JP5276692B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
その結果、成層燃焼は、均質燃焼よりもポンピングロスに起因する出力損失を低減することができるので、燃費改善方策として有効であり、広い運転領域で成層燃焼を実現することが望ましい。
成層燃焼の運転領域は、このような燃焼の悪化が発生しないように実際に成層燃焼が可能な運転領域よりも低負荷側の狭い領域とされ、それ以外の高負荷側の運転領域では均質燃焼が実施される。このように成層燃焼の運転領域が狭く設定されているために、十分な燃費の効果が得られていない。
しかし、吸入空気量が大きく異なる成層燃焼と均質燃焼とを連続するサイクルで切替えると、特に均質燃焼における空燃比が不安定となって一時的なトルク低下に伴うトルクショックが発生する。また、成層燃焼において複数気筒で燃焼異常が発生した場合には複数気筒同時に燃焼方式を切替えることになり、トルクショックが拡大する。
図1は、この発明の内燃機関の制御装置を示す概略構成図である。
図1において、内燃機関本体1は、多気筒エンジンとして構成されているが、図1では内燃機関本体の1気筒のみを示している。内燃機関本体1には、クランク角センサ18が取り付けられ、クランク軸が一定角度回転するごとにパルス信号を出力する。クランク角センサ18は、例えばクランク回転角10度ごとに回転角検出用のパルスを出力し、機関回転数の算出に用いられる。
さらに、内燃機関本体1には、カム角センサ21が取り付けられており、カム軸が一定回転するごとに各気筒で異なるパルス信号を出力するので、クランク角センサ18の信号と組合せて各気筒のタイミングを特定することができる。
ピストン3は、燃焼室2を往復運動し、吸気弁8を経由して燃焼室2へ空気を導入し、また混合気の燃焼圧力を運動エネルギーに変換し、さらに燃焼後の既燃ガスを排気弁7から排出する。吸気管4は、内燃機関本体1の吸気ポートに接続され、排気管5は、排気ポートに接続されている。吸気管4の途中には吸気管4内の圧力を測定する圧力センサ20と吸入空気量を制御するスロットルバルブ6が各気筒に設けられ、アクセル開度センサ19の信号に応じたスロットルバルブ6の開閉量をたとえばDCモータやステッピングモータによって制御することで、燃焼室2に導入される吸入空気量を制御する。
吸気行程噴射による均質燃焼では、噴射された燃料が空気と混ざりながら燃焼室2内に拡散して、均質な可燃混合気を形成し、圧縮行程噴射による成層燃焼では、噴射された燃料が点火プラグ10に集中的に層状の可燃混合気を形成し、点火プラグ10により点火されて燃焼する。
ECU11の入力側には、各種センサやスイッチ類が接続されており、各種センサ出力はインターフェースを介し、A/D変換してECU11へ取り込まれる。その入力信号に基づいて演算処理を実行する。その演算結果に基づいて、各種アクチュエータ用制御信号を出力し、燃料噴射弁9やスロットルバルブ6や点火プラグ10などのアクチュエータを制御するようになっている。
図2において、内燃機関での燃焼過程で検出されるイオン電流と筒内圧力の例を示している。イオン電流は、点火プラグのスパークによる燃料または空気の一部がイオン化することにより検知される点火時の放電によるピークと、燃焼が開始された直後に検知される燃焼による第1のピークと、燃焼火炎が気筒内に伝播して燃焼が最も活発化した時期に検知される第2のピークを有する。
燃焼状態や燃焼トルクを示す燃焼室内の圧力が急上昇し始めた時期にイオン電流の第1のピークが、燃焼室内の圧力がほぼ最大となる時期に第2のピークが発生しており、イオン電流は燃焼室内の圧力波形と類似している。
イオン電流を積算処理することで、トルクや燃焼状態と相関があるパラメータを得ることができる。なお、燃焼状態とトルクを検出する手段としてイオン電流を用いたが、他の手段として筒内圧センサ等を用いても良い。
図3において、ECU11は、機関回転数検出手段31、吸気管内圧力検出手段32、燃焼領域判定手段33、燃焼方式切替手段34、燃焼方式切替手段34に含まれる燃焼状態検出手段35、吸気制御手段36、燃料噴射制御手段37および点火時期制御手段38により構成され、ROM14に記憶された制御プログラムに基づいて、各種の演算処理を行う。
