(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した第1の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示されるように、車両2には、例えば運転者が実際に車両キーを操作しなくてもドアロックの施解錠等の車両動作を行うことが可能な電子キーシステムが搭載されている。電子キーシステムは、キー固有のIDコードを無線通信で発信可能な電子キー1が車両キーとして使用されている。電子キーシステムは、車両2からIDコード返信要求としてリクエスト信号Srqを発信させ、このリクエスト信号Srqを電子キー1が受信すると、それに応答する形で電子キー1が自身のIDコードを含ませたIDコード信号Sidを狭域無線通信により車両2に返信し、電子キー1のIDコードが車両2のIDコードと一致するか否かでドアロックの施解錠が実行されるシステムである。
本例の電子キーシステムには、車両2のドアロックの施解錠が自動で実行されるキーフリーシステム(キーフリー機能)が含まれている。このキーフリー機能は、例えば電子キー1を持った運転者が車両2に近づいた際に、車両2の全ドアロックが自動で施錠され、一方、電子キー1を持った運転者が車両2から離れた際には、車両2の全ドアロックが自動で解錠されるシステムである。また、本例のキーフリーシステムは、車両2の運転席の近辺、即ち運転席ドア31でのみID照合が実行されるシステムとなっている。
電子キーシステムを以下に説明すると、車両2には、電子キー1との間で狭域無線通信を行う際にID照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)21が設けられている。照合ECU21には、車両2の運転席ドア31に埋設されて車外にLF(Low Frequency)帯の信号を発信可能な車外LF発信機22と、車内後方の車体等に埋設されてRF(Radio Frequency)帯の無線信号を受信可能なRF受信機23とが接続されている。車外LF発信機22は、リクエスト信号Srqを車外LF発信アンテナ22aから運転席ドア31の周辺に発信可能である。車外LF発信機22が運転席ドア31の周囲にリクエスト信号Srqの通信エリアA1を形成する(図2参照)。なお、本例では、電子キー1を車内に置き忘れた際にドアロックを施錠できないよう車内の運転席及び助手席にも通信エリアA1が形成される。RF受信機23は、自身のRF受信アンテナ23aで受信したRF帯の信号を復調するとともに、その復調後の信号を受信データとして照合ECU21へ出力する。
照合ECU21には、例えばドアロックの施解錠等を管理するメインボディECU26が車内LAN(Local Area Network)25を介して接続されている。メインボディECU26は、照合ECU21からの指令を基に運転席ドア31、助手席ドア32、後席左側ドア33、後席右側ドア34、及びラゲージドア35のドアロック装置51〜55を駆動制御することでドアロックを施錠状態又は解錠状態にする。また、メインボディECU26は、各ドア31〜35に設けられるカーテシスイッチ41〜45からの検出結果を基に各ドア31〜35の開扉及び閉扉を照合ECU21へ出力する。
一方、電子キー1には、車両2との間で電子キーシステムに準じた無線通信を行う際のコントロールユニットとして通信制御部11が設けられている。通信制御部11には、外部で発信されたLF帯の信号を受信可能なLF受信部12と、通信制御部11の指令に従いRF帯の信号を発信可能なRF発信部13とが接続されている。LF受信部12は、自身のLF受信アンテナ12aで受信したLF帯の信号を復調するとともに、その復調後の信号を受信データとして通信制御部11へ出力する。また、RF発信部13は、通信制御部11から得た通信データを変調し、電子キー1が持つ固有のIDコードを含ませたRF帯のIDコード信号SidをRF発信アンテナ13aから発信する。
車両2が駐車状態(エンジン停止及びドアロック施錠状態)の際、照合ECU21は、車外LF発信機22からLF帯のリクエスト信号Srqを定期的に発信させ、運転席ドア31の周囲に通信エリアA1を形成する。電子キー1がこの通信エリアA1に入り込んでリクエスト信号SrqをLF受信部12で受信すると、電子キー1はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ11aに登録されたIDコードを含ませたRF帯のIDコード信号SidをRF発信部13から返信する。照合ECU21は、RF受信機23でIDコード信号Sidを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせてID照合(車外照合)を行う。なお、通信エリアA1が車内にも形成されているがこのID照合を以下車外照合という。照合ECU21は、車外照合が成立すると、メインボディECU26にドアロックの解錠指令を出力する。解錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、施錠状態のドアロックを解錠する。
