以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以降の説明において符号XXXによって参照される構成要素が複数存在する場合には、符号XXX−Aのように添え字Aによって個別の構成要素を参照したり、単に符号XXXによって係る構成要素を総称したりする。尚、各実施形態は、リレー局、ギャップフィラーなどの中継を前提とする種々の無線通信装置として実装できる。
(第1の実施形態)
図2に示されるように、第1の実施形態に係る無線中継装置100は、アンテナ101、受信RF(radio frequency)部102、アナログ−デジタル変換器(ADC)103、回り込み波キャンセル部104、デジタル−アナログ変換器(DAC)105、送信RF部106、増幅器107、送信アンテナ108、ウェイト乗算部109及びウェイト生成部200を含む。
無線中継装置100は、伝搬路20を介して親局10からの信号を受信し、図示しない伝搬路を介して図示しない子局に信号を送信する。親局10は、例えば基地局、放送局などの無線通信装置である。子局は、例えばUE(User Equipment)などの無線通信装置である。
受信アンテナ101は、親局10からの信号を伝搬路20を介して受信する。尚、無線中継装置100の中継実施期間において、受信アンテナ101は、送信アンテナ108からの回り込み波も回り込み伝搬路40を介して受信する。即ち、中継実施期間における受信アンテナ101による受信信号には、親局10からの信号と送信アンテナ108からの回り込み波との両方が含まれている。
受信RF部102は、受信アンテナ101による受信信号を調整(フィルタリング、低雑音増幅など)し、ダウンコンバートしてベースバンド信号を生成する。ADC103は、受信RF部102からのベースバンド信号(アナログ信号)を(ダウンサンプルされた)デジタル信号に変換する。
回り込み波キャンセル部104は、ADC103の出力信号から、受信アンテナ101における回り込み波を模した信号(以降、レプリカ信号と称する)を減算することにより、回り込み波のキャンセルを実現する。回り込み波キャンセル部104の出力信号は、DAC105に供給されると共に、ウェイト乗算部109及びウェイト生成部200にも供給される。DAC105は、回り込み波キャンセル部104の出力信号(デジタル信号)をアナログ信号に変換する。
送信RF部106は、DAC105からのアナログ信号を調整(フィルタリングなど)し、アップコンバートしてRF信号を生成する。増幅器107は、送信RF部106からのRF信号の電力を増幅し、送信アンテナ108に供給する。尚、図1及び他の図において、増幅器107は送信RF部106と区別して描かれているが、増幅器107は送信RF部106の一部であってもよい。
送信アンテナ108は、増幅器107からのRF信号を送信する。この送信信号は、図示しない伝搬路を介して図示しない子局によって受信されると共に、回り込み伝搬路40を介して受信アンテナ101によっても受信される。
ウェイト乗算部109は、回り込み波キャンセル部104からの入力信号に、ウェイト生成部200からのウェイトを乗算することによりレプリカ信号を得る。ウェイト乗算部109は、レプリカ信号を回り込み波キャンセル部104に供給する。
ウェイト生成部200は、回り込み波キャンセル部104からの入力信号に基づいて、ウェイトを算出する。ウェイト生成部200は、ウェイトをウェイト乗算部109に供給する。尚、ウェイト生成部200の詳細は後述される。
以下、本実施形態における回り込み波のキャンセルの原理の理解を容易にするために数式を用いて説明する。尚、以降の解析は、各信号を等価的にベースバンド信号として扱っている。親局10からの送信信号をX(z)と定義する。また、z
−1はZ変換における遅延素子を表す。X(z)などは、zの多項式で表される。伝搬路20に対応する伝搬路応答をB(z)と定義する。送信信号X(z)は、伝搬路20の通過により伝搬路応答B(z)を乗算されて、受信アンテナ101によって受信される。回り込み伝搬路40の伝搬路応答をR(z)、ウェイト乗算部109によって乗算されるウェイトをW(z)と夫々定義する。回り込み波キャンセル部104の出力信号、即ち、観測点30における観測信号をY(z)と定義する。増幅器107の特性をKと定義する。ここで、観測信号Y(z)は、下記の数式(1)によって表現できる。
数式(1)の右辺の第1項は、親局10からの送信信号に基づく成分を表している。数式(1)の右辺の第2項は、送信アンテナ108からの回り込み波に基づく成分を表している。数式(1)の右辺の第3項は、無線中継装置100内で(例えば、回り込み波キャンセル部104の前段で)付加される雑音成分を表している。数式(1)の右辺の第4項は、回り込み波キャンセル部104によってキャンセルされるレプリカ信号の成分を表している。数式(1)は、下記の数式(2)に変形できる。
一方、観測点30における系全体の伝搬路応答(伝搬路20及び回り込み伝搬路40の組み合わせに対応する伝搬路応答)をH(z)と定義すると、観測信号Y(z)は下記の数式(3)によっても表現できる。
数式(2)において、無線中継装置100のSN比(信号対雑音電力比)が十分に高いならばB(z)・X(z)に対してQ(z)が十分に小さいので、Q(z)が零であると仮定することができる。係る仮定によれば、数式(2)及び数式(3)に基づいて、伝搬路応答H(z)は下記の数式(4)によっても表現できる。
