JP5273847B2 - ポリ乳酸樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等として好適に使用し得るポリ乳酸樹脂組成物、及び該組成物を成形することにより得られるポリ乳酸樹脂成形体に関する。
生分解性樹脂の中でもポリ乳酸樹脂は、原料となるL−乳酸がトウモロコシ、芋等から抽出した糖分を用いて発酵法により生産されるため安価であること、原料が植物由来であるために二酸化炭素排出量が極めて少ないこと、また樹脂の特性として剛性が強く透明性が高いことが挙げられるため、現在その利用が期待されている。
しかし、ポリ乳酸樹脂は、上記特性に加えて、脆く、硬いことから、可撓性に欠けるという特性も有するため、包装材や日用品のような消費材としての実用化例は多数あるが、射出成形によって得られる家電部品や自動車部品のような耐久材として高度な要求特性が求められる分野には、使用実績はほとんどない。また、射出成形体等に成形した場合も、可撓性、耐衝撃性のような機械的強度が不足したり、折り曲げたときの白化やヒンジ特性が劣るなどの問題が生じたりするため、使用されていないのが現状である。
また、ポリ乳酸樹脂は、結晶化速度が遅く、延伸などの機械的工程を行わない限り射出成形後は非晶状態を有するが、ポリ乳酸樹脂のガラス転移点(Tg)が60℃と低いため、温度が55℃以上となる環境下では使用できず、耐熱性の点で劣るという問題がある。
さらに、家電部品では多くの用途において難燃性が求められ、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物の添加が行われている。
特許文献1には、乳酸系樹脂に、シランカップリング剤により表面処理された金属水酸化物と、芳香族カルボジイミドとを配合して得られる、難燃性と耐久性を兼ね備えた難燃性射出成形体が開示されている。
また、特許文献2には、乳酸樹脂に、有機化合物又はシリコーンにより被覆された金属水和物を配合することにより得られる、難燃性樹脂成形品が開示されている。
特開2005−120119号公報 特開2007−2120号公報
しかし、水酸化アルミニウム等の難燃無機フィラーを添加すると射出成形の際に流動性が低下するが、最近ではコストや意匠性から薄肉化が進んでいるため、より高いレベルの流動性を有することが求められる。特許文献1及び2の記載に拠って表面処理された金属水酸化物を用いた場合、得られる組成物の流動性が不十分であり、更なる、流動性が良好なポリ乳酸樹脂組成物の開発が求められている。
本発明の課題は、流動性に優れるポリ乳酸樹脂組成物、ならびに該組成物を成形することにより得られるポリ乳酸樹脂成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、特定の化合物によって表面処理された無機難燃剤を含有することで、射出成形時の流動性に優れるポリ乳酸樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕 ポリ乳酸樹脂、及び式(I):
[RO(AO)CHCOO]M (I)
〔式中、Rは炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基を示し、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す1〜20の数であり(但し、n個のAOは同一でも異なっていてもよい)、pは1又は2であり、pが1の場合、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム又はアルカノールアンモニウムであり、pが2の場合、Mはアルカリ土類金属を示す〕
で表される化合物によって表面処理が施された無機難燃剤を含有してなる、ポリ乳酸樹脂組成物、ならびに
〔2〕 前記〔1〕記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形してなるポリ乳酸樹脂成形体
に関する。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、流動性に優れるという優れた効果を奏するものである。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、及び無機難燃剤を含有するものであるが、前記無機難燃剤が特定の化合物によって表面処理が施されていることに大きな特徴を有する。
本発明における無機難燃剤は、式(I):
[RO(AO)CHCOO]M (I)
〔式中、Rは炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基を示し、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す1〜20の数であり(但し、n個のAOは同一でも異なっていてもよい)、pは1又は2であり、pが1の場合、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム又はアルカノールアンモニウムであり、pが2の場合、Mはアルカリ土類金属を示す〕
で表される化合物によって表面処理が施されている。以降、「式(I)で表される化合物」を「本発明における表面処理剤」、「式(I)で表される化合物によって表面処理が施された無機難燃剤」を「本発明における無機難燃剤」と記載することもある。
本発明における表面処理剤は、ポリ乳酸に対して相溶性の高いアルキレンオキシ基を導入することで、一般的に表面処理剤として使用される脂肪族カルボン酸に比べて、無機難燃剤に対する吸着率が高くなり、式(I)におけるRで示されるような立体斥力の大きな長い基を導入することで、お互いの凝集力が高い無機難燃剤を、より効率よくポリ乳酸樹脂組成物中に分散させ、流動性を顕著に向上できると考えられる。
