JP5274699B1 - 緊急避難用装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】想定を超える水位の洪水、津波が押し寄せても、人や物を収容できる浮体が、水流による大きな水圧を回避しながら浮上し、洪水、津波が終息したときには、浮上していた浮体が元の設置場所に戻れるようにした緊急避難用装置を提供する。
【解決手段】緊急避難用装置は、水密構造の中空室を有する円環状浮体1と、円環状浮体1を載置する台座2と、円環状浮体1の中央部空間を貫通して遊嵌し、円環状浮体1を上下に誘導し、台座2に固定された誘導手段3と、を備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、津波の襲来などの緊急時に、人身や、貴重な財産を避難させ、津波到来時などでは浮遊して、人命的被害、物的被害を最小限に留めるための緊急避難用装置に関する。
一般に、津波、洪水などの水害対策は、地方自治体を中心にして講じられてきた。津波に対しては、例えば、大堤防を築き、津波の襲来に備えるとか、或いは、津波予報が発令された時には、素早く高台に避難するといった行政指導が行われている。
ところで、東日本大震災の際に発生した予想外の大津波襲来においては、大堤防も破棄されて、津波の到来を阻止できず、多くの人命が失われた。このとき、高台に避難した人々が助かった。先ずは、高台に避難することが、最重要であり、基本的なことである。しかし、津波避難場所が指定されてあったとしても、それは、自然地形の高台であることが多い。自然地形なので、必ずしも、避難場所に到達するのに苦労し、利用しやすいように整備されている訳ではない。特に、車椅子利用者、老人、子供などを含む社会的弱者にとっては、容易なことではない。
そこで、緊急時に迷う事なく利用でき、高台に駆け上がらなくても高台に避難したのと同じ効果があり、上述の社会的弱者であっても安全に避難収容できる津波避難用の施設が種々提案されている。
例えば、日常には、ペットの飼育やガレージに使用し、津波、洪水時には、子供や老人でも確実に避難できる設備が提案されている(特許文献1を参照)この設備は、リンクによって地面と繋留することで漂流せず、水が引けば元の位置に戻るというものである。津波、洪水時は人間が逃げ込み、その周りを水が満たされた時に浮上し、被災者の安全性を高める防災シェルターとして機能する。
また、高潮水害時に建家が冠水しない水害回避免震建築物が提案されている(特許文献2を参照)。これは、上面が開口し側壁および底面を備えた基礎を備え、基礎内に浮体を収容すると共にその浮体上に建家を建造するというものである。浮体と建家の間に地震の揺動を緩衝伝達する伝達手段を設けると共に振幅巾を制限するダンパを設け、浮体と一体で浮体より下方に伸縮するアンカーポール及び基礎底面に基礎と一体に係止部材を備え、前記アンカーポールと係止部材が結合し一体となるように構成し、水害時には、浮体がアンカーポールを上下して、建屋が冠水しないようにする。
一方、津波や洪水の際の被災者の安全性を高め得る構造の防災シェルターが提案されている(特許文献3を参照)。この防災シェルターは、水密状の内部スペースを備えた略球殻形状の中空構造体を有し、開閉扉によって水密に閉塞可能な出入口を設ける一方、該中空構造体の底部にバランス用マスが設けられ、被災時には、内部スペースに人を収容した状態下で水上に浮遊する。
また、浮上するが、流失しない津波避難施設として、安全性を高め、逃げ遅れた被災者も多く助けられる津波シェルター装置が提案されている(特許文献4を参照)。この避難施設である津波シェルターの本体は、上部に半球形の避難室と下部に半球形の浮力室とからなり、浮力室の最底部が連結索で基礎地盤と連結されている。これにより、津波シェルター装置は、連結索で地盤と繋がれて浮上し、揺動が抑止される。
特開2007−177600号公報 特開2010−150814号公報 特開2004−322939号公報 特開2008−074385号公報
上述したように、津波などに対処できる緊急避難用の施設が種々提案されている。しかし、特許文献1、2で提案された施設による場合、津波や洪水の水位が想定される範囲内であれば、防災シェルターとしての機能を果たすことができるが、この水位が想定を上回るような大津波や大洪水が襲来したときには、その施設は、冠水し、しかも、その水圧に抗しきれずに破壊される危険性がある。
