JP5274662B2 - スライドファスナー - Google Patents

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Description

本発明は、一方のファスナーストリンガーに設けられた蝶棒と、他方のファスナーストリンガーに設けられた箱棒と、後口同士が対向する向きに配された上下一対のスライダーとを有することにより、開離嵌挿操作を行うことが可能なスライドファスナーに関する。
従来、衣類における左右の前身頃を開閉するために、開離嵌挿具を備えたスライドファスナーが多く用いられている。また、例えばロングコートやスキーウェア等に主に用いられるスライドファスナーとして、衣類の機能性やデザイン性を高めるために、噛合状態にある左右のエレメント列をファスナーチェーンの一端(上端)からだけでなく、他端(下端)からでも分離することが可能なスライドファスナーが知られている。このように噛合状態にあるエレメント列を両端から分離することが可能なスライドファスナーは、逆開きスライドファスナーとも呼ばれている。
このような逆開き可能なスライドファスナーの一例が、特開2009−95425号公報(特許文献1)に開示されている。
図16及び図17に示したように、特許文献1に記載されているスライドファスナー101は、エレメント列103を有する左右一対のファスナーストリンガー102と、右側のファスナーストリンガー102に配された箱棒104と、左側のファスナーストリンガー102に配された蝶棒105と、エレメント列103に沿って摺動可能に配された第1スライダー(下スライダー)106a及び第2スライダー(上スライダー)106bとを備えている。
そして、左右の各ファスナーストリンガー102は、対向するテープ側縁に芯紐部107aを有するファスナーテープ107と、同ファスナーテープ107の芯紐部107aを含むテープ側縁部(エレメント取付部)に複数のファスナーエレメントが取着されて形成されたエレメント列103とを有している。また、左右のエレメント列103の前端には、第2スライダー106bの脱落を防止する止具108が配されている。
前記箱棒104は、右側のファスナーストリンガー102に配されたエレメント列103の後端から連続して延設されている。この箱棒104は、右側ファスナーテープ107の芯紐部107aを含むテープ端縁部に固着した箱棒本体111と、同箱棒本体111の後端部に配され、第1スライダー106aを衝止させることにより、同第1スライダー106aの脱落を防止するストッパー部112と、箱棒本体111の蝶棒105対向面から突出した三角形状の第1係止片113と、箱棒本体111におけるエレメント列側基端部の表面及び裏面に突設され、第2スライダー106bの摺動を抑制する抑制部114とを有している。
特許文献1のスライドファスナー101では、上述のように抑制部114が形成されていることにより、エレメント列103に沿って第1スライダー106a及び第2スライダー106bを箱棒104側の末端位置まで下げて箱棒104に保持したときに、箱棒104の抑制部114が第2スライダー106bのスライダー胴体内面に密接し、箱棒104に対する第2スライダー106bの摩擦力を増大させる。
これにより、第2スライダー106bの相対的な位置を安定させるともに、第2スライダー106bが自由に摺動することを抑制している。この構成によって、以下に説明するような効果が得られる。
例えば、逆開き可能なスライドファスナー101がロングコート等に用いられる場合、同スライドファスナー101の蝶棒105及び箱棒104は、一般にロングコートの前身頃の下端部の位置に配されている。このため、ロングコートの着衣者が左右のファスナーストリンガー102を閉じる場合、第1及び第2スライダー106a,106bを、エレメント列103に沿って箱棒104が配されている末端位置まで下げた後、その第1及び第2スライダー106a,106bのエレメント案内路内に蝶棒105を挿入する操作が行われる。
このとき、着衣者は、蝶棒105を第1及び第2スライダー106a,106bに挿入する操作を行い易くするため、ロングコートの裾を前方へ折り返して第1及び第2スライダー106a,106bの向きを反転させる。更に、第1及び第2スライダー106a,106bを蝶棒105の挿入操作が行い易い位置に持ち上げた状態にして、蝶棒105を第1及び第2スライダー106a,106bに挿入することがある。この場合、第1及び第2スライダー106a,106bの位置関係は反転するため、蝶棒105は、第1及び第2スライダー106a,106bの下方側から挿入されることになる。
しかし、上述のように箱棒104及び第1及び第2スライダー106a,106bを蝶棒105の挿入操作が行い易い位置に持ち上げた場合、第1スライダー106aや第2スライダー106bを指で支えておかなければ、第1スライダー106aや第2スライダー106bが、蝶棒105を挿入可能な箱棒側末端位置(以下、この位置を蝶棒挿入位置と記載する)から自重により下方へ移動して、ずれてしまう。
このように第1及び第2スライダー106a,106bの位置が正規の蝶棒挿入位置からずれてしまうと、蝶棒105を第1及び第2スライダー106a,106b内に挿入する際に、蝶棒105が相手方のエレメント列103や箱棒104と干渉してしまい、蝶棒105を所定の位置まで十分に挿入することができなくなるという不具合があった。
このような不具合に対して、前記特許文献1のスライドファスナー101では、前述のように箱棒104が抑制部114を有しているため、抑制部114と第2スライダー106bとの間の摩擦力を利用して、第2スライダー106bを正規の蝶棒挿入位置に保持し、第2スライダー106bの相対的な位置を安定させることができる。それとともに、第2スライダー106bが正規の蝶棒挿入位置から自由に摺動することを抑制することができる。
このため、蝶棒105の挿入操作をする前に、着衣者が箱棒104及び第1及び第2スライダー106a,106bを反転させて蝶棒105の挿入操作が行い易い位置に持ち上げたとしても、第1及び第2スライダー106a,106bが正規の蝶棒挿入位置からずれることを防止できる。従って、その後、蝶棒105を第1及び第2スライダー106a,106b内に挿入する際に、蝶棒105の挿入操作を円滑に行うことが可能となる。
特開2009−95425号公報