成層燃焼領域と均質燃焼領域では、燃焼方式切替手段34を介さずに、成層燃焼や均質燃焼について予め実験で求めた基本設定に対し、各種センサ出力に基づいた補正を行った燃料噴射制御、吸気制御と点火時期制御を実行する。
一方、燃焼方式切替領域では、燃焼状態検出手段35で検出される燃焼状態に応じて、燃焼方式切替手段34で1気筒毎あるいは気筒グループ毎に燃焼方式の切替を順に行うと共に、1気筒あるいは気筒グループの燃焼方式の切替をサイクル毎に徐々に実行し、燃焼状態と燃焼方式の切替えに応じた燃料噴射制御、吸気制御と点火時期制御を実行する。
吸気制御手段36がスロットルバルブ6の吸気制御を行い、燃料噴射制御手段37が燃料噴射弁9に対する燃料噴射制御を行い、点火時期制御手段38が点火プラグ10の点火時期制御を行う。
図4において、2、3、7〜10は図1におけるものと同一のものである。液相領域22は、燃料噴射弁9から噴出された燃料のうち蒸発不十分で液体噴霧が多く含まれる液相の領域である。気相領域23は、液相領域22と同様に噴出された燃料であるが、噴霧の外周部分であり燃料噴霧の分裂と蒸発が進んで燃料が気化した領域である。成層燃焼を行うには点火プラグ10の先端の電極に点火が可能な気相領域23が含まれる必要がある。
成層燃焼領域では、圧縮行程で燃焼室2に燃料噴射弁9から噴射された燃料は、噴口から噴射された後に分裂や蒸発とともに空気を取り込みながら、点火プラグ10近傍に可燃混合気を形成し、点火プラグ10の火花放電ギャップに火花放電することで、可燃混合気は燃焼する。
次に、点火プラグ10近傍の混合気形成について、成層燃焼実行時の燃料噴射タイミングにおける燃料噴霧形状の概略を示す図4を基に説明する。
気相領域23は、液相領域22と同様に噴出された燃料であるが、噴霧の外周部分であり燃料噴霧の分裂と蒸発が進んで燃料が気化した領域であり、成層燃焼を行うには点火プラグ10の先端の電極に点火が可能な気相領域23が含まれる必要がある。
もし、液相領域22が含まれると、混合気はオーバーリッチ状態となり、点火プラグ10の電極が燃料によって濡らされ、火花放電が阻害され失火するか、点火しても液相燃料の燃焼により燃焼変動が起こる。
比較的高負荷の運転状態では、出力を得るために低負荷よりも燃料噴射量が増加するので、液相領域22が拡大する傾向にあり、点火プラグ10の電極にかかりやすくなるので、成層燃焼領域は、成層燃焼が実際には可能な運転領域よりも低回転低負荷側に狭めた運転領域に設定している。
成層燃焼と均質燃焼の一方から他方への切替の際には、1サイクル中に吸気行程と圧縮行程にそれぞれ燃料を噴射する分割噴射として、それぞれの燃料噴射量の比率をサイクル毎に変更することで、徐々に燃焼方式を切替えていく。
また、吸入空気量も燃料噴射量の変更に合わせて制御する。なお、成層燃焼の場合は点火プラグの電極を燃料噴霧の気相領域が通過する短い期間に点火する必要があり、点火時期がズレると燃焼が悪化するので、燃焼方式の切替え中の点火時期については成層燃焼に合わせた設定とする。
また、1気筒あるいは気筒グループ毎に燃焼方式を切替えること、1気筒あるいは気筒グループの燃焼方式をサイクル毎に徐々に切替えることで、複数気筒同時での燃焼方式の切替よりも燃焼方式の切替時のトルクショックを緩和できる。
図5は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
図6は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の燃焼領域を判定する処理を示すフローチャートである。
図7において、縦軸に吸気管内圧力kPa、横軸に機関回転数rpmを取り、均質燃料領域、成層燃焼領域、燃焼切替領域を示している。
図9は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の燃焼方式切替領域において均質燃焼へ切替える際の制御を示すフローチャートである。
図10は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の燃焼状態を検出する処理を示すフローチャートである。