ここで、数式(4)の分母(1−R(z)・K+W(z))が零になると、無線中継装置100において発振が生じる。従って、いかなるR(z)が与えられたとしてもこの分母が零とならないことを保証にするために、ウェイトW(z)に関して下記の数式(5)を成立させることが望ましい。
数式(5)が成立することは、下記の数式(6)によって定義される誤差E(z)が零になることと等価である。即ち、ウェイト生成部200は、数式(6)の誤差E(z)が零になるようにウェイトW(z)を生成することが望ましい。
伝搬路応答H(z)は、中継実施期間において送信信号X(z)が参照信号(パイロット信号などの既知信号)である場合の観測信号Y(z)から推定できる。また、伝搬路応答B(z)は、中継開始前、中継停止期間など(即ち、送信アンテナ108から電波が放射されない期間)において送信信号X(z)が参照信号である場合の観測信号Y(z)から推定できる。ウェイト生成部200は、例えば数式(6)に従って算出した誤差E(z)と、現行のウェイトとを用いて、下記の数式(7)に従って更新されたウェイトを生成する。
数式(7)において、W及びEに付されたインデックス(即ち、n,n+1)は例えばシンボル番号を表す。μは忘却係数を表す。最初のウェイトW0(z)は、零であってもよいが、例えば好適なウェイトが既知であるならばその既知ウェイトが使用されてもよい。
ウェイト生成部200は、図3に示されるように、伝搬路推定部201、ウェイト誤差算出部202、ウェイト更新部203、伝搬路変動算出部204、伝搬路更新部205及びウェイト制御部206を含む。ウェイト制御部206は、ウェイト生成部200の各要素(例えば、ウェイト誤差算出部202、ウェイト更新部203、伝搬路変動算出部204及び伝搬路更新部205)を制御する。
伝搬路推定部201は、回り込み波キャンセル部104からの入力信号(即ち、観測信号Y(z))に基づいて中継実施期間において伝搬路応答H(z)を推定する。伝搬路推定部201は、推定した伝搬路応答H(z)をウェイト誤差算出部202及び伝搬路変動算出部204へ出力する。
ウェイト誤差算出部202は、例えば上記の数式(6)に従って誤差E(z)を算出できる。具体的には、ウェイト誤差算出部202は、ウェイト制御部206によって指定される更新実施期間において、誤差E(z)を例えばシンボル毎に算出する。ウェイト誤差算出部202は、伝搬路推定部201からの伝搬路応答H(z)と、伝搬路更新部205からの伝搬路応答B(z)とを用いて誤差E(z)を算出する。ウェイト誤差算出部202は、算出した誤差E(z)をウェイト更新部203へ出力する。一方、ウェイト誤差算出部202は、ウェイト制御部206によって指定される更新停止期間において、誤差E(z)の算出を停止してもよい。
ウェイト更新部203は、例えば上記の数式(7)に従ってウェイトW(z)を更新できる。具体的には、ウェイト更新部203は、ウェイト制御部206によって指定される更新実施期間において、現行のウェイトW(z)とウェイト誤差算出部202からの誤差E(z)とを用い、更新されたウェイトW(z)を例えばシンボル毎に生成する。一方、ウェイト更新部203は、ウェイト制御部206によって指定される更新停止期間において、ウェイトW(z)の更新を停止する。ウェイト更新部203は、更新されたウェイトをウェイト乗算部109へ出力する。
ここで、誤差E(z)は、数式(6)から明らかなように、伝搬路応答B(z)及び伝搬路応答H(z)に基づいて算出される。しかしながら、中継実施期間において伝搬路推定部201は、伝搬路応答H(z)を推定するものの、伝搬路応答B(z)を推定しない。従って、中継実施期間において伝搬路応答B(z)が変動すると、誤差E(z)を正しく計算することが困難となる。即ち、回り込み波を十分にキャンセルすることが困難となり、発振が生じやすくなる。
例えば、伝搬路応答B(z)を周期的に再測定(再推定)すれば、伝搬路応答B(z)の変動に追従できるので、誤差E(z)を正しく計算し易くなる。但し、伝搬路応答B(z)を再測定するためには、中継を停止して回り込み波を排除する必要がある。即ち、伝搬路応答B(z)の再測定は、無線中継装置100の動作効率を低下させるおそれがある。
図1は、伝搬路応答B(z)を周期的に再測定した場合に無線中継装置が安定動作(発振せずに動作)した頻度のシミュレーション結果を示している。このシミュレーションは、3GPP−LTEの信号を中継することを仮定し、親局から無線中継装置までのドップラー周波数を5Hz及び10Hzと夫々仮定している。このシミュレーションは、以下の要領で実施された。まず、理想的な条件下(例えば、再測定間隔=1シンボルに設定した状態)で無線中継装置を100サブフレーム分動作させる。理想的な条件下で発振が生じると「発振」の度数を1カウントし、次の試行に移る。理想的な条件下で発振が生じなければ、再測定間隔を1サブフレームに設定して無線中継装置を再び100サブフレーム分動作させる。再測定間隔=1サブフレームで発振が生じれば、「0」の度数を1カウントし、次の試行に移る。一方、再測定間隔=1サブフレームで発振が生じれば、以下同様に、再測定間隔を1サブフレームずつインクリメントして発振が生じるまで同様の評価を繰り返す。このような評価が100回試行された。