一方、特許文献3で提案された防災シェルターは、水密状の内部スペースを備えた略球殻形状の中空構造体であるため、津波や洪水が襲来したときには、安定して浮上し、水圧を回避することができるが、設置された場所から浮遊しながら流されてしまうという欠点がある。また、特許文献4で提案された津波シェルターでは、その本体が、連結索で基礎地盤と連結されているため、緩やかな津波の襲来時には、浮上して、揺動が抑止されるが、想定を上回るような大津波が襲来した場合には、連結索で連結されているが故に、その水流に抗しきれず、本体が揺動することとなり、場合によっては、連結索が破損して、流されてしまう危険性がある。さらに、連結索が破損しない場合でも、その本体を設置された元の場所に戻すのに、手間がかかり、煩わしいという問題がある。
そこで、本発明は、上述した課題に鑑みて、想定を超える水位の洪水、津波が押し寄せても、人や物を収容できる浮体が、水流による大きな水圧を回避しながら浮上し、洪水、津波が終息したときには、浮上していた浮体が元の設置場所に戻れるようにした緊急避難用装置を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するために、本出願の発明では、次に示す構成を採用した。
(1)本発明の緊急避難用装置は、水密構造の中空室を有し、胴体が円形断面又は長円形断面の円環状浮体と、前記円環状浮体を載置する台座と、前記円環状浮体の中央部空間を貫通して遊嵌し、該円環状浮体を上下に誘導し、前記台座に固定された誘導手段と、を備えたことを特徴とする。
(2)前記(1)の緊急避難用装置において、前記誘導手段は、基部を有し、該基部の一端は、前記台座に固定され、他端は、前記円環状浮体と離れて立設された支柱から延設されたワイヤ又は鎖が接続されていることを特徴とする。
(3)前記(1)又は(2)の緊急避難用装置において、前記台座は、水が満たされたとき、前記円環状浮体が浮上する深さを有する凹部を備えていることを特徴とする。
(4)前記(3)の緊急避難用装置において、前記台座は、前記凹部に満たされた水を排出する水抜き栓を有することを特徴とする。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかの緊急避難用装置において、前記円環状浮体は、人の出入り、或いは、物の搬出入が可能な水密構造の開閉口を備えていることを特徴とする。



以上の様に、本発明の緊急避難用装置によれば、水密構造の中空室を有する円環状浮体の中央部空間を貫通して遊嵌する誘導手段が、円環状浮体を載置する台座に固定されているので、津波や洪水が襲来したときには、円環状浮体が、台座から浮上し、水位の増減に応じて、誘導手段に沿って上下に誘導される。そのため、円環状浮体は、水流の水圧を容易に回避することができ、水圧で破壊され難い構造になっている。しかも、津波や洪水が終息したときには、円環状浮体は、台座に載置されていた元の場所に戻り、後片付けが容易である。
また、誘導手段には、円環状浮体の載置場所と離れて立設された支柱から延設されたワイヤ又は鎖が接続されているので、到来した津波や洪水の水位が、誘導手段の高さを超えた場合であっても、円環状浮体は、ワイヤ又は鎖に沿って浮上し、その水位に応じて誘導される。そのため、円環状浮体は、その水位が高い場合でも、水流の水圧を容易に回避することができ、水圧で破壊されることなく、津波や洪水が終息したときには、円環状浮体は、載置されていた元の場所に戻ることができる。
さらに、円環状浮体が載置される台座には、水を満たすことのできる凹部が形成されている。その凹部には、日頃、水はなく、空であるが、津波や洪水が襲来したときには水が満たされるので、津波や洪水が終息したときに、元に戻ろうとする円環状浮体が、その凹部の水面に浮くため、円環状浮体が浮いている間に、その凹部に溜まった瓦礫等を取り除き易くでき、しかも、戻った時に円環状浮体の向きが変わっていても、人力だけで容易に変えることができる。
以上の様に構成された緊急避難用装置における円環状浮体は、津波や洪水の激しい水流に対しても安定して浮いており、円環状浮体内に、緊急避難した人や、貴重な財産・資料などを安全に守ることができる。
本発明による緊急避難用装置の概要を説明する図である。 図1に示された緊急避難用装置を拡大して示した側面図である。 図2に示された緊急避難用装置を上方から見た上面図である。 図2に示された緊急避難用装置の断面図である。 本発明による緊急避難用装置の変形例を説明する図である。 本発明による緊急避難用装置における円環状浮体の変形例を示す図である。
つぎに、本発明による緊急避難用装置に関する実施形態について、以下に、図1乃至図6を参照しながら、実施例を示して具体的に説明する。
〔実施例〕