図11は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の燃焼方式切替領域で均質燃焼へ切替える際の燃料噴射制御を示すフローチャートである。
図12において、縦軸に要求トルクkPa、横軸に機関回転数rpmを取り、均質燃焼時の吸気行程基本噴射量を示している。
図13において、縦軸に要求トルクkPa、横軸に機関回転数rpmを取り、成層燃焼時の圧縮行程基本噴射量を示している。
図15において、縦軸に要求トルクkPa、横軸に機関回転数rpmを取り、均質燃焼時の基本スロットルバルブ開度を示している。
図16において、縦軸に要求トルクkPa、横軸に機関回転数rpmを取り、成層燃焼時の基本スロットルバルブ開度を示している。
図17において、縦軸に実トルクkPa、横軸にイオン電流積算値Vを取り、実トルクと、イオン電流積算値の関係をグラフで示している。
図18において、縦軸にスロットルバルブ開度トルク補正量、横軸に要求トルクと実トルクの差分を取り、両者の関係をグラフで示している。
図20は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の燃焼方式切替領域で成層燃焼へ切替える際の燃料噴射制御を示すフローチャートである。
図21は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の燃焼方式切替領域で成層燃焼へ切替える際の吸気制御を示すフローチャートである。
図22において、縦軸に燃料噴射量トルク補正量、横軸に要求トルクと実トルクの差分を取り、両者の関係をグラフで示している。
図24は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の燃焼方式切替中の特定気筒の制御動作を説明するためのタイミングチャートである。
燃焼方式の切替えは、1気筒毎に順に行い、機関回転数と負荷による運転状態が成層燃焼領域から燃焼方式切替領域になった場合には、燃焼状態を確認しながら成層燃焼を継続し、失火や燃焼変動により燃焼が良好ではない状態となったら、吸気行程噴射と圧縮行程噴射の分割噴射(分割噴射手段)として、吸気行程噴射量の比率を徐々に増加し、圧縮行程噴射量の比率を徐々に減少させながら、吸入空気量を徐々に均質燃焼の設定へ切替える。
ただし、失火や燃焼変動を確認しながら燃焼状態が良好でない場合は、均質燃焼を維持する。燃焼方式切替領域において、燃焼状態を確認しながら成層燃焼を実施することで燃費を向上することができる。
さらに、燃焼方式の切替えを1気筒毎に順に実施すること、1気筒の燃焼方式を徐々に切替えることに加えて、燃料噴射量と吸入空気量には燃焼状態に応じた補正を行うことで燃焼切替に伴うトルクショックを緩和することができる。
図5は、実施の形態1のメインとなる制御で、例えば4気筒の内燃機関に実施の形態1を適用した場合は、クランク角度180度毎に対応気筒について実行される。
つまり、#1気筒、#3気筒、#4気筒、#2気筒、#1気筒の順で処理する。
まず、図5のステップS101で、切替領域フラグがセットされているかどうかを確認する。切替領域フラグは、運転状態が燃焼方式切替領域にあるか否かを判断するためのフラグであり、ECU11の内部で、30ms毎に実行される図6に示す燃焼領域判定によって決定される。
図6のステップS202で、成層燃焼領域であるかどうかを確認し、成層燃焼領域である場合は、ステップS203で成層領域フラグをセットして、ステップS204で、切替領域フラグをクリアする。
一方、ステップS202で、成層燃焼領域ではないと判定された場合、ステップS205で、均質燃焼領域であるかどうかを確認する。均質燃焼領域である場合には、ステップS206で、成層領域フラグをクリアし、ステップS207で、切替領域フラグをクリアする。
ステップS205で、均質燃焼領域ではないと判定された場合は、両燃焼領域に挟まれた燃焼方式を切替えるべき燃焼領域であることを意味しているので、ステップS208で、切替領域フラグをセットする。
次に、ステップS105に進み、成層領域フラグがセットされているかどうかを確認する。成層領域フラグがセットされていれば、ステップS106において、成層燃焼で用いられる通常の燃料噴射制御、吸気制御および点火時期制御が実行される。