例えば、再測定間隔を1サブフレームに設定して無線中継装置が安定動作する頻度(100回中)は、「1」、「2」、「3」、・・・の度数の累積値に等しい。一般化すれば、再測定間隔をXサブフレームに設定した状態で無線中継装置が安定動作する頻度(100回中)は、「X」以上の度数の累積値に等しい。図1によれば、再測定間隔を少なくとも数サブフレーム程度に設定しなければ、無線中継装置を安定動作させることが困難であることが読み取れる。
図1から明らかなように、伝搬路応答B(z)を周期的に再測定する比較例によれば、数サブフレーム毎に中継を停止させなければ伝搬路応答B(z)の変動に追従することが困難である。そこで、本実施形態に係る無線中継装置100は、伝搬路応答B(z)の再測定を実施することなく(或いは、再測定間隔を比較的大きく設定して)この伝搬路応答B(z)の変動に追従する。
以下、伝搬路応答B(z)の変動に追従するための手法を説明する。上記の数式(6)は、下記の数式(8)に変形できる。
所与の時点における伝搬路応答H(z)及び伝搬路応答B(z)の値をH
0(z)及びB
0(z)で表し、異なる時点における伝搬路応答H(z)及び伝搬路応答B(z)の値をH
1(z)及びB
1(z)で表すこととする。仮に、両時点の間における伝搬路応答R(z)の変動が緩やか(望ましくは、不変)であり、かつ、ウェイトW(z)が更新されないとすれば、両時点における誤差E(z)は等しい値となる。即ち、数式(8)に基づいて下記の数式(9)が成立する。
E(z)の絶対値が1よりも十分に小さければ、伝搬路応答B(z)の変動(B
1(z)−B
0(z))が伝搬路応答H(z)の変動(H
1(z)−H
0(z))と同程度であるととみなすことができる。ここで、前述のように、数式(9)を成立させるためには、両時点の間に亘ってウェイトW(z)が更新されないことが前提となる。しかしながら、回り込み波をキャンセルするためには、ウェイトW(z)の更新も必要である。従って、ウェイト生成部200において、ウェイトに関して前述の更新停止期間及び更新実施期間の両方が用意される。例えば、更新停止期間及び更新実施期間は、交互に用意される。直前の更新停止期間の終了時における伝搬路応答B(z)の値をB
0(z)で表し、現行の更新停止期間の開始時における伝搬路応答H(z)の値をH
t(z)で表し、現行の更新停止期間の終了時における伝搬路応答B(z)及び伝搬路応答H(z)の値をB
1(z)及びH
1(z)で表すこととすると、下記の数式(10)が成立する。
ここで、αは補正係数である。即ち、伝搬路応答B(z)の変動(B1(z)−B0(z))に要した期間TBは伝搬路応答H(z)の変動(H1(z)−H0(z))に要した期間THに比べて長いことが考慮され、αによって両期間の差異に起因する変動量の差異が補正される。αは、両期間の比(=TB/TH)に基づく値であってもよいし、設計的或いは実験的に導出された値(例えば、1より大きい値)であってもよい。
3GPP−LTEに関して、更新実施期間及び更新停止期間は、例えば図4に示されるように用意される。図4の例によれば、更新実施期間及び更新停止期間は夫々1/2サブフレーム長(=1スロット長=7シンボル長=0.5ms)を持つ。図4の例によれば、TB=1サブフレーム、TH=1/2サブフレームなので、α=2が用いられる。尚、更新実施期間及び更新停止期間の長さは異なっていてもよいし、一方または両方の長さが可変であってもよい。
図3の伝搬路変動算出部204は、上記の数式(9)の左辺に示される伝搬路応答H(z)の変動を算出する。例えば、伝搬路変動算出部204は、ウェイト制御部206から指定される更新停止期間の開始時点及び終了時点における伝搬路応答H(z)の値を伝搬路推定部201から入力し、両者の変動を算出する。伝搬路変動算出部204は、算出した変動を伝搬路更新部205へ出力する。
伝搬路更新部205は、上記の数式(10)に従って、伝搬路応答B(z)を更新する。例えば、伝搬路更新部205は、ウェイト制御部206によって指定される更新停止期間の終了時点において、現行の伝搬路応答B(z)と伝搬路変動算出部204からの変動とを用い、更新された伝搬路応答B(z)を生成する。伝搬路更新部205は、更新された伝搬路応答B(z)をウェイト誤差算出部202へ出力する。
以上説明したように、第1の実施形態に係る無線中継装置は、回り込み波キャンセルのためのウェイトに関して更新実施期間及び更新停止期間を用意する。この無線中継装置は、親局から当該無線中継装置までの伝搬路及び回り込み伝搬路の組み合わせに対応する伝搬路応答の更新停止期間に亘る変動を算出する。そして、この無線中継装置は、係る変動に基づいて親局から当該無線中継装置までの伝搬路に対応する伝搬路応答を更新する。従って、本実施形態に係る無線中継装置によれば、中継を停止させることなく、親局から当該無線中継装置までの伝搬路に対応する伝搬路応答の変動に追従し、回り込み波を十分にキャンセルすることができる。即ち、この無線中継装置によれば、発振を予防し、安定動作することができる。尚、本実施形態に係る無線中継装置は、伝搬路応答B(z)の変動追従に加えて伝搬路応答B(z)の周期的な再測定を実施してもよい。本実施形態に係る無線中継装置によれば、第3の実施形態において述べられるように、安定動作するために必要な再測定間隔を大きくすることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る無線中継装置は、ウェイトを周波数領域で算出(更新)する点が前述の第1の実施形態に係る無線中継装置100と異なる。以降の説明では、本実施形態において第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。尚、以降の各実施形態において、説明の具体化のために、ウェイトを周波数領域で算出することを前提とするが、ウェイトを時間領域で算出しても勿論よい。