一方、車両2が停止状態(エンジン停止及びドアロック解錠状態)の際、照合ECU21は、メインボディECU26からの信号でドア31〜35のいずれかが開閉されて全ドア31〜35のいずれかが閉められたことを認識すると、車外LF発信機22からリクエスト信号Srqを定期的に発信させ、運転席ドア31の周囲に通信エリアA1を形成する。電子キー1がこの通信エリアA1から出てリクエスト信号Srqを受信できないと、電子キー1はIDコード信号Sidを返信しない。照合ECU21は、IDコード信号SidをRF受信機23で受信しないために車外照合が成立しないと、メインボディECU26にドアロックの施錠指令を出力する。施錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、解錠状態のドアロックを施錠する。なお、車両2は、車内のドアロックスイッチが操作されてドアロックが施錠されたり、エンジンスイッチが操作されてエンジンが始動されたりした際には、リクエスト信号Srqの発信を停止する。
また、電子キーシステムには、電子キー1のボタン操作で車両2に無線で施錠信号Sl又は解錠信号Sulを発信してドアロックの施解錠を行うことが可能な機能としてワイヤレスキーシステム(ワイヤレスドアロック機能)が含まれている。ワイヤレスキーシステムを搭載した車両2には、ワイヤレスキーシステムのコントロールユニットとして前述の照合ECU21が設けられている。電子キー1には、施錠信号Slを発信させる施錠ボタン14と、解錠信号Sulを発信させる解錠ボタン15とが筐体の表面に露出して設けられている(図2参照)。施錠ボタン14と解錠ボタン15とは、通信制御部11に接続されている。前述のRF発信部13は、通信制御部11から得た通信データを変調し、電子キー1が持つ固有のIDコードと機能コードとを含ませてRF帯の施錠信号Sl又は解錠信号SulをRF発信アンテナ13aから発信する。
電子キー1は、施錠ボタン14が操作されると、施錠信号SlをRF発信部13から発信する。照合ECU21は、RF受信機23で施錠信号Slを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせてID照合(ワイヤレス照合)を行う。照合ECU21は、ワイヤレス照合が成立すると、メインボディECU26にドアロックの施錠指令を出力する。施錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
また、電子キー1は、解錠ボタン15が操作されると、解錠信号SulをRF発信部13から発信する。照合ECU21は、RF受信機23で解錠信号Sulを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせてID照合(ワイヤレス照合)を行う。照合ECU21は、ワイヤレス照合が成立すると、メインボディECU26にドアロックの解錠指令を出力する。解錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、施錠状態のドアロックを解錠する。
なお、照合ECU21は、ワイヤレス照合によってドアロックが解錠されて所定時間Tw2(例えば、30秒)が経過するまでにいずれのドア31〜35の開閉も行われない場合には、ドアロックを解錠状態のまま維持するのは防犯上好ましくないため、メインボディECU26にドアロックの施錠指令を出力する。施錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
照合ECU21には、時間をカウントするカウンタ21bが設けられている。カウンタ21bは、ワイヤレス照合によってドアロックが解錠されると、カウントを開始し、所定時間Tw2に達すると、所定時間Tw2が経過したことを出力する。照合ECU21は、カウンタ21bで所定時間Tw2が経過したことを認識すると、メインボディECU26にドアロックの施錠指令を出力する。