また、吸気制御では、両燃焼方式においてアクセル開度センサ信号と機関回転数から要求トルクを算出し、各燃焼方式に適した吸気量の制御を行う。
また、点火時期制御は、各燃焼方式において予め実験で求めた機関回転数と負荷に応じた基本点火時期に対し、各種センサ信号に基づいた補正を行い、算出した点火時期に点火プラグにより混合気を燃焼させる。
一方、何れかの切替可フラグがセットされていれば、ステップS302を実行することなく、ステップS303の処理に移る。ステップS303では、直前に処理した気筒の燃焼方式の切替が完了したことを示す切替完了(S−1)フラグがセットされているかどうかを確認し、切替完了(S−1)フラグがセットされていれば、ステップS304で、演算処理中の気筒の切替可(S)フラグをセットする。
ステップS303とステップS304の処理は、特定の気筒の燃焼方式の切替が完了していない限り、別の気筒の燃焼方式の切替処理を実行しないことを意味している。1気筒のみで燃焼方式の切替処理を行うので、トルクショックを緩和することができる。
一方、切替可(S)フラグがセットされていれば、ステップS109で、燃焼方式を切替える前の燃焼方式を確認するため、成層領域フラグがセットされているかどうかを確認する。セットされていれば、成層燃焼から均質燃焼への切替えとなるので、ステップS110に進み、均質燃焼への切替制御(S)を実行し、セットされていなければ、均質燃焼から成層燃焼への切替となるので、ステップS111に進み、成層燃焼への切替制御(S)を実行する。
図9のステップS401で、切替フラグがセットされているかどうかを確認する。この切替フラグは、次のステップS402で、成層燃焼を続けた結果、失火や燃焼変動があり燃焼状態が良好ではないと判断された場合に、ステップS405で均質燃焼への切替を行うためにセットされる。
図10のステップS501で、点火毎に発生し、トルクと相関のあるイオン電流を、例えばクランク角度0.5deg毎に積算する。ステップS502で、ステップS501で算出したイオン電流積算値が1点火前のイオン電流積算値の例えば70パーセントより大きいかどうかを確認し、大きい場合は、トルクが安定し燃焼状態が良好であるので、ステップS503で、燃焼良好フラグ(S)をセットする。
一方、失火や燃焼変動によりトルクが減少し、イオン電流積算値が小さくなった場合には燃焼が良好な状態ではないので、ステップS504で、燃焼良好フラグ(S)をクリアする。1点火前のイオン電流積算値の70パーセントとの比較としたが、燃焼状態が失火や燃焼変動のない良好な状態でも燃焼ばらつきがあり、また、イオン電流検出のばらつきもあるので、予め実験でこれらのばらつきを把握し、考慮した値に設定する。
図11のステップS601とステップS602で、均質燃焼時の吸気行程基本噴射量F1と成層燃焼時の圧縮行程基本噴射量F2を、機関回転数と要求トルクに基づき、予め実験で設定されたそれぞれの基本燃料噴射量マップを示す図12と図13から、運転状態に応じた噴射量を算出する。
要求トルクは、アクセル開度センサの出力を基に算出する。運転者が大きなトルクを求めてアクセルを大きく踏み込めば、アクセル開度センサ出力は大きくなる。従って、機関回転数や要求トルクの増加に伴い、基本燃料噴射量は、大きく設定されている。
次いで、ステップS604で、吸気行程に噴射する燃料量を吸気行程基本燃料噴射量F1と燃焼方式切替に伴う比率とトルク補正量から算出する。
吸気行程噴射量F1(S)=F1*n(S)/N*トルク補正量
ここで、Nは燃焼方式の切替に要するサイクル数であり、燃焼方式の切替に際し、燃焼の悪化が生じない最小サイクル数を予め実験で確認し設定する。本実施の形態1では、例えば5サイクルとする。n(S)は燃焼方式の切替開始からのサイクル数であり、燃焼方式の切替制御の実施回数を意味する。
圧縮行程噴射量F2(S)=F2*((N−n(S))/N)
ステップS604で、吸気行程噴射量はサイクル毎に増加し、ステップS605で、圧縮行程噴射量はサイクル毎に減少する。これらの演算結果に応じた噴射量を各行程において燃料噴射弁から噴射する。