本実施形態に係る無線中継装置は、例えば前述の無線中継装置100におけるウェイト生成部200を図5に例示されるウェイト生成部300に置き換えることによって構成される。ウェイト生成部300は、FFT(Fast Fourier Transform)部307、伝搬路推定部301、ウェイト誤差算出部302、ウェイト更新部303、IFFT(Inverse FFT)部308、伝搬路変動算出部304、伝搬路更新部305及びウェイト制御部306を含む。ウェイト制御部306は、ウェイト生成部300の各要素(例えば、ウェイト誤差算出部302、ウェイト更新部303、伝搬路変動算出部304及び伝搬路更新部305)を制御する。
FFT部307は、回り込み波キャンセル部104の出力信号(即ち、観測信号Y(z))にFFTを施す。具体的には、FFT部307は、時間領域の信号(観測信号Y(z))のサンプルを所定数蓄積するためのバッファ機能を有し、この蓄積された所定数のサンプルにFFTを施す。即ち、FFT部307は、観測信号Y(z)を周波数領域の観測信号Y(fk)に変換する。尚、以降の説明において、kは周波数領域におけるサンプル番号を表す。直交周波数分割多重(OFDM;Orthogonal Frequency Division Multiplex)に関して、kはサブキャリア番号と等価である。また、FFT部307は、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform)を行う他の機能部に置き換えられてもよい。
伝搬路推定部301は、FFT部307からの周波数領域の観測信号Y(fk)に基づいて中継実施期間において周波数領域の伝搬路応答H(fk)を推定する。伝搬路推定部301は、推定した伝搬路応答H(fk)をウェイト誤差算出部202及び伝搬路変動算出部204へ出力する。
ここで、Z変換の性質上、前述の各数式においてzにexp(j2πfT)を代入することにより、周波数領域での解析を実施できる。jは虚数単位を表し、fは周波数を表し、Tはサンプリング間隔を表す。例えば、数式(3)は、周波数領域に関して下記の数式(11)に書き換えることができる。
ところで、3GPP−LTEは、図6に示すフレームフォーマットを使用する。図6において、アンテナポート1用の参照信号及びアンテナポート2用の参照信号は特定の(相対的な)時間及び周波数において常に送信されており、アンテナポート3用の参照信号、アンテナポート4用の参照信号及びユーザ固有の参照信号は必要に応じて送信される。図6から明らかなように、LTEのフレームフォーマットでは、参照信号(RS)は時間方向及び周波数方向に間引かれている。このようなフレームフォーマットが適用される場合、伝搬路推定部301は参照信号から導出した伝搬路応答の推定値を用いて、参照信号の存在しない時間及び周波数における伝搬路応答の推定値を補完する機能を持つものとする。
ウェイト誤差算出部302は、例えば上記の数式(6)に代えて下記の数式(12)に従って誤差E(f
k)を算出できる。
具体的には、ウェイト誤差算出部302は、ウェイト制御部306によって指定される更新実施期間において、誤差E(fk)を例えばシンボル毎に算出する。ウェイト誤差算出部302は、伝搬路推定部301からの伝搬路応答H(fk)と、伝搬路更新部305からの伝搬路応答B(fk)とを用いて誤差E(fk)を算出する。ウェイト誤差算出部302は、算出した誤差E(fk)をウェイト更新部303へ出力する。一方、ウェイト誤差算出部302は、ウェイト制御部306によって指定される更新停止期間において、誤差E(fk)の算出を停止してもよい。
ウェイト更新部303は、例えば上記の数式(7)に代えて下記の数式(13)に従ってウェイトW(f
k)を更新できる。
具体的には、ウェイト更新部303は、ウェイト制御部306によって指定される更新実施期間において、現行のウェイトW(fk)とウェイト誤差算出部302からの誤差E(fk)とを用い、更新されたウェイトW(fk)を例えばシンボル毎に生成する。一方、ウェイト更新部303は、ウェイト制御部306によって指定される更新停止期間において、ウェイトW(fk)の更新を停止する。ウェイト更新部303は、更新されたウェイトをIFFT部308へ出力する。
IFFT部308は、ウェイト更新部303からのウェイトW(fk)にIFFTを施す。即ち、IFFT部308は、周波数領域のウェイトW(fk)を時間領域のウェイトに変換する。尚、IFFT部308が行うIFFTのサイズの増大に伴って、時間領域のウェイトのサイズ(フィルタ長)が増大するので、処理遅延が問題となるおそれがある。故に、必要に応じて、IFFTの出力信号を間引いたり、打ち切ったりすることにより時間領域のウェイトのサイズを小さくしてもよい。IFFT部308は、時間領域のウェイトをウェイト乗算部109へ出力する。また、IFFT部308は、逆離散フーリエ変換(Inverse Discrete Fourier Transform)を行う他の機能部に置き換えられてもよい。
伝搬路変動算出部304は、伝搬路応答H(fk)の変動(H1(fk)−Ht(fk))を算出する。例えば、伝搬路変動算出部304は、ウェイト制御部306から指定される更新停止期間の開始時点及び終了時点における伝搬路応答H(fk)の値を伝搬路推定部301から入力し、両者の変動を算出する。伝搬路変動算出部304は、算出した変動を伝搬路更新部305へ出力する。