また、本例の電子キーシステムには、ワイヤレスドアロック機能によるドアロック解錠後、キーフリー機能による施錠動作を遅らせて実行する遅延施錠システム(遅延施錠機能)が含まれている。ところで、本例はキーフリー機能の実行条件がドア閉操作となっているので、ワイヤレスドアロック機能でドアロックを解錠して運転席以外のドア32〜35を開けて閉めた際には、キーフリー機能におけるID照合成立の試みが、この場合においても実行されることになる。しかし、このときの運転者は運転席以外のドア32〜35付近にいるために車外照合が成立しないので、運転者は運転前に単に運転席以外のドア32〜35を閉めただけであるにも拘わらず、ドアロックが運転者の意図に反して施錠されてしまう。よって、本例の遅延施錠システムは、この意図しない施錠切り換えを防ぐために働くものである。
この場合、照合ECU21には、キーフリー機能による施錠動作の実行タイミングを変更可能な遅延施錠実行部21cが設けられている。遅延施錠実行部21cは、遅延施錠手段として機能する。遅延施錠実行部21cは、ワイヤレス照合によってドアロックが解錠されて、カーテシスイッチ41〜45によって運転席以外のドア32〜35のいずれかが開閉されて全てのドア31〜35が閉められたことを認識すると、遅延施錠モードを実行する。すなわち、遅延施錠実行部21cは、車外LF発信機22からリクエスト信号Srqをすぐに発信せず、運転者が例えば後席左側ドア33から運転席ドア31へ移動する時間に相当する所定時間Tw1(例えば、10秒)経過後にリクエスト信号Srqの発信を実行する。遅延施錠実行部21cは、ワイヤレス照合が成立するとリクエスト信号Srqの発信を停止するため、運転席以外のドア32〜35の開閉が行われてから所定時間Tw1経過後にリクエスト信号Srqの発信を再開することとなる。なお、遅延施錠実行部21cは、ワイヤレス照合によってドアロックが解錠されて、運転席ドア31が開閉されて全てのドア31〜35が閉められたことを認識すると、車外LF発信機22からリクエスト信号Srqの発信を再開する。
カウンタ21bは、運転席以外のドア32〜35のいずれかが開閉されて全てのドア31〜35が閉まった旨の通知をメインボディECU26から受け付けると、カウントを開始し、所定時間Tw1に達すると、所定時間Tw1が経過したことを出力する。遅延施錠実行部21cは、カウンタ21bで所定時間Tw1が経過したことを認識すると、車外照合を行うべく車外LF発信機22からリクエスト信号Srqの発信を再開する。
次に、電子キーシステムのワイヤレス照合によってドアロックが解錠され、かつ車両2のドア31〜35が閉められた際の車両2の処理動作を図3に示すタイムチャート及び図4に示すフローチャートに従って説明する。本例では、図2に示されるように、運転者が電子キー1の解錠ボタン15を操作して、ワイヤレスドアロック機能によりドアロックの解錠を行うとともに、後席左側ドア33を開けて荷物を積み込み、荷物積み込み後、後席左側ドア33を閉めて、運転席ドア31へ移動する状況として説明する。なお、図4のフローチャートは、ワイヤレスドアロック機能によりドアロックが解錠状態においてドア31〜35のいずれかが開けられて閉められると実行されるものとする。
図3に示されるように、車両2は、全ドア31〜35が閉められた状態でドアロックが施錠状態において、リクエスト信号Srqを定期発信している。そして、車両2は、電子キー1から発信された解錠信号Sulによるワイヤレス照合が成立したことを確認すると、図3のタイミングT1に示すようにリクエスト信号Srqの発信を停止してドアロックを解錠する。すなわち、照合ECU21は、解錠信号Sulによるワイヤレス照合が成立すると、車両2に対応するとともに解錠信号Sulを発信している電子キー1が車両2の近くに存在していると判断し、メインボディECU26にドアロックの解錠指令を出力する。解錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、施錠状態のドアロックを解錠する。また、照合ECU21は、電子キー1が車両2の近くに存在していても通信エリアA1に入り込んでいなければ、解錠したドアロックが車外照合不成立によって施錠されてしまうため、リクエスト信号Srqの発信を停止する。
なお、車両2は、ワイヤレスドアロック機能によりいずれのドア31〜35が開閉されなかった場合には、ドアロックが解錠されてから所定時間Tw2経過後にドアロックを施錠する。すなわち、照合ECU21は、ワイヤレス照合によってドアロックが解錠されてから所定時間Tw2(例えば、30秒)が経過するまでに、メインボディECU26からいずれのドア31〜35も開閉された旨の信号がないと、ワイヤレス通信の遠隔操作によってドアが解錠されたままになっていると認識する。そして、照合ECU21は、ドアロックを解錠状態のまま維持するのは防犯上好ましくないため、メインボディECU26にドアロックの施錠指令を出力する。施錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