圧縮行程噴射の場合には、燃料量の増減によって点火プラグ近傍の混合気が可燃混合気にならずに、失火や燃焼変動によるトルクショックが発生しやすい。それらを防止するために、圧縮行程噴射量にトルク補正を行わず、点火プラグ近傍の混合気形成のばらつきが小さく、失火や燃焼変動のない安定した燃焼が得られる吸気行程噴射量にトルク補正を実施することと両行程における噴射量をサイクル毎に変更することで、トルクショックを緩和することができる。
なお、次ステップS608で、燃焼方式の切替開始からのサイクル数を加算し、n(S)が5サイクル以上となる場合には、燃焼方式の切替も完了しているので、サイクル数のオーバーフローを防止するため、n(S)を5サイクルで制限する。
図14のステップS701とステップS702で、均質燃焼スロットルバルブ開度A1と成層燃焼スロットルバルブ開度A2を、機関回転数と要求トルクに基づき予め実験で設定されたそれぞれの基本スロットルバルブ開度マップを示す図15と図16から、運転状態に応じた基本スロットルバルブ開度を算出する。
機関回転数や要求トルクの増加に伴い、基本スロットルバルブ開度は大きく設定されている。
スロットルバルブ開度(S)=A1*n(S)/N+A2*((N−n(S))/N)
サイクル毎に均質燃焼スロットルバルブ開度A1が大きくなり、成層燃焼スロットルバルブ開度A2は小さくなり、均質燃焼切替分割燃料制御に合わせて徐々に吸気制御も均質燃焼スロットルバルブ開度A1に切替えられる。
ステップS705で、スロットルバルブ開度(S)をトルク補正量で補正する。
スロットルバルブ開度(S)=スロットルバルブ開度(S)*トルク補正量
吸気行程と圧縮行程での分割燃料噴射として、双方の燃料比率をサイクル毎に徐々に変更し、さらに、燃料噴射量の変化に合わせて、吸気量を制御するスロットルバルブの開度も徐々に変更することで、失火や燃焼変動によるトルクショックを起こすことなく燃焼方式の切替えを実施できる。
一方、図9の均質燃焼への切替制御(S)で、ステップS402で、燃焼状態が良好であり燃焼良好フラグ(S)がセットされていれば、ステップS403に進み、燃焼方式の切替開始からのサイクル数を示すn(S)を0サイクルとして、ステップS404で、成層燃焼に用いられる通常の燃料噴射制御、吸気制御と点火時期制御を継続する。
燃焼方式切替領域に入ってからも均質燃焼への切替制御(S)で、検出される燃焼状態が失火や燃焼変動のない良好な状態であれば、成層燃焼運転を継続するので、燃費を向上することができる。
図19のステップS801で、燃焼良好フラグ(S)がセットされているかどうかを確認する。図10に示す燃焼状態の検出で、失火や燃焼変動によるトルク低下がなく燃焼状態が良好であればセットされ、ステップS802で、図20に示す成層燃焼切替分割燃料制御(S)を実行する。
吸気行程噴射量F1(S)=F1*((N−n(S))/N)*トルク補正量
ここで、Nは燃焼方式の切替に要するサイクル数であり、燃焼方式の切替に際し、燃焼の悪化が生じない最小サイクル数を予め実験で確認し設定する。本実施の形態1では、例えば5サイクルとする。n(S)は燃焼方式の切替開始からのサイクル数であり、燃焼方式の切替制御の実施回数を意味する。
圧縮行程噴射量F2(S)=F2*n(S)/N
ステップS904で、吸気行程噴射量はサイクル毎に減少し、ステップS905で、圧縮行程噴射量はサイクル毎に増加する。これらの演算結果に応じた噴射量を各行程において燃料噴射弁から噴射する。失火や燃焼変動のない安定した燃焼が得られる吸気行程噴射量にトルク補正を実施することと両行程における噴射量をサイクル毎に変更することで、トルクショックを緩和することができる。
図21のステップS1003以外は図14の均質燃焼切替吸気制御(S)と同様であるので、その説明を省略する。ステップS1003で、ステップS1001とステップS1002で算出された均質燃焼時と成層燃焼時の運転状態に応じた基本スッロトルバルブ開度に成層燃焼切替分割燃料制御(S)に適した比率となる補正を加える。
スロットルバルブ開度(S)=A1*((N−n(S))/N)+A2*n(S)/N
最後に、ステップS1004で、トルク補正を行ったスロットルバルブ開度に制御し、図9の均質燃焼への切替制御(S)と同様に、燃料噴射量の変化に合わせた吸気量の制御とすることで、失火や燃焼変動によるトルクショックを起こすことなく、燃焼方式の切替が実施できる。