伝搬路更新部305は、上記の数式(10)に代えて下記の数式(14)に従って、伝搬路応答B(f
k)を更新する。
例えば、伝搬路更新部305は、ウェイト制御部306によって指定される更新停止期間の終了時点において、現行の伝搬路応答B(fk)と伝搬路変動算出部304からの変動とを用い、更新された伝搬路応答B(fk)を生成する。伝搬路更新部305は、更新された伝搬路応答B(fk)をウェイト誤差算出部302へ出力する。
以上説明したように、本実施形態に係る無線中継装置は、ウェイトを周波数領域で算出している。従って、本実施形態に係る無線中継装置によれば、例えばOFDMを使用するシステム、周波数領域での処理を前提とするシステム(LTEの上りリンクなど)などにおいて伝搬路応答の変動により効果的に追従できる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る無線中継装置は、中継開始前、中継停止期間などにおいて伝搬路応答B(fk)を推定する点が前述の第1乃至第2の実施形態に係る無線中継装置と異なる。以降の説明では、本実施形態において第1乃至第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
本実施形態に係る無線中継装置400は、図7に示されるように、受信アンテナ101、受信RF部102、ADC103、回り込み波キャンセル部104、DAC105、送信RF部106、増幅器107、送信アンテナ108、ウェイト乗算部109、ウェイト生成部800及び電力制御部410を含む。
電力制御部410は、増幅器107の動作を制御する。具体的には、電力制御部410は、中継開始前、中継停止期間など(即ち、送信アンテナ108から電波が放射されない期間)において、増幅器107の動作を停止させる。一方、電力制御部410は、中継実施期間(即ち、送信アンテナ108から電波が放射される期間)において、増幅器107を動作させる。また、電力制御部410は、ウェイト生成部800において伝搬路応答B(fk)が推定されたことを検知してから、増幅器107を動作させてもよい。
ウェイト生成部800は、FFT部307、伝搬路推定部801、ウェイト誤差算出部802、ウェイト更新部803、IFFT部308、伝搬路変動算出部304、伝搬路更新部305及びウェイト制御部806を含む。
伝搬路推定部801は、中継実施期間において伝搬路推定部301と同様に伝搬路推定を行う。更に、伝搬路推定部801は、中継開始前、中継停止期間など(即ち、送信アンテナ108から電波が放射されない期間)においても伝搬路推定を行う。但し、中継開始前、中継停止期間などにおいて回り込み波は存在しない。従って、この伝搬路推定によって得られる伝搬路応答H(fk)は伝搬路応答B(fk)と同じである。伝搬路推定部801は、推定した伝搬路応答B(fk)(=H(fk))をウェイト誤差算出部802へ出力する。
ウェイト誤差算出部802は、中継実施期間においてウェイト誤差算出部302と同様にウェイト誤差を算出する。更に、ウェイト誤差算出部802は、中継開始前、中継停止期間などにおいて、伝搬路推定部801から伝搬路応答H(fk)及び伝搬路応答B(fk)を入力する。両者は同じなので、数式(12)から明らかなように、ウェイト誤差算出部802は誤差E(fk)=0と算出することになる。
ウェイト更新部803は、中継実施期間においてウェイト更新部303と同様にウェイトを更新する。更に、ウェイト更新部803は、中継開始前、中継停止期間などにおいて、ウェイト誤差算出部802から誤差E(fk)(=0)を入力する。従って、数式(13)から明らかなように、ウェイト更新部803はウェイトを結果的に更新しない。
ウェイト制御部806は、ウェイト制御部306と同様にウェイト生成部800の各要素(例えば、ウェイト誤差算出部802、ウェイト更新部803、伝搬路変動算出部304及び伝搬路更新部305)を制御する。更に、ウェイト制御部806は、電力制御部410と連携して動作してもよい。例えば、ウェイト制御部806は、電力制御部410が増幅器107の動作を停止させている期間(即ち、送信アンテナ108から電波が放射されない期間)において伝搬路変動算出部304及び伝搬路更新部305の動作を停止させてもよい。また、ウェイト制御部806は、この期間において、伝搬路推定部801が推定する伝搬路応答をB(fk)及びH(fk)の両方として扱うようにウェイト誤差算出部802に指示してもよい。更に、ウェイト制御部806は、伝搬路応答B(fk)が推定されたことを電力制御部410に通知してもよい。
無線中継装置400についてシミュレーションを実施したところ図9に示される結果が得られた。尚、図9のシミュレーションにおけるパラメータ及び諸定義は図1と同じである。図9から明らかなように、無線中継装置400によれば、再測定間隔を比較的大きく(例えば数十サブフレーム程度に)設定しても安定動作できる。即ち、中継を頻繁に停止させる必要がないので効率的である。
以上説明したように、本実施形態に係る無線中継装置は、中継開始前、中継停止期間などにおいて伝搬路応答B(fk)を推定し、中継実施期間において前述の第1乃至第2の実施形態と同様にこの伝搬路応答B(fk)の変動に追従する。従って、本実施形態に係る無線中継装置によれば、より正確な伝搬路応答B(fk)を利用して回り込み波を十分にキャンセルすることができる。