図4に示されるように、車両2は、ワイヤレスドアロック機能によりドアロックが解錠された状態において、ドアが開けられて閉められると、その閉められたドアが運転席ドア31であるか否かを判断する(ステップS1)。すなわち、照合ECU21は、メインボディECU26からの信号でドア31〜35のいずれかが閉められたことを受け付けると、運転席ドア31であるか否かを判断する。車両2は、閉められたドアが運転席ドア31である(ステップS1:YES)と、リクエスト信号Srqを発信する(ステップS5)。すなわち、遅延施錠実行部21cは、メインボディECU26から運転席ドア31が閉められた旨の信号を受け付けると、例えば運転席以外のドア32〜35を開けずに、直接運転席ドア31を開けて荷物を積み込んだり、取り出したりして車両から立ち去ったと判断して、通常通りの動作形式に則り車外LF発信機22からリクエスト信号Srqを発信する。なお、車両2は、車内のドアロックスイッチが操作されてドアロックが施錠されたり、エンジンスイッチが操作されてエンジンが始動されたりした際には、車外照合の必要がないため、リクエスト信号Srqの発信を停止する。
一方、車両2は、閉められたドアが運転席ドア31でない、すなわち運転席以外のドア32〜35(例えば、後席左側ドア33)が開閉された(ステップS1:NO)ことを確認すると、運転席以外のドア31が閉められてから所定時間Tw1経過後にリクエスト信号Srqを発信する遅延施錠モードを実行する(ステップS2)。すなわち、遅延施錠実行部21cは、運転者が荷物を詰め込む等のために運転席以外のドア32〜35を開閉したと判断して、図3のタイミングT2に示されるようにカウンタ21bでカウントを開始する。
車両2は、運転席以外のドア32〜35が閉められてから、運転者が運転席以外のドア32〜35から運転席ドア31までの移動時間に相当する所定時間Tw1(例えば、10秒)が経過したか否かを判断する(ステップS4)。すなわち、遅延施錠実行部21cは、カウンタ21bのカウントが所定時間Tw1に達しているか否かを確認する。車両2は、所定時間Tw1が経過していない(ステップS4:NO)ことを確認すると、所定時間Tw1が経過するまで確認を繰り返す。
一方、車両2は、所定時間Tw1が経過した(ステップS4:YES)ことを確認すると、リクエスト信号Srqを発信する(ステップS5)。すなわち、遅延施錠実行部21cは、カウンタ21bのカウントが所定時間Tw1に達していることを確認すると、このタイミングで車外LF発信機22からリクエスト信号Srqを発信して、運転席ドア31付近において電子キー1の有無を確認する。このように、遅延施錠実行部21cは、運転席以外のドア32〜35が閉操作された際には、通常よりもリクエスト信号Srqの発信タイミングを遅らせて、車外照合成立可否の確認を実行する。
ここで、車両2は、運転席以外のドア32〜35のいずれかが閉められてから所定時間Tw1が経過するまでに、再度いずれかのドア31〜35が開閉されたか否かを判断する(ステップS3)。すなわち、照合ECU21は、リクエスト信号Srqの発信を待つ間にドア31〜35の開閉操作があるかどうかを監視すべく、運転席以外のドア32〜35から運転席ドア31へ移動して運転席ドア31が開けられて閉められたか否か、又は再度運転席以外のドア32〜35のいずれかが開けられて閉められたか否かを判断する。車両2は、いずれかのドア31が開閉された(ステップS3:YES)ことを確認すると、ステップS1に戻り、前述したステップを再度実行する。
なお、車両2は、開閉されたドアが運転席ドア31であった場合(ステップS1:YES)には、図3のタイミングT3に示されるように、リクエスト信号Srqを発信する(ステップS5)。すなわち、遅延施錠実行部21cは、メインボディECU26から運転席ドア31が開閉された旨の信号があると、例えば運転席ドア31を開けて荷物を積み込んだり、取り出したりして車両から立ち去ったと判断して、車外LF発信機22からリクエスト信号Srqを発信する。車両2は、開閉されたドアが運転席以外のドア32〜35であった場合(ステップS1:NO)には、遅延施錠モードを再度実行する(ステップS2)。