一方、図19の成層燃焼への切替制御(S)のステップS801で、図10に示す燃焼状態の検出で失火や燃焼変動によりトルクが低下し燃焼状態が良好でないと判定された場合には、ステップS805で、燃焼方式の切替開始からのサイクル数を示すn(S)を0サイクルとして、ステップS806で、均質燃焼に用いられる通常の燃料噴射制御、吸気制御と点火時期制御を継続する。
燃焼方式切替領域に入った直後から燃焼状態に失火や燃焼変動がなく良好な場合には成層燃焼運転への切替を実行するが、燃焼状態が良好でない場合には均質燃焼とすることで、燃焼の悪化を抑えつつ燃費を向上することができる。
30msのタイミングで実行する図6に示す燃焼領域判定で、機関回転数と負荷で運転状態を判定する。運転状態が均質燃焼である場合は、成層領域フラグはクリアされており、運転状態が均質燃焼から燃焼方式切替領域に変化したら、切替領域フラグがセットされる。
燃焼方式切替領域以外では、燃焼切替に関するフラグは全てクリアされた状態となっており、切替領域フラグのセット直後に実行される気筒が#1気筒であるとした場合、#1気筒に関する切替可(1)がセットされ、#1気筒のみについて燃焼方式の切替が実行される。
なお、燃料噴射制御や吸気制御では、このカウンタn(1)を基に燃焼方式に応じた補正がなされる。仮に燃焼方式を切替えている最中にイオン電流の積算値が70パーセント以下となった場合には、失火や燃焼変動が発生した可能性があるので、燃焼良好フラグ(1)をクリアし、カウンタn(1)を0とする。
失火や燃焼変動がなく燃焼状態が良好であれば、燃焼方式を切替える制御を継続し、カウンタn(1)が予め実験から求めた燃焼方式の切替に際し燃焼の悪化が生じない最小サイクル数、例えば本実施の形態1では5サイクルに達したら切替完了(1)フラグをセットして、#1気筒について燃焼方式の切替を完了する。
#4気筒や#2気筒についても同様の処理が行われ、運転状態が燃焼方式切替領域から成層燃焼に変化したら、切替領域フラグはクリアされ、成層領域フラグがセットされる。
30msのタイミングで実行する図6に示す燃焼領域判定で、機関回転数と負荷で運転状態を判定する。運転状態が成層燃焼であるので、成層領域フラグがセットされており、運転状態が成層燃焼から燃焼方式切替領域に変化したら、切替領域フラグがセットされる。
切替領域フラグのセット直後に実行される気筒が例えば#4気筒であるとした場合、#4気筒に関する切替可(3)フラグがセットされ、#4気筒のみについて燃焼方式の切替が実行される。#4気筒の燃焼方式が切替えられたら、#2気筒、#1気筒、#3気筒の順に燃焼方式が切替ええられる。
均質燃焼から燃焼方式切替領域を経て成層燃焼への燃焼方式切替時の燃料噴射制御は、吸気行程噴射と圧縮行程噴射の分割燃料噴射とし、燃焼方式の切替開始からのサイクル数を示すカウンタn(S)に応じて、吸気行程噴射量は吸気行程噴射の基本燃料噴射量から減量する。つまり、燃焼方式の切替に応じて吸気行程噴射量を変化させる。
なお、失火や燃焼変動により燃焼が良好でない場合には、燃料噴射制御、吸気制御と点火時期制御は均質燃焼に合わせた設定とする。
一方、成層燃焼から燃焼方式切替領域を経て均質燃焼へ燃焼方式を切替える時の燃料噴射制御も分割噴射として、吸気行程噴射量を燃焼方式の切替に応じて、基本燃料噴射量へ増量し、圧縮行程噴射量を基本燃料噴射量から減量する。吸気制御は、スロットルバルブ開度を成層燃焼に合わせた基本設定から、均質燃焼に合わせた基本設定へ燃焼切替に応じて変更する。点火時期制御は、燃焼方式の切替中は燃焼の悪化を防止するために成層燃焼に合わせた基本設定とする。
図25は、この発明の実施の形態2による内燃機関の制御装置の燃焼方式を切替える気筒を判定する処理を示すフローチャートである。
図25のステップS1101で、全ての気筒に対し、1気筒でも燃焼方式の切替を許可する切替可フラグがセットされているかどうかを確認する。切替可フラグがセットされていなければ、何れの気筒も燃焼方式の切替処理が実行されていないので、ステップS1102で、本処理を実行中の気筒の切替可(S)フラグをセットする。#1気筒の燃焼方式の切替処理を実行中であれば、切替可(1)フラグがセットされる。一方、何れかの切替可フラグがセットされていれば、ステップS1102を実行することなく、ステップS1103の処理に移る。