尚、本実施形態において、回り込み波を排除する(即ち、送信アンテナ108から電波を放射させない)ために増幅器107の動作を制御しているが、代替的に他の要素の動作を制御してもよい。例えば、送信RF部106またはDAC105の動作を制御したり、DAC105の前段でデジタル信号を遮断したりすることによって、回り込み波を排除してもよい。また、中継開始前、中継停止期間などに加えて、または、代替して、無線中継装置400の電源を投入した場合、何らかの目的で意図的に中継を中断した場合などに本実施形態を利用して伝搬路応答B(fk)を推定することも可能である。
(第4の実施形態)
図10に示されるように、第4の実施形態に係る無線中継装置600は、M個のアンテナ601−1,・・・,601−M(Mは2以上の整数)、受信RF部602、M個のADC603−1,・・・,603−M、回り込み波キャンセル部604、M個のDAC605−1,・・・,605−M、送信RF部606、増幅器グループ607、M個の送信アンテナ608−1,・・・,608−M、ウェイト乗算部609、電力制御部610及びウェイト生成部700を含む。無線中継装置600は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信システムにおいて信号を中継する。
無線中継装置600は、伝搬路520を介して親局510からの信号を受信し、図示しない伝搬路を介して図示しない子局に信号を送信する。親局510は、例えば基地局、放送局などの無線通信装置である。子局は、例えばUE(User Equipment)などの無線通信装置である。親局510は、例えば、無線中継装置600の受信アンテナ601と同じ数(即ち、M個)のストリーム上で信号を送信する。
受信アンテナ601−1,・・・,601−Mは、親局510からのMストリームの信号を伝搬路520を介して夫々受信する。尚、無線中継装置600の中継実施期間において、受信アンテナ601−1,・・・,601−Mは、送信アンテナ608−1,・・・,608−Mからの回り込み波も回り込み伝搬路540を介して受信する。即ち、中継実施期間における受信アンテナ601−1,・・・,601−Mによる受信信号には、親局510からの信号と送信アンテナ608−1,・・・,608−Mからの回り込み波との両方が含まれている。
受信RF部602は、受信アンテナ601−1,・・・,601−MによるM個の受信信号を夫々調整(フィルタリング、低雑音増幅など)し、ダウンコンバートしてM個のベースバンド信号を生成する。ADC603−1,・・・,603−Mは、受信RF部602からのベースバンド信号(アナログ信号)を夫々(ダウンサンプルされた)デジタル信号に変換する。
回り込み波キャンセル部604は、ADC603−1,・・・,603−Mの出力信号から、受信アンテナ601−1,・・・,601−Mにおける回り込み波を模したレプリカ信号を夫々減算することにより、回り込み波のキャンセルを実現する。回り込み波キャンセル部604のM個の出力信号は、DAC605−1,・・・,605−Mに夫々供給されると共に、ウェイト乗算部609及びウェイト生成部700にも供給される。DAC605−1,・・・,DAC605−Mは、回り込み波キャンセル部604のM個の出力信号(デジタル信号)を夫々アナログ信号に変換する。
送信RF部606は、DAC605−1,・・・,605−MからのM個のアナログ信号を調整(フィルタリグなど)し、アップコンバートしてM個のRF信号を生成する。増幅器グループ607は、M個の電力増幅器を含む。増幅器グループ607は、送信RF部606からのM個のRF信号の電力を夫々増幅し、送信アンテナ608−1,・・・,608−Mに供給する。尚、図10において、増幅器グループ607は送信RF部606と区別して描かれているが、増幅器グループ607は送信RF部606の一部であってもよい。
送信アンテナ608−1,・・・,608−Mは、増幅器グループ607からのM個のRF信号を夫々送信する。これらの送信信号は、図示しない伝搬路を介して図示しない子局によって受信されると共に、回り込み伝搬路540を介して受信アンテナ601−1,・・・,601−Mによっても受信される。
ウェイト乗算部609は、回り込み波キャンセル部604のM個の出力信号に、ウェイト生成部700からのM×M個のウェイトをM個ずつ乗算してから合成(加算)することによりM個のレプリカ信号を夫々得る。即ち、ウェイト乗算部609は、回り込み波キャンセル部604のM個の出力信号にM個の受信アンテナ601−1,・・・,601−Mの各々に対応するM個のウェイトを夫々乗算してから合成することにより、M個のレプリカ信号の各々を得る。ウェイト乗算部609は、M個のレプリカ信号を回り込み波キャンセル部604に供給する。
例えば、ウェイト乗算部609は、M×M個のFIRフィルタとM個の合成器(加算器)とを含む。これらM×M個のFIRフィルタの各々は、回り込み波キャンセル部604のM個の出力信号のうちのいずれか1つに、ウェイトの要素のうちのいずれか1つを乗算する。各合成器は、対応するM個のFIRフィルタの出力信号を合成して、受信アンテナ601−1,・・・,601−Mのうちのいずれか1つにおける回り込み波を模したレプリカ信号を得る。