式(I)におけるRは、炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は該アルキル基で置換されたフェニル基であり、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、及びノニルフェニル基が例示される。これらのなかでも、流動性とポリ乳酸樹脂への相溶性の観点から、炭素数8〜22の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数12〜18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、炭素数12〜14の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基がさらに好ましく、炭素数12〜14の直鎖のアルキル基又はアルケニル基がさらにより好ましい。
式(I)におけるAOは、炭素数2〜3のアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基が例示されるが、流動性の観点から、エチレンオキシ基が好ましい。また、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す1〜20の数であり、射出成形時の流動性の観点から、好ましくは2〜15、より好ましくは3〜12である。なお、n個のAOは同一でも異なっていてもよく、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基のランダム付加又はブロック付加のいずれであってもよい。
式(I)におけるpは1又は2であり、式(I)におけるMは、pが1の場合、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム又はアルカノールアンモニウムであり、pが2の場合、アルカリ土類金属であるが、無機難燃剤への吸着、添加効率の観点から、水素原子及びアルカリ金属原子が好ましく、水素原子及びナトリウムがより好ましい。
式(I)で表される化合物の具体例としては、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数10、以下POE(10)のように略して表す)ラウリルエーテル酢酸、POE(4.5)ラウリルエーテル酢酸、POE(4.0)ラウリルエーテル酢酸、POE(8)ミリスチルエーテル酢酸、POE(4)ステアリルエーテル酢酸、及びこれらのナトリウム塩等の塩が挙げられる。
式(I)で表される化合物は、特に限定はなく、公知の方法を用いて調製することができる。例えば、まず、式(II):
−OH (II)
〔式中、Rは前記と同じである〕
で表されるアルコールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加するか、あるいはそれらをランダム又はブロックで付加して、式(III):
O(AO)H (III)
〔式中、R、AO及びnは前記と同じである〕
で表される化合物を調製する。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、反応器(オートクレーブ)に仕込む原料アルコールのモル数に対するアルキレンオキサイドのモル数を計算して仕込むことで調整することができる。
なお、式(II)で表されるアルコールとしては、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数6〜24の直鎖脂肪族アルコール、オキソ法やチーグラー法を用いて合成された分岐鎖を有する炭素数6〜24の分岐鎖アルコール等が挙げられ、これらは単独でも又は2種以上混合して用いることができる。
次に、式(III)で表される化合物に水酸化ナトリウム等のアルカリを当量添加し、これとクロロ酢酸とを脱塩反応させ、場合によってはこれをアルカリで中和し、塩を生成させて、式(I)で表される化合物を得ることができる。
上記式(I)で表される化合物によって表面処理が施される無機難燃剤としては、金属水和物及び/又は金属水酸化物が挙げられる。具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム、水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂、カオリンクレー及び炭酸カルシウム水和物などが挙げられるが、吸熱効果が高く、難燃性に優れる観点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
式(I)で表される化合物による無機難燃剤の処理量は、流動性とポリ乳酸樹脂への相溶性の観点から、表面処理前の無機難燃剤100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜4重量部がより好ましく、0.5〜3重量部がさらに好ましく、0.8〜2重量部がさらにより好ましい。
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、式(I)で表される化合物以外の他の処理剤を使用することができる。表面処理剤総量中の式(I)で表される化合物の総含有量は、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
無機難燃剤の表面処理の方法は、式(I)で表される化合物が無機難燃剤表面に吸着する方法であれば特に限定されないが、例えば、式(I)で表される化合物を、アセトン、酢酸エチル、トルエン等の溶媒に溶解させた溶液を、無機難燃剤の表面に噴霧又は塗工した後、乾燥して溶媒を除去する方法等が挙げられる。
表面処理が施された無機難燃剤の形状は、特に限定はなく、粒状、板状、針状等が挙げられる。
表面処理が施された無機難燃剤の平均粒径は、射出成形時の流動性、難燃性、物性の観点から、10μm以下が好ましく、10〜0.01μmがより好ましく、5〜0.10μmがさらに好ましい。本明細書において、無機難燃剤の平均粒径は、回折・散乱法によって体積基準のメジアン径を測定することにより求めることができ、例えば、コールター社製レーザー回折・光散乱法粒度測定装置LS230により測定できる。
ポリ乳酸樹脂組成物には、前記表面処理が施された無機難燃剤、即ち、本発明における無機難燃剤以外に、他の難燃剤が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。他の難燃剤としては、リン系難燃剤が挙げられるが、前記本発明における無機難燃剤の含有量は、特に限定されないが、組成物に含有される全難燃剤中、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