特許文献1に記載されているスライドファスナー101において、例えば箱棒104や蝶棒105が銅合金やアルミニウム合金等の金属からなる場合、所定の形状に成形された金属製の箱棒部材をファスナーテープ107の側端縁に加締め付けることによって、箱棒104や蝶棒105がファスナーテープ107に固着される。しかし、上述のような加締め加工により固着された箱棒104等は寸法精度が高くなく、例えば箱棒104のテープ表裏方向における寸法にバラツキが生じることがあった。
また、同スライドファスナー101に用いられる第1及び第2スライダー106a,106bを製造する場合、上下翼板等を有するスライダー胴体は、アルミニウム合金や亜鉛合金などの金属材料を使用してダイキャスト成形を行なうことによって作製されている。この場合、ダイキャスト成形が行われた後の冷却時に、金属の熱収縮に起因して、スライダー胴体における各部位の寸法が変化することがある。
また、上述のようなダイキャスト成形により得られた金属製のスライダー胴体には、例えば引手を取り付けるための引手取付柱が成形一体化されている場合がある。この場合、スライダー胴体の引手取付柱に引手を保持した状態で同引手取付柱を塑性変形させること等によって、スライダーが組み立てられる。
一方、例えば引手取付柱となる引手取付部材(カバー部材と呼ばれることもある)が、金属製のスライダー胴体とは別体に成形されている場合には、引手取付部材に引手を保持した状態で同引手取付部材をスライダー胴体に加締め付けること等によって、スライダーが組み立てられる。
しかし、上述のように引手取付柱を塑性変形させてスライダーを組み立てる場合や、引手取付部材を加締め付けてスライダーを組み立てる場合においては、引手取付柱を塑性変形させる際、又は引手取付部材を加締め付ける際にスライダー胴体の上翼板等が応力を受けて塑性変形することがあった。このため、組み立てられたスライダーについても寸法精度は高くなく、例えばスライダー胴体の上下翼板間の間隔(エレメント案内路の上下方向における寸法)にバラツキが生じることがあった。
そして、上述のように箱棒104の寸法(特に、箱棒104のテープ表裏方向における寸法)や、第2スライダー106bの寸法(特に、スライダー胴体の上下翼板間の間隔)にバラツキが生じた場合、箱棒104に設けた抑制部114が効果的に作用しない場合があった。
例えば、箱棒104の上下面に突設した抑制部114の頂部間のテープ表裏方向における寸法が、第1スライダー106a又は第2スライダー106bの上下翼板間の間隔に対して大きくなり過ぎた場合、箱棒104の抑制部114が第1スライダー106a又は第2スライダー106bのエレメント案内路内に進入したときに、第1スライダー106a又は第2スライダー106bの摺動抵抗が急激に増大し、スライダーの摺動性や操作性の低下を招くという問題があった。
一方、箱棒104の上下面に突設した抑制部114の頂部間のテープ表裏方向における寸法が、第2スライダー106bの上下翼板間の間隔に対して小さくなり過ぎた場合、箱棒104の抑制部114と第2スライダー106bとの間の摩擦力が十分に得られず、第2スライダー106bを蝶棒挿入位置で安定して保持することができないという問題があった。
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、箱棒やスライダーの寸法にバラツキが生じた場合でも、スライダーの摺動性や操作性を低下させることなく、スライダーを蝶棒挿入位置で安定して保持し、蝶棒の挿入操作又は抜出操作を円滑に行うことが可能なスライドファスナーを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明により提供されるスライドファスナーは、基本的な構成として、左右のファスナーテープの対向するテープ側縁部にエレメント列を有する一対の第1及び第2ファスナーストリンガーと、前記第1ファスナーストリンガーにおける前記エレメント列の一端から延設された箱棒と、前記第2ファスナーストリンガーにおける前記エレメント列の一端から延設された蝶棒と、前記エレメント列に沿って摺動可能に配された一対の第1及び第2スライダーとを備え、前記第1スライダーは、前記第1及び第2スライダーの後口同士が相対する向きで、前記第2スライダーよりも前記箱棒側に配され、前記箱棒は、前記ファスナーテープに固着した箱棒本体と、同箱棒本体の先端側に配され、前記第1スライダーを衝止させるストッパー部と、前記箱棒本体の上下面の少なくとも一面に突設され、前記第2スライダーのスライダー胴体内面に密接して同第2スライダーの摺動を抑制する抑制部とを有する開離嵌挿操作が可能なスライドファスナーであって、前記箱棒本体は、前記ファスナーテープのテープ側端縁の上下面及び蝶棒に対向する側の側面を包み込んで形成された本体領域と、エレメント列側基端部に配され、前記箱棒本体における蝶棒対向側の側面部が切除された切欠き領域とを有し、前記箱棒の前記エレメント列側基端部は、前記箱棒本体の前記切欠き領域が配されたテープ長さ方向の領域に、前記本体領域に対してテープ表裏方向に弾性変形可能な非切除部である上面部と下面部とを有し、前記箱棒の前記エレメント列側基端部は、前記第2スライダーの前記後口から、前記エレメント列側基端部の前記上面部及び下面部の弾性変形を利用して、前記スライダー胴体の上下内面間に形成されたエレメント案内路内に挿入可能なテープ表裏方向の断面寸法を備え、前記抑制部は、前記非切除部の前記上面部及び下面部のみに突設されてなることを最も主要な特徴とするものである。
本発明のスライドファスナーにおいて、前記抑制部は、前記箱棒本体のエレメント列側基端位置よりも前記エレメント列側に向けて突出して配されていることが好ましい。
本発明に係るスライドファスナーにおいて、前記抑制部は、前記箱棒本体の上面又は下面からの突出高さが最も高い頂部と、同頂部からテープ長さ方向に前記突出高さを漸減させる傾斜部又は湾曲部とを有していることが好ましい構成となる。
また、本発明のスライドファスナーにおいて、前記箱棒本体は、前記抑制部よりもテープ内側に、前記抑制部に沿ってテープ長さ方向に形成されたスリットを有していることが好ましい構成となる。
更に、前記箱棒は、前記箱棒本体の上下面の少なくとも一面に突設され、前記第1スライダーにおける前記スライダー胴体内面に密接して同第1スライダーの摺動を抑制する隆起部を、前記抑制部よりも箱棒先端側の位置に有していることが好ましい構成となる。