電力制御部610は、増幅器グループ607に含まれる各電力増幅器の動作を制御する。具体的には、電力制御部610は、中継開始前、中継停止期間など(即ち、送信アンテナ608−1,・・・,608−Mから電波が放射されない期間)において、各電力増幅器の動作を停止させる。一方、電力制御部610は、中継実施期間(即ち、送信アンテナ608−1,・・・,608−Mから電波が放射される期間)において、各電力増幅器を動作させる。また、電力制御部610は、ウェイト生成部700において伝搬路応答B(fk)が推定されたことを検知してから、各電力増幅器を動作させてもよい。
ウェイト生成部700は、回り込み波キャンセル部604のM個の出力信号に基づいて、M×M個のウェイトを算出する。これらM×M個のウェイトは、回り込み波キャンセル部604のM個の出力信号の各々がM個の受信アンテナ601−1,・・・,601−Mの各々に回り込むM×M個の伝搬路(回り込み伝搬路)に対応する。ウェイト生成部700は、M×M個のウェイトをウェイト乗算部609に供給する。尚、ウェイト生成部700の詳細は後述される。
以下、本実施形態における回り込み波のキャンセルの原理の理解を容易にするために数式を用いて説明する。尚、以降の解析は、各信号を等価的にベースバンド信号として扱っている。親局510からの送信信号をX(z)と定義する。送信信号X(z)は、M行1列のベクトルである。以降の説明では、行数×列数の形式でベクトルまたは行列を表現する。また、z
−1はZ変換における遅延素子を表す。伝搬路520に対応する伝搬路応答をB(z)と定義する。送信信号X(z)は、伝搬路520の通過により伝搬路応答B(z)を乗算されて、受信アンテナ601−1,・・・,601−Mによって受信される。回り込み伝搬路540の伝搬路応答をR(z)、ウェイト乗算部609によって乗算されるウェイトをW(z)と夫々定義する。これら伝搬路応答B(z)、伝搬路応答R(z)及びウェイトW(z)はいずれもM×Mの行列である。回り込み波キャンセル部604の出力信号、即ち、観測点530における観測信号をY(z)と定義する。観測信号Y(z)は、M×1のベクトルである。増幅器グループ607内のM個の電力増幅器の特性をKと定義する。Kは、M×Mの対角行列である。また、無線中継装置600のSN比は十分に高く、雑音成分が無視できると仮定する。ここで、観測信号Y(z)は、下記の数式(15)によって表現できる。
数式(15)の右辺の第1項は、親局510からの送信信号に基づく成分を表している。数式(15)の右辺の第2項は、送信アンテナ608−1,・・・,608−Mからの回り込み波に基づく成分を表している。数式(15)の右辺の第3項は、回り込み波キャンセル部604によってキャンセルされるレプリカ信号の成分を表している。M×Mの単位行列をIと定義すると、数式(15)は、下記の数式(16)に変形できる。
ここで、ウェイト生成部700がウェイト生成部300,800と同様に周波数領域でウェイトを算出することとする。観測点530における系全体の伝搬路応答(伝搬路520及び回り込み伝搬路540の組み合わせに対応する伝搬路応答)をH(f
k)と定義すれば、観測信号Y(f
k)は下記の数式(17)によって表現できる。
一方、上記の数式(16)は、下記の数式(18)に書き換えることができる。
ここで、数式(18)は逆行列を含んでいるが、この逆行列が存在しないようなウェイトW(f
k)を用いると発振が生じしまう。従って、いかなるR(f
k)が与えられたとしてもこの逆行列が存在することを保証するために、ウェイトW(f
k)に関して下記の数式(19)を成立させることが望ましい。
数式(19)が成立することは、下記の数式(20)によって定義される誤差行列E(f
k)が零行列になることと等価である。即ち、ウェイト生成部700は、数式(20)の誤差行列E(f
k)が零行列となるようにウェイトW(f
k)を生成することが望ましい。
伝搬路応答H(z)は、中継実施期間において送信信号X(z)が参照信号(パイロット信号などの既知信号)である場合の観測信号Y(z)から推定できる。また、伝搬路応答B(z)は、中継開始前、中継停止期間など(即ち、送信アンテナ608−1,・・・,608−Mから電波が放射されない期間)において送信信号X(z)が参照信号である場合の観測信号Y(z)から推定できる。従って、ウェイト生成部700は、例えば数式(20)に従って算出した誤差行列E(z)と、現行のウェイトとを用いて、下記の数式(21)に従って更新されたウェイトを生成する。
数式(21)において、W及びEに付されたインデックス(即ち、n,n+1)は例えばシンボル番号を表す。μは忘却係数を表す。最初のウェイトW0(z)は、零行列であってもよいが、例えば好適なウェイトが既知であるならばその既知ウェイトが使用されてもよい。
以下、ウェイト生成部700の詳細を述べる。ウェイト生成部700は、前述のウェイト生成部200,300,800と同様に、ウェイトを更新する機能と、伝搬路応答の変動に追従する機能とを備える。具体的には、ウェイト生成部700は、図11に示されるように、FFT部707、伝搬路推定部701、ウェイト誤差算出部702、ウェイト更新部703、IFFT部708、伝搬路変動算出部704、伝搬路更新部705及びウェイト制御部706を含む。