図1には、本発明の緊急避難用装置の実施例に関する全体的な概要が示されている。図1に示されるように、洪水、津波の災害に対応した緊急避難用装置は、基本的には、円環状浮体1、台座2、誘導手段3から構成される。台座2は、地上に設置されており、そして、その台座2から離れた位置に設けられた支柱4の上端と、台座2との間には、誘導手段3が連結されている。その支柱4は、洪水、津波が押し寄せても倒れないように、ワイヤ等で補強されている。なお、洪水、津波による水圧に抗するため、支柱自体を撓ませることも有効であるため、支柱4の下端を完全に固定するのではなく、ヒンジ等を用いて僅かな角度動くようにしてもよい。
次に、図2乃至図4を参照して、緊急避難用装置の具体的構成について説明する。なお、これらの図において、共通する部分には、同じ符号を付してある。
図2は、図1に示された緊急避難用装置を拡大して示したものであって、円環状浮体1が、台座2に載置されている様子を示している。
円環状浮体1の胴体部分は、例えば、鋼鉄で形成されており、その内部は、中空になっている。その内部の中空室に、洪水、津波の災害発生に備えて、貴重品を保管しておき、或いは、その発生時に、人が緊急避難できるように、開閉できるドアを設けておく。このドアは、中から閉める場合には、水密を確保できるようにするとよい。円環状浮体1は、洪水や、津波による水圧を最小限とし、激しい水流の抵抗に対して回避できるようにされ、しかも、洪水や、津波の水流に対しても、安定して浮いていることができる形状となっている。また、円環状浮体1の胴体部分の少なくとも下側を二重構造とすることにより、浮体自体の強度を高めることができ、さらに、洪水や、津波で流されてくる物体の衝突で破壊されることを防止できる。なお、円環状浮体の外周面に、衝突緩衝材を設けておいてもよい。
誘導手段3は、台座2の中央に立設された基部31と、支柱4の上端に固定されたワイヤ32とで構成され、ワイヤ32が、基部31の上端に固定されている。そこで、この基部31が、円環状浮体1の中央部空間に挿入されるような形で、貫通している。そして、基部31と円環状浮体1とは、固定されるのではなく、遊動自在な関係にされることが好ましい。例えば、基部31の外周に傾斜を持たせるようにして、基部31の下部における外径については、円環状浮体1の中央部の直径よりやや小さくし、円環状浮体1の位置決めを容易にし、また、その上部における外径については、その下部の外径より小さくして、基部31の全体として、円環状浮体1が上下に移動し易いように、遊嵌している。
なお、ここでは、ワイヤで構成した例を示したが、これに限られず、鎖など、円環状浮体1を、洪水、津波の水位に応じて、上方、又は、下方に誘導し、かつ、水流に抗して流されないようにすることができるものであれば、使用することができる。また、想定される水位が低く、これ以上の水位の津波や洪水が襲来しないと言える場合には、この誘導手段は、台座に設けられた基部だけでもよく、この基部の高さをその水位に合わせておくこともできる。
ここで、万が一、想定される水位を超える津波や洪水が到来した場合には、円環状浮体は、基部の高さ以上に浮上し、漂流することになるが、その漂流した円環状浮体は、安定しており、転覆する危険性は低いので、中空室内に緊急避難した人、貴重な財産・資料は、遠くに漂流したとしても、無事に保護される。また、ワイヤなどが破損してしまった場合も、同様に、中空室内に緊急避難した人、貴重な財産・資料は、遠くに漂流したとしても、無事に保護される。
図3には、緊急避難用装置を上方から見た上面図が示され、図4には、緊急避難用装置の断面図が示されている。本発明による緊急避難用装置の浮体は、円環状を基本としているため、図3に示された緊急避難用装置における台座2に形成された凹部5も、この浮体の形状に合わせて、円形状に形成されている。この凹部5の上端の外径は、円環状浮体1の外径より大きくしてある。円環状浮体1が、この凹部5内に載置されているときに、つまり、平時には、凹部5の内面と、円環状浮体1の下部外面との間に、空間が形成されるようにしてある。これは、凹部5内を掃除等し易くするだけでなく、洪水発生時や、津波襲来時に、凹部5内に水を進入し易くして、早く、円環状浮体1を浮かせるためである。なお、凹部の形状は、円形に限られず、円環状浮体を収納できる形状であればよく、例えば、多角形であってよい。
緊急避難用装置における台座2は、全体として円形状の構造を有し、水流から受ける水圧を低減し、破壊されないような構造になっている。ここで、洪水や、津波の襲来方向が予測できる場合には、その台座2の外周壁を補強し、或いは、水圧低減部材を配置しておくこともできる。また、台座2の凹部5における中央には、誘導手段3の基部31が立設されている。さらに、この凹部5の底部には、複数の載置部材6が置かれており、これらの載置部材6を介して、円環状浮体1が置かれている。なお、これらの載置部材6を置く代わりに、円環状浮体1の底面に、車を有するキャスターを設けることもできる。これによれば、平時において、円環状浮体1の回動可能となり、位置の変更が容易になる。