本発明に係るスライドファスナーでは、第1ファスナーストリンガーに配された箱棒が、ファスナーテープに固着した箱棒本体と、箱棒本体の先端側に配されたストッパー部と、箱棒本体の上下面の少なくとも一面に突設され、第2スライダーの摺動を抑制する抑制部とを有している。また、箱棒本体は、ファスナーテープのテープ側端縁の上下面及び蝶棒に対向する側の側面を包み込んで形成された本体領域と、エレメント列側基端部に配され、箱棒本体における蝶棒対向側の側面部が排除された切欠き領域とを有している。更に、抑制部は、箱棒本体の切欠き領域内のみに突設されている。
このように本発明のスライドファスナーを構成することにより、箱棒本体の切欠き領域を上下方向に容易に弾性変形させて、抑制部を上下方向に変位させることができる。従って、例えば箱棒やスライダーの寸法にバラツキが生じて、箱棒の上下面に突設した抑制部の頂部間のテープ表裏方向における寸法がスライダーの上下翼板間の間隔に対して大きくなる場合でも、箱棒の抑制部がスライダーのエレメント案内路内に進入したときにファスナーテープ側に容易に変位する。このため、箱棒の抑制部とスライダーとの間に過大な摩擦力が働いてスライダーの摺動性や操作性を低下させることを防止できる。
一方、例えば箱棒やスライダーの寸法精度等を考慮して、箱棒の上下面に突設した抑制部の頂部間のテープ表裏方向における寸法を、スライダーの上下翼板間の間隔よりも大きくなるように予め設定しておくことにより、箱棒やスライダーの寸法にバラツキが生じても、箱棒の上下面に突設した隆起部の頂部間の寸法がスライダーの上下翼板間の間隔よりも小さくなることを防げる。
従って、第2スライダーが蝶棒挿入位置まで移動したときには、箱棒本体における切欠き領域の弾性力等を利用して、抑制部と第2スライダーとの間に適度な摩擦力を確実に発生させることができる。これにより、箱棒は第2スライダーを蝶棒挿入位置で安定して保持することができるため、その後に第1及び第2スライダーに蝶棒を挿し込む操作や、第1及び第2スライダーから蝶棒を抜き出す操作を円滑に行うことができる。
また、本発明のスライドファスナーにおいては、前記抑制部が、前記箱棒本体の上面又は下面からの突出高さが最も高い頂部と、同頂部からテープ長さ方向に前記突出高さを漸減させる傾斜部又は湾曲部とを有した構成としておくことができる。
このようにスライドファスナーを構成しておくことにより、例えば第1スライダーを摺動させる場合、抑制部を第1スライダーの肩口又は後口からエレメント案内路内に進入させる際に、抑制部が第1スライダーの上下翼板と干渉することを抑え、第1スライダーを円滑に摺動させることができる。また、第2スライダーについても同様に、抑制部を第2スライダーの後口からエレメント案内路内に進入させる際に、抑制部が第2スライダーの上下翼板と干渉することを抑え、第2スライダーを円滑に摺動させることができる。
更に、本発明のスライドファスナーでは、前記箱棒本体が、前記抑制部よりもテープ内側に、前記抑制部に沿ってテープ長さ方向に形成されたスリットを有するように構成しておくことができる。このように構成しておくことにより、抑制部をより変位し易く形成することができ、スライダーの摺動性や操作性が低下することをより確実に防止できる。
更にまた、本発明のスライドファスナーでは、前記箱棒が、前記箱棒本体の上下面の少なくとも一面に突設され、前記第1スライダーにおける前記スライダー胴体内面に密接して同第1スライダーの摺動を抑制する隆起部を、前記抑制部よりも箱棒先端側の位置に有するように構成しておくことができる。このようにスライドファスナーを構成しておくことにより、蝶棒挿入位置に移動した第1スライダーを隆起部によって安定して保持することができる。このため、蝶棒の挿入操作や抜出操作をより円滑に行うことができる。
図1は、本発明の実施例1に係るスライドファスナーを一部省略して示す正面図である。 図2は、実施例1に係る箱棒を示す斜視図である。 図3は、実施例1に係る蝶棒を示す斜視図である。 図4は、第1スライダーが正規の蝶棒挿入位置に保持された状態を説明する説明図である。 図5は、図4に示したV−V線の矢視断面図である。 図6は、第1及び第2スライダーが正規の蝶棒挿入位置に保持された状態を説明する説明図である。 図7は、第2スライダーが正規の蝶棒挿入位置に保持されたときの隆起部を拡大して示す断面図である。 図8は、蝶棒を第1及び第2スライダー内に挿入する操作を説明する説明図である。 図9は、蝶棒が第1及び第2スライダー内に挿入された状態を示す説明図である。 図10は、第2スライダーを前方に摺動させて左右のエレメント列を噛合させた状態を示す説明図である。 図11は、実施例1の変形例に係る箱棒を示す斜視図である。 図12は、実施例1の変形例において第1スライダーが蝶棒挿入位置に保持された状態を示す拡大断面図である。 図13は、実施例1の別の変形例に係るスライドファスナーを示す断面図である。 図14は、実施例2に係る箱棒の一部を拡大して示す斜視図である。 図15は、実施例3に係る箱棒の一部を拡大して示す斜視図である。 図16は、従来の逆開き可能なスライドファスナーを一部省略して示す正面図である。 図17は、従来のスライドファスナーの要部を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について具体的な実施例を挙げて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば、以下の実施例では、右側のファスナーストリンガーの後端側に箱棒が配され、左側のファスナーストリンガーの後端側に蝶棒が配されている場合について説明する。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、右側のファスナーストリンガーに蝶棒が配され、左側のファスナーストリンガーに箱棒が配されている場合や、ファスナーストリンガーの前端側に箱棒や蝶棒が配されている場合にも、同様に適用することができる。
図1は、本実施例1のスライドファスナーを一部省略して示す正面図である。また、図2は、同スライドファスナーが有する箱棒を示す斜視図であり、図3は、同スライドファスナーが有する蝶棒を示す斜視図である。
なお、以下の説明において、前後方向とは、スライドファスナーにおけるファスナーテープの長手方向を指し、エレメント列3に対して止具8が配されている側を前方、箱棒4及び蝶棒5が配されている側を後方とする。左右方向とは、ファスナーテープのテープ幅方向を指し、スライドファスナーを正面(表面側)から見たときの左側及び右側をそれぞれ左方及び右方とする。上下方向とは、ファスナーテープのテープ面に直交するテープ表裏方向を指し、ファスナーテープに対してスライダーの上翼板が配される側を上方、スライダーの下翼板が配される側を下方とする。
本実施例1におけるスライドファスナー1は、エレメント列3が配された左右一対のファスナーストリンガー2と、右側ファスナーストリンガー2a(第1ファスナーストリンガー)におけるエレメント列3の後端から連続するように設けられた箱棒4と、左側ファスナーストリンガー2b(第2ファスナーストリンガー)におけるエレメント列3の後端から連続するように設けられた蝶棒5と、エレメント列3に沿って摺動可能に配された一対の第1及び第2スライダー6a,6bとを有している。
ここで、第1スライダー6aは、箱棒4側に配さている逆開き用のスライダー(所謂、下スライダー)であり、第2スライダー6bは、後述する止具8側に配されるスライダー(所謂、上スライダー)である。
左右のファスナーストリンガー2は、それぞれ、繊維製のファスナーテープ7と、同ファスナーテープ7のテープ側縁部に配されたエレメント列3と、同エレメント列3の前端に固着された止具8とを有している。この場合、左右の各ファスナーテープ7は、対向するテープ側端縁に芯紐部7aを有している。
また、これらのファスナーテープ7の芯紐部7aを含むテープ側縁部(エレメント取付
部)に沿って、複数のファスナーエレメント9が一定の間隔をおいて取着されてエレメント列3が形成されている。更に、ファスナーテープの後端部における表裏面には、樹脂製フィルムを貼着して補強部10が形成されている。
エレメント列3を構成する各ファスナーエレメント9は、ファスナーテープ7に固定される脚部と、脚部からテープ外方に向けて延出する噛合頭部とを有している。このようなファスナーエレメント9は、例えば銅合金やアルミニウム合金等の金属からなり、所定の形状を有するY字状のエレメント素子をファスナーテープ7に加締めることによって取着されている。なお、本発明において、エレメント列の形態や材質は特に限定されるものではなく、任意に変更することが可能である。
右側ファスナーストリンガー2aに配された箱棒4と、左側ファスナーストリンガー2bに配された蝶棒5とは、銅合金やアルミニウム合金等の金属からなる所定形状の箱棒部材及び蝶棒部材を加締めることにより、ファスナーテープ7に固着されている。
また、箱棒4は、図2に示したように、右側ファスナーテープ7の芯紐部7aを含むテープ側縁部に固着した箱棒本体41と、箱棒本体41の後端側に配された鉤状のストッパー部42と、箱棒本体41の上下面に突設された抑制部43及び隆起部44と、箱棒本体41における蝶棒対向側の側面から三角形状に突出した第1係止片45とを有している。
箱棒4の箱棒本体41は、ファスナーテープ7のテープ側端縁の上下面及び蝶棒対向側の側面を包み込んで形成された本体領域41aと、エレメント列側基端部に配され、箱棒本体41における蝶棒対向側の側面部が排除された切欠き領域41bとを有している。
即ち、箱棒本体41の本体領域41aは、上面部、下面部、及び蝶棒対向側の側面部を有しているのに対し、切欠き領域41bは、蝶棒対向側の側面部が設けられてなく、上面部及び下面部のみを有している。従って、箱棒本体41の切欠き領域41bでは、ファスナーテープ7の芯紐部7aの側面側が露呈した状態となっている。なお、箱棒本体41の上面部及び下面部は、ファスナーテープ7における芯紐部7aのテープ内側に形成された段部に引っ掛かる湾曲部分を含むものとする。
箱棒4のストッパー部42は、箱棒本体41からテープ内側へ向けて屈曲した鉤状に形成されており、エレメント列3を摺動する第1スライダー6aを衝突させて(図4を参照)、同第1スライダー6aを蝶棒挿入位置で停止させる機能を有する。
箱棒4の抑制部43は、箱棒本体41における切欠き領域41b内の上面部及び下面部に突設されており、上面側に形成された抑制部43と、下面側に形成された抑制部43とはファスナーテープ7を中心にして対称的に形成されている。
この場合、箱棒本体41における切欠き領域41bの上面部及び下面部は、弾性変形により上下方向に撓み易いため、抑制部43を上下方向に(特にファスナーテープ7側に)相対的に容易に変位させることができる。また、上下面に配された抑制部43は、箱棒本体41の前端面側にも延設されており、エレメント列3の最も箱棒4側に配されているファスナーエレメント9(以下、このファスナーエレメント9を第1ファスナーエレメント9とする)に接触して配されている。
更に、抑制部43は、箱棒本体41の上下面からの突出高さが最も高い頂部43aと、その頂部43aからテープ長さ方向に突出高さを漸減させる湾曲部43bとを有している。この場合、箱棒本体41の上面に形成された抑制部43の頂部43aから箱棒本体41の下面に形成された抑制部43の頂部43aまでの上下方向における寸法は、第1及び第2スライダー6a,6bにおける後述する上翼板63の内面(平面部69a)と下翼板64の内面(平面部69a)との間の距離よりも僅かに大きくなるように設定されている。
箱棒4の隆起部44は、箱棒本体41における本体領域41aの上面部及び下面部に、箱棒本体41のテープ幅方向の全体に亘って形成されている。これらの隆起部44は、第1スライダー6aをストッパー部42に衝止したときに、隆起部44が第1スライダー6aの後述する面取り部69bに密接する位置に設けられている。
また、この隆起部44は、箱棒本体41の上下面からの突出高さが最も高い頂部と、その頂部から箱棒本体41のエレメント列側基端部及び箱棒先端部に向けて突出高さを漸減させる湾曲部とを有しており、テープ長さ方向に沿った断面図で見たときに半円形状を呈している。
この場合、箱棒本体41の上面側に形成された隆起部44の頂部から、箱棒本体41の下面側に形成された隆起部44の頂部までの上下方向における寸法は、第1スライダー6aにおける後述する上翼板63の内面と下翼板64の内面との間の距離よりも僅かに大きくなるように設定されている。
なお、本実施例1における抑制部43及び隆起部44は、箱棒本体41の上下両面に設けられているが、本発明では、抑制部43及び隆起部44が箱棒本体41の上面のみ、又は下面のみに形成されていても良い。この場合、箱棒4において、抑制部43の頂部から箱棒本体41における反対側の面(抑制部43が形成されてない側の面)までの上下方向における寸法、及び隆起部44の頂部から箱棒本体41における反対側の面(隆起部44が形成されてない側の面)までの上下方向における寸法は、第1スライダー6aにおける上翼板63の内面と下翼板64の内面との間の距離よりも大きく設定される。
箱棒4の第1係止片45は、箱棒本体41における本体領域41aの前部側において、箱棒本体41の上下方向における中間部に、蝶棒対向側の側面から蝶棒5に向けて突出して形成されている。また、この第1係止片45の前端には、テープ幅方向に平行な前端面が設けられている。なお、第1係止片45の前端面と、箱棒本体41の切欠き領域41bの切欠き面(後端面)とは、同一平面上に形成されている。
左側ファスナーストリンガー2bに配された蝶棒5は、左側ファスナーテープ7の芯紐部7aを含むテープ端縁部に固着した蝶棒本体51と、同蝶棒本体51の上面と平行に箱棒4側へ延設された案内片52と、蝶棒本体51の前端部から箱棒4側へ延設され、案内片52の前端と一体に形成された平板状の第2係止片53と、第2係止片53の前面側に突設され、右側ファスナーストリンガーの最も箱棒4側に配されたファスナーエレメント9と係合する突起部54とを有している。また、蝶棒本体51の箱棒対向面には、後述するように蝶棒5を第1及び第2スライダー6a,6bに挿入する際に、箱棒4の第1係止片45が蝶棒本体51に干渉することを避けるための逃げ溝55が形成されている。
第1及び第2スライダー6a,6bは、それぞれ、アルミニウム合金や亜鉛合金などの金属からなるスライダー胴体61と引手62とを有している。スライダー胴体61は、上下翼板63,64と、同上下翼板63,64をスライダー端部にて連結する連結柱65と、上下翼板63,64の各左右側縁に設けられたフランジ66と、上翼板63の表面(上面)に立設された引手取付柱67と有している。引手62は、引手取付柱67に回動可能に取着されている。
また、スライダー胴体61の連結柱65が配されている側の端部には肩口が左右に形成されるとともに、その反対側の端部には後口が形成されている。スライダー胴体61内には、左右の肩口と後口とを連通し、正面視にて略Y字状のエレメント案内路68が設けられている。
更に、上翼板63及び下翼板64の内面(エレメント案内路68側の壁面)には、上下翼板63,64の板厚が一定となる平面部69aと、上下翼板63,64の板厚を後口に向けて漸減させる面取り部69bとが形成されている。なお、本実施例1のスライドファスナー1において、第1及び第2スライダー6a,6bは、互いの後口が相対する向きで配されている。
このような第1及び第2スライダー6a,6bは、従来と同様の方法を用いて作製されている。具体的には、先ず、引手取付柱67が配されてない状態のスライダー胴体61をダイキャスト成形により作製する。また同時に、引手取付柱67を構成する図示しない引手取付部材をプレス成形により作製する。
続いて、図示しない引手取付部材に引手62を保持した状態で、同引手取付部材をスライダー胴体61に加締め付けて引手取付柱67を形成する。これによって、スライダー胴体61の引手取付柱67に引手62が取着された第1及び第2スライダー6a,6bが組み立てられる。
なお、本実施例1では、箱棒4、蝶棒5、第1スライダー6a、及び第2スライダー6bは、何れも金属により形成されている場合について説明しているが、本発明において、箱棒、蝶棒、第1スライダー、及び第2スライダーの材質は特に限定されるものではない。
例えば箱棒や蝶棒は、ポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレンなどの熱可塑性合成樹脂をファスナーテープに射出成形すること等によっても形成することが可能である。また、第1及び第2スライダーは、熱可塑性樹脂を射出成形してスライダー胴体、引手、引手取付部材等の部品を形成し、その後、得られた部品を組み立てること等によって製造することも可能である。
次に、上述のような構成を有する本実施例1のスライドファスナー1について、左右のファスナーストリンガー2が開いている状態から、同ファスナーストリンガー2を閉鎖するときの操作について説明する。
先ず、第1スライダー6aを、右側ファスナーストリンガー2aのエレメント列3に沿って後方(箱棒4側)へ向けて摺動させ、第1スライダー6aの肩口側が箱棒4のストッパー部42に当接する位置(蝶棒挿入位置)まで移動させる。
このとき、先ず、箱棒4の抑制部43が、第1スライダー6aに対して、肩口からエレメント案内路68内に進入する。更に、同抑制部43は、エレメント案内路68を通過して、第1スライダー6aの後口から排出される。
ここで、抑制部43は、前述のように、箱棒本体41における側面部が排除された切欠き領域41b内に配されている。このため、箱棒4の抑制部43が第1スライダー6aのエレメント案内路68を通過する際に、箱棒本体41における切欠き領域41bの上面部及び下面部は、繊維性の芯紐部7aに押し込まれて同芯紐部7aを局部的に窪ませることにより容易に撓むため、抑制部43をファスナーテープ7側に変位させることができる。これにより、例えばスライドファスナー1の製造時に箱棒4や第1スライダー6aの寸法に誤差が生じる場合でも、抑制部43が第1スライダー6aに引っ掛かる等の不具合が生じることを防止できる。
特に、本実施例1では、抑制部43に湾曲部43bがテープ長さ方向に形成されているため、抑制部43は、第1スライダー6aに引っ掛かることなく、第1スライダー6aの肩口からエレメント案内路68内に円滑に進入することができる。
続いて、箱棒4の本体領域41aに配された隆起部44が、第1スライダー6aに対して、肩口からエレメント案内路68内に進入する。このとき、隆起部44は、前述のように、テープ長さ方向に沿った断面図で見たときに半円形状を有している。このため、隆起部44は、第1スライダー6aに引っ掛かることなく、同第1スライダー6aの肩口からエレメント案内路68内に円滑に進入することができる。
更に、第1スライダー6aのエレメント案内路68内に進入した隆起部44は、第1スライダー6aにおける上翼板内面及び下翼板内面の平面部69aに摺接しながら、第1スライダー6aの後口側に向けて相対的に移動する。このため、隆起部44と上下翼板63,64との間の摩擦力が増大し、第1スライダー6aの摺動操作に対して抵抗が与えられる。
その後、第1スライダー6aがストッパー部42に衝止するときに又は衝止する直前に、箱棒4の隆起部44は、上翼板内面及び下翼板内面の平面部69aから面取り部69bに到達し、隆起部44が、面取り部69bに密接した状態で、面取り部69bによって形成される空間部に入り込む(図4及び図5を参照)。これにより、第1スライダー6aを正規の蝶棒挿入位置に保持することができる。
またこの場合、箱棒4の隆起部44が第1スライダー6aの平面部69aから面取り部69bに移動したときに、隆起部44と上下翼板63,64との間の摩擦力が瞬間的に減少するため、第1スライダー6aを摺動する操作に「カチッ」という感触を与えることができる。これにより、スライドファスナー1の使用者は、第1スライダー6aが蝶棒挿入位置まで移動したことを確認することができる。
次に、第1スライダー6aを蝶棒挿入位置に保持した後、第2スライダー6bを後方(箱棒4側)へ向けて摺動し、第2スライダー6bを第1スライダー6aの後口側端部に当接させて蝶棒挿入位置で停止させる。
このとき、箱棒4に配された抑制部43は、第2スライダー6bの後口からエレメント案内路68内に進入する。ここで、抑制部43には、湾曲部43bがテープ長さ方向に形成されているため、第2スライダー6bのエレメント案内路68内に円滑に進入することができる。
また、抑制部43は、箱棒本体41の切欠き領域41b内に配されており、且つ、箱棒本体41の上下面に形成された抑制部43の頂部間の上下方向における寸法が、第2スライダー6bにおける上下翼板63,64の内面間の距離よりも僅かに大きく設定されている。
このため、例えばスライドファスナー1の製造時に箱棒4や第2スライダー6bの寸法に誤差がある場合でも、箱棒4の抑制部43が第2スライダー6bのエレメント案内路68を通過する際に、箱棒本体41の切欠き領域41bにおける弾性力を利用して、第2スライダー6bの上下翼板63,64の内面に抑制部43を安定して摺接させることができる。
また一方で、抑制部43が第2スライダー6bと接触して応力を受けることにより、図7に示したように、箱棒本体41における切欠き領域41bの上面部及び下面部は芯紐部7aに押し込まれて容易に撓むため、抑制部43がファスナーテープ7側に変位する。このため、抑制部43が第2スライダー6bに干渉して引っ掛かる等の不具合が生じることを防止できる。
更に、第2スライダー6bが第1スライダー6aに当接して蝶棒挿入位置で停止したときに、抑制部43は第2スライダー6bの上下翼板63,64の内面に接して、第2スライダー6bと抑制部43との間に摩擦力を生じさせるため、第2スライダー6bを正規の蝶棒挿入位置で安定して保持することができる(図6及び図7を参照)。
なお、上述のように第2スライダー6bを蝶棒挿入位置に摺動させて第1スライダー6aと当接させた場合、エレメント列3は、例えば図6に示したように、第2スライダー6bのエレメント案内路68に沿って、箱棒4に対して右側に屈曲させられる。このとき、本実施例1では、抑制部43が、前述のように箱棒本体41の前端面側に延設されてエレメント列3の第1ファスナーエレメント9に接触し、第1ファスナーエレメント9と箱棒本体41の前端面とは互いに離間して配されている。
このため、本実施例1の第1ファスナーエレメント9は、例えば第1ファスナーエレメントが箱棒本体の前端面全体に接触している場合に比べて、その姿勢を箱棒本体41に対して、より自由に傾けることが可能となる。これにより、エレメント列3を、第2スライダー6bのエレメント案内路68に沿って容易に屈曲させることができるため、蝶棒挿入位置で第2スライダー6bの姿勢が傾くことを防止できる。更に、第2スライダー6bを蝶棒挿入位置から前方(エレメント列噛合方向)へ摺動させる際における第2スライダー6bの摺動性を向上させることができる。
続いて、図8に示したように、蝶棒5を第2スライダー6bの肩口から、第2スライダー6bのエレメント案内路68及び第1スライダー6aのエレメント案内路68内に挿入する。このとき、第1及び第2スライダー6a,6bは、上述のように正規の蝶棒挿入位置で安定して保持されている。
このため、蝶棒5が、右側ファスナーストリンガー2aのエレメント列3や箱棒4に途中で引っ掛かることなく、蝶棒5の第2係止片53が箱棒4の第1係止片45に当接する位置まで、蝶棒5を円滑に且つ安定して挿入することができる(図9を参照)。
その後、図9の状態から第2スライダー6bをエレメント列3に沿って前方へ摺動させることにより、左右のエレメント列3を噛合して、左側ファスナーストリンガー2bと右側ファスナーストリンガー2aとを円滑に且つ安定して閉鎖することができる(図10を参照)。
更にその後、蝶棒挿入位置(箱棒4側の末端位置)に保持されている第1スライダー6aを、エレメント列3に沿って前方へ摺動させることにより、閉鎖している右側及び左側ファスナーストリンガー2a,2bを、図1に示したように、箱棒4及び蝶棒5側の端部(後端部)から容易に開くことができる。
次に、図1に示したように右側及び左側ファスナーストリンガー2a,2bが逆開きしている状態から、左側ファスナーストリンガー2bと右側ファスナーストリンガー2aとを完全に分離させて開く場合について説明する。
先ず、第1スライダー6aをエレメント列3に沿って後方へ向けて摺動させ、左右のエレメント列3を噛合させながら第1スライダー6aを箱棒4のストッパー部42に当接する蝶棒挿入位置まで移動させる。このとき、箱棒4の抑制部43は、第1スライダー6aに引っ掛かる等の不具合を生じさせることなく、第1スライダー6aの肩口からエレメント案内路68内を上下翼板63,64の内面に摺接しながら通過して、同第1スライダー6aの後口から排出される。
続いて、箱棒4の隆起部44が、第1スライダー6aの肩口からエレメント案内路68内に進入し、上翼板63内面の平面部69aに摺接しながら後口側に向けて相対的に移動する。更に、第1スライダー6aがストッパー部42に衝止するときに又は衝止する直前に、隆起部44は上下翼板63,64の平面部69aから面取り部69bに到達して、同面取り部69bに密接する。これにより、第1スライダー6aの摺動が抑制され、第1スライダー6aがストッパー部42に接触している状態を安定して保持することができる。
次に、第2スライダー6bを後方へ向けて摺動することにより、噛合状態にある左右のエレメント列を分離し、更に、第2スライダー6bを第1スライダー6aの後口側端部に当接した位置(蝶棒挿入位置)で停止させる。このとき、箱棒4の抑制部43は、第2スライダー6bに引っ掛かる等の不具合を生じさせることなく、第2スライダー6bにおける上下翼板63,64の内面に押し当てられる。このため、隆起部44と第2スライダー6bの下翼板63,64との間に摩擦力が生じ、第2スライダー6bを蝶棒挿入位置で保持することができる。
その後、蝶棒5を第1及び第2スライダー6a,6bのエレメント案内路68から抜出する。このとき、第1及び第2スライダー6a,6bは、それぞれの蝶棒挿入位置で保持されているため、蝶棒5を円滑に且つ安定して抜出することができる。これによって、左側ファスナーストリンガー2bと右側ファスナーストリンガー2aとを円滑に且つ安定して開くことができる。
以上のようにして本実施例1のスライドファスナー1が構成されていることにより、箱棒4や第1及び第2スライダー6a,6bの寸法にバラツキが生じている場合であっても、箱棒本体41の切欠き領域41bにおける上面部及び下面部を上下方向に容易に弾性変形させて、抑制部43をファスナーテープ7側に変位させることができる。このため、抑制部43が第1及び第2スライダー6a,6bに引っ掛かってスライダーの摺動性や操作性が低下することを防止できる。
また、抑制部43は、第2スライダー6bのエレメント案内路68内に進入したときに、箱棒本体41の切欠き領域41bにおける弾性力を利用して、抑制部43を第2スライダー6bの上下翼板63,64の内面に安定して摺接させることができる。このため、第2スライダー6bが蝶棒挿入位置に移動して停止したときに、第2スライダー6bをその蝶棒挿入位置で安定して保持できる。従って、その後に蝶棒の挿入操作又は抜出操作を円滑に行って、左右のファスナーストリンガー2を容易に開閉することができる。
なお、この実施例1では、箱棒4において半円形状の断面を有する隆起部44が、第1スライダー6aに対して所定の位置に形成されている場合について説明している。しかし、本発明において、隆起部44の配設位置や形態等は特に限定されるものではない。
例えば本発明では、図11及び図12に実施例1の変形例を示したように、隆起部47を、箱棒本体41の先端部に小さく形成することが可能である。この場合、箱棒本体41の上面側に形成された隆起部47の頂部から、箱棒本体41の下面側に形成された隆起部47の頂部までの上下方向における寸法は、第1スライダー6aにおける上翼板63の平面部69aと下翼板64の平面部69aとの間の距離よりも僅かに大きくなるように設定されている。
このため、隆起部47が第1スライダー6aのエレメント案内路68内に進入したときに、箱棒本体41に配された上面側及び下面側の隆起部47は、第1スライダー6aにおける上翼板63及び下翼板64の平面部69aに摺接して摩擦力を発生させる。従って、第1スライダー6aが蝶棒挿入位置に移動したときには、隆起部47と第1スライダー6aとの間の摩擦力を利用して第1スライダー6aをその位置で安定して保持することができる。
更に、本発明では、隆起部のテープ長さ方向における断面形状を、半円形状ではなく、三角形状や矩形状にすることが可能である。また、スライドファスナーの用途等によっては、例えば図13に示したように、隆起部44を形成せずに箱棒4を構成することも可能である。
なお、このような隆起部の配設位置や形態等については、後述する実施例2及び実施例3においても同様に限定されるものではない。
図14は、本実施例2に係る箱棒の一部を拡大して示す斜視図である。
本実施例2におけるスライドファスナー81では、箱棒82における箱棒本体83の切欠き領域83bの形態と抑制部84の形態が、前述の実施例1における箱棒4の箱棒本体41及び抑制部43と異なっている。
なお、本実施例2における箱棒本体83の切欠き領域83b及び抑制部84以外の構成については、前述の実施例1におけるスライドファスナー1と基本的に同じである。従って、本実施例2のスライドファスナー81において、前述の実施例1にて説明した部材と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて表すことによってその説明を省略することとする。
本実施例2の箱棒本体83は、ファスナーテープ7のテープ側端縁の上下面及び蝶棒対向側の側面を包み込んで形成された本体領域83aと、エレメント列側基端部に配され、箱棒本体83における蝶棒対向側の側面部が排除された切欠き領域83bとを有している。
また、箱棒本体83の切欠き領域83bにおける上面部及び下面部では、抑制部84よりも蝶棒5に対向する側の部分も切り欠かれており、抑制部84における蝶棒対向側の側面と、箱棒本体83の切欠き領域83bにおける蝶棒対向側の側面とが同一平面上に形成されている。
更に、箱棒本体83の切欠き領域83bには、抑制部84よりもテープ内側に、スリット85が抑制部84に沿ってテープ長さ方向に形成されている。このようなスリット85を有することにより、箱棒本体83の抑制部84が突設されている部分を上下方向に更に撓み易く構成できるため、抑制部84をより容易にファスナーテープ7側に変位させることができる。
このように本実施例2のスライドファスナー81が構成されていることにより、箱棒4や第1及び第2スライダー6a,6bの寸法にバラツキが生じている場合であっても、抑制部84をより容易にファスナーテープ7側に変位させることが可能であるため、抑制部43が第1及び第2スライダー6a,6bに引っ掛かる等の不具合が生じることをより確実に防止できる。
また、抑制部84は、第2スライダー6bのエレメント案内路68内に進入したときに、箱棒本体83の弾性力等を利用して、第2スライダー6bの上下翼板63,64の内面に安定して摺接する。このため、第2スライダー6bが蝶棒挿入位置に移動して停止したときに、第2スライダー6bをその蝶棒挿入位置で安定して保持することができる。
図15は、本実施例3に係る箱棒の一部を拡大して示す斜視図である。
本実施例3におけるスライドファスナー91においても、箱棒92における箱棒本体93の切欠き領域93bの形態及び抑制部94の形態が前述の実施例1と異なっているが、それ以外については、前述の実施例1におけるスライドファスナー1と基本的に同じ構成を有している。
本実施例3の箱棒本体93は、ファスナーテープ7のテープ側端縁の上下面及び蝶棒対向側の側面を包み込んで形成された本体領域93aと、エレメント列側基端部に配され、箱棒本体93における蝶棒対向側の側面部が排除された切欠き領域93bとを有している。
また、箱棒本体93の切欠き領域93bにおける上面部及び下面部では、抑制部94よりも蝶棒5に対向する側の部分が切り欠かれている。更に、箱棒本体93において、上面側及び下面側の抑制部94が形成されている領域は、ファスナーテープ7の芯紐部7aから離間するように、部分的に浮き上がって形成されている。このため、箱棒本体93の上面部裏面及び下面部裏面とファスナーテープ7の芯紐部7aとの間には間隙95が形成されている。
抑制部94は、箱棒本体93の上面部及び下面部に突設されており、同抑制部94の頂部94aは、正面視にて矩形状を有するように形成されている。また、抑制部94は、頂部94aから後方側及びテープ内方側に向けて、その突出高さを漸減させる傾斜部94bを有している。
このように本実施例3のスライドファスナー91が構成されていることにより、箱棒92や第1及び第2スライダー6a,6bの寸法にバラツキが生じている場合であっても、前述の実施例1及び2と同様に、抑制部94を容易にファスナーテープ7側に変位させることが可能である。特に、本実施例3において、箱棒本体93の抑制部94が形成されている領域には、上述のように芯紐部7aとの間に間隙95が形成されているため、その間隙95に向けて抑制部94をより容易に変位させることができる。これにより、抑制部94が第1及び第2スライダー6a,6bに引っ掛かってスライダーの摺動性や操作性が低下することをより確実に防止できる。
また、第2スライダー6bが蝶棒挿入位置に移動して停止したときには、抑制部94と第2スライダー6bとの間の摩擦力を利用して、第2スライダー6bをその蝶棒挿入位置で安定して保持することができる。
更に、本実施例3では、抑制部94に、傾斜部94bが形成されているため、抑制部94が第1スライダー6a又は第2スライダー6bのエレメント案内路68内に円滑に進入する際に、抑制部94をより円滑に進入させることができる。
1 スライドファスナー
2 ファスナーストリンガー
2a 右側ファスナーストリンガー
2b 左側ファスナーストリンガー
3 エレメント列
4 箱棒
5 蝶棒
6a 第1スライダー
6b 第2スライダー
7 ファスナーテープ
7a 芯紐部
8 止具
9 ファスナーエレメント
10 補強部
41 箱棒本体
41a 本体領域
41b 切欠き領域
42 ストッパー部
43 抑制部
43a 頂部
43b 湾曲部
44 隆起部
45 第1係止片
47 隆起部
51 蝶棒本体
52 案内片
53 第2係止片
54 突起部
55 逃げ溝
61 スライダー胴体
62 引手
63 上翼板
64 下翼板
65 連結柱
66 フランジ
67 引手取付柱
68 エレメント案内路
69a 平面部
69b 面取り部
81 スライドファスナー
82 箱棒
83 箱棒本体
83a 本体領域
83b 切欠き領域
84 抑制部
85 スリット
91 スライドファスナー
92 箱棒
93 箱棒本体
93a 本体領域
93b 切欠き領域
94 抑制部
94a 頂部
94b 傾斜部
95 間隙

Claims (5)

  1. 左右のファスナーテープ(7) の対向するテープ側縁部にエレメント列(3) を有する一対の第1及び第2ファスナーストリンガー(2a,2b) と、前記第1ファスナーストリンガー(2a)における前記エレメント列(3) の一端から延設された箱棒(4,82,92) と、前記第2ファスナーストリンガー(2b)における前記エレメント列(3) の一端から延設された蝶棒(5) と、前記エレメント列(3) に沿って摺動可能に配された一対の第1及び第2スライダー(6a,6b) とを備え、
    前記第1スライダー(6a)は、前記第1及び第2スライダー(6a,6b)の後口同士が相対する向きで、前記第2スライダー(6b)よりも前記箱棒(4,82,92)側に配され、
    前記箱棒(4,82,92) は、前記ファスナーテープ(7) に固着した箱棒本体(41,83,93)と、同箱棒本体(41,83,93)の先端側に配され、前記第1スライダー(6a)を衝止させるストッパー部(42)と、前記箱棒本体(41,83,93)の上下面の少なくとも一面に突設され、前記第2スライダー(6b)のスライダー胴体(61)内面に密接して同第2スライダー(6b)の摺動を抑制する抑制部(43,84,94)とを有する、
    開離嵌挿操作が可能なスライドファスナー(1,81,91) であって、
    前記箱棒本体(41,83,93)は、前記ファスナーテープ(7) のテープ側端縁の上下面及び蝶棒(5) に対向する側の側面を包み込んで形成された本体領域(41a,83a,93a) と、エレメント列側基端部に配され、前記箱棒本体(41,83,93)における蝶棒対向側の側面部が切除された切欠き領域(41b,83b,93b) とを有し、
    前記箱棒(4,82,92) の前記エレメント列側基端部は、前記箱棒本体(41,83,93)の前記切欠き領域(41b,83b,93b) が配されたテープ長さ方向の領域に、前記本体領域(41a,83a,93a) に対してテープ表裏方向に弾性変形可能な非切除部である上面部と下面部とを有し、
    前記箱棒(4,82,92) の前記エレメント列側基端部は、前記第2スライダー(6b)の前記後口から、前記エレメント列側基端部の前記上面部及び下面部の弾性変形を利用して、前記スライダー胴体(61)の上下内面間に形成されたエレメント案内路(68)内に挿入可能なテープ表裏方向の断面寸法を備え、
    前記抑制部(43,84,94)は、前記非切除部の前記上面部及び下面部のみに突設されてなることを特徴とするスライドファスナー。
  2. 前記抑制部(43)は、前記箱棒本体(41)のエレメント列側基端位置よりも前記エレメント
    列(3) 側に向けて突出して配されてなる請求項1記載のスライドファスナー。
  3. 前記抑制部(43,84,94)は、前記箱棒本体(41,83,93)の上面又は下面からの突出高さが最も高い頂部(43a,94a) と、同頂部(43a,94a) からテープ長さ方向に前記突出高さを漸減させる傾斜部(94b) 又は湾曲部(43b) とを有してなる請求項1記載のスライドファスナー。
  4. 前記箱棒本体(83)は、前記抑制部(84)よりもテープ内側に、前記抑制部(84)に沿ってテープ長さ方向に形成されたスリット(85)を有してなる請求項1記載のスライドファスナー。
  5. 前記箱棒(4,82,92) は、前記箱棒本体(41,83,93)の上下面の少なくとも一面に突設され、前記第1スライダー(6a)における前記スライダー胴体(61)内面に密接する隆起部(44,47) を、前記抑制部(43,84,94)よりも箱棒先端側の位置に有してなる請求項1記載のスライドファスナー。
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