JP5275987B2 - テルミット溶接用端子 - Google Patents

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Description

本発明は、テルミット溶接に用いられる端子及びその端子を用いたテルミット溶接方法に関し、さらに詳細には、端子とテルミット溶着金属との溶接強度を高めることができる端子及びその端子を用いた溶接方法に関するものである。
テルミット溶接は、母材の表面近傍でアルミニウムと酸化銅(または酸化鉄)の混合粉に点火して燃焼させ、その化学反応によって生じた熱で銅(または鉄)と母材の一部を溶融して溶着を行うという溶接技術である。当該溶接技術は、特に、鉄道分野において多く採用され、ボンド線と称する銅等からなる導線の各両端部に銅製の端子を接続したケーブルと、鉄道用レール材の表面とをテルミット材の溶着部を介して溶接を行って、離間した鉄道用レール材同士を電気的に接続する。
具体的なテルミット溶接方法は以下のとおりである。まず、テルミット材となる上記混合粉と点火材とを坩堝内に充填し、続いて、接続ケーブルを鉄道用レール材表面上の溶接部に配置する。さらに、点火材に点火して坩堝内で燃焼を起こして銅(または鉄)を溶融させ、溶融した銅(又は鉄)を溶接部内に導入する。最終的に、溶融銅(又は鉄)を冷却することによって、溶接部内の外郭形状を備えた溶着部が接続ケーブルの一部を覆った状態で鉄道用レールと融接される。
従来から、ボンド線を介して鉄道用レール同士を電気的に接合する場合、ボンド線が銅であるため、ボンド線を接続する溶接端子も銅製のものを用いるのが一般的である。ボンド線と溶接端子とを接続する工程は、溶接端子の端部に形成されたスリーブ部内にボンド線を挿入し、スリーブ部を圧着することにより行われる。しかし、銅は延性や展性に富んだ特性を有するので、容易に圧着や成形等をすることができる反面、ボンド線を圧着した圧着部に応力が内在し、例えば、鉄道用レール上にテルミット溶接を行った後に車両の通過の際に生じる振動によって圧着部に亀裂や損傷が起こり易い。したがって、近年では、圧着等に起因する応力が内在しても振動によって亀裂や損傷を発生しない強度を確保するために、銅製の端子の代わりに鉄製端子を採用する試みがある。
特開2005−14008号公報
図3は、導線2を内部に挿入して電気的に接続した鉄製端子10を銅テルミット溶接している態様を示した上面図である。テルミット溶接において、テルミット材の溶融銅は、通常は注湯されたときに鉄製端子10を覆うように中央部から外側へ流れ込み、鉄製端子10との境界面から冷却及び凝固しながら溶着部3を形成する。溶着部3が形成される工程において、溶融銅4は、流動しながら鉄製端子10を覆い、その境界面において溶接熱で拡散及び固溶した状態で融接された領域を含んでいる。溶着部3の外周領域5は、溶融銅4の流動が完了する前に凝固が開始されてしまった領域であり、境界面6で示した領域は鉄製端子10と融接されていない。したがって、溶着部3は、鉄製端子10と融接されていない領域が生じて、融接面積が十分に確保されないため、溶接強度の面で問題が生じる。
上述の問題を解決するために、本発明は、鉄製端子に予め金属塗膜をしてからテルミット溶接することによって、テルミット材の溶融銅と鉄製端子との融接面積を拡大し、もって溶接強度を向上させる鉄製端子及びその鉄製端子を用いたテルミット溶接方法を提供することを目的とする。
(1)上述の目的を達成するために、本発明のテルミット溶接用の端子は、テルミット材の溶融金属に対して拡散される金属が、少なくとも溶融金属と接触する鉄製端子の表面に塗膜されていることを特徴とする。
(2)さらに、上述の目的を達成するために、本発明のテルミット溶接の端子に塗膜される金属は銅またはニッケルであることが好ましい。
(3)さらに、上述の目的を達成するために、本発明のテルミット溶接方法は、鉄製端子の表面に、テルミット材の溶融金属に対して拡散される金属を塗膜する工程と、所定の溶接位置に塗膜された端子を配置する工程と、テルミット材の溶融金属を溶接位置に流入させて、テルミット材の溶融金属と塗膜金属とを拡散させてテルミット材の溶融金属と鉄製端子との融接部を形成する工程とを含むことを特徴とする。
(発明の効果)
(1)本発明に係る端子は、テルミット材の溶融金属に対して拡散される金属が、少なくとも溶融金属と接触する鉄製端子の表面に塗膜されているので、テルミット溶接時に予め塗膜された金属と溶融金属とが、溶接熱によって拡散しながら鉄製端子表面に広く拡散及び固溶し、その結果、塗膜なしに鉄製端子とテルミット溶接を行った場合と比較して広い溶着面積を形成することによって溶接強度を高めることができる。
(2)本発明の別の実施形態による端子は、塗膜される金属が銅またはニッケルなので、融点等の面でテルミット材の銅と良好な親和性を持つため拡散されやすく鉄製端子への固溶を促進し、さらに溶接強度を高めることができる。
(3)本発明の別の実施形態によるテルミット溶接方法は、鉄製端子の表面に、テルミット材の溶融金属に対して拡散される金属を塗膜する工程を含んでいるので、テルミット溶接した際に、(1)と同様に、テルミット溶接時に予め塗膜された金属と溶融金属とが、溶接熱によって拡散しながら鉄製端子表面に広く拡散及び固溶し、その結果、塗膜なしに鉄製端子とテルミット溶接を行った場合と比較して広い溶着面積を形成することによって溶接強度を高める効果を得ることができる。
本発明の好ましい実施形態について実施例を挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ構成要素には同じ符号を用い、適宜その説明を省略する場合がある。
図1は、本発明に係るテルミット溶接用の端子1の断面図を示している。当該端子1は、母体10が鉄で製造されており、内部に銅からなるボンド線等を挿入できる孔8が設けられている。さらに、当該鉄製の端子母体10の表面には金属膜7が施されている。金属膜7は、テルミット材の溶融金属に対して親和性があり、溶接熱で容易に拡散される金属が選択され、好ましくは、銅テルミット溶接においては銅またはニッケルが選択される。
金属膜7が銅である場合、銅の金属膜7は、シアン化銅メッキ法によって鉄製の端子母体10表面に施される。シアン浴中に当該端子母体10を浸して電気的にメッキすると、銅は鉄製の端子母体10表面に対して非常に良好な密着性を有する。
しかし、無電界メッキ法や溶融メッキ法で塗膜することも可能である。
ボンド線2は、例えば、端子1の内部に挿入してから成形する等、端子1の孔8の内面と接触するように接続されて電気的な接続を保つことができる。
次に、テルミット溶接の溶接方法について説明すると、銅又はニッケルの金属膜を鉄製の端子母体10の表面に施した後、例えば、鉄道用レール表面上における所定の溶接位置に端子1を固定配置し、テルミット材の溶融金属を流し込んで溶着部を形成する。
図2は、鉄製の端子母体10に金属塗膜7を施してから図3と同様にテルミット溶接を行った実施例であって、図3に示した境界面6と同一箇所の拡大図である。
本発明の端子1を用いてテルミット溶接を行うと、テルミット材の溶融金属4は、端子1表面の一部を覆うように流動し、予め鉄製の端子母体10に塗膜した金属7と溶接熱によって拡散される。それから、溶融金属4は、塗膜金属7と鉄製の端子母体10との境界面を点線で示した符号9の位置まで侵食しながら端子1と融接される。その結果、溶着部3の、溶融金属4と鉄製の端子母体10表面との境界面における融接面積は拡大し、それにより、溶接強度が向上していることがわかる。
図1は、本発明の端子の断面図である。 図2は、本発明の端子とテルミット材である溶融金属との拡散及び固溶状態を示している。 図3は、従来の鉄製端子を銅テルミット溶接している態様を示した上面図である。