車両2は、ステップS5においてリクエスト信号Srqを発信すると、車外照合が成立したか否かを判断する(ステップS6)。すなわち、照合ECU21は、電子キー1が通信エリアA1に入り込んでいるか否かを判断する。車両2は、車外照合が成立した(ステップS6:YES)ことを確認すると、ステップS5へ移行する。すなわち、照合ECU21は、車外照合が成立すると、車両2に対応した電子キー1が通信エリアA1に入り込んでいると判断し、メインボディECU26へ指令を出さずドアロックを解錠状態に維持する。
一方、車両2は、車外照合が成立しない(ステップS6:NO)ことを確認すると、図3のタイミングT4に示されるように、ドアロックを施錠する(ステップS7)。すなわち、照合ECU21は、例えば運転席以外のドア32〜35を開けて荷物を詰め込んで車両2から離れたために車両2に対応した電子キー1が通信エリアA1に入り込んでいないと判断し、メインボディECU26にドアロックの施錠指令を出力する。施錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
さて、運転者がワイヤレスドアロック機能により車両2のドアロックを解錠して後席左側ドア33を開け、そこから荷物を車内に積み込み、後席左側ドア33を閉じた後、リクエスト信号Srqの発信を所定時間Tw1経過後に再開することで自動施錠が遅れて実行される。このため、運転者がその後席左側ドア33から運転席ドア31に移動してもキーフリー機能によるドアロックの自動施錠が実行されない。よって、キーフリー機能によるドアロックの自動施錠が実行されるに際して、運転者が運転席以外のドア32〜35から運転席ドア31に移動するまでの時間を稼ぐことが可能となるので、意図しないキーフリー機能によるドアロックの施錠を生じ難くすることが可能となる。
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ワイヤレス通信によるキー遠隔操作によって車両2のドアロックを解錠した後、運転席以外のドア32〜35が開操作されて閉じられた際には、キーフリー機能による自動施錠の開始を遅延させる。これにより、運転者が前述した解錠及びドア開閉操作を行っても、運転者が運転席ドア31に移動するまでの時間が確保されるので、このときはドアロックが実行されない。よって、運転者が意図しないドアロックを実行させずに済む。
(2)リクエスト信号Srqの発信を通常よりも遅らせて、キーフリー機能に基づくID照合の実行開始を遅らせることによって、意図しないキーフリー機能によるドアロックの施錠が防がれる。また、この場合は、無駄なリクエスト信号Srqの発信が不要となるので、この通信に必要となっていた消費電力を削減することが可能となり、キーフリー機能の省エネルギー化を図ることが可能となる。
(3)ワイヤレス通信によるキー遠隔操作によってドアロックが解錠された後に、運転席ドア31が開閉された際にはあえて自動施錠は通常通り実行する。このため、例えば運転者がワイヤレスドアロック機能により車両2のドアロックを解錠して運転席ドア31を開けて、荷物を積み込んだり、取り出したりして車両から立ち去った際にはドアロックの施錠が実行される。よって、防犯上好ましくないドアロックが解錠された状態を無用に維持することを防ぐことができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明かかる電子キーシステムを具体化した第2の実施形態について、図5及び図6を参照して説明する。この実施形態の電子キーシステムは、ワイヤレスドアロック機能によってドアロックが解錠された後にドアが開閉された際の遅延施錠モードにおいて、リクエスト信号Srqの発信を所定時間Tw1経過後に再開するのではなく、車外照合成立可否の判断は実行するものの、ドアロックの施錠を遅らす(所定時間Tw3経過後に実行する)点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、この実施形態の電子キーシステムは、図1に示す第1の実施形態の電子キーシステムと同様の構成を備えている。
遅延施錠実行部21cは、ワイヤレスドアロック機能によってドアロックが解錠されて、カーテシスイッチ41〜45によって運転席以外のドア32〜35のいずれかが開閉されて全てのドア31〜35が閉められたことを認識すると、遅延施錠モードに入る。本例の場合は、このドア閉操作のタイミングで車外LF発信機22からリクエスト信号Srqを発信し、運転者が例えば後席左側ドア33から運転席ドア31に移動する時間に相当する所定時間Tw3(例えば、10秒)の間においてキーフリー機能における車外照合の不成立を許容する。即ち、遅延施錠実行部21cは、所定時間Tw3の間においてリクエスト信号Srqの応答がなくてもこれを許容することが可能で、要は所定時間Tw2の間、リクエストを発信し続けて、この時間内においてIDコード信号Sidを受け付けたか否かを監視する。