本発明における無機難燃剤の含有量は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物中、流動性、難燃性、物性の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、30〜160重量部が好ましく、35〜140重量部がより好ましく、38〜130重量部がさらに好ましく、40〜120重量部がさらにより好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、上記表面処理が施されている無機難燃剤以外に、ポリ乳酸樹脂を含有する。
ポリ乳酸樹脂は、原料モノマーとして乳酸成分のみを縮重合させて得られるポリ乳酸、及び/又は、原料モノマーとして乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを用い、それらを縮重合させて得られるポリ乳酸を含有する。なお、縮重合反応は、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
乳酸には、L−乳酸(L体)、D−乳酸(D体)の光学異性体が存在する。本発明では、乳酸成分として、いずれかの光学異性体のみ、又は双方を含有してもよいが、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性、成形性、難燃性及び生産性の観点から、いずれかの光学異性体を主成分とする光学純度が高い乳酸を用いることが好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、乳酸成分中の含有量が80モル%以上である成分のことをいう。
乳酸成分のみを縮重合させる場合の乳酸成分におけるL体又はD体の含有量、即ち、前記異性体のうちいずれか多い方の含有量は、80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。なお、乳酸成分におけるL体及びD体の総含有量は、実質的に100モル%であることから、前記異性体のうちいずれか少ない方の含有量は、乳酸成分中、0〜20モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましい。
乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させる場合の乳酸成分におけるL体又はD体の含有量、即ち、前記異性体のうちいずれか多い方の含有量は、85〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。なお、乳酸成分におけるL体及びD体の総含有量は、実質的に100モル%であることから、前記異性体のうちいずれか少ない方の含有量は、乳酸成分中、0〜15モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましい。
一方、ヒドロキシカルボン酸成分としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて利用することができる。これらのなかでも、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。
また、本発明においては、上記乳酸成分及びヒドロキシカルボン酸成分の2量体が、それぞれの成分に含有されてもよい。乳酸成分の2量体としては、乳酸の環状二量体であるラクチドが例示され、ヒドロキシカルボン酸成分の2量体としては、グリコール酸の環状二量体であるグリコリドが例示される。なお、ラクチドにはL−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド、及びD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合物であるDL−ラクチドがあり、本発明ではいずれのラクチドも用いることができるが、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性、成形性、難燃性及び生産性の観点から、D−ラクチド及びL−ラクチドが好ましい。なお、乳酸成分の2量体は、乳酸成分のみを縮重合させる場合、及び乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させる場合、いずれの乳酸成分に含有されていてもよい。
かくして、原料モノマーを選択することにより、例えば、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの成分85モル%以上100モル%未満とヒドロキシカルボン酸成分0モル%超15モル%以下からなるポリ乳酸が得られるが、なかでも、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド及びカプロラクトンを原料モノマーとして用いて得られるポリ乳酸が好ましい。
また、本発明において、ポリ乳酸として、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性、成形性、難燃性及び生産性の観点から、異なる異性体を主成分とする乳酸成分を用いて得られた2種類のポリ乳酸からなるステレオコンプレックスポリ乳酸を用いてもよい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸を構成する一方のポリ乳酸〔以降、ポリ乳酸(A)と記載する〕は、L体90〜100モル%、D体を含むその他の成分0〜10モル%を含有する。他方のポリ乳酸〔以降、ポリ乳酸(B)と記載する〕は、D体90〜100モル%、L体を含むその他の成分0〜10モル%を含有する。なお、L体及びD体以外のその他の成分としては、2個以上のエステル結合を形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられ、また、未反応の前記官能基を分子内に2つ以上有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等であってもよい。