Claims (4)

  1. ボンド線をレールに取付けるために用いる、テルミット溶接用の鉄製端子であって、テルミット材の溶融金属に対して拡散される金属が、少なくとも溶融金属と接触する鉄製端子の先端部及び側面部の表面に塗膜され、レールに当該端子がテルミット溶接により溶接されたときに、当該端子の先端部及び側面部に、テルミット材の溶融金属と前記鉄製端子の溶融部が形成されることを特徴とする端子。
  2. 塗膜される金属は銅またはニッケルであることを特徴とする請求項1に記載の端子。
  3. ボンド線をレールに取付けるために用いる、先端部と側面部を有する鉄製端子を、レールの表面にテルミット溶接する方法であって、
    テルミット材の溶融金属に対して拡散される金属を、予め前記鉄製端子の先端部及び側面部の表面に塗膜する工程と、
    所定の溶接位置に、当該塗膜された端子を配置する工程と、
    テルミット材の溶融金属を溶接位置に流入させて、当該溶融金属と塗膜金属とを拡散させて、前記溶融金属と鉄製端子との融接部を、前記鉄製端子の先端部と側面部に形成する工程と、
    を含むことを特徴とするテルミット溶接方法。
  4. 塗膜される金属は、銅またはニッケルであることを特徴とする請求項3に記載のテルミット溶接方法。
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