質Xは窒素、リン、フッ素、ホウ素のいずれかよりなる
    センサチップ。
  19. 請求項1から17のいずれか一つに記載のセンサチップを
    密閉されたパッケージ内に封入し、
    前記パッケージに封入された前記センサチップを25℃より低い温度で保管する
    センサチップの保管方法。
  20. 少なくとも表面の一部に、OH基を有し、
    前記表面の一部がSiOXを主成分とする非晶質固体層で被覆されており、物質Xは窒素、リン、フッ素、ホウ素のいずれかよりなり、
    生体組織、細胞、タンパク質、核酸、ペプチド、糖鎖、ウイルスのうちいずれかの物質を吸着することによって前記物質の特性を測定するセンサチップを、密閉されたパッケージ内に封入し、
    25℃より低い温度で保管する
    センサチップの保管方法。
  21. −10℃以下の温度で保管される
    請求項20に記載のセンサチップの保管方法。
  22. 前記パッケージ内の雰囲気が不活性ガスである
    請求項20に記載のセンサチップの保管方法。
  23. 前記パッケージ内の雰囲気にH2Oガスを含む
    請求項20に記載のセンサチップの保管方法。
  24. 前記パッケージに使用する材料がアルミニウムを主成分とする
    請求項20に記載のセンサチップの保管方法。
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