また、遅延施錠実行部21cは、この遅延施錠モード期間中にリクエストの応答を結局のところ受け付けることができない、即ち車外照合が成立しないことを確認すると、車両2の全てのドアロックを施錠する。すなわち、遅延施錠実行部21cは、車外照合不成立から所定時間Tw3が経過すると、ドアロックの施錠を行う。なお、遅延施錠実行部21cは、ワイヤレス照合によってドアロックが解錠されて、運転席ドア31が開閉されて全てのドア31〜35が閉められたことを認識すると、車外照合を行い、この場合に車外照合が不成立であることを確認すると、所定時間Tw3を待たずにドアロックを施錠する。
次に、電子キーシステムのワイヤレス照合によってドアロックが解錠されて車両2のドア31〜35が閉められた際の車両2の処理動作を図5に示すタイムチャート及び図4に示すフローチャートに従って説明する。
図5に示されるように、車両2は、全ドア31〜35が閉められた状態で、かつドアロックが施錠状態において、リクエスト信号Srqを定期発信している。そして、車両2は、電子キー1から発信された解錠信号Sulによるワイヤレス照合が成立したことを確認すると、図5のタイミングT1が示すようにリクエスト信号Srqの発信を停止してドアロックを解錠する。
図6に示されるように、車両2は、ワイヤレスドアロック機能によりドアロックが解錠された状態において、ドアが開けられて閉められると、リクエスト信号を発信し(ステップS11)、車外照合が成立したか否かを判断する(ステップS12)。すなわち、照合ECU21は、メインボディECU26からいずれかのドア31〜35が閉められた旨の信号を受け付けると、車外LF発信機22からリクエスト信号Srqを発信し、電子キー1が通信エリアA1に入り込んでいるか否かを判断する。車両2は、車外照合が成立した(ステップS12:YES)ことを確認すると、ステップS1へ移行する。すなわち、照合ECU21は、車外照合が成立すると、車両2に対応した電子キー1が通信エリアA1に入り込んでいると判断し、メインボディECU26へ指令を出さずドアロックを解錠状態に維持する。
一方、車両2は車外照合が成立しない(ステップS12:NO)ことを確認すると、閉められたドアが運転席ドア31であったか否かを判断する(ステップS13)。すなわち、照合ECU21は、運転席以外のドア32〜35から運転席ドア31へ移動して運転席ドア31が開けられて閉められたか否か、又は再度運転席以外のドア32〜35のいずれかが開けられて閉められたか否かを判断する。車両2は、閉められたドアが運転席ドア31であった場合(ステップS13:YES)には、ステップS17へ移行する。すなわち、遅延施錠実行部21cは、メインボディECU26から運転席ドア31が開閉された旨の信号を受け付けると、図5のタイミングT14に示されるように、例えば運転者が運転席ドア31を開けて、荷物を積み込んだり、取り出したりして車両から立ち去ったと判断して、ステップS17へ移行する。
一方、車両2は、閉められたドアが運転席ドア31でない、すなわち運転席以外のドア32〜35(例えば、後席左側ドア33)である場合(ステップS13:NO)には、車外照合不成立から所定時間Tw3経過後にドアロックを施錠する遅延施錠モードを実行する(ステップS14)。すなわち、遅延施錠実行部21cは、運転者が荷物を詰め込む等のために運転席以外のドア32〜35を開閉したと判断して、遅延施錠モードを実行する。ここで、施錠遅延部21cは、図5のタイミングT13に示されるようにカウンタ21bでカウントを開始する。そして、遅延施錠実行部21cは、所定時間Tw3(例えば、10秒)の猶予時間を持たせて、この間に何度も発信するリクエスト信号Srqに対して、一度でもIDコード信号Sidの応答があったかどうか(要は、車外照合が成立するか否か)を監視する。
車両2は、ドア閉操作を確認してから所定時間Tw3(例えば、10秒)が経過したか否かを判断する(ステップS16)。すなわち、遅延施錠実行部21cは、カウンタ21bのカウントが所定時間Tw3に達しているか否かを確認する。車両2は、所定時間Tw3が経過していない(ステップS16:NO)ことを確認すると、ドア閉操作の有無確認を、所定時間Tw3が経過するまで繰り返し実行する。
一方、車両2は、所定時間Tw3が経過した(ステップS16:YES)ことを確認すると、図3のタイミングT15に示されるように、ドアロックを施錠する(ステップS17)。すなわち、遅延施錠実行部21cは、カウンタ21bのカウントが所定時間Tw3に達していることを確認すると、例えば運転席以外のドア32〜35を開けて荷物を詰め込んで車両2から離れたために車両2に対応した電子キー1が通信エリアA1に入り込んでいないと判断し、メインボディECU26にドアロックの施錠指令を出力する。施錠指令を受け付けたメインボディECU26は、ドアロック装置51〜55を駆動させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