ウェイト制御部706は、ウェイト生成部700の各要素(例えば、ウェイト誤差算出部702、ウェイト更新部703、伝搬路変動算出部704及び伝搬路更新部705)を制御する。更に、ウェイト制御部706は、電力制御部610と連携して動作してもよい。例えば、ウェイト制御部706は、電力制御部610が増幅器グループ607の動作を停止させている期間(即ち、送信アンテナ608−1,・・・,608−Mから電波が放射されない期間)において伝搬路変動算出部704及び伝搬路更新部705の動作を停止させてもよい。また、ウェイト制御部706は、この期間において、伝搬路推定部701が推定する伝搬路応答をB(fk)及びH(fk)の両方として扱うようにウェイト誤差算出部702に指示してもよい。更に、ウェイト制御部706は、伝搬路応答B(fk)が推定されたことを電力制御部610に通知してもよい。
FFT部707は、回り込み波キャンセル部604からの入力信号(即ち、観測信号Y(z))にFFTを施す。具体的には、FFT部707は、時間領域の信号(観測信号Y(z))のサンプルを所定数蓄積するためのバッファ機能を有し、この蓄積された所定数のサンプルにFFTを施す。
伝搬路推定部701は、中継実施期間においてFFT部707からの周波数領域の観測信号Y(fk)に基づいて周波数領域の伝搬路応答H(fk)を推定する。伝搬路推定部701は、推定した伝搬路応答H(fk)をウェイト誤差算出部702及び伝搬路変動算出部704へ出力する。更に、伝搬路推定部701は、中継開始前、中継停止期間など(即ち、送信アンテナ608−1,・・・,608−Mから電波が放射されない期間)において周波数領域の観測信号Y(fk)に基づいて周波数領域の伝搬路応答B(fk)を推定する。伝搬路推定部701は、推定した伝搬路応答B(fk)をウェイト誤差算出部702へ出力する。
ウェイト誤差算出部702は、例えば上記の数式(20)に従って誤差行列E(fk)を算出できる。具体的には、ウェイト誤差算出部702は、ウェイト制御部706によって指定される更新実施期間において、誤差行列E(fk)を例えばシンボル毎に算出する。ウェイト誤差算出部702は、伝搬路推定部701からの伝搬路応答H(fk)と、伝搬路推定部701或いは伝搬路更新部705からの伝搬路応答B(fk)とを用いて誤差E行列(fk)を算出する。ウェイト誤差算出部702は、算出した誤差行列E(fk)をウェイト更新部703へ出力する。一方、ウェイト誤差算出部702は、ウェイト制御部706によって指定される更新停止期間において、誤差行列E(fk)の算出を停止してもよい。
ウェイト更新部703は、例えば上記の数式(21)に従ってウェイトW(fk)を更新できる。具体的には、ウェイト更新部703は、ウェイト制御部706によって指定される更新実施期間において、現行のウェイトW(fk)とウェイト誤差算出部702からの誤差行列E(fk)とを用い、更新されたウェイトW(fk)を例えばシンボル毎に生成する。一方、ウェイト更新部703は、ウェイト制御部706によって指定される更新停止期間において、ウェイトW(fk)の更新を停止する。ウェイト更新部703は、更新されたウェイトをIFFT部708へ出力する。
IFFT部708は、ウェイト更新部703からのウェイトW(fk)にIFFTを施す。即ち、IFFT部708は、周波数領域のウェイトW(fk)を時間領域のウェイトに変換する。尚、IFFT部708が行うIFFTのサイズの増大に伴って、時間領域のウェイトのサイズ(フィルタ長)が増大するので、処理遅延が問題となるおそれがある。故に、必要に応じて、IFFTの出力信号を間引いたり、打ち切ったりすることにより時間領域のウェイトのサイズを小さくしてもよい。IFFT部708は、時間領域のウェイトをウェイト乗算部609へ出力する。
伝搬路変動算出部704は、伝搬路応答H(fk)の変動を算出する。例えば、伝搬路変動算出部704は、ウェイト制御部706から指定される更新停止期間の開始時点及び終了時点における伝搬路応答H(fk)の値(Ht(fk)及びH1(fk))を伝搬路推定部701から入力し、両者の変動(H1(fk)−Ht(fk))を算出する。伝搬路変動算出部704は、算出した変動を伝搬路更新部705へ出力する。
伝搬路更新部705は、下記の数式(22)に従って、伝搬路応答B(f
k)を更新する。
例えば、伝搬路更新部705は、ウェイト制御部706によって指定される更新停止期間の終了時点において、現行の伝搬路応答B(fk)と伝搬路変動算出部704からの変動とを用い、更新された伝搬路応答B(fk)を生成する。伝搬路更新部705は、更新された伝搬路応答B(fk)をウェイト誤差算出部702へ出力する。
以上説明したように、第4の実施形態に係る無線中継装置は、MIMO通信システムにおいて前述の第1乃至第3の実施形態に関して述べた伝搬路応答の変動に追従する機能を実現する。従って、本実施形態に係る無線中継装置によれば、MIMO通信システムにおいて第1乃至第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記各実施形態の処理は、汎用のコンピュータを基本ハードウェアとして用いることで実現可能である。上記各実施形態の処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記憶媒体に記憶される。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなど、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、何れであってもよい。また、上記各実施形態の処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。