燃焼方式の切替開始から2サイクル以下の場合は、別気筒の燃焼方式の切替を実施した場合、トルク変動が悪化する恐れがあるので、ステップS1104を介さず、切替気筒判定(S)を終了する。一方、2サイクルよりも多い場合は、燃焼方式を切替中の気筒とは別の気筒の燃焼方式の切替を開始してもトルク変動が起こる恐れがないので、ステップS1104で、切替可(S)フラグをセットして、切替気筒判定(S)を終了する。
図26は、この発明の実施の形態3による内燃機関の制御装置の燃焼方式を切替える気筒を判定する処理を示すフローチャートである。
本実施の形態3では、2つの気筒を1グループとして説明する。
ステップS1201で、全ての気筒に対し、1気筒でも燃焼方式の切替を許可する切替可フラグがセットされているかどうかを確認する。切替可フラグがセットされていなければ、何れの気筒も燃焼方式の切替処理が実行されていないので、ステップS1202で、本処理を実行中の気筒と次に処理する気筒の切替可(S)フラグをセットする。
#1気筒の燃焼方式の切替処理を実行中であれば、切替可(1)フラグと次に処理される#3気筒の気筒切替可(2)フラグがセットされる。
ステップS1203とステップS1204の処理は、ある特定の気筒グループの燃焼方式の切替が完了していない限り、別の気筒グループの燃焼方式の切替処理を実行しないことを意味している。
図27は、この発明の実施の形態4による内燃機関の制御装置の燃焼方式を切替える気筒を判定する処理を示すフローチャートである。
本実施の形態4では、2つの気筒を1グループとして説明する。
ステップS1301で、全ての気筒に対し、1気筒でも燃焼方式の切替を許可する切替可フラグがセットされているかどうかを確認する。切替可フラグがセットされていなければ、何れの気筒も燃焼方式の切替処理が実行されていないので、ステップS1302で、本処理を実行中の気筒切替可(S)フラグと次に処理する気筒の切替可(S+1)フラグをセットする。
#1気筒の燃焼方式の切替処理を実行中であれば、切替可(1)フラグと次に処理される#3気筒の気筒切替可(2)フラグがセットされる。
本実施の形態4では、例えば2サイクルとの比較としたが、燃焼の悪化によるトルク変動が生じないサイクル数を予め実験で確認したサイクルとする。燃焼方式の切替開始から2サイクル以下の場合は、別気筒グループの燃焼方式の切替を実施した場合、燃焼の悪化によるトルク変動が発生する恐れがあるので、ステップS1305を介さず、切替気筒判定(S)を終了する。
一方、2サイクルよりも多い場合は、燃焼方式を切替中の気筒グループとは別の気筒グループの燃焼方式の切替を開始してもトルク変動が悪化する恐れがないので、ステップS1305で、切替可(S)フラグと次に処理される気筒の切替可(S+1)フラグをセットして、切替気筒判定(S)を終了する。
10 点火プラグ、11 ECU、12 入出力インターフェース、
13 中央演算処理装置、14 ROM、15 RAM、16 駆動回路、
17 イオン電流検出回路、18 クランク角センサ、19 アクセル開度センサ、
21 カム角センサ、
31 機関回転数検出手段、32 吸気管内圧力検出手段、33 燃焼領域判定手段、
34 燃焼方式切替手段、35 燃焼状態検出手段、36 吸気制御手段、
37 燃料噴射制御手段、38 点火時期制御手段。
Claims (9)
- 低速低負荷域を含む成層燃焼領域で圧縮行程噴射により点火プラグ近傍に可燃混合気を形成して燃焼する成層燃焼運転と、高速高負荷域の均質燃焼領域で吸気行程噴射により燃焼室全体に可燃混合気を形成して燃焼する均質燃焼運転との間の燃焼方式の切替えを行う内燃機関の制御装置であって、
上記成層燃焼領域と上記均質燃焼領域に挟まれた運転領域で、上記成層燃焼領域より高回転高負荷側で成層燃焼が可能でかつ燃料噴射量の増加に伴い燃焼が悪化する可能性のある運転領域を燃焼方式切替領域と定義し、
機関回転数を検出する機関回転数検出手段、
負荷を示す各気筒の吸気管の圧力を検出する吸気管内圧力検出手段、
燃焼室の燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段、