さて、運転者がワイヤレスドアロック機能により車両2のドアロックを解錠して後席左側ドア33を開け、そこから荷物を車内に積み込み、後席左側ドア33を閉じた後、リクエスト信号Srqを発信し、所定時間Tw3が経過するまで車外照合不成立を許容することで自動施錠が遅れて実行される。このため、運転者がその後席左側ドア33から運転席ドア31に移動してもキーフリー機能によるドアロックの自動施錠が実行されない。よって、キーフリー機能によるドアロックの自動施錠が実行されるに際して、意図しないキーフリー機能によるドアロックの施錠を生じ難くすることが可能となる。
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)及び(3)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(4)ワイヤレス通信によるキー遠隔操作によって車両2のドアロックを解錠した後、車両2のどのドア31〜35が開操作されて閉じられた際にも、従来通りの通信成立可否の試みがなされる。このため、車両2周辺に電子キー1が存在するかどうかを、逐次監視することが可能でありながら、キーフリー機能によるドアロックの自動施錠を遅らせることが可能である。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、車内に電子キー1があるか否かを車外照合で一緒に行うようにしたが、リクエスト信号Srqを車内に発信する車内LF発信機及び車内LF発信アンテナを備えて、車内におけるID照合(車内照合)を行い、車外照合と車内照合とを別々に行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、車両2の周囲に通信エリアA1を形成するようにしたが、図7に示されるように、車外LF発信アンテナ22aを各ドア31〜35に設け、リクエスト信号Srqを各ドア31〜35の周辺に発信することで車両2の周囲に通信エリアA2を形成するようにしてもよい。
・また、車両2の周囲に通信エリアA2を形成する場合において、運転席ドア31と運転席以外のドア32〜35とを区別しないで遅延施錠モードを実行するようにしてもよい。詳しくは、第1の実施形態では、図4のステップS1の運転席ドア31であるか否かの判断を行わず、ステップS2から開始する。また、第2の実施形態では、図6のステップS13の運転席ドア31であるか否かの判断を行わず、ステップ12からステップS14へ移行する。すなわち、カウンタ21bは、運転席ドア31も含めたドア31〜35のいずれかが開閉されて全てのドア31〜35が閉まった旨の通知をメインボディECU26から受け付けると、カウントを開始する。
このようにすれば、車両2の周囲に通信エリアA2が形成される車両2においても、キーフリー機能によるドアロックの自動施錠が実行されるに際して、意図しないキーフリー機能によるドアロックの施錠を生じ難くすることが可能となる。
・上記実施形態において、所定時間Tw1は運転者が運転席以外のドア32〜35から運転席ドア31に移動する時間を確保できる時間であれば、任意に変更してもよい。
・上記実施形態において、所定時間Tw2は運転者がワイヤレスドアロック機能によってドアロックを解錠して車両2の通信エリアA1,A2に入り込むまでの時間を確保できる時間であれば、任意に変更してもよい。
・上記実施形態において、所定時間Tw3は運転者が運転席以外のドア32〜35から運転席ドア31に移動する時間を確保できる時間であれば、任意に変更してもよい。
・電子キーシステムで使用する各通信の周波数は、どの周波数の電波を使用してもよい。また、キーフリー機能で、車両2から電子キー1への通信と電子キー1から車両2への通信とで、各々の無線信号の周波数を異ならせる必要はなく、これらを同じとしてもよい。
・キーフリー機能の通信エリアA1,A2とワイヤレスドアロック機能の通信が可能な通信エリアは、通常、ワイヤレスドアロック機能の通信エリアの方が広く形成されているが、例えばこれらが同じに形成されていてもよい。
・本例において、ドアロックの施錠遅延処理は、定義として、ID照合可否判断の実行であってもよいし、或いはドアロックの施錠の実際の動作実行(例えば、ドアロックモータの動作開始)でもどちらでもよいこととする。