平時においては、少なくとも、円環状浮体が台座に載置されていることが重要であり、この凹部5は、緊急避難のために役立つというものではない。しかし、洪水や、津波が襲来したときには、円環状浮体1は上方に浮上し、その後、洪水が衰え、又は、津波が終息し、その水位が下がったときには、凹部5内に、その水が溜まったままになる。このときには、円環状浮体1も水位の低下とともに、誘導手段3に沿って下降し、この凹部5内に溜まった水に浮いた状態となる。そのため、洪水や、津波が終息した後においては、円環状浮体1が浮いていることにより、凹部5内の瓦礫を取り除くなど、掃除も簡単になるだけでなく、この凹部5内で浮いた状態であるため、人手によっても容易に回動させることができ、円環状浮体1を元の位置に戻すことが簡単に行える。さらに、台座2に、水を排出する水抜き栓が設けられていると、この凹部5内に溜まった水を排出することができ、洪水や、津波の襲来前の状態に回復することができる。
なお、上記実施例の緊急避難用装置は、円環状浮体1の胴体部分の断面が、円形を示す場合について説明したが、図5の(A)に示されるように、この胴体部分の中空室内に、床を設けて、上下2室とすることで、収容能力を増やすことが可能となる。さらに、床数を増やして、多階構造とすることもできる。また、図5の(B)に示されるように、円環状浮体1の胴体部分を、長円形状とすることもできる。この場合には、浮体自体が大きく扁平することになり、津波や洪水の襲来時の水流に対して、より一層の安定化を図ることができるとともに、収容能力も増やすことができる。
以上では、本発明の緊急避難用装置の構造について、緊急避難時を中心に説明してきたが、次に、本発明の緊急避難用装置に関して、平常時の利用の仕方について説明する。
この緊急避難用装置における円環状浮体には、その内部に円環状の中空室が設けられており、津波や洪水などの緊急避難時には、この中空室を、避難してきた人や、運びこまれた貴重な財産・資料などの収容場所として利用でき、さらに、円環状浮体の上面部にも、柵などを設けて、収容人員を増やすこともできる。しかし、津波や洪水が襲来しない平時においては、この中空室は、空のままである。そこで、この様な平時においても、設置コストや、利便性を考慮するならば、この円環状浮体を有効に利用することが得策である。
例えば、緊急避難用装置を海岸や港に設置するのであれば、倉庫、売店、レストラン、海の家などに利用することが可能である。津波襲来の緊急避難時に、高台に避難することが間に合わない、或いは、避難が困難である場合に、近くの緊急避難場所として大いに役立つ。また、円環状浮体の上面部に、太陽光発電システムを設けておけば、緊急時の非常用電源が得られ、緊急放送などに利用できる。さらに、円環状浮体を燃料タンクとして利用することも可能である。この場合には、津波が襲来しても、浮上して水流を回避するため、浮体自体が壊れ難いので、燃料の流出が防止され、この燃料による火災の発生を無くすことができる。
1 円環状浮体
2、21 台座
3 誘導手段
31 基部
32 ワイヤ
4 支柱
5 凹部
6 載置部材
61 キャスター


Claims (5)

  1. 水密構造の中空室を有し、胴体が円形断面又は長円形断面の円環状浮体と、
    前記円環状浮体を載置する台座と、
    前記円環状浮体の中央部空間を貫通して遊嵌し、該円環状浮体を上下に誘導し、前記台座に固定された誘導手段と、
    を備えた緊急避難用装置。
  2. 前記誘導手段は、基部を有し、該基部の一端は、前記台座に固定され、他端は、前記円環状浮体と離れて立設された支柱から延設されたワイヤ又は鎖が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急避難用装置。
  3. 前記台座は、水が満たされたとき、前記円環状浮体が浮上する深さを有する凹部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の緊急避難用装置。
  4. 前記台座は、前記凹部に満たされた水を排出する水抜き栓を有することを特徴とする請求項3に記載の緊急避難用装置。
  5. 前記円環状浮体は、人の出入り、或いは、物の搬出入が可能な水密構造の開閉口を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の緊急避難用装置。
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