ステレオコンプレックスポリ乳酸における、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)の重量比〔ポリ乳酸(A)/ポリ乳酸(B)〕は、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましい。
ポリ乳酸樹脂における、ポリ乳酸の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、実質的に100重量%であることが望ましい。
なお、ポリ乳酸は、上記方法により合成することができるが、市販の製品としては、例えば、レイシアH−100、H−280、H−400、H−440等の「レイシアシリーズ」(三井化学社製)、3001D、3051D、4032D、4042D、6201D、6251D、7000D、7032D等の「Nature Works」(ネイチャーワークス社製)、エコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17等の「エコプラスチックU'zシリーズ」(トヨタ自動車社製)が挙げられる。これらのなかでも、耐熱性の観点から、レイシアH−100、H−280、H−400、H−440(三井化学社製)、3001D、3051D、4032D、4042D、6201D、6251D、7000D、7032D(ネイチャーワークス社製)、エコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17(トヨタ自動車社製)が好ましい。
ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)(℃)は、成形加工性の観点から、好ましくは130〜230℃、より好ましくは140〜190℃、さらに好ましくは150〜180℃である。なお、本明細書において、ポリ乳酸樹脂の融点は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求められる値である。
ポリ乳酸樹脂のガラス転移点(Tg)(℃)は、耐熱性の観点から、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜75℃、さらに好ましくは50〜70℃である。なお、本明細書において、ガラス転移点は、JIS−K7198に基づく動的粘弾性測定における損失弾性率(E'')のピーク温度より求められる値である。
ポリ乳酸樹脂組成物には、前記ポリ乳酸樹脂以外に、他の樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。他の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン、ポリカーボネート、ABS等が挙げられるが、前記ポリ乳酸樹脂の含有量は、特に限定されないが、組成物に含有される全樹脂中、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
ポリ乳酸樹脂の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物中、30重量%以上が好ましく、35重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、流動性の観点から、上記ポリ乳酸樹脂、及び表面処理が施されている無機難燃剤以外に、可塑剤、及び/又は有機結晶核剤を含有することが好ましい。
可塑剤としては、特に限定されないが、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸等の多塩基酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとのエステル;グリセリン、エチレングリコール、ジグリセリン、1,4−ブタンジオール等の多価アルコールに、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加させた付加物のアセチル化物;ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル等のヒドロキシ安息香酸エステル;フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル;マレイン酸ジ−n−ブチル等のマレイン酸エステル;アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;リン酸トリクレジル等のアルキルリン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリカルボン酸エステル;アセチル化ポリオキシエチレンヘキシルエーテル等のアセチル化ポリオキシエチレンアルキル(アルキル基の炭素数2〜15)エーテル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上混合して用いることができるが、ポリ乳酸樹脂の柔軟性、透明性、結晶化速度に優れる観点、及びポリ乳酸樹脂組成物の流動性の観点から、コハク酸、アジピン酸又は1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とポリエチレングリコール(エチレンオキサイドの平均付加モル数0.5〜5)モノメチルエーテルとのエステル、及び酢酸とグリセリン又はエチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数3〜20)とのエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、上記化合物は、可塑剤としての機能を十分発揮させる観点から、全てエステル化された飽和エステルであることが好ましく、例えば、特開2007-16092等公知の製造方法により得ることができる。
可塑剤の含有量は、耐ブリード性及びポリ乳酸樹脂の十分な結晶化速度を得る観点、ならびにポリ乳酸樹脂組成物の流動性の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、5〜60重量部が好ましく、7〜50重量部がより好ましく、10〜40重量部がさらに好ましい。