上記燃焼室に燃料を噴射するタイミング及び燃料噴射量を制御する燃料噴射制御手段、
上記燃焼室に導入される吸入空気量を制御する吸気制御手段、
上記成層燃焼領域、上記均質燃焼領域及び上記燃焼方式切替領域のいずれの運転領域にあるかを機関回転数と負荷から判定する燃焼領域判定手段、
上記燃焼方式切替領域で上記燃焼方式の切替えを行う燃焼方式切替手段を備え、
上記燃焼方式切替手段は、上記成層燃焼領域または上記均質燃焼領域から上記燃焼方式切替領域に変化してから、上記燃焼状態検出手段により検出される上記燃焼状態に応じて、上記燃焼方式の切替えを1気筒毎または気筒グループ毎に順に行うとともに、1気筒または気筒グループの上記燃焼方式の切替えを所定サイクル数かけて徐々に変更し、
上記燃料噴射制御手段及び上記吸気制御手段は、上記燃焼方式切替手段による燃焼方式の切替え及び上記燃焼状態検出手段による燃焼状態に応じて、それぞれ燃料噴射量または吸入空気量を制御し、
上記燃焼方式切替手段は、均質燃焼運転から成層燃焼運転へ燃焼方式を切替える場合には、運転領域が上記燃焼方式切替領域に入った直後から上記燃焼方式の切替えを開始し、
成層燃焼運転から均質燃焼運転へ燃焼方式を切替える場合には、運転領域が上記燃焼方式切替領域に入ってから、上記燃焼状態検出手段で成層燃焼を維持できる限界を検出して、上記燃焼方式の切替えを開始することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 上記燃焼方式切替手段は、特定気筒あるいは特定気筒グループの燃焼方式の切替え開始の所定サイクル後から別気筒あるいは別気筒グループの燃焼方式の切替えを開始することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 上記燃焼方式切替手段は、特定気筒あるいは特定気筒グループの燃焼方式の切替えが完了した後に別気筒あるいは別気筒グループの燃焼方式の切替えを開始することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 1サイクル中の吸気行程と圧縮行程にそれぞれ燃料を噴射する分割噴射手段を備え、
上記燃焼方式切替手段は、上記燃焼方式の切替え中に分割噴射手段による噴射を実行し、
上記燃料噴射制御手段は、上記燃焼方式切替手段による上記燃焼方式の切替えに応じてサイクル毎に吸気行程噴射と圧縮行程噴射の燃料噴射量の比率を変更することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の内燃機関の制御装置。 - 上記燃焼方式切替手段による燃焼方式の切替えにおいて、上記燃料噴射制御手段は、上記燃焼状態検出手段で検出される燃焼状態に応じて、吸気行程噴射の燃料噴射量を補正することを特徴とする請求項4記載の内燃機関の制御装置。
- 上記燃焼方式切替手段による燃焼方式の切替えにおいて、上記燃料噴射制御手段は、圧縮行程噴射の燃料噴射量への補正を禁止することを特徴とする請求項4記載の内燃機関の制御装置。
- 上記燃焼方式切替手段による燃焼方式の切替えにおいて、上記吸気制御手段は、成層燃焼時の吸入空気量と均質燃焼時の吸入空気量に比率を設け、上記燃焼方式切替手段による燃焼方式の切替えに応じてサイクル毎に比率を変更し、上記燃焼状態検出手段で検出される燃焼状態に応じて吸入空気量を補正することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項記載の内燃機関の制御装置。
- 点火時期を制御する点火時期制御手段を備え、
上記燃焼方式切替手段による燃焼方式の切替えにおいて、上記点火時期制御手段は、燃焼室の点火時期を成層燃焼に合わせた設定にすることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項記載の内燃機関の制御装置。 - 上記燃焼方式切替領域以外の運転領域では、上記燃焼方式切替手段を実行しないことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項記載の内燃機関の制御装置。
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