有機結晶核剤としては、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド、芳香族カルボン酸アミド、ロジン酸アミド等のアミド類;ヒドロキシ脂肪酸エステル類;芳香族スルホン酸ジアルキルエステルの金属塩、フェニルホスホン酸金属塩、リン酸エステルの金属塩、ロジン酸類金属塩等の金属塩類;カルボヒドラジド類、N−置換尿素類、有機顔料類等が挙げられるが、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性、成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機結晶核剤の耐ブルーム性の観点から、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらにこれらの少なくとも1種と、フェニルホスホン酸金属塩を併用することがより好ましく、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物とフェニルホスホン酸金属塩を併用することがさらに好ましい。
分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物としては、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させる観点から、水酸基を2つ以上有し、かつ、アミド基を2つ以上有する脂肪族アミドが好ましい。また、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物の融点は、混練時の有機結晶核剤の分散性を向上させ、またポリ乳酸樹脂組成物の結晶化速度を向上させる観点から、65℃以上が好ましく、70〜220℃がより好ましく、80〜190℃がさらに好ましい。なお、本明細書において、有機結晶核剤の融点は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物の具体例としては、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。なかでも、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性、成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機結晶核剤の耐ブルーム性の観点から、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアルキレンビスヒドロキシステアリン酸アミドが好ましく、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドがより好ましい。
ヒドロキシ脂肪酸エステルの具体例としては、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、12−ヒドロキシステアリン酸ジグリセライド、12−ヒドロキシステアリン酸モノグリセライド、ペンタエリスリトール−モノ−12−ヒドロキシステアレート、ペンタエリスリトール−ジ−12−ヒドロキシステアレート、ペンタエリスリトール−トリ−12−ヒドロキシステアレート等のヒドロキシ脂肪酸エステルが挙げられる。これらのなかでも、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性、成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機結晶核剤の耐ブルーム性の観点から、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドが好ましい。
フェニルホスホン酸金属塩は、置換基を有しても良いフェニル基とホスホン基(−PO(OH)2)を有するフェニルホスホン酸の金属塩であり、フェニル基の置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基の炭素数が1〜10のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。フェニルホスホン酸の具体例としては、無置換のフェニルホスホン酸、メチルフェニルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸等が挙げられ、無置換のフェニルホスホン酸が好ましい。
フェニルホスホン酸の金属塩としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル等の塩が挙げられ、亜鉛塩が好ましい。
本発明において、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種と、フェニルホスホン酸金属塩とを併用する場合、これらの割合は、本発明の効果を発現する観点から、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種/フェニルホスホン酸金属塩(重量比)=20/80〜80/20が好ましく、30/70〜70/30がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい。
有機結晶核剤の総含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性、成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機結晶核剤の耐ブルーム性の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜3.0重量部がより好ましく、0.5〜2.5重量部がさらに好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、前記ポリ乳酸樹脂、表面処理が施されている無機難燃剤、可塑剤、有機結晶核剤以外に、さらに、無機充填剤、加水分解抑制剤等が適宜含有されていてもよい。
無機充填剤としては、タルク、スメクタイト、カオリン、マイカ、モンモリロナイト等のケイ酸塩、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機化合物や、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ワラスナイト、チタン酸カリウムウィスカー、珪素系ウィスカー等の繊維状無機充填剤等が挙げられる。無機充填剤の平均粒径は、良好な分散性を得る観点から、0.1〜20μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。また、繊維状の無機充填剤のアスペクト比は、剛性向上の観点から5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。無機充填剤の中でも、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性及び耐熱性の観点からケイ酸塩が好ましく、タルク又はマイカがより好ましく、タルクがさらに好ましい。また、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性及び透明性の観点からは、シリカが好ましい。
なお、無機充填剤の平均粒径は、回折・散乱法によって体積基準のメジアン径を測定することにより求めることができる。例えば市販の装置としてはコールター社製レーザー回折・光散乱法粒度測定装置LS230等が挙げられる。
無機充填剤の含有量は、十分な耐熱性及び耐衝撃性を得る観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、1〜200重量部が好ましく、3〜50重量部がより好ましく、5〜40重量部がさらに好ましい。
加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられ、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性の観点からポリカルボジイミド化合物が好ましく、ポリ乳酸樹脂成形体の可撓性、剛性及び有機結晶核剤の耐ブルーム性の観点から、モノカルボジイミド化合物が好ましい。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等が挙げられ、モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ビス(メチルフェニル)カルボジイミド、ビス(メトキシフェニル)カルボジイミド、等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物は、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機結晶核剤の耐ブルーム性を満たすために、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
加水分解抑制剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.05〜3重量部が好ましく、0.10〜2重量部がより好ましい。
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、上記以外に、さらにヒンダードフェノール又はフォスファイト系の酸化防止剤、又は炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤等の他の成分を含有することができる。酸化防止剤、及び滑剤のそれぞれの含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.05〜3重量部が好ましく、0.10〜2重量部がより好ましい。
さらに、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、上記以外の他の成分として、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、前記ポリ乳酸樹脂、及び表面処理が施されている無機難燃剤を含有するものであれば特に限定なく調製することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、加工性が良好で、例えば200℃以下の低温で加工することができるため、可塑剤の分解が起こり難い利点があり、フィルムやシートに成形して、各種用途に用いることができる。
<ポリ乳酸樹脂成形体及びその製造方法>
本発明のポリ乳酸樹脂成形体は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を成形することにより得られる。具体的には、例えば、押出し機等を用いてポリ乳酸樹脂、及び表面処理が施されている無機難燃剤を溶融させながら、必要により、可塑剤、有機結晶核剤や無機充填剤等を混合し、次に得られた溶融物を射出成形機等により金型に充填して成形する。
本発明のポリ乳酸樹脂成形体の好ましい製造方法は、ポリ乳酸樹脂、及び表面処理が施されている無機難燃剤を含有するポリ乳酸樹脂組成物原料を溶融混練する工程(以下工程(1)という)と、工程(1)で得られた溶融物を110℃以下の金型内に充填して成形する工程(以下工程(2)という)を含む方法である。
工程(1)の具体例としては、例えば、ポリ乳酸樹脂、及び表面処理が施されている無機難燃剤を、溶融混練機を用いて160〜250℃で溶融混練する工程等が挙げられる。溶融混練機としては、特に限定はなく、2軸押出機等が例示される。また、溶融混練温度は、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性及び劣化防止の観点から、160〜250℃が好ましく、165〜230℃がより好ましく、170〜210℃がさらに好ましい。
本発明においては、工程(1)を経た後、冷却して非晶状態(すなわち高角X線回折法で測定される結晶化度が1%以下となる条件)とした後、工程(2)を行う方法や、工程(1)を経た後、成形品の形になるまで冷却して直ちに工程(2)を行う方法が好ましく、結晶化速度向上効果発現の観点から、工程(1)を経た後、冷却して直ちに工程(2)を行う方法がより好ましい。
工程(2)の具体例としては、例えば、射出成形機等によりポリ乳酸樹脂組成物を110℃以下の金型内に充填し、成形する工程等が挙げられる。工程(2)における金型温度は、結晶化速度向上、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性の向上、可撓性及び剛性の両立、及び作業性向上の観点から、110℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。また30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。かかる観点から、金型温度は30〜110℃が好ましく、40〜90℃がより好ましく、60〜80℃がさら好ましい。
〔ポリ乳酸樹脂の融点〕
ポリ乳酸樹脂の融点は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求められる。
〔ポリ乳酸樹脂のガラス転移点〕
ポリ乳酸樹脂のガラス転移点は、動的粘弾性測定における損失弾性率(E'')のピーク温度より求められる値であり、動的粘弾性測定は、JIS−K7198記載のA法に基づき、振動周波数10Hz、-50〜150℃の温度範囲を2℃/minの速度で昇温して測定を行う。
〔無機難燃剤の平均粒径〕
無機難燃剤の平均粒径は、体積中位粒径を意味し、回折・散乱法に従って、コールター社製レーザー回折・光散乱法粒度測定装置LS230を用いて体積基準のメジアン径を測定することにより算出できる。
〔可塑剤の平均分子量〕
平均分子量は、JIS K0070に記載の方法で鹸化価を求め、次式より計算で求める。
平均分子量=56,108×(エステル基の数)/鹸化価
〔有機結晶核剤の融点〕
融点は、DSC装置(パーキンエルマー社製、ダイアモンドDSC)を用い、昇温速度10℃/分で20℃から500℃まで昇温して測定を行う。
<表面処理が施された無機難燃剤の製造例1>
有機溶剤(アセトン)200gに、ポリオキシエチレン4.5モル付加ラウリルエーテル酢酸2.5g(後述の無機難燃剤100重量部に対して0.5重量部)を溶解させ、そこに無機難燃剤として、水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、B703、平均粒径2μm)500gを入れ、ミキサーで攪拌し、その後有機溶剤を除去し、乾燥して、無機難燃剤Aを得た。
<表面処理が施された無機難燃剤の製造例2>
ポリオキシエチレン4.5モル付加ラウリルエーテル酢酸2.5gを使用する代わりに、ポリオキシエチレン4.5モル付加ラウリルエーテル酢酸5g(無機難燃剤100重量部に対して1.0重量部)を使用する以外は、製造例1と同様にして、無機難燃剤Bを得た。
<表面処理が施された無機難燃剤の製造例3>
ポリオキシエチレン4.5モル付加ラウリルエーテル酢酸2.5gを使用する代わりに、ポリオキシエチレン10モル付加ラウリルエーテル酢酸2.5g(無機難燃剤100重量部に対して0.5重量部)を使用する以外は、製造例1と同様にして、無機難燃剤Cを得た。
<表面処理が施された無機難燃剤の製造例4>
ポリオキシエチレン4.5モル付加ラウリルエーテル酢酸2.5gを使用する代わりに、ポリオキシエチレン4.0モル付加ラウリルエーテル酢酸2.5g(無機難燃剤100重量部に対して0.5重量部)を使用する以外は、製造例1と同様にして、無機難燃剤Dを得た。
<表面処理が施された無機難燃剤の製造例5>
ポリオキシエチレン4.5モル付加ラウリルエーテル酢酸2.5gを使用する代わりに、エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製、KBM−403)5g(無機難燃剤100重量部に対して1.0重量部)を使用する以外は、製造例1と同様にして、無機難燃剤Eを得た。
<表面処理が施された無機難燃剤の製造例6>
ポリオキシエチレン4.5モル付加ラウリルエーテル酢酸2.5gを使用する代わりに、ステアリン酸(花王社製、ルナックS−40)5g(無機難燃剤100重量部に対して1.0重量部)を使用する以外は、製造例1と同様にして、無機難燃剤Fを得た。
<可塑剤の製造例1(コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル)>
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル2463g、パラトルエンスルホン酸一水和物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、110℃で15時間反応させた。反応液の酸価は1.6(KOHmg/g)であった。反応液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学工業社製)27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温115〜200℃、圧力0.03kPaでトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステルを得た。得られたジエステルは、酸価0.2(KOHmg/g)、鹸化価276(KOHmg/g)、水酸基価1以下(KOHmg/g)、色相APHA200であった。
<可塑剤の製造例2(1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのトリエステル)>
トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、及び触媒としてパラトルエンスルホン酸一水和物を、トリエチレングリコールモノメチルエーテル/1,3,6−ヘキサントリカルボン酸/パラトルエンスルホン酸一水和物(モル比)=4/1/0.02になるように反応容器に仕込み、減圧下で、温度120℃で脱水を行うことにより、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのトリエステルを得た。
<可塑剤の製造例3(酢酸とグリセリンにエチレンオキサイドを6モル付加させたエチレンオキサイド付加物とのエステル)>
オートクレーブに花王社製化粧品用濃グリセリン1モルに対しエチレンオキサイド6モルのモル比で規定量仕込み、1モル%のKOHを触媒として反応圧力0.3MPaの定圧付加し、圧力が一定になるまで150℃で反応した後、80℃まで冷却し、触媒未中和の生成物を得た。この生成物に触媒の吸着剤としてキョーワード600Sを触媒重量の8倍添加し、窒素微加圧下で80℃、1時間吸着処理をおこなった。さらに処理後の液をNo.2のろ紙にラジオライト#900をプレコートしたヌッツェで吸着剤を濾過し、グリセリンエチレンオキサイド6モル付加物(以下POE(6)グリセリンという)を得た。これを四つ口フラスコに仕込み、105℃に昇温して300r/minで攪拌し、無水酢酸をPOE(6)グリセリン1モルに対し3.6モルの比率で規定量を約1時間で滴下し反応させた。滴下後110℃で2時間熟成し、さらに120℃で1時間熟成した。熟成後、減圧下で未反応の無水酢酸及び副生の酢酸をトッピングし、さらにスチーミングして、POE(6)グリセリントリアセテートを得た。
実施例1〜16及び比較例1〜3(ポリ乳酸樹脂組成物)
表1に示すポリ乳酸樹脂、無機難燃剤、可塑剤、及び有機結晶核剤を、2軸押出機(池貝鉄工社製、PCM-45)にて190℃で溶融混練し、ストランドカットを行い、ポリ乳酸樹脂組成物A〜P及びa〜c(実施例1〜16及び比較例1〜3)のペレットを得た。なお、得られたペレットは、70℃減圧下で1日乾燥し、水分量を500ppm以下とした。
なお、表1における無機難燃剤以外の原料は以下の通りである。また、無機難燃剤Gとして、表面処理を施さない水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、B703、平均粒子径2μm)を用いた。
〔ポリ乳酸樹脂〕
LACEA H−400:三井化学社製、融点166℃、ガラス転移点62℃
〔可塑剤〕
(MeEO)SA:コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化合物、平均分子量410
(MeEO)TA:1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのトリエステル化合物、平均分子量657
POE(6)GlyAc:酢酸とグリセリンにエチレンオキサイドを6モル付加させたエチレンオキサイド付加物とのエステル化合物、平均分子量490
DAIFATY−101:アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコール(=1/1)との混合ジエステル(大八化学工業社製)、平均分子量338
〔有機結晶核剤〕
OHC18EB:エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド(日本化成社製、スリパックスH、融点145℃)
PPA−Zn:無置換のフェニルホスホン酸亜鉛塩(日産化学工業社製、融点無し)
実施例1〜16及び比較例1〜3のペレットの特性を、以下の試験例1の方法に従って調べた。結果を表1に示す。
〔試験例1〕(流動性)
実施例1〜16及び比較例1〜3のペレットを、シリンダー温度を200℃とした射出成形機(日本製鋼所製 J75E-D)を用いて射出成形し、金型温度80℃、射出圧942kgf/cm2、射出速度68cm3/secにそれぞれ設定して、3mm厚のスパーラルフロー評価用の成形体を射出成形した。この成形体の長さをLmm、厚みをDmmとして、L/Dを求め、流動性の指標とした。L/Dが大きい樹脂組成物ほど、流動性が良好である。
Figure 0005273847
表1の結果から、ポリオキシエチレンが付加したラウリルエーテル酢酸で表面処理が施された無機難燃剤を含有した本発明のポリ乳酸樹脂組成物(実施例1〜16)は、流動性を顕著に向上させることが可能であった。なかでも、上記無機難燃剤を含有し、さらに可塑剤、結晶核剤を併用した本発明のポリ乳酸樹脂組成物(実施例7〜16)は、さらに流動性を向上させることができた。一方、本発明における表面処理剤による処理が施されていない、もしくはシランカップリング剤、ステアリン酸で処理した無機難燃剤を含有したポリ乳酸樹脂組成物(比較例1〜3)は、流動性を向上させることができなかった。
以上の結果から、ポリ乳酸樹脂と金属水酸化物、もしくはシランカップリング剤で処理した金属水酸化物だけの組成物では、金属水酸化物同士の凝集力、あるいはポリ乳酸分子との摩擦が大きく、表面処理の効果を十分に発現できなかったが、本発明における表面処理剤で処理した金属水酸化物を用いることで金属水酸化物の分散性が向上し、その結果、射出成形時の流動性が向上したものと考えられる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

Claims (2)

  1. ポリ乳酸樹脂、及び式(I):
    [RO(AO)CHCOO]M (I)
    〔式中、Rは炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基を示し、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す1〜20の数であり(但し、n個のAOは同一でも異なっていてもよい)、pは1又は2であり、pが1の場合、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム又はアルカノールアンモニウムであり、pが2の場合、Mはアルカリ土類金属を示す〕
    で表される化合物によって表面処理が施された無機難燃剤を含有してなる、ポリ乳酸樹脂組成物であって、前記式(I)で表される化合物による無機難燃剤の処理量が処理前の無機難燃剤100重量部に対して0.1〜5重量部であり、表面処理が施された無機難燃剤の平均粒径が10μm以下であり、かつ、その含有量がポリ乳酸樹脂100重量部に対して30〜160重量部である、ポリ乳酸樹脂組成物
  2. 請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形してなるポリ乳酸樹脂成